IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

<>
  • 特許-多機能性表面フィルム 図1
  • 特許-多機能性表面フィルム 図2
  • 特許-多機能性表面フィルム 図3
  • 特許-多機能性表面フィルム 図4
  • 特許-多機能性表面フィルム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】多機能性表面フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230825BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20230825BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B29C65/70
B32B5/32
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020536085
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 US2018066369
(87)【国際公開番号】W WO2019133354
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】62/611,712
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、 アンナ エスメラルダ
(72)【発明者】
【氏名】オカーン、 ルアイリ
(72)【発明者】
【氏名】ファブロ、 イノセント ジー.
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/112766(WO,A1)
【文献】特表2019-502573(JP,A)
【文献】国際公開第2019/126314(WO,A1)
【文献】特表2021-506634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0190773(US,A1)
【文献】国際公開第2017/095810(WO,A1)
【文献】特表2015-507648(JP,A)
【文献】特表2012-512056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 70/00-70/88
B29C 63/00-63/48,65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対向する第1の表面および第2の表面を有する硬化性ポリマー組成物の単一層:
(b)第1の表面下の硬化性ポリマー組成物の単一層内の所定の制御された位置に配置された第1の可剥性多孔質シート;および
(c)硬化性ポリマー組成物の単一層内に配置され、かつ第2の表面と可剥性多孔質シートとの間に配置された、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート
を含む多機能性表面フィルムであって、
第1の可剥性多孔質シートは、剥離時に、追加の表面仕上げまたは処理なしで塗装に適する滑らかな新たな表面を提供するように構成されたものである多機能性表面フィルム
【請求項2】
可剥性多孔質シートが、0.25~250ミクロンの範囲の公称孔径を有する、請求項1に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項3】
可剥性多孔質シートが、1インチあたり少なくとも50の縦糸端および1インチあたり少なくとも40の横糸端を有する、請求項1または2に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項4】
新たな表面が、5nmから50ミクロンの範囲の平均表面粗さ(Ra)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項5】
硬化性ポリマー組成物が、熱硬化性組成物、熱可塑性組成物、またはそれらの混合物もしくはブレンドを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項6】
硬化性ポリマー組成物が、硬化性ポリマー組成物のモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項7】
硬化性ポリマー組成物が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む、請求項1に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項8】
硬化性ポリマー組成物がエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項9】
ポリマー組成物が、(UV、可視、または赤外線)光または熱の適用によって硬化可能である、請求項1に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項10】
25から12500ミクロン(1から500ミル)の範囲の総厚さを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項11】
可剥性多孔質シートが、布地、またはエキスパンド、有孔、もしくは格子フィルムを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項12】
可剥性多孔質シートが、以下の特性の1つ以上を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
(a)可剥性多孔質シートが、フッ素化もしくはパーフッ素化ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンイミン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルハライド、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む。
(b)布地またはエキスパンドフィルムを、第1の表面に、別個の硬化性接着剤樹脂組成物を用いてまたは用いないで、物理的に埋め込むことにより、可剥性多孔質シートが、第1の表面に接着される;
(c)可剥性多孔質シートが、5ミクロン~500ミクロンの範囲の厚さを有する;
(d)可剥性多孔質シートが、1~70ミクロン範囲の公称孔径を有する;
(e)可剥性多孔質シートが、ASTM-D5034に従って試験した場合、100N~1500Nの範囲の引張強度を示す;
(f)可剥性多孔質シートがエキスパンドフィルムである;
(g)可剥性多孔質シートが織布である;
(h)可剥性多孔質シートが、織られたモノまたはマルチフィラメントトゥを含む織布である;
(i)可剥性多孔質シートが、平織り、ハーネスサテン織り、クロウフットサテン織り、リップストップ織り、または綾織りを含む織布である;
(j)可剥性多孔質シートが、モノもしくはマルチフィラメント/撚糸を含む織布であり、糸は、平坦なまたは織目加工の表面および200デニールの最大サイズを有する;
(k)可剥性多孔質シートが、1インチあたり少なくとも120の縦糸端および1インチあたり少なくとも60の横糸端を有する織布であり、かつ/または布が、縦糸と横糸の両方向に最低40ヤーン/インチの糸、縦糸と横糸のいずれかの方向に最大150デニールの糸を有する;かつ/または
(l)可剥性多孔質シートが、精練、ヒートセット、およびカレンダー加工されて、平滑で緻密に織られた表面を生成することができる織布である。
【請求項13】
少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、多孔質の織布もしくは不織布、エキスパンドメタル箔もしくはポリマーフィルム、格子、メッシュ、スクリーン、またはウェブの形態である、請求項1から12のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項14】
少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、落雷保護、静電気散逸、またはそれらの組み合わせにおける耐衝撃性改良剤、熱伝達媒体、EMIシールド材料としての使用に適した性能特性を示す、請求項1から13のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項15】
少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、以下の特性の1つ以上を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム:
(a)少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、金属、ポリマー、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、またはそれらのハイブリッドおよび混合物の連続またはチョップド繊維またはウィスカーを含む織または不織繊維、ならびに事前に熱分解されていてもされていなくてもよい有孔ポリマーシートを含む;
(b)少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが電気伝導性である;
(c)少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、アルミニウム、炭素、銅、ニッケル、銀、またはステンレス鋼を含む;
(d)少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む;かつ/または
(e)少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物内で、可剥性多孔質シートよりも第2の表面の近くに配置され;または、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、第1の表面と可剥性多孔質シートとの間の距離の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の位置に配置される。
【請求項16】
硬化性ポリマー組成物が、少なくとも1種の、有機、無機または両方のハイブリッドのフィラーまたは添加剤、ポリマー強化成分、または粒子状フィラーをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項17】
少なくとも1種の粒子状フィラーまたは添加剤が、ナノ、マイクロ、および/もしくはマクロの寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、もしくは繊維または液体ブレンドを含む、請求項16に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項18】
少なくとも1種の粒子状フィラーが、セラミック、ポリマー、ガラス、または金属/半金属材料、またはそれらの合金を含む、請求項16または17に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項19】
少なくとも1種の粒子状フィラーまたは添加剤が、硬化性ポリマー全体にわたって実質的に均一に分散している、請求項16から18のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項20】
硬化性ポリマー組成物が、UV耐性ポリマー、またはUV安定化添加剤を含み、第2の表面に配置されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項21】
成形されたまたは輪郭付けされた基材に適合するのに十分に柔軟/可撓性である、請求項1から20のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項22】
平方フィート当たり0.150ポンド未満の面積重量を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項23】
その第2の表面が基材の表面に接触している、請求項1から22のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項24】
