(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物及びその硬化被膜を有する被覆基材
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230825BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230825BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230825BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230825BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230825BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230825BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230825BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230825BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230825BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C09D201/00
C08L101/00
C08K3/22
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B7/027
C09D7/61
C09D7/65
C09D163/00
C09D153/00
(21)【出願番号】P 2019106313
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】大胡 義和
(72)【発明者】
【氏名】大谷 朋子
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095839(JP,A)
【文献】特開2019-041097(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132564(WO,A1)
【文献】特開2005-317371(JP,A)
【文献】特開2018-160636(JP,A)
【文献】特開2007-317945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
270℃以上の融点を有する高融点基材への塗布用の熱硬化性組成物であって、
(A)熱硬化性成分と、
(B)酸化アルミニウム粒子と、
(C)下記式(I)又は下記式(II)
X-Y-X (I) 又は X-Y-X’ (II)
(式中、X及びX’はガラス転移点Tgが0℃以上のメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。)
で表されるアクリル系ブロック共重合体であって、前記アクリル系ブロック共重合体の合計質量に対するX及びX’の和の質量百分率が、12質量%以上35質量%以下の範囲にあるアクリル系ブロック共重合体と、
を含
み、
(A)熱硬化性成分の量が、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して1質量%以上10質量%以下の範囲であり、
(B)酸化アルミニウム粒子の量が、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して40質量%以上95質量%以下であり、
(C)アクリル系ブロック共重合体の量が、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲であることを特徴とする熱硬化性組成物。
【請求項2】
(C)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が65,000以上80,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
(C)アクリル系ブロック共重合体が、前記式(I)で表されるアクリル系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
前記式(I)中、Xがメタクリル酸メチル単位を主体とする重合体ブロックであり、Yがアクリル酸n-ブチル単位を主体とする重合体ブロックであることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
前記高融点基材が、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の熱硬化性組成物の硬化被膜を有することを特徴とする被覆基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性組成物及びその硬化被膜を有する被覆基材に関し、特に、高融点基材への塗布用の熱硬化性組成物及びその硬化被膜を有する被覆基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙フェノール、紙エポキシ等を用いた銅張積層版、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ版等の平面基材に導体パターンが形成されていたが、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の高温熱可塑性のスーパーエンジニアリングプラスチックがプリント配線板への部品の実装時のリフロー工程の加熱にも耐え得る耐熱性を有していることから、近年スーパーエンジニアリングプラスチックの立体成形物を回路形成用の基材として用いることが検討されている。なお、立体成形物の基材に回路形成され、部品が実装された立体回路成形部品は、MID(Molded Interconnect Device)と呼称される。
【0003】
特許文献1には、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性を有する熱可塑性樹脂の立体成形物をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆したMID用の基板に関する発明が開示されている。
【0004】
特許文献1の基板を用いたMIDによれば、小型で複雑形状の立体成形物の表面に回路を形成できるため、電子部品の軽薄短小のトレンドに合致したものを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のスーパーエンジニアリングプラスチックはガラス転移点(Tg)が高く、熱膨張率(CTE)が低いため、従来のソルダーレジスト用樹脂組成物をスーパーエンジニアリングプラスチックの表面に塗布するとCTE差によって形成されたソルダーレジスト膜が剥離するおそれがあることが発明者らの検討によって明らかになってきた。これは、CTE差による収縮を吸収できない塗膜の硬さにも原因があると考えられる。
【0007】
