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  • 特許-注出容器 図1
  • 特許-注出容器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】注出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/40 20060101AFI20230825BHJP
   B65D 47/24 20060101ALI20230825BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20230825BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B65D47/40 100
B65D47/24 200
B65D47/20 111
B65D47/08 100
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020009486
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116088
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章仁
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 翔平
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 傳美
(72)【発明者】
【氏名】立藏 亮
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193746(JP,A)
【文献】特開2013-244995(JP,A)
【文献】特開2017-197224(JP,A)
【文献】国際公開第2004/101384(WO,A1)
【文献】特開2015-189506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 1/32
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されると共に内容物の減少に伴いしぼみ変形する内容器、および前記内容器が内装された外容器を備える容器本体と、
前記容器本体の口部に装着される注出キャップと、
を備え、
前記外容器には、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成され、
前記注出キャップは、
注出孔が形成された天壁部を有する有頂筒状のキャップ本体と、
前記口部を覆うベース部を有し、前記口部を閉塞する中栓部と、
前記キャップ本体の中心軸方向に延びる筒状であり、前記中心軸方向の両端部に開口部を有し、かつ、前記両端部に設けられた前記開口部を介して前記容器本体の内部と前記注出孔とを連通する収容筒部と、
前記収容筒部の前記開口部のうち前記容器本体側と逆側の開口部を開放可能に閉塞する注出弁と、
前記収容筒部の内部に前記中心軸方向に移動可能に収容されたボール弁と、
を備え、
前記ボール弁は、前記収容筒部の内周面に形成された弁座部に前記逆側に向けて離反可能に着座し、前記容器本体の内部と前記注出孔との連通を開放可能に遮断しており、
前記収容筒部の周壁部のうち前記逆側の端部には、前記収容筒部の内部と前記注出孔とを連通する連通溝が形成され、
前記収容筒部は、前記ベース部から前記逆側に延びる部分を有し、
前記収容筒部の前記容器本体側の端部は、前記ベース部から前記容器本体側に突出し、
前記収容筒部のうち前記ベース部から前記容器本体側に突出する部分の前記中心軸方向の寸法は、前記収容筒部のうち前記ベース部から前記逆側に延びる部分の前記中心軸方向の寸法よりも小さいことを特徴とする注出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、内部に摺動体が摺動自在に収容された収容筒部を備えることで、容器本体内の内容物を注出した後に注出孔周辺の液体を吸い込むことができるサックバック機能を有する注出キャップ備えた注出容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-159942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような注出容器においては、容器本体内の内容物の残量が少なくなると、容器本体を倒立等させた際に、収容筒部の容器本体側の開口部が内容物から露出した状態となる場合がある。