(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】単結晶インゴットの製造方法及び単結晶ウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/30 20060101AFI20230825BHJP
C30B 15/36 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C30B29/30 B
C30B29/30 A
C30B15/36
(21)【出願番号】P 2019199399
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】森山 隼
(72)【発明者】
【氏名】阿部 淳
(72)【発明者】
【氏名】丹野 雅行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 由則
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187799(JP,A)
【文献】特開2018-184325(JP,A)
【文献】特開平06-211595(JP,A)
【文献】櫛引淳一 他,LFB超音波材料解析システムによるSAWデバイス用LiTaO3単結晶の統一的な化学組成評価,第22回超音波シンポジウム,2001年,p.389-390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/30
C30B 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成長軸を持つ第1の単結晶インゴットを準備する工程と、
評価用基板及び種結晶用インゴットを前記第1の単結晶インゴットから切り出し、前記種結晶用インゴットに投影面を形成する工程と、
前記評価用基板に対し局所的な音速を測定し、前記評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点を配置する工程と、
前記評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲から外れている位置に異常点を配置する工程と、
前記投影面上に前記正常点の写像を配置する工程と、
前記投影面上に前記異常点の写像を配置する工程と、
前記正常点の写像を通る前記結晶成長軸に平行な直線を含む結晶片を前記種結晶用インゴットから切り出す工程と、
前記結晶片を種結晶として用いて第2の単結晶インゴットを作製する工程とを含
み、
前記種結晶が、前記異常点の写像を通る前記結晶成長軸に平行な直線を含まない結晶片であることを特徴とする単結晶インゴットの製造方法。
【請求項2】
前記評価用基板、又は前記第1の単結晶インゴットとは別の第1の単結晶インゴットから切り出した評価用基板を代表する音速を音速の代表値として規定し、
前記音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が所定値以下となる位置を正常点とすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項3】
前記音速の代表値が複数点測定した音速の測定値の中央値であることを特徴とする請求項2に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項4】
前記音速の代表値と、前記音速の測定値との差の絶対値が0.60m/s以下となる位置を正常点とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項5】
前記音速が、前記評価用基板の表面を伝搬するLSAW(Leaky Surface Acoustic Wave)の位相速度であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項6】
前記第2の単結晶インゴットを作製する際、前記種結晶のシード側を起点として結晶成長させることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項7】
前記第1の単結晶インゴット及び前記第2の単結晶インゴットの材料が、ニオブ酸リチウム単結晶もしくはタンタル酸リチウム単結晶であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の単結晶インゴットの製造方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の単結晶インゴットの製造方法により製造された前記第2の単結晶インゴットをスライスして単結晶ウエハを作製する工程を含むことを特徴とする単結晶ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶インゴットの製造方法、及びその単結晶インゴットの製造方法により製造した単結晶インゴットを用いて単結晶ウエハを製造する単結晶ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融液を凝固させて単結晶を製造する方法として、チョクラルスキー法、ブリッジマン法等が知られている。これらの製造方法では、結晶配列の揃った結晶片を種結晶として用い、これを結晶成長の出発材として結晶配列を保ったまま結晶サイズを増大させる。こうして作製した大きな単結晶のインゴットからその一部を結晶片として切り出し、この結晶片を種結晶として次の単結晶インゴット製造の出発材に用いる。
ここで、育成された単結晶インゴットの品質は出発材に使用する種結晶の品質によるところが大きい。品質の悪い種結晶を用いて育成を行うと、異常成長稜が発生したり、種結晶中の転位が成長中の結晶に伝搬したりして、作製した単結晶インゴットの品質が低下する。このため、良質な結晶片を種結晶に用いることが望まれている。
特許文献1には、ランガサイト型構造材料、ガーネット、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムの結晶から結晶成長方向であるZ軸方向にほぼ垂直な平面として切り出したウエハの一方の面を鏡面状に仕上げた後エッチングし、そのエッチングした面のエッチピットの大きさ及び分布状態からその種結晶の品質の良否を判別する方法が記載されている。
また、特許文献2には、種結晶を鏡面研磨し、可視光又は偏光下で種結晶中にZ軸方向の筋状のパターンがないかどうか調べて選別し、結晶成長を行う方法が記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の方法では、結晶の内部欠陥をエッチピットとして観察できるのは材料に応じた特定の方位に限られる。例えば、タンタル酸リチウム(LT)やニオブ酸リチウム(LN)を30°~50°Y軸方向に引上げた結晶の場合には適用できない。
また、特許文献2の方法では、切り出された種結晶の全数に対して鏡面研磨を施すため時間を要する上、筋状のパターンを目視で識別するのに熟練を要する。
【0004】
なお、単結晶ウエハの局所的な特性を評価する手法として、非特許文献1には直線収束ビーム超音波顕微鏡によってウエハ表面の音速を計測する方法が記載されている。
非特許文献2には、タンタル酸リチウム単結晶の組成や格子定数と音速との関係が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-187799号公報
【文献】特開平6-211595号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. Kushibiki , N. Chubachi ,”Material Characterization by Line-Focus-Beam Acoustic Microscope”, IEEE Transactions on Sonics and Ultrasonics, Vol.SU- 32, No. 2, pp.189-212,1985.