一般に、基材と基材上に被覆される樹脂組成物との間でのCTE差が問題となる場合には樹脂組成物中の無機充填剤の配合量を増大させることでCTE差を抑制することが知られているが、基材にスーパーエンジニアリングプラスチックのような高融点の素材を用いた場合については何ら検討されていない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高融点基材に塗布した場合に、塗膜が剥離する問題を解消し得る高融点基材の表面被覆用の熱硬化性組成物、及び、高融点基材上に熱硬化性組成物の表面被覆層を施した被覆基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的達成に向け鋭意検討を行った。その結果、熱硬化性組成物に酸化アルミニウムと所定割合のメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するブロック共重合体とを配合することで、塗膜の高融点基材からの剥離の問題が解消されたことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、
270℃以上の融点を有する高融点基材への塗布用の熱硬化性組成物であって、
(A)熱硬化性成分と、
(B)酸化アルミニウム粒子と、
(C)下記式(I)又は下記式(II)
X-Y-X (I) 又は X-Y-X’ (II)
(式中、X及びX’はガラス転移点Tgが0℃以上のメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。)
で表されるアクリル系ブロック共重合体であって、前記アクリル系ブロック共重合体の合計質量に対するX及びX’の和の質量百分率が、12質量%以上35質量%以下の範囲にあるアクリル系ブロック共重合体と、
を含むことを特徴とする熱硬化性組成物により達成されることが見出された。
【0011】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに(C)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が65,000以上80,000以下であることが好ましい。
【0012】
また、(C)アクリル系ブロック共重合体が、前記式(I)で表されるアクリル系ブロック共重合体であることが好ましく、前記式(I)中、Xがメタクリル酸メチル単位を主体とする重合体ブロックであり、Yがアクリル酸n-ブチル単位を主体とする重合体ブロックであることがさらに好ましい。
【0013】
そのうえ、(B)酸化アルミニウム粒子の量が、熱硬化性組成物の合計質量に対して40質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0014】
さらに、(C)アクリル系ブロック共重合体の量が、熱硬化性組成物の合計質量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0015】
また、好ましくは、高融点基材が、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される。
【0016】
本発明の上記目的は、本発明の熱硬化性組成物の硬化被膜を有することを特徴とする被覆基材によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高融点基材上に熱硬化性組成物が塗布された場合に、得られた硬化被膜のクラックの発生を抑制でき、高融点基材からの硬化被膜の剥離の問題を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<熱硬化性組成物>
本発明の熱硬化性組成物は、270℃以上の融点を有する高融点基材への塗布用の熱硬化性組成物であって、
(A)熱硬化性成分と、
(B)酸化アルミニウム粒子と、
(C)下記式(I)又は下記式(II)
X-Y-X (I) 又は X-Y-X’ (II)
(式中、X及びX’はガラス転移点Tgが0℃以上のメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。)
で表されるアクリル系ブロック共重合体であって、前記アクリル系ブロック共重合体の合計質量に対するX及びX’の和の質量百分率が、12質量%以上35質量%以下の範囲にあるアクリル系ブロック共重合体と、
を含む。
【0019】
本発明の熱硬化性組成物は、270℃以上の融点を有する高融点基材への塗布のために用いられる。
【0020】
基材については、導体パターンが形成され、その後リフローはんだ付けやフローはんだ付けにより部品を実装する際の熱に耐える必要があることから、270℃以上、好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上の融点を有する高融点基材が使用される。
【0021】
本発明において、高融点基材の融点(融解温度)とは、示差走査型熱量計を用いてJIS K 7121に準じて測定される温度を意味する。
【0022】
270℃以上の融点を有する高融点基材の素材としては、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイドが挙げられる。これらの素材に必要に応じて、無機フィラーを添加したり、ガラスクロスと併用してもよい。この無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状無機フィラー、短繊維状フィラー(炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛等のウィスカ)、タルク、マイカ等の板状無機フィラーが挙げられる。
【0023】
繊維状無機フィラーが添加される場合、その形状に関し、繊維径は6~15μmの範囲内で、アスペクト比は5~60の範囲内であることが好ましい。板状無機フィラーを使用する場合、板状無機フィラーは1~80μm、好ましくは1~50μmの平均長さを有するとともに、2~60、好ましくは10~40の平均アスペクト比(長さ/厚み)を有することが好ましい。
【0024】
繊維状無機フィラー、短繊維状フィラー(ウィスカ)、板状無機フィラーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粉末状や針状の無機フィラーが添加されていてもよい。さらに、着色剤として、カーボンブラックなどが270℃以上の融点を有する高融点基材に添加されていてもよい。
【0025】
中でも、270℃以上の融点を有する高融点基材の素材としては、成形性、電気特性、耐薬品性の観点から、液晶ポリマーを用いることが好ましい。
【0026】
本発明の高融点基材に用いる液晶ポリマーは、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定はない。
【0027】
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明の高融点基材に用いる液晶ポリマーは、光学的に異方性を示すもの、すなわち、直交偏光子との間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0028】
