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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ポテトサラダの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/12 20160101AFI20230825BHJP
【FI】
A23L19/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019120140
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021003085
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510299503
【氏名又は名称】デリア食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518193032
【氏名又は名称】株式会社旬菜デリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宮田 正幸
(72)【発明者】
【氏名】薄井 友子
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 由祐子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103873(JP,A)
【文献】はなまるマーケット放送「帝国ホテルのポテトサラダ レシピ」|ちいつもblog, [online],2010年05月29日,[Retrieved on 25-04-2023], Retrieved from the internet:<URL: https://blog.chiitsumo.com/recipe/post_554.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポテトサラダの製造方法において、
50℃以上95℃以下の状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、
前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bと、を含み、
前記混合工程Aでは、混合物が、目開き1cmの網篩の上に残存するイモが18質量%以下の状態のクリーム状となるまで撹拌することを特徴とするポテトサラダの製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程後の、5℃以上35℃以下の混合物と、5℃以上35℃以下の状態の第2のイモとを混合する混合工程Cをさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載のポテトサラダの製造方法。
【請求項3】
ポテトサラダの製造方法において、
50℃以上95℃以下の状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、
前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bと、を含み、
前記冷却工程後の、5℃以上35℃以下の混合物と、5℃以上35℃以下の状態の第2のイモとを混合する混合工程Cをさらに含むことを特徴とするポテトサラダの製造方法。
【請求項4】
第1のイモ1質量部に対する第2のイモの含有量が0.25質量部以上5.5質量部以下であることを特徴とする、
請求項2又は3に記載のポテトサラダの製造方法。
【請求項5】
前記第1の乳化調味料の粘度(20℃)が0.05Pa・s以上10Pa・s以下であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載のポテトサラダの製造方法。
【請求項6】
前記第1の乳化調味料がホスフォリパーゼA処理卵黄を含むことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載のポテトサラダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口当たりのよいポテトサラダの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、じゃがいも破砕物を品温60~95℃の状態でオリゴ糖等を含有する調味液を含浸させ、次いで、当該じゃがいも破砕物を、真空冷却処理を行ない、その後、真空冷却処理済みじゃがいも破砕物と、乳化状調味料とを和えるポテトサラダの製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献4には、蒸煮し破砕したじゃがいもを30℃~55℃に冷却し、これに具材とマヨネーズを加えて和えた後、45分以内に15℃以下に急冷するポテトサラダの製造方法が記載されている。