【文献】J. Kushibiki ; Y. Ohashi ; T. Ujiie,” Standardized evaluation of chemical compositions of LiTaO3/ single crystals for SAW devices using the LFB ultrasonic material characterization system”, IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control , Volume: 49, No.4, pp.454-465, 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、単結晶インゴットの中から良質な部分を簡便に選び、その部分を切り出して得られた種結晶を用いて単結晶を育成することにより結晶性の優れた単結晶インゴットを歩留りよく製造することができる単結晶インゴットの製造方法、さらにはこの単結晶インゴットからウエハを作製することによりデバイス特性に優れたウエハを製造することができる単結晶ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、下記の単結晶インゴットの製造方法及び単結晶ウエハの製造方法を提供する。すなわち、
[1]結晶成長軸を持つ第1の単結晶インゴットを準備する工程と、評価用基板及び種結晶用インゴットを前記第1の単結晶インゴットから切り出し、前記種結晶用インゴットに投影面を形成する工程と、前記評価用基板に対し局所的な音速を測定し、前記評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点を配置する工程と、前記投影面上に前記正常点の写像を配置する工程と、前記正常点の写像を通る前記結晶成長軸に平行な直線を含む結晶片を前記種結晶用インゴットから切り出す工程と、前記結晶片を種結晶として用いて第2の単結晶インゴットを作製する工程とを含むことを特徴とする単結晶インゴットの製造方法。
[2]前記評価用基板、又は前記第1の単結晶インゴットとは別の第1の単結晶インゴットから切り出した評価用基板を代表する音速を音速の代表値として規定し、前記音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が所定値以下となる位置を正常点とすることを特徴とする上記[1]に記載の単結晶インゴットの製造方法。
[3]前記音速の代表値が複数点測定した音速の測定値の中央値であることを特徴とする上記[2]に記載の単結晶インゴットの製造方法。
[4]前記音速の代表値と、前記音速の測定値との差の絶対値が0.60m/s以下となる位置を正常点とすることを特徴とする上記[2]又は[3]に記載の単結晶インゴットの製造方法。
[5]前記評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲から外れている位置に異常点を配置する工程と、前記投影面上に前記異常点の写像を配置する工程とをさらに含み、前記種結晶が、前記異常点の写像を通る前記結晶成長軸に平行な直線を含まない結晶片であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の単結晶インゴットの製造方法。
[6]前記音速が、前記評価用基板の表面を伝搬するLSAW(Leaky Surface Acoustic Wave)の位相速度であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の単結晶インゴットの製造方法。
[7]前記第2の単結晶インゴットを作製する際、前記種結晶のシード側を起点として結晶成長させることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単結晶インゴットの製造方法。
[8]前記第1の単結晶インゴット及び前記第2の単結晶インゴットの材料が、ニオブ酸リチウム単結晶もしくはタンタル酸リチウム単結晶であることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の単結晶インゴットの製造方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の単結晶インゴットの製造方法により製造された前記第2の単結晶インゴットをスライスして単結晶ウエハを作製する工程を含むことを特徴とする単結晶ウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、結晶性の優れた単結晶インゴットを歩留りよく製造することができる単結晶インゴットの製造方法、及びデバイス特性に優れたウエハを製造することができる単結晶ウエハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の単結晶インゴットの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、評価用基板及び種結晶用インゴットの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、評価用基板の正常点及び種結晶用インゴットの投影面における正常点の写像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、直線収束ビーム超音波顕微鏡の超音波干渉検出部の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、音響レンズの焦点位置を評価用基板の深さ方向zに変化させながら記録した強度V(z)の曲線形状の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の単結晶インゴットの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の単結晶インゴットをスライスして単結晶ウエハを作製する工程を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の単結晶インゴットの製造方法おける別の実施形態の種結晶の作製方法を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態の単結晶インゴットの製造方法おける別の実施形態の種結晶の作製方法を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の別の実施の形態における種結晶の作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[単結晶インゴットの製造方法]
本発明の実施の形態に係る単結晶インゴットの製造方法は、結晶成長軸を持つ第1の単結晶インゴットを準備する工程Aと、評価用基板及び種結晶用インゴットを第1の単結晶インゴットから切り出し、種結晶用インゴットに投影面を形成する工程Bと、評価用基板に対し局所的な音速を測定し、評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点を配置する工程Cと、投影面上に正常点の写像を配置する工程Dと、正常点の写像を通る結晶成長軸に平行な直線を含む結晶片を種結晶用インゴットから切り出す工程Eと、結晶片を種結晶として用いて第2の単結晶インゴットを作製する工程Fとを含むことを特徴とする。これにより、結晶性の優れた単結晶インゴットを歩留りよく製造することができる。以下に、図を参照して本発明の実施の形態に係る単結晶インゴットの製造方法の各工程を詳細に説明する。なお、本発明の実施の形態に係る単結晶インゴットの製造方法は、材料がニオブ酸リチウムもしくはタンタル酸リチウムである単結晶インゴットの製造に特に好適である。
【0012】
(工程A)
以下、
図1を参照して工程Aを説明する。
図1は第1の単結晶インゴットの一例を示す図である。工程Aでは、結晶成長軸を持つ第1の単結晶インゴット101を準備する。例えば、第1の単結晶インゴット101をチョクラルスキー法(CZ法)によって製造することができる。この場合、第1の単結晶インゴットを原料融液から徐々に引き上げて作製するので、作製した単結晶インゴットは引き上げ方向に平行な結晶成長軸を持つ。
【0013】
(工程B)
以下、
図2を参照して工程Bを説明する。
図2は評価用基板及び種結晶用インゴットの一例を示す図である。工程Bでは、評価用基板102及び種結晶用インゴット103を第1の単結晶インゴットから切り出し、種結晶用インゴットに投影面104を形成する。例えば、第1の単結晶インゴット101(
図1参照)から不図示のテール部(CZ法による結晶成長の終了部)端材を切り落とした後、評価用基板102と種結晶用インゴット103を切り出すことが好ましい。結晶欠陥は結晶成長する方向に向かって伝播するので、不良点を漏れなく検出するためには、第1の単結晶インゴット101のテール側(結晶成長の終了側)から評価用基板102を切り出すことが好ましい。また、第1の単結晶インゴット101(
図1参照)から種結晶用インゴット103を切り出した際に、種結晶用インゴット103に発生した切り出し面は、評価用基板102に対する種結晶用インゴット103の投影面104とすることができる。なお、投影面とは、評価用基板及び種結晶用インゴットを第1の単結晶インゴットから切り出す前の、評価用基板の所定の位置に対して、結晶成長軸と平行な方向にある種結晶用インゴットの位置を示すための面である。例えば、この投影面104に、目印を付けるなどして、評価用基板102と切断位置及び方位が合致できるようにしておくことが好ましい。なお、バンドソーやワイヤソー等を用いて第1の単結晶インゴットを切断することができる。