ポリマー組成物が硬化されている、請求項1から23のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項25】
ポリマー組成物が共硬化されるか、あるいは基材の表面に結合され、それにより、基材と多機能性表面フィルムとの間に化学結合が形成される、請求項24に記載の多機能性表面フィルム。
【請求項26】
基材表面に機能性を提供する方法であって、該方法は:
(a)請求項1~22のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルムの第2の表面を基材表面に物理的に貼り付けることにより、多機能性表面フィルムを基材表面(ただし、基材は、任意で少なくとも1種の硬化性基材ポリマー組成物を含む)に適用して、中間結合組成物を形成する、工程;
(b)中間結合組成物を、少なくとも1つの任意に硬化可能な基材(ポリマーまたは他の基材)組成物と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化を可能にするのに十分な条件に供し、それによりそれらの間に結合を形成する工程
を含む、方法。
【請求項27】
基材表面に機能性を提供する方法であって、該方法は:
(a)請求項1~22のいずれか一項に記載の多機能性表面フィルムの第1の表面を金型表面に物理的に配置し、多機能性表面フィルムを金型表面に適合させることによって、多機能性表面フィルムを金型表面に適用し、それにより、多機能性表面フィルムの第2の表面を露出したまま残す工程;
(b)少なくとも1層の任意に共硬化可能な基材フィルムを多機能性表面フィルムの第2の表面に物理的に貼り付けて、中間結合組成物を形成する工程;
(c)中間結合組成物を、少なくとも1つの任意に硬化可能な基材(ポリマーまたは他の)組成物と多機能性表面フィルムの硬化可能なポリマー組成物との共硬化または結合を可能にするのに十分な条件に供し、それにより、それらの間に結合を形成する工程
を含む、方法。
【請求項28】
離型ライナーが、金型表面と多機能性表面フィルムの第1の表面との間に挿入される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
共硬化を可能にするのに十分な条件が、中間組成物を十分に熱または放射条件に曝露して、基材の任意に硬化可能なポリマー組成物と多機能性表面フィルムとを共硬化あるいは結合させ、それにより、それらの間に結合を形成することを含む、請求項2628のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
共硬化構造から可剥性多孔質シートを取り除き、多機能性表面フィルムの硬化したポリマー組成物の露出表面を残すことをさらに含む、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
追加の表面仕上げまたは処理を行うことなく新しい表面を塗装することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
多機能性表面フィルムを製造する方法であって:
(a)離型ライナーの表面上に硬化性ポリマー組成物を連続的に堆積させて、離型ライナーに接触する第1の表面および第1の表面に対向する第2の表面を有するキャストポリマー組成物を形成する、工程;
(b)硬化性ポリマーを連続的に堆積させながら、第1の可剥性多孔質シートを、キャスト硬化性ポリマー組成物の第1の表面に押し付けて、それにより、可剥性多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物の第1の表面下の硬化性ポリマー組成物の単一層内の所定の制御された位置、かつ離型ライナーの下に配置される、工程
(c)硬化性ポリマーを連続的に堆積させながら、第2の表面に対して配置される少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートを提供して、それにより、少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、キャストポリマー組成物中に、第2の表面から選択された距離で少なくとも部分的に埋め込まれる、工程;
(d)任意選択で、多機能性表面フィルムの第2の表面に隣接する第2の離型ライナーを提供する工程
を含み、
第1の可剥性多孔質シートは、剥離時に、追加の表面仕上げまたは処理なしで塗装に適する滑らかな新たな表面を提供するように構成されたものである方法。
【請求項33】
少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、可剥性多孔質シートが硬化性ポリマー組成物の第1の表面に押し付けられた後、第2の表面の下のキャストポリマー組成物中に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
多機能性表面フィルムを、少なくとも1対の非孔性ローラーの間を通過させ、さらに、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート、可剥性多孔質シート、または少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートと可剥性多孔質シートの両方を、硬化性ポリマー組成物のそれぞれの表面から各々あらかじめ選択した距離で、キャスト硬化性ポリマー組成物中に埋め込むことをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
非孔性ローラーが非孔性ライナーを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
硬化性ポリマー組成物を部分的に硬化させることをさらに含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
多機能性フィルムをスプールロールに巻き取ることをさらに含み、巻き取られた多機能性フィルムロールに、複合構造の製造中に特殊な自動装置を用いた使用に必要とされる特定の目標幅にスリットを入れることをさらに含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
自動繊維加工(AFP)機および自動テープ積層(ATL)機から選択される複合構造の製造用に特別に設計された自動装置を用いて、スリット多機能性フィルムを製造することを含む、請求項37に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年12月29日に出願された米国特許出願第62/611,712号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、多機能性表面フィルム(multifunctional surfacing film)、ならびにそれを製造および使用する方法に関する。表面フィルムは、ポリマー層内または層上に埋め込まれた2層以上の機能性材料の多孔質シートを有する硬化性ポリマーの単一層を含む。表面フィルムは、2重の目的、すなわち、ピールプライ材料として作用する目的と、該フィルムを耐衝撃性改良剤として、または落雷保護、電流散逸(electric current dissipation)、EMIシールド、または熱伝達用途において使用できるようにする性能特性を付与する目的とを提供することができる。表面フィルムは、例えば、航空機部品または自動車用途など、さまざまなポリマーまたはポリマー複合ラミネートの構築に使用される部品およびそれから誘導される物品の表面などの外面および内面を含む、平坦なまたは湾曲した表面における使用に適している。
【背景技術】
【0003】
航空機は使用中に過酷な環境に直面し、攻撃的な化学物質(例えば、塗料除去剤、除氷液、ジェット燃料)、ならびに、落雷および環境ストレス(例えば、UV、塩、酸または熱劣化)による他の潜在的な劣化メカニズムを含む環境条件に曝露されることが多い。これらの問題に取り組むにあたり、航空機メーカーは、製造コストを削減し、かつ重量を低減しかつ航空機の性能を向上させるという、ますます困難な重圧にさらされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複合部品/基材を環境ストレスおよび化学物質曝露から保護するだけでなく、特に表面仕上げ中の下流の製造プロセスおよびコストを削減する可剥性の(peelable)多孔質シートも提供する多機能性表面フィルムを対象とする。表面フィルムはまた、衝撃後の改善された性能、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、熱伝達性能、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、さらにより多くの機能/利点/特性を提供することができる。これらの表面フィルムは、航空機の製造および性能における前進を表す。本開示は、これらの表面フィルム、ならびにそれらを製造および使用する方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の特定の実施形態は、多機能性表面フィルムを含み、各フィルムは:
(a)対向する第1の表面および第2の表面を有する硬化性ポリマー組成物の単一層;
(b)硬化性ポリマー組成物の単一層内に少なくとも部分的に配置され、第1の表面にまたはその下に配置されている、第1の可剥性多孔質シート;および
(c)任意に、硬化性ポリマー組成物の単一層内に第2の表面の下に配置され、第2の表面と第1の可剥性多孔質シートの間に配置された少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート
を含む。
【0006】
様々なシートの相対的位置の記載に関して、「下(beneath)」は、参照シートの後ろにあるか、または参照シートにより被覆されることを意味し、必ずしも参照シートの真下(under)にあるとは限らないことが理解されるであろう。本明細書において議論される様々な実施形態は、表面フィルム一般と具体的な個々の構成要素とに関する広範な材料および特性を含む。表面フィルムは、硬化性ポリマー組成物および層間多孔質シート内に分散された追加の添加剤を含んでもよい。表面フィルムは、輪郭が形成された基材に適合させることができ、また、従来の積層材料を超える顕著な利点をもたらす構造的特性および面積重量を有することができる。
【0007】
独立した実施形態は、硬化性ポリマー組成物がまだ硬化されていないか、部分的に硬化されているか、または完全に硬化されているものを含む。
【0008】
他の実施形態は、これらの表面フィルムを使用して基材表面を修飾して、基材表面に機能性を提供する方法を含む。一組の実施形態では、該方法は、以下:
(a)多機能性表面フィルムの第2の表面を、任意に共硬化性の基材表面に物理的に貼り付ける(および好ましくは適合させる)ことによって、多機能性表面フィルムを基材表面、望ましくは、しかし必ずしもそうではないが、共硬化性の基材表面に適用して、中間結合組成物を形成する、工程;
(b)中間結合組成物を、基材および多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物の共硬化あるいは結合を可能にする、望ましくは引き起こすのに十分な条件に供し、それによってそれらの間に結合を形成する、工程;および
(c)任意選択で、可剥性多孔質シートを除去して、露出した新たな第1の表面を提供する工程
を含む。可剥性多孔質シートを一旦取り除くと、露出する新たな第1の表面は、表面仕上げ/装飾(例えば、塗装、ステッカー、デカール)の追加の層を適用することができる表面を提供する。望ましくは、表面仕上げ/装飾の適用前には、露出した新たな第1の表面のサンディング、プライマー塗装、または他の表面処理はほとんどまたは全く必要ないか、または存在しない。
【0009】
別の実施形態では、これらの表面フィルムを使用する方法は、
(a)多機能性表面フィルムの第1の表面を金型表面に物理的に配置し、多機能性表面フィルムを金型表面に適合させることにより、多機能性表面フィルムを金型表面に適用し、それにより、多機能性表面フィルムの第2表面は露出させたままとする、工程;
(b)任意に共硬化可能な基材フィルムの少なくとも1層を多機能性表面フィルムの第2の表面に物理的に貼り付けて、中間結合組成物を形成する工程;
(c)中間結合組成物を、少なくとも1つの任意に硬化可能な基材と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化または結合を可能にするのに十分な条件に供し、それによりそれらの間に結合を形成する、工程;
