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特許7336650ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペースト
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230825BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230825BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20230825BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08L1/00
C08L29/14
C08K3/00
C08K5/06
C08K5/09
C08K5/17
C08K5/20
C08L93/04
H01B1/22 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019194143
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2020090661
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2018221649
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 文彦
(72)【発明者】
【氏名】宮内 恭子
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-147359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C09D,H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む樹脂バインダーと、有機溶剤と、界面活性剤とを少なくとも含み、
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量の比率が、0.3以上、0.8以下の範囲にあり、
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種とを含み、前記アニオン系界面活性剤の含有量と、ノニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種の含有量との比率が、1:4~4:1の範囲にあり、
前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、ココアルキルアミン-酸化エチレン付加物、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ラウリルアミン、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、および、オレイン酸ジエタノールアミドのうちから選択される少なくとも1種であり、
および、
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記界面活性剤の含有量は、10質量部以上、45質量部以下の範囲にある、
ペースト用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アニオン系界面活性剤の炭素数は、12以上である、請求項1に記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項3】
該ペースト用樹脂組成物を、厚さ1mmの板ガラスに塗布し、乾燥処理し、膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について、紫外可視近赤外分光光度計を用い、波長400~800nmで測定した場合の光線透過率が、75%以上である、請求項1または2に記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ペースト用樹脂組成物を、厚さ0.05mmのPETフィルムに塗布し、乾燥処理し、該PETフィルムより剥離することで膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について24℃~500℃の温度範囲で示差走査熱量測定を行った場合の、得られた示差走査熱量測定スペクトルにおいて、ガラス転移点が検出されない、請求項1~3のいずれかに記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項5】
前記アニオン系界面活性剤が、ステアリン酸、オレイン酸、ラウロイルサルコシン、および、オレオイルサルコシンのうちから選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載のペースト用組成物。
【請求項6】
前記カチオン系界面活性剤が、ロジンアミン、ステアリルアミン、および、ラウリルアミンのうちから選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれかに記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、前記アニオン系界面活性剤と前記ノニオン系界面活性剤とにより構成され、かつ、前記アニオン系界面活性剤の含有量と前記ノニオン系界面活性剤の含有量との比率は、1:1~4:1の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載のペースト用樹脂組成物
【請求項8】
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記界面活性剤の含有量は、15質量部以上、45質量部以下の範囲にある、請求項1~7のいずれかに記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項9】
無機粒子、および、
ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む樹脂バインダーと、有機溶剤と、界面活性剤とを少なくとも含む、ペースト用樹脂組成物、
を備え、
前記ペースト用樹脂組成物は、請求項1~8のいずれかに記載されたペースト用樹脂組成物からなり、
前記ペースト用樹脂組成物の含有量は、全ペースト量に対して、10質量%以上、70質量%以下の範囲にある、
無機粒子分散ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子分散ペーストを作製する際に用いられるペースト用樹脂組成物、および、該ペースト用組成物を用いた無機粒子分散ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック粉末、導電性粉末、磁性粉末、ガラス粉末などの無機粒子粉末は、粒子ないしは粉末に特有の物理的ないしは化学的な特性を有することから、電極材料、高密度記録材料、触媒材料などの工業材料に利用されている。たとえば、セラミック粉末を用いたセラミックペースト、導電性粉末を用いた導電性ペースト、磁性粉末を用いた磁性粉末ペースト、ガラス粉末を用いたガラスペーストなど、無機粒子をペースト用樹脂組成物に分散させた無機粒子分散ペーストが、さまざまな分野で用いられている。
【0003】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器においては、チップ部品である積層セラミックコンデンサが用いられているが、この積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層が交互かつ多層に積層して形成される。誘電体層となる誘電体グリーンシートの形成には、チタン酸バリウム(BaTiO)などの誘電体セラミック粉末を主成分として、この誘電体セラミック粉末をペースト用樹脂組成物に分散させたセラミックペーストが用いられる。また、内部電極層の形成には、導電性粉末を主成分として、この導電性粉末をペースト用樹脂組成物に分散させた導電性ペーストが用いられる。