【0004】
しかし、得られるポテトサラダについては、口当たりに関して改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-103873号公報
【文献】特開2014-103871号公報
【文献】特開2014-103874号公報
【文献】特開2002-119261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、口当たりのよいポテトサラダの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、50℃以上95℃以下に加熱した状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bと、を含む製造方法によれば、口当たりが良いポテトサラダを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ポテトサラダの製造方法において、50℃以上95℃以下の状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bと、を含むことを特徴とするポテトサラダの製造方法、
(2)前記冷却工程後の、5℃以上35℃以下の混合物と、5℃以上35℃以下の状態の第2のイモとを混合する混合工程Cをさらに含む、(1)に記載のポテトサラダの製造方法、
(3)第1のイモ1質量部に対する第2のイモの含有量が0.25質量部以上5.5質量部以下である、(1)又は(2)に記載のポテトサラダの製造方法、
(4)前記混合工程Aでは、混合物がクリーム状になるまで撹拌する、(1)~(3)のいずれかのポテトサラダの製造方法、
(5)前記第1の乳化調味料の粘度(20℃)が0.05Pa・s以上10Pa・s以下である、(1)~(4)のいずれかのポテトサラダの製造方法、
(6)前記第1の乳化調味料がホスフォリパーゼA処理卵黄を含む、(1)~(5)のいずれかのポテトサラダの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、口当たりの良いポテトサラダを製造することができる。したがって、ポテトサラダの更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明のポテトサラダの製造方法は、50℃以上95℃以下の状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bを含むことにより、口当たりのよいポテトサラダを製造できることに特徴を有する。
【0012】
<混合工程A>
本発明における混合工程Aは、50℃以上95℃以下の状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する工程である。混合する方法としては、任意の方法を用いることができ、特に制限されず、従来公知の攪拌機を用いることができる。混合工程Aにおいて、前述の温度に加熱された第1のイモと第1の乳化調味料が混合されることにより、第1の乳化調味料が適度に温められて、口当たりが軽くなる。
【0013】
<第1のイモ>
本発明に用いる第1のイモは、例えばじゃがいもである。じゃがいもは、一般にポテトサラダの原料となるじゃがいもを使用することができる。じゃがいもとしては、例えば、男爵、トヨシロ、さやか等が挙げられる。じゃがいもは、一般にポテトサラダの製造するための加工を施したじゃがいもを使用することができる。加工を施したじゃがいもとしては、例えば、破砕したじゃがいも、所定の大きさにカットされたじゃがいも、及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。じゃがいもは、破砕又はカットする前に加熱してもよいし、後に加熱してもよい。
【0014】
<第1のイモの処理>
第1のイモを混合工程Aに供する前に、前処理を行なってもよい。例えば、洗浄したじゃがいもを皮付きのまま蒸煮し、熱いうちに皮を剥いたものを目板等を用いて適当な大きさにカットしてもよい。または、皮を剥き、必要に応じ、適当な大きさにカットした後、蒸煮する等したものを、破砕してもよい。蒸煮の程度としては、具体的には、例えば、蒸煮機で30~90分間蒸煮し、品温が80~100℃程度となるようにすると良い。
【0015】
<第1のイモの温度>