この場合、容器本体をスクイズ変形させる等によって容器本体内の圧力を上昇させて内容物を注出孔から注出させようとする場合に、容器本体内の空気が収容筒部から注出孔に抜け出てしまい、容器本体内の圧力を上昇させることができなくなる。そのため、容器本体の口部を開放可能に閉塞する注出弁を開放させることができなり、容器本体内に内容物が残っていても注出孔から内容物を注出できなくなる。したがって、容器本体内に内容物が比較的多く残留しやすい問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、容器本体内に残留する内容物の量を低減できる注出容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の注出容器の一つの態様は、内容物が収容されると共に内容物の減少に伴いしぼみ変形する内容器、および前記内容器が内装された外容器を備える容器本体と、前記容器本体の口部に装着される注出キャップと、を備え、前記外容器には、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成され、前記注出キャップは、注出孔が形成された天壁部を有する有頂筒状のキャップ本体と、前記口部を覆うベース部を有し、前記口部を閉塞する中栓部と、前記キャップ本体の中心軸方向に延びる筒状であり、前記中心軸方向の両端部に開口部を有し、かつ、前記両端部に設けられた前記開口部を介して前記容器本体の内部と前記注出孔とを連通する収容筒部と、前記収容筒部の前記開口部のうち前記容器本体側と逆側の開口部を開放可能に閉塞する注出弁と、前記収容筒部の内部に前記中心軸方向に移動可能に収容されたボール弁と、を備え、前記ボール弁は、前記収容筒部の内周面に形成された弁座部に前記逆側に向けて離反可能に着座し、前記容器本体の内部と前記注出孔との連通を開放可能に遮断しており、前記収容筒部の周壁部のうち前記逆側の端部には、前記収容筒部の内部と前記注出孔とを連通する連通溝が形成され、前記収容筒部は、前記ベース部から前記逆側に延びる部分を有し、前記収容筒部の前記容器本体側の端部は、前記ベース部から前記容器本体側に突出し、前記収容筒部のうち前記ベース部から前記容器本体側に突出する部分の前記中心軸方向の寸法は、前記収容筒部のうち前記ベース部から前記逆側に延びる部分の前記中心軸方向の寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明の注出容器の一つの態様によれば、収容筒部は、中栓部のベース部から容器本体側と逆側に延びる部分を有している。そのため、収容筒部全体の上下方向の寸法を維持しつつ、ベース部から容器本体側に突出する収容筒部の突出長さを小さくできる。これにより、収容筒部全体がベース部から容器本体側に突出している場合に比べて、収容筒部の第1開口部の位置を容器本体側と逆側に配置することができる。したがって、容器本体内の内容物の量が比較的少なくなっても、注出容器を倒立させた際に収容筒部の第1開口部が空気に露出しにくくできる。そのため、本発明の注出容器の一つの態様によれば、収容筒部内におけるボール弁のストローク量を確保してサックバック機能を好適に維持しつつ、容器本体内に残留する内容物の量を低減できる。
【0008】
また、収容筒部の容器本体側と逆側の開口部を注出弁が開放可能に閉塞する構成であるため、容器本体内の空気が収容筒部に流入した場合であっても、空気の圧力によって注出弁を開きやすくできる。これにより、容器本体内の内容物の量が比較的少なくなった場合であっても、注出弁が開かなくなることを抑制できる。したがって、容器本体内に残留する内容物の量をより低減できる。
【0009】
また、連通溝が収容筒部の周壁部のうち容器本体側と逆側の端部に形成されている。そのため、弁本体によって収容筒部の容器本体側と逆側の開口部が閉塞された状態では、連通溝の容器本体側と逆側の開口は弁本体によって塞がれた状態となる。この状態において連通溝に内容物が通過すると、弁本体は、連通溝内を通る内容物から容器本体側と逆側向きの圧力を受ける。したがって、容器本体をある程度強く押圧して大きくスクイズ変形させた場合等に、弁本体が内容物から力を受けやすくでき、弁本体を収容筒部から離反させやすくできる。そのため、収容筒部の容器本体側と逆側の開口部を開放させやすくできる。
【0010】
前記収容筒部の前記容器本体側の端部は、前記ベース部から前記容器本体側に突出している構成としてもよい。