【0004】
また、磁気記録媒体を構成する磁気記録層の形成材料や樹脂結合型磁石用組成物として、磁性粉末をペースト用樹脂組成物に分散させた磁性粉末ペーストが用いられる。さらに、プラズマディスプレイパネルや蛍光表示管などを構成する隔壁の形成には、ガラス粉末をペースト用樹脂組成物に分散させたガラスペーストが用いられる。
【0005】
その他の無機粒子分散ペーストとしては、セラミック粉末とガラス粉末とを含む厚膜抵抗体ペースト、絶縁層を形成するセラミックペーストである絶縁ペーストなどが挙げられる。
【0006】
これらの無機粒子分散ペーストの形成に用いられるペースト用樹脂組成物は、通常、有機ビヒクルと分散剤としての界面活性剤とを含んでいる。無機粒子分散ペーストは、ペースト用樹脂組成物と、無機粒子と、粘度調整用の有機溶剤と、任意の共材とを混練することにより得られる。
【0007】
ペースト用樹脂組成物を構成する有機ビヒクルは、樹脂バインダーと有機溶剤とにより構成される。樹脂バインダーとしては、エチルセルロース樹脂などが、有機溶剤としてはターピネオールなどが、それぞれ用いられている。また、分散剤には、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、あるいは、ノニオン系界面活性剤が用いられている。
【0008】
無機粒子分散ペースト用のペースト用樹脂組成物を構成する樹脂バインダーに関して、ペーストの密着性、塗布作業性、膜強度の観点から、2種類以上の樹脂を混合した混合樹脂が用いられている。たとえば、特開2007-224275号公報には、隔壁形成用ガラスペーストを構成する樹脂バインダーとして、セルロース系樹脂とブチラール樹脂を含む有機樹脂が開示されている。また、再表2017/014295号公報には、導電性ペースト用の樹脂バインダーとして、ポリビニルアセタールおよびセルロース誘導体をそれぞれX質量部、Y質量部としたとき、0.2≦X/(X+Y)≦0.8を満たすように前記ポリビニルアセタールおよび前記セルロース誘導体を混合させた混合物を含む樹脂が開示されている。
【0009】
一方、たとえば、積層セラミックコンデンサには、さらなる小型化や高容量化が求められており、セラミックペーストや導電性ペーストを用いて作製される、積層セラミックコンデンサの誘電体層と内部電極層に対しても、より一層の多層化および薄膜化が検討されている。また、磁性粉末ペーストを用いて得られる磁気記録層や、ガラスペーストを用いて得られる隔壁などについても、同様に一層の薄層化や高性能化が求められている。これに伴って、これらのペーストの材料である無機粒子には、小粒子径化が求められている。
【0010】
一般に、スラリー組成物中のセラミック粉末の分散性を確保する方法としては、上述の通り、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、あるいは、ノニオン系界面活性剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2007-224275号公報
【文献】再表2017/014295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
無機粒子分散ペーストを作製する際に用いられるペースト用樹脂組成物には、分散剤として、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、あるいは、ノニオン系界面活性剤が用いられている。しかしながら、混合樹脂バインダーとこれらの界面活性剤を含むペースト用樹脂組成物を用いた無機粒子分散ペーストでは、その保存中に、無機粒子分散ペーストが分離して、分散性が悪化するという問題がある。このような分散性の悪化は、無機粒子分散ペーストの印刷ムラに繋がる。
【0013】
この問題について、発明者らが鋭意検討したところ、混合樹脂バインダーと界面活性剤を含むペースト用樹脂組成物に、無機粒子を添加すると、混合樹脂バインダーの相溶性が悪化するとの知見が得られた。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みて、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂の混合樹脂バインダーを含むペースト用樹脂組成物に関して、長期間保存しても混合樹脂バインダーが分離することのない、相溶性が改善されたペースト用樹脂組成物およびこれを用いた無機粒子分散ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む樹脂バインダーと、有機溶剤と、界面活性剤とを少なくとも含む、ペースト用樹脂組成物に関する。
【0016】
特に、本発明のペースト用樹脂組成物は、
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量の比率が、0.3以上、0.8以下の範囲にあり、
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤と、ノニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種とを含み、前記アニオン系界面活性剤の含有量と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種の含有量との比率が、1:4~4:1範囲にあり、および、
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記界面活性剤の含有量は、10質量部以上、45質量部以下の範囲にある、
ことを特徴とする。
【0017】
前記アニオン系界面活性剤の炭素数が12以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のペースト用樹脂組成物では、該ペースト用樹脂組成物を、厚さ1mmの板ガラスに塗布し、乾燥処理し、膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について、波長400~800nmで測定した場合の光線透過率が、75%以上であることが好ましい。
【0019】
および/または、該ペースト用樹脂組成物を、厚さ0.05mmのPETフィルムに塗布し、乾燥処理し、該PETフィルムより剥離することで膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について24℃~500℃の温度範囲で示差走査熱量測定を行った場合の、得られた示差走査熱量測定スペクトルにおいて、ガラス転移点が検出されないことが好ましい。
【0020】
前記アニオン系界面活性剤が、ステアリン酸、オレイン酸、ラウロイルサルコシン、および、オレオイルサルコシンのうちから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
前記カチオン系界面活性剤が、ロジンアミン、ステアリルアミン、および、ラウリルアミンのうちから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、ココアルキルアミン-酸化エチレン付加物、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ラウリルアミン、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、および、オレイン酸ジエタノールアミドのうちから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
前記ポリビニルアセタール樹脂および前記セルロース系樹脂の含有量の合計に対する、前記界面活性剤の含有量は、15質量部以上、45質量部以下の範囲にあることが好ましく、20質量部以上、45質量部以下の範囲にあることがより好ましい。
【0024】
