(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230823BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230823BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230823BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230823BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L23/08
C08K3/04
C08K3/013
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2021575624
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044433
(87)【国際公開番号】W WO2021157166
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020016338
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】馬場 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-524404(JP,A)
【文献】特開2008-138132(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076135(WO,A1)
【文献】特開2007-118416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67
C08L23
C08L33
C08K3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物からなり、JIS-Z-8781-4によるL*値が10以下であり、キセノンウェザーメーターによりSAE-J2527に準拠した500hr処理後のJIS-Z-8741による60°光沢度が80%以上である自動車外装部品用成形品であって、
前記自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物が、少なくとも、熱可塑性ポリエステル樹脂A、ポリオレフィン系エラストマーB及びカーボンブラックCを含有し、
該ポリオレフィン系エラストマーBの含有量が、該熱可塑性ポリエステル樹脂A100質量部に対して4~10質量部であり、該カーボンブラックCの添加量が該熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し0.1~15質量部であり、
該ポリオレフィン系エラストマーBが、
エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体であり、少なくとも、
エチレン由来の構成単位及び
グリシジルメタクリレート由来の構成単位を有
し、該グリシジルメタクリレート由来の構成単位が、該共重合体100質量部に対する割合として8~15質量部である自動車外装部品用
成形品(ただし、非極性α-オレフィン単量体と極性ビニル系単量体とから形成される共重合体セグメント5~99重量%と、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系(共)重合体セグメント1~95重量%とからなるグラフト共重合体を含む樹脂組成物からなる自動車外装部品用成形品も、カルボジイミド化合物を含む樹脂組成物からなる自動車外装部品用成形品も除く)。
【請求項2】
前記のカーボンブラックCの1次粒子径が10~20nmかつ窒素吸着比表面積が100m
2/g以上であり、該カーボンブラックCの添加量が前記熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し0.5~10質量部である請求項1記載の自動車外装部品用
成形品。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂Aがポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである請求項1又は2記載の自動車外装部品用
成形品。
【請求項4】
さらに無機充填剤が添加された請求項1~3いずれかに記載の自動車外装部品用
成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装部品用のポリエステル樹脂組成物及び成形体に関し、詳しくは、優れた機械物性、流動性を維持しながら、優れた耐候性を有する自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の自動車部品その他の電装部品、太陽電池のバックシート、機械部品等に広く用いられている。
【0003】
一般に耐候性を向上させる手段として、紫外線吸収剤や光安定剤の添加、酸化チタンや硫酸バリウム等の光反射剤の添加、カーボンブラック等の光吸収剤の添加等が知られている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-188105号公報
【文献】特開2011-77250号公報
【文献】特開2016-166282号公報
【文献】特開2002-302595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車用部品では、軽量化や意匠性、量産性などの理由で金属から樹脂に代替が進んでいる。自動車部品の中でも機構部品などは強度や耐衝撃性、靭性といった機械特性が必要なことからポリエステル樹脂が使用されてきたが、外装部品に使用される場合は耐候性なども必要となる。しかし、近年自動車の耐久寿命が延びており前述の添加剤による耐候性の改善では機械特性と両立させることが十分ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、衝撃破壊、引張破壊に対する強度が高くさらに耐候性に優れる自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくとも、熱可塑性ポリエステル樹脂A、ポリオレフィン系エラストマーB及びカーボンブラックCを含有し、該ポリオレフィン系エラストマーBが、エポキシ基含有オレフィン系共重合体であり、少なくとも、α-オレフィン由来の構成単位及びα,β-不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位を有する自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物。
2. 前記のカーボンブラックCの1次粒子径が10~20nmかつ窒素吸着比表面積が100m2/g以上であり、該カーボンブラックCの添加量が前記熱可塑性ポリエステル樹脂A100質量部に対し0.5~10質量部である前記1記載の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物。
3. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂Aがポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである前記1又は2記載の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物。
4. さらに無機充填剤が添加された前記1~3いずれかに記載の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物。
5. 前記1~4いずれかに記載の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物からなる自動車外装部品用成形品であり、JIS-Z-8781-4によるL*値が10以下であり、キセノンウェザーメーターによりSAE-J2527に準拠した500hr処理後のJIS-Z-8741による60°光沢度が80%以上である自動車外装部品用成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械特性に優れさらに耐候性に優れる自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の圧入評価のための試料および測定装置の概観である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物は、少なくとも、熱可塑性ポリエステル樹脂A、ポリオレフィン系エラストマーB及びカーボンブラックCを含有し、該ポリオレフィン系エラストマーBが、エポキシ基含有オレフィン系共重合体であり、少なくとも、α-オレフィン由来の構成単位及びα,β-不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0011】
