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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/02 20060101AFI20230825BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230825BHJP
   F04B 49/08 20060101ALI20230825BHJP
   E03B 5/00 20060101ALI20230825BHJP
   G05D 16/20 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F04B49/02 311
F04B49/06 311
F04B49/08 311
E03B5/00 B
G05D16/20 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019214921
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021085369
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】片山 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西村 和馬
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-096278(JP,A)
【文献】特開2015-025427(JP,A)
【文献】特開2011-163298(JP,A)
【文献】特開2006-161613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04B 49/06
F04B 49/08
E03B 5/00
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出するポンプと、
前記ポンプの吐出側の圧力を計測する圧力センサと、
前記ポンプの吐出側の流量を計測する流量センサと、
前記ポンプの吐出側の圧力が低下したとき、前記ポンプを始動させ、前記吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる給水動作、及び、前記ポンプの吐出側の水の使用量が少なくなった少水量状態を検知したときに、前記少水量状態が継続していることを確認する前記ポンプの様子見運転を経て、前記ポンプの吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる前記ポンプの蓄圧運転の後に、前記ポンプを停止させる少水量停止動作を実行させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記給水動作にて前記ポンプが運転した単位時間当たりの運転時間をポンプ稼働率として記録すると共に、前記流量センサが単位時間当たりに前記吐出側の流量の増加を検知した回数を水使用回数として記録した記録データを有しており、
前記記録データは、現在から数週間前まで、曜日毎に分けて、同時間帯の記録の平均を取って逐次更新され、
前記制御装置は、時間帯毎に前記記録データを参照し、様子見運転時間の要否ないしその長さを決定する、ことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記制御装置は、さらに、単位時間当たりの前記ポンプの始動回数が、予め設定した単位時間当たりの前記ポンプの許容始動回数を超えないように、前記様子見運転時間の要否ないしその長さを決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1~2には、ポンプを使用して、集合住宅やオフィスビルなどの建物に水を供給する給水装置が開示されている。この給水装置は、ポンプと、該ポンプの吐出側に設けた少水量検出手段及び圧力検出手段と、ポンプ制御手段とを具備し、該ポンプ制御手段は、前記少水量検出手段が少水量検知信号を発生して、ある少水量検知時間保持してから(以下、この時間を様子見運転時間と称する)、前記ポンプを蓄圧運転させた後、前記ポンプを停止する機能と、前記ポンプ停止中に前記圧力検出手段により圧力信号がポンプ始動圧力設定値以下になった時に、前記ポンプを始動する機能とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-71060号公報
【文献】特開平9-96278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記少水量停止動作の目的は、ポンプの締切運転によるモータの過熱防止、および無駄な運転時間の削減である。しかしながら、この少水量停止動作が多すぎると(ポンプの始動停止の頻度を増やすと)、少水量停止前の蓄圧による急激な圧力上昇が頻繁に発生し、給水装置としての機械的寿命に問題を及ぼすとともに、負荷(給水端)側の圧力変動等の問題も生じる。逆に、この少水量停止動作が少なすぎると(ポンプの始動停止の頻度を減らすと)、その間のポンプの継続運転によって消費電力が増大する。
