(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】基準板、校正用部材、光沢計、及び、基準板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/57 20060101AFI20230824BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G01N21/57
G01N21/01 A
(21)【出願番号】P 2019239257
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【氏名又は名称】小野 由己男
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 浩規
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-004403(JP,U)
【文献】特開2017-207288(JP,A)
【文献】特開昭63-100310(JP,A)
【文献】特開2010-127661(JP,A)
【文献】特開2017-026571(JP,A)
【文献】特開2011-234246(JP,A)
【文献】特開2011-234245(JP,A)
【文献】特開昭55-130565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00- G01N 21/61
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面上に形成され、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面と、
前記基板の表面上に形成され、前記第1光沢度よりも大きな光沢度を有しかつ第2面積を有する第2光沢度表面と、を備え、
前記基板の表面上において、1つの前記第1光沢度表面と1つの前記第2光沢度表面とは互いに隣接して配置され、
互いに隣接して配置された1つの前記第1光沢度表面と1つの前記第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が、前記基板の表面上において互いに隣接して配置され
る基準板を用いた光沢度の測定方法であって、
照射範囲に互いに隣接して配置された1つの前記第1光沢度表面と1つの前記第2光沢度表面との組を少なくとも二以上含むように検査光を照射するステップと、
前記照射範囲に前記検査光を照射することで発生する反射光を測定するステップと、
前記反射光の強度に基づいて前記基準板の光沢度を算出するステップと、
を備える、測定方法。
【請求項2】
前記第1光沢度表面は複数存在する、請求項1に記載の
測定方法。
【請求項3】
前記第2光沢度表面は複数存在する、請求項1又は2に記載の
測定方法。
【請求項4】
前記第1光沢度表面は、一辺が前記基板の一辺の長さと同じ長さを有し前記第1面積を有する矩形であり、
前記第2光沢度表面は、一辺が前記基板の一辺の長さと同じ長さを有し前記第2面積を有する矩形であり、
前記第1光沢度表面及び前記第2光沢度表面は、前記基板の一辺が延びる方向とは垂直な方向に並んで配置される、請求項1~3のいずれかに記載の
測定方法。
【請求項5】
前記基板の表面は大きい光沢度を有し、
前記第1光沢度表面は、前記基板の表面に形成された光を散乱する微小な凹凸を有し、
前記第2光沢度表面は、凹凸が少ない表面である、
請求項1~4のいずれかに記載の
測定方法。
【請求項6】
前記基板は、光学ガラス板、又は、金属板のいずれかである、請求項1~5のいずれかに記載の
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢度測定において光沢度の基準となる基準板、当該基準板を固定した校正用部材、当該基準板を固定した校正用部材と組み合わせて使用する光沢計、及び、当該基準板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象の表面の光沢度を測定する光沢計が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この光沢計は、測定対象の表面に検査光を照射したときに、当該表面にて検査光が反射することで発生する反射光の強度に基づいて、光沢度を算出する。この光沢計の校正は、JIS規格などの規格により光沢度が定まっている校正板により行われる。
【0003】
また、光沢計による実際の測定時には、校正板による光沢計の校正が適切に行われ、測定対象の表面の光沢度が適切に測定されているかを評価するために、例えば、校正板の光沢度とは異なるある程度既知の光沢度を有する市販の部材(例えば、市販の白色のタイル表面)の光沢度を測定する。上記部材の光沢度の測定値が、上記のある程度既知の光沢度に近い値を示していれば、光沢計が適切に校正され、光沢度を適切に測定できていると評価されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、市販の部材は、一般的に、測定対象となる表面の表面処理条件(例えば、塗装条件)が不明であること、また、表面処理条件にバラツキがあることから、信頼性が高い光沢度を有しているとは言えない。ここで、信頼性は高い光沢度とは、上記の校正板のように、部材毎に光沢度のバラツキが存在しないか、又は、バラツキがあったとしても所定の誤差範囲内であることを意味する。従って、市販の部材を用いた評価では、光沢計が適切に校正され光沢度を適切に測定できているとの評価結果の信頼性が低い。
【0006】
本発明の目的は、信頼性の高い任意の光沢度を有する基準板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る基準板は、基板と、第1光沢度表面と、第2光沢度表面と、を備える。第1光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する。第2光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度よりも大きい第2光沢度を有しかつ第2面積を有する。上記の基板の表面上において、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面とは互いに隣接して配置される。また、互いに隣接して配置された1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が、基板の表面上において互いに隣接して配置される。
