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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】樹脂製枠体付きガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20230824BHJP
   B60J 1/10 20060101ALI20230824BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20230824BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B60J1/00 M
B60J1/10 C
B29C45/16
B29C45/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021537699
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028540
(87)【国際公開番号】W WO2021024819
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019145980
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和浩
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-195434(JP,A)
【文献】特開平08-001711(JP,A)
【文献】特開2005-153830(JP,A)
【文献】特開2003-011157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60J 1/10
B29C 45/16
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法において、
前記ガラス板の周縁部近傍を金型で挟持し、前記金型の内面と前記ガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、
中空部を備え、かつ、前記中空部にサポート部材が挿入された中空モールを、前記ガラス板と離間し、かつ少なくとも一部が前記金型のキャビティ空間に露出するように配置し、
前記金型の前記キャビティ空間に樹脂材料を射出し、前記樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、前記中空モールと前記ベース部材と前記ガラス板とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板を製造し、
前記樹脂製枠体付きガラス板を前記金型から取り出し、
前記中空モールの前記中空部に挿入された前記サポート部材を、前記中空部から取り外す、
樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記中空モールにおいて、前記金型のキャビティ空間に露出する面に接着剤が塗布される、請求項1に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記中空モールは、筒状であり、かつ長尺状の部材であり、
前記中空モールの少なくとも一方の端面には、前記中空モールの前記中空部と連通する開口部を有している、請求項1または2に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記サポート部材は、前記中空モールよりも硬度が大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項5】
ガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法において、
前記ガラス板の周縁部近傍を第1金型で挟持し、前記第1金型の内面と前記ガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、
前記第1金型のキャビティ空間に第1樹脂材料を射出し、前記第1樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、前記ベース部材と前記ガラス板とが一体となるベース部材付きガラス板を製造し、
前記ベース部材の少なくとも一部を含む、前記ベース部材付きガラス板の周縁部近傍を第2金型で挟持し、前記第2金型の内面と前記ベース部材付きガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、前記第2金型のキャビティ空間に第2樹脂材料を射出し、前記第2樹脂材料を固化せて中空部を備える中空モールを形成し、前記中空モールと前記ベース部材と前記ガラス板とが一体となる前記樹脂製枠体付きガラス板を製造し、
前記樹脂製枠体付きガラス板を前記第2金型から取り出す、
樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記中空モールの前記中空部は、前記中空部の形状に対応するサポート部材を前記第2金型に配置した後、前記第2金型のキャビティ空間に射出された前記第2樹脂材料を固化し、次いで前記サポート部材を取り除くことで製造される、請求項5に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記中空モールの少なくとも一方の端面には、前記中空モールの前記中空部と連通する開口部を有している、請求項6に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記サポート部材は、前記中空モールよりも硬度が大きい、請求項6または7に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記中空モールの前記中空部は、前記第2金型のキャビティ空間に射出された前記第2樹脂材料が固化する前に、前記第2金型のキャビティ空間に気体を注入し、次いで前記第2樹脂材料を固化させることにより製造される、請求項5に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項10】
ガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法において、
前記ガラス板の周縁部近傍を第1金型で挟持し、前記第1金型の内面と前記ガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、
前記第1金型のキャビティ空間に第1樹脂材料を射出し、前記第1樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、前記ベース部材と前記ガラス板とが一体となるベース部材付きガラス板を製造し、
前記ベース部材の少なくとも一部を含む、前記ベース部材付きガラス板の周縁部近傍を第2金型で挟持し、前記第2金型の内面と前記ベース部材付きガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、
前記第2金型のキャビティ空間に少なくとも一部に発泡樹脂材料を含む第2樹脂材料を射出し、前記第2樹脂材料を固化させてモールを形成し、前記モールと前記ベース部材と前記ガラス板とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板を製造し、
前記樹脂製枠体付きガラス板を前記第2金型から取り出す、
樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記第2樹脂材料には、発泡剤が混練されている、請求項10に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記発泡剤は、化学発泡剤である、請求項11に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【請求項13】
前記第2樹脂材料が固化する前に、前記第2金型のキャビティ空間に形成された注入口から、前記第2樹脂材料に気体を注入し、前記モールに中空部が形成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製枠体付きガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の窓として、周縁部に樹脂製の部材が設けられたガラス板が種々提案されている。例えば、特許文献1には、周縁部に樹脂部材が設けられたガラス板と、この樹脂部材に固定される中空モールと、を備えるガラス板モジュールが開示されている。ガラス板モジュールに隣接するドアが閉じられた際、ドアの荷重により中空モールが変形する。なお、中空モールの内部には、中空部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/131641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、両面テープにより、樹脂部材と中空モールとが取り付けられる。しかしながら、中空モールが変形しやすいため、両面テープでは精度良く取り付けることが難しい場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、取り付け精度が高い樹脂製枠体付きガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様のガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法は、ガラス板の周縁部近傍を金型で挟持し、金型の内面とガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、中空部を備え、かつ、中空部にサポート部材が挿入された中空モールを、ガラス板と離間し、かつ少なくとも一部が金型のキャビティ空間に露出するように配置し、金型のキャビティ空間に樹脂材料を射出し、樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、中空モールとベース部材とガラス板とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板を製造し、樹脂製枠体付きガラス板を金型から取り出し、中空モールの中空部に挿入されたサポート部材を、中空部から取り外す。
【0007】
第2態様のガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法は、ガラス板の周縁部近傍を第1金型で挟持し、第1金型の内面とガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、第1金型のキャビティ空間に第1樹脂材料を射出し、第1樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、ベース部材とガラス板とが一体となるベース部材付きガラス板を製造し、ベース部材の少なくとも一部を含む、ベース部材付きガラス板の周縁部近傍を第2金型で挟持し、第2金型の内面とベース部材付きガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、第2金型のキャビティ空間に第2樹脂材料を射出し、第2樹脂材料を固化せて中空部を備える中空モールを形成し、中空モールとベース部材とガラス板とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板を製造し、樹脂製枠体付きガラス板を第2金型から取り出す。
【0008】
第3態様のガラス板の周縁部に樹脂製の枠体を有し、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板の製造方法は、ガラス板の周縁部近傍を第1金型で挟持し、第1金型の内面とガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、第1金型のキャビティ空間に第1樹脂材料を射出し、第1樹脂材料を固化させてベース部材を形成し、ベース部材とガラス板とが一体となるベース部材付きガラス板を製造し、ベース部材の少なくとも一部を含む、ベース部材付きガラス板の周縁部近傍を第2金型で挟持し、第2金型の内面とベース部材付きガラス板の周縁部との間にキャビティ空間を形成し、第2金型のキャビティ空間に少なくとも一部に発泡樹脂材料を含む第2樹脂材料を射出し、第2樹脂材料を固化させてモールを形成し、モールとベース部材とガラス板とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板を製造し、樹脂製枠体付きガラス板を第2金型から取り出す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂製枠体付きガラス板を高い取り付け精度で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は樹脂製枠体付きガラス板の正面図である。
図2図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、第1実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図4図4は、第1実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図5図5は、第2実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図6図6は、第2実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図7図7は、第3実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図8図8は、第3実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図9図9は、第4実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
図10図10は、第4実施形態の樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の手順の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る樹脂製枠体付きガラス板の製造方法の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、方向、位置を表わす「上(U)」、「下(D)」、「前(F)」、「後(R)」、「内(In)」、及び「外(Out)」は、樹脂製枠体付きガラス板が車両に取り付けられた際の方向、位置を意味する。
【0012】
図1は、樹脂製枠体付きガラス板の製造方法により製造される樹脂製枠体付きガラス板の一実施形態を示す平面図である。図2は、図1の2-2線に沿う断面図である。
【0013】
図1に示されるように、車両に取り付けられる樹脂製枠体付きガラス板10は、ガラス板12と、樹脂製枠体14とを含んでいる。樹脂製枠体14は、ガラス板12の周縁部に取り付けられるベース部材16と、ベース部材16に取り付けられる中空モール18と、を含んでいる。
【0014】
ガラス板12は、取り付けされる車両の窓枠の形状に対応した形状を有する。平面視において、ガラス板12の形状は限定されない。平面視とは、ガラス板12の対向する主面の一方から見た場合を意味する。
【0015】
ベース部材16は、ガラス板12の全周縁部を取り囲むように取り付けられる。なお、本明細書において、ベース部材16とは、ガラス板12の周縁部に取り付けられて、車両の窓枠と隙間を塞ぐガスケット、モールディング、ウェザーストリップ等を意味する。ベース部材16は、ガラス板12の全周縁部又は一部の周縁部に設けられてもよい。
【0016】
中空モール18はベース部材16の少なくとも一部に取り付けられる。中空モール18は、樹脂製枠体付きガラス板10が車両に取り付けられた際、車両のドア(不図示)と隣接する位置に取り付けられ、ドアと中空モール18とは接触する。図1では、中空モール18は、ベース部材16において、ガラス板12の一辺に対応する部分に沿って取り付けられる。なお、樹脂製枠体付きガラス板10は、車両のドアと隣接する位置ではなくてもよい。樹脂製枠体付きガラス板10はルーフガラスであってもよい。樹脂製枠体付きガラス板10がルーフガラスである場合、中空モール18は、樹脂製枠体付きガラス板10がルーフパネルに接触する位置に取り付けられる。
【0017】
図2に示されるように、ガラス板12は、車外の側に面する第1面12Aと、車内の側に面する第2面12Bと、第1面12Aと第2面12Bとを繋ぐ端面12Cと、で構成される。第1面12Aと第2面12Bとが、対向する主面を構成する。
【0018】