混合工程Aに供する第1のイモの温度は50℃以上95℃以下に加熱した状態である。50℃以上であることにより、混合される第1の乳化調味料が口当たりの軽いものとなり、ひいてはポテトサラダの口当たりが軽くなる。50℃未満であれば、口当たりが重いポテトサラダとなる。95℃より高い温度であれば、第1の乳化調味料のエマルションが壊れてしまう。混合工程Aに供する第1のイモの温度は、好ましくは65℃以上である。これにより、ポテトサラダの口当たりがより軽くなる。また、当該温度は好ましくは90℃以下である。これにより、第1の乳化調味料の風味が残り、食味のより良いポテトサラダとなる。なお、第1のイモ及び後述の第2のイモの温度とは、当該イモが固形であるときは、その中心温度をいう。また、混合工程Aでは、前述の第1のイモの処理において、加熱をした後のイモを50℃以上95℃以下に冷却したものを用いてもよい。
【0016】
<第1の乳化調味料>
本発明の一態様に係る第1の乳化調味料は、水中油型乳化粒子が水相中に分散された調味料であればよい。水中油型乳化粒子とは、水相原料と油相原料とが水中油型に乳化されてなる乳化物、すなわち、油滴の表面に乳化剤層が形成されたエマルション粒子である。乳化調味料としては、例えば、マヨネーズ、タルタルソース、ドレッシング等の酸性乳化調味料が挙げられる。本発明の一態様に係る乳化調味料は、例えば、ポテトサラダ、卵サラダ、マカロニ等のパスタを含むサラダ等に用いることができる。
【0017】
<第1の乳化調味料のpH>
本発明の一態様に係る第1の乳化調味料のpHは特に制限されず、用途等に応じて適宜調整すればよい。例えば、乳化調味料のpHは、微生物発生を制御して保存性を高めながら、コクがあり、かつ、口当たりのよい乳化調味料が得られる観点から、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.8以上である。また、例えば、乳化調味料のpHは、微生物発生を制御して保存性を高めながら、コクがあり、かつ、口当たりのよい乳化調味料が得られる観点から、好ましくは6.5以下であり、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは4.6以下である。
【0018】
<食用油脂の種類>
第1の乳化調味料は食用油脂を含んでもよい。食用油脂としては一般に乳化調味料の原料となる油脂を使用することができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、米油、パーム油等の植物性油脂、魚油等の動物性油脂、及び、MCT(中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール)、ジアシルグリセロール等の化学処理又はリパーゼ処理を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0019】
<食用油脂の含有量>
第1の乳化調味料に含まれる食用油脂の含有量は、十分なコクを有し、口当たりのよい乳化調味料が得られる観点から、乳化調味料の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、十分なコクを有し、口当たりのよい乳化調味料が得られる観点から、乳化調味料の総量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0020】
<卵黄の種類>
第1の乳化調味料は卵黄を含んでもよい。卵黄は、一般に乳化調味料の原料となる油脂を使用することができる。卵黄としては、例えば、(i)酵素処理、脱コレステロール処理あるいは脱糖処理等を施した加工卵黄、(ii)卵を割卵し、工業的に卵白を分離除去した液卵黄、(iii)液卵黄に砂糖や食塩を添加し、0℃以下あるいはチルドで流通させる加塩卵黄又は加糖卵黄、(iv)液卵黄を乾燥処理した乾燥卵黄等が挙げられる。中でも、粒子の安定性を向上させる観点から、好ましくはホスフォリパーゼA処理卵黄である。また、第1の乳化調味料がホスフォリパーゼA処理卵黄を含むことがより好ましい。また、ホスフォリパーゼA処理卵黄としては、例えば、リゾ化率が好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、また、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下のものが好ましい。
【0021】
<卵黄の含有量>
第1の乳化調味料に含まれる卵黄の量は特に制限されず、コクを向上させる観点から、乳化調味料の総量に対して、生卵黄換算で好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、口当たりを軽くする観点から、乳化調味料の総量に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0022】
<食酢の種類>