上記の基準板では、基板の表面上において、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面と、第2光沢度を有しかつ第2面積を有する第2光沢度表面とが、互いに隣接して配置され、かつ、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が互いに隣接して配置されている。これにより、上記の基準板は、基準板の表面全体にわたってほぼ均一的に、第1面積、第2面積、第1光沢度、及び第2光沢度により決定される信頼性の高い任意の光沢度を有する。
【0008】
上記の基準板において、第1光沢度表面は複数存在する。これにより、基準板の表面全体において光沢度をほぼ均一とできる。
【0009】
上記の基準板において、第2光沢度表面は複数存在する。これにより、基準板の表面全体において光沢度をほぼ均一とできる。
【0010】
上記の基準板において、第1光沢度表面は、一辺が前記基板の一辺の長さと同じ長さを有し前記第1面積を有する矩形である。第2光沢度表面は、一辺が基板の一辺の長さと同じ長さを有し第2面積を有する矩形である。
また、第1光沢度表面及び第2光沢度表面は、基板の当該一辺が伸びる方向とは垂直な方向に並んで配置される。
これにより、基準板の表面において縞状に第1光沢度表面と第2光沢度表面が配置されるので、基準板の表面全体において光沢度をほぼ均一とできる。
【0011】
基板の表面は大きい光沢度を有する。この場合、第1光沢度表面は、当該基板の表面に形成された光を散乱する微小な凹凸を有する。一方、第2光沢度表面は、凹凸が少ない表面である。
これにより、基板の表面に第1光沢度表面に対応するよう微小な凹凸構造を形成するだけで、基準板を容易に製造できる。
【0012】
基板は、光学ガラス板、又は、金属板のいずれかである。これにより、特定の光沢度を有する基準板を容易に製造できる。
【0013】
本発明の他の見地に係る校正用部材は、光沢度を測定する測定部を有する光沢計の校正に用いる校正用部材である。校正用部材は、カバーと、基準板と、を備える。カバーは、光沢計において測定部と対向するよう装着可能である。基準板は、カバーにおいて、当該カバーが光沢計に装着されたときに測定部と対向する位置に固定される。
上記の基準板は、基板と、第1光沢度表面と、複数の第2光沢度表面と、を有する。第1光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する。第2光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度よりも大きい第2光沢度を有しかつ第2面積を有する。
上記の基板の表面上において、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面とは互いに隣接して配置される。また、互いに隣接して配置された1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が、基板の表面上において互いに隣接して配置される。
【0014】
上記の基準板では、基板の表面上において、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面と、第2光沢度を有しかつ第2面積を有する第2光沢度表面とが、互いに隣接して配置され、かつ、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が互いに隣接して配置されている。
これにより、上記の基準板は、基準板の表面全体にわたって均一的に、第1面積、第2面積、第1光沢度、及び第2光沢度により決定される任意の光沢度を有することとなる。その結果、この基準板を有する校正用部材を用いることで、任意の光沢度において信頼性の高い光沢計の校正を実行できる。
【0015】
本発明のさらなる他の見地に係る光沢計は、筐体と、測定部と、カバーと、基準板と、を備える。測定部は、筐体に設けられ、測定対象の光沢度を測定する。カバーは、筐体において測定部と対向するよう装着可能である。基準板は、カバーにおいて、カバーが筐体に装着されたときに測定部と対向する位置に固定される。
上記の基準板は、基板と、第1光沢度表面と、複数の第2光沢度表面と、を有する。第1光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する。第2光沢度表面は、基板の表面上に形成され、第1光沢度よりも大きい第2光沢度を有しかつ第2面積を有する。
上記の基板の表面上において、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面とは互いに隣接して配置される。また、互いに隣接して配置された1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が、基板の表面上において互いに隣接して配置される。
【0016】
上記の基準板では、基板の表面上において、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面と、第2光沢度を有しかつ第2面積を有する第2光沢度表面とが、互いに隣接して配置され、かつ、1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組により構成される複数の単位が互いに隣接して配置されている。
これにより、上記の基準板は、基準板の表面全体にわたって均一的に、第1面積、第2面積、第1光沢度、及び第2光沢度により決定される任意の光沢度を有することとなる。その結果、この基準板を有する光沢計では、任意の光沢度に対して適切に光沢計の校正を実行できる。
【0017】
上記の光沢計において、測定部による光沢度の測定対象範囲内には、互いに隣接して配置された1つの第1光沢度表面と1つの第2光沢度表面との組が少なくとも二以上含まれる。これにより、光沢計によって基準板の異なる位置で光沢度を測定しても、ほぼ同一の光沢度の測定結果を得ることができる。
【0018】
本発明のさらなる他の見地に係る基準板の製造方法は、以下のステップを備える。
◎第1光沢度よりも大きい第2光沢度を有する基板の表面上に、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面を、1つの第1光沢度表面が他の第1光沢度表面と互いに隣接しないよう形成するステップ。
これにより、第1光沢度を有する第1光沢度表面の第1面積と、第1光沢度よりも大きい第2光沢度を有する基板の表面上の残りの面積と、により定まる任意の光沢度を有する基準板を容易に製造できる。
【0019】
第1光沢度表面を形成するステップは、基板の表面をブラスト処理するステップ、基板の表面をエッチング処理するステップ、又は、前記基板の表面をフライス処理するステップのいずれかを含む。これにより、第1光沢度表面に対して光を散乱させる凹凸構造を形成して、容易に光沢度の小さい第1光沢度表面を形成できる。