液晶ポリマーを構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボンが挙げられる。液晶ポリマーは、これらの重合性単量体の1種の単独重合体であってもよく、2種以上の重合性単量体の共重合体であってもよいが、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体を構成成分として含むことが好ましい。
【0029】
なお、液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、前記例示した化合物の1種以上が結合してなるオリゴマーであってもよい。
【0030】
液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(a)および/または式(b)で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂や、同繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
【0031】
【0032】
本発明の熱硬化性組成物は、高融点基材が、射出成形され、導体パターンが形成された基材である場合に、特に好ましく用いられる。そして、射出成形された高融点基材の立体成形物を導体パターン形成用の基材として用いる場合、高融点基材は、高温加熱された際にも剛直性を維持することが要求される。
【0033】
具体的には、高融点基材は、ASTM D648(1.82MPa)(ASTM International(旧称American Society for Testing and Materials:米国試験材料協会)が策定・発行する規格であるASTM規格の規格番号)に基づく荷重たわみ温度(DTUL)が140℃以上350℃以下であり、好ましくは180℃以上310℃以下であり、特に好ましくは200℃以上290℃以下である。
【0034】
高融点基材の上記荷重たわみ温度が140℃以上350℃以下であることで、はんだ付けの加熱の際にも変形することなく、また、成形加工も容易となる。
【0035】
具体的な荷重たわみ温度(DTUL)の測定の一例について、液晶ポリマーの場合を例に、以下に示す。
【0036】
射出成形機(日精樹脂工業社製、UH1000-110)を用いて、結晶融解温度+20~40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製する。これを用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で所定たわみ量(0.254mm)になる温度を測定する。
【0037】
これら270℃以上の融点を有し、上記荷重たわみ温度が140℃以上350℃以下である高融点基材の市販品としては、Vectra(登録商標)E841iLDS、Vectra(登録商標)E840iLDS(以上、セラニーズジャパン社製)、TECACOMP(登録商標) LCP LDS black4107(エンズィンガー社製)、RTP 3499-3 X 113393A(RTP社製)などが挙げられる。また、上記270℃以上の融点を有し、上記荷重たわみ温度が140℃以上350℃以下である高融点基材は、上野製薬社からも市販されている。
【0038】
[(A)熱硬化性成分]
熱硬化性成分は、本発明の熱硬化性組成物を熱硬化させるために添加される化合物である。
【0039】
本発明に用いられる熱硬化性成分としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体、ビスマレイミド、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。特に好ましいのは分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、「環状(チオ)エーテル基」と略す)を有する熱硬化性成分である。
【0040】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0041】
前記多官能エポキシ化合物としては、三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、ダイセル化学工業社製のEHPE3150、DIC社製のEPICLON 840、EPICLON 850、EPICLON 1050、EPICLON 2055、新日鉄住金化学社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、ハンツマンジャパン社のアラルダイト6071、アラルダイト6084、アラルダイトGY250、アラルダイトGY260、住友化学工業社製のスミエポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON 152、EPICLON 165、新日鉄住金化学社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、ハンツマンジャパン社製のアラルダイト8011、住友化学工業社製のスミエポキシESB-400、ESB-700等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、EPICLON N-770、EPICLON N-865、新日鉄住金化学社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、ハンツマンジャパン社製のアラルダイトECN1235、アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1299、アラルダイトXPY307、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000、住友化学工業社製のスミエポキシESCN-195X、ESCN-220、ECN-235、ECN-299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON 830、三菱ケミカル社製jER807、新日鉄住金化学社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004、ハンツマンジャパン社製のアラルダイトXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、新日鉄住金化学社製のエポトートYH-434、ハンツマンジャパン社製のアラルダイトMY720、住友化学工業社製のスミエポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ハンツマンジャパン社製のアラルダイトCY-350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、ハンツマンジャパン社製のアラルダイトCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、日本化薬社製のEPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-931、ハンツマンジャパン社製のアラルダイト163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;ハンツマンジャパン社製のアラルダイトPT810(商品名)、日産化学社製のTEPIC(登録商標)等の複素環式エポキシ樹脂;日油社製ブレンマー(登録商標)DGT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鉄住金化学社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄住金化学社製ESN-190、ESN-360、DIC社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば新日鉄住金化学社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0043】