(d)任意選択で、共硬化した基材および表面フィルムを金型から取り出す工程;および
(e)さらに任意選択で、可剥性多孔質シートを除去して、表面仕上げおよび/または装飾の追加の層の適用に適した、露出した新たな第1の表面を提供する工程
を含む。
【0010】
特定の実施形態は、少なくとも1層の第2の機能性材料のシートを、望ましくは多機能性フィルムの一部として基材上に組み込むが、記載された実施形態はすべてこの特徴を任意に含むものと解釈されるべきである。多機能性表面フィルムは、これを、最小限の重量で、また、下流の製造工程の簡素化を容易にするピールプライ機能を提供するという追加の利点と共に実現する。
【0011】
いくつかの実施形態では、これらの多機能性表面フィルムは、以下により製造することができる:
(a)離型(releasable)ライナーの表面上に硬化性ポリマー組成物を連続的に堆積して、離型ライナーと接触した第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面および離型ライナーを有するキャストポリマー組成物を形成する工程;
(b)硬化性ポリマーを連続的に堆積しながら、キャストポリマー組成物に第1の可剥性多孔質シートを配置する(disposing)か、重ねる(laying)か、または他の方法で配置し(positioning)、好ましくは、第1の可剥性多孔質シートをキャスト硬化性ポリマー組成物の第1の表面中に押し付け、それにより、可剥性多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物の第1の表面またはその下、かつ離型ライナーの下に配置される、工程;
(c)硬化性ポリマーを連続的に堆積しながら、第1の可剥性多孔質シートの配置と同時にまたは異なる時点で、第2の表面に対して配置される少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートを提供し、これにより、該少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、キャストポリマー組成物中に、第2の表面から選択された距離で少なくとも部分的に埋め込まれることとなる、工程;
(d)任意選択で、多機能性表面フィルムの第2の表面に隣接する第2の離型ライナーを提供する工程
を含む。
【0012】
これらの方法は、硬化性ポリマー層内の独立して定義された深さに可剥性多孔質シートおよび第2の機能性材料の多孔質シートを組み込み、表面層の性能を調整することができるという独自の利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本出願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。主題を説明する目的で、主題の例示的な実施形態が図面に示されているが、本発明に開示されている主題は、開示された特定の方法、デバイス、およびシステムに限定されない。さらに、図面は必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではない。図面は下記のとおりである。
【0014】
図1図1は、2つの層内多孔質シートを備えた多機能性表面フィルムの1つの実施形態の図である。図1は、多機能性表面フィルムの単一層(100)に可剥性多孔質シート(120)および機能性材料の第2のシート(130)が組み込まれた硬化性ポリマー組成物(110)を含む一実施形態を示す。
図2図2は、多機能性フィルムが基材に直接適用された複合構造の略図である。図2は、多機能性表面フィルムの単一層(200)に可剥性多孔質シート(220)および機能性材料の第2のシート(230)が組み込まれ、任意に共硬化可能な基材(240)に適用された硬化性ポリマー組成物(210)を含む実施形態を示す。
図3図3は、多機能性フィルムが、先ず金型に、次いで基材に適用されている、複合構造の略図である。より具体的には、図3は、多機能性表面フィルムの単一層(300)に可剥性多孔質シート(320)および機能性材料の第2のシート(330)が組み込まれ、任意に共硬化可能な基材(340)と金型またはツール(350)との間に配置された、硬化性ポリマー組成物(310)を含む実施形態を示す。
図4図4は、多機能性表面フィルムを製造するための例示的な装置の略図である(Nip Version A)。この例では、可剥性多孔質シート(420)は、ニップロール(480)を通過し、硬化性ポリマー組成物(410)の第1の表面において最終的に離型ライナーに近づき、第2の機能性材料の多孔質シート(430)は、第2の表面の近くに配置され、プレスロール(470)によって多機能性表面フィルムに適用される。シートは、紙支持体(440)上を運ばれるに伴い、適用されて、多機能性表面フィルムを形成し、完成した表面フィルムは巻取り機(400)に送られ、ここで保管および輸送のために巻き取られる。
図5図5は、多機能性表面フィルムの製造の略図である(Nip Version B)。この例では、可剥性多孔質シート(520)は、Nip Version Aの図とは対照的に、ニップロール(580)の反対側を通過し、そこで硬化性ポリマー組成物(510)に適用される。可剥性なシート(520)は、次いで、プレスロール(570)によって離型ライナー(540)に直接対向するように適用された後、第2の機能性材料の多孔質シート(530)に最終的に近づく。これは、可剥性シートの硬化後除去の後の重量減少につながる。完成した表面フィルムは、巻き取り機(500)に送られ、ここで保管と輸送のために巻き取られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の詳細な説明
本発明は、多機能性表面フィルム、ならびにそれを製造および使用する方法に関する。
【0016】
本開示は、添付の図面に関連して行われる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができ、これは本開示の一部を形成する。本発明は、本明細書に記載および/または示される特定の生成物、方法、条件またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、単に例として特定の実施形態を説明することを目的とし、特許請求されたいずれの発明も制限することを意図するものではない。同様に、可能なメカニズムまたは動作モードまたは改善の理由に関する説明はいずれも、単に例示を意図するに過ぎず、本明細書に記載の発明は、かかる提案されたメカニズムまたは動作モードまたは改善の理由の正確さまたは不正確さによって制約されるものではない。この文書全体を通して、説明は多機能性表面フィルムとそれを製造および使用する方法との両方に言及していると認められる。
【0017】
本開示において、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数への言及を含み、特定の数値への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料(a material)」への言及は、そのような材料と当業者に知られているその同等物等の少なくとも1つへの言及である。
【0018】
先行詞「約」を使用して近似値として値が表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。一般に「約」という用語の使用は、開示された主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化する可能性がある近似値を示し、かつ、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきであり、当業者はそのように解釈できるであろう。場合により、特定の値に使用される有効数字の数は、「約」という単語の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合では、一連の値で使用される段階的変化を使用して、各値について「約」という用語で利用可能な意図された範囲を決定し得る。存在する場合、すべての範囲が包括的で結合可能である。すなわち、ある範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のあらゆる値を包含する。
【0019】
本明細書において明確化のために個別の実施形態の文脈で記載されている本発明の所定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解されるべきである。逆に、簡潔化のために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、個別のまたは任意のサブコンビネーションで提供することもできる。最後に、一実施形態は、一連のステップの一部として、またはより一般的な構成または構造の一部として記載することができるが、該実施形態の各々はまた、それ自体が独立した実施形態と見なすこともできる。
【0020】
フィルムおよび単一ポリマー層の一般的な考察
特定の実施形態では、多機能性表面フィルムは:
(a)対向する第1の表面および第2の表面を有する硬化性ポリマー組成物の単一層:
(b)第1の表面またはその下に配置された第1の可剥性多孔質シート;および
(c)任意選択で、硬化性ポリマー組成物の単一層内に、第2の表面の下に配置され、かつ第2の表面と可剥性多孔質シートとの間に配置された、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート
を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、硬化性ポリマー組成物の「単一層」という用語は、組成物および該硬化性ポリマー組成物の関連する一体性の両方を指す。本明細書で別段の規定がない限り、硬化性ポリマー組成物の単一層は、2つの類似または非類似のポリマー組成物のラミネートにおいて見られたであろう観察可能な中間層の不連続性を有しない層を指す。この特性は、ラミネート複合材と比較すると、例えば、異なる層またはそれらの間の接着剤の熱膨張係数の不一致を最小化または排除することにより、環境負荷(例えば、熱衝撃またはサイクリング)の間にさらなる強度および安定性をもたらす。硬化性ポリマー組成物の単一層はまた、単一の密着したポリマー層または単一構造化層として記載することもできる。ポリマー層が製造される方法に応じて、ポリマー自体はフィルム全体にわたり組成的に均質であるか、あるいは、フィルムの長さに沿って、またはフィルムの幅にわたって(すなわち、第1の表面から第2の表面へ)、連続的に(すなわち、ポリマー組成物の急激な不連続が生じずに)変化し得る。本明細書で使用される場合、「対向する第1の表面および第2の表面」におけるような「対向する」という用語は、フィルム、シート、または層の両側の平面(面)、例えば、硬化性ポリマー組成物の単一層の対向面における平面(面)を指す。
【0022】
他の実施形態では、多機能性表面フィルムが硬化性ポリマー組成物の単一層を有するという要件を緩和することができ、類似または非類似のポリマーを含むラミネートを考慮することができる。あるいは、多機能性表面フィルム自体を、該表面フィルムと同じまたは異なるポリマーを含む別の硬化性ポリマー組成物に積層してもよい。
【0023】
また、ほとんどの実施形態は「硬化性」ポリマー組成物に関して記載されているが、追加の実施形態としては、組成物が部分的にまたは完全に硬化するもの、それ自体の中でまたは別の硬化性ポリマー組成物と共硬化するものが挙げられる。
【0024】
特定の実施形態において、硬化性ポリマー組成物は、1種以上の熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂、または両方のブレンドもしくは混合物を含んでよい。ポリマー組成物は、そのような材料のモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含み得る。例示的な非限定的な硬化性ポリマーは、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む。エポキシは、本明細書に記載の方法に特に適している。Hysol(登録商標)EA9845、EA9895、およびEA9897樹脂に関連するポリマーは、有望な結果を示す。いくつかの独立した実施形態では、硬化性ポリマー組成物は主にエポキシ樹脂である。明確化のために、「(メタ)アクリレート」という用語で例示されるように、括弧内の「メタ」の使用は、アクリレート、メタクリレート、または両方を含む混合物もしくはコポリマーの独立した実施形態を指す。