【発明の効果】
【0020】
信頼性の高い任意の光沢度を有する基準板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】校正基準板又は基準板における測定対象範囲の例を示す図。
【
図7】第1光沢度表面と第2光沢度表面の辺の長さの定義を模式的に示す図。
【
図8】第1光沢度表面の面積比率が異なる基準板を模式的に示す図。
【
図9】第1光沢度表面の面積比率と基準板の光沢度との関係を表す図。
【
図10】単位表面の大きさと光沢計の測定対象範囲との関係を模式的に示す図。
【
図14】基準板のさらなる他の実施形態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態
(1)光沢計の構成
以下、
図1及び
図2を用いて、第1実施形態に係る基準板が使用される光沢計100を説明する。
図1は、光沢計の斜視図である。
図2は、光沢計内部の構成を示す図である。光沢計100は、測定対象の表面(以後、測定対象表面SUと呼ぶ)の光沢度を測定する装置である。本実施形態の光沢計100は、ユーザが把持して移動可能なポータブル型の光沢計であって、検査光L1(
図3)を測定対象表面SUに向けて照射し、検査光L1が当該表面で反射することで発生する反射光L2(
図3)の強度に基づいて光沢度を測定する。光沢計100で測定可能な測定対象としては、例えば、タイル、床、壁、机などの平面を有する物品がある。
【0023】
光沢計100は、筐体1と、測定部2と、表示部3と、制御部4と、バッテリー5と、第1操作部6と、保護カバー7を備える。筐体1は、光沢計100の本体を構成する。本実施形態において、筐体1は、ユーザが片手で把持できる大きさ及び形状を有している。すなわち、光沢計100は、ユーザが把持して移動させることで測定対象及び/又は測定位置を変更可能なポータブル型の測定装置である。
【0024】
測定部2は、筐体1の内部かつ底部BOに設けられ、筐体1の底部BOと接している測定対象表面SUの光沢度を算出するためのデータ(反射光L2の強度)を測定する。ユーザが筐体1を把持して移動させることで、光沢計100における測定対象の変更及び同一対象における測定位置の変更が容易となる。
【0025】
詳細な構成は後述するが、測定部2は、筐体1の底部BOと接している測定対象表面SUに向けて検査光L1を照射し、検査光L1が測定対象表面SUにて反射することで発生する反射光L2を検出する。光沢度は、測定部2により検出された反射光L2の強度に基づいて算出される。
【0026】
表示部3は、筐体1の上面に設けられ、光沢計100に関する各種情報を表示する。表示部3に表示される情報は、例えば、現在測定中の表面の光沢度、バッテリー5の残量、現在時刻、光沢計100の状態、などである。表示部3は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの薄型の表示装置である。
【0027】
制御部4は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROMなど)、各種インターフェースからなるコンピュータシステムであり、光沢計100の各構成要素(測定部2、表示部3、第1操作部、第2操作部など)を制御する。また、制御部4は、測定部2にて測定された反射光L2の強度に基づいて、測定対象表面SUの光沢度を算出し、表示部3に表示する。
なお、制御部4は、CPU、記憶装置、各種インターフェースを個別の構成要素として含むシステムであってもよいし、これらの全部又は一部を1チップに集積したSoC(System on Chip)であってもよい。バッテリー5は、光沢計100を動作させる電力の供給源である。
【0028】
第1操作部6は、筐体1の上面に設けられ、光沢計100の操作を行うための複数のボタンにより構成される。具体的には、第1操作部6は、光沢計100の各構成要素への電力供給を開始する電源ボタン61、光沢計100の校正を実行するための校正ボタン62を有する。その他、第1操作部6には、例えば、光沢度の測定値の保存、消去等を行うボタン、光沢計100の設定を行うためのボタン、などが設けられてもよい。
第1操作部6は制御部4に接続されており、第1操作部6の複数のボタンのいずれかが押されると、制御部4は、押されたボタンに対応した機能を実行する。
【0029】
保護カバー7は、筐体1の底部BOに装着可能な部材である。筐体1の底部BOに装着された場合、保護カバー7は、測定部2を外部から隔離し、測定部2の光学系(光照射部21、光検出部23)が塵埃により汚れてしまうことを防止すると共に、他の部材により接触して傷つくことを防止できる。
また、保護カバー7の内側(筐体1の底部BOと対向する面)であって、筐体1の底部BOに装着したときに測定部2と対向する位置には、校正基準板71が設けられている。校正基準板71は、JIS規格等で決められた基準となる光沢度を有する板状の部材であり、例えば、板状のホウケイ酸ガラス(例えばBK7、光沢度:90程度)である。
【0030】
保護カバー7を筐体1の底部BOに装着したとき、測定部2は、校正基準板71と対向する。すなわち、測定部2は、校正基準板71に検査光L1を照射し、検査光L1が校正基準板71にて反射されることで発生する反射光L2を検出できる。
従って、例えば、保護カバー7を筐体1の底部BOに装着した状態で測定部2により反射光L2の強度を測定中に校正ボタン62を押し、校正ボタン62を押したタイミングでの反射光L2の強度と校正基準板71の光沢度(例えば、90程度)とを関連付けて記憶することで、光沢計100を校正できる。
【0031】
上記の校正基準板71のみによる光沢計100の校正では、校正基準板71に近い光沢度を有する測定対象表面SUの測定に対しては適切に光沢計100の校正ができる一方で、校正基準板71とは光沢度が一定以上の差を有する測定対象表面SUの測定に対しては、校正基準板71による校正では適切な校正がなされない可能性がある。
従って、本実施形態の光沢計100は、校正基準板71が有する光沢度以外でも校正を可能とするために、校正基準板71とは光沢度が一定以上の差を有する校正用の部材を固定した予備カバー7'(カバーの一例)をさらに備えている。予備カバー7’は、筐体1の底部BOに装着可能な部材である。筐体1の底部BOに装着された場合、予備カバー7’の内側は筐体1の底部BOと対向する。
【0032】
予備カバー7'の底部BOと対向する内側であって、予備カバー7'を筐体1の底部BOに装着したときに測定部2と対向する位置には、校正基準板71とは光沢度が一定以上の差を有する部材(以降、基準板71’と呼ぶ)が固定されている。
【0033】