この構成によれば、収容筒部全体がベース部から容器本体側と逆側に延びている場合に比べて、キャップ本体の天壁部とベース部との中心軸方向の距離を小さくできる。これにより、注出キャップが中心軸方向に大型化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様によれば、容器本体内に残留する内容物の量を低減できる注出キャップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の注出容器を示す断面図である。
図2図2は、本実施形態の注出容器を倒立させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る注出容器について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0014】
本実施形態の注出容器1は、内容物が収容される容器本体4と、容器本体4の口部4aに装着される注出キャップ2と、を備えている。容器本体4に収容される内容物は、特に限定されないが、例えば液体状の内容物である。本実施形態において注出キャップ2と容器本体4とは、共通の軸を中心として配置されている。
【0015】
以下、注出キャップ2および容器本体4の共通の軸を中心軸Oと呼び、中心軸Oに沿う中心軸方向を上下方向(Z軸方向)と呼ぶ。容器本体4に対して注出キャップ2が位置する側(+Z側)を上側または上方と呼び、逆側(-Z側)を下側または下方と呼ぶ。注出キャップ2において、下側および下方は、容器本体4側に相当し、上側および上方は、容器本体4側と逆側に相当する。また、特に断りのない限り、上下方向に見て、中心軸Oに交差する方向を単に径方向と呼び、中心軸O回りに周回する方向を単に周方向と呼ぶ。
【0016】
本実施形態の注出キャップ2が装着される容器本体4は、内容物が収容されると共に内容物の減少に伴い減容変形(しぼみ変形)する可撓性に富む内容器5と、内容器5が内装される外容器6と、を備えている。外容器6および内容器5は、何れも、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製となっている。図示しないが、容器本体4は、外容器6を形成するためのポリエチレンテレフタレート樹脂製の外プリフォームの内側に、内容器5を形成するためのポリエチレンテレフタレート樹脂製の内プリフォームを組み、ブロー成形して作られた二重構造の容器形態となっている。容器本体4は、ブロー成形として二軸延伸ブロー成形により形成され、外容器6の内面に内容器5が剥離可能に積層された積層剥離型容器(デラミボトル)とされている。外容器6はスクイズ変形可能に形成され、この外容器6のスクイズ変形に伴って内容器5は減容変形する。なお、容器本体4の材質としては、ポリエチレン等の合成樹脂を採用してもよく、容器本体4の材質は限定されない。
【0017】
容器本体4の口部4aは、内容器5の口部5aと外容器6の口部6aとが積層された構成とされている。内容器5の口部5aの上端部に、径方向の外側に向けて突出したフランジ部が形成され、このフランジ部は、外容器6の口部6aの上端開口縁に配置されている。外容器6の口部6aには、外容器6と内容器5との間に外気を吸入する吸気孔8が形成されている。吸気孔8は、口部6aに周方向に間隔をあけて複数形成されている。外容器6の口部6aのうち吸気孔8の下方に位置する部分の外周面には、周方向の全周にわたって連続して延びる被シール部7が形成されている。
【0018】
本実施形態の注出キャップ2は、図1に示すように、容器本体4の口部4aに装着されるキャップ本体20と、キャップ本体20にヒンジ部34を介して連結された蓋体30と、を備えている。図1では、蓋体30が閉じた状態を示している。なお、以下の各部の相対位置関係の説明においては、特に断りのない限り、蓋体30が閉じた状態にある場合について説明する。キャップ本体20および蓋体30は、中心軸Oと同軸に配置された有頂筒状である。
以下、上下方向と直交する方向のうち図1に示すX軸に沿う方向を前後方向と呼び、上下方向および前後方向に直交する方向(Y軸方向)を左右方向と呼ぶ。前後方向のうち中心軸Oに対してヒンジ部34が位置している側(-X側)を後側または後方と呼び、これとは逆側(+X側)を前側または前方と呼ぶ。
【0019】
キャップ本体20は、中心軸Oと同軸に配置された円板状の天壁部22と、天壁部22の外周縁部から下方に延びる円筒状の装着筒部21と、を有している。
