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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】被覆樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20230825BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20230825BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C08L33/02
C08L61/10
C08L75/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021564012
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045929
(87)【国際公開番号】W WO2021117783
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019225185
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019225184
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020026078
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085218
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085220
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085224
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085226
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085227
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020122800
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】澤木 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 建太郎
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-298516(JP,A)
【文献】特開平08-302218(JP,A)
【文献】特開平11-347402(JP,A)
【文献】米国特許第4727097(US,A)
【文献】国際公開第2015/178481(WO,A1)
【文献】特表2016-508167(JP,A)
【文献】特表2007-510045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、99/00
C08L 1/00-101/14
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子の分散体に、水溶性の第1の物質及び水を含む液を混合することにより混合体を得る工程、及び、
前記第1の物質と重合反応する第2の物質を前記混合体に混合することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る工程を備え、
前記液における第1の物質の含有量が前記水100質量部に対して0.1~50質量部である、被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
中位粒子径が150μm以上の被覆樹脂粒子の製造方法であって、
水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子の分散体に、水溶性の第1の物質及び水を含む液を混合することにより混合体を得る工程、及び、
前記第1の物質と重合反応する第2の物質を前記混合体に混合することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る工程を備える、被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記重合反応が逐次重合反応である、請求項1又は2に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性樹脂粒子が多糖類を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第1の物質がポリオールを含み、前記第2の物質がポリイソシアネートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第1の物質がアルデヒドを含み、前記第2の物質がフェノール化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子は、樹脂粒子として各種産業分野で広く使用されている。水溶性樹脂粒子は、化粧品、医薬品、トイレタリー物品等の種々の分野において増粘剤、ゲル化剤、乳化安定剤、分散剤、保水剤、保護コロイド剤等として使用されている(例えば、下記特許文献1参照)。また、吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品、簡易トイレ等の衛生材料;保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料;止水剤、結露防止剤等の工業資材などの種々の分野で使用されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/154086号
【文献】特開2016-28117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂粒子は、その用途により求められる性能が異なる。そのため、樹脂粒子の各種性能の制御が求められている。本発明者らは、樹脂粒子の各種性能の制御方法として、樹脂粒子を作製した後に、当該樹脂粒子を被覆する被覆部を形成することに着目した上で、当該方法において樹脂粒子が凝集しやすいことを見出した。
【0005】
本発明は、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得ることが可能な被覆樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子の分散体に、水溶性の第1の物質及び水を含む液を混合することにより混合体を得る工程、及び、前記第1の物質と重合反応する第2の物質を前記混合体に混合することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る工程を備える、被覆樹脂粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得ることが可能な被覆樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】被覆樹脂粒子の一例を示す模式断面図である。