第1の乳化調味料は、食酢を含有していることが好ましい。本発明の一態様に係る乳化調味料に含まれる食酢は、一般に乳化調味料の原料となる食酢を使用することができる。食酢としては、例えば、米酢等の穀物酢、果実酢等が挙げられる。
【0023】
<食酢の含有量>
第1の乳化調味料に含まれる食酢の含有量は、上記の好適な数値範囲のpHに調整することができる観点から、酢酸含有量4質量%の場合は、乳化調味料の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。また、同様に、上記の好適な数値範囲のpHに調整することができる観点から、乳化調味料の総量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0024】
<その他の原料>
本発明の一態様に係る乳化調味料は、上述した原料のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含有していてもよい。その他の原料としては、例えば、食塩、砂糖等の調味料、柑橘類の果汁、クエン酸、酒石酸、乳酸等の酸味料、グルタミン酸ソーダ等の呈味料、辛子粉、オイルマスタード、コショウ等の香辛料、ピクルス、オニオン等の具材等が挙げられる。また、本発明の一態様に係る乳化調味料は、食用油脂の含有量を低減する観点から、大豆蛋白質、澱粉、デキストリン、セルロース、その他増粘多糖類等を含んでいてもよい。
【0025】
<第1の乳化調味料の性状等>
混合工程Aに供する第1の乳化調味料の温度は特に制限されない。例えば、第1のイモの温度のように加熱する必要はなく、常温のものを用いてもよい。第1のイモと混合されることにより、第1の乳化調味料が適度に温められて、口当たりが軽くなる。また、第1のイモと混合しやすいように、粘度を低く調整されていることがより好ましい。例えば、水等で希釈して粘度を調整してもよい。第1の乳化調味料の粘度としては、例えば、20℃で0.05Pa・s以上、好ましくは0.1Pa・s以上である。この範囲であることにより、第1乳化調味料の風味が残り、味のより良好なポテトサラダとなる。また、第1の乳化調味料の粘度は、例えば、10Pa・s以下、好ましくは5Pa・s以下である。この範囲であることにより、第1のイモとの混合が容易となり、均一に混合しやすくなる。第1の乳化調味料は、耐熱性であることがより好ましい。例えば、ホスフォリパーゼA処理卵黄を含むマヨネーズがより好ましい。高温の第1のイモと混合しても、マヨネーズの風味がより多く残り、食味のよりよいポテトサラダを製造できる。
【0026】
ここで、本明細書における乳化調味料の粘度は、次の方法で測定した値をいう。つまり、BH形粘度計を使用し、品温20℃、回転数10rpmの条件で、粘度が0.7Pa・s未満のとき:ローターNo.1、0.7Pa・s以上2.8Pa・s未満のとき:ローターNo.2、2.8Pa・s以上7Pa・s未満のとき:ローターNo.3、7Pa・s以上14Pa・s未満のとき:ローターNo.4、14Pa・s以上28Pa・s未満のとき:ローターNo.5、28Pa・s以上70Pa・s未満のとき:ローターNo.6、70Pa・s以上280Pa・s未満のとき:ローターNo.7、280Pa・s以上のとき:2rpmの条件でTバースピンドルローターNo.Dを使用し上昇速度20mm/分の条件で、測定開始後示度が安定した時の値により算出した値である。
【0027】
<混合工程Aの条件>
混合工程Aでは、混合物がクリーム状になるまで混合することがより好ましい。クリーム状とは、例えば、目開き1cmの網篩の上に残存するイモが30質量%以下の状態であることが好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。なお、網篩によるイモの大きさの測定時には水洗いをしてイモの塊状物の大きさを測定すればよい。例えば、網篩に混合物を乗せるときに、イモの大きさが変わらない程度に水ですすぎながら行ってもよく、網篩に乗せる前の混合物に水を注いで他の具材等と分離してもよい。
【0028】
<冷却工程>
本発明において冷却工程とは、混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する工程である。冷却方法としては、本発明の効果を損なうものでなければ、特に制限はなく、例えば、冷蔵庫、真空冷却機、送風機、吸引機等で冷却すると良い。混合物の冷却温度を5℃未満とするとイモの老化が起こりやすくなり、口当たりが悪くなってしまい、35℃より高いと、後述する混合工程Bで混合する第2乳化調味料のコクが損なわれる。
【0029】
<混合工程B>
本発明において混合工程Bとは、冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と第2の乳化調味料とを混合する工程である。第2の乳化調味料を5℃以上35℃以下という低温の混合物に混合することで、第2の乳化調味料のコクを活かしたポテトサラダを製造できる。