本発明は、無機粒子、および、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む樹脂バインダーと、有機溶剤と、界面活性剤とを少なくとも含む、ペースト用樹脂組成物を備えた、無機粒子分散ペーストに関する。
【0025】
特に、本発明の無機粒子分散ペーストは、前記ペースト用樹脂組成物が、本発明のペースト用樹脂組成物からなり、前記ペースト用樹脂組成物の含有量が、全ペースト量に対して、10質量%以上、70質量%以下の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、長期間保存しても混合樹脂バインダーが分離することのない、相溶性が改善されたペースト用樹脂組成物、および、このペースト用樹脂組成物を用いた、保存性の良好な無機粒子分散ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施例1のペースト用樹脂組成物についての示差走査熱量測 (DSC)スペクトルを示す。
図2図2は、比較例1のペースト用樹脂組成物についてのDSCスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)ペースト用樹脂組成物
本発明のペースト用樹脂組成物は、無機粒子分散ペースト用の樹脂組成物であって、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む樹脂バインダーと、有機溶剤と、界面活性剤とを少なくとも含む。
【0029】
[樹脂バインダー]
本発明のペースト用樹脂組成物は、樹脂バインダー(有機ビヒクル)として、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂を含む。なお、樹脂バインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を少量含むことができる。
【0030】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化した樹脂である。ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の無機粒子分散ペーストが印刷される、ガラス基板、セラミック基板、セラミックグリーンシートなどの基材に含まれており、基材と無機粒子分散ペーストとの密着性を確保する機能を有する。
【0031】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットとを有するグラフト共重合体であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂としては、たとえば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタールなどが挙げられる。
【0032】
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂は、セルロースおよび各種のセルロース誘導体(変性物などのセルロース由来の化合物)を包含する概念である。セルロース誘導体の用語は、セルロース化合物、および、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物のいずれも含む意味で用いられる。セルロース誘導体としては、セルロースの構成単位であるグルコース残基のヒドロキシ(OH)基をエーテル化あるいはエステル化した誘導体が挙げられる。セルロース系樹脂は、樹脂バインダーおよび粘度(流動性)調整剤として好適に機能し得る。
【0033】
セルロースエーテルとしては、たとえば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩のような塩類を用いることもできる。
【0034】
セルロースエステルとしては、酢酸フタル酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸-プロピオン酸セルロース、酢酸-酪酸セルロースなどが挙げられる。
【0035】
良好な印刷を行い得る粘度特性を実現する観点から、本発明においては、エチルセルロースを用いることが好ましい。
【0036】
(樹脂バインダーの含有量)
本発明のペースト用樹脂組成物を構成する樹脂バインダーにおける、ポリビニルアセタール樹脂の含有量(X)およびセルロース系樹脂の含有量(Y)の合計に対する、ポリビニルアセタールの含有量の比率は、0.3以上、0.8以下の範囲(0.3≦X/(X+Y)≦0.8)にある。このポリビニルアセタール樹脂の比率は、0.4以上、0.7以下であることが好ましい(0.4≦X/(X+Y)≦0.7)。
【0037】
ポリビニルアセタール樹脂の含有量の比率が、0.3以上であれば、ガラス基板、セラミック基板、セラミックグリーンシートなどの基材と、無機粒子分散ペーストの乾燥膜との密着性が良好となる。一方、ポリビニルアセタール樹脂の含有量の比率が、0.8以下であれば、樹脂バインダーの溶剤への溶解性、無機粒子分散ペーストの印刷性、および、樹脂バインダーの燃焼分解性が良好となる。
【0038】
[有機溶剤]
本発明の有機溶剤は、ポリビニルアセタール樹脂とセルロース系樹脂を溶解し、および、無機粒子分散ペーストの粘度を調整する機能を有する。有機溶剤は、特に限定されず、従来の有機溶剤から適宜選択される。有機溶剤は、1種類だけでも用いることができるが、2種類以上の有機溶剤を組み合わせて用いることもできる。なお、有機溶剤の沸点は、100℃を超えていることが好ましい。有機溶剤の沸点が100℃以下の場合、無機粒子分散ペーストの製造時に、有機溶剤が蒸発してしまうおそれがある。
【0039】
有機溶剤は、アセテート系溶剤、テルペン系溶剤、および、飽和脂肪族炭化水素系溶剤から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。アセテート系溶剤としては、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。テルペン系溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどが挙げられる。飽和脂肪族炭化水素系溶剤としては、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも、乾燥速度などの観点から、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、ターピネオール、および、ジヒドロターピネオールを用いることが好ましい。
【0040】
有機溶剤の含有量(調製時の添加量)は、特に限定されるものではなく、無機粒子分散ペーストに必要とされる粘度などに応じて任意に選択される。有機溶剤の含有量は、無機粒子分散ペーストにおける、無機粒子100質量部に対して、40質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90量部以下であることがより好ましい。
【0041】
[界面活性剤]
本発明のペースト用樹脂組成物は、無機粒子の凝集を防止し、無機粒子にペースト中における分散性を付与するための分散剤として、界面活性剤を含む。特に、本発明のペースト用樹脂組成物においては、界面活性剤が、アニオン系界面活性剤と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種とを含むことに特徴がある。すなわち、本発明では、界面活性剤として、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤との組み合わせ、および/または、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との組み合わせが用いられる。すなわち、本発明のペースト用樹脂組成物において、アニオン系界面活性剤と、カチオン系界面活性剤あるいはノニオン系界面活性剤のいずれかとを組み合わせれば十分であるが、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを併用することもできる。