【0014】
(工程C)
以下、
図3を参照して工程Cを説明する。
図3は評価用基板の正常点及び種結晶用インゴットの投影面における正常点の写像の一例を示す図である。工程Cでは、評価用基板102に対し局所的な音速を測定し、評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点105を配置する。
【0015】
<音速の測定>
評価用基板102の片面、例えばテール側の面、を鏡面研磨し、この鏡面上の局所的な音速を測定することが好ましい。局所的な音速は、例えば、非特許文献1に記載の直線収束ビーム超音波顕微鏡を用いて測定することができる。直線収束ビーム超音波顕微鏡を用いることにより、評価用基板102上の局所的な(数十μm範囲の)音速を簡便かつ正確に測定できる。
図4を参照して、評価用基板102の局所的な音速の測定方法を説明する。
図4は、直線収束ビーム超音波顕微鏡の超音波干渉検出部の一例を示す模式図である。
【0016】
評価用基板102の表面の測定点4に向かって、超音波顕微鏡の音響レンズ(ACOUSTIC LENS)2を相対させ、音響レンズ2の背面に設置した圧電トランスジューサ(TRANSDUCER)1から発生させた超音波を測定点4に照射する。音響レンズ2と測定点4との間の空間は参照媒質3の「水」で満たされている。評価用基板102に照射された超音波は反射して音響レンズ2に戻り、この反射波はトランスジューサ1に伝わり、反射波の強度はそこで電気信号に変換されて記録される。音響レンズの焦点位置5を評価用基板102の深さ方向zに変化させながら記録した強度V(z)の曲線形状(例えば、
図5参照)から、測定点4における評価用基板102と水3との境界面を伝搬するLSAW(Leaky Surface Acoustic Wave)の位相速度を次式によって求める。
【0017】
【数1】
ここで、V
LSAWは評価用基板102の測定点4におけるLSAWの音速(位相速度)であり、V
wは水の音速である。また、fは超音波周波数であり、ΔzはV(z)曲線の振動周期である(例えば、
図5参照)。
【0018】
<正常点の配置>
評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点を配置する。検討の結果、結晶に欠陥が生じて、格子定数のずれが10
-5程度(0.001%)を超えると、局所的に結晶の成長方向のずれが進展して固定されてしまうことがわかった。結晶の格子間隔がずれたり、組成が変化したりすると、その部分の密度や弾性係数が変わるため、音速が変化する。したがって、測定した音速の正常/異常の判定は、その音速値が代表値からどの程度ずれているかを評価して行うとよい。具体的には、所定の音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が所定値以下となる位置を正常点とする。一方、所定の音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が所定値よりも大きくなる位置を異常点とする。例えば、
図3において、評価用基板102上で、音速が正常と判定された位置が正常点105である。また、評価用基板102上で、音速が異常と判定された位置が異常点106である。
【0019】
上記評価用基板、又は上記第1の単結晶インゴットとは別の第1の単結晶インゴットから切り出した評価用基板を代表する音速を音速の代表値として規定するとよい。例えば、単結晶インゴットの組成が成長方向に一定している場合には、複数の良質な種結晶が従前に得られていた単結晶インゴットの評価用基板の音速の実測値の平均値又は中央値を代表値として予め定めておいてもよい。
一方、単結晶インゴットが育成する過程で組成が徐々に変化する可能性がある場合には、1枚の評価用基板102内で広範囲に音速を計測し、その測定結果に基づいて評価用基板における「代表値」と定めてもよい。例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムの単結晶をCZ法で引き上げる際は、結晶育成開始側から結晶育成終了側に向け、Li2O含有量が徐々に増加し、その結果として音速も徐々に早くなることが知られている。このような場合、結晶の成長方向に垂直な平面内ではほぼ同一組成であるので、評価用基板を結晶成長方向(成長軸)に対してできる限り垂直な平面、すなわち結晶軸に対してなす角が70°以上90°以下、好ましくは80°以上90°以下、さらに好ましくは85°以上90°以下となるような平面で切断して作製するとよい。そしてこのとき、1枚の基板内をできる限り広範囲かつできる限り均等(略等間隔)に複数点の音速を計測すると、統計的に信頼性の高い代表値を得ることができるので、好ましい。また、評価用基板の音速の代表値として、全測定点の音速の平均値を採用してもよい。しかし、外れ値による影響が小さい中央値を評価用基板内の音速の代表値として採用することが好ましい。なお、中央値とは、全測定点の音速の値を大きさの順に並べたとき真ん中にくる音速の値である。