ベース部材16は、ガラス板12の周縁部に取り付けられる。周縁部はガラス板12との接着強度を確保する観点から、ガラス板12の端面12Cを基準に、ガラス板12の内側に3mm以上50mm以下の範囲であることが好ましい。また、ガラス板12とベース部材16とを一体成形する際のガラス板12の破損等を考慮すると、周縁部はガラス板12の端面12Cを基準に、ガラス板12の内側に3mm以上10mm以下の範囲であると、より好ましい。ベース部材16は、断面視で、第2面12Bに接する部分と端面12Cに接する部分を有する。ベース部材16は、ガラス板12に対し2つの面で接触する略L字形状を有する。ベース部材16の形状は、特に限定されない。例えば、第1面12Aと端面12Cと第2面12Bのそれぞれに接する部分を有することができる。この場合、ベース部材は、ガラス板に対し3面で接触する略U字形状になる。ガラス板12とベース部材16とは、後述するように、一体成形される。
【0019】
図2に示されるように、樹脂製枠体付きガラス板10において、中空モール18は、ベース部材16に取り付けられる。中空モール18は、ベース部材16に対し2つの面で接触する。中空モール18は、ベース部材16の車内側の面、および、ベース部材16のガラス板12の端面12Cに接する面と反対の面で接する。なお、中空モール18とベース部材16とが接触する態様は、特に限定されない。中空モール18は、ベース部材16に対し3つの面で接触していてもよいし、1つの面でのみ接触していてもよい。すなわち、中空モール18は、ベース部材16の車内側の面、および、ベース部材16のガラス板12の端面12Cに接する面と反対の面、ベース部材16の車外側の面、の3つの面のいずれか1つの面と接触していればよい。
【0020】
中空モール18の内部に、中空モール18の長さ方向に沿う中空部20が形成される。
【0021】
中空モール18は中空部20を備える中空構造である。中空モール18が内部に中空部20を備えるので、荷重(例えば、ドアとの接触において)が加えられると中空モール18の中空部20が潰れ、中空モール18は適度な反力を持って変形する。
【0022】
中空モール18とベース部材16とは、両面テープでの固定ではなく、後述するように、一体成形される。
【0023】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る樹脂製枠体付きガラス板の製造方法を、図面を参照して説明する。図3に示されるように、中空部20を有する中空モール18を準備する。中空モール18を構成する材料は限定されないが、例えば、材料としてEPDM((エチレン・プロピレン・ジエンゴム))系材料、発泡樹脂材料、熱可塑性エラストマー等を適用できる。
【0024】
次に、中空モール18の中空部20にサポート部材22が挿入される。サポート部材22は、中空部20が潰れるのを抑制し、荷重を受けた際の中空モール18が変形することを抑制する。サポート部材22は、中空モール18より大きい硬度を有することが好ましい。サポート部材22を構成する材料として、JIS Z 2244:2009で規定されるビッカース硬さ試験で得られるビッカース硬度(HV)が15以上であるアルミ等、または、JIS Z 2245:2016で規定されるロックウェル試験で得られるロックウェル硬度(Rスケール)が100以上である鉄等の金属や、硬質樹脂(エンジ二アリングプラスチック)等を適用できる。
【0025】
中空モール18は、サポート部材22を挿入するため、中空モール18の少なくとも一方の端面には、中空部20と連通する開口部を有している。中空モール18は、筒状であり、かつ長尺状の部材で構成される。筒状とは、内部に連続的に延びる中空部を有する形状を意味する。長尺状とは、長手方向に100mm以上の長さを有すること意味し、100mm以上400mm以下の長さであることが好ましい。
【0026】
次に、ガラス板12の周縁部近傍が金型30により挟持される。この実施形態では金型30は相対的に移動可能な上型30Aと下型30Bとで構成される。金型30の構成は特に限定されず、さらに別の型等を備えることもできる。ガラス板12の周縁部近傍は、ガラス板12において、ベース部材16を取り付ける位置を基準に、ガラス板12の内側の位置になる。
【0027】
ガラス板12にベース部材16を取り付ける領域に、事前に接着剤(プライマー)を塗布しておいてもよい。すなわち、接着剤は、ガラス板12の第2面12Bの周縁部と、ガラス板12の端面12Cの両方であってもよいし、第2面12Bと端面12Cのいずれか一方であってもよい。第1面12Aにもベース部材16が取り付けられる場合は、第1面12Aの周縁部にも接着剤を塗布してもよい。なお、ガラス板12にベース部材16を取り付ける領域に、接着剤(プライマー)を塗布しなくてもよい。
【0028】
ガラス板12は、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。ガラス板12は、耐傷付き性の観点から無機ガラスであることが好ましく、成形性の観点からソーダライムガラスであることが好ましい。ガラス板12がソーダライムガラスである場合、クリアガラス、鉄成分を所定量以上含むグリーンガラス及びUVカットグリーンガラスが好適に使用できる。また、ガラス板12としては、可視光線透過率を70%以下のプライバシーガラス(濃グレー色ガラスともいう)を用いてもよい。具体的には、ガラス板12において、Feに換算した全鉄の含有量を調整することで、ガラス板12の可視光線透過率を70%以下にできる。
【0029】