前記分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、三菱ケミカル社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0044】
(A)熱硬化性成分は、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して1質量%以上10質量%以下の範囲、好ましくは1質量%以上5質量%以下の範囲で配合される。(A)熱硬化性成分を熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して1質量%以上10質量%以下の範囲とすることで、線膨張係数(CTE)が低くなり密着性が良好となる。
【0045】
また、(A)熱硬化性成分として上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒(硬化触媒)を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
これら硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物の合計100質量部当り0.1質量部以上、10質量部以下が適当である。硬化触媒の配合量が、この範囲であれば、硬化性が良好で、可使時間が長い。
【0047】
[(B)酸化アルミニウム粒子]
本発明で使用される(B)酸化アルミニウム粒子は球状であることが望ましい。球状の酸化アルミニウムを用いることで高充填した際の粘度上昇を和らげることができる。このような酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、0.01μm~50μm、より好ましくは0.01μm~20μmである。平均粒子径が、0.01μmよりも小さいと組成物の粘度が高くなりすぎて、分散が困難であり、被塗布物への塗布も困難となる。一方、平均粒子径が、50μmより大きいと塗膜への頭出しが発生することと、沈降速度が速くなり保存安定性が悪化する。また、最密充填となるような粒度分布を持つ2種類以上の平均粒子径のものを配合することにより、更に高充填にすることができ、保存安定性、熱伝導率の両側面から好ましい。
【0048】
ここで、本明細書において(B)酸化アルミニウム粒子の平均粒子径とは一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(d50)であり、レーザー回折法により測定されたd50の値である。レーザー回折法による測定装置としては日機装社製のMicrotrac MT3300EX11が挙げられる。
【0049】
(B)酸化アルミニウム粒子の市販品としては、DAW-05(デンカ社製、平均粒子径5μm)、DAW-10(デンカ社製、平均粒子径10μm)、AS-40(昭和電工社製、平均粒子径12μm)、AS-50(昭和電工製、平均粒子径9μm)等が挙げられる。
【0050】
(B)酸化アルミニウム粒子は、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して40質量%以上95質量%以下の範囲、好ましくは60質量%以上95質量%以下の範囲で配合することができる。
【0051】
(B)酸化アルミニウム粒子は、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して40質量%以上95質量%以下の範囲、好ましくは60質量%以上95質量%以下の範囲で配合することができる。
【0052】
(B)酸化アルミニウム粒子が、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して40質量%以上とすることで得られた硬化被膜の熱伝導率を効果的に下げることができ、95質量%以下とすることで硬化被膜の強度を高めることが可能となる
【0053】
[(C)アクリル系ブロック共重合体]
(C)アクリル系ブロック共重合体は、高融点基材への本発明の熱硬化性組成物の硬化被膜の密着性向上、および耐熱性向上を目的として配合される。
【0054】
ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。20℃~30℃の範囲において固体であるものが好ましい。この範囲内において固体であればよく、この範囲外の温度においても固体であってもよい。上記温度範囲において固体であることにより基材に塗布し仮乾燥したときのタック性に優れる。
【0055】
本発明で用いる(C)アクリル系ブロック共重合体は、X-Y-X、あるいはX-Y-X’型の3元共重合体である。X-Y-XあるいはX-Y-X’型ブロック共重合体のうち、中央のYがソフトブロックでありガラス転移点Tgが低く、好ましくは0℃未満であり、その両外側X及びX’がハードブロックでありTgが高く、好ましくは0℃以上のポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0056】
また、X-Y-XあるいはX-Y-X’型の(C)アクリル系ブロック共重合体のうち、X及びX’がTgが50℃以上のポリマー単位からなり、YがTgが-20℃以下であるポリマー単位からなるものがさらに好ましい。
【0057】
また、X-Y-XあるいはX-Y-X’型の(C)アクリル系ブロック共重合体のうち、X及びX’が上記(A)熱硬化性成分と相溶性が高いものが好ましく、Yが上記(A)熱硬化性成分との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
【0058】
X及びX’は、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、主としてメタクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックである。なお、メタクリル酸エステル単位を主体とするとは、重合体ブロックX及びX’の合計質量に基づいてメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含むことをいう。X及びX’中に含まれるメタクリル酸エステル由来の構造単位の割合は、重合体ブロックX及びX’中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0059】