【0042】
(アニオン系界面活性剤)
アニオン系界面活性剤は、無機粒子表面への吸着力が大きく、その表面改質作用により無機粒子の分散性の向上に寄与する。また、アニオン系界面活性剤は、塗膜の平滑性や、無機粒子分散ペーストの乾燥膜密度を向上させる機能も有する。
【0043】
アニオン系界面活性剤としては、カルボキシル基(COOH基)を有するカルボン酸系界面活性剤を用いることが好ましい。なお、カルボン酸系界面活性剤は、カルボキシル基以外に、ヒドロキシル基、カルボニル基、アシル基、アミノ基などの官能基やエーテル結合、アミド結合などの構造を備えることもできる。また、アニオン系界面活性剤として、ジェミニ型界面活性剤を用いることもできる。
【0044】
アニオン系界面活性剤としては、炭素数22以下のアニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、炭素数が12以上、炭素数22以下のアニオン系界面活性剤を用いることがより好ましく、炭素数が16以上、22以下のアニオン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。炭素数が22を超えると、温度によっては、アニオン系界面活性剤が固体状となって、樹脂組成物中に析出してしまう場合がある。
【0045】
具体的には、アニオン系界面活性剤として、ステアリン酸(炭素数18)、ミリスチン酸(炭素数14)、ラウリン酸(炭素数12)、パルミチン酸(炭素数16)などの飽和脂肪酸や、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)などの不飽和脂肪酸、ステアリン酸とグリシンのアミド化合物であるラウロイルサルコシン(炭素数15)や、オレイン酸とグリシンのアミド化合物であるオレオイルサルコシン(炭素数21)などを挙げることができる。
【0046】
なお、アニオン系界面活性剤は、1種類だけでも用いることができるが、2種類以上のアニオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0047】
焼成を経て使用される無機粒子分散ペーストに用いられる場合は、これらの中で、沸点が樹脂の分解温度に近い、ステアリン酸、オレイン酸、ラウロイルサルコシン、および、オレオイルサルコシンを用いることが好ましい。
【0048】
(カチオン系界面活性剤)
カチオン系界面活性剤は、無機粒子表面に吸着することにより、無機粒子分散ペーストにおいて、無機粒子と溶剤や樹脂バインダーなどとの相溶性および分散性を向上させる機能を有する。
【0049】
カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤、アミン塩型カチオン系界面活性剤が例示される。
【0050】
第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩類(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイドなど)、トリアルキルベンジルアンモニウム塩類(ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)など)、アルキル(C2~C60)ピリジニウム塩類(セチルピリジニウムクロライドなど)、ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム塩類(ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライドなど)、サパミン型第4級アンモニウム塩類(ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなど)などが挙げられる。
【0051】
アミン塩型カチオン界面活性剤は、脂肪族アミン類(ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミンなど)、無機酸塩または有機酸塩(脂肪族アミン類のエチレンオキサイド(EO)付加物、トリエタノールアミンモノステアレート、ステアラミドエチルジエチルメチルエタノールアミンなどの3級アミンなど)などが挙げられる。
【0052】
なお、カチオン系界面活性剤についても、1種類だけでも用いることができるが、2種類以上のカチオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0053】
これらの中でも、ロジンアミン、ステアリルアミン、および、ラウリルアミンを用いることが好ましい。
【0054】
(ノニオン系界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤は、基材表面に対する無機粒子分散ペーストの濡れ性を改善させ、無機粒子分散ペーストの塗布性を向上させ、無機粒子分散ペーストの乾燥膜を均一に形成する機能を有する。
【0055】
ノニオン系界面活性剤としては、エーテル類(ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-アルキルエーテル、ポリオキシエチレン-オレイルエーテルなど)、ポリエーテルアミン類(N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ステアリルアミン、ポリオキシエチレン-オレイルミンなど)、アルカノールアミド類などが挙げられる。
【0056】
なお、ノニオン系界面活性剤についても、1種類だけでも用いることができるが、2種類以上のノニオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0057】
これらの中でも、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、ココアルキルアミン-酸化エチレン付加物、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミン、ポリオキシエチレン-ラウリルアミン、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、および、オレイン酸ジエタノールアミドを用いることが好ましい。
【0058】
(混合比率)
本発明のペースト用樹脂組成物は、界面活性剤として、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤との組み合わせ、および/または、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との組み合わせを用いることに特徴がある。
【0059】
アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤は、いずれも、無機粒子の種類や、無機粒子分散ペーストに要求される特性に応じて、適宜選択的に用いられている。しかしながら、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および、ノニオン系界面活性剤を単独で用いた無機粒子分散ペーストを保存した場合、無機粒子分散ペーストを構成する樹脂バインダーが分離し、無機粒子の分散性が悪化して、使用時に印刷ムラが生じる。これに対して、本発明者らが鋭意検討したところ、アニオン系界面活性剤と、ノニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種とを組み合わせることにより、2種類以上の樹脂バインダーの相溶性が改善され、無機粒子分散ペーストにおける無機粒子の分散性を確保できるとともに、2種類以上の樹脂バインダーを用いた無機粒子分散ペーストにおいても、保存安定性および塗布作業性が向上するとの知見が得られた。
【0060】