【0005】
ポンプの始動停止の頻度は、少水量停止動作の様子見運転時間の長さに依存する。上記従来技術では、この少水量停止動作の様子見運転時間を、給水装置の直近の運転状況のデータ、例えば、前回ポンプ停止時間や、直前ポンプ運転時間などに基づいて決定していた。しかしながら、給水端での水の使用頻度(給水パターン)は、人々のライフスタイルに応じて千差万別、多種多様である。このため、給水パターンが急激に変化する場合があり、直近の運転状況データからでは、現在時刻の適切な様子見運転時間を決定できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、人々のライフスタイルに合わせて、現在時刻の様子見運転時間を決定し、省エネ効果を高め、ポンプの始動頻度過多を防止できる給水装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る給水装置は、水を吐出するポンプと、前記ポンプの吐出側の圧力を計測する圧力センサと、前記ポンプの吐出側の流量を計測する流量センサと、前記ポンプの吐出側の圧力が低下したとき、前記ポンプを始動させ、前記吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる給水動作、及び、前記ポンプの吐出側の水の使用量が少なくなった少水量状態を検知したときに、前記少水量状態が継続していることを確認する前記ポンプの様子見運転を経て、前記ポンプの吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる前記ポンプの蓄圧運転の後に、前記ポンプを停止させる少水量停止動作を実行させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、時間帯毎の前記ポンプの吐出側の水の使用頻度に応じて、現在時刻の前記少水量停止動作にて、前記ポンプが様子見運転する様子見運転時間の要否ないしその長さを決定する。
【0008】
上記給水装置においては、前記制御装置は、時間帯毎の前記水の使用頻度とその使用頻度に応じた前記様子見運転時間を設定した設定データを有しており、時間帯毎に前記設定データを参照し、前記様子見運転時間の要否ないしその長さを決定してもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、前記設定データを、曜日毎に有していてもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、前記給水動作にて前記ポンプが運転した単位時間当たりの運転時間をポンプ稼働率として記録した記録データを有しており、時間帯毎に前記記録データを参照し、前記様子見運転時間の要否ないしその長さを決定してもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、前記流量センサが単位時間当たりに前記吐出側の流量の増加を検知した回数を水使用回数として記録した記録データを有しており、時間帯毎に前記記録データを参照し、前記様子見運転時間の要否ないしその長さを決定してもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、前記記録データを、曜日毎に有していてもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、前記記録データを、現在から数週間前までの記録の蓄積によって逐次更新してもよい。
上記給水装置においては、前記制御装置は、さらに、単位時間当たりの前記ポンプの始動回数が、予め設定した単位時間当たりの前記ポンプの許容始動回数を超えないように、前記様子見運転時間の要否ないしその長さを決定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の態様によれば、人々のライフスタイルに合わせて、現在時刻の様子見運転時間を決定し、省エネ効果を高め、ポンプの始動頻度過多を防止できる給水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る給水装置を示す模式図である。
図2】一実施形態に係るポンプの運転状態を示すグラフである。
図3】一実施形態に係る制御装置が有する設定データの一例を示す説明図である。
図4】一実施形態に係るポンプの運転状態を示すグラフであって様子見運転時間を(長)に設定した例である。
図5】一実施形態に係るポンプの運転状態を示すグラフであって様子見運転時間を(短)に設定した例である。
図6】一実施形態に係る給水装置の始動頻度基準の一例を示す説明図である。