【0020】
あるいは、評価用基板を切り出す平面が、成長軸に対して垂直ではない場合は、評価用基板上の成長軸に対して垂直となる直線上でできる限り広範囲かつできる限り均等(略等間隔)に複数点の音速を計測し、それらの平均値もしくは中央値を、その直線上における音速の代表値としてもよい。この場合は、評価用基板上の成長軸に対して垂直となる直線ごとに音速の代表値を導出し、これらの各直線において音速の正常/異常を判定すればよい。
【0021】
例えば、第1の単結晶インゴットの材料がタンタル酸リチウムである場合、非特許文献2に記載されている音速VLSAW(主に伝搬方向と基板の厚み方向に変異成分を持つ表面波(SVタイプの表面波))は23℃において約3125m/sであり、結晶の格子定数が約0.001%(10-5)大きくなると、音速VLSAWは約0.50~0.60m/sだけ小さくなる。したがって、この場合は、音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が0.60m/s以下となるときは、測定された音速は正常と判定し、音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値が0.60m/sよりも大きくなるときは、測定された音速は異常と判定するとよい。測定された音速が正常であるか異常であるかの判定基準となる、音速の代表値と音速の測定値との差の絶対値は、好ましくは0.50m/s以下であり、より好ましくは0.40m/s以下である。第1の単結晶インゴットの材料がニオブ酸リチウムの場合も、同様の値を基準にして判定できる。
【0022】
(工程D)
以下、
図3を参照して工程Dを説明する。工程Dでは、投影面上に正常点105の写像107を配置する。なお、写像とは、評価用基板及び種結晶用インゴットを第1の単結晶インゴットから切り出す前の、評価用基板の所定の位置に対して、結晶成長軸と平行な方向にある種結晶用インゴットの投射面上の位置である。例えば、評価用基板102と種結晶インゴット103との切断分離前の配置関係を維持したまま投影面104上に向かって正常点105から結晶成長軸に平行な投影を行い、正常点の写像107を投影面上に配置する。また、評価用基板102と種結晶インゴット103との切断分離前の配置関係を維持したまま投影面104上に向かって異常点106から結晶成長軸に平行な投影を行い、異常点の写像108を投影面上に配置してもよい。
【0023】
(工程E)
以下、
図3を参照して工程Eを説明する。工程Eでは、正常点の写像107を通り、結晶成長軸に平行な直線を含む結晶片109を種結晶用インゴット103から切り出す。評価用基板102の正常点105では、結晶欠陥が少ないので、種結晶インゴット103の正常点の写像107においても結晶欠陥が少ない。結晶欠陥は結晶成長するに伴い拡大するので、種結晶インゴット103の正常点の写像107において結晶欠陥が少なければ、種結晶インゴット103から正常点の写像107を通り結晶成長軸に平行な直線を含む部分を切り出すことによって得られた結晶片109も結晶欠陥が少ないと期待できる。このような結晶片109は良質な種結晶109となる。なお、この種結晶109は、バンドソーやワイヤソー等を用いて種結晶インゴット103から切り出される。
【0024】
この種結晶109が、異常点の写像108を通り結晶成長軸に平行な直線を含まないようにするとより好ましい。また、種結晶109は、異常点の写像108を通り結晶成長軸に平行な直線を含む領域110を含まないことがさらに好ましい。これにより、種結晶が、結晶欠陥の多い結晶を含むことをさらに抑制できる。
【0025】
結晶片(種結晶)における長手方向に対して垂直な方向の断面の形状は、特に限定されず、結晶片(種結晶)から成長させる単結晶インゴットに基づいて適宜選択することができる。結晶片(種結晶)の断面形状には、例えば、長方形、正方形、三角形、五角形、六角形、円形、楕円形等が挙げられる。これらの中で、種結晶インゴットから容易に切り出せるという観点から、結晶片(種結晶)の断面形状は長方形または正方形であることが好ましい。結晶片(種結晶)の断面の大きさも、結晶片(種結晶)から成長させる単結晶インゴットに基づいて適宜選択することができる。例えば、結晶片(種結晶)の断面形状が長方形または正方形である場合、その長方形または正方形の一辺の長さは、好ましくは6~12mmであり、より好ましくは、8~10mmである。上記異常点の写像を通り結晶成長軸に平行な直線を含む領域についても、結晶片(種結晶)と同様の断面形状及び断面の大きさである。