予備カバー7’を筐体1の底部BOに装着した状態で測定部2により反射光L2の強度を測定中に校正ボタン62を押し、校正ボタン62を押したタイミングでの反射光L2の強度と、当該予備カバー7’に固定された基準板71’の光沢度とを関連付けて記憶することで、この基準板71’が有する光沢度、すなわち、校正基準板71の光沢度とは一定以上の差がある光沢度の近傍において光沢計100を適切に校正できる。
【0034】
なお、予備カバー7'は複数存在してもよい。この場合、複数の予備カバー7'のそれぞれには、異なる光沢度を有する基準板71'が固定される。これにより、当該複数の予備カバー7'を用いてより多くの光沢度範囲にて光沢計100の校正を適正に行えるので、任意の測定対象表面SUの光沢度の測定に対して適切に光沢計100を校正できる。
なお、複数の予備カバー7'に設けられる基準板71'の光沢度は、それぞれが、一定の差を有する程度に異なっていることが好ましい。
【0035】
光沢計100は、上記の構成以外の他の構成を備えてもよい。具体的には、光沢計100は、第2操作部8を備えてもよい。第2操作部8は、筐体1の側面に設けられたボタンであり、第1操作部6を用いて実行できる機能以外の追加機能を制御部4に実行させることができる。例えば、第2操作部8を操作する(ボタンが押される)ことで、現在の光沢度の測定値を記憶できる。
【0036】
さらに、光沢計100は、外部接続端子9を備えてもよい。外部接続端子9は、外部の装置(例えば、コンピュータ)と光沢計100とを接続するための端子である。外部接続端子9を備えることで、例えば、外部の装置を用いて光沢計100を制御し、及び/又は、光沢計100に保存した光沢度の測定値を外部の装置に転送できる。外部接続端子9は、例えば、USB端子である。
【0037】
(2)測定部の具体的構成
次に、
図3を用いて、測定部2の具体的構成を説明する。
図3は、測定部の構成を示す図である。測定部2は、測定対象表面SUに検査光L1を照射したときに生じる反射光L2を検出する。具体的には、測定部2は、光照射部21と、光検出部23と、を有する。
光照射部21は、筐体1の底部BOの法線方向に対して角度αにて傾斜した状態で筐体1の内部に固定され、測定対象表面SUに検査光L1を照射する。筐体1の底部BOの法線方向に対して角度αにて傾斜した状態で固定されているので、光照射部21は、検査光L1を測定対象表面SUに入射角αにて入射する。
【0038】
光照射部21は、ある特定の波長若しくはある範囲の波長を有する光(例えば、800nm以上の波長を有する近赤外光)を発生させる発光ダイオードと、その光に適切な処理を施す機構(例えば、発光ダイオードから出力した光を平行光に変換して検査光L1とする平行レンズ)と、により構成される。
【0039】
光照射部21が上記の構成を有することで、光照射部21は、楕円形状(例えば、短径が3mmであり長径が6mm)の検査光L1を測定対象表面SUに照射できる。すなわち、本実施形態において、光沢度の測定範囲(以後、測定対象範囲MAと呼ぶ)は、測定対象表面SUのうち検査光L1が照射される上記楕円形状の範囲である。なお、この楕円形状の大きさ、すなわち測定対象範囲MAは、例えば、光照射部21と筐体1の底部BO(測定対象表面SU)との間の距離を調整することで調整できる。
【0040】
保護カバー7又は予備カバー7’を筐体1に装着したときに、光照射部21は、
図4に示すように、校正基準板71又は基準板71'の中心近傍の楕円形状の検査光L1を表面に照射する。すなわち、校正基準板71又は基準板71'における測定対象範囲MAは、校正基準板71又は基準板71'の中心近傍の楕円形状の範囲である。
図4は、校正基準板又は基準板における測定対象範囲の例を示す図である。
【0041】
光検出部23は、筐体1の底部BOの法線方向に対して角度βにて傾斜した状態で筐体1の内部に固定され、光照射部21により照射された検査光L1が測定対象表面SUにて反射されることで発生する反射光L2を検出する。筐体1の底部BOの法線方向に角度βにて傾斜した状態で固定されているので、光検出部23は、測定対象表面SUにおいて反射角βで反射した反射光L2を主に検出する。
光検出部23は、上記の光照射部21から照射された検査光L1が有する特定の波長若しくは波長範囲を検出可能な光検出器(上記の例であれば、例えば、近赤外光を検出するフォトダイオード)と、反射光L2に適切な処理を施す機構(例えば、光検出器の受光面に集光させる集光レンズ)と、により構成される。
【0042】
なお、光照射部21が筐体1に固定される角度αと光検出部23が筐体1に固定される角度βは等しく設定される(例えば、60°に設定される)。一般的に、入射光(本実施形態では検査光L1)の入射角と反射光(本実施形態では反射光L2)の反射角は等しくなるので、上記の角度αと角度βを等しくすることで、検査光L1の反射により発生した反射光L2を確実に検出できる。
【0043】
(3)基準板
以下、
図5及び
図6を用いて、上記にて説明した構成を有する光沢計100で用いられる基準板71'を説明する。
図5は、基準板の斜視図である。
図6は、基準板の上面図である。
図5及び
図6に示すように、基準板71'は、基板Bと、複数の第1光沢度表面73と、複数の第2光沢度表面75と、を備える。基板Bは、基準板71'全体を構成する板状部材である。基板Bは、例えば、ホウケイ酸塩クラウン光学ガラス(BK7)などの光学ガラス板、光沢のある金属板などである。すなわち、基板Bの表面は、凹凸が少なく平坦であり、光沢計100による測定対象となりうる測定対象表面SUが有する光沢度よりも大きな光沢度を有することが好ましい。
なお、本実施形態において、基板Bは、長辺と短辺とを有する長方形を有している。
図5及び
図6においては、基板Bの短辺方向をX方向とし、長辺方向をY方向として矢印で示す。また、基板Bにおいて第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とが形成された表面が、光沢計で測定される測定対象となる。
【0044】
複数の第1光沢度表面73は、基板Bの表面上に形成された、基板Bの表面の光沢度よりも小さい第1光沢度を有する表面である。具体的には、複数の第1光沢度表面73は、それぞれ、光を散乱させる微小な凹凸を有している。基準板71'の光沢度を光沢計で測定する場合、第1光沢度表面73は入射された検査光を微小な凹凸により散乱させるので、光沢計は第1光沢度表面73からの反射光をほとんど検出しない。この結果、第1光沢度表面73は、反射光の強度に基づいて光沢度を測定する光沢計にとっては、小さな光沢度を有する表面となる。
【0045】
検査光を散乱させる微小な凹凸を有する第1光沢度表面73は、例えば、基板Bの表面に対して微小粒子を噴射して当該表面に凹凸を形成するブラスト処理、又は、基板Bの表面を化学反応により腐食させて凹凸を形成する化学エッチングにより形成できる。