図2】実施例1の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
図3】実施例2の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
図4】実施例3の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
図5】実施例4の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
図6】比較例1の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
図7】比較例2の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。室温とは、25℃を意味するものとする。本明細書に例示する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子(被コーティング体)の分散体に、水溶性の第1の物質(第1のコーティング材料)及び水を含む液を混合することにより混合体を得る第1の混合工程、及び、第1の物質と重合反応する第2の物質(第2のコーティング材料)を前記混合体に混合することにより、樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る第2の混合工程(被覆工程)を備える。
【0012】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得ることができる。本発明者は、下記の機序を一因としてこのような効果が奏されると推測している。すなわち、樹脂粒子と水溶性の第1の物質とを混合する際、樹脂粒子が分散された状態で、第1の物質及び水を含む液を供給することにより、樹脂粒子の表面に第1の物質が充分に浸透しやすい。この状態で第2の物質を混合することにより、第1の物質と第2の物質との重合反応物である被覆部によって樹脂粒子の少なくとも一部が充分に被覆される。これにより、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得ることができる。
【0013】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、被覆樹脂粒子の性能として、被覆対象の樹脂粒子とは異なる性能を得ることができる。被覆部によって制御可能な性能としては、粘性挙動(被覆樹脂粒子の分散液の粘性挙動)、溶解速度、保水量、吸水速度等が挙げられる。
【0014】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、被覆樹脂粒子を得ることができる。当該被覆樹脂粒子は、水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子と、当該樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部と、を有する。
【0015】
被覆対象の樹脂粒子の形状は、特に限定されず、例えば、略球状、不定形状、顆粒状等であってよく、これらの形状を有する一次粒子が凝集した形状であってもよい。不定形状の樹脂粒子は、例えば、樹脂塊体を破砕機で破砕することで得られる。
【0016】
水溶性樹脂粒子は、水溶性の樹脂から構成されていれば特に限定されない。水溶性樹脂粒子における25℃のイオン交換水100gに対する溶解度は、例えば30g以上であってよい。
【0017】
水溶性樹脂粒子は、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得やすい観点から、吸水性を有さないエチレン性不飽和単量体の重合体、ポリアルキレンオキシド、及び、多糖類からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、多糖類を含むことがより好ましい。
水溶性樹脂粒子を構成し得るエチレン性不飽和単量体は、後述する吸水性樹脂粒子の形成材料と同じものを用いることができるが、水溶性樹脂粒子として用いられるエチレン性不飽和単量体の重合体は吸水性を有さない(例えば、25℃のイオン交換水の吸水量(常圧下の吸水量)が、10g/g未満である)。このような重合体は、例えば、内部架橋剤を用いずにエチレン性不飽和単量体を重合することにより得られる。
【0018】
吸水性を有さないエチレン性不飽和単量体の重合体としては、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられる。ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体、及び、プロピレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び、ポリブチレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましく、ポリエチレンオキシドが更に好ましい。共重合体(コポリマー)である場合、ポリアルキレンオキシドはブロック共重合体であってよく、ランダム共重合体であってもよい。ポリアルキレンオキシドの粘度平均分子量は、10万~1,500万が好ましく、20万~1,000万がより好ましい。
【0019】
多糖類は、例えば、多糖及びその誘導体(変性物)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。多糖としては、デンプン、プルラン、グアーガム、セルロース、キトサン、ローカストビーンガム等が挙げられる。多糖の誘導体は、例えば、多糖に対してエステル化、エーテル化、リン酸化、酸化、及び/又は、硫酸化等の変性処理を施して得られる化合物である。
【0020】
多糖類は、セルロース及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロース化合物を含むことが好ましい。セルロース化合物としては、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヘキシルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、メトキシセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピレート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、これらの塩等が挙げられる。セルロース化合物は、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得やすい観点から、ヒドロキシエチルセルロースを含むことが好ましい。
【0021】
水溶性樹脂粒子における多糖類(例えばセルロース化合物)の含有量は、水溶性樹脂粒子の全体を基準として下記の範囲であってよい。多糖類の含有量は、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は、99質量%以上であってよい。水溶性樹脂粒子は、実質的に、多糖類からなる態様(水溶性樹脂粒子の実質的に100質量%が多糖類である態様)であってもよい。