図7】一実施形態に係る稼働率(ポンプ稼働率)と遅延時間(様子見運転時間)との関係を示すグラフである。
図8】一実施形態に係る稼働率と遅延時間との関係を示す他の例のグラフである。
図9】一実施形態に係る使用頻度(水使用回数)と遅延時間(様子見運転時間)との関係を示すグラフである。
図10】一実施形態に係る使用頻度と遅延時間との関係を示す他の例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る給水装置1を示す模式図である。
図1に示す給水装置1の吸込側は、水道管4に接続されている。また、給水装置1の吐出側は、給水管7に接続されている。給水管7は、図示しない建物の各階の給水端(例えば蛇口)に連通している。給水装置1は、水道管4の水を増圧して建物の各給水端に水を供給する。
【0013】
給水装置1は、ポンプ2と、このポンプ2を駆動する駆動装置としてのモータ3と、モータ3を可変速駆動する周波数変換器としてのインバータ20と、ポンプ2の吸込側に配置された逆流防止装置25と、逆流防止装置25の吸込側に配置された圧力センサ21と、ポンプ2の吐出側に配置された逆止弁22と、逆止弁22の吐出側に配置された圧力センサ26、フロースイッチ24(流量センサ)、および圧力タンク28と、を備えている。これら構成要素は、給水装置1のキャビネット30内に収容されている。なお、キャビネット30を備えていないタイプの給水装置もある。
【0014】
ポンプ2の吸込口には、吸込管5が接続され、ポンプ2の吐出口には、吐出管32が接続されている。バイパス管8は、水道管4の圧力のみで給水を行うための配管であり、吸込管5と吐出管32との間を接続している。このバイパス管8には、逆止弁23が設けられている。
【0015】
図1に示す給水装置1には、ポンプ2、モータ3、逆止弁22、およびフロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、給水装置1には、1組、または3組以上のポンプ2、モータ3、逆止弁22、およびフロースイッチ24が設けられていても構わない。
【0016】
また、図1に示す給水装置1は、ポンプ2が吸込管5を介して水道管4に接続される直結式の給水装置であるが、受水槽式の給水装置であってもよい。受水槽式の場合、ポンプ2は、吸込管5を介して受水槽に接続される。この受水槽式の場合、図1に示す逆流防止装置25、吸込側の圧力センサ21、及びバイパス管8は設けなくても構わない。
【0017】
逆止弁22は、吐出管32に設けられており、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止する。フロースイッチ24は、吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。圧力センサ26は、吐出側圧力(すなわち、給水装置1に加わる背圧)を測定するための水圧測定器である。圧力タンク28は、ポンプ2が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0018】
給水装置1は、ポンプ2の動作を制御する制御装置40を備えている。インバータ20、フロースイッチ24、圧力センサ21、圧力センサ26は、制御装置40に信号線を介して接続されている。また、インバータ20とモータ3を一体化したインバータ一体型モータを使用してもよい。制御装置40は、ポンプ2の吐出側の圧力が低下したとき、ポンプ2を始動させ、吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる給水動作、及び、ポンプ2の吐出側の水の使用量が少なくなった少水量状態を検知したときに、少水量状態が継続していることを確認するポンプ2の様子見運転を経て、ポンプ2の吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させるポンプ2の蓄圧運転の後に、ポンプ2を停止させる少水量停止動作を実行させる。
【0019】
すなわち、ポンプ2が停止している状態で水が建物内で使用されると、ポンプ2の吐出側圧力が低下する。この吐出側圧力、すなわち圧力センサ26の出力値が所定の始動圧力値にまで低下すると、制御装置40は、ポンプ2を始動させる。ポンプ2の運転中は、圧力センサ26の出力値に基づいて推定末端圧力一定制御や吐出側圧力一定制御などの圧力制御が行われる。
【0020】
建物での水の使用が停止されると、ポンプ2から吐き出される水の流量が低下する。フロースイッチ24は、ポンプ2からの水の流量が所定の値まで低下したことを検出すると、流量低下信号を制御装置40に送る。制御装置40は、この流量低下信号を受け、インバータ20に指令を出して吐出側圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプ2の回転速度を増加させ、その後ポンプ2を停止させる。
【0021】