アニオン系界面活性剤の含有量と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種の含有量との比率については、上記の2種類以上の樹脂バインダーの分離を防止する機能を得られる限り任意ではあるが、通常、1:4~4:1の範囲とすれば十分である。このアニオン系界面活性剤の含有量と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種の含有量との比率は、1:3~3:1の範囲にあることが好ましい。なお、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを併用する場合、アニオン系界面活性剤の含有量と、カチオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤の含有量の合計の混合比率が、1:4~4:1となれば十分であり、カチオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との間の混合比率は問われない。
【0061】
(界面活性剤の含有量)
本発明のペースト用樹脂組成物において、アニオン系界面活性剤と、ノニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤のうちの少なくとも1種とを含む、界面活性剤の含有量は、2種類以上の樹脂バインダーの相溶性の改善効果との関係で規定され、具体的には、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂の含有量の合計を100質量部とした場合に、10質量部以上、45質量部以下の範囲で設定される。この界面活性剤の含有量の比率は、好ましくは12質量部以上、45質量部以下の範囲で設定され、より好ましくは、15質量部以上、45質量部以下の範囲で設定され、さらに好ましくは20質量部以上、45質量部以下の範囲で設定される。
【0062】
この界面活性剤の含有量の比率が、10質量部未満の場合、2種類以上の樹脂バインダーの相溶性が改善できず、無機粒子分散ペーストにおける無機粒子の分散性も確保できないという問題が生じる。2種類以上の樹脂バインダーの相溶性の改善および無機粒子分散ペーストにおける無機粒子の分散性は、界面活性剤の含有量の比率が上がるに連れて向上する。しかしながら、この界面活性剤の含有量の比率が、45質量部を超えると、無機粒子分散ペーストの粘度が低くなり、塗布した際にダレが生ずるなど、塗布作業性が低下するという問題が生じる。
【0063】
(相溶性の評価)
本発明のペースト用組成物の相溶性は、ペースト用組成物の光線透過性および/またはペースト用組成物のガラス転移点(Tg)により評価することができる。
【0064】
a.光線透過性
本発明のペースト用樹脂組成物の相溶性は、ペースト用樹脂組成物を、厚さ1mmの板ガラスに塗布し、乾燥処理し、膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について波長400~800nmで測定した場合の光線透過率を用いて確認することができる。
【0065】
より具体的には、ペースト用樹脂組成物を、エタノール洗浄済みの板ガラス(厚さ1mm)に塗布し、乾燥処理し、膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について、紫外可視近赤分光光度計を用い、スペクトル測定モードで、UV/Visバンド幅:0.1~10nm、NIRバンド幅:0.4~40nm、走査速度:10~400nm/分、波長:400~800nm、データ取込間隔:0.025~5.0nmの条件で測定した場合の光線透過率を用いることができる。
【0066】
光線透過率は、ペースト用組成物を構成する樹脂バインダーの相溶性と相関する指標である。この光線透過率が、75%以上であれば、ペースト用樹脂組成物の相溶性が良好であると評価することができる。このような相溶性の良好なペースト用樹脂組成物を用いた無機粒子分散ペーストでは、その保存安定性が良好となる。この光線透過率は、80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。
【0067】
b.ガラス転移点
本発明のペースト用樹脂組成物の相溶性は、ペースト用樹脂組成物を、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布し、乾燥処理し、PETフィルムから剥離することで膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について24℃~500℃の温度範囲で測定した、示差走査熱量測定(DSC)スペクトルを用いたガラス転移点(Tg)の検出の有無により確認することができる。
【0068】
より具体的には、ペースト用樹脂組成物を、PETフィルム(厚さ0.05mm)に塗布し、乾燥処理し、PETフィルムから剥離することで膜厚10±2μmの塗膜を得て、該塗膜について、示差走査熱量計を用いて、昇温速度50℃/分の条件で、24℃~500℃の温度範囲において、DSCを行い、DSCスペクトルを得て、得られた該塗膜のDSCスペクトルにおけるTgの有無により、ペースト用樹脂組成物の相溶性を評価することができる。
【0069】
DSCスペクトルにおけるTgの検出の有無も、ペースト用組成物を構成する樹脂バインダーの相溶性を評価する指標となる。すなわち、樹脂バインダーを構成するポリビニルアセタール樹脂とセルロース系樹脂は、異なるTgを有しており、これらが分離している場合には、ペースト用組成物のDSCスペクトルにおいてそれぞれのTgが検出され、ポリビニルアセタール樹脂とセルロース系樹脂の相溶性が十分に高い場合には、Tgが不明瞭となって検出されない傾向となる。このDSCスペクトルにおいてTgが未検出であれば、ペースト用樹脂組成物の相溶性が良好であると評価することができる。このような相溶性の良好なペースト用樹脂組成物を用いた無機粒子分散ペーストでは、その保存安定性が良好となる。
【0070】
なお、ペースト用組成物の相溶性の評価において、光線透過性およびガラス転移点(Tg)の検出の有無については、単独であるいは組み合わせて用いることができ、いずれか一方を具備していれば、該ペースト用組成物に要求される相溶性が具備されていると評価することができる。ただし、両者を具備していることが好ましい。
【0071】
(2)無機粒子分散ペースト
本発明の無機粒子分散ペーストは、無機粒子およびペースト用樹脂組成物からなり、このペースト用樹脂組成物として、上記した本発明のペースト用樹脂組成物が用いられていることに特徴がある。
【0072】
本発明においては、無機粒子の種類は特に限定されず、たとえば、導電性粉末、磁性粉末、セラミック粉末、ガラス粉末、抵抗体粉末、絶縁性粉末などが挙げられる。
【0073】
導電性粉末の種類は特に限定されず、たとえば、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、これらの合金などからなる粉末などが挙げられる。これらの導電性粉末は、単独で用いることができ、2種類以上の混合粉末を用いることもできる。
【0074】
磁性粉末としては、たとえば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどのフェライト類、酸化クロムなどの金属酸化物、コバルトなどの金属磁性体、アモルファス磁性体などの粉末が挙げられる。これらの磁性粉末についても、単独で用いることができ、2種類以上の混合粉末を用いることもできる。
【0075】
セラミック粉末としては、たとえば、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン(Si・Al)、スピネル、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの粉末が挙げられる。これらのセラミック粉末についても、単独で用いることができ、2種類以上の混合粉末を用いることもできる。
【0076】
ガラス粉末としては、たとえば、酸化ケイ素および/または酸化ホウ素などに、アルミナ、酸化バリウム、酸化カルシウムなどを含む粉末が挙げられる。これらのセラミック粒子についても、単独で用いることができ、2種類以上の混合粉末を用いることもできる。