【0022】
吸水性樹脂粒子は、吸水性を有する樹脂から構成されていれば特に限定されない。吸水性樹脂粒子における25℃のイオン交換水の吸水量(常圧下の吸水量)は、例えば10g/g以上であってよい。
【0023】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することが可能であり、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含むことができる。エチレン性不飽和単量体の重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。
【0024】
エチレン性不飽和単量体は、水溶性エチレン性不飽和単量体(例えば、25℃のイオン交換水100gに対する溶解度が1g以上のエチレン性不飽和単量体)であってよい。エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得やすい観点から、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。吸水性樹脂粒子は、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得やすい観点から、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0025】
エチレン性不飽和単量体が酸性基を有する場合、酸性基を中和してから重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における中和度は、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、50~90モル%、又は、60~80モル%であってよい。
【0026】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様)に対して70~100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であることがより好ましい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0027】
本実施形態によれば、吸水性樹脂粒子の一例として、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量(例えば、前記架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量)に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子を提供することができる。
【0028】
重合の際に自己架橋による架橋が生じ得るが、内部架橋剤を用いることで架橋を促してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;ジビニル系化合物;ジアルコール系化合物;ジアクリレート系化合物などが挙げられる。
【0029】
吸水性樹脂粒子は、架橋重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、流動性向上剤(滑剤)等を更に含んでいてもよい。これらの成分は、架橋重合体粒子の内部、架橋重合体粒子の表面上、又は、それらの両方に配置され得る。
【0030】
被覆部は、上述の第1の物質と第2の物質との重合反応物である。被覆部は、水溶性であってよく、水溶性でなくてもよい(難水溶性であってもよい)。被覆部が水溶性である場合、被覆部の溶解度は、例えば、25℃のイオン交換水100gに対して1g以上(例えば1~150g)であってよい。被覆部の構成材料は、ウレタン樹脂、フェノール樹脂(例えば、フェノール化合物とアルデヒドとの縮合物)、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等の逐次重合反応物;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレングリコール等の連鎖重合反応物などを含み得る。なお、第1の物質と第2の物質は異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0031】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の中位粒子径は、下記の範囲であってよい。被覆樹脂粒子の中位粒子径は、100μm以上、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、355μm以上、360μm以上、380μm以上、400μm以上、又は、410μm以上であってよい。被覆樹脂粒子の中位粒子径は、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、450μm以下、410μm以下、400μm以下、380μm以下、360μm以下、又は、355μm以下であってよい。これらの観点から、被覆樹脂粒子の中位粒子径は、100~800μm、150~700μm、200~600μm、又は、250~500μmであってよい。
【0032】
図1は、被覆樹脂粒子の一例を示す模式断面図である。図1に示す被覆樹脂粒子1は、樹脂粒子1aと、樹脂粒子1aの表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層(被覆部)1bとを有する。図1では、樹脂粒子1aの表面全体がコーティング層1bによって被覆されている。この場合、例えば、コーティング層1bが水溶性であることにより、コーティング層1bが溶解して消失することにより、樹脂粒子1aを水に接触させる挙動(例えば経時変化)を調整できる。樹脂粒子1aの表面においてコーティング層1bの被覆量を調整することにより、水に対する樹脂粒子1aの接触量を調整できる。
【0033】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法における第1の混合工程では、水溶性樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子の分散体に、水溶性の第1の物質及び水を含む液を混合することにより混合体を得る。第1の混合工程では、樹脂粒子と第1の物質とを接触させることができる。
【0034】
樹脂粒子の分散体は、樹脂粒子を分散媒に分散させること、又は、樹脂粒子を気体中に分散させることにより得ることができる。樹脂粒子を気体中に分散させた分散体を得る場合、当該気体は、大気であってよいが、窒素ガス等の不活性ガスを90質量%以上含むことが好ましい。
【0035】
「樹脂粒子の分散体」は、個々の樹脂粒子の大多数が他の樹脂粒子と非接触に保たれた状態を有している。「樹脂粒子の大多数」は、分散体に含まれる樹脂粒子の全体を基準として、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。樹脂粒子の分散体は、当該分散体を容易に得られる観点から、樹脂粒子を分散媒に分散させて得られる分散液であることが好ましく、樹脂粒子を分散媒に分散させることにより得られる分散液であることがより好ましい。