図2は、一実施形態に係るポンプ2の運転状態を示すグラフである。なお、図2において、縦軸はポンプ2の回転速度を表し、横軸は時間を表している。
ポンプ2の吐出側圧力が低下して所定の始動圧力値に達すると、制御装置40は、ポンプ2を始動させる(時間T1)。制御装置40は、ポンプ2の吐出側圧力が目標圧力に昇圧するように圧力センサ26の出力値に基づいてポンプ2の回転速度を制御する。
【0022】
給水端での水の使用が低下して水の流量が所定の値に達すると、フロースイッチ24は、流量低下信号を制御装置40に送信する(T2)。つまり、時間T1から時間T2までは、ポンプ2が給水動作を行う。制御装置40は、流量低下信号を受けても直ちには蓄圧運転を行わず、ある所定の時間だけ様子見運転を行う(T2からT3まで)。
【0023】
この様子見運転は、水の使用量が少ない状態が継続していることを確認するための運転であり、ポンプ2の頻繁な停止および起動を避けるため、およびフロースイッチ24の流量低下検出の精度を高めるために行われる。
【0024】
この様子見運転中に、吐出側圧力が概ね一定に保たれている場合は、制御装置40は、ポンプ2の目標圧力を一時的に上昇させて圧力タンク28に蓄圧し(T3からT4まで)、そして所定の時間だけポンプ2の目標圧力を一定に保つ圧力保持運転を行い(T4からT5まで)、その後ポンプ2を停止させる(T5)。
【0025】
このように、少水量停止動作は、吐出側圧力を監視する様子見運転、ポンプ2を増速させて圧力タンク28に蓄圧する蓄圧運転、圧力タンク28に蓄圧した後にポンプ2の目標圧力を一定に保って吐出側圧力を保持する圧力保持運転、およびポンプ2の停止から構成される。なお、圧力保持運転は、後述する図5に示すように、少水量停止動作において必須ではなく、無くても構わない。
【0026】
ところで、このような少水量停止動作を行うにはある程度の時間が掛かり、省エネルギーの観点からは好ましくない。特に、水の使用頻度が少ない時間帯で、長い時間をかけて少水量停止動作を行うことは好ましくない。
【0027】
そこで、制御装置40は、予め設定した時間帯毎のポンプ2の吐出側の水の使用頻度に応じて、現在時刻の少水量停止動作にて、ポンプ2が様子見運転する様子見運転時間t1(T2からT3まで)の要否ないしその長さを決定する。つまり、制御装置40は、時計や、カレンダー機能を搭載し、現在時刻の最適な様子見運転時間t1をスケジューリングしている。
以下、この様子見運転時間t1の好ましい決定手法について、いくつか説明する。
【0028】
[設定データに基づく様子見運転時間t1の決定]
制御装置40は、時間帯毎の水の使用頻度とその使用頻度に応じた様子見運転時間t1を設定した設定データを有しており、時間帯毎に設定データを参照し、様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。制御装置40は、当該設定データを、曜日毎に有している。
【0029】
図3は、一実施形態に係る制御装置40が有する設定データの一例を示す説明図である。
図3に示す設定データは、曜日ごとに分かれ、さらに、月~金の平日のカテゴリー、土、日の休日のカテゴリーに分かれている。また、設定データの様子見運転時間t1は、(長)、(中)、(短)の3段階で設定されている。この設定データは、例えば、オフィスビル(学校などであってもよい)に設置された給水装置1に適している。
【0030】
月~金の6~8時の時間帯は、朝の通勤時間であり、オフィスビルに居る人数は未だ少なく、水の使用頻度は低い。したがって、この時間帯での様子見運転時間t1は、(短)に設定されている。
月~金の9~18時の時間帯は、勤務時間であり、オフィスビルに居る人数は多く、水の使用頻度は高い。したがって、この時間帯での様子見運転時間t1は、(長)に設定されている。
【0031】
月~金の19~21時の時間帯は、夜間であるが、残業などでオフィスビルには一定数の人数がおり、水の使用頻度は中程度である。したがって、この時間帯での様子見運転時間t1は、(中)に設定されている。
月~金の0~5時、22~24時の時間帯は、早朝、深夜であり、オフィスビルに居る人数は少なく、水の使用頻度は低い。したがって、この時間帯での様子見運転時間t1は、(短)に設定されている。
【0032】
対して、土、日は、休日でオフィスビルにいる人数は少なく、前時間帯で水の使用頻度は低い。したがって、土、日の全時間帯での様子見運転時間t1は、(短)に設定されている。
【0033】
図4は、一実施形態に係るポンプ2の運転状態を示すグラフであって様子見運転時間t1を(長)に設定した例である。図4に示す様子見運転時間t1(長)は、上述した図2に示す様子見運転時間t1(中)よりも長くなっている。
図5は、一実施形態に係るポンプ2の運転状態を示すグラフであって様子見運転時間t1を(短)に設定した例である。図5には、様子見運転時間t1を極端に短くした場合の例であって、様子見運転時間t1(短)は0になっている。なお、様子見運転時間t1(短)は、0でなく、図2に示す様子見運転時間t1(中)より短ければよい。