【0026】
(工程F)
以下、
図6を参照して工程Fを説明する。
図6は第2の単結晶インゴットの一例を示す図である。工程Fでは、結晶片を種結晶として用いて第2の単結晶インゴットを作製する。こうして作製した良質な種結晶109を用いて第2の単結晶インゴット111を作製すると、結晶性の優れた第2の単結晶インゴットを歩留りよく製造することができる。このとき、種結晶109の第1の単結晶インゴット101におけるシード側すなわち種結晶に近い側(第1の単結晶インゴットの成長方向の反対側)が基点となるようにして第2の単結晶インゴットを成長させることが好ましい。第1の単結晶インゴットの育成中に生じた欠陥は結晶成長するに伴い拡大する。すなわち第1の単結晶インゴットの底部に行くほど欠陥量が多く、シード側の方が欠陥量は少ないため、種結晶のシード側を基点とした方が、第2の単結晶インゴットに欠陥が生じる確率は低くなる。
【0027】
[単結晶ウエハの製造方法]
以下、
図7を参照して本発明の実施の形態に係る単結晶ウエハの製造方法を説明する。
図7は、第2の単結晶インゴットをスライスして単結晶ウエハを作製する工程を説明するための図である。本発明の実施の形態に係る単結晶ウエハの製造方法は、本発明の実施の形態に係る単結晶インゴットの製造方法により製造された第2の単結晶インゴット111をスライスして単結晶ウエハ112を作製する工程を含む。上述したように、第2の単結晶インゴット111は結晶性が優れているので、第2の単結晶インゴット111をスライスして得られた単結晶ウエハ112のデバイス特性は優れたものとなる。なお、バンドソーやワイヤソー等を用いて第2の単結晶インゴット111をスライスすることができる。
【0028】
以上説明したようにして、単結晶インゴットの中から良質な部分を選び、その部分を切り出して得られた種結晶109を用いて第2の単結晶インゴット111を製造することにより、異常成長稜が発生したり、種結晶中の転位が結晶に伝搬しクラックが生じたりすることが抑制され、結晶性の優れた単結晶インゴットを歩留りよく製造することができる。さらには、結晶性の優れた単結晶インゴットを用いてウエハを製造することによりデバイス特性に優れた単結晶ウエハを製造することができる。
【0029】
[変形例]
本発明の実施の形態のおける単結晶インゴットの製造方法は以下のように変形することができる。
(変形例1)
本発明の実施の形態のおける単結晶インゴットの製造方法において、種結晶を以下のように作製してもよい。
図8及び
図9は、本発明の実施の形態の単結晶インゴットの製造方法おける別の実施の形態の種結晶の作製方法を示す図である。
【0030】
例えば、この実施の形態において、第1の単結晶インゴットを切断して評価用基板202と種結晶用インゴット203とに分離する(
図8参照)。種結晶用インゴット203の結晶成長方向が長辺になるように格子状に切断して拍子木切りを行って、種結晶の候補となる複数の結晶片を予め切り出しておく。こうすると種結晶用インゴット203から多くの種結晶用の結晶片を切り出すことができる。
図8は、縦9段、横9列の結晶片を切り出した場合を例示している。一方、評価用基板202には、
図9に示すように、音速の測定点ならびにその点の投影面204への写像を通る結晶成長軸に平行な直線がそれぞれの結晶片と交点を持つように、音速の測定点A01~A69を配置する。
図9は69個の結晶片に対応するようにA01~A69の69個の測定点を配置した場合を例示している。
【0031】
この場合、評価用基板202上の音速の測定点は格子状に配置して、その間隔は作製する結晶片の短辺のサイズと切断代(しろ)の和もしくはそれ以下にするのが好ましい。例えば、種結晶の短辺が9mmで、その切断代が1mmの場合には、計測点の間隔を10mm(短辺9mm+切断代1mm)あるいはそれ以下にし、測定点が切断代に重ならないように配置するとよい。
こうすれば、評価用基板202を広範囲かつ均等に音速測定をすることになるので、それらの平均値や中央値を用いれば評価用基板202の音速の代表値を導出でき、都合がよい。
【0032】
そして、評価用基板202上のこれら複数の音速の測定点の中から、正常点を判定し、その正常点を投影面204に投影して正常点の写像とし、この正常点の写像を通って結晶成長軸に平行な直線が横切る結晶片のみを種結晶として採用すれば、種結晶を数多く効率よく作製できる。そして、評価用基板202上に異常点がある場合には、異常点の写像を通る結晶成長軸に平行な直線を含む結晶片は除外し、種結晶には用いないようにすれば、さらに好ましい。すなわち、上記工程Eの後に上記工程Dを実施してもよく、種結晶用インゴットから結晶片を切り出した後に、結晶片における種結晶用インゴットの投影面に正常点を配置してもよい。
