(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】測定システム、測定装置、測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01D 7/08 20060101AFI20230823BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20230823BHJP
【FI】
G01D7/08
G01J5/48 C
(21)【出願番号】P 2020562330
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030479
(87)【国際公開番号】W WO2020136969
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018244373
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【氏名又は名称】小野 由己男
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】長岡 英一
(72)【発明者】
【氏名】勝田 敏広
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0332062(US,A1)
【文献】特開2015-194367(JP,A)
【文献】特開2005-351960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00 - 7/12
G01J 5/00 - 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定位置の物理量を非接触にて測定する物理量センサーと、前記測定位置に向けて指示光を照射する光源と、を有する物理量測定装置と、
前記測定位置を含む測定位置画像を取得する画像取得センサーと、
前記測定位置画像において前記指示光が撮影されている位置を検出することで、前記測定位置画像における前記測定位置に対応する位置を検出する検出部と、
前記測定位置画像に、前記物理量センサーにて測定した物理量の測定結果と、前記検出部において検出された位置が前記物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成する測定結果画像生成部と、
を備え
、
前記測定結果画像生成部は、所定の周期毎に取得した前記測定位置画像のそれぞれに、前記物理量の測定結果と、前記識別表示と、を重畳して生成した前記測定結果画像を連続させて動画とする、
測定システム。
【請求項2】
前記画像取得センサーを収納する筐体と、
前記物理量センサーの測定中心を示す測定中心軸の方向と、前記画像取得センサーの光軸の方向が略平行となるように、前記物理量測定装置と前記筐体とを固定する固定器具と、
をさらに備える、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記画像取得センサーはプレビュー画像を取得し、
前記検出部は、前記プレビュー画像において前記指示光が撮影されているか否かを検出し、前記プレビュー画像において前記指示光が撮影されていることを検出したら、前記測定位置画像を取得可能である旨を通知する、
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記光源は、前記測定位置に照射されたときに当該測定位置とは視覚的に区別できる色を有する光を、前記指示光として前記測定位置に向けて照射する、請求項1~3のいずれかに記載の測定システム。
【請求項5】
前記光源は前記指示光を点滅させて照射する、請求項1~4のいずれかに記載の測定システム。
【請求項6】
前記光源は、前記指示光を特定の形状の光として照射する、請求項1~5のいずれかに記載の測定システム。
【請求項7】
前記測定位置画像を前記測定位置に対応する位置を中心として拡大した拡大画像を生成する拡大画像生成部をさらに備え、
前記測定結果画像生成部は、前記拡大画像に、前記測定結果と、前記識別表示と、を重畳して前記測定結果画像を生成する、
請求項1~6のいずれかに記載の測定システム。
【請求項8】
前記画像取得センサーの手ぶれを検出する手ぶれ検出センサーをさらに備え、
前記手ぶれ検出センサーにより手ぶれが検出されたら、前記測定結果画像生成部は、前記測定結果画像を生成しない、
請求項1~7のいずれかに記載の測定システム。
【請求項9】
前記測定位置画像における前記指示光の大きさに基づいて、前記測定位置までの距離を推定する距離推定部をさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の測定システム。
【請求項10】
複数の前記測定結果画像に存在する共通の特徴量に基づいて、複数の前記測定結果画像の互いの類似度を判定する類似度判定部をさらに備える、請求項1~9のいずれかに記載の測定システム。
【請求項11】
前記測定結果画像、測定位置画像、及び/又はプレビュー画像に異常を表す像が含まれているか否かを監視する第1監視部をさらに備える、請求項1~10のいずれかに記載の測定システム。
【請求項12】
前記物理量センサーにより測定された物理量が異常を示しているか否かを監視する第2監視部をさらに備える、請求項1~11のいずれかに記載の測定システム。
【請求項13】
前記測定位置画像を取得した場所を特定する場所特定部をさらに備える、請求項1~12のいずれかに記載の測定システム。
【請求項14】
所定の測定位置の物理量を非接触にて測定する物理量センサーと、
前記測定位置に向けて指示光を照射する光源と、
前記測定位置を含む測定位置画像を取得する画像取得センサーと、
前記測定位置画像において前記指示光が撮影されている位置を検出することで、前記測定位置画像における前記測定位置に対応する位置を検出する検出部と、
前記測定位置画像に、前記物理量センサーにて測定した物理量の測定結果と、前記検出部において検出された位置が前記物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成する測定結果画像生成部と、
を備え
、
前記測定結果画像生成部は、所定の周期毎に取得した前記測定位置画像のそれぞれに、前記物理量の測定結果と、前記識別表示と、を重畳して生成した前記測定結果画像を連続させて動画とする、
測定装置。
【請求項15】
所定の測定位置の物理量を非接触にて測定するステップと、
前記測定位置に向けて指示光を照射するステップと、
前記測定位置を含む測定位置画像を取得するステップと、
前記測定位置画像において前記指示光が撮影されている位置を検出することで、前記測定位置画像における前記測定位置に対応する位置を検出するステップと、
前記測定位置画像に、非接触にて測定した物理量の測定結果と、検出された前記位置が前記物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成するステップと、
を含
み、
前記測定結果画像を生成するステップは、所定の周期毎に取得した前記測定位置画像のそれぞれに、前記物理量の測定結果と、前記識別表示と、を重畳して生成した前記測定結果画像を連続させて動画とするステップを含む、
測定方法。
【請求項16】
所定の測定位置の物理量を非接触にて測定するステップと、
前記測定位置に向けて指示光を照射するステップと、