【0034】
制御装置40は、上述した月~金の6~8時の時間帯、月~金の0~5時、22~24時の時間帯、及び、土、日の全時間帯では、水の使用頻度が低いことから、図3に示す設定データを参照し、様子見運転時間t1を(短)に決定する(図5参照)。この構成によれば、ポンプ2の始動頻度が少なくなる時間帯で、ポンプ2が直ぐに停止するため、ポンプ2の締切運転によるモータ3の過熱防止でき、また、無駄な運転時間を削減でき、高い省エネ効果が得られる。
【0035】
また、制御装置40は、上述した月~金の9~18時の時間帯では、水の使用頻度が高いことから、図3に示す設定データを参照し、様子見運転時間t1を(長)に決定する(図4参照)。この構成によれば、ポンプ2の始動頻度が多くなる時間帯で、ポンプ2が直ぐに停止しないため、少水量停止前の蓄圧による急激な圧力上昇が頻繁に生じず、給水端側での圧力変動を抑制することができる。また、給水装置1としての機械的寿命も延ばすことができる。
【0036】
このように、給水装置1に、人々のライフスタイルに応じた水の使用頻度(給水パターン)を時間帯毎に設定し、その給水パターンから、現在時刻の最適な少水量停止動作の様子見運転時間t1を決定する。これによって、給水端での圧力変動を起こすことなく、また、ポンプ2が無駄に運転される事も防ぐことができる。
【0037】
[記録データに基づく様子見運転時間t1の決定(1)]
制御装置40は、給水動作にてポンプ2が運転した単位時間当たりの運転時間をポンプ稼働率として記録した記録データを有しており、時間帯毎に当該記録データを参照し、様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。制御装置40は、当該記録データを、曜日毎に有している。
【0038】
ここで言うポンプ稼働率とは、上述した少水量停止動作でのポンプ2の運転時間を除いた、給水動作でのポンプ2の運転時間を対象としている。制御装置40は、このポンプ稼働率を単位時間毎(例えば1時間毎)に記録する。そして、制御装置40は、記録した時間帯毎のポンプ稼働率に応じて、現在時刻の少水量停止動作にて、ポンプ2が様子見運転する様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。
【0039】
例えば、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯のポンプ稼働率が低い(水の使用頻度が低い)場合は、様子見運転時間t1を(短)に決定する(図5参照)。また、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯のポンプ稼働率が中程度(水の使用頻度が中程度)場合は、様子見運転時間t1を(中)に決定する(図2参照)。また、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯のポンプ稼働率が高い(水の使用頻度が高い)場合は、様子見運転時間t1を(長)に決定する(図4参照)。
【0040】
このように、給水装置1に、人々のライフスタイルに応じた水の使用頻度をポンプ稼働率として時間帯毎に記録し、そのポンプ稼働率から、現在時刻の最適な少水量停止動作の様子見運転時間t1を決定する。これによって、給水端での圧力変動を起こすことなく、また、ポンプ2が無駄に運転される事も防ぐことができる。
【0041】
[記録データに基づく様子見運転時間t1の決定(2)]
制御装置40は、制御装置40は、フロースイッチ24が単位時間当たりに吐出側の流量の増加を検知した回数を水使用回数として記録した記録データを有しており、時間帯毎に当該記録データを参照し、様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。制御装置40は、当該記録データを、曜日毎に有している。
【0042】
ここで言う水使用回数とは、フロースイッチ24がOFFからONになった回数を対象としている。制御装置40は、この水使用回数を単位時間毎(例えば1時間毎)に記録する。そして、制御装置40は、記録した時間帯毎の水使用回数に応じて、現在時刻の少水量停止動作にて、ポンプ2が様子見運転する様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。
【0043】
例えば、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯の水使用回数が低い(水の使用頻度が低い)場合は、様子見運転時間t1を(短)に決定する(図5参照)。また、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯の水使用回数が中程度(水の使用頻度が中程度)場合は、様子見運転時間t1を(中)に決定する(図2参照)。また、制御装置40は、記録データを参照し、現在時刻の時間帯の水使用回数が高い(水の使用頻度が高い)場合は、様子見運転時間t1を(長)に決定する(図4参照)。