その他、「フライス」と呼ばれる多数の刃を持つ工具で表面の切削加工を行うフライス加工によっても第1光沢度表面73を形成できる。
【0046】
複数の第2光沢度表面75は、好ましくは光沢計100による測定対象となりうる測定対象表面SUが有する光沢度よりも大きく、上記の複数の第1光沢度表面73の光沢度よりも大きな第2光沢度を有する表面である。本実施形態において、複数の第2光沢度表面75は、光沢度が大きい基板Bの表面と同じ光沢度を有する。すなわち、複数の第2光沢度表面75は、基板Bの表面全体のうち、基板Bの表面に凹凸を形成する処理により複数の第1光沢度表面73を形成した残りの部分に対応する。より具体的には、複数の第2光沢度表面75は、基板Bの表面をそのまま利用して形成される。
【0047】
このように、複数の第2光沢度表面75を、第1光沢度表面73と比較して凹凸(微小なもの、比較的なだらかなものを含む)が少なく、好ましくは測定対象表面SUよりも光沢度が大きい基板Bの表面をそのまま利用して形成することで、凹凸が少なく好ましくは測定対象表面SUよりも光沢度が大きい表面である第2光沢度表面75を形成するために基板Bに処理を施す必要がなくなる。言い換えると、複数の第1光沢度表面73を形成する処理を基板Bの表面に対して行うのみで、容易に基準板71’を製造できる。
【0048】
大きな光沢度を有する第2光沢度表面75は、基準板71’の光沢度を光沢計で測定する場合、入射された検査光の大部分を反射する。その結果、第2光沢度表面75にて発生する反射光の大部分は、光沢計で検出される。
【0049】
第1実施形態に係る基準板71’の第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の形状について、
図5及び
図6に示すように、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75は、X方向(すなわち、基板Bの短辺方向)に伸びる矩形を有している。具体的には、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75は、X方向の辺が基板Bの短辺と同じ長さを有する矩形を有している。
一方、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75のY方向(基板Bの長辺方向)の辺の長さは、基準板71’が有する光沢度、基板Bの表面に形成すべき光沢度表面の数により決定される。基準板71’の光沢度と第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75のY方向の辺の長さとの関係、及び、基板Bの表面に形成すべき光沢度表面の数については、後ほど詳しく説明する。
【0050】
一方、第1実施形態に係る基準板71’の第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の配置について、
図5及び
図6に示すように、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とは、基板Bの表面において、Y方向(基板Bの長辺方向)に並んで交互に配置されている。すなわち、基板Bの表面において、第1光沢度表面73が連続して配置された箇所、又は、第2光沢度表面75が連続して配置された箇所は存在しない。
【0051】
このように、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とを交互に配置することで、基板Bの場所によって第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率が大きく異なることを抑制できる。後述するように、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率が基準板71’の光沢度を決定するので、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とを交互に配置することで、基板Bの場所によって光沢度が大きく異なることを抑制できる。
【0052】
なお、複数の第1光沢度表面73と複数の第2光沢度表面75とがY方向に交互に配置されることは、1つの第1光沢度表面73と1つの第2光沢度表面75との一組により形成される単位が、複数個Y方向に並んで配置されていると見ることもできる。以後の説明において、上記の1つの第1光沢度表面73と1つの第2光沢度表面75との一組により形成される単位を、便宜上「単位表面A」と呼ぶ。
【0053】
(3)第1光沢度表面と第2光沢度表面の比率と光沢度の関係
次に、単位表面A内における1つの第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率と、基準板71’の光沢度と、の関係を具体的に説明する。第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率と光沢度との関係の具体的な説明の前に、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の辺の長さを定義する。
具体的には、
図7に示すように、単位表面A内の第1光沢度表面73のY方向の辺の長さをd1、第2光沢度表面75のY方向の辺の長さをd2、と定義する。また、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75のX方向の辺の長さ、すなわち、基板Bの短辺の長さをWとする。
図7は、第1光沢度表面と第2光沢度表面の辺の長さの定義を模式的に示す図である。
【0054】
図7に示す定義に従うと、単位表面Aは、X方向の辺の長さがW、Y方向の辺の長さがd1+d2であるので、W*(d1+d2)の面積を有する。
一方、第1光沢度表面73は、X方向の辺の長さがW、Y方向の辺の長さがd1であるので、W*d1の面積を有する。従って、1つの単位表面A内において、第1光沢度表面73は、単位表面A全体の(W*d1)/{W*(d1+d2)}=d1/(d1+d2)の割合の面積を占める。上記のd1/(d1+d2)との式で表される割合を「第1割合」と呼ぶ。
【0055】
また、第2光沢度表面75は、X方向の辺の長さがW、Y方向の辺の長さがd2であるので、W*d2の面積を有する。従って、1つの単位表面A内において、第2光沢度表面75は、単位表面A全体の(W*d2)/{W*(d1+d2)}=d2/(d1+d2)の割合の面積を占める。上記のd2/(d1+d2)との式で表される割合を「第2割合」と呼ぶ。