【0025】
使用される一部のポリマーの芳香性のために、また場合によりフィルムの製造方法のために、いくつかの実施形態では、硬化性ポリマー組成物内のポリマー鎖は、フィルム内で、組織化されたほぼ液晶配向を取ることができ、ここで、芳香族部分は、フィルム内で、部分的または完全に平行なアレイに配列する。他の実施形態では、ポリマーの架橋または性質のいずれかのために、ポリマーは、フィルム内で、よりランダムに配向されたアレイとなり得る。
【0026】
ポリマー組成物は、好ましくは、光(UV、可視、または赤外線)または熱の適用により硬化可能(例えば、架橋可能)である。これにより、シート材料の使用と、硬化/他の基材との共硬化の時間の制御が可能となる。ポリマーは塗布前にはその可撓性を保持することが好ましく、そのため、非架橋または部分的にのみ架橋されたポリマーが好ましい。いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーは、多孔質の層間第1可剥性シートおよび第2の機能性材料の多孔質シートを組み込む直前に補足的樹脂および/または触媒を混合することによって調製される部分的に硬化した(架橋した)樹脂を含み、フリーラジカルプロセスによって硬化する。
【0027】
ポリマーは、可剥性多孔質シートおよび機能性材料の多孔質シートに加えて、有機または無機のいずれかまたは両方の性質の様々な添加剤を含み得る。これらは、本明細書の他の箇所においてさらに議論されるが、UV吸収剤または安定化添加剤(例えば、米国特許出願公開第2010/0151239号または米国特許第9,676,961号に記載されるもの)、強化繊維、または電気伝導性材料を挙げることができる。
【0028】
多孔質シートの一般的な考察
本明細書に記載されるように、第1の可剥性材料および第2の機能性材料の多孔質シートは、硬化性ポリマー組成物のマトリックス内に配置される。これらのシートは、最も好ましくは、フィルム内で、第1の表面および第2の表面に対して、互いに平行に配列される。この配置において、第1の可剥性材料および第2の機能性材料のシートはまた、これらのシートが他の点では一体型のフィルム構造内に層状構造を形成するため、まとめて層間シートと呼ばれることもある。
【0029】
本明細書の他の箇所に記載のとおり、第1の可剥性シートと第2の機能性材料のシートの両方の少なくとも一部、好ましくはすべてが、多孔質、または好ましくは多孔質である。これらの材料はまた、非孔性材料(例えば、クロスハッチ固形リボンまたはシートなど)または非孔性材料のセクション(例えば、パッチまたはサブエリア部分)を含むこともできるが、多孔質の存在は、必ずしも必須でないとしても、製造中に加工が多孔質シートを硬化性ポリマー組成物の表面から本体に圧入することを含む場合、少なくとも有用である。シートはポリマー組成物中に配置されており、望ましくはポリマー組成物中に押し付けられているため、細孔により、ふるいまたはスクリーンを通過する半固体のように、ポリマーがシートを通過して流動できるようになり、場合によりシート材料を濡らしまたは飽和させる。一旦形成され、最終的に硬化すると、開口部内に含まれるポリマーは、シートの両側のポリマー分子間の物理的接続性をもたらし、また得られる硬化フィルムに安定性の向上をもたらし得る。各シート内の多孔度は、好ましくは均一に分布している。多孔度は、2種類のシートで同じでも異なっていてもよい。場合によって、所与の総開口面積に対して、高密度の小さな細孔、スリット、または開口部が、低密度の大きな細孔、スリット、または開口部よりも好ましい。他の場合はその逆であり、さらに他の場合はまた、2つのサイズ分類のバランスにより利点がもたらされる。いくつかの実施形態では、第1の可剥性材料および第2の機能性材料の多孔質シートのいずれかまたは両方が、独立して、0.25~250ミクロンの範囲の直径を有する公称孔径を有する。他の実施形態では、これらの寸法は、0.1~0.25ミクロン、0.25~0.5ミクロン、0.5~0.75ミクロン、0.75~1ミクロン、1~2.5ミクロン、2.5~5ミクロン、5~7.5ミクロン、7.5~10ミクロン、10~25ミクロン、25から50ミクロン、50~75ミクロン、75~100ミクロン、100~125ミクロン、125~150ミクロン、150~175ミクロン、175~200ミクロン、200~250ミクロン、250~500ミクロン、500~750ミクロン、またはこれらの範囲の2つ以上の任意の組み合わせ、例えば1~75ミクロンの範囲として特徴付けることができる。開口部がスリットまたは他の形状の構成である場合、これらの開口部の少なくとも1つの寸法がこれらの範囲内であり得る。
【0030】
可剥性多孔質シート
本明細書の他の箇所に記載のとおり、第1の可剥性多孔質シートは、第1の表面またはその下のいずれかに含まれる。好ましい実施形態では、可剥性多孔質シートは、第1の表面の下に配置される。第1の表面の下の距離は、事前に具体的に決めておき、製造中に制御することができる。この可剥性多孔質シートの目的は、後硬化組成物において表面フィルムに犠牲ピールプライ層の機能を提供することであり、その機能に通常関連する特性を少なくとも有する。好ましい実施形態では、可剥性多孔質シートは、第1の表面と第2の表面との間の距離の5~40%の間、すなわち、第1の表面により近くに配置され、それにより、組成物が硬化し、可剥性シートが取り除かれると、硬化した樹脂のおよそ5~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、30~40重量%、または40~50重量%も除去されることになる。いくつかの実施形態では、この所定の配置は、本明細書の他の箇所に記載のとおり、硬化性ポリマー組成物、望ましくはキャストポリマー組成物の表面上または表面中に布地またはエキスパンドフィルム(expanded film)を物理的に埋め込むことによって達成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、可剥性多孔質シートは、1種以上のフッ素化またはパーフッ素化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVFまたはTedlar(登録商標)など)、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ塩化ビニル、またはこれらのコポリマーもしくは混合物を含む材料を含む。好ましい例示的な布地は、ポリエステル、ポリアミド、Kevlar(登録商標)などのポリアラミド、Kapton(登録商標)などのポリイミド、炭素繊維、またはガラス、または他の無機繊維を含み得る。いくつかの実施形態では、布地またはエキスパンドフィルムは、接着樹脂を積層することによってコーティングまたは含浸することができる。他の実施形態では、そのような追加の積層接着樹脂は用いられない。エキスパンドフィルムまたは布地のコーティングまたは含浸は、当業者によく知られている様々な手段のいずれかによって達成され得る。布地またはエキスパンドフィルムのポリマー表面は、任意選択で、シリカ、シロキサン、酸化アルミニウム、または金属でコーティングするか、プラズマまたはシランで処理してもよい。ポリエステル、ナイロン、またはそれらの混合物が、この用途における布地またはエキスパンドフィルムとして特に有用である。
【0032】
様々な実施形態では、可剥性多孔質シートは、5ミクロンから500ミクロンの範囲の厚さを有するか、あるいは5~10ミクロン、10~25ミクロン、25~50ミクロン、50~75ミクロン、75~100ミクロン、100~125ミクロン、125~150ミクロン、150~175ミクロン、175~200ミクロン、200~250ミクロン、250~300ミクロン、300~400ミクロン、または400~500ミクロン、例えば25~125ミクロンまたは75~200ミクロンの1または複数の範囲によって定義され得る。細孔、スリット、または隙間(aperture)の開口部は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0033】
可剥性多孔質シートは、典型的には、布地またはエキスパンドフィルムを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、「エキスパンドフィルム(expanded film)」という用語は、本明細書の他の箇所に示される理由により、穿孔(perforation)またはスルーホール多孔質を含むシートまたはフィルムを指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「布地(fabric)」は、最も典型的には、織られた材料を指す。不織材料も使用することができるが、これらは可剥性シートの硬化後除去の際に表面に繊維残渣/繊維端を残す傾向がより大きいため、あまり好ましくない。
【0036】
布地が織布であるいくつかの実施形態では、織布は、緻密に織られたモノまたはマルチフィラメントのトウを含む。最終塗装製品に望まれる仕上げと相性のよい滑らかな仕上げを提供するために、緻密に織られた高濃度の織りが好ましい。したがって、好ましい織りとしては、平織り、ハーネスサテン織り、クロウフットサテン織り、リップストップ織り、または綾織りが挙げられ、クロウフットサテン織りスタイルが最も好ましい。布地はまた、独立した実施形態において、モノもしくはマルチフィラメント/撚糸、またはモノもしくはマルチフィラメント/撚糸の組み合わせを含むことができ、ここで各糸の表面は、独立して、平坦または織目構造であり得る。別の実施形態では、糸は、100、120、14、160、180、または200デニールの最大サイズを有する。
【0037】
織りの緻密さは、1インチあたりの縦糸端(warp end)および横糸端(fill end)の観点で記載することができ、用語はいずれも、織物の分野の当業者によって容易に理解される。本発明の布地またはフィルムは、1インチあたり少なくとも50の縦糸端、または1インチあたり少なくとも60、70、80、90、100、120、140、または160の縦糸端、および1インチあたり少なくとも40の横糸端、または1インチあたり少なくとも60、80、または100の横糸端を独立して含むものを含み、および/または、布地は、縦糸と横糸の両方向に最小50ヤーン/インチの糸を含み、該糸は、縦糸または横糸のいずれかの方向に最大150デニールを有する。例えば、布地またはフィルムが1インチあたり少なくとも約50~80の縦糸端および1インチあたり少なくとも約40の縦糸端を含む場合、良好な結果が得られる。より好ましい実施形態としては、布地が1インチあたり少なくとも120の縦糸端および1インチあたり少なくとも60の横糸端で織られる織りが挙げられる。このような織りは、例えばPrecision Fabrics Group of Greensboro, North Carolinaから市販されている。例示的な組成物としては、精練(scoured)およびヒートセットされたポリエステルスタイル728およびナイロンスタイル9646材料が挙げられる。繊維または糸の厚さは、縦糸端/横糸端のパラメータを考慮して、開口が最小限の織りを提供するようなものであり、かつ布地全体の厚さと一致する。
【0038】
犠牲ピールプライ層の除去から生じる物品の最終表面仕上げは、ピールプライ層用の布地を使用することによってさらに改善でき、これをさらなるカレンダー処理法に供し、それにより、これらの布地のピールプライ層の除去により、さらに滑らかで非常に低孔率の物品表面が生成される。
【0039】
可剥性多孔質シートの別の特徴は、例えば、可剥性シートがその後の除去中に細断されたり、剥がしたときの表面仕上げのきれいさを損なう個別のフィラメントストランドを残したりしないように、可剥性多孔質シートが硬化したポリマー組成物の引張強度よりも大きい引張強度を有することである。
【0040】
可剥性多孔質シートは、その意図された機能を果たすための物理的完全性を提供するために、ASTM-D5034に従って試験した場合、100N~1500Nの範囲の引張強度を示すことが好ましい。他の実施形態では、引張強度は、100~200N、200~300N、300~400N、400~500N、500~600N、600~700N、700~800N、800~900N、900~1000N、1000~1100N、1100~1200N、1200~1300N、1300~1400N、1400~1500N、たとえば400N~1000Nの1又は複数の範囲によって説明される。