前記測定位置を含む測定位置画像を取得するステップと、
前記測定位置画像において前記指示光が撮影されている位置を検出することで、前記測定位置画像における前記測定位置に対応する位置を検出するステップと、
前記測定位置画像に、非接触にて測定した物理量の測定結果と、検出された前記位置が前記物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成するステップと、
を含
み、
前記測定結果画像を生成するステップは、所定の周期毎に取得した前記測定位置画像のそれぞれに、前記物理量の測定結果と、前記識別表示と、を重畳して生成した前記測定結果画像を連続させて動画とするステップを含む、
測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離れた測定位置の物理量を非接触で測定しつつ、当該測定位置を含む画像を取得し、当該画像に物理量の測定結果を重畳して表示する測定システム、測定装置、測定方法、及び、当該測定方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離れた測定位置の物理量を非接触で測定しつつ、当該測定位置を含む画像を取得するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
このシステムでは、測定対象を含む画像を取得し、その画像に測定対象に対して更なる検査が必要であると思われる像が映っていた場合に、非接触検査によりその測定対象を検査している。この非破壊検査後に、非接触検査の検査結果と、非接触検査を実行した箇所の像とを含む画像とを保存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムでは、非接触検査の結果とそれを実行した箇所の像とを含む画像には、当該画像のどの位置で実際に非接触検査が行われたかについての情報がない。従って、従来のシステムのユーザは、当該画像から非接触検査が行われた位置を視覚的に特定することができないため、従来のシステムで取得されたデータは信頼性が低かった。
【0005】
また、取得した画像においてどの位置で非接触検査が行われたかを示す方法として、物理量の測定位置を示すレーザポインタを測定対象にて反射させ、その反射スポットを画像に含ませることが考えられる。
しかしながら、測定位置が遠い場合など、画像に含まれるスポットの大きさ(スポット径)が小さい場合には、画像を見ただけでは測定位置が正確にかつ明確に特定できないため、データの信頼性は低くなる。
【0006】
本発明の課題は、非接触により測定した物理量の測定結果を、当該物理量の測定位置を含む画像に重畳表示する場合に、当該画像に物理量の測定位置を正確かつ明確に表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る測定システムは、物理量測定装置と、画像取得センサーと、検出部と、測定結果画像生成部と、を備える。
物理量測定装置は、物理量センサーと、光源と、を有する。物理量センサーは、所定の測定位置の物理量を非接触にて測定する。光源は、測定位置に向けて指示光を照射する。
画像取得センサーは、物理量の測定位置を含む測定位置画像を取得する。検出部は、測定位置画像において指示光が撮影されている位置を検出することで、測定位置画像における物理量の測定位置に対応する位置を検出する。
測定結果画像生成部は、測定位置画像に、物理量センサーにて測定した物理量の測定結果と、検出部において検出された位置が物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成する。
これにより、非接触により測定した物理量の測定位置を含む測定位置画像に、物理量の測定結果と、当該物理量の測定位置を示す識別表示とを、正確かつ明確に表示する測定結果画像を生成できる。
【0008】
上記の測定システムは、筐体と、固定器具と、をさらに備えてもよい。筐体は、画像取得センサーを収納する。固定器具は、物理量センサーの測定中心を示す測定中心軸の方向と、画像取得センサーの光軸の方向が略平行となるように、物理量測定装置と筐体とを固定する。
これにより、測定システムから測定位置までの距離によって、測定位置画像における指示光の存在位置が変化することを抑制できる。
【0009】
画像取得センサーは、プレビュー画像を取得してもよい。この場合、検出部は、プレビュー画像において指示光が撮影されているか否かを検出し、プレビュー画像において指示光が撮影されていることを検出したら、測定位置画像を取得可能である旨を通知する。
これにより、画像取得センサーにより取得されたプレビュー画像に測定位置が確実に含まれていると確認された場合に、当該プレビュー画像を測定位置画像として取得できる。
【0010】
光源は、測定位置に照射されたときに当該測定位置とは視覚的に区別できる色を有する光を、指示光として測定位置に向けて照射してもよい。
これにより、測定位置画像において指示光をより明確に認識できるので、測定値画像における指示光の位置を正確に検出できる。
【0011】
光源は指示光を点滅させて照射してもよい。これにより、測定位置画像において指示光をより明確に認識できるので、測定値画像における指示光の位置を正確に検出できる。
【0012】
光源は、指示光を特定の形状の光として照射してもよい。これにより、測定位置画像において指示光をより明確に認識できるので、測定値画像における指示光の位置を正確に検出できる。
【0013】
上記の測定システムは、拡大画像生成部をさらに備えてもよい。拡大画像生成部は、測定位置画像を測定位置に対応する位置を中心として拡大した拡大画像を生成する。
この場合、測定結果画像生成部は、拡大画像に、物理量の測定結果と、当該物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳して測定結果画像を生成する。
これにより、測定位置が測定システムから遠方に存在していても、測定位置近傍の詳細な画像を測定結果画像として取得できる。
【0014】
上記の測定システムは、手ぶれ検出センサーをさらに備えてもよい。手ぶれ検出センサーは、画像取得センサーの手ぶれを検出する。この場合、手ぶれ検出センサーにより手ぶれが検出されたら、測定結果画像生成部は、測定結果画像を生成しない。
これにより、手ぶれにより画像取得センサーの測定中心軸が定まっておらず、正確に測定位置を示すことができない測定結果画像を生成することを回避できる。
【0015】
上記の測定システムは、距離推定部をさらに備えてもよい。距離推定部は、測定位置画像における指示光の大きさに基づいて、測定位置までの距離を推定する。
これにより、測定システムから測定位置までの距離を正確に推定できる。
【0016】
上記の測定システムは、類似度判定部をさらに備えてもよい。類似度判定部は、複数の測定結果画像に存在する共通の特徴量に基づいて、複数の測定結果画像の互いの類似度を判定する。
これにより、複数の測定結果画像を類似度毎に分類できる。
【0017】
上記の測定システムは、第1監視部をさらに備えてもよい。第1監視部は、測定結果画像、測定位置画像、及び/又はプレビュー画像に異常を表す像が含まれているか否かを監視する。
これにより、測定位置近傍において視覚的な異常が発生したか否かを検知できる。
【0018】
上記の測定システムは、第2監視部をさらに備えてもよい。第2監視部は、物理量センサーにより測定された物理量が異常を示しているか否かを監視する。