プライバシーガラスの組成の一例を挙げると、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO:66~75%、NaO:10~20%、CaO:5~15%、MgO:0~6%、Al:0~5%、KO:0~5%、FeO:0.13~0.9%、Feで表した全鉄:0.8%以上、2.4%未満、TiO:1%超、5%以下、を含有し、当該ガラス母組成の成分の合量に対して、CoOを100~500質量ppm、Seを0~70質量ppm、及びCrを0~800質量ppm含有し、かつCoO、Se及びCrの合量が0.1質量%未満である。
【0030】
なお、プライバシーガラスについては、例えば、国際公開第2015/088026号に詳細に述べられており、その内容は本明細書に参考として援用できる。
【0031】
無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0032】
強化ガラスは、例えば風冷強化ガラス等の物理強化ガラス、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させる等、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化できる。
【0033】
化学強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化できる。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板を用いてもよい。
【0034】
一方、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0035】
なお、ガラス板12が破損した際のガラス片の飛散を防止するために、ガラス板12の表面に飛散防止フィルムを貼着してもよい。
【0036】
ガラス板12の形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状及び曲率に加工された形状であってもよい。ガラス板12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ガラス板12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。ガラス板12が湾曲形状の無機ガラスである場合、ガラス板12は、フロート法による成形の後、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡500℃~700℃である。
【0037】
ガラス板12が湾曲している場合、一方向のみに湾曲した単曲形状であってもよいし、二方向以上に湾曲した複曲形状であってもよい。ガラス板12が湾曲している場合、車外側に向けて凸となるように湾曲していることが好ましい。ガラス板12が湾曲している場合、ガラス板12の曲率半径は1000mm以上100000mm以下であることが好ましい。
【0038】
ガラス板12の板厚は、0.3mm以上5.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以上3.0mm以下、0.7mm以上1.9mm以下が更に好ましい。
【0039】
ガラス12の第2面12Bには、周縁部に沿って帯状に形成される黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)を備えていてもよい。遮蔽層は、ガラス板12を自動車の車体に取り付けた際に、ベース部材16とガラス板12との間に塗布される接着剤を隠蔽する機能を有する。遮蔽層は、セラミックペーストをガラス12の表面に塗布した後に焼成することにより形成される。遮蔽層の厚みは3μm以上~15μm以下であることが好ましい。また、遮蔽層30の幅は特に限定されないが、20mm以上~300mm以下であることが好ましい。なお、ガラス12の第1面12Aの周縁部にも、同様の遮蔽層を形成していてもよい。
【0040】
なお、ガラス板12は、自動車に取り付けた場合に、車外側に位置する車外側ガラス板と車内側に位置する車内側ガラス板とが中間膜を介して接着されている合わせガラスとしてもよい。中間膜としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる中間膜のほか、特に耐水性が要求される場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いることができ、さらに、アクリル系光重合型プレポリマー、アクリル系触媒重合型プレポリマー、アクリル酸エステル・酢酸ビニルの光重合型プレポリマー、ポリビニルクロライド等も使用可能である。車外側ガラス板と車内側ガラス板は、ともに同じ組成、形状、厚みであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
金型30の内面とガラス板12の周縁部との間にキャビティ空間32が形成される。中空部20にサポート部材22を挿入した中空モール18が、ガラス板12と離間して配置される。中空モール18は、ガラス板12と離間し、かつ中空モール18の少なくとも一部が金型30のキャビティ空間32に露出するように、金型30に配置される。すなわち、キャビティ空間32の形状は、金型30の内面、ガラス板12、及び中空モール18により画定される。キャビティ空間32はベース部材16の形状に倣う形状を有する。
【0042】
中空モール18において、金型のキャビティ空間32に露出する面に接着剤(プライマー)が塗布されることが好ましい。接着剤は、後述する樹脂材料40から形成されるベース部材16と中空モール18との結合力を向上する。
【0043】