上記の式に示されるように、第1割合と第2割合の合計は1(100%)となる。また、1つの単位表面A内において、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とはオーバラップしない。すなわち、第2光沢度表面75は、1つの単位表面A内において第1光沢度表面73が占有する表面以外を占有することで、単位表面A全体の第2割合の面積を占有する。
【0056】
以下の説明では、単位表面A内における第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率を、1つの単位表面Aに含まれる第1光沢度表面73の面積の割合(第1割合)を基準として、d1/(d1+d2)と定義する。以下の説明では、この比率を「面積比率」と呼ぶ。
【0057】
次に、上記面積比率と基準板71’の光沢度との関係を具体的に説明する。本実施形態の基準板71’は、測定対象の表面に所定の入射角にて検査光L1を照射したときに、当該測定対象の表面にて検査光L1が反射されることで発生する反射光L2の強度に基づいて光沢度を測定する光沢計100に対して用いられる。また、小さな光沢度を有する第1光沢度表面73から発生する反射光L2の強度は弱い一方、大きな光沢度を有する第2光沢度表面75から発生する反射光L2の強度は強い。
【0058】
上記の光沢計の測定原理、及び、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の性質に基づくと、1つの単位表面A内における第1光沢度表面73の面積比率(d1/(d1+d2))を、当該1つの単位表面Aから発生する反射光L2が予め定めた強度になるよう決定することで、基準板71’全体の光沢度を決定できる。
【0059】
具体的には、
図8に示すように、第1光沢度表面73の面積比率(d1/(d1+d2))が小さい基準板71’の場合、基板Bの表面全体における第2光沢度表面75の占める割合(第2割合)が大きくなる(
図8の(1))。この結果、強度の大きい反射光L2を発生する第2光沢度表面75の割合が大きい一方、ごくわずかな反射光L2しか発生しない第1光沢度表面73の割合は小さいので、基準板71’全体から発生する反射光L2の強度が大きくなる。従って、この基準板71’を光沢計100で測定すると、大きい光沢度が測定結果として得られる。
図8は、第1光沢度表面の面積比率が異なる基準板を模式的に示す図である。
【0060】
一方、第1光沢度表面73の面積比率が大きくなるに従って、基板Bの表面全体における第2光沢度表面75の占める割合(第2割合)が小さくなる(
図8の(2)、(3))。この結果、強度の大きい反射光L2を発生する第2光沢度表面75の割合が小さくなる一方、ごくわずかな反射光L2しか発生しない第1光沢度表面73の割合が大きくなるので、基準板71’全体から発生する反射光L2の強度が小さくなる。従って、この基準板71’を光沢計100で測定すると、小さい光沢度が測定結果として得られる。
【0061】
上記の面積比率と光沢度との関係をグラフに表すと、
図9のようになる。具体的には、基板Bの表面全体が第2光沢度表面75のみである場合(面積比率:0%)、基準板71’の光沢度は、第2光沢度表面75の第2光沢度、つまり、基板Bの表面の光沢度と同じになる(
図9では、K2と表している)。例えば、基板BとしてBK7を用いた場合、面積比率が0%のときの基準板71’の光沢度は、90程度である。
図9は、第1光沢度表面の面積比率と基準板の光沢度との関係を表す図である。
【0062】
一方、基板Bの表面における第1光沢度表面73の割合が増加するに従って、すなわち、面積比率が増加するに従って、直線的に基準板71’の光沢度が低下し、基板Bの表面全体が第1光沢度表面73のみである場合(面積比率:100%)、基準板71’の光沢度は、第1光沢度表面73の第1光沢度と同じになる(
図9では、K1と表している)。例えば、基板BとしてBK7を用い、第1光沢度表面73をブラスト処理にて形成した場合、面積比率が100%のときの基準板71’の光沢度は、ほぼ0である。
【0063】
このように、
図9に示すグラフを参照して第1光沢度表面73と第2光沢度表面75の面積比率を決定することで、K1(第1光沢度)~K2(第2光沢度)までの任意の光沢度を有する基準板71’を製造できる。
なお、
図9に示すグラフは、例えば、基板Bの表面全体が第2光沢度表面75の場合(面積比率:0%)の第1光沢度と、基板Bの表面全体が第1光沢度表面73の場合(面積比率:100%)の第2光沢度と、を光沢計で測定し、面積比率が0%のときの第2光沢度と面積比率が100%のときの第1光沢度とを結ぶ直線の式(Y=aX+B、Y:光沢度、X:面積比率)を算出することで導出できる。
【0064】
このように、基準板71’の光沢度と第1光沢度表面73の面積比率(第1割合)とは
図9に示すような関係で表すことができるので、第1実施形態に係る基準板71’は、「基板Bの表面全体において、第1光沢度を有する部分が第1割合を占め、第2光沢度の部分が残りの第2割合を占めているので、第1光沢度、第1割合、第2光沢度、第2割合とのパラメータで決まる特定の光沢度を有する」と光沢度に対する理論的な説明が可能な基準板である。
【0065】
(4)単位表面と光沢計の測定範囲との関係
次に、
図10を用いて、単位表面の大きさ(すなわち、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の大きさ)と、
図4を用いて説明した光沢計100の測定部2による光沢度の測定対象範囲MAとの関係を説明する。
図10は、単位表面の大きさと測定対象範囲との関係を模式的に示す図である。
第1実施形態に係る基準板71’においては、第1光沢度表面73からの反射光の強度と第2光沢度表面75からの反射光の強度との合計から、基準板71’の光沢度が決定される。従って、基準板71’の光沢度を光沢計で測定した結果と基準板71’の意図した光沢度との間の誤差を小さくするには、光沢計が基準板71’に照射する検査光L1の照射範囲(すなわち、測定対象範囲MA)内に含まれる第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との割合と、1つの単位表面A内の第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率との間の誤差を小さくする必要がある。
【0066】
光沢計が基準板71’に照射する検査光L1の照射範囲(測定対象範囲MA)内に含まれる第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との割合と、1つの単位表面A内の第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率との間の誤差を小さくするためには、測定対象範囲MA内に、第1光沢度表面73(の一部)と第2光沢度表面75(の一部)との組が複数(少なくとも2以上)含まれていることが好ましい。