キャップ本体20の装着筒部21は、容器本体4の口部4aに螺着されている。装着筒部21の下端部は、容器本体4の被シール部7に、周方向の全周にわたって気密に接触したシール部21bとなっている。装着筒部21の内周面には、上下方向に延び、後述する外気導入孔23aと吸気孔8とを連通する連通溝21aが、周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、装着筒部21は、口部4aに螺着されずに、密に外嵌合されてもよい。
【0020】
キャップ本体20の天壁部22は、容器本体4より上方に位置している。天壁部22には、内容物が注出される注出孔26が形成されている。注出孔26は、中心軸Oに対して前方にずれた位置に設けられている。注出孔26は、天壁部22における左右方向の中央部に設けられている。天壁部22の上面における注出孔26の開口周縁部には、上方に向けて突出した注出筒19が形成されている。注出筒19の上端部は、上方に向かうに従い、内径および外径が大きくなるように湾曲して延び、注出筒19の上端開口縁19aにおける外周縁は、注出筒19における径方向の外側に向けて尖っている。
【0021】
天壁部22のうち注出孔26より後方に位置する部分には、上方に突出する外気導入筒23が形成されている。外気導入筒23は、上下方向の両側に開口する円筒状である。外気導入筒23の内部は、キャップ本体20の外部と吸気孔8とを連通する外気導入孔23aを形成している。
天壁部22のうち外気導入筒23より径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて突出し、下方から見て注出孔26の下端開口を囲う垂下筒24が形成されている。
天壁部22のうち注出筒19、外気導入筒23、および垂下筒24が形成された中央部分は、段差部25を介して天壁部22の外周縁部よりも上方に突出している。段差部25は、中心軸Oを囲む環状である。
【0022】
蓋体30は、周壁部31と頂壁部32とを有する有頂筒状に形成され、注出孔26を開閉する。
頂壁部32には、下方に向けて突出し、注出筒19内に密に着脱可能に嵌合された栓部33が形成されている。栓部33は筒状に形成されている。頂壁部32には、内側に注出筒19および外気導入筒23が挿入された囲繞筒17が形成されている。囲繞筒17の下端部は、キャップ本体20における天壁部22に設けられた段差部25に、着脱可能に外嵌されている。
【0023】
周壁部31は、ヒンジ部34を介して装着筒部21に連結されている。これにより、蓋体30は、ヒンジ部34回りに上下に回動可能に設けられており、この回動に伴って栓部33を注出筒19に対して着脱させて、注出孔26を開閉する。周壁部31の上端部における前端部には、前方に突出する指かけ部35が設けられている。
【0024】
注出キャップ2は、容器本体4の口部4aを閉塞する中栓部10と、中栓部10に取り付けられた弁部材60と、をさらに備えている。
中栓部10は、キャップ本体20の装着筒部21の内側に固定されている。中栓部10は、容器本体4の口部4aの上端開口部を覆うベース部11と、ベース部11から上方に延びる固定筒部15と、ベース部11から下方に延びる嵌合筒部16と、嵌合筒部16よりも径方向の内側に位置する収容筒部12と、球状に形成され収容筒部12の内部に上下方向に移動可能に収容されたボール弁13と、を有している。
【0025】
ベース部11は、容器本体4の口部4aの上端開口縁に配置された環状の外ベース部11aと、外ベース部11aよりも径方向の内側に位置する内ベース部11bと、上下方向に延び、外ベース部11aにおける径方向の内端部と内ベース部11bにおける径方向の外端部とを連結する連結筒部11cと、を有している。内ベース部11bは、外ベース部11aよりも下方に位置している。
外ベース部11aのうち、容器本体4の口部4aの上端開口縁に載置されている部分には、キャップ本体20における外気導入孔23aと連通溝21aとを連通する連絡孔11dが形成されている。
内ベース部11bには、上方に向けて突出し、連結筒部11cの径方向の内側に位置する立ち上がり筒部14が形成されている。立ち上がり筒部14は、中心軸Oを中心として上方に開口する円筒状である。
【0026】
固定筒部15は、外ベース部11aの外周縁部から上方に延びている。固定筒部15は、中心軸Oを中心として上方に開口する円筒状である。固定筒部15は、キャップ本体20の装着筒部21における上端部の内側に嵌合されて固定されている。固定筒部15の上端部は、天壁部22の下面に接触している。上述した連絡孔11dは、固定筒部15の下側部分と外ベース部11aの外周縁部とに跨って形成されている。
【0027】