【0077】
本発明の無機粒子分散ペーストは、これらの粉末を含む導電性ペースト、磁性粉末ペースト、セラミックペースト、ガラスペーストのみならず、2種類以上の種類の異なる無機粒子を含むペーストも含む。たとえば、導電性ペーストには、焼結抑制剤としてのセラミック粉末や基材に主成分として含まれるセラミック粉末と同じ組成あるいは類似の組成のセラミック粉末(共材)が好適に添加される。また、厚膜抵抗体ペーストには、導電成分としての酸化ルテニウムなどのセラミック粉末と、ガラス粉末とが含まれる。
【0078】
無機粒子とペースト用樹脂組成物の混合比率は、無機粒子の種類と用途により適宜調整される。塗布作業性の観点から、通常、ペースト用樹脂組成物の含有量は、全ペースト量に対して、10質量%以上、70質量%以下の範囲にあることが好ましい。
【0079】
より具体的には、たとえば、ガラスペーストの場合、ガラスペースト中にガラス粉末が65質量%以上、90質量%以下、含有される(ペースト用樹脂組成物が10質量%以上、35質量%以下、含有される)。導電性ペーストの場合は、導電性ペースト中に導電性粉末が30質量%以上、90質量%以下、含有される(ペースト用樹脂組成物が10質量%以上、70質量%以下、含有される)。磁性粉末ペーストの場合は、磁性粉末ペースト中に磁性粉末が70質量%以上、90質量%以下、含有される(ペースト用樹脂組成物が10質量%以上、30質量%以下、含有される)。
【0080】
また、本発明の無機粒子分散ペーストは、無機粒子およびペースト用樹脂組成物のほかに、粘度調整剤、アニオン系界面活性剤からなる分散剤、消泡剤などを適宜含むことができる。
【0081】
(3)ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストの製造方法
本発明のペースト用樹脂組成物の製造方法の一例を示す。本発明のペースト用樹脂組成物の製造方法は、ポリビニルアセタール樹脂および/またはセルロース系樹脂と有機溶剤を含む樹脂バインダー(有機ビヒクル)を調整する工程(工程1)、および、有機ビヒクルと界面活性剤を混合し、ペースト用樹脂組成物を調整する工程(工程2)を備える。
【0082】
樹脂バインダーを調製する手順は特に限定されるものではない。たとえば、ポリビニルアセタール樹脂およびセルロース系樹脂と有機溶剤とを混合して、樹脂バインダーを調整することができる。また、ポリビニルアセタール樹脂を含む有機ビヒクルと、セルロース系樹脂を含む有機ビヒクルとをそれぞれ別に調製することもできる。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂と有機溶剤とを混合して第1の有機ビヒクルを調製し、別に、セルロース系樹脂と有機溶剤とを混合して第2の有機ビヒクルを調製して、第1の有機ビヒクルと第2の有機ビヒクルとを混合して、その後、界面活性剤を添加し、あるいは、第1の有機ビヒクルと第2の有機ビヒクルと界面活性剤を同時に混合して、樹脂バインダーと界面活性剤との混合物を得ることができる。
【0083】
樹脂バインダー(有機ビヒクル)を調整する際の具体的な条件は、特に限定されない。たとえば、有機溶剤を50℃以上、60℃以下に加温した恒温槽の中で、ポリビニルアセタール樹脂および/またはセルロース系樹脂を有機溶剤に徐々に加え、樹脂成分が溶解するまで攪拌しながら加熱することで調整することができる。
【0084】
次に、本発明のペースト用樹脂組成物を調製する。工程1で調製した樹脂バインダー、あるいは、第1の有機ビヒクルおよび第2の有機ビヒクルと、界面活性剤とを混合する。
【0085】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂バインダー(あるいは、第1の有機ビヒクルおよび第2の有機ビヒクル)の樹脂固形分100質量部に対して、界面活性剤を15質量部以上、45質量部以下を添加して混合する。
【0086】
混合の方法としては、公知の手段を用いればよく、たとえば、攪拌機、自公転ミキサーなどを用いることができる。また、この段階で、別途、有機溶剤を添加して粘度を調製することもできる。
【0087】
本発明の無機粒子分散ペーストの製造方法は、工程2で調製したペースト用樹脂組成物に、無機粒子を分散させて無機粒子分散ペーストを調製する工程(工程3)をさらに含む。
【0088】
ただし、本発明の無機粒子分散ペーストの製造方法は、工程1で調製した樹脂バインダーに無機粒子を最初に添加し分散させて、無機粒子含有樹脂バインダーを調製し(工程2′)、その後、この無機粒子含有樹脂バインダーに界面活性剤を添加し混合して、無機粒子分散ペーストを調整する工程(工程3′)からなるようにすることもできる。
【0089】
ペースト用樹脂組成物あるいは樹脂バインダーに、無機粒子を添加し分散させる工程も、公知の手段を用いればよく、たとえば、2本ロールミル、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自公転式攪拌装置、ニーダー、ミックスローター、スターラーなどを用いることができる。
【0090】
他の添加成分を含む場合は、無機粒子を分散させる工程において、ペースト用樹脂組成物と無機粒子をミキサーに投入した際に、これらの各種添加成分も合わせて投入することができる。
【0091】
無機粒子を分散させる工程における手順は任意であり、ペースト用樹脂組成物と無機粒子を同時にミキサーに添加することもでき、あるいは、最初にペースト用樹脂組成物をミキサーに添加し、その後、無機粒子を徐々に添加することもできる。また、この段階でも、別途、有機溶剤を添加して粘度を調整することもできる。
【実施例
【0092】
以下に、本発明について、実施例を示すことにより、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
<有機ビヒクルの調整>
実施例1では、ポリビニルアセタール樹脂として、ポリビニルブチラールを、セルロース系樹脂として、エチルセルロースを用いた。
【0094】
まず、95gのターピネオールを60℃まで加熱した。加熱したターピネオールをインペラー(羽根車)で攪拌しながら、5gのポリビニルブチラールを徐々に加えて、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が5質量%である第1の有機ビヒクルを調整した。
【0095】
同様に、95gのターピネオールを60℃まで加熱した。加熱したターピネオールをインペラーで攪拌しながら、5gのエチルセルロースを徐々に加えて、エチルセルロースの含有量が5質量%である第2の有機ビヒクルを調製した。
【0096】
<ペースト用樹脂組成物の調整>
実施例1では、アニオン系界面活性剤として、ステアリン酸を、カチオン系界面活性剤として、ロジンアミンを用いた。
【0097】
40gの第1の有機ビヒクル、60gの第2の有機ビヒクル、1gのステアリン酸、1gのロジンアミンを、それぞれ自公転ミキサー(株式会社シンキー製、ARE-310)に投入し、2000rpmで、5分間、混合を行って、ペースト用樹脂組成物を調整した。
【0098】
このペースト用樹脂組成物において、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの含有量の合計(5g)に対する、ポリビニルブチラールの含有量(1g)の比率は、0.4であった。また、ステアリン酸の含有量とロジンアミンの含有量との比率は、1:1であった。さらに、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリン酸の含有量は20質量部、ロジンアミンの含有量は20質量部(合計で40質量部)であった。
【0099】
ペースト用樹脂組成物の組成(界面活性剤の種類を含む)について、表1に示す。なお、その他の実施例および比較例についても同様である。
【0100】
<光線透過率測定>