これにより、測定位置において物理量に異常が発生したか否かを検知できる。
【0019】
上記の測定システムは、場所特定部をさらに備えてもよい。場所特定部は、測定位置画像を取得した場所を特定する。これにより、測定位置画像及び物理量を取得した場所を特定できる。
【0020】
本発明の他の見地に係る測定装置は、物理量センサーと、光源と、画像取得センサーと、検出部と、測定結果画像生成部と、を備える。物理量センサーは、所定の測定位置の物理量を非接触にて測定する。光源は、測定位置に向けて指示光を照射する。画像取得センサーは、測定位置を含む測定位置画像を取得する。
検出部は、測定位置画像において指示光が撮影されている位置を検出することで、測定位置画像における測定位置に対応する位置を検出する。測定結果画像生成部は、測定位置画像に、物理量センサーにて測定した物理量の測定結果と、検出部において検出された位置が物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成する。
これにより、非接触により測定した物理量の測定位置を含む測定位置画像に、物理量の測定結果と、当該物理量の測定位置を示す識別表示とを、正確かつ明確に表示する測定結果画像を生成できる。
【0021】
本発明のさらに他の見地に係る測定方法は、以下のステップを含む。
◎所定の測定位置の物理量を非接触にて測定するステップ。
◎測定位置に向けて指示光を照射するステップ。
◎測定位置を含む測定位置画像を取得するステップ。
◎測定位置画像において指示光が撮影されている位置を検出することで、測定位置画像における測定位置に対応する位置を検出するステップ。
◎測定位置画像に、非接触にて測定した物理量の測定結果と、検出された位置が物理量の測定位置であることを示す識別表示と、を重畳した測定結果画像を生成するステップ。
これにより、非接触により測定した物理量の測定位置を含む測定位置画像に、物理量の測定結果と、当該物理量の測定位置を示す識別表示とを、正確かつ明確に表示する測定結果画像を生成できる。
【発明の効果】
【0022】
非接触により測定した物理量の測定位置を含む測定位置画像に、物理量の測定結果と、当該物理量の測定位置を示す識別表示とを、正確かつ明確に表示する、信頼性の高い測定結果画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る測定システムの全体構成を示す図。
【
図5】第1実施形態に係る測定システムによる温度の測定動作を示すフローチャート。
【
図6】携帯端末に表示された測定結果画像の一例を示す図。
【
図7】第2実施形態に係る測定システムの構成を示す図。
【
図8】第3実施形態に係る測定装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
(1)第1実施形態に係る測定システムの概略
以下、第1実施形態に係る物理量の測定システム100を説明する。第1実施形態に係る測定システム100は、非接触にて物体表面の温度(物理量の一例)を測定するとともに、温度を測定した物体表面を含む画像(測定位置画像と呼ぶ)を取得するシステムである。
測定システム100は、温度を測定した物体表面を含む測定位置画像に、物体表面の温度の測定結果(温度の値)と、物体表面のどの位置で温度が測定されたかを示す識別マーク(識別表示の一例)と、を重畳して新たな画像(測定結果画像RIと呼ぶ)を生成し、その画像を表示及び/又は記録するシステムである。
【0025】
(2)第1実施形態に係る測定システムの構成
(2-1)全体構成
以下、
図1~
図4を用いて、第1実施形態に係る測定システム100の構成を説明する。
図1は、第1実施形態に係る測定システムの全体構成を示す図である。
図2は、放射温度計の構成を示す図である。
図3は、携帯端末の構成を示す図である。
図4は、携帯端末の機能ブロックを示す図である。
まず、
図1を用いて、測定システム100の全体構成を説明する。
図1に示すように、測定システム100は、放射温度計1(物理量測定装置の一例)と、携帯端末3と、を備える。
【0026】
放射温度計1は、物体O(
図2)の表面から発生する赤外線IR(
図2)の強度に基づいて、物体Oの表面の温度を非接触にて測定する装置である。
携帯端末3は、放射温度計1と通信可能となっており、放射温度計1にて測定した物体Oの温度の測定結果を受信する。携帯端末3は、放射温度計1により温度を測定した物体Oの位置を含む測定位置画像を取得し、当該測定位置画像に、放射温度計1による物体Oの表面の温度測定値と、測定位置画像における温度の測定位置を示す識別マークと、を重畳して表示する測定結果画像RIを生成し表示する端末である。携帯端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末などの持ち運びが容易な端末である。
【0027】
なお、第1実施形態に係る測定システム100においては、放射温度計1と携帯端末3とが固定されておらず、放射温度計1及び携帯端末3が互いに自由に移動可能となっている。
【0028】
(2-2)放射温度計
次に、
図2を用いて、測定システム100に備わる放射温度計1の具体的な構成の一例を説明する。
図2に示すように、放射温度計1は、赤外線センサー11(物理量センサーの一例)と、光源13と、制御部15と、を有する。なお、放射温度計1のこれらの構成要素は、第1筐体C1に収納されている。
赤外線センサー11は、物体Oの所定領域から発生する赤外線IRを受光して、当該赤外線IRの強度に基づいた信号を出力する。赤外線センサー11は、例えば、サーモパイルである。なお、赤外線IRは、レンズ17により集光されて、赤外線センサー11の受光面に受光される。
【0029】
光源13は、赤外線センサー11により受光された赤外線IRを発生する物体Oの上記所定領域に向けて、指示光PLを照射する。光源13は、指向性の高い光を指示光PLとして出力することが好ましい。指向性の高い指示光PLは、物体Oにてスポット径が小さい状態で反射されるので、物体Oの指示光PLの反射位置を容易に特定できる。つまり、指向性の高い指示光PLは、物体Oの位置を正確に指し示すことができる。
光源13としては、例えば、レーザ光源、LEDを使用できる。
【0030】
また、光源13は、物体Oの所定領域に照射されたときに、所定領域とは視覚的に区別できる色を有する光を、指示光PLとして照射する。例えば、光源13は、赤色光を指示光PLとして照射する。これにより、例えば、物体Oの所定領域が白色系の色を有する場合、指示光PLを物体Oの所定領域と明確に区別することができる。
【0031】
その他、例えば、光源13は、白色光を指示光PLとして照射することにより、物体Oの所定領域が黒色系の色を有する場合に、指示光PLを物体Oの所定領域と区別しやすくなる。
【0032】
さらに、光源13は、物体Oの表面において明確に認識できる状態で指示光PLを照射してもよい。
一例として、光源13は、指示光PLを所定間隔で点滅させて照射することができる。指示光PLを所定間隔で点滅させることにより、例えば、物体Oの表面の「シミ」と、指示光PLのスポットとを明確に区別できる。
【0033】
この場合、制御部15は、光源13から点滅した指示光PLを照射するための信号(例えば、パルス信号)又はそれに類似する信号(例えば、点滅開始タイミングと点滅周期を示す信号)を、携帯端末3に送信してもよい。