【0041】
第2の(またはそれ以上の)機能性材料の多孔質シート
本開示の多機能性表面フィルムは、任意選択で、その少なくとも一部が多孔質織布または不織布、エキスパンドメタル箔またはポリマーフィルム、格子、メッシュ、スクリーン、またはウェブの形態である第2の機能性材料のシートを少なくとも1層含む。ここでも、また本明細書の他の箇所で説明されているのと同じ理由で、最終製品の安定性および製造可能性のために、全てではなくとも大部分の機能性シートが高い多孔度を有する。特定の好ましい実施形態では、これらの追加の機能性材料の多孔質シートが存在する。
【0042】
いくつかの実施形態では、機能性材料のシートを複数用いることができる。あるいは、単一のシートが、異なる機能を有する材料(いわゆるハイブリッド材料を含む)を含んでもよい。第1の可剥性多孔質シートは、多機能性表面フィルムの機能的能力(すなわち、剥離性)を提供することが理解されるが、このセクションで使用される文脈では、「機能性(functional)」という用語は、性能、例えば衝撃安定性、寸法安定性、電気伝導性、および熱伝達能を改善して、改善された強度、EMIシールド材料、最終的に取り付けられる基材に対する静電および落雷保護をもたらすためのいくつかの特性をフィルムに付与するシート材料の特性を指す。さらに、「少なくとも1層の第2の機能性材料のシート」という句は、可剥性シートと区別するために、1以上の非剥離性の機能性材料のシートであってよい。すなわち、それは、(a)以下に記載されるような1種以上の(非剥離性)機能性材料の1層のシート;(b)同じ(非剥離性)機能性材料の2層以上のシート、(c)異なる(非剥離性)材料の2層以上のシート、または(d)2種以上の(非剥離性)機能性材料の2層以上のシートを含む実施形態を表す。
【0043】
これらの第2の機能性材料の物理的特性は、少なくとも厚さと多孔性の点で、第1の可剥性多孔質シートについて本明細所の他の箇所で説明したものと同様であるが、これらの機能性材料の多孔質シートの組成物および構造は、異なるさまざまな特性への必要性を反映する。例えば、第2の機能性材料のシートは、可剥性多孔質シートに必要とされるような引張強度を必要としない場合がある。
【0044】
この場合も、第2の機能性材料の多孔質シートは、織布及びエキスパンドフィルムを含み得るが、追加的に、これらのシートはまた、連続有機または無機繊維またはチョップド有機または無機繊維の不織布、メッシュ、スクリーン、またはウェブを含んでもよく、これには、可剥性多孔質シートに有用なものと同じまたは同様の材料、すなわち、1種以上のフッ素化またはパーフッ素化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標)など)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVFまたはTedlar(登録商標)))、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ塩化ビニル、またはそれらのコポリマーまたは混合物が含まれる。他の有用な有機材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、またはこれらのコポリマーまたは混合物が、単独で、またはこの目的のために記載された他の材料のいずれかとの混合物として挙げられる。アラミド(例えば、Kevlar(登録商標)繊維)およびイミド繊維(例えば、Kapton(登録商標))もまたこの用途において魅力的である。第2の機能性材料は、硬化後および最終使用中に多機能性フィルム中に残ることが意図されているため、これらのシートの物理的完全性または織物の性質は、可剥性材料ほど重要ではなく、すなわち、剥離操作に耐えられる必要はない。
【0045】
機能性材料はまた、セラミックまたはガラス繊維(例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、および/またはチタンを含む酸化物、炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、炭窒化物、またはオキシ炭窒化物)、サーメット繊維、炭素、または金属繊維(例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、スズ、もしくは亜鉛、または混合物、合金を含む)、またはこれらの材料を含むコーティングされたハイブリッドを含み得る。
例示的な材料としては、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、コーティングされたハイブリッドまたはそれらの混合物の繊維またはウィスカー、好ましくはガラス、炭素または金属コーティングされた繊維が挙げられる。本明細書で使用される場合、「繊維」という用語は、マクロ、ミクロ、またはナノの寸法のものを含み、またウィスカーとしても知られる細長い単結晶のワイヤを含む。場合により、これらの材料は、さまざまな種類の材料の複合体であり、該材料としては、例えば、カーボンコーティングされた金属、ガラス、またはポリマー;金属コーティングされたポリマー、炭素、またはガラス;ポリマーコーティングされたガラス、炭素、または金属などが挙げられる。場合によっては、機能性材料は導電性である。いくつかの実施形態では、機能性材料は、表面フィルムに磁気特性を付与する。
【0046】
典型的には、好ましい実施形態では、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートは、硬化性ポリマー組成物の第2の表面の近くであるがその下に配置される。第2の機能性材料のシートは、フィルム中、上に重ねられている硬化性ポリマー組成物が後で提供される基材と共硬化できるように十分に厚くなるような深さであるべきである。第2の機能性シートは、典型的には、可剥性多孔質シートとポリマー組成物の第2の表面との間に配置される。別の実施形態では、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートは、第2の表面と可剥性多孔質シートとの間の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の距離の位置に配置される。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1層の第2の機能性材料は、第1の表面と可剥性多孔質シートとの間の実質的に等距離の位置に配置される。機能性材料の多孔質シートの配置は、意図的に制御および規定される。好ましくは、上記のように、多機能性フィルムの第1の表面および第2の表面に実質的に平行な平面に配置され、これらの表面の間に配置され、すなわち、シートは、ポリマー組成物内の所定の位置に配置され、第2の表面に実質的に平行な平面に置かれている。独立した個々の実施形態では、表面フィルム内の機能性シートの位置の局所的変動は、フィルム内の平均位置から20%、15%、10%、5%、2%、または1%未満である。
【0047】
その他の特徴
いくつかの実施形態では、多機能性表面フィルムは、可剥性多孔質シートおよび第2の機能性材料のシートに加えて、硬化性ポリマー組成物内に少なくとも1種の粒子状フィラーをさらに含む。これらのフィラーは、可剥性多孔質シートと機能性材料シートの間に、硬化性ポリマー全体にわたって実質的に均一に分布するナノ、マイクロ、および/またはマクロ寸法の粒子状材料を含み得る。これらの表面フィルムが構築される方法の1つによって、粒子状フィラーを、可剥性多孔質シートと機能性材料シートの間に、それらに隣接して濃縮することができ、これは、これらのシートを硬化性ポリマー層中に組み込むふるい作用(sieving action)により生じる。これらの粒子状フィラーは、本明細書に記載の機能性材料のいずれか1種以上、例えば、セラミック、ポリマー、ガラス、または金属/半金属材料もしくはそれらの合金、またはコーティングされたハイブリッド材料を含んでもよく、より具体的にはアルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウムの炭化物、窒化物、または酸化物、またはアルミニウム、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、またはステンレス鋼、またはアラミド、およびそれらの複合バージョンが挙げられる。
【0048】
表面フィルムは、少なくとも硬化前は、凸状もしくは凹状形状、またはこれらの組み合わせを含む表面などの、平坦なもしくは本質的に平坦なパネル、または湾曲した輪郭を含む、成形または輪郭付けされた基材に適合するように十分に可撓性/柔軟であるように設計される。硬化性表面コーティング組成物は、基材の輪郭形状に実質的に適合するように塗布することができる。この特徴は、硬化性ポリマー組成物の硬化の程度と表面フィルムの厚さの組み合わせからもたらされ、これらは両方とも本明細書の他の箇所に記載されている。
【0049】
さらに、いくつかの実施形態では、多機能性表面フィルムは、12.5~12,500ミクロン(0.5から500ミル)、好ましくは12.5~1250ミクロン(0.5から50ミル)の範囲の総厚さを有する。他の実施形態では、総厚さは、12.5~25ミクロン、25~50ミクロン、50~75ミクロン、75~100ミクロン、100~125ミクロン、125~150、、150~175ミクロン、175~200ミクロン、200~250ミクロン、250~300ミクロン、300~400ミクロン、400~450ミクロン、450~500ミクロン、500~1000ミクロン、1000~1500ミクロン、1500~2000ミクロン、2000~2500ミクロン、2500~5000ミクロン、5000~7500ミクロン、7500~10,000ミクロン、10,000~12,500ミクロン、またはこれらの範囲の2つ以上の組み合わせ、例えば、25~500ミクロン、50~300ミクロン、または約25~125ミクロンの範囲により記載され得る。
【0050】
他の実施形態では、多機能性表面フィルムは、0.005~0.15lb./ft(psf)の範囲の面積重量を有することができ、あるいはこの重量は、0.005~0.01psf、0.01~0.015psf、0.015~0.02psf、0.02~0.025psf、0.025~0.03psf、0.03~0.035psf、0.035~0.04psf、0.04~0.045psf、0.045~0.05psf,0.05~0.055psf、0.055~0.06psf、0.06~0.065psf、0.065~0.07psf,0.07~0.075psf、0.075~0.08psf、0.08~0.085psf、0.085~0.09psf,0.09~0.095psf、0.095~0.1psf、0.1~0.105psf、0.105~0.11psf、0.11~0.115psf、0.115~0.12psf、0.12~0.125psf、0.125~0.13psf、0.13~0.135psf、0.135~0.14psf、0.14~0.145psf、または0.145~0.15psfの1または複数の範囲により定義され得る。航空機用途には、好ましい範囲としては、0.005~0.01psf、0.005~0.02psf、0.005~0.03psf、0.005~0.04psf、0.005~0.05psf、または0.005~0.06psf、またはこれらの範囲の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0051】
硬化性ポリマーと多孔質シートの相対量は、各々がそれぞれの目的を実行するのに十分な量が存在する限り、必ずしも重要ではない。しかし、いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーの厚さの、多孔質シートの総厚みに対する比率は、10:1から8:1、8:1から6:1、6:1から5:1、5:1から4:1、4:1から2:1、2:1から1:1、または1:1から0.5:1の範囲であり、あるいは該比率はこれらの範囲の2つ以上で特徴付けられ、例えば、10:1から0.5:1である。
【0052】