得られたペースト用樹脂組成物の光線透過率を測定し、相溶性の確認を行った。具体的には、エタノール洗浄済みの板ガラス(50mm角、厚さ1mm)に、アプリケーター(塗膜厚254μm用)をセットし、自動塗工装置(テスター産業株式会社製、PI-1210)を用いて、ペースト用樹脂組成物を塗布した。その後、電気オーブン(アドバンテック東洋株式会社製、DRA330DA)を用いて、120℃で40分間の乾燥処理を行った。ダイヤルゲージを用いて、塗膜厚を測定したところ、ペースト用樹脂組成物の乾燥膜厚は、10±2μmであった。
【0101】
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-670)に透過率ユニットを取り付けた。スペクトル測定モードを用い、測定モードは%T(透過率)にセットし、レスポンス:ミディアム、バンド幅:2.0nm、走査速度:400nm/分、開始波長:800nm、終了波長:400nm、データ取込間隔:2.0nmの条件に設定した。まず、透過率ユニットのみで、ベースライン測定をおこない、基準測定を行った。次に、透過率ユニットの試料側に、塗工後乾燥させた板ガラスを、塗工膜面を分光光度計の光源側に取り付け、試料について透過率測定を行い、550nmの透過率について数値化した。その結果、550nmの透過率は、84.0%と、ガラス単体の91.1%に近い値を示した。この結果、実施例1のペースト用樹脂組成物では、分散剤として2種類の界面活性剤を添加することにより、2種類の樹脂からなる樹脂バインダーの相溶性が良好であることが確認された。その結果を、表2に示す。なお、その他の実施例および比較例についても同様である。
【0102】
<示差走査熱量測定>
ペースト用樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)を行い、ガラス転移点(Tg)の検出の有無による相溶性の確認を行った。具体的には、PETフィルム(厚さ0.05mm)に、アプリケーター(塗膜厚254μm)をセットし、自動塗工装置(テスター産業株式会社製、Pl-1210)を用いて、ペースト用樹脂組成物を塗布した。その後、電気オーブン(アドバンテック東洋株式会社製、DRA330DA)を用いて、120℃で40分間乾燥処理を行った。ダイヤルゲージを用いて、塗膜厚を測定したところ、ペースト用樹脂組成物の乾燥膜厚は、10±2μmであった。
【0103】
示差走査熱量計(ブルカー・エイエックス株式会社製、DSC3100SA)を用い、昇温速度:50℃/分、25℃~500℃の温度範囲で、DSCを行い、DSCスペクトルを得て、Tgの検出の有無を確認した。
【0104】
まず、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースについて、それぞれ単独でDSCを行い、得られたDSCスペクトルにおいて、ポリビニルブチラールのTgは65℃に、エチルセルロースのTgは137℃に、それぞれ検出された。
【0105】
次に、実施例1のペースト用樹脂組成物についてもDSCを行った。その結果、そのDSCスペクトルからは、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースのTgが検出されなかった。図1に、実施例1のDSCスペクトルを示す。
【0106】
以上の光線透過率およびDSCスペクトルにおけるTgの未検出という結果から、実施例の1のペースト用樹脂組成物は、分散剤として2種類の界面活性剤が添加されていることにより、2種類の樹脂からなる樹脂バインダーの相溶性が良好となっていることが確認された。その結果を、表2に示す。なお、その他の実施例および比較例についても同様である。
【0107】
<無機粒子分散ペーストの調整>
得られたペースト用樹脂組成物と酸化チタンとを、ペースト用樹脂組成物が63.0質量%、酸化チタンが37.0質量%となるように、ボールミルで混合し、無機粒子分散ペーストを調整した。得られた無機粒子分散ペースト100mlを容器に分取し、1日静置した。その後、無機粒子分散ペーストにパレットナイフを垂直に差し込み、有機成分の浮きの有無を判断した。その結果、実施例1の無機粒子分散ペーストでは、有機成分の浮きがなく、樹脂バインダーの分離は確認されなかった。その結果を、表2に示す。なお、その他の実施例および比較例についても同様である。
【0108】
(実施例2)
カチオン系界面活性剤として、ステアリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリン酸の含有量を10質量部、ステアリルアミンの含有量を10質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、78.5%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0109】
(実施例3)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、カチオン系界面活性剤として、ラウリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を10質量部、ラウリルアミンの含有量を5質量部(合計で15質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、78.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0110】
(実施例4)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、カチオン系界面活性剤として、ロジンアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を30質量部、ロジンアミンの含有量を15質量部(合計で45質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、86.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0111】
(実施例5)
アニオン系界面活性剤として、ラウロイルサルコシンを、カチオン系界面活性剤として、ラウリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ラウロイルサルコシンの含有量を20質量部、ラウリルアミンの含有量を10質量部(合計で30質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、82.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0112】
(実施例6)
アニオン系界面活性剤として、ラウロイルサルコシンを、カチオン系界面活性剤として、ラウリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ラウロイルサルコシンの含有量を5質量部、ラウリルアミンの含有量を15質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、78.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0113】
参考例7)
カチオン系界面活性剤に代替して、ノニオン系界面活性剤を用い、このノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンモノステアレートを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリン酸の含有量を20質量部、ポリオキシエチレンモノステアレートの含有量を20質量部(合計で40質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、85.5%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0114】