これにより、携帯端末3は、例えば、動画として取得されたプレビュー画像(後述)に存在する特定の像の点滅周期と、指示光PLの点滅周期とを比較することにより、プレビュー画像中の当該特定の像が指示光PLの像であるか否かを正確に判断できる。
【0034】
その他の例として、光源13は、指示光PLを特定の形状の光として照射できる。具体的には、光源13は、物体Oの表面において指示光PLのスポットが特定の形状となるように、指示光PLを照射できる。指示光PLの特定の形状としては、例えば、円形、十字形、三角形などがある。これにより、例えば、物体Oの表面の複雑な形状を有する「シミ」と、指示光PLのスポットとを明確に区別できる。
例えば、指示光PLの出力部分に特定形状を有するマスクを配置するか、又は、指示光PLの照射方向を高速に変化させることにより、特定形状の指示光PLを照射できる。
【0035】
放射温度計1において、上記の指示光PLの特殊な発光機能の全て又は一部が組み込まれていてもよい。この場合、制御部15の制御により、これら発光機能を切り替えて使用可能となっていてもよいし、複数の機能を組み合わせて使用可能となっていてもよい。例えば、特定の形状の指示光PLを点滅させて照射してもよい。
【0036】
制御部15は、CPU、記憶装置(ROM、RAMなど)、各種インタフェースを有するコンピュータシステムである。また、制御部15は、有線及び/又は無線にて携帯端末3と通信するためのインタフェース(例えば、Ethernet(登録商標)インタフェース、無線LANインタフェース、近距離通信インタフェース(例えば、bluetooth(登録商標)インタフェース)、赤外線通信インタフェース、RF通信インタフェース、USBインタフェース、など)を有する。
制御部15は、上記コンピュータシステムの記憶装置に記憶されたソフトウェアを実行することにより、以下に示す制御部15の機能を実現する。
【0037】
その他、制御部15は、SoC(System on Chip)にて構成され、ハードウェア的に以下の機能を実現してもよい。
【0038】
制御部15は、放射温度計1の各部(赤外線センサー11、光源13など)を制御する機能を有する。また、制御部15は、赤外線センサー11から入力した赤外線IRの強度を表す信号(例えば、アナログ信号)を、適切な信号(例えば、デジタル信号)に変換し、携帯端末3に送信する機能を有する。
さらに、制御部15は、携帯端末3から受信した指令に従って、放射温度計1の各部を制御する機能を有する。
【0039】
(2-3)携帯端末の物理構成
以下、測定システム100に備わる携帯端末3の構成を説明する。最初に、
図3を用いて、携帯端末の物理的な構成を説明する。
図3に示すように、携帯端末3は、主に、CPU31と、通信インタフェース32と、画像取得センサー33と、記憶装置34と、表示装置35と、を有する。なお、携帯端末3のこれらの物理的な構成要素は、第2筐体C2(
図1)に収納されている。
CPU31は、後述する携帯端末3の各種機能を実現するための各種情報処理を実行する。CPU31は、携帯端末3の各種機能を、記憶装置34に記憶された専用アプリケーションAPをオペレーティングシステムOS上で実行することにより、実現する。
【0040】
通信インタフェース32は、CPU31の制御により、放射温度計1など外部の装置と通信するためのインタフェースである。
有線にて外部の装置と通信する場合には、通信インタフェース32は、例えば、Ethernet(登録商標)インタフェース、USBインタフェースなどである。
一方、無線にて外部の装置と通信する場合には、通信インタフェース32は、例えば、無線LANインタフェース、bluetooth(登録商標)などの近距離通信インタフェース、赤外線通信インタフェース、RF通信インタフェースなどである。
本実施形態においては、通信インタフェース32は、有線にて外部の装置と通信するインタフェースと、無線にて外部の装置と通信するインタフェースと、を両方含む。
【0041】
画像取得センサー33は、CPU31の制御により、外部の景色等を画像として取得するセンサーである。画像取得センサー33は、例えば、電荷結合素子(CCD)が二次元アレイ状に配置されたCCDイメージセンサー、受光素子がアレイ状に配置されたCMOSイメージセンサーである。
【0042】
記憶装置34は、ROM、RAM、SSD、HDDなどにより構成されるデータを記憶する装置である。記憶装置34は、オペレーティングシステムOS、専用アプリケーションAPを記憶している。CPU31は、記憶装置34に記憶されたオペレーティングシステムOS、専用アプリケーションAPに適宜アクセスして、専用アプリケーションAPにて指令された各種情報処理を実行する。
【0043】
なお、専用アプリケーションAPは、特定のパスワード等を用いて所定のサーバ(例えば、アプリケーション提供サーバ)からダウンロードされ、携帯端末3にインストールされることで、記憶装置34に記憶される。
【0044】
表示装置35は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイと、当該ディスプレイ上に配置されたタッチパネルと、により構成された装置である。表示装置35は、CPU31の制御により、上記ディスプレイに画像取得センサー33で取得した画像などを表示する。
また、表示装置35は、専用アプリケーションAPを動作させるためのGUI(Graphical User Interface)を表示し、タッチパネルのタッチ動作を検出する。
【0045】
本実施形態の携帯端末3は、上記の基本的な構成に加えて、手ぶれ検出センサー36をさらに有していてもよい。手ぶれ検出センサー36は、例えば、携帯端末3の傾き角度の変化(角速度)を測定するジャイロセンサーである。
手ぶれ検出センサー36により、携帯端末3の「手ぶれ」、すなわち、画像取得センサー33の光軸の変動を検出できる。なお、画像取得センサー33の光軸は、画像取得センサー33の受光面の法線と平行な軸である。
【0046】
また、携帯端末3は、GPS受信機37をさらに有していてもよい。GPS受信機37は、GPS衛星からの電波を受信し、当該電波が発信された時刻と受信された時刻との差から算出されるGPS衛星と携帯端末3との距離に基づいて、携帯端末3の位置を特定する。
専用アプリケーションAPを実行することにより、CPU31は、GPS受信機37が特定した携帯端末3の位置情報を取得し、画像取得センサー33により取得された画像に、その位置情報を重畳して表示可能とするか、及び/又は、メタデータなどの特定のデータ形式にて位置情報を埋め込むことができる。
【0047】
その他、携帯端末3は、ボタンなどの入力装置、スピーカーなどの音を発生させる装置などを備えていてもよい。
【0048】
(2-4)携帯端末の機能構成
次に、CPU31が専用アプリケーションAPを実行することにより実現される携帯端末3の機能構成を、
図4に示す携帯端末3の機能ブロック図を用いて説明する。
携帯端末3は、主に、検出部41と、測定結果画像生成部42と、により実現される機能を有する。
【0049】
検出部41は、画像取得センサー33により取得した画像に、指示光PLの像が存在しているか否かを判定する機能を実現する。
また、検出部41は、指示光PLの像が存在する画像を測定位置画像とし、当該測定位置画像のどの位置(座標)に指示光PLが撮影されているかを検出する。検出部41は、測定位置画像において指示光PLが撮影されている位置を、測定位置画像における温度の測定位置に対応する位置と認識する。