【0044】
このように、給水装置1に、人々のライフスタイルに応じた水の使用頻度を水使用回数として時間帯毎に記録し、その水使用回数から、現在時刻の最適な少水量停止動作の様子見運転時間t1を決定する。これによって、給水端での圧力変動を起こすことなく、また、ポンプ2が無駄に運転される事も防ぐことができる。
【0045】
制御装置40は、上述したポンプ稼働率や水使用回数の記録データを、現在から数週間前までの記録の蓄積によって逐次更新する。例えば、現在から1~2週間までのデータを蓄積すると共に、曜日ごとに分け、同時間帯のポンプ稼働率や水使用回数は平均を取るなどして逐次更新する。これによって、例えば、春夏秋冬の季節毎(あるいは月毎)に給水パターンが変わる場合であっても、その給水パターンに対応した適切な様子見運転時間t1を設定できる。
【0046】
制御装置40は、上述した記録データに基づく様子見運転時間t1の決定に関し、さらに、単位時間当たりのポンプ2の始動回数が、予め設定した単位時間当たりのポンプ2の許容始動回数(ポンプ2の許容始動頻度)を超えないように、様子見運転時間t1の要否ないしその長さを決定する。
【0047】
図6は、一実施形態に係る給水装置1の始動頻度基準の一例を示す説明図である。
図6に示すように、ポンプ2の許容始動頻度は、7.5kW以下の場合は6回/h、11~15kWの場合は4回/h、26kW以上の場合は3回/hと設定されている。始動頻度過多の場合、ポンプ2の主軸のキーの摩耗、主軸のねじれによる疲労、モータ3や軸受などの劣化が早まる。つまり、給水装置1の機械的寿命が短くなる。なお、本実施形態のようにインバータ20を実装し、ソフトスタートを行うものは、劣化が少なくなるため、出力に関係なく6回/hとする。
【0048】
例えば、ポンプ2の許容始動頻度が6回/hの場合、様子見運転時間t1が10分あれば、ポンプ2の許容始動頻度を超えることはない。よって、このポンプ2の許容始動頻度を超えない範囲において、様子見運転時間t1を自由に設定するとよい。これにより、給水装置1の機械的寿命が短くなることを防止できる。なお、このポンプ2の許容始動頻度は、試験や長年の実践経験により設定することができる。
【0049】
図7は、一実施形態に係る稼働率(ポンプ稼働率)と遅延時間(様子見運転時間)との関係を示すグラフである。図8は、一実施形態に係る稼働率と遅延時間との関係を示す他の例のグラフである。
制御装置40は、図7及び図8に示すようなテーブルデータ、あるいは計算式を記録しており、当該ポンプ稼働率(稼働率)から、現在時刻の最適な少水量停止動作の様子見運転時間t1(遅延時間)を決定してもよい。
【0050】
図9は、一実施形態に係る使用頻度(水使用回数)と遅延時間(様子見運転時間)との関係を示すグラフである。図10は、一実施形態に係る使用頻度と遅延時間との関係を示す他の例のグラフである。
制御装置40は、図9及び図10に示すようなテーブルデータ、あるいは計算式を記憶しており、当該水使用回数(使用頻度)から、現在時刻の最適な少水量停止動作の様子見運転時間t1(遅延時間)を決定してもよい。
【0051】
このように、上述した本実施形態によれば、水を吐出するポンプ2と、ポンプ2の吐出側の圧力を計測する圧力センサ26と、ポンプ2の吐出側の流量を計測するフロースイッチ24と、ポンプ2の吐出側の圧力が低下したとき、ポンプ2を始動させ、吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させる給水動作、及び、ポンプ2の吐出側の水の使用量が少なくなった少水量状態を検知したときに、少水量状態が継続していることを確認するポンプ2の様子見運転を経て、ポンプ2の吐出側の圧力を所定の圧力まで昇圧させるポンプ2の蓄圧運転の後に、ポンプ2を停止させる少水量停止動作を実行させる制御装置40と、を備え、制御装置40は、時間帯毎のポンプ2の吐出側の水の使用頻度に応じて、現在時刻の少水量停止動作にて、ポンプ2が様子見運転する、という構成を採用することによって、人々のライフスタイルに合わせて、現在時刻の適切な様子見運転時間t1を決定し、省エネ効果を高め、ポンプ2の始動頻度過多を防止できる給水装置1を提供できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0053】
1 給水装置
2 ポンプ
3 モータ
4 水道管
5 吸込管
7 給水管
8 バイパス管
20 インバータ
21 圧力センサ
22 逆止弁
23 逆止弁
24 フロースイッチ(流量センサ)
25 逆流防止装置
26 圧力センサ
28 圧力タンク
30 キャビネット
32 吐出管
40 制御装置
t1 様子見運転時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10