【0033】
すなわち、種結晶用インゴット203を切断して結晶片(種結晶)を作製する工程は、評価用基板202の音速を測定して正常点/異常点の判定を行った後で行ってもよい。また、予め種結晶用インゴット203を切断して結晶片に分離しておき、その後に評価用基板202上の正常点/異常点の判定を行って、その結果に基づいて種結晶を選別してもよい。
【0034】
こうして正常点として選別された結晶片を種結晶として用いて、第2の単結晶インゴットを作製し、これをスライスしてデバイス特性に優れた良質な単結晶ウエハを作製できる。
【0035】
(変形例2)
本発明の実施の形態のおける単結晶インゴットの製造方法において、種結晶を以下のように作製してもよい。
図10は本発明の別の実施の形態における種結晶の作製方法を示している。上記工程Eでは、種結晶(結晶片)が正常点の写像を通る結晶成長軸に平行な直線を含むのであれば、
図10のごとく、結晶成長軸と種結晶309の長手方向が平行でない種結晶309を種結晶用インゴット303から切り出してもよい。これにより、あらゆる方位の単結晶の加工に、本発明の実施の形態のおける単結晶インゴットの製造方法を応用することが可能である。
【0036】
すなわち、評価用基板302に対し局所的な音速を測定し、評価用基板上の測定した音速の測定値が所定範囲内である位置に正常点305を配置する。次いで、種結晶用インゴット303の投影面304上に、評価用基板302と種結晶用インゴット303の位置関係を維持したまま、評価用基板302上に配置した正常点305または異常点306から正常点の写像307または異常点の写像308を配置する。そして、種結晶インゴット303から正常点の写像307を通り結晶成長軸に平行な直線を含み、かつ結晶成長軸と種結晶の長手方向が平行でない結晶片(種結晶)309を切り出す。このような場合であっても良質な種結晶309を取得でき、この種結晶を用いて第2の単結晶インゴットを作製し、ここからウエハを作製することで、いかなる方位のウエハであってもデバイス特性に優れた単結晶ウエハを製造することができる。この場合、種結晶は、さらに異常点の写像308を通り結晶成長軸に平行な直線を含まない結晶片であることがより好ましく、異常点の写像308を通り結晶成長軸に平行な直線を含む領域310を含まない結晶片であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の単結晶インゴットの製造方法及び本発明の単結晶ウエハの製造方法は、上述の本発明の実施の形態における単結晶インゴットの製造方法及び本発明の実施の形態における単結晶ウエハの製造方法に限定されない。
【0038】
本発明は、表面弾性波素子に用いられる圧電性単結晶であるタンタル酸リチウム単結晶もしくはニオブ酸リチウム単結晶に対して特に好適に適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例)
チョクラルスキー法(CZ法)により結晶方位が38°RYであり、直胴部長が約90mmであり、直径が4インチである第1のタンタル酸リチウム(LT)単結晶インゴットの育成を行った。具体的には、イリジウム製の坩堝にLTの原料を充填し、高周波加熱により原料を融解させた後、予め用意しておいた結晶方位が38°RYである種結晶の先端を融液に接触させ、徐々に引上げることで
図1に例示するような形状のLT単結晶インゴットを得た。なお、引上げは窒素と酸素の混合ガス中で行われ、引上げ速度1~5mm/時、回転数5~20rpmの条件下で行った。
【0041】
次に、得られた直径4インチのLT単結晶インゴットから切断面が結晶成長軸に対し垂直になるよう、テール部(結晶成長の終端部)端材を切り落とし、さらにテール側から厚さ約250μmの評価用基板を切り出し、評価用基板及び種結晶用インゴットを得た。
【0042】
得られた評価用基板はテール側を鏡面研磨し、鏡面側を直線収束ビーム超音波顕微鏡による材料解析により音速を測定した。音速測定は、評価用基板面内においてx軸平行方向(
図4参照)に1ライン10mmピッチで測定を行い、さらに測定ラインをx軸垂直方向(y軸方向)(
図4参照)に10mmずらしx軸平行方向に10mmピッチで1ライン測定を行う動作を繰り返し、
図9に示すような配置の測定位置A01~A69の69点において音速測定を行った。音速の測定値を表1に示す。
【0043】
これら69点の音速の中央値である3130.57m/sを評価用基板の音速の代表値とした。次に、各測定点おける音速の値と音速の代表値との差の絶対値が0.60m/sより大きくなった位置、すなわちA31、A32、A33、A34、A35、A36を異常点、それ以外の0.60m/s以下となった位置を正常点とし評価用基板上にマーキングした。そして、評価用基板と種結晶用インゴットの位置関係を維持したまま、種結晶用インゴットの投影面に正常点の写像及び異常点の写像をマーキングした。