次に、図4に示されるように、金型30のキャビティ空間32に樹脂材料40が射出される。樹脂材料40がキャビティ空間32に充填される。樹脂材料40がキャビティ空間32で固化される。中空モール18にはサポート部材22が挿入されているので、中空モール18の中空部20は、キャビティ空間32に射出される樹脂材料40の圧力に抗して、変形しない。中空モール18は、樹脂材料40が射出され、固化されるまでの間、その形状を維持できる。
【0044】
樹脂材料40に使用できる材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があり、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニルとエチレンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、塩化ビニルとプロピレンのコポリマー、塩化ビニルとエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーの少なくとも1種又は2種以上の混合物をベースとして可塑剤等の添加剤を加えて軟質材料としてコンパウンドしたものであるが、他の熱可塑性樹脂をブレンドすることもできる。例えば塩素化ポリエチレン、ウレタン変性塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、液晶高分子、アクリル樹脂、NBR(ニトリゴム)又はSBR(スチレンブタジェンゴム)等のゴム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、ABS、(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)の少なくとも1種又は2種以上の混合物等が用いられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えばポリウレタンが挙げられる。
【0045】
樹脂材料40が固化され、ベース部材16が形成され、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板10が、金型30で製造される。
【0046】
次に、金型30が型開きされ、樹脂製枠体付きガラス板10が金型30から取り出される。
【0047】
最後に、中空モール18の中空部20に挿入されたサポート部材22が、中空モール18の開口部から取り出される。
【0048】
この実施形態では、射出成形により、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが射出成形で一体成形される。さらに、中空モール18は、樹脂材料40が射出、固化される間、その形状を維持する。こられにより、樹脂製枠体付きガラス板10を高い取り付け精度で製造できる。
【0049】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る樹脂製枠体付きガラス板の製造方法を、図面を参照して説明する。図5に示されるように、ガラス板12の周縁部近傍が第1金型50により挟持される。この実施形態では第1金型50は相対的に移動可能な上型50Aと下型50Bとで構成される。第1金型50の構成は特に限定されない。第1金型50の内面とガラス板12の周縁部との間にキャビティ空間52が形成される。キャビティ空間52の形状は、第1金型50の内面、及びガラス板12により画定される。キャビティ空間52はベース部材16の形状に倣う形状を有する。なお、ガラス板12は、第1実施形態のガラス板12と同様のガラス板を使用できる。
【0050】
次に、第1金型50のキャビティ空間52に第1樹脂材料60が射出される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52に充填される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52で固化される。第1樹脂材料60は、第1実施形態の樹脂材料40と同様の樹脂材料を適用できる。
【0051】
第1樹脂材料60が固化され、ベース部材16が形成され、ベース部材16とガラス板12とが一体となるベース部材付きガラス板11が第1金型50で製造される。
【0052】
次に、ベース部材付きガラス板11が第1金型50から取り出され、ベース部材16の少なくとも一部を含む、ベース部材付きガラス板11の周縁部近傍が第2金型70により挟持される。この実施形態では第2金型70は相対的に移動可能な上型70Aと下型70Bとで構成される。第2金型70は、この構成に限定されない。
【0053】
第2金型70の内面とベース部材付きガラス板11の周縁部との間にキャビティ空間72が形成される。第2実施形態では、第2金型70には、中空モール18の中空部20(図1参照)の形状に対応するサポート部材74が配置される。
【0054】
キャビティ空間72の形状は、第2金型70の内面、ベース部材16、及びサポート部材74により画定される。キャビティ空間72は中空モール18の形状に倣う形状を有する。サポート部材74は、中空モール18より大きい硬度を有することが好ましい。サポート部材74を構成する材料として、JIS Z 2244:2009で規定されるビッカース硬さ試験で得られるビッカース硬度(HV)が15以上であるアルミ等、または、JIS Z 2245:2016で規定されるロックウェル試験で得られるロックウェル硬度(Rスケール)が100以上である鉄等の金属や、硬質樹脂(エンジ二アリングプラスチック)等を適用できる。
【0055】
図6に示されるように、第2金型70のキャビティ空間72に第2樹脂材料62が射出される。第2樹脂材料62がキャビティ空間72に充填される。第2樹脂材料62がキャビティ空間72で固化される。第2樹脂材料62に使用できる材料として、材料としてEPDM((エチレン・プロピレン・ジエンゴム))系材料、発泡樹脂材料、熱可塑性エラストマー等を適用できる。