嵌合筒部16は、外ベース部11aから下方に延びている。嵌合筒部16は、中心軸Oを中心として下方に開口する円筒状である。嵌合筒部16は、固定筒部15よりも径方向の内側に位置している。嵌合筒部16は、容器本体4の口部4aの内側に嵌合されている。本実施形態において嵌合筒部16は、内容器5の口部5aの内側に嵌合されている。嵌合筒部16の下側の端部は、例えば、内ベース部11bの下面と上下方向において同じ位置に配置されている。
【0028】
収容筒部12は、キャップ本体20の中心軸方向(上下方向)に延びる筒状に形成されている。収容筒部12は、立ち上がり筒部14の径方向の内側に位置する。収容筒部12は、例えば、中心軸Oと同軸に配置され、上下方向の両側に開口する円筒状である。収容筒部12は、延伸部12eを有している。延伸部12eは、ベース部11から上方に延びる部分である。延伸部12eの上側の端部は、収容筒部12の上側の端部である。本実施形態において収容筒部12は、ベース部11を上下方向に貫通しており、ベース部11から上下方向の両側に突出している。より詳細には、収容筒部12は、内ベース部11bを上下方向に貫通しており、内ベース部11bの上下方向の両側に突出している。このように、本実施形態では収容筒部12の下側の端部は、ベース部11から下側に突出している。
【0029】
収容筒部12のうちベース部11から下方に突出する部分の上下方向の寸法は、収容筒部12のうちベース部11から上方に延びる延伸部12eの上下方向の寸法よりも小さい。収容筒部12のうちベース部11から下方に突出する部分の上下方向の寸法は、例えば、ボール弁13の直径よりも小さい。収容筒部12の上側の端部は、立ち上がり筒部14の上側の端部および外ベース部11aよりも上方に位置する。収容筒部12の上側の端部は、例えば、固定筒部15の上側の端部と上下方向においてほぼ同じ位置に配置されている。収容筒部12の上側の端部は、例えば、固定筒部15の上側の端部よりも僅かに下方に位置する。
【0030】
収容筒部12は、上下方向の両端部に開口部を有している。以下の説明においては、収容筒部12の開口部のうち下側の開口部を第1開口部12bと呼び、収容筒部12の開口部のうち上側の開口部を第2開口部12cと呼ぶ。第1開口部12bは、容器本体4の内部に位置し、容器本体4の内部に開口している。第1開口部12bの内径は、ボール弁13の直径よりも小さい。第2開口部12cは、ベース部11とキャップ本体20における天壁部22との間の空間に開口している。第2開口部12cの内径は、ボール弁13の直径よりも大きい。収容筒部12は、上下方向の両端部に設けられた第1開口部12bおよび第2開口部12cを介して容器本体4の内部と注出孔26とを連通している。
【0031】
収容筒部12の内周面には、弁座部12aが形成されている。弁座部12aは、収容筒部12の内径が下方に向かうに従って縮径する部分である。本実施形態において収容筒部12のうち弁座部12aが設けられた部分は、外径も下方に向かうに従って縮径している。弁座部12aは、収容筒部12のうちベース部11から下方に突出する部分の内周面に形成されている。
【0032】
収容筒部12の周壁部のうち弁座部12aよりも上方に位置する部分には、収容筒部12の内部と注出孔26とを連通する連通溝12dが形成されている。連通溝12dは、収容筒部12の周壁部を内周面から外周面まで径方向に貫通している。本実施形態において連通溝12dは、収容筒部12の周壁部のうち上側の端部(上端周壁部)に形成されている。すなわち、連通溝12dは、延伸部12eに形成されている。連通溝12dは、上方に開口している。連通溝12dは、例えば、周方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。
【0033】
ボール弁13は、収容筒部12内において、弁座部12aに上方に向けて離反可能に着座している。これにより、ボール弁13は、第1開口部12bを閉塞し、容器本体4の内部と注出孔26との連通を開放可能に遮断している。ボール弁13の外径は、収容筒部12のうち弁座部12aよりも上方に位置する部分の内径よりも小さい。これにより、ボール弁13が弁座部12aから上方に離れた際、収容筒部12の内周面とボール弁13との間には僅かな隙間が設けられ、当該隙間を介して収容筒部12内を内容物または空気が流通可能となる。ボール弁13は、収容筒部12内における第1開口部12bから第2開口部12cおよび連通溝12dへの内容物の流れを許容し、かつ、収容筒部12内における第2開口部12cおよび連通溝12dから第1開口部12bへの内容物の流れを規制する逆止弁として機能する。
【0034】