<熱可塑性ポリエステル樹脂A>
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂A(以下ポリエステル樹脂Aともいう)は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル樹脂は、通常、飽和ポリエステル樹脂、特に芳香族飽和ポリエステル樹脂が含まれる。
【0012】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数4~40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数4~14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8~12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸、4,4′-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8~16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。
【0013】
これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0014】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が含まれる。
【0015】
ジオール成分には、例えば、脂肪族アルキレンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素数2~12程度の脂肪族グリコール、好ましくは炭素数2~10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2~4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど]、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)などが挙げられる。
【0016】
また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。
【0017】
これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0018】
好ましいジオール成分には、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)、繰返し数が2~4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール[ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシ-C2-4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
【0019】
オキシカルボン酸には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸などのオキシカルボン酸又はこれらの誘導体などが含まれる。
【0020】
ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトンなど)などのC3-12ラクトンなどが含まれる。
【0021】
好ましいポリエステル樹脂Aには、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレートを主成分(例えば、50~100質量%、好ましくは75~100質量%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50質量%以上)として含有するコポリエステル]が含まれる。
【0022】
特に好ましいポリエステル樹脂Aには、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレート樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)やエチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエチレンテレフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル)が含まれる。なお、これらのポリエステル樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
また、コポリエステルにおいて、共重合可能な単量体としては、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコールなど)、繰返し数が2~4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシ-C2-4アルキレン)単位を含むグリコールなど)、脂環族ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールなど)、芳香族ジオール[2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパンなど]、C6-12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸など)、オキシカルボン酸(オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸など)などが挙げられる。
【0024】
なお、ポリエステル樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、架橋されていてもよい。また、液晶ポリエステルであってもよい。
【0025】
ポリエステル樹脂は、慣用の方法、例えば、エステル交換法、直接エステル化法などにより製造できる。
【0026】
<ポリオレフィン系エラストマーB>
本発明のポリオレフィン系エラストマーBは、エポキシ基含有オレフィン系共重合体であり、少なくとも、α-オレフィン由来の構成単位及びα,β-不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0027】
一般的にエラストマーを添加することで耐衝撃性や靭性が改善されるが前記ポリオレフィン系エラストマーは耐候性にも優れている。なお、本発明のポリオレフィン系エラストマーBを用いることで、自動車外装部品において要求される組み付け性も向上させることができる。ここでいう組み付け性とは自動車部品の組み立てなどで広く使用されている圧入やスナップフィット、ネジ止めによる締結性などを指す。この組み付け性は耐衝撃性や靭性と単純に相関するものではなく、強度やウェルド特性などの要因が複合的に影響する指標である。
【0028】
α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等のC2~4のオレフィンを使用することができ、エチレン、プロピレンであることが好ましい。α,β-不飽和酸グリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートを使用することが好ましい。その他、C1~12の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の第3成分を共重合させてもよい。
【0029】
オレフィン及びグリシジルエステルは、共重合体中それぞれ30~90モル%。70~10モル%の範囲で調整することができ、第3成分は0~30モル%の範囲を含有させることができる。
【0030】
本発明では特に、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体であることが好ましい。