【0050】
本実施形態において、検出部41は、画像取得センサー33から所定の周期にてプレビュー画像を取得する。当該取得されたプレビュー画像は、所定の周期毎に表示装置35に表示される。これにより、画像取得センサー33にて取得したプレビュー画像を動画として表示できる。
検出部41は、取得したプレビュー画像毎に指示光PLが撮影されているか否かを検出し、プレビュー画像に指示光PLが撮影されていることを検出したら、専用アプリケーションAPにその旨を通知する。
これにより、画像取得センサー33により取得されたプレビュー画像に測定位置が確実に含まれていると確認された場合に、当該プレビュー画像を測定位置画像として取得できる。
【0051】
測定結果画像生成部42は、指示光PLの像が含まれる(すなわち、温度の測定位置が含まれる)測定位置画像に、放射温度計1にて測定した温度の測定値と、検出部41において検出された測定位置画像の位置が温度の測定位置であることを示す識別マークと、を重畳して、測定結果画像RIを生成する。
測定結果画像生成部42は、生成した測定結果画像RIを記憶装置34に記憶し、及び/又は、表示装置35のディスプレイに表示する。
【0052】
なお、検出部41がプレビュー画像を取得して表示する場合、測定結果画像生成部42は、所定の周期毎に取得した画像のそれぞれに、温度の測定値と、上記の識別マークとを重畳した測定結果画像RIを生成し、検出部41に対して、当該測定結果画像RIを連続して表示してプレビュー画像とするよう指令してもよい。
【0053】
また、測定結果画像生成部42は、測定位置画像を取得する際に、手ぶれ検出センサー36により携帯端末3の手ぶれが検出されたら、手ぶれ状態で取得された測定位置画像から測定結果画像RIを生成しなくてもよい。
具体的には、手ぶれ検出センサー36により検出された角速度が所定の閾値以上であった場合に、測定結果画像生成部42は、測定結果画像RIの生成を中止する。
【0054】
手ぶれ検出センサー36により検出された角速度が所定の閾値以上となることは、画像取得センサー33の光軸の向き(角度)が大きく変動していることを意味する。このような場合には、指示光PLと画像取得センサー33の光軸とのなす角度が大きく変動し、測定位置画像から温度の測定位置を適切に特定することが困難となる。すなわち、手ぶれ状態で取得された測定位置画像から生成された測定結果画像RIは、証拠能力が低くなる。
従って、携帯端末3の手ぶれが検出された場合に測定結果画像RIを生成しないことにより、証拠能力の高い測定結果画像RIを高確率で生成できる。
【0055】
上記の検出部41と測定結果画像生成部42とにより実現される機能以外に、携帯端末3は、以下の機能を実現する各機能部を有してもよい。携帯端末3は、以下の各機能部のうち全てを有していてもよいし、一部のみを有していてもよい。
【0056】
全て又は一部の機能部を有している場合には、例えば、専用アプリケーションAPのGUIにおいて各機能部を実行するボタンを設け、いずれかのボタンが押されたときに対応する機能部を実行するようにしてもよい。その他、専用アプリケーションAPのオプション設定により、各機能部の有効/無効を切り替え可能となっていてもよい。
【0057】
さらに、以下の機能部を1つの専用アプリケーションAPにて実行可能となっていてもよいし、いくつかの機能部を専用アプリケーションAPとは別のアプリケーションにて実行可能としてもよい。
【0058】
携帯端末3は、拡大画像生成部43にて実現される機能を有していてもよい。拡大画像生成部43は、画像取得センサー33にて取得され、指示光PLの像が含まれる測定位置画像を、指示光PLの像の中心、すなわち、温度の測定位置に対応する位置を中心として拡大した拡大画像を生成する。拡大画像生成部43は、測定位置画像に含まれる画素を拡大することで、拡大画像を生成する。
この場合、測定結果画像生成部42は、拡大画像生成部43が生成した拡大画像に、温度の測定値と、温度の測定位置であることを示す識別マークと、を重畳して測定結果画像RIを生成する。
【0059】
これにより、温度の測定位置が測定システム100から遠方に存在していても、測定位置画像及び測定結果画像RIにおいて、指示光PLの拡大像を明確に表示できるとともに、測定位置近傍の測定対象である物体Oの詳細な画像を表示できる。
このように、拡大画像生成部43の機能を有することにより、携帯端末3は、指示光PLを明確に表示しつつ、測定位置の近傍の状態を詳細に表示した証拠能力(信頼性)の高い測定結果画像RIを生成できる。
【0060】
携帯端末3は、距離推定部44にて実現される機能を有していてもよい。距離推定部44は、測定位置画像における指示光PLの大きさに基づいて、測定システム100から測定位置までの距離を推定する。これにより、測定システム100から温度の測定位置までの距離を正確に推定できる。
【0061】
具体的には、距離推定部44は、携帯端末3に備わる画像取得センサー33の解像度、画角などの仕様と、測定位置画像において指示光PLの像を形成する画素の数と、を用いて、測定システム100から温度の測定位置までの距離を算出する。
なお、画像取得センサー33の仕様は、例えば、専用アプリケーションAPがオペレーティングシステムOSに対して要求することにより取得される。
【0062】
携帯端末3は、類似度判定部45にて実現される機能を有していてもよい。類似度判定部45は、記憶装置34に記憶された複数の測定結果画像RIに存在する共通の特徴量に基づいて、複数の測定結果画像RIの互いの類似度を判定する。
類似度判定部45は、例えば、複数の測定結果画像RIのそれぞれに含まれる物体の像について、その形状、色、などを特徴量として抽出し、複数の測定結果画像RIに、ほぼ同一の特徴を有する像が共通に存在していれば、この複数の測定結果画像RIには共通の特徴が含まれていると判定できる。
【0063】
形状及び色が同一である像を含む画像は、同一の場所で取得された場合が多い。従って、類似度判定部45により共通の特徴が含まれる複数の測定結果画像RIを判定することにより、例えば、複数の測定結果画像RIを撮影場所毎に分類するといった類似度毎の分類をすることができる。
【0064】
携帯端末3は、場所特定部46にて実現される機能を有していてもよい。場所特定部46は、測定位置画像を取得した場所を特定する。
場所特定部46は、例えば、測定位置画像を取得したときにGPS受信機37から出力された場所の情報(例えば、緯度、経度など)を、当該測定位置画像の取得場所と特定できる。
その他、場所特定部46は、測定位置画像に埋め込まれた位置情報から、当該測定位置画像の取得場所を特定できる。
【0065】
さらに、場所特定部46は、例えば、Wi-Fi測位、RFID(Radio Frequency Identifier)測位、ビーコン測位、屋内GPS(IMES)測位などを用いる屋内測位システムにより特定された屋内の位置を、測定位置画像の取得場所と特定することもできる。
【0066】
この場合、測定結果画像生成部42は、場所特定部46により特定された場所に関する情報を測定位置画像にさらに重畳して、測定結果画像RIを生成してもよい。これにより、場所特定部46により特定された場所を、視覚的に確認できる。
【0067】