ボール弁13は、内容物を注出するにあたって注出容器1を例えば傾倒または上下反転させたときに、自重により弁座部12aから離れる向きに移動し、注出容器1を元の正立姿勢に戻したときに、自重により弁座部12aに近付く向きに移動する。これにより、内容物の注出後、注出容器1を元の正立姿勢に戻したときに、注出筒19内の内容物を注出キャップ2の内側に引き込むことができ、いわゆるサックバック効果により液だれを回避することが可能とされている。
【0035】
弁部材60は、中栓部10とキャップ本体20の天壁部22との上下方向の間に設けられている。本実施形態において弁部材60は、注出弁40と、空気弁50と、を有している。
なお、例えば外気導入孔23aの大きさを小さくする等して、空気弁50を設けなくても、外容器6をスクイズ変形したときに、外容器6と内容器5との間の空気が外気導入孔23aから実質的に流出しない構成を採用してもよい。
【0036】
注出弁40は、収容筒部12の第2開口部12cを開放可能に閉塞する。これにより、注出弁40は、第2開口部12cを通じた注出孔26と内容器5内との連通、遮断を切替える。なお、収容筒部12には連通溝12dが形成されているため、第2開口部12cが注出弁40によって閉塞された状態であっても、収容筒部12の内部は、連通溝12dを介して注出孔26と連通している。注出弁40は、収容筒部12の上端に離反可能に配置された弁本体41と、弁本体41と空気弁50の後述する筒体部51とを連結した複数(3本)の弾性アーム42と、を備えた例えば3点弁とされている。
【0037】
弁本体41は、例えば上方から見て円形状を呈し、収容筒部12の第2開口部12cを開放可能に閉塞している。弁本体41は、例えば、中心軸Oと同軸に配置された円板状である。弁本体41の外径は、収容筒部12の外径よりも大きい。弁本体41の前側部分は、注出孔26の下方に対向して配置されている。弁本体41の後側部分は、キャップ本体20における天壁部22の下方に隙間を介して対向して配置されている。弁本体41が収容筒部12の上端に配置された状態において、弁本体41と天壁部22との隙間の上下方向の寸法は、ボール弁13の直径よりも小さい。
【0038】
弾性アーム42は、外容器6のスクイズ変形に伴い内容器5の内圧が上昇した際に弾性変形し、弁本体41を収容筒部12の上端から上方に離反させる。これにより、外容器6のスクイズ変形時、収容筒部12の第2開口部12cを開放させて、第2開口部12cを通じて注出孔26と内容器5内とを連通させるとともに、第2開口部12cを通じて内容物を注出孔26から注出させることが可能とされている。本実施形態では、収容筒部12における第2開口部12cおよび連通溝12dは、複数の弾性アーム42同士の隙間を介して、注出孔26と収容筒部12の内部とを連通する。
【0039】
収容筒部12の第2開口部12cを開放させる際における弁本体41の上方への移動は、キャップ本体20における天壁部22の下面によって規制される。すなわち、第2開口部12cを開放させる際、弁本体41は最大でも天壁部22の下面と接触する位置までしか上方に移動しない。ここで、上述したように、弁本体41と天壁部22との隙間の上下方向の寸法はボール弁13の直径よりも小さい。そのため、弁本体41が上方に移動して第2開口部12cを開放させても、弁本体41と第2開口部12cとの間にはボール弁13の直径よりも小さい隙間しかできない。これにより、ボール弁13が第2開口部12cを介して収容筒部12内から抜け出ることが阻止されている。
なお、注出弁40としては、外容器6のスクイズ変形時に収容筒部12の第2開口部12cを開放できればよく、上記構成以外の弁構造を採用してもよい。
【0040】
空気弁50は、下端部が中栓部10の立ち上がり筒部14と連結筒部11cとの径方向の間に嵌合され、上端部がキャップ本体20の垂下筒24内に嵌合された筒体部51と、筒体部51の外周面から径方向の外側に向けて突出し、径方向の外端部が自由端とされた弾性変形可能な環状の弁体52と、を有している。
【0041】
弁体52は、径方向の外端部が周方向の全周にわたってキャップ本体20の天壁部22の下面に離反可能に接触しており、外気導入孔23aを下方から開放可能に閉塞している。弁体52は、外気導入孔23aを通じたキャップ本体20の外部からキャップ本体20の内部への空気の流入を許容し、かつ外気導入孔23aを通じたキャップ本体20の内部からキャップ本体20の外部への空気の流出を規制する逆止弁として機能する。外気導入孔23aを通じてキャップ本体20の外部からキャップ本体20の内部に流入した空気は、中栓部10の連絡孔11d、キャップ本体20の連通溝21a、および外容器6の吸気孔8を通じて、内容器5と外容器6との間に流入する。