重合体ブロックX及びX’を形成させるためのメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルなどを挙げることができ、中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。重合体ブロックX及びX’は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0060】
Yは、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、主としてアクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックである。なお、アクリル酸エステル単位を主体とするとは、重合体ブロックYの合計質量に基づいてアクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含むことをいう。Y中に含まれるアクリル酸エステル由来の構造単位の割合は、重合体ブロックY中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0061】
また、X及び/又はX’の構成単位に前述のエポキシ樹脂等の(A)熱硬化性成分と相溶性に優れる親水性構造単位を導入してもよい。これにより、更に相溶性を向上させることができる。ここでいう親水性構造単位とは、たとえば、スチレン単位、水酸基含有構造単位、カルボキシル基含有構造単位、エポキシ含有構造単位、N置換アクリルアミド構造単位等が挙げられる。
【0062】
重合体ブロックYを形成させるためのアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステルを挙げることができ、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸n-ブチルであることが特に好ましい。重合体ブロックYは、これらアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0063】
(C)アクリル系ブロック共重合体がX-Y-X型である場合、(C)アクリル系ブロック共重合体の合計質量に対するXの質量百分率は、12質量%以上35質量%以下であり、好ましくは15質量%以上30質量以下である。また、(C)アクリル系ブロック共重合体がX-Y-X’型である場合、(C)アクリル系ブロック共重合体の合計質量に対するX及びX’の和の質量百分率は、12質量%以上35質量%以下であり、好ましくは15質量%以上30質量以下である。
【0064】
これら質量百分率が12質量%以上35質量%以下となることで、高融点基材に本発明の熱硬化性組成物が塗布され、硬化された場合に、高融点基材への密着性を確保しつつ、耐熱性に優れた硬化被膜を得ることが可能となる。
【0065】
(C)アクリル系ブロック共重合体の市販品としては、クラリティ(登録商標)LA2250、クラリティ(登録商標)LA2140、クラリティ(登録商標)LA2330、クラリティ(登録商標)LA3320、クラリティ(登録商標)KL-LK9333、クラリティ(登録商標)LK-9243(以上、クラレ社製)などを挙げることができる。
【0066】
(C)アクリル系ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各ブロックを構成するモノマーをリビング重合する方法が一般に使用される。
【0067】
(C)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量は、20,000~400,000の範囲であり、好ましくは、67,000~79,000の範囲である。この範囲であれば、基材に塗布し、仮乾燥した後のタック性に優れるとともに、印刷性、加工性に優れた熱硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0068】
(C)アクリル系ブロック共重合体の配合量は、熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0069】
(C)アクリル系ブロック共重合体の配合量を熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して0.5質量%以上20質量%以下とすることで、熱硬化性樹脂の架橋密度を高いレベルで維持することが可能となる。
【0070】
[他の成分]
さらに、本発明の熱硬化性組成物には、酸化防止剤、有機溶剤、消泡剤・レベリング剤、分散剤、着色剤を添加することができる。
【0071】
酸化防止剤は、基材上の導体(銅)の酸化を抑制することで基材と熱硬化性組成物の硬化被膜の密着性を向上させる。酸化防止剤としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール等のヒンダードフェノール化合物、2-メルカプトベンツイミダゾールの亜鉛塩等の硫黄系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジ-tert-ブチルジフェニルアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤、メラミン、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のヘテロ原子として窒素を含む複素乾式化合物等が挙げられる。なかでも、メラミン、ベンゾトリアゾールが好ましく、メラミンが特に好ましい。
【0072】
酸化防止剤が配合される場合、その配合量は、本発明の熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して0.03質量%以上5質量%以下であり、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0073】
有機溶剤は、本発明の熱硬化性組成物の調整のため、又は基材に塗布するための粘度調整のために使用することができる。有機溶剤としては公知の有機溶剤であれば、いずれのものも用いることができる。
【0074】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0075】
消泡剤やレベリング剤は、表面平滑性の劣化を防止し、ボイドやピンホールによる層間絶縁性の劣化を防止するために配合することができる。消泡剤(レベリング剤)としては、シリコーン系消泡剤や破泡性ポリマー溶液である非シリコーン系消泡剤が挙げられ、シリコーン系消泡剤の市販品としては、BYK(登録商標)-063、BYK(登録商標)-065、BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-067A、BYK(登録商標)-077(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、KS-66(信越化学社製)などが挙げられる。
【0076】