【0067】
具体的には、
図10の(1)及び(2)に示すように、単位表面Aの面積を小さくして第1光沢度表面73と第2光沢度表面75の面積を小さくすることで、より多くの第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との組を測定対象範囲MA内に含ませることが好ましい。
また、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75の面積を小さくすることで、測定対象範囲MAが移動して光沢度の測定位置が変化しても、測定対象範囲MAに含まれる第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との割合は変化しにくくなる。その結果、基準板71’の測定位置によって光沢度が大きく異なることを抑制できる。
【0068】
一方、
図10の(3)に示すように、測定対象範囲MAに比較して単位表面Aの面積が過大となると、測定対象範囲MAに含まれる第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との組の数が少なくなるので、測定対象範囲MA内に含まれる第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との比率と、単位表面A内の第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との比率との間の誤差が大きくなる。
例えば、
図10の(3)に示すように、測定対象範囲MAの上端部に含まれる第1光沢度表面73の面積と測定対象範囲MAの下端部に含まれる第2光沢度表面75の面積との割合が、単位表面A内の第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との比率とは異なる。
【0069】
また、単位表面Aの面積が過大であると、測定対象範囲MAが移動して光沢度の測定位置が変化すると、測定対象範囲MAに含まれる第1光沢度表面73の面積と第2光沢度表面75の面積との割合が大きく変化する。その結果、基準板71’の測定位置によって光沢度が大きく異なることとなる。
【0070】
(5)基準板の製造方法
次に、
図11を用いて、上記の構成を有する基準板71’の製造方法を説明する。
図11は、基準板の製造方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、例えば
図9に示すグラフなどを用いて、製造しようとする基準板71’が所望の光沢度を有するよう、1つの単位表面A内における第1光沢度表面73と第2光沢度表面との比率を決定する。すなわち、上記の第1割合及び第2割合を決定する。
次に、ステップS2において、基準板71’を用いて測定値を評価する対象の光沢計の光沢度の測定対象範囲MAの大きさに応じて、1つの単位表面Aの大きさを決定する。また、基板Bの表面における複数の単位表面Aの配置を決定する。
【0071】
その後、ステップS3において、光沢度の大きい基板B(例えば、BK7などの光学ガラス板)を用意し、上記のステップS2で大きさ及び配置を決定した複数の単位表面A内の第1光沢度表面73に対応する基板Bの表面に、2つの第1光沢度表面73が互いに隣接しないよう、微小な凹凸を形成する処理を施す。
このとき、凹凸を形成する処理を行う対象の単位表面A全体のうち、ステップS1で決定した第1割合の面積に対して凹凸を形成する処理を施す。本実施形態の基準板71’の場合には、処理対象の単位表面A内において、Y方向の長さがd1でありX方向の長さがW(基板Bの短辺と同じ長さ)である矩形領域に対して微小な凹凸を形成する処理を施す。
【0072】
ステップS3の凹凸を形成する処理をブラスト処理にて行う場合には、具体的には、以下のようにして微小な凹凸が形成される。
まず、ステップS1及びS2を実行することにより決定される第1光沢度表面73の寸法に対応した開口を、マスク部材に形成する。マスク部材は、ブラスト処理の実行時に基板Bの表面を覆う板状の部材であり、基板Bの表面のうちマスク部材に覆われた箇所にブラスト処理が施されないようにする部材である。
【0073】
次に、上記のようにして開口を形成したマスク部材を、基準板71’とする基板Bの表面上に配置して、基板Bにブラスト処理を実行する。これにより、マスク部材のうち開口が設けられた部分、すなわち、基板Bの表面の第1光沢度表面73に対応する箇所にはブラスト処理が施されて微小な凹凸が形成される。一方、マスク部材のうち開口が設けられていない部分、すなわち、基板Bの表面の第2光沢度表面75に対応する箇所にはブラスト処理が施されず、当該箇所の光沢度は基板Bの光沢度と同じになる。
【0074】
上記のステップS1~S3を実行することで、凹凸が少なく好ましくは測定対象表面SUよりも光沢度が大きい基板Bの表面のうち第1光沢度表面73に対応する箇所にのみ2つの第1光沢度表面73が互いに隣接しないよう微小な凹凸を形成する処理を実行するだけで、光を散乱する微小な凹凸を有する第1光沢度表面73のみをブラスト加工などにより形成しつつ、第2光沢度表面75については大きい光沢度の基板Bの表面に対して加工を施すことなくそのまま利用して、意図した光沢度を有する基準板71’を容易に製造できる。
【0075】
(6)変形例
以下、第1実施形態に係る基準板71’の変形例を説明する。上記の第1実施形態において、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75は、X方向(基板Bの短辺)に長い矩形を有し、Y方向に並んで配置されていた。これにより、基準板71’の光沢度の測定位置(測定対象範囲MA)によって、光沢度の測定値が大きく異なることを抑制できる。
しかし、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面の形状及び配置はこれに限られず、
図12Aに示すように、変形例1に係る基準板71’'の第1光沢度表面73'及び第2光沢度表面75'は、四角形を有し互いに隣接しないように交互に配置される。すなわち、変形例1に係る基準板71’’において、第1光沢度表面73'及び第2光沢度表面75'は、基板Bの表面において市松模様を形成する。
図12Aは、変形例1に係る基準板の上面図である。
【0076】
また、
図12Bに示すように、変形例2に係る基準板71’’’の第1光沢度表面73''及び第2光沢度表面75''は、第1実施形態とは逆に、Y方向(基板Bの長辺)に長い矩形を有し、X方向に並んで配置される。