携帯端末3は、特定のタイミングにおける測定結果画像RIを表示装置35に表示させ、記憶装置34に記憶する動作モードだけでなく、物体Oの特定位置の温度を常時監視し、当該特定位置を含む測定結果画像RIを常時取得する動作モード(監視モードと呼ぶ)を有していてもよい。
この場合、携帯端末3は、第1監視部47により実現される機能を有していてもよい。第1監視部47は、測定結果画像RIに異常を表す像が含まれているか否かを監視する。
【0068】
例えば、常時取得した測定結果画像RIのうち、ある特定の期間に取得された測定結果画像RIに、他の期間には存在していなかった像、例えば、動物が温度の測定位置を横切った様子を撮影した像が存在している場合に、第1監視部47は、測定結果画像RIに異常を表す像が含まれていると判断し、当該測定結果画像RIが取得された期間の温度の測定結果は、常時監視している測定位置の温度ではないと判断できる。
【0069】
第1監視部47は、測定結果画像RIに異常を表す像が含まれていると判断した場合に、例えば、携帯端末3から音を発する、表示装置35(測定結果画像RI)に異常発生を伝える表示をする、などのアラームを発することができる。
【0070】
その他、第1監視部47は、測定結果画像RIに異常を表す像が含まれていると判断した場合に、例えば、異常を表す像を含む測定結果画像RIについては、他の測定結果画像RIとは区別が可能な形式で記憶装置34に記憶してもよい。例えば、測定結果画像RIに異常を伝えるマークを重畳させておく、又は、他の測定結果画像RIとは異なるファイル名で記憶装置34に記憶することができる。
【0071】
また、第1監視部47は、測定位置画像又はプレビュー画像について画面内の動きベクトルを抽出する機能を有していてもよい。測定対象が静止物体である場合、測定位置画像内の動きベクトルはゼロとみなせる。そこで、動きベクトルを常時抽出し、その量が閾値を超えた場合には、測定結果画像生成部42は、測定結果画像RIの生成を中止してもよい。
【0072】
測定位置画像、プレビュー画像は、温度の測定結果等が重畳されていない画像である。したがって、測定位置画像、プレビュー画像を用いて動きベクトルを抽出することで、例えば、温度の測定結果の表示が変化した場合に動きがあったと検出される誤検知を抑制できる。また、抽出した動きベクトルが測定結果の表示変化によるものであるか否かの判断、及び、測定結果の表示変化による動きベクトルを除外する処理を実行する必要がなくなる。
【0073】
また、監視モードが存在する場合、携帯端末3は、第2監視部48により実現される機能を有していてもよい。第2監視部48は、放射温度計1により測定された温度が異常を示しているか否かを監視する。
【0074】
例えば、放射温度計1により測定された温度が所定の許容範囲を超えて変動した場合に、第2監視部48は、通信インタフェース32を介して、外部のシステム、ユーザが有する端末、又はクラウドなどに、温度変動に異常があった旨を通知できる。
その他、第2監視部48は、温度変動が異常であると判断した場合に、例えば、携帯端末3から音を発する、表示装置35(測定結果画像RI)に異常発生を伝える表示をする、などのアラームを発することもできる。
さらに、第2監視部48は、温度変動が異常であると判断した場合に、例えば、温度変動に異常があったタイミングで生成された測定結果画像RIについては、他の測定結果画像RIとは区別が可能な形式で記憶装置34に記憶してもよい。
【0075】
(3)測定システムの動作
以下、
図5を用いて、上記の構成を有する測定システム100を用いて、物体Oの所定領域の温度を測定して測定結果画像を表示/保存するまでの基本動作を説明する。
図5は、第1実施形態に係る測定システムによる温度の測定動作を示すフローチャートである。
測定システム100が動作を開始すると、まず、放射温度計1が物体Oの所定領域の温度測定を開始する。
具体的には、ステップS1において、赤外線センサー11が、物体Oの所定領域から発生する赤外線IRを受光し、赤外線IRの強度を表す信号を制御部15に出力する。制御部15は、受光した赤外線IRの強度を物体Oの所定領域の温度の測定値に変換し、携帯端末3に送信する。
また、ステップS2において、光源13が、物体Oの所定領域に向けて指示光PLを照射する。
【0076】
次に、専用アプリケーションAPが実行されると、ステップS3において、携帯端末3は、通信インタフェース32により、放射温度計1から送信された温度の測定値を受信する。
さらに、ステップS4において、画像取得センサー33が、携帯端末3が向けられている方向にある風景の画像を、プレビュー画像として取得する。その後、取得したプレビュー画像に、受信した温度の測定値を重畳して表示装置35に表示する。
【0077】
プレビュー画像の取得後、ステップS5において、検出部41が、プレビュー画像中に指示光PLの像を検出したか否かを判断する。すなわち、プレビュー画像において指示光PLが撮影されているか否かを検出する。
具体的には、検出部41は、例えば、プレビュー画像中に、指示光PLの色と同じであるか又は極めて近い色である画素が、指示光PLのスポットの大きさ及び形状に相当する個数及び配置にて特定の位置に集中して存在している場合に、プレビュー画像の当該特定の位置に指示光PLの像を検出したと判断する。
なお、指示光PLのスポットが小さい場合には、検出部41は、プレビュー画像を拡大して、プレビュー画像中に指示光PLの像が検出されるか否かを確認してもよい。
【0078】
プレビュー画像中に指示光PLの像が検出されなかった場合(ステップS5で「No」)、ステップS3に戻り、再度、所定の周期にて、温度の測定値の受信と、プレビュー画像の取得が繰り返し実行される。
この間、測定システム100のユーザは、携帯端末3の画像取得センサー33(カメラ)の向きを変化させて、指示光PLのスポットをプレビュー画像中に含めることを試みる。
【0079】
なお、プレビュー画像に指示光PLの像が検出されなかった場合には、上記のステップS3~S5は、指示光PLの像が検出されるまで所定の周期にて繰り返し実行される。これにより、プレビュー画像が動画として表示装置35に表示される。
【0080】
一方、プレビュー画像中に指示光PLの像が検出された場合(ステップS5で「Yes」)、検出部41は、温度の測定位置を含む画像である測定位置画像を取得可能である旨を、専用アプリケーションAPに通知する。当該通知を受けた専用アプリケーションAPによる指令により、画像取得センサー33が、ステップS6において、測定位置画像を取得する。
【0081】
例えば、測定位置画像を取得可能である旨の通知を受けた専用アプリケーションAPは、専用アプリケーションAPのGUIに測定位置画像が取得可能となった旨を表示させる。例えば、当該GUI上にアイコン又は文字情報を表示するか、及び/又は、当該GUIの画像取得ボタンを有効化させる。
その後、ユーザが専用アプリケーションAPのGUIの画像取得ボタンを押す(タッチする)ことにより、現在のプレビュー画像が測定位置画像として取得される。
【0082】
その他、専用アプリケーションAPは、測定位置画像を取得可能である旨の通知を受信すると自動的に、画像取得センサー33により測定位置画像を取得してもよい。
【0083】
測定位置画像を取得後、検出部41は、ステップS7において、測定位置画像において指示光PLの像が存在する位置を、この測定位置画像における温度の測定位置であると特定する。