【0030】
<第2の乳化調味料>
第2の乳化調味料の説明は第1の乳化調味料の説明に準じ、同じ説明は繰り返さない。以下、第1の乳化調味料と異なり得る点について説明する。第2の乳化調味料は、第1の乳化調味料と同種でもよく異なってもよい。また、必ずしも粘度を低く調整しなくてもよい。第2の乳化調味料は味が全体に混ざる程度に混合されればよく、粘度は高くてもよい(例えば20℃で50Pa・s以上500Pa・s以下)。後述の混合工程Cを行なう場合、目的とする食感次第では、第2イモの形状を残すことが好ましい形態もある。そのような形態においても、粘度は高くてもよく、目的とするコクに応じて適宜設定すればよい。また、冷却工程後の混合物に混合されることから、第1の乳化調味料において好ましかったホスフォリパーゼA処理卵黄を含むマヨネーズでなくとも、良好な食味のポテトサラダを製造できる。
【0031】
<混合工程Bの条件>
混合工程Bでは、冷却工程後の混合物と、第2の乳化調味料とを混合すればよく、具体的な方法は特に制限されない。第2の乳化調味料のコクを活かす観点から、第2の乳化調味料が混合物全体に混ざればよい。また、後述する混合工程Cによるイモの混合を同時に行ったり、予め第2のイモを混合したりしている場合には、第2のイモの塊によって与えることを目的とする食感に応じて、混合条件を適宜選択すればよい。例えば、第2のイモの塊によるゴロゴロした食感をポテトサラダに付与することを目的とする場合には、第2の乳化調味料も混合物全体に和える程度で混合すればよく、混合工程Aのようにクリーム状にしなくてもよい。
【0032】
<混合工程C>
冷却工程後の混合物に5℃以上35℃以下の混合物と、5℃以上35℃以下の状態の第2のイモとを混合する工程である。例えば、第2のイモは、第1のイモの処理と同様に、蒸煮、カット等したものを5℃以上35℃以下まで冷却したものを用いてもよい。第2のイモを混合する方法は特に制限されず、例えば、前述のように、第2のイモの塊による食感をポテトサラダに付与することを目的とする場合、混合物を和えるように混合する程度でよい。
【0033】
<混合工程Bと混合工程Cの順序>
混合工程Bと混合工程Cの順序は特に制限されない。例えば、混合工程Bの後に、混合工程Cを行なってもよく、混合工程Cの後に、混合工程Bを行なってもよい。また、いずれかを先に行なう場合においても、第2乳化調味料及び第2のイモのうちのいずれかを投入して混合を行なっている途中に他方を投入してもよい。また、第2乳化調味料と第2イモとを同時に混合物に加えて、混合工程B及び混合工程Cを同時に開始してもよい。
【0034】
<第2のイモ>
第2のイモの説明は第1のイモの説明に準じ、同じ説明は繰り返さない。第1のイモと異なり得る点について説明する。第2のイモは第1のイモと同種であってもよく異なっていてもよい。また、第1のイモは前述の通りクリーム状にすることが好ましいが、第2のイモはクリーム状以外の形状であってもよい。例えば、第1のイモをクリーム状として、第2のイモは塊状とすると食感が良好に得られる。
【0035】
第2のイモの食感を良好に得る観点から、第2のイモは、蒸煮した後に目的とする食感に応じて破砕したじゃがいもであってもよい。じゃがいもを破砕する場合の形状等については、例えば、1~4cmの大きさの塊状物を、例えば20%以上含有させてもよく、さらに、30%以上含有させてもよい。ここで1~4cmの大きさの塊状物とは、塊状物の一番大きい幅の部分が1~4cmであることを意味する。また、カットしたじゃがいもを蒸煮する場合、その大きさは、ホールのじゃがいもの大きさによるが、例えば、ダイスカットで、2cm程度以上とすることができる。
【0036】
<第1のイモと第2のイモの混合重量比>
本発明において、第1のイモと第2のイモとの混合比は、目的とするポテトサラダの食味、食感等に応じて適宜選択すればよい。例えば、当該混合比は、第1のイモ1質量部に対して、第2のイモの含有量が0.25質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。当該含有量が0.25質量部以上であれば、第2のイモの食感がより活かされたポテトサラダとなる。また、第1のイモ1質量部に対して、第2のイモの含有量は、5.5質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましい。当該含有量が5.5質量部以下であれば、第1のイモの食感がより活かされたポテトサラダとなり、例えば、混合工程Aでクリーム状になるように混合する場合、当該クリーム状のなめらかさがより活かされたポテトサラダとなる。
【0037】
<ポテトサラダに用いる他の食品原料>