独立した実施形態では、多機能性表面フィルムは、第1の表面、第2の表面、または第1の表面と第2の表面の両方に、少なくとも1層の離型ライナーを含む。これらの離型ライナーの一方または両方は、セルロースまたはプラスチックフィルム(例えば、紙、ポリエチレンまたはポリエステル)でできていてもよい。そのようなライナーは、フィルムを保護し、製造、輸送、または適用/使用中のその取り扱いを容易にするため、かつ/またはロールまたはスタック上の隣接する層の間の反応を防止するために提供される。
【0053】
上記のように、多機能性表面フィルムは、硬化性の、部分的に硬化した、および完全に硬化したポリマー組成物を含み得る。別の実施形態では、これらのフィルムは、ラミネート基材を含む他の基材に物理的に接触、物理的に付着、または共硬化することができ、任意選択で基材はラミネートであり、また任意選択で基材は航空機または自動車の一部である。
【0054】
多機能性表面フィルムを基材に適用する方法
ここまで、本開示は多機能性表面フィルム自体のいくつかの特徴を強調してきたが、本発明はまた、これらの表面フィルムを製造および使用する方法も企図する。他の箇所で述べたように、表面フィルムに関するさまざまな機能はまた、方法および製造の両方に適切であり、表面フィルムのコメント/特性はまた、これらの表面フィルムの製造および使用方法に適用でき、この開示の対応する項目においてそれらを繰り返す必要はない。
【0055】
これらの表面フィルムは、プレフォーム(pre-formed)構造に適用してもよく(例えば、図2)、または構造がその上に構築されるツール/モールドと共に使用してもよい(例えば、図3)。どちらの場合でも、表面フィルムの第2の表面が最終的な構造に物理的に接触して、貼り付けられることが意図される。これにより、フィルムが該物品の外面として取り付けられた物品または構造の外側に配置されている第1の表面がもたらされ、第2の機能性材料のシートが、第1の可剥性多孔質シートの下(すなわち、その内側)で構造に取り付けられることとなり、それにより、第1の可剥性シートをその後除去して、第1の露出表面をもたらし、第2の機能性材料のシートは、表面フィルムの残りと共に、構造に取り付けられたまま残すことができる。
【0056】
したがって、特定の実施形態は、基材表面に機能性を提供する方法を提供し、いくつかの方法は、以下:
(a)多機能性表面フィルムの第2の表面を基材表面に物理的に貼り付けることによって、多機能性表面フィルムを基材表面に適用して、中間結合組成物を形成する工程;
(b)中間結合組成物を、少なくとも1つの任意に硬化可能な基材(好ましくはポリマー組成物)と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化またはそうでなければ結合を可能にするのに十分な条件に供し、それによりそれらの間に永続的な結合を形成する工程
を含む。「中間結合組成物」は、一方または両方の表面の粘着性によるわずかな接着による単なる物理的接触から、実際の化学結合までの範囲の結合として特徴付けることができるが、好ましい実施形態では、組成物が共硬化するまでは完全な結合は達成されない。共硬化構造の結合の「永続性」は、硬化した基材と硬化した表面フィルムとの間の結合の接着力が、好ましくは、硬化した表面フィルム、硬化した基材、または両方の凝着力と同じ大きさであることを反映している。いくつかの実施形態では、得られる結合は、10MPa(1450psi)以上(ASTM D1002またはD5868による)の重ね剪断強度を示すのに十分であるべきである。
【0057】
いくつかの実施形態では、基材は繊維強化複合部品である。基材はまた、硬化性ポリマーマトリックス組成物、硬化性ポリマーマトリックスを含浸させた強化繊維、ハニカムコア、膨張性(expandable)フィルム、ポッティングコンパウンド、または金属もしくはセラミック表面の少なくとも1つを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、基材は、本明細書の他の箇所に記載されるように、表面フィルムの硬化性ポリマー組成物と同じまたは相補的なポリマー組成物である表面を含むかまたは少なくとも提示する成形構造である。基材はラミネートであってもよい。
【0059】
他の実施形態では、該方法は以下:
(a)多機能性表面フィルムの第1の表面を金型表面に物理的に接触させて配置し、多機能性表面フィルムを金型表面に適合させることにより、多機能性表面フィルムをツール/金型表面に適用し、それにより多機能性表面フィルムの第2の表面を露出したまま残す、工程;
(b)任意に共硬化可能な基材(任意にフィルム)の少なくとも1つの層を、多機能性表面フィルムの第2の表面に物理的に貼り付けて、中間結合組成物を形成する工程;
(c)中間結合組成物を、少なくとも1つの硬化性基材と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化あるいは結合を可能にするのに十分な条件に供し、それによりそれらの間に結合を形成し、機能化された共硬化または接着結合構造を生成する、工程
を含む。そのような実施形態では、離型ライナーおよび/または離型剤を、金型表面と多機能性表面フィルムの第1の表面との間に挿入して、その後の製品構造の取り出しを助けることがしばしば好ましい。「任意に共硬化可能」という用語は、関連する基材フィルムが硬化可能であってもよいし、硬化可能でないため結合機構が共硬化ではないことを指し、後者の場合、例えば、基材フィルムは熱可塑性ポリマー(例えば、PEEKまたはPEKK)またはセラミックまたは金属層であってもよく、この場合、他の接着結合剤を使用して結合を固定してもよい。
【0060】
いずれかまたは両方の方法において、共硬化を可能にするのに十分な条件は、中間組成物を十分な熱または放射条件に曝露して、基材の硬化性ポリマー組成物と多機能性表面フィルムを共硬化し、それによりそれらの間に永続的な結合を形成することを含む。そのような条件は、選択された特定の材料に依存し、当業者は、そのような結合界面を形成するための最良の条件を決定することができるであろう。材料を共硬化するのに使用できる例示的なプロセスとしては、議論した材料のために典型的に用いられるものなどの、熱または放射硬化が挙げられる。共硬化された基材ポリマーと多機能性表面フィルムの間の結合の性質は、処理条件、およびの個々の構成要素の性質を含めた、主としてまたは完全に物理的なものから主としてまたは完全に化学的なものまでのいくつかの要因に依存する。当業者は、基材と表面フィルムとの間に所望の結合を達成するために必要な材料および処理条件を理解するであろう。
【0061】
機能化された共硬化構造を作製後、ユーザーが選択した時点で、第1の可剥性多孔質シートを硬化組成物から取り外して、多機能性表面フィルムの硬化ポリマー組成物の露出した第1の表面を残すことができる。典型的には、この除去は、剥離作用によって行われ、基材上に第2の機能性材料を含む残りの硬化表面フィルムを残し、この露出された第1の表面が塗料の塗布部位として機能する。望ましくは、追加の層を適用する前には、露出した新たな第1の表面のサンディング、プライマー塗装、または他の表面処理はほとんどまたはまったく必要ないか、または存在しない。非限定的な例として、好ましくは1000、500、100、50、10、5または1ミクロン未満の表面処理またはプライマー塗装が加えられ、かつ/または硬化したポリマー組成物が、表面仕上げ/装飾(例えば、ペイント)の追加層の塗布前に、露出した新しい第1の表面から除去される。フィルムにおける第1の可剥性多孔質シートの予め規定された深さ、または布地の性質に応じて、可剥性多孔質シートを除去すると、多機能性フィルムの硬化前面積重量の約5wt%から約60wt%、および硬化したポリマー組成物の約10~50wt%が、あるいは本明細書に記載されるように、除去される。増加するwt%の範囲は、追加の実施形態とみなされ、例えば、5~10wt%、10~15wt%、15~20wt%、20~25wt%、25~30wt%、30~35wt%、35~40wt%、40~45wt%、45~50wt%、50~55wt%、55~60wt%、またはこれらの範囲の2つ以上である。望ましくは、少なくとも1層の任意選択の第2の機能性材料の多孔質シートが多機能性表面フィルム中に配置され、それにより、第1の多孔質の可剥性シートの除去後も、残りの硬化した表面フィルムによって被覆されたままであり、好ましくは均一に被覆され、最も好ましくは選択された厚みの残りの硬化した表面フィルムによって被覆されたままとなる。さらなる処理を行うことなく塗装に適した必要な表面を達成するには、第1の多孔質の可剥性シートに使用される布地またはフィルムの織りまたは表面の滑らかさに少なくともある程度依存する。可剥性多孔質シートは、硬化した表面フィルムから除去されたときに、個々のフィラメントストランドを残すことなく除去できるように十分な構造的一体性を示すことも重要である。表面には何もないことが好ましく;望ましくは本質的に何もなく、これは、布地またはフィルムの個々のフィラメントストランドがすなわち5%未満、好ましくは1%未満であることを意味する。
【0062】
特定の実施形態では、表面フィルムを硬化させた後の第1の可剥性多孔質シートの除去は、追加の表面仕上げまたは処理を行わずに塗装するのに適した露出した第1の表面を提供する。一部の布地のストランドが残されている場合、これらは穏やかな摩耗によって取り除くことができる。追加の実施形態は、そのような塗料または他の充填のもしくは非充填のもしくはクリアコートの仕上げを適用する追加の工程、ならびにそれらに由来する物品を含む。いくつかの実施形態では、露出した第1の表面は、プライマーコートを必要とすることなく塗装するのに適している。これらの適合性に関連する特性には、露出した第1の表面が約5nmから約50ミクロンの範囲の平均表面粗さ(例えば、布地の印象から)(Ra)を有することが挙げられ、これはまた、5nm~10nm、10nm~25nm、25nm~50nm、50nm~75nm、75nm~100nm(0.1ミクロン)、0.1ミクロン~0.25ミクロン、0.25ミクロン~0.5ミクロン、0.5ミクロン~0.75ミクロン、0.75ミクロン~1ミクロン、1ミクロン~2ミクロン、2ミクロン~3ミクロン、3ミクロン~4ミクロン、または4ミクロン~5ミクロンの1つ以上の平均表面粗さを有するとして特徴付けられ得る。そのような例示的な範囲の1つとしては、例えば、0.1ミクロン~3ミクロンが挙げられる。「塗装に適している」という用語は、得られた塗装コーティングが、塗布時および/または応力後のいずれか、またはその両方で、ASTM D3359で測定される少なくとも3、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5の評価を有する、露出された第1表面への塗装接着性を示すことを意味する。このような応力としては、ASTM B117、B287、D7869、F483、F1110に記載されているような、熱サイクル(例えば、-65℃から+160°Fの800サイクル)、露出した表面へのUV曝露、水浸および/または極端な温度への曝露、塗料の塗布後の塩または酸スプレー曝露(プライマーの有り/無し)の1または複数が挙げられる。
【0063】
塗料の塗布の方法は、特定の手段に限定されないが、スプレー塗装は、典型的には、広い領域の平滑な被覆を可能にするために使用され、あるいはデカールの使用により行われる。同様に、塗料が最終的な表面組成と相溶性である限り、塗料の選択は制限されない。好ましい塗料は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリウレタン、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含むものである。露出した表面への塗料の結合は、選択した塗料の性質に応じて、物理的結合または化学的結合、あるいはその両方であってよい。可剥性シートの硬化後除去は、第1の表面と比較して、より大きな接触表面積を有する露出表面をもたらし、これにより物理的な塗料接着性が向上する。次いで、露出表面が、本明細書に記載のプロセスが存在しなかった場合よりも、塗料の接着を促進するより高い濃度の化学基を曝露することが期待される。その結果、露出表面と塗料との間の化学的相互作用の増大により、より一体的な結合がもたらされる可能性が高く、したがって、プライマーの必要性を打ち消すことができることも期待される。
【0064】