参考例8)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンモノラウレートを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を10質量部、ポリオキシエチレンモノラウレートの含有量を10質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、80.5%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0115】
(実施例9)
アニオン系界面活性剤として、オレオイルサルコシンを、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテルを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレオイルサルコシンの含有量を30質量部、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテルの含有量を15質量部(合計で45質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、85.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0116】
(実施例10)
アニオン系界面活性剤として、オレオイルサルコシンを、ノニオン系界面活性剤として、ココアルキルアミン-酸化エチレン付加物を用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレオイルサルコシンの含有量を20質量部、ココアルキルアミン-酸化エチレン付加物の含有量を10質量部(合計で30質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、81.5%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0117】
(実施例11)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、ノニオン系界面活性剤として、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を20質量部、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)-ラウリルアミンの含有量を10質量部(合計で30質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、82.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0118】
(実施例12)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレン-ラウリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を10質量部、ポリオキシエチレン-ラウリルアミンの含有量を10質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、78.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0119】
(実施例13)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、ノニオン系界面活性剤として、牛脂脂肪酸ジエタノールアミドを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を10質量部、牛脂脂肪酸ジエタノールアミドの含有量を10質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、78.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0120】
(実施例14)
アニオン系界面活性剤として、オレイン酸を、ノニオン系界面活性剤として、オレイン酸ジエタノールアミドを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、オレイン酸の含有量を10質量部、オレイン酸ジエタノールアミドの含有量を10質量部(合計で20質量部)としたこと以外は、実施例7と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、80.0%であり、そのDSCスペクトルではTgは検出されず、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きも確認されなかった。
【0121】
(比較例1)
カチオン系界面活性剤として、ステアリルアミンを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリン酸の含有量を4質量部、ステアリルアミンの含有量を1質量部(合計で5質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、73.0%であった。また、比較例1のペースト用組成物について、実施例1と同様にDSCを行ったところ、そのDSCスペクトルにおいて、67℃と135℃においてTgが検出された。図2に、比較例1のDSCスペクトルを示す。さらに、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きが確認された。
【0122】
(比較例2)
界面活性剤として、アニオン系界面活性剤であるステアリン酸のみを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリン酸の含有量を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、67.7%であり、そのDSCスペクトルにおいて、65℃と135℃においてTgが検出された。また、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きが確認された。
【0123】
(比較例3)
界面活性剤として、カチオン系界面活性剤であるステアリルアミンのみを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ステアリルアミンの含有量を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、62.6%であり、そのDSCスペクトルにおいて、66℃と135℃においてTgが検出された。また、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きが確認された。
【0124】
(比較例4)
界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンモノステアレートのみを用い、ポリビニルブチラールおよびエチルセルロースの固形分の含有量を100質量部とした場合、ポリオキシエチレンモノステアレートの含有量を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、65.0%であり、そのDSCスペクトルにおいて、66℃と137℃においてTgが検出された。また、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きが確認された。
【0125】
(比較例5)
界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ペースト用樹脂組成物および無機粒子分散ペーストを作製した。ペースト用樹脂組成物についての550nmの光線透過率は、71.5%であり、そのDSCスペクトルにおいて、65℃と135℃においてTgが検出された。また、無機粒子分散ペーストにおける有機成分の浮きが確認された。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
図1
図2