本発明の一態様に係るポテトサラダの製造方法は、上述した原料のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含有していてもよい。具材としては、例えば、きゅうり、玉ねぎ、にんじん、キャベツ、レタス、コーン、ハム、コンビーフ、ツナ肉、キクラゲ等が挙げられる。調味液としては、例えば、食塩水、食酢、卵黄、糖液、ブイヨン、アミノ酸溶液等が挙げられる。静菌剤としては、例えば、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチーム、プロタミン、ポリリジン等が挙げられる。また、乳化調味料に用いるその他の原料として説明した原料を、乳化調味料とは別に、ポテトサラダに添加してもよい。
【0038】
<容器詰めの形態>
以上の方法により製されたポテトサラダは、プラスチック製の蓋付トレイ容器やポリ袋等の容器に充填し、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売される、業務用のポテトサラダとして供給することができる。
【0039】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例
【0041】
[実施例1]
後述の配合で材料を混合して第1の乳化調味料及び第2の乳化調味料を作製した。具体的には、食用油脂以外の水相原料をミキサーで撹拌し水相を調製する。続いてミキサーで撹拌しながら油相原料である食用油脂を注加して粗乳化し、次にせん断力に優れたコロイドミルを用いて精乳化することによって第1乳化調味料及び第2の乳化調味料を作製した。次に、第1のイモ及び第2のイモとしてじゃがいもを用いて、後述のポテトサラダの配合及び方法によってポテトサラダを作製した。なお、酵素処理卵黄としては、ホスフォリパーゼA処理卵黄(リゾ化率25%)を用いた。また、第1乳化調味料の粘度は20℃で1.58Pa・sであった。
【0042】
まず、第1のイモとしてのじゃがいもを95℃55分間蒸煮した後、当該じゃがいもが表1に示す温度になるまで冷まして、第1の乳化調味料と混合した。表1に示すイモの温度はイモの中心温度である。第1のイモと第1の乳化調味料との混合工程である混合工程Aでは、目開き1cmの網篩の上に残存するイモが18質量%の状態となるまで撹拌して、混合物がクリーム状になるように混合した。
【0043】
次に、表1に示す温度になるまで、第1のイモと第1の乳化調味料との混合物を室温で放冷または真空冷却した。
【0044】
次に、第2の乳化調味料を、第1のイモと第1の乳化調味料との混合物に混合した。ついで、第2のイモとしてのじゃがいもを95℃で55分間蒸煮した後、当該じゃがいもを表1に示す温度まで冷まして、第2の乳化調味料を混合後の前記混合物に加えた。さらに、後述のポテトサラダの配合に従って、他の材料(砂糖、食塩、ニンジン、タマネギ)を加えて、ポテトサラダの実施例1を作製した。
【0045】
<第1の乳化調味料の配合>
食用油脂 22.05質量%
酵素処理卵黄 1.35質量%
卵白 1.2質量%
食酢(酢酸含有量4%) 2.85質量%
砂糖 0.75質量%
食塩 0.45質量%
水あめ 0.45質量%
水 70.9質量%
計 100.0質量%
【0046】
<第2の乳化調味料の配合>
食用油脂 73.5質量%
酵素処理卵黄 4.5質量%
卵白 4.0質量%
食酢(酢酸含有量4%) 9.5質量%
砂糖 2.5質量%
食塩 1.5質量%
水あめ 1.5質量%
水 3.0質量%
計 100.0質量%
【0047】
<ポテトサラダの配合>
第1の乳化調味料 5.2質量%
第1のイモ 34.8質量%
第2のイモ 40.0質量%
第2の乳化調味料 12.0質量%
砂糖 0.7質量%
食塩 0.3質量%
ニンジン 5.0質量%
タマネギ 2.0質量%
計 100.0質量%
【0048】
【表1】
【0049】
[実施例2~4、比較例1~4]
温度を表1に示す通りにした以外は実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例1~4のポテトサラダを作製した。
【0050】
[試験例1]
実施例1~4と比較例1~4のポテトサラダを使用して、製造の各工程におけるイモ等の温度による、ポテトサラダとしての外観及び口当たりに対する影響を評価した。
【0051】
<ポテトサラダの外観及び口当たりの評価>
ポテトサラダの外観及び口当たりを下記の評価基準により官能評価した。なお、試験例1~5の官能評価は、乳化調味料の研究年数2年以上の評価者5名(訓練されたパネル)により行なった。評価結果は表2に示す。
【0052】