【0056】
次に、第2金型70からサポート部材74が取り除かれる。これにより中空部20を備える中空モール18が形成され、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板10が、第2金型70で製造される。なお、中空モール18の少なくとも一方の端面には、中空モール18の中空部20と連通する開口部を有しているので、開口部からサポート部材74を取り出しできる。
【0057】
最後に、第2金型70が型開きされ、樹脂製枠体付きガラス板10が第2金型70から取り出される。
【0058】
この実施形態では、射出成形により、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが射出成形で一体成形される。中空モール18は第2金型70にサポート部材74を配置して第2樹脂材料62を、射出、固化することにより、第2金型70で形成される。これらにより、樹脂製枠体付きガラス板10を高い取り付け精度で製造できる。
【0059】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る樹脂製枠体付きガラス板の製造方法を、図面を参照して説明する。図7に示されるように、ガラス板12の周縁部近傍が第1金型50により挟持される。この実施形態では第1金型50は相対的に移動可能な上型50Aと下型50Bとで構成される。第1金型50の構成は特に限定されない。第1金型50の内面とガラス板12の周縁部との間にキャビティ空間52が形成される。キャビティ空間52の形状は、第1金型50の内面、及びガラス板12により画定される。キャビティ空間52はベース部材16の形状に倣う形状を有する。なお、ガラス板12は、第1実施形態のガラス板12と同様のガラス板を使用できる。
【0060】
次に、第1金型50のキャビティ空間52に第1樹脂材料60が射出される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52に充填される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52で固化される。第1樹脂材料60は、第1実施形態の樹脂材料40と同様の樹脂材料を適用できる。
【0061】
第1樹脂材料60が固化され、ベース部材16が形成され、ベース部材16とガラス板12とが一体となるベース部材付きガラス板11が第1金型50で製造される。
【0062】
次に、ベース部材付きガラス板11が第1金型50から取り出され、ベース部材16の少なくとも一部を含む、ベース部材付きガラス板11の周縁部近傍が第2金型80により挟持される。この実施形態では第2金型80は相対的に移動可能な上型80Aと下型80Bとで構成される。第2金型80は、この構成に限定されない。
【0063】
第2金型80の内面とベース部材付きガラス板11の周縁部との間にキャビティ空間82が形成される。キャビティ空間82の形状は、第2金型80の内面、及びベース部材16により画定される。キャビティ空間82は中空モール18の外形形状に倣う形状を有する。
【0064】
第3実施形態の第2金型80は、第2実施形態の第2金型70とは異なる構成を有する。第2金型80において、キャビティ空間82に気体を注入するために、キャビティ空間82に注入口84が形成される。この実施形態では、下型80Bに注入口84が形成される。注入口84は、上型80Aに形成することもできる。
【0065】
図8に示されるように、第2金型80のキャビティ空間82に第2樹脂材料62が射出される。第2樹脂材料62がキャビティ空間82に充填される。第2樹脂材料62として、第2実施形態と同様の材料を適用できる。
【0066】
次に、キャビティ空間82に充填された第2樹脂材料62が固化する前に、キャビティ空間82に気体(例えば、高圧気体のNガス)が注入口84から注入される。第2樹脂材料62の内部に気体86が充填される。内部に気体86を充填した状態で、第2樹脂材料62がキャビティ空間82で固化される。
【0067】
第2樹脂材料62が固化されると、中空部20を備える中空モール18が形成され、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板10が、第2金型80で製造される。
【0068】
最後に、第2金型80が型開きされ、樹脂製枠体付きガラス板10が第2金型80から取り出される。
【0069】
この実施形態では、射出成形により、中空モール18とベース部材16とガラス板12とが射出成形で一体成形される。中空モール18は、第2樹脂材料62を射出後、気体を注入し、固化することにより、第2金型80で形成される。これらにより、樹脂製枠体付きガラス板10を高い取り付け精度で製造できる。
【0070】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る樹脂製枠体付きガラス板の製造方法を、図面を参照して説明する。図9に示されるように、ガラス板12の周縁部近傍が第1金型50により挟持される。この実施形態では第1金型50は相対的に移動可能な上型50Aと下型50Bとで構成される。第1金型50の構成は特に限定されない。第1金型50の内面とガラス板12の周縁部との間にキャビティ空間52が形成される。キャビティ空間52の形状は、第1金型50の内面、及びガラス板12により画定される。キャビティ空間52はベース部材16の形状に倣う形状を有する。なお、ガラス板12は、第1実施形態のガラス板12と同様のガラス板を使用できる。