本発明の多くの利点の1つは、部品が塗装または他の表面コーティングの準備ができるまで、共硬化した表面フィルムが製造および組立てを通じて基材上に留まり、汚染および化学的/環境的曝露、特にUV源から該部品を保護できることである。いくつかの実施形態では、残りの硬化した表面材料が、その寿命中の連続的な加工を通じて複合部品を継続的に保護できるように、可剥性シートと共に除去される硬化した材料の量は少ない方が好ましい。
【0065】
ここまで、多機能性表面フィルムを調製および/または使用するための方法、ならびに表面フィルム自体に関して、様々な実施形態を説明してきた。本明細書に記載されている様々な中間構造は、製品としての別個の実施形態として本開示の範囲内であると見なされることも理解されるはずである。本発明の様々な実施形態はまた、本明細書に記載された方法によって製造されたそれらの物品を含む。本発明は、あらゆるサイズの構造に適しているが、大きな構造に対応するその能力において特に魅力的である。本明細書に記載される方法を使用して製造されるそのような物体は、本発明の範囲内に含まれることが想定される。想定される構造は、商用および個人用航空機および航空宇宙用途、自動車、船舶(船を含む)、鉄道車両、タンカー、貯蔵タンク、風力タービンにおける、一次構造要素、二次構造要素、外部要素、内部要素、およびこれらの要素を形成する部品の1つ以上であり得るものを含む。これはまた、スポーツ装具(例えば、釣り竿、自転車のフレーム)が挙げられるがこれに限定されないより小さな物品を作製するために使用することができる。これらの構造の各々は、かかる部分的または完全に硬化した多機能性フィルムを含む場合、本開示の別個の実施形態と見なされる。
【0066】
多機能性表面フィルムの製造方法
追加の実施形態は、本明細書に記載される多機能性表面フィルムを製造するためのそれらの方法を含む。図4および5は、そのような方法の2つの代表例を提供する。そのような方法の1つは、下記:
(a)硬化性ポリマー組成物(410、510)を、離型ライナー(440、540)の表面上に連続的に堆積させて、離型ライナーと接触する第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有するキャストポリマー組成物を形成する工程;
(b)硬化性ポリマー(410、510)を連続的に堆積しながら、キャストポリマー組成物に第1の可剥性多孔質シート(420、520)を配置するか、重ねるか、または他の方法で配置し、好ましくは第1の可剥性多孔質シートを、キャスト硬化性ポリマー組成物の第1の表面に、例えば、ニップローラー(480、580)によって押し付け、それにより、可剥性多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物の第1の表面上に、または隣接して、または近接して、またはその下に、かつ離型ライナーの下に配置される、工程、
(c)硬化性ポリマーを連続的に堆積しながら、第2の表面に対して配置された少なくとも1層の任意選択の第2の機能性材料の多孔質シート(430、530)を、例えばプレスロール(470、570)を使用して提供し、それにより、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート(430、530)が、キャストポリマー組成物中に、第2の表面から選択された距離において少なくとも部分的に埋め込まれる、工程、
(d)任意選択で、多機能性表面フィルムの第2の表面に隣接する第2の離型ライナーを提供する工程
を含む。
【0067】
このような方法では、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートは、可剥性多孔質シートが硬化性ポリマーの第1の表面中に押し付けられた後、キャストポリマー組成物中、第2の表面の下に少なくとも部分的に埋め込まれる。含侵の深さは、硬化性ポリマー組成物の粘度(温度、特定のポリマー組成物、およびポリマー組成物の硬化度に少なくともある程度依存する)、層間シートの多孔度、および層間シートを硬化性ポリマー組成物中に押し付けるのに使用される個々のニップローラーにより印加される圧力によって、少なくともある程度、予め規定された深さに制御される。
【0068】
関連する実施形態において、方法(単数又は複数)は、多機能性表面フィルムを、任意に非孔質ライナーを含む少なくとも1対の非孔質ローラー(480、580)の間を通過させ;さらに、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート(430、530)、可剥性多孔質シート(420、520)、または少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートおよび可剥性多孔質シートの両方を、キャスト硬化性ポリマー組成物中に、それぞれ、硬化性ポリマー組成物のそれぞれの表面からあらかじめ選択した距離に埋め込むことをさらに含む。
【0069】
表面フィルムの形成中またはその後に、表面フィルムの第1の表面に第2の離型ライナーを設けることもできる。また、フィルムは、一旦形成したら、巻取り機(400、500)で巻き取って、輸送および取り扱いのためのスプールロールとしてもよい。そのように製造されたフィルムは、それらを製造するために使用される装置の性質によってのみその面積寸法が制限され、その標準幅としては30、60、90、120、最大で200cmが挙げられる。特定の実施形態において、そのような標準幅ロールは、各々の用途に基づいて、わずか0.5cm程であり得るより狭い幅にさらにスリットを入れることができる。これらとしては、0.5~5cm幅を使用できる自動繊維加工(AFP)、および、5~50cm幅を使用できる自動テープ積層(ATL)、および他の方法で適用される他の幅の組み合わせが挙げられる。同様に、フィルム長は数十メートルから数百メートルの長さの範囲であってよい。
【0070】
以下の実施形態のリストは、前述の記載を置き換えたり取って替わるものではなく、補足することを意図するものである。
【0071】
実施形態1.以下を含む多機能性表面フィルム:
(a)対向する第1の表面および第2の表面を有する硬化性ポリマー組成物の単一層:
(b)第1の表面またはその下に配置された第1の可剥性多孔質シート;および
(c)硬化性ポリマー組成物の単一層内の第2の表面の下に配置され、第2の表面と可剥性多孔質シートとの間に配置された、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート。
【0072】
実施形態2. 硬化性ポリマー組成物が、熱硬化性組成物、熱可塑性組成物、またはそれらの混合物もしくはブレンドを含む、実施形態1の多機能性表面フィルム。
【0073】
実施形態3. 硬化性ポリマー組成物が、硬化性ポリマー組成物のモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含む、実施形態1または2のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0074】
実施形態4. 硬化性ポリマー組成物が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む、実施形態1~3のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0075】
実施形態5. 硬化性ポリマー組成物がエポキシ樹脂を含む、実施形態1~4のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0076】
実施形態6. ポリマー組成物が、(UV、可視、または赤外線)光または熱の適用によって硬化可能である、実施形態1~5のいずれか1つの多機能性表面処理フィルム。この実施形態のいくつかの態様では、層間可剥性シートおよび機能性シートの組み込みの直前に相補的樹脂および/または触媒を混合し、フリーラジカルプロセスにより硬化させることができる。
【0077】
実施形態7. 25~12,500ミクロン(1~500ミル)、好ましくは25~500ミクロン、または50~300ミクロンの範囲の総厚さを有するか、あるいは本明細書の他の箇所に記載の任意の1または複数の範囲に特徴付けられる、実施形態1~6のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0078】
実施形態8. 可剥性多孔質シートが、[硬化性ポリマー組成物の単一層内]第1の表面の下にある、実施形態1~7のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0079】
実施形態9. 可剥性多孔質シートが、布地、またはエキスパンド、有孔もしくは格子状フィルムを含む、実施形態1~8のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0080】
実施形態10. 可剥性多孔質シートが、以下の特性の1つ以上を有する、実施形態1~9のいずれか1つの多機能性表面フィルム:
(a)可剥性多孔質シートが、フッ素化もしくはパーフッ素化ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンイミン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルハライド、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を含む;
(b)布地またはエキスパンドフィルムを、別個の硬化性接着剤樹脂組成物を使用してまたは使用しないで、第1の表面上または表面中に配置するか物理的に埋め込むことによって、可剥性多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物に接着され、好ましくは組成物中に埋め込まれ、最も好ましくは第1の表面から選択した距離に埋め込まれる;
(c)可剥性多孔質シートが、25~250ミクロン、好ましくは40~125ミクロンの範囲[5ミクロン~500ミクロンの範囲]の厚さを有する;
(d)可剥性多孔質シートが、0.25~250ミクロン、好ましくは1~70ミクロンの範囲の公称孔径を有する;
(e)可剥性多孔質シートが、ASTM-D5034に従って試験した場合、100N~1500N、好ましくは400N~1000Nの範囲の引張強度を示す;
(f)可剥性多孔質シートがエキスパンドフィルムである;
(g)可剥性多孔質シートが織布である;
(h)可剥性多孔質シートが、織られたモノまたはマルチフィラメントのトウを含む織布である;
(i)可剥性多孔質シートが、平織り、ハーネスサテン織り、クロウフットサテン織り、リップストップ織り、または綾織りを含む織布である;
(j)可剥性多孔質シートが、モノもしくはマルチフィラメント/撚糸を含む織布であり、糸は、平坦なまたは織目加工の表面および200デニールの最大サイズを有する;
(k)可剥性多孔質シートが、1インチあたり少なくとも50の縦糸端および1インチあたり少なくとも40の横糸端、または1インチあたり少なくとも120の縦糸端および1インチあたり少なくとも60の横糸端を有する織布であるか、または布地が、縦糸と横糸の両方向に最低40ヤーン/インチの糸、縦糸と横糸のいずれかの方向に最大150デニールの糸を含む;かつ/または
(l)可剥性多孔質シートが、滑らかで緻密に織られた表面を生成するために、精練(scoured)、ヒートセット、およびカレンダー加工することができる織布である。
【0081】
この実施形態の特定の態様では、硬化した表面フィルムからの可剥性多孔質シートの除去は、追加の表面仕上げもしくは処理またはプライミングを行わずに塗装するのに適した露出表面を提供し、そのような態様では、結果として得られる露出表面は、本明細書の他の箇所に記載されるように、多数の利点および特性を提供する。
【0082】
実施形態11. 少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、多孔質の織布もしくは不織布、エキスパンドメタル箔または有孔ポリマーフィルム、格子、メッシュ、スクリーン、またはウェブの形態である、実施形態1~10のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0083】
実施形態12. 少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、落雷保護、静電気散逸(electrostatic current dissipation)、またはそれらの組み合わせにおける耐衝撃性改良剤、熱伝達媒体、EMIシールド材料としての使用に適した性能特性を示す、請求項1~11のいずれか一つの多機能性表面フィルム。