外観の官能評価は5段階評価で行い、マヨネーズの色合いが残り、白っぽいなど外観がポテトサラダとして良好であるほど評価を高くし、マヨネーズの色合いが失われて透明度があり全体的にべったりとした印象を与えるなど、外観がポテトサラダとして悪いほど評価を低くした。点数が3点以上で外観が良好であると判定した。
【0053】
口当たりの官能評価は5段階評価で行い、口当たりが良いほど評価を高くし、口当たりが重いなど口当たりが悪いほど評価を低くした。点数が3点以上で口当たりが良好であると判定した。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1~4より、50℃以上95℃以下に加熱した状態の第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aと、前記混合工程A後の混合物を5℃以上35℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程後の5℃以上35℃以下の混合物と、第2の乳化調味料とを混合する混合工程Bを含むことで、口当たりの良いポテトサラダを製造できることが示された。また、これらの工程を行なうことで、外観に優れたポテトサラダを製造できることが示された。
【0056】
[実施例5~7]
第1のイモに対する第2のイモの含有比を表3に示すとおりにした以外は実施例2と同様にして実施例5~7のポテトサラダを製造した。
【0057】
【表3】
【0058】
[試験例2]
実施例2、5~7のポテトサラダを使用して、第1のイモと第2のイモの配合割合によるポテトサラダの口当たりに対する影響を評価した。口当たりの官能評価方法は試験例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例2、5~7より、第1のイモ1質量部に対する第2のイモの含有質量部が0.25質量部以上5.5質量部以下であることにより、よりなめらかなポテトサラダを製造できることが示された。
【0061】
[実施例8、9]
第1の乳化調味料を製造するとき、水以外の材料の配合比は同じとした上で、水の量のみを調整することによって、粘度を表5に示す通りにした以外は実施例2と同様にして、実施例8及び9のポテトサラダを製造した。なお、第2の乳化調味料の粘度はいずれの実施例でも390Pa・s(20℃)であった。
【0062】
【表5】
【0063】
なお、粘度は次の方法で測定した。つまり、BH形粘度計を使用して、品温20℃、回転数10rpmの条件で、実施例9はローターNo.1、実施例2はローターNo.2を使用し、測定開始後示度が安定した時の値により算出した。実施例8は品温20℃、回転数2rpmの条件でTバースピンドルローターNo.Dを使用し上昇速度20mm/分の条件で、測定開始後示度が安定した時の値により算出した。
【0064】
[試験例3]
実施例2、8及び9のポテトサラダを使用して、第1の乳化調味料の粘度による、ポテトサラダの口当たりに対する影響を評価した。口当たりの官能評価方法は試験例1と同様である。評価結果を表6に示す。
【表6】
【0065】
実施例2、8及び9より、第1の乳化調味料の粘度(20℃)が0.05Pa・s以上10Pa・s以下であることによって、口当たりがより良好なポテトサラダを製造できることが示された。
【0066】
[実施例10]
第1の乳化調味における酵素処理卵黄を、生換算で同量の生卵黄に変更した以外は実施例2と同様にして実施例10のポテトサラダを製造した。
【0067】
[試験例4]
実施例2及び10のポテトサラダを使用して、第1の乳化調味料の卵黄の種類による、ポテトサラダの口当たりに対する影響を評価した。口当たりの官能評価方法は試験例1と同様である。評価結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
第1の乳化調味料がホスフォリパーゼA処理卵黄を含むことで、口当たりがより良好なポテトサラダを製造できることが示された。
【0070】
参考例
第1のイモと、第1の乳化調味料とを混合する混合工程Aの撹拌時間を変更した以外は実施例2と同様にして参考例のポテトサラダを製造した。具体的には、実施例2は目開き1cmの網篩の上に残存するイモが18質量%の状態となるまで撹拌してクリーム状とし、参考例は目開き1cmの網篩の上に残存するイモが27質量%の状態のクリーム状となるまで撹拌した。
【0071】
[試験例5]
実施例2及び参考例のポテトサラダを使用して、混合工程Aの撹拌時間による、ポテトサラダの口当たりに対する影響を評価した。口当たりの官能評価方法は試験例1と同様である。評価結果は表8に示す。
【0072】
【表8】
【0073】
実施例2及び参考例により、混合工程Aでは、混合物が、目開き1cmの網篩に残存するイモが20質量%以下となるクリーム状になるまで撹拌することで、口当たりがより良好なポテトサラダを製造できることが示された。