【0044】
次に、種結晶用インゴットから結晶片の切り出しを行った。結晶片は結晶方位が38°RYになるように切り出された。すなわち、長手方向が結晶成長軸に平行であり、底面が9×9mmの正方形であり、長さが約90mmである四角柱形状で端面にX面が含まれる結晶片を切り出して、69本の結晶片を得た。結晶片を作製する際の切断代は約1mmであった。このうち、正常点の写像がマーキングされた結晶片63個を種結晶として採用した。
【0045】
得られた結晶片のテール側にX面を貫く形で直径5mmの穴を開けピン止めできる形状に加工した。それぞれの結晶片を種結晶として用いて、結晶方位が38°RYであり直胴部長が約90mmであり、直径が4インチであるLT単結晶インゴットの育成を行った。
【0046】
LT単結晶インゴットの育成は、イリジウム製の坩堝にLTの原料を充填し、高周波加熱により原料を融解させた後、これらの種結晶の先端、この場合前記第1のLT単結晶インゴットのシード側を融液に接触させ、徐々に引上げることで
図6に例示するような形状のLT単結晶インゴットを得た。引上げは窒素と酸素の混合ガス中で行われ、引上げ速度1~5mm/時、回転数5~20rpmの条件下で行った。いったんLT単結晶インゴットを作製した後、種結晶は単結晶インゴットのコーン部で切り離され、次のバッチのLT単結晶インゴットの作製に回された。こうして合計184バッチのLT単結晶インゴットを作製した。
【0047】
【0048】
(比較例)
実施例の種結晶用インゴットから切り出した結晶片のうち、評価用基板の音速の代表値との差の絶対値が0.60m/sより大きくなったA31、A32、A33、A34、A35、A36の異常点に対応する結晶片6個を比較例の種結晶として採用した。
【0049】
得られた比較例の種結晶のテール側にX面を貫く形で直径5mmの穴を開けピン止めできる形状に加工した。それぞれの種結晶を用いて結晶方位が38°RYであり、直胴部長が約90mmであり、直径が4インチであるLT単結晶インゴットの育成を行った。LT単結晶インゴットの育成は、実施例と同様の手順、条件とした。一旦LT単結晶インゴットを作製した後、種結晶は単結晶インゴットのコーン部で切り離され、次のバッチのLT単結晶インゴットの作製に回された。こうして合計38バッチのLT単結晶インゴットを作製した。
【0050】
実施例で作製したLT単結晶インゴットと比較例で作製したLT単結晶インゴットについて、クラック及び異常成長稜の有無を調べた結果表2の通りとなった。
【0051】
【0052】
実施例のLT単結晶インゴットは比較例のLT単結晶インゴットに比べ、クラック及び異常成長稜の発生率が極めて低く、良品結晶の収率が高かった。
さらに実施例のLT単結晶インゴット及び比較例のLT単結晶インゴットそれぞれをスライスして、単結晶ウエハを作製しデバイス特性の比較を行った。LT単結晶インゴットをスライス及びラップした後、片側を研磨により鏡面に仕上げして単結晶ウエハを作製した。また評価デバイスは、得られたウエハの鏡面上にアルミニウム(Al)を0.4μmの厚みで蒸着し、フォトリソグラフィーにより電極部にレジストを残したのち、ドライエッチングにより不要なAl部を除去した。さらにレジストをアッシングすることで除去し、ウエハ全面に1ポートの共振子を作成した。LT単結晶ウエハの結晶方位は38°回転Yカットであった。
【0053】
1ポートの共振子の評価はQ値の最大値(Qmax)と電気機械結合係数K2についてウエハ面内の平均値を求めた。1ポート共振子の動作周波数は約850MHzとした。なお、Q値は次式により求めた。
【0054】
【数2】
ここで、ωは角周波数であり、τ(f)は群遅延時間であり、Γはネットワークアナライザで測定される反射係数である。
【0055】
また、電気機械結合係数(K2)は次式により求めた。
【0056】
【数3】
ここで、f
rは共振周波数であり、f
aは反共振周波数である。
【0057】
評価結果を表3に示す。
【0058】
【0059】
実施例の単結晶ウエハは比較例の単結晶ウエハに比べ、ウエハ面内のQmax値およびウエハ面内のK2値が高く、デバイス特性が優れていた。
【符号の説明】
【0060】
1 トランスジューサ
2 音響レンズ
3 参照媒質
4 測定点
5 音響レンズの焦点位置
101 第1の単結晶インゴット
102、202、302 評価用基板
103、203、303 種結晶用インゴット
104、204、304 投影面
105、305 正常点
106、306 異常点
107、307 正常点の写像
108、308 異常点の写像
109、309 結晶片(種結晶)
110、310 異常点の領域
111 第2の単結晶インゴット
112 単結晶ウエハ