【0084】
実施形態13. 任意選択の少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、以下の特性の1つ以上を有する、実施形態1~12のいずれか1つの多機能性表面フィルム:
(a)少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、金属、ポリマー、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、またはそれらのハイブリッドおよび混合物、好ましくはガラス、炭素および/または金属コート繊維の連続もしくはチョップド繊維またはウィスカーを含む織または不織の繊維またはフィラメント、ならびに事前に熱分解されていてもされていなくてもよい有孔ポリマーシートを含む;
(b)少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが電気伝導性である;
(c)少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、アルミニウム、炭素、銅、ニッケル、銀、またはステンレス鋼を含む;
(d)少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、ポリアクリロニトリルを含む;および/または
(e)少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、硬化性ポリマー組成物内で、可剥性多孔質シートよりも第2の表面の近くに配置され;別の実施形態では、少なくとも1層の機能性材料の多孔質シートが、第2の表面と可剥性多孔質シートとの間の距離の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の位置に配置される。
【0085】
実施形態14. 硬化性ポリマー組成物が、少なくとも1種の粒子状フィラーをさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つの多機能性表面フィルム。硬化性ポリマー組成物が、有機、無機または両方のハイブリッドの少なくとも1種のフィラーまたは添加剤、高分子強化成分、または粒子状フィラー、例えば強化繊維、電気伝導性材料、およびチキソトロープ剤をさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0086】
実施形態15. 少なくとも1種の粒子状フィラーまたは添加剤が、ナノ、マイクロ、および/またはマクロの寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、もしくは繊維)、または液体ブレンドを含む、実施形態15の多機能性表面フィルム。
【0087】
実施形態16. 少なくとも1種のフィラーまたは添加剤が、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウムの炭化物、窒化物、または酸化物;または、元素アルミニウム、炭素、銅、ニッケル、Sn/Zn、またはステンレス鋼;または、反応性液体ゴムポリマー、コアシェル粒子または熱可塑性ポリマー;または銀コーティングされたガラスフレーク、カーボンコーティングされたガラスビーズ、または銀コーティングされたアルミニウム粒子などを含む、セラミック、予備反応ポリマー、ガラス、金属または合金、およびハイブリッド化合物を含む、実施形態14または15の多機能性表面フィルム。
【0088】
実施形態17. 少なくとも1種の粒子状フィラーまたは添加剤が硬化性ポリマー全体にわたって実質的に均一に分散されている、実施形態14~16のいずれか1つの多機能性表面フィルム。この実施形態の特定の態様では、粒子状フィラーは、可剥性多孔質シートと機能性材料の多孔質シートとの間におよび/またはこれらに隣接して濃縮され、これは、これらの層を硬化性ポリマー層に組み込むふるい作用から生じる。
【0089】
実施形態18. 硬化性ポリマー組成物が、第2の表面に配置された、(US 2010/0151239に記載されるような)UV耐性ポリマーまたは(US特許第9,676,961号に記載されるような)UV安定化添加剤を含む、実施形態1~17のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0090】
実施形態19. 成形されたまたは輪郭付けされた基材に適合するのに十分に柔軟/可撓性である、実施形態1~18のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0091】
実施形態20. 0.010~0.150ポンド/平方フィート、好ましくは0.060ポンド/平方フィート未満の範囲、あるいは本明細書の他の場所に記載の範囲のいずれかに提供される総面積重量を有する、実施形態1~19のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0092】
実施形態21. その第1の表面が基材の表面に接触している、実施形態1~20のいずれか1つの多機能性表面フィルム。基材は、硬化性もしくは硬化したポリマーマトリックス組成物、硬化性もしくは硬化したポリマーマトリックスを含浸させた強化繊維、ハニカムコア、膨張性フィルム、ポッティングコンパウンド、セラミック、または金属の少なくとも1種を含み得る。
【0093】
実施形態22. ポリマー組成物が硬化している、実施形態1~21のいずれか1つの多機能性表面フィルム。
【0094】
実施形態23. ポリマー組成物が基材の表面に共硬化され、それにより、基材と多機能性表面フィルムとの間に化学結合が形成される、実施形態22の多機能性表面フィルム。
【0095】
実施形態24. 基材表面に機能性を提供する方法であって、該方法は:
(a)実施形態1~20のいずれか1つの多機能性表面フィルムの第2の表面を基材表面に物理的に貼り付けることにより、多機能性表面フィルムを基材表面(少なくとも1つの硬化性基材ポリマー組成物を含む基材表面)に適用して、中間結合組成物を形成する工程;
(b)中間結合組成物を、少なくとも1つの硬化性(または硬化した)基材ポリマー(または他の開示された基材)組成物と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化あるいは結合を可能にするのに十分な条件に供し、それによって、それらの間に結合を形成する工程
を含む。
【0096】
実施形態25. 基材表面に機能性を提供する方法であって、該方法は、
(a)請求項1から20のいずれか一項載の多機能性表面フィルムの第1の表面を金型表面に物理的に配置し、多機能性表面フィルムを金型表面に適合させることにより、多機能性表面フィルムを金型表面(少なくとも1種の硬化性基材ポリマー組成物を含む基材表面)に適用し、それにより多機能性表面フィルムの第2の表面を露出したままとする工程;
(b)任意に共硬化可能な基材フィルムの少なくとも1層を多機能性表面フィルムの第2の表面に物理的に貼り付けて、中間結合組成物を形成する工程;
(c)中間結合組成物を、少なくとも1つの任意に硬化可能な基材ポリマー組成物と多機能性表面フィルムの硬化性ポリマー組成物との共硬化あるいは結合を可能にするのに十分な条件に供し、それによって、それらの間に結合を形成する工程
を含む、方法。
【0097】
実施形態26. 離型ライナーが、金型表面と多機能性表面フィルムの第1の表面との間に挿入される、実施形態25の方法。
【0098】
実施形態27. 共硬化を可能にするのに十分な条件が、中間組成物を十分な熱的または放射的条件に曝して、基材の任意に硬化可能なポリマー(または他の基材)組成物と多機能性表面フィルムとを共硬化または他の方法で結合させることを含み、それによりそれらの間に結合を形成させる、実施形態24~26のいずれか1つの方法。
【0099】
実施形態28. 可剥性多孔質シートを共硬化構造から除去して、多機能性表面フィルムの硬化ポリマー組成物の露出表面を残すことをさらに含む、実施形態24~27のいずれか1つの方法。この実施形態のいくつかの態様では、硬化後の重量の低減が、複合構造からの可剥性シートの除去によって達成される。
【0100】
実施形態29. 追加の表面仕上げまたは処理を行わずに露出表面を塗装することをさらに含む、実施形態28の方法。この実施形態のいくつかの態様では、塗装された表面は、プライマーコーティングを使用しなくても、かつ/または過酷な環境にさらされた後でも、ASTM D1654による所望の塗料接着特性を示す。
【0101】
実施形態30. 多機能性表面フィルムを製造する方法であって:
(a)離型ライナーの表面上に硬化性ポリマー組成物を連続的に堆積させて、離型ライナーと接触した第1の表面および第1の表面に対向する第2の表面を有するキャストポリマー組成物を形成する工程;
(b)硬化性ポリマーを連続的に堆積させながら、可剥性多孔質シートをキャスト硬化性ポリマー組成物の第1の表面に押し付け、それにより、可剥性多孔質シートが離型ライナーの下の硬化性ポリマー組成物の第1の表面にまたはその下に配置される、工程;
(c)硬化性ポリマーを連続的に堆積させながら、任意選択で、第2表面に対して配置された少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートを提供し、それにより、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、キャストポリマー組成物中に、第2の表面から選択された距離で埋め込まれるようになる、工程;
(d)任意選択で、多機能性表面フィルムの第2の表面に隣接する第2の離型ライナーを提供する工程
を含む。この実施形態の特定の態様では、該少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが第2の表面に対して提供され配置される。
【0102】
実施形態31. 第1の可剥性多孔質シートが硬化性ポリマー組成物の第2の表面に押し付けられた後、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートが、キャストポリマー組成物中に少なくとも部分的に埋め込まれることとなる、実施形態30の方法。
【0103】
実施形態32. 多機能性表面フィルムを少なくとも1対の非孔性ローラーの間を通過させる工程、さらに、それぞれの表面から予め選択された距離に、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シート、可剥性多孔質シート、または、少なくとも1層の第2の機能性材料の多孔質シートと可剥性多孔質シートとの両方を、キャスト硬化性ポリマー組成物中または該組成物内に、各々、硬化性ポリマー組成物のそれぞれの表面から予め選択した距離に埋め込む工程をさらに含む、実施形態29または30の方法。この実施形態の特定の態様において、多機能性フィルムはさらにスプールロールに巻き取られる。
【0104】
実施形態33. 非孔性ローラーが非孔性ライナーを含む、実施形態32の方法。
【0105】
実施形態34. 硬化性ポリマー組成物を部分的に硬化(Bステージ化)することをさらに含む、実施形態30~33のいずれか1つの方法。
【0106】
実施形態35. 多機能性フィルムをスプールロールに巻くことをさらに含み、巻き取られた多機能性フィルムロールは、複合構造の製造中に、特殊化された自動化装置とともに使用するのに必要な特定の目標幅にさらにスリットが入れられる、実施形態30~33のいずれか1つの方法。
【0107】
実施形態36. 自動繊維加工(AFP)機および自動テープ積層(ATL)機などの複合構造の製造のために特に設計された自動装置を用いて、請求項24~26のいずれか一項の方法に従って使用される、実施形態35のスリット多機能性フィルムロール。
【0108】
当業者には明らかであろうが、これらの教示に照らして、本発明の様々な修正および変形が可能であり、それらすべてが本明細書において企図される。
【0109】
この文書において引用または記載されている各特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照により、その全体が、または少なくともそれらの記載の文脈におけるそれらの教示のために、本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5