検出部41は、例えば、測定位置画像中において、指示光PLの色と同じであるか又は極めて近い色である画素が、指示光PLのスポットの大きさ及び形状に相当する個数及び配置にて特定の位置に集中して存在している場合に、当該特定の位置を、測定位置画像における温度の測定位置であると決定する。
【0084】
測定位置画像における温度の測定位置を決定後、ステップS8において、測定結果画像生成部42は、ステップS6にて取得した測定位置画像に、温度の測定値と、測定位置画像における温度の測定位置を示す識別マークと、を重畳して測定結果画像RIを生成する。ステップS8において、測定結果画像生成部42は、例えば、
図6に示すような測定結果画像RIを生成する。
図6は、携帯端末に表示された測定結果画像の一例を示す図である。
【0085】
図6に示す測定結果画像RIにおいては、指示光PLが存在する位置を指し示す「ふきだし」が温度の測定位置を表す識別マークとして表示され、その「ふきだし」の中に当該測定位置で測定された温度の測定値が表示(
図6では、「94.28°F」と華氏で表示)されている。
測定結果画像生成部42は、温度の測定値以外にも、測定位置画像の取得日時(すなわち、温度の測定日時)、測定位置画像の取得場所、測定位置画像の取得者などを、測定位置画像に重畳して表示してもよい。これにより、より証拠能力の高い測定結果画像RIを得られる。
【0086】
測定結果画像RIを生成後、測定結果画像生成部42は、ステップS9において、生成した測定結果画像RIを、表示装置35に表示させる。また、専用アプリケーションAPのGUIを用いてユーザから測定結果画像RIを保存する指令があった場合には、生成した測定結果画像RIを、記憶装置34に保存する。
【0087】
測定結果画像RIを生成して表示後、温度の測定及び測定結果画像RIの取得を継続する場合(ステップS10で「No」)、上記のステップS3~S9が再度実行される。
その一方、温度の測定及び測定結果画像RIの取得を中止する場合(ステップS10で「Yes」)、測定システム100による温度の測定動作を終了する。
【0088】
(4)まとめ
上記にて説明したように、第1実施形態に係る測定システム100では、温度の測定位置及びその近傍を表す測定位置画像に温度の測定値を重畳して表示する場合において、当該測定位置画像中において温度の測定位置を示す指示光PLの像の存在位置、すなわち、温度の測定位置を指し示す識別マークも表示している。
これにより、例えば、測定結果画像RIにおいて指示光PLのスポットが小さく一見しただけではその存在位置が明確に認識できない場合でも、温度の測定位置を、測定結果画像RIを一見しただけで明確に認識できる。すなわち、証拠能力の高い測定結果画像RIを得ることができる。
【0089】
また、第1実施形態に係る測定システム100では、測定位置画像の画像処理により、指示光PLの像の存在位置を特定し、当該特定された位置を測定位置画像における温度の測定位置と特定している。これにより、指示光PLの光軸に対して画像取得センサー33の光軸がどのような角度となっていても、指示光PLの像の存在位置、すなわち、温度の測定位置を正確に特定できる。以下、上記の効果についてより詳細に説明する。
【0090】
例えば、指示光PLの光軸と画像取得センサー33の光軸とが平行でなく、ある角度を有して存在している場合、画像取得センサー33により取得した画像中における指示光PLの像の位置は、測定システム100から温度の測定位置までの距離により変動する。
また、画像取得センサー33は所定の画角を有するので、上記の指示光PLの光軸と画像取得センサー33の光軸とが平行でないことに起因する指示光PLの像の位置の変動は、より顕著となる。このように、測定位置画像中における指示光PLの像の存在位置、すなわち、温度の測定位置は一義的に決めることができない。
【0091】
従って、測定位置画像中において指示光PLの像を明確に識別できない場合、例えば、測定システム100と温度の測定位置とが離れており指示光PLの大きさが小さくなる場合には、測定位置画像中における温度の測定位置を正確に特定できなくなる。
【0092】
そこで、上記にて説明したように、第1実施形態では、測定位置画像の画像処理により指示光PLの像の位置を検出している。これにより、指示光PLの光軸と画像取得センサー33の光軸とが平行であるか否かによらず、及び/又は、測定位置画像において指示光PLを明確に識別できるか否かによらず、測定位置画像における指示光PLの像の存在位置、すなわち、温度の測定位置を正確に特定できる。
【0093】
2.第2実施形態
上記にて説明した第1実施形態に係る測定システム100においては、放射温度計1と携帯端末3とが固定されておらず、放射温度計1と携帯端末3との位置関係は変動可能となっていた。
以下に説明する第2実施形態に係る測定システム200では、放射温度計1と携帯端末3とはその位置関係が固定される。
【0094】
具体的には、
図7に示すように、第2実施形態に係る測定システム200は、固定器具5を備える。
図7は、第2実施形態に係る測定システムの構成を示す図である。
固定器具5は、放射温度計1の第1筐体C1と携帯端末3の第2筐体C2とを所定位置に固定する器具である。固定器具5は、第1主面51上に第1筐体C1を固定することで、第1主面51の法線と赤外線センサー11の測定中心を示す測定中心軸とを平行としている。
【0095】
また、固定器具5は、画像取得センサー33(カメラ)が第1主面51により遮られないよう、第1主面51の反対側の主面に設けられた溝に第2筐体C2を固定する。これにより、第1主面51の法線と画像取得センサー33の光軸とを平行としている。
すなわち、固定器具5は、赤外線センサー11の測定中心を示す測定中心軸の方向と、画像取得センサー33の光軸の方向が略平行となるように、放射温度計1と携帯端末3とを固定する。
【0096】
これにより、測定システム200から温度の測定位置までの距離によって、測定位置画像における指示光PLの像の存在位置が変化することを抑制できる。
【0097】
また、
図7に示すように、固定器具5には、放射温度計1の固定位置の下側にハンドル53が設けられている。測定システム200のユーザは、測定システム200の使用時にこのハンドル53を把持することで、容易に測定システム200の向きを変更できる。
【0098】
また、固定器具5には、携帯端末3と放射温度計1とを有線で接続するUSBインタフェースを備えても良い。具体的には、携帯端末3に設けられたUSBインタフェースの接続口(凹部)と嵌合する第1のコネクタ(凸部)を固定器具5に設け、携帯端末3を第1主面51の反対側の主面に沿わせながらスライドさせて、携帯端末3の上記接続口と第1のコネクタとを接続する。
【0099】
同様に、放射温度計1の接続口と嵌合する第2のコネクタを設け、放射温度計1の接続口を第2のコネクタに嵌合させる。そして、第1のコネクタと第2のコネクタは、固定器具5に内蔵したUSBインタフェースのケーブルによって結線している。こうして、コネクタに接続するだけで固定器具5に携帯端末3と放射温度計1を固定することができ、しかも、直ちに有線で両者を接続することができる。
【0100】
なお、第2実施形態に係る測定システム200は、固定器具5をさらに備えること以外は、第1実施形態に係る測定システム100と同様の構成及び機能を有している。従って、ここでは、第1実施形態に係る測定システム200の固定器具5以外の構成及び機能の説明は省略する。
【0101】