なお、本実施形態において注出弁40と空気弁50とは一体に形成された構成としたが、注出弁40と空気弁50とを互いに別部材としてもよい。
【0042】
以上の構成において、内容物を注出するには、まず、指かけ部35を引き上げて、若しくは押し上げて蓋体30をヒンジ部34回りに上方に回動させ、注出孔26を開放させた後に、例えば注出容器1を傾倒または上下反転させながら、外容器6をスクイズ変形(弾性変形)させる。これにより、内容器5が外容器6とともに変形して減容するので、内容器5の内圧が上昇する。このとき、収容筒部12内のボール弁13は、図2に示すように、弁座部12aから離れる向きに移動する。すると、開放された第1開口部12bから、内容器5の内部に収容された内容物が収容筒部12内に流入する。収容筒部12内に流入した内容物は、連通溝12dを通じて注出孔26へと流れる。これにより、注出孔26から内容物を注出することができる。なお、図2では、注出容器1を上下反転させた状態を示している。
【0043】
また、外容器6をある程度強く押圧して大きくスクイズ変形させた場合等、内容器5の内圧が比較的大きく上昇した場合には、注出弁40において、弾性アーム42が弾性変形し、弁本体41が収容筒部12の上端から離反するので、第2開口部12cが開放されて注出孔26と内容器5の内部とが第2開口部12cを通じて連通する。これにより、収容筒部12内に流入した内容物を、第2開口部12cを介して注出孔26から外部に注出することもできる。このように、注出弁40が開かれて第2開口部12cが開放されることで、収容筒部12内から注出孔26へと内容物が流れる流路を大きくすることができ、注出孔26から単位時間当たりに抽出できる内容物の量を増加させることができる。
【0044】
容器本体4のスクイズ変形を停止または解除することで、内容器5の内圧の上昇が停止または低下すると、内容物の注出が停止される。また、上述したように注出時において注出弁40が収容筒部12の第2開口部12cを開放した状態となっていた場合には、注出弁40において、弾性アーム42が復元変形し、弁本体41が収容筒部12の上端に着座する。これにより、第2開口部12cが再び閉塞される。
【0045】
また、容器本体4のスクイズ変形を解除することで、外容器6が復元変形し始めるので、外容器6と内容器5との間に負圧が生じる。すると、この負圧が吸気孔8、連通溝21a、および連絡孔11dを通じて空気弁50に作用するので、弁体52における径方向の外端部が、天壁部22の下面から下方に向けて離間し、外気導入孔23aを開放する。これにより、外気導入孔23aを通じてキャップ本体20の外部から空気が流入し、この空気が、連絡孔11d、連通溝21aおよび吸気孔8を通じて内容器5と外容器6との間に流入する。
その結果、外容器6が復元変形したとしても、内容器5を外容器6の内面から離間させて減容変形させたままの状態にしておくことができる。
【0046】
また、容器本体4のスクイズ変形の解除にあわせて容器本体4を正立姿勢に戻すことで、収容筒部12内のボール弁13を、自重により弁座部12aに近付く向きに移動させて、弁座部12aに着座させる。これにより、ボール弁13の移動に伴うサックバック効果によって、ベース部11の上方に内容物が残留したとしても、その残留した内容物を収容筒部12内に引き込むことができる。したがって、残留内容物が注出筒19を通じて外部に漏れ難く、液だれを抑制することができる。
なお、内容器5の内圧上昇を利用して、収容筒部12内のボール弁13を、弁座部12aから離れる向きに移動させることも可能であるので、内容物の注出時に必ずしも注出容器1を傾倒または上下反転させる必要はない。
【0047】
また、注出容器1を上下反転させた際の内容物の液面が、図2に示す仮想線ILの位置以下になると、収容筒部12の第1開口部12bが内容物から露出する。すなわち、第1開口部12bが、容器本体4内の空気に露出する。仮想線ILは、上下方向と直交し、収容筒部12の第1開口部12bと同じ上下方向位置を通る仮想線である。
【0048】
この場合、容器本体4をスクイズ変形させても、容器本体4内の空気が収容筒部12の第1開口部12bから注出孔26へと抜け出る一方、内容物が第1開口部12bから収容筒部12に流入しにくくなる。そのため、内容物を注出孔26から注出できなくなる場合がある。したがって、注出容器1を上下反転させた際に、液面が仮想線ILの位置となる量の内容物が残留したまま、内容物を外部に注出できなくなる場合がある。
【0049】