図12Bは、変形例2に係る基準板の上面図である。
【0077】
上記の変形例1及び変形例2のように第1光沢度表面及び第2光沢度表面が配置されていても、光沢計の測定対象範囲MA内に複数の第1光沢度表面及び第2光沢度表面の組が含まれていれば、意図した光沢度を測定結果として出力できる信頼性の高い基準板を提供できる。
【0078】
(7)まとめ
上記の第1実施形態は、以下のような機能及び効果を有する。
第1実施形態に係る基準板71’では、基板Bの表面上において、第1光沢度を有しかつ第1面積を有する第1光沢度表面73と、第2光沢度を有しかつ第2面積を有する第2光沢度表面75とが、互いに隣接して配置され、かつ、1つの第1光沢度表面73と1つの第2光沢度表面75との組により構成される複数の単位が互いに隣接して配置されている。これにより、上記の基準板71’は、基準板71’の表面全体にわたってほぼ均一的に、第1面積、第2面積、第1光沢度、及び第2光沢度により決定される、信頼性の高い任意の光沢度を有する。
【0079】
基準板71’において、第1光沢度表面73は、一辺が基板Bの一辺の長さと同じ長さを有し第1面積を有する矩形である。また、第2光沢度表面75は、一辺が基板Bの一辺の長さと同じ長さを有し第2面積を有する矩形である。また、第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75は、基板Bの当該一辺が伸びる方向とは垂直な方向に並んで配置される。
これにより、基準板71'の表面において縞状に第1光沢度表面73と第2光沢度表面75が配置されるので、基準板71’の表面全体において光沢度をほぼ均一とできる。
【0080】
第1光沢度表面73が基板Bの表面に形成された光を拡散する微小な凹凸を有し、第2光沢度表面75が基板Bをそのまま利用して形成されることにより、基準板71’を容易に製造できる。
【0081】
基板Bが光学ガラス板、又は、金属板のいずれかであることにより、特定の光沢度を有する基準板71’を容易に製造できる。
【0082】
光沢計100による光沢度の測定対象範囲MAには、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との組が複数含まれることにより、光沢度の測定位置によって光沢計100で測定される光沢度が異なることを抑制できる。
【0083】
第1光沢度表面73に微小な凹凸を形成するステップが、基板Bの表面をブラスト処理するステップ、基板Bの表面をエッチング処理するステップ、又は、基板Bの表面をフライス加工するステップのいずれかであることにより、容易に光沢度の小さい第1光沢度表面73を形成できる。
【0084】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)基準板71’においては、光沢計の測定対象範囲MA内に含まれる第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率の平均が意図した比率(
図9に示すグラフを用いて決定した比率)と一致していれば、信頼性の高い光沢度を測定結果として得られる。従って、例えば、測定対象範囲MA内に多数の第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との組が含まれる場合には、一部において第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とが交互に配置されていなくてもよい。すなわち、一部において第1光沢度表面73が連続して配置されてもよいし、第2光沢度表面75が連続して配置されてもよい。
【0085】
(B)第1光沢度表面73及び第2光沢度表面75の形状は四角形以外の任意の形状とできる。また、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75との比率が単位表面A内でほぼ同じとできる限り、これら表面の形状が異なっていてもよい。例えば、四角形である第2光沢度表面の中心部分に、四角形以外の形状(例えば、三角形、多角形、円形など)の第1光沢度表面を形成してもよい。
【0086】
(C)上記の第1実施形態においては、凹凸が少なく好ましくは測定対象表面SUよりも光沢度が大きい基板Bの表面の一部に微小な凹凸を形成して、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とが形成されていた。これとは逆に、例えば、全体に微小な凹凸が形成されて光沢度が小さい基板Bの表面の一部を平坦化して光沢度の大きい部分を形成して、第1光沢度表面73と第2光沢度表面75とを形成することもできる。
例えば、微小な凹凸を有する表面をダイヤモンドペーストなどにより塗装して微小な凹凸を埋めて平坦化することにより、光沢度の小さな表面に光沢度の大きい表面を形成できる。
【0087】
(D)上記の基準板71’は、表面粗さ計、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、SPM)、放射温度計などの測定結果の評価等に使用できる。例えば、放射温度計に用いる場合には、光沢度が小さい第1光沢度表面73の放射率が、第2光沢度表面75の放射率よりも大きく、この原理を用いて放射温度計の測定結果を評価できる。
【0088】
(E)
図13に示すように、基板BのX方向の端部においてもブラスト処理により微小な凹凸を形成してもよい。すなわち、X方向に延びY方向に並んで配置される第1光沢度表面73を上記のブラスト処理した表面により接続し、第1光沢度表面73を1つとしてもよい。
図13は、基準板の他の実施形態の一例を示す図である。
【0089】
(F)
図14に示すように、基板BのX方向の端部をブラスト処理等することなく凹凸が少ない表面としてもよい。すなわち、X方向に延びY方向に並んで配置される第2光沢度表面75を凹凸が少ない表面により接続し、第2光沢度表面75を1つとしてもよい。
図14は、基準板のさらなる他の実施形態の一例を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、光沢度測定において光沢度の基準となる基準板に広く適用できる。
【符号の説明】
【0091】
100 光沢計
1 筐体
2 測定部
21 光照射部
23 光検出部
3 表示部
4 制御部
5 バッテリー
6 第1操作部
61 電源ボタン
62 校正ボタン
7 保護カバー
71 校正基準板
7’ 予備カバー
71’、71’’、71’’’ 基準板
B 基板
A 単位表面
73、73’、73’’ 第1光沢度表面
75、75’、75’’ 第2光沢度表面
8 第2操作部
9 外部接続端子
BO 底部
L1 検査光
L2 反射光
MA 測定対象範囲
SU 測定対象表面