また、非シリコーン系消泡剤の市販品としては、BYK(登録商標)-054、BYK(登録商標)-055、BYK(登録商標)-057、BYK(登録商標)-1790、BYK(登録商標)-1791(以上、ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0077】
消泡剤(レベリング剤)が配合される場合、その配合量は、本発明の熱硬化性組成物の合計質量(固形分)に対して10質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下である。
【0078】
分散剤は、(B)酸化アルミニウム粒子の分散性、沈降性を改善するために配合することができる。
【0079】
分散剤の市販品としては、例えば、ANTI-TERRA-U、ANTI-TERRA-U100、ANTI-TERRA-204、ANTI-TERRA-205、DISPERBYK-101、DISPERBYK-102、DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、DISPERBYK-108、DISPERBYK-109、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-112、DISPERBYK-116、DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-183、DISPERBYK-185、DISPERBYK-184、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2020、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2070、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2150、BYK-P104、BYK-P104S、BYK-P105、BYK-9076、BYK-9077、BYK-220S(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210、ディスパロンKS-860、ディスパロンKS-873N、ディスパロン7004、ディスパロン1830、ディスパロン1860、ディスパロン1850、ディスパロンDA-400N、ディスパロンPW-36、ディスパロンDA-703-50(以上、楠本化成社製)、フローレンG-450、フローレンG-600、フローレンG-820、フローレンG-700、フローレンDOPA-44、フローレンDOPA-17(共栄社化学社製)が挙げられる。
【0080】
分散剤が配合される場合、その配合量は、(B)酸化アルミニウム粒子100質量部(固形分)に対して、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
【0081】
着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、カラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0082】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などが挙げられる。
【0083】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物があり、上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0084】
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0085】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0086】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
【0087】
さらに、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の重合禁止剤、難燃剤、難燃助剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0088】
<被覆基材>
本発明の被覆基材は、本発明の熱硬化性組成物の硬化被膜を有する。
【0089】
本発明の硬化性組成物が塗布される、270℃以上の融点を有する高融点基材の素材については上記熱硬化性組成物の項目で述べたとおりであり、ここでは詳細の記載を省略する。
【0090】
本発明において、高融点基材は、複雑な形状を有する射出成形体であってもよく、その表面に配線パターン(電気回路)が形成されていてもよい。
【0091】
かかる射出成形体上への配線パターンの形成方法としては、例えば、LDS(Laser Direct Structuring)法が挙げられる。LDS法では、まず、銅錯体を熱可塑性樹脂に練り込んで射出成形し、該銅錯体を含有した成形体表面にレーザー描画を行う。レーザー光照射により銅錯体が金属化して無電解銅メッキの触媒活性が発現し、レーザー描画部分のメッキが可能となる。
【0092】
この高融点基材上に、本発明の熱硬化性組成物を、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60~130℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜が形成される。
【0093】
本発明の熱硬化性組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0094】
この塗膜を、例えば約140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、高融点基材上に硬化被膜が形成されてなる、本発明に係る被覆基材が得られる。
【0095】
電気回路を有する被覆基材は、その後、レーザー開口によりはんだ付け面となるランドを露出させ、このランドに対して金めっき処理による表面処理が施された後、はんだ付けにより部品が実装される。
【0096】
はんだ付けは、手はんだ付け、フローはんだ付け、リフローはんだ付け等のいずれで行われてもよいが、例えば、リフローはんだ付けの場合には、100℃~140℃で1~4時間の予熱と、その後、240℃以上270℃未満の温度で5~20秒程度の加熱を複数回(例えば、2~4回)繰り返してはんだを加熱・溶融させるリフロー工程により行われる。
【0097】
リフロー工程の後に冷却され、部品が実装されて立体回路成形部品(MID)が完成する。
【0098】
本発明の被覆基材、すなわち、270℃以上の融点を有する高融点基材上に本発明の熱硬化性組成物の硬化被膜を有する被覆基材は、耐熱性、剛性、基材への密着性、絶縁性に優れることから種々の用途に適用可能であり、適用対象に特に制限はない。例えば、射出成形された高融点基材上にエッチングレジスト、ソルダーレジスト、マーキングレジストを硬化被膜として有する被覆基材をそれぞれ製造することができ、中でも、はんだ付け性が向上していることから、高い耐熱性が要求されるソルダーレジストを硬化被膜として有する被覆基材を好適に製造することができる。