【0071】
次に、第1金型50のキャビティ空間52に第1樹脂材料60が射出される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52に充填される。第1樹脂材料60がキャビティ空間52で固化される。第1樹脂材料60は、第1実施形態の樹脂材料40と同様の樹脂材料を適用できる。
【0072】
第1樹脂材料60が固化され、ベース部材16が形成され、ベース部材16とガラス板12とが一体となるベース部材付きガラス板11が第1金型50で製造される。
【0073】
次に、ベース部材付きガラス板11が第1金型50から取り出され、ベース部材16の少なくとも一部を含む、ベース部材付きガラス板11の周縁部近傍が第2金型90により挟持される。この実施形態では第2金型80は相対的に移動可能な上型90Aと下型90Bとで構成される。第2金型90は、この構成に限定されない。
【0074】
第2金型90の内面とベース部材付きガラス板11の周縁部との間にキャビティ空間92が形成される。キャビティ空間92の形状は、第2金型90の内面、及びベース部材16により画定される。キャビティ空間92は中空モール18の外形形状に倣う形状を有する。
【0075】
図10に示されるように、第2金型90のキャビティ空間92に第2樹脂材料64が射出される。第2樹脂材料64がキャビティ空間92に充填される。第2樹脂材料64として、少なくとも発泡樹脂材料を含む樹脂材料が適用される。第2樹脂材料64には発泡剤が混練されていることが好ましい。例えば、発泡剤は射出装置に添加され、射出装置により樹脂材料と混練される。発泡剤は、物理発泡剤、または化学発泡剤のいずれも用いることが出来る。物理発泡剤とは、発泡剤が気化して生じる気体を利用して発泡させる化合物を意味する。例えば、物理発泡剤を混練した第2樹脂材料64がキャビティ空間92に射出された後、圧力が低下し、物理発泡剤は気泡を発生し発泡剤として機能する。第2樹脂材料64として、オレフィン系エラストマー樹脂材料、スチレン系エラストマー等を適用できる。また、化学発泡剤とは熱分解や化学反応により気体を発生する化合物を意味する。化学発泡剤として、有機系発泡剤では、アゾジカーボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等、無機系発泡剤では、炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機塩の混合物、炭酸水酸ナトリウム等を適用できる。なお、有機系発泡剤としては、分解温度とガス発生量からアゾジカーボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンが好ましい。また、無機系発泡剤としては、炭酸水酸ナトリウムが射出成形では好ましい。なお、本実施形態では、第2樹脂材料64として使用する樹脂の溶融温度で気化する発泡剤を適宜選択することが可能である、化学発泡剤を用いることが好ましい。
【0076】
第2樹脂材料64がキャビティ空間92で固化される。第2樹脂材料64が固化されると、複数の気泡を含むモール24が形成され、モール24とベース部材16とガラス板12とが一体となる樹脂製枠体付きガラス板13が、第2金型90で製造される。
【0077】
最後に、第2金型90が型開きされ、樹脂製枠体付きガラス板13が第2金型90から取り出される。モール24は複数の気泡を含むので、中空モール18と同様に、荷重が加えられると適度な反力を持って変形できる。
【0078】
この実施形態では、射出成形により、モール24とベース部材16とを含む樹脂製枠体26とガラス板13とが射出成形で一体成形される。モール24は、少なくとも発泡樹脂材料を含む第2樹脂材料64を射出、固化することにより、第2金型90で形成される。これらにより、樹脂製枠体付きガラス板13を高い取り付け精度で製造できる。
【0079】
第4実施形態において、キャビティ空間92に充填された第2樹脂材料64が固化する前に、第2金型のキャビティ空間92に形成された注入口(不図示)から第2樹脂材料64に気体を注入し、モール24に中空部が形成されてもよい。
【0080】
第1実施形態から第4実施形態で製造される樹脂製枠体付きガラス板の中空モール、又はモールの表面は、シボ加工されていることが好ましい。シボ加工された表面は、中空モール、又はモールが他の部材と密着することを抑制する。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことができる。
【0082】
なお、2019年8月8日に出願された日本特許出願2019-145980号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
【符号の説明】
【0083】
10、13 樹脂製枠体付きガラス板、11 ベース部材付きガラス板、12 ガラス板、12A 第1面、12B 第2面、12C 端面、14、26 樹脂製枠体、16 ベース部材、18 中空モール、20 中空部、22 サポート部材、24 モール、30 金型、30A 上型、30B 下型、32 キャビティ空間、40 樹脂材料、50 第1金型、50A 上型、50B 下型、52 キャビティ空間、60 第1樹脂材料、62、64 第2樹脂材料、70 第2金型、70A 上型、70B 下型、72 キャビティ空間、74 サポート部材、80 第2金型、80A 上型、80B 下型、82 キャビティ空間、84 注入口、86 気体、90 第2金型、90A 上型、90B 下型、92 キャビティ空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10