そのため、容器本体4内に残留する内容物の量を少なくするためには、収容筒部12の第1開口部12bの上下方向位置をできる限り容器本体4側とは逆側、すなわち図1における上側に配置することが好ましい。言い換えれば、図2のように注出容器1を倒立させた際に、仮想線ILの位置をできる限り下げることが好ましい。しかし、この場合、収容筒部12の上下方向の寸法が短くなりやすく、収容筒部12内におけるボール弁13の上下方向のストローク量が小さくなりやすい。そのため、サックバック機能が低下する虞があった。
【0050】
これに対して本実施形態によれば、収容筒部12は、中栓部10のベース部11から容器本体4側と逆側(上側)に延びる部分として延伸部12eを有している。そのため、収容筒部12全体の上下方向の寸法を維持しつつ、ベース部11から容器本体4側に突出する収容筒部12の突出長さを小さくできる。これにより、収容筒部12全体がベース部11から容器本体4側に突出している場合に比べて、収容筒部12の第1開口部12bの位置を容器本体4側と逆側(上側)に配置することができる。すなわち、注出容器1を倒立させた際に、仮想線ILの位置をより下げることができる。したがって、容器本体4内の内容物の量が比較的少なくなっても、注出容器1を倒立させた際に第1開口部12bが空気に露出しにくくできる。そのため、本実施形態によれば、収容筒部12内におけるボール弁13のストローク量を確保してサックバック機能を好適に維持しつつ、容器本体4内に残留する内容物の量を低減できる。
【0051】
また、収容筒部12の第2開口部12cを注出弁40が開放可能に閉塞する構成であるため、容器本体4内の空気が収容筒部12に流入した場合であっても、空気の圧力によって注出弁40を開きやすくできる。これにより、容器本体4内の内容物の量が比較的少なくなった場合であっても、注出弁40が開かなくなることを抑制できる。したがって、容器本体4内に残留する内容物の量をより低減できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、連通溝12dは、収容筒部12の周壁部のうち上側の端部に形成されている。そのため、弁本体41が収容筒部12の上端に配置され第2開口部12cが閉塞された状態では、連通溝12dの上側の開口は弁本体41によって塞がれた状態となる。この状態において連通溝12dに内容物が通過すると、弁本体41は、連通溝12d内を通る内容物から上側向きの圧力を受ける。したがって、外容器6をある程度強く押圧して大きくスクイズ変形させた場合等に、弁本体41が内容物から力を受けやすくでき、弁本体41を収容筒部12の上端から離反させやすくできる。そのため、収容筒部12の第2開口部12cを開放させやすくできる。
【0053】
また、本実施形態によれば、収容筒部12の容器本体4側(下側)の端部は、ベース部11から容器本体4側に突出している。そのため、収容筒部12全体がベース部11から上方に延びている場合に比べて、キャップ本体20の天壁部22とベース部11との上下方向の距離を小さくできる。これにより、注出キャップ2が上下方向に大型化することを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、収容筒部12のうちベース部11から下方に突出する部分の上下方向の寸法は、ボール弁13の直径よりも小さい。そのため、収容筒部12がベース部11から下方に突出していても、第1開口部12bの位置を好適に上側にしやすく、注出容器1を倒立させた際の仮想線ILの位置を好適に下げることができる。したがって、注出キャップ2の大型化を抑制しつつ、容器本体4内に残留する内容物の量を低減することができる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、以下の構成を採用することもできる。
収容筒部の容器本体側(下側)の端部は、ベース部から容器本体側(下側)に突出していなくてもよい。すなわち、収容筒部は、全体がベース部から容器本体側と逆側(上側)に突出していてもよい。収容筒部の周壁部に形成された連通溝は、収容筒部の周壁部のいずれの箇所に形成されていてもよい。
本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…注出容器、2…注出キャップ、4…容器本体、4a…口部、5…内容器、6…外容器、8…吸気孔、10…中栓部、11…ベース部、12…収容筒部、12a…弁座部、12b…第1開口部(開口部)、12c…第2開口部(開口部)、12d…連通溝、13…ボール弁、20…キャップ本体、22…天壁部、26…注出孔、40…注出弁、O…中心軸
図1
図2