【0099】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【実施例】
【0100】
<1.実施例1~4及び比較例1~4の熱硬化性組成物の調製>
1.熱硬化性組成物の調製
表1に示す割合(単位:質量部)で各材料をそれぞれ配合、撹拌機にて予備混合し、次いで3本ロールミルにより混練して熱硬化性組成物を調整した。
【0101】
上記各熱硬化性組成物について、以下に示す特性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0102】
<2.熱硬化性組成物の塗膜の密着性(碁盤目付着性)の評価>
実施例1~4及び比較例1~4の熱硬化性組成物をLCP基板(Ensinger社製 TECACOMP LCP LDS 4107)上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が30μmとなるように印刷し、150℃60分間の加熱により硬化させた。なお、上記のLCP基板のASTM D648(1.82MPa)に基づく荷重たわみ温度(DTUL)は274℃である。
【0103】
JIS K 5600-5-6に準拠し、得られた硬化体の硬化塗膜をカットして縦横それぞれ幅1mmの碁盤目を100個(10×10)作製し、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、碁盤目の状態を調べた。評価基準は以下のとおりである。
【0104】
密着性(碁盤目付着性)
分類0:カットの縁が完全に滑らかで,どの格子の目にもはがれがない。
【0105】
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれが生じている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に5%を上回ることはない。
【0106】
分類2:塗膜がカットの縁に沿って,及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
【0107】
分類3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大きなはがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
【0108】
分類4:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大きなはがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
【0109】
分類5:分類4以上の大きなはがれが生じている。
【0110】
<3.熱硬化性組成物の塗膜のはんだ耐熱性の評価>
実施例1~4及び比較例1~4の熱硬化性組成物をLCP基板(Ensinger社製 TECACOMP LCP LDS 4107)上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が30μmとなるように印刷し、150℃60分間の加熱により硬化させた。
【0111】
得られた硬化塗膜上にロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽で30秒間フローさせた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥し、その後透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)によるピールテストを行い、剥がれの有無を評価した。
【0112】
はんだ耐熱性
○:剥がれがない。
×:剥がれがある。
【0113】
【0114】
*1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量209~219(g/eq)(N-695:DIC社製)
*2:平均粒子径約8μmの球状酸化アルミニウム(DAW-07:デンカ社製)
*3:平均粒子径約3μmの球状酸化アルミニウム(DAW-03:デンカ社製)
*4:平均粒子径約0.3μmの球状酸化アルミニウム(ASFP-20:デンカ社製)
*5:硫酸バリウム(B-30:堺化学工業社製)
*6:タルク(LMS-200:富士タルク工業社製)
*7:高分子タイプ、PMMA(ポリメチルメタクリレート)比率15wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA3320:クラレ社製)
*8:中分子タイプ、PMMA比率20wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2330:クラレ社製)
*9:低分子タイプ、PMMA比率20wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2140:クラレ社製)
*10:中分子タイプ、PMMA比率30wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2250:クラレ社製)
*11:低分子タイプ、PMMA比率10wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2114:クラレ社製)
*12:低分子タイプ、PMMA比率40wt%のアクリル系ブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2270:クラレ社製)
*13:ジシアンジアミド(DICY7:三菱ケミカル社製)
*14:2-エチル-4-メチルイミダゾ―ル(2E4MZ:四国化成社製)
*15:微粉メラミン(メラミン:日産化学社製)
*16:ジプロピレングリコールモノエチルエーテル
*17:シリコン系消泡剤(KS-66:信越化学工業社製)
*18:非シリコン系消泡剤(BYK-1791:ビックケミー・ジャパン社製)
*19:分散剤(BYK-111:ビックケミー・ジャパン社製)
【0115】
表1の実施例に示すように、(B)酸化アルミニウム粒子及びX及びX’の和の質量百分率が12質量%以上35質量%以下である(C)アクリル系ブロック共重合体が配合されるとき、高融点基材に対する本発明の熱硬化性組成物の硬化被膜の密着性がよく、剥離が生じなかった。同じく、(B)酸化アルミニウム粒子及びX及びX’の和の質量百分率が12質量%以上35質量%以下である(C)アクリル系ブロック共重合体が配合されるとき、硬化被膜のはんだ耐熱性がよく、硬化被膜にクラックも生じていなかった。
【0116】
一方、比較例1、2に示すように、X及びX’の和の質量百分率が12質量%以上35質量%以下の範囲から外れたブロック共重合体が配合されると、熱硬化性組成物の硬化被膜の高融点基材に対する密着性が低下し、剥離が生じることとなった。
【0117】
さらに、比較例3に示すように、X及びX’の和の質量百分率が12質量%以上35質量%以下である(C)アクリル系ブロック共重合体が配合されていても、無機充填剤として(B)酸化アルミニウム粒子が配合されていない場合には、はんだ耐熱性及び密着性が双方ともに満足のいく硬化被膜を得ることができなかった。