エチレンに対するグリシジルメタクリレートの割合は特に制限されるものではないが、共重合体の変性部位を各単量体質量に換算し、共重合体100質量部に対する割合として1~30質量部、好ましくは3~20質量部、更に好ましくは8~15質量部の範囲が好ましい。
【0031】
本発明のポリオレフィン系エラストマーBは、熱可塑性ポリエステル樹脂A100質量部に対して1~20質量部含有させることができ、好ましくは2~15質量部、さらに好ましくは4~10質量部である。
【0032】
<カーボンブラックC>
本発明のカーボンブラックCは、1次粒子径が5~40nm、好ましくは10~20nmであり、かつ窒素吸着比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックである。そして、当該カーボンブラックを、熱可塑性ポリエステル樹脂A100質量部に対して0.1~15質量部含有することができ、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0033】
なお、本発明における1次粒子径はカーボンブラックを溶媒中投入し超音波振動にて分散させた後、分散試料を支持膜に固定し、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で写真撮影し、直径より粒子径を計測(1000個以上)、それらの値の算術平均により1次粒子径を求めた。
【0034】
カーボンブラックは、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ボーンブラックなどを使用することができ、好ましくはファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックである。
【0035】
<無機充填材>
本発明の成形品において、耐熱性及び機械強度を向上させるために無機充填材を含有することが好ましい。無機充填材の種類は、本願の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えばガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、シリカ、タルク、マイカ等が挙げられ、ガラス繊維が特に好ましい。ガラス繊維の繊維長(溶融混練などにより組成物に調製する前の状態)は1~10mmのものが好ましく、ガラス繊維の直径は5~20μmのものが好ましい。
【0036】
本発明において、無機充填材は、耐熱性及び機械強度を向上させる観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂A100質量部に対して20~200質量部含むことが好ましく、30~150質量部含むことがより好ましく、40~120質量部含むことが特に好ましい。
【0037】
<他の成分>
本発明においては、本発明の効果を害さない範囲で、上記各成分の他、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤等を配合してもよい。
【0038】
<成形品>
本発明の成形品は、以上説明した自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物を成形してなる。本発明の成形品を作製する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、上記のような樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【0039】
本発明の成形品は、自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物からなる自動車外装部品用成形品であり、JIS-Z-8781-4によるL*値が10以下であり、キセノンウェザーメーターによりSAE-J2527に準拠した500hr処理後のJIS-Z-8741による60°光沢度が80%以上であることを特徴とする。本発明の自動車外装部品用ポリエステル樹脂組成物からなる自動車外装部品用成形品であれば、前記の特性を得ることができる。
【0040】
前記の60°光沢度は、キセノンウェザーメーターによる処理前の時点で90%以上であることが好ましい。また、前記のL*値はキセノンウェザーメーターによるSAE-J2527に準拠した500hr処理後の時点で24以下であることが好ましい。
【0041】
また本発明の成形品は、組付けやすさにおいても優れた特性を有している。特に他の成形品への挿入時には、発生する変位に対して十分な強度を有する。組付け性は、スナップフィットや樹脂クリップなど最大変形時に破壊しないことや、挿入時の強度が低いことが求められる。またネジ止めによる締結では、ネジ穴部でウェルド割れがしない強度などが求められる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<材料>
A ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET):Indorama Polymers
Public Company Limited社製
B1 エチレン-グリシジルメタクリレート樹脂:住友化学社製 ボンドファーストE
B2 アイオノマー樹脂:三井・デュポン ポリケミカル社製 ハイミラン 1707
B3 ポリエステルエラストマー:東洋紡績社製 ペルプレンP-65C
B4 コアシェルエラストマー:ダウ・ケミカル日本製 パラロイド EXL2314
B5 無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂 三井化学社製 NタフマーMP0610B6 MBS樹脂:カネカ社製 カネカエースM711
C カーボンブラック:三菱ケミカル社製 #960
D ガラス繊維:日本電気硝子製 ECS03T―127
E エポキシ樹脂:三菱ケミカル社製 エピコートJER1004K
F タルク:日本タルク社製 3A
G 酸化防止剤:BASFジャパン社製 イルガノックス1010
H 滑剤:理研ビタミン社製 リケマールB74
【0044】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造>
上記の材料を以下の表1及び2に示す割合(単位は質量部)でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)にホッパーから供給して280℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0045】
<評価>
評価は以下の通り行った。結果を表1及び2に示す。なお特に断りの無い限り測定は、23℃50%RH雰囲気下で行った。
≪引張特性≫
ISO527-1,2に定められている評価基準に従い、引張強さ、引張破壊ひずみを評価した。
≪曲げ破壊ひずみ≫
ISO178に定められている評価基準に従い、曲げ破壊ひずみを評価した。
≪シャルピー衝撃強さ≫
ISO179に定められている評価基準に従い、シャルピー衝撃強さを評価した。
【0046】
≪光沢及びL*値≫
SAE2527に準拠し、ATLAS社製スーパーキセノンウェザーメーターで500hr処理を行った試料について、光沢とL*値を測定した。
(光沢)
日本電色工業(株)製、反D時グロスメータPG-II(60°)を用いてJIS-Z-8741に準拠して測定した。
(色相)
スガ試験機社製のSM-P型カラーコンピューターを用いてJIS-Z-8781-4に準拠しL*値を測定した。
【0047】
【0048】
【0049】
<評価結果>
結果を表3及び4に示す
【0050】
【0051】
【0052】
表3及び4に示すように、本発明では、衝撃破壊、引張破壊に対する強度が高くさらに耐候性に優れることが判る。
【0053】
≪圧入試験≫
表5に記載の試料について、外径4mm、内径1.8mmの筒状の成形片(
図1および2参照)を成形し、先端角21°、直径Φ8のテーパーピンを用い、島津製作所性万能試験機オートグラフを用いて、2mm/min圧入し、成形片の破壊強度、破壊時の変位を測定した(
図1参照)。また、組付けやすさ(挿入のしやすさ)として変位0.2mmでの強度値を測定した。下記基準により判断した。
(破壊時の変位)
〇:0.4mm以上
×:0.4mm未満
(破壊強度)
〇:100N以上
×:100N未満
(挿入力)
〇:50N以下
×:50Nを超える
【0054】
【0055】
図2は、実施例2と比較例1の荷重-変位曲線を示す。本発明では圧入に対して高い強度を有しており、挿入時の強度が低いため挿入しやすいことが判る。