また、上記のように、第2実施形態に係る測定システム200においても、第1実施形態と同様に、測定位置画像の画像処理により指示光PLの像の位置を検出している。従って、第2実施形態においては、固定器具5毎に測定システム200の光軸の校正をする必要がない。
なぜなら、測定位置画像の画像処理により指示光PLの像の位置を検出することで、赤外線センサー11の測定中心軸の方向と画像取得センサー33の光軸の方向が固定器具5毎に異なっていても、これら2つの軸のずれによらず、測定位置画像における指示光PLの像の存在位置を正確に特定できるからである。
【0102】
3.第3実施形態
上記にて説明した第1及び第2実施形態に係る測定システム100、200においては、温度を非接触で測定する装置(放射温度計1)と、温度の測定位置の画像を取得する装置(携帯端末3)とが個別の装置となっていた。
以下に説明する第3実施形態に係る測定装置300は、非接触で温度を測定する機能と、温度の測定位置の画像を取得する機能とが一体となっている。
【0103】
具体的には、
図8に示すように、第3実施形態に係る測定装置300は、CPU61、画像取得センサー62、に加えて、指示光PLを温度の測定位置に向けて照射する光源63と、温度を非接触で測定する赤外線センサー64と、をさらに備えている。
図8は、第3実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
その他、測定装置300は、必要に応じて、記憶装置65と、手ぶれ検出センサー66と、GPS受信機67と、表示装置68と、通信インタフェース69と、を備える。
【0104】
非接触で温度を測定する機能と、温度の測定位置の画像を取得する機能とを一体の装置に組み込むことによっても、指示光PLの光軸(赤外線センサー64の測定中心軸)と画像取得センサー62の光軸とが固定されるので、測定装置300から温度の測定位置までの距離によって、測定位置画像における指示光PLの像の存在位置が変化することを抑制できる。
【0105】
なお、第3実施形態に係る測定装置300のCPU61、画像取得センサー62、光源63、赤外線センサー64、記憶装置65と、手ぶれ検出センサー66、GPS受信機67、表示装置68、及び通信インタフェース69、のそれぞれの構成及び機能は、上記の第1実施形態に係る測定システム100のCPU31、画像取得センサー33、光源13、赤外線センサー11、記憶装置34、手ぶれ検出センサー36、GPS受信機37、表示装置35、通信インタフェース32、と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0106】
また、測定装置300にて専用アプリケーションAPを実行することにより実現される機能も、第1実施形態に係る測定システム100にて実現される機能と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0107】
第3実施形態に係る測定装置300においても、第1実施形態と同様に、測定位置画像の画像処理により指示光PLの像の位置を検出している。従って、第3実施形態においては、測定装置300毎に光軸の校正をする必要がない。
なぜなら、測定位置画像の画像処理により指示光PLの像の位置を検出することで、赤外線センサー64の測定中心軸の方向と画像取得センサー62の光軸の方向が測定装置300毎に異なっていても、これら2つの軸のずれによらず、測定位置画像における指示光PLの像の存在位置を正確に特定できるからである。
【0108】
4.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)
図5に示したフローチャートの各ステップの処理の内容、及び/又は、処理の順番は、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。例えば、第1実施形態に係る測定システム100、及び、第2実施形態に係る測定システム200において、放射温度計1と携帯端末3との間の通信データ量を減少するため、プレビュー画像の取得毎に温度の測定値を送受信しなくてもよい。例えば、測定位置画像の取得時に温度の測定値を送受信してもよい。
【0109】
また、指示光PLの光軸と画像取得センサー33、62の光軸が固定される、第2実施形態に係る測定システム200、及び、第3実施形態に係る測定装置300においては、プレビュー画像中に指示光PLの像が存在するか否かを判断する処理を省略してもよい。なぜなら、指示光PLの光軸と画像取得センサー33、62の光軸が固定される場合には、プレビュー画像には常に指示光PLの像が含まれているからである。
【0110】
(B)上記の第1~第3実施形態においては、非接触にて測定する物理量を温度としていたが、これに限られず、物体Oの所定位置における歪み、(内部)応力、湿度、物体O表面の反射率、光沢、色、表面粗さなどを非接触にて測定する物理量とした場合でも、上記の第1~第3実施形態を適用できる。
【0111】
(C)上記の第1~第3実施形態においては、1つの光源13から照射した1つの指示光PLにより測定位置を指し示していたが、これに限られず、複数の光源から照射した複数の指示光により測定位置を指し示してもよい。例えば、2つの指示光の間を測定位置と特定することができる。その他、複数の指示光により囲まれた領域の内部を測定位置と特定することもできる。
複数の指示光にて測定位置を指し示す場合であっても、測定位置画像における複数の指示光の存在位置は、上記にて説明した測定位置画像の画像処理により特定できる。
【0112】
(D)指示光PLの照射を携帯端末3から制御可能となっていてもよい。例えば、携帯端末3において専用アプリケーションAPのGUIに表示されたボタンを押したときに指示光PLの照射を開始するようにしてもよい。
【0113】
(E)画像取得センサー33は、測定位置画像、プレビュー画像を取得時に、これら画像に含まれる物体の動きベクトルを検出する機能を有していてもよい。
【0114】
(F)携帯端末3の手ぶれの検出を、測定位置画像、プレビュー画像を用いた動きベクトルの検出により実行してもよい。例えば、単位時間あたりの動きベクトルの長さが所定の長さ以上であったら、携帯端末3の手ぶれがあったと判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、離れた測定位置の物理量を非接触で測定しつつ、当該測定位置を含む画像を取得し、当該画像に物理量の測定結果を重畳して表示するシステム及び装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0116】
100、200 測定システム
300 測定装置
1 放射温度計
C1 第1筐体
11 赤外線センサー
13 光源
15 制御部
17 レンズ
3 携帯端末
C2 第2筐体
31 CPU
32 通信インタフェース
33 画像取得センサー
34 記憶装置
35 表示装置
36 手ぶれ検出センサー
37 GPS受信機
41 検出部
42 測定結果画像生成部
43 拡大画像生成部
44 距離推定部
45 類似度判定部
46 場所特定部
47 第1監視部
48 第2監視部
5 固定器具
51 第1主面
53 ハンドル
61 CPU
62 画像取得センサー
63 光源
64 赤外線センサー
65 記憶装置
66 手ぶれ検出センサー
67 GPS受信機
68 表示装置
69 通信インタフェース
AP 専用アプリケーション
IR 赤外線
O 物体
OS オペレーティングシステム
PL 指示光
RI 測定結果画像