【0036】
分散媒は、炭化水素系分散媒を含んでよい。炭化水素系分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0037】
樹脂粒子の分散液における樹脂粒子の含有量は、樹脂粒子を効率的に分散させやすい観点から、分散体の全体を基準として下記の範囲であってよい。樹脂粒子の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、又は、7質量%以上であってよい。樹脂粒子の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、又は、8質量%以下であってよい。これらの観点から、樹脂粒子の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0038】
第1の物質及び水を含む液は、少なくとも水を含む溶媒に第1の物質を添加することにより得ることができる。当該溶媒における水の割合は、50質量%以上、70質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。溶媒は、水からなる態様(溶媒の実質的に100質量%が水である態様)であってよく、第1の物質及び水を含む液は、水からなる溶媒に第1の物質を溶解させることにより得られる第1の物質の水溶液であってよい。
【0039】
溶媒が水を含んでいるため、第1の物質及び水を含む液に樹脂粒子が接触することにより樹脂粒子に第1の物質が浸透しやすい。換言すれば、樹脂粒子の表面に第1の物質が保持されやすい。その結果、第2の混合工程において、樹脂粒子の表面において第1の物質が第2の物質と重合反応しやすく、被覆部を効率的に形成することができると推測される。
【0040】
第1の物質及び水を含む液における第1の物質の含有量は、第1の物質を均一に樹脂粒子に浸透させやすい観点から、液の全体を基準として下記の範囲であってよい。第1の物質の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は、5質量%以上であってよい。第1の物質の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は、5質量%以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0041】
第1の物質及び水を含む液における第1の物質の含有量は、第1の物質を均一に樹脂粒子に浸透させやすい観点から、水100質量部に対して下記の範囲であってよい。第1の物質の含有量は、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は、5質量部以上であってよい。第1の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、11質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、又は、6質量部以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の量は、0.1~50質量部であってよい。
【0042】
第1の物質の量は、第1の物質を均一に樹脂粒子に浸透させやすい観点から、樹脂粒子100質量部に対して下記の範囲であってよい。第1の物質の量は、0.01質部以上、0.05質量部以上、0.8質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、又は、10質量部以上であってよい。第1の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、又は、1質量部以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の量は、0.01~50質量部であってよい。
【0043】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法における第2の混合工程では、第1の物質と重合反応する第2の物質を、第1の混合工程で得られた混合体に混合することにより、樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る。第2の混合工程では、樹脂粒子の表面において第1の物質と第2の物質とを接触させることが可能であり、第1の物質と第2の物質とを樹脂粒子の表面で重合反応させる。
【0044】
第2の混合工程における重合反応は、逐次重合反応又は連鎖重合反応であることが好ましく、粒子の凝集が発生し難いことが推定される観点から、逐次重合反応であることがより好ましい。逐次重合反応の場合、重合反応に重合開始剤が不要であるため、重合開始剤が粒子表面に表出し難く、粒子の凝集が更に抑制されると本発明者らは推測している。第1の物質と第2の物質との逐次重合反応の反応温度は、例えば15~200℃であってよい。
【0045】
第1の物質及び第2の物質の組み合わせとしては、ポリオール及びポリイソシアネート;アルデヒド及びフェノール化合物;ポリオール及び多価カルボン酸;多価アミン及び多価カルボン酸;フェノール化合物及び炭酸エステル;フェノール化合物及び炭酸クロリド等が挙げられる。第1の物質及び第2の物質は、これらの組み合わせにおけるいずれの物質であってもよい(例えば、第1の物質がポリオールであり、かつ、第2の物質がポリイソシアネートである態様であってよく、第1の物質がポリイソシアネートであり、かつ、第2の物質がポリオールである態様であってよい)。第1の物質は、水溶性である。第2の物質は、水溶性であってよく、水溶性でなくてもよい(難水溶性であってもよい)。「水溶性」とは、例えば、25℃のイオン交換水100gに対する溶解度が1g以上であることを意味する。
【0046】
ポリオールは、2以上の水酸基を有する化合物であればよく、ジオール、トリオール等を用いることができる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0047】
ポリイソシアネートは、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、ジイソシアネート、トリイソシアネート等を用いることができる。ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例えばトリレン-2,4-ジイソシアナート)、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
【0049】
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ナフトール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0050】
第1の物質及び第2の物質の組み合わせとしては、粒子の凝集を抑制しつつ被覆樹脂粒子を得やすい観点から、第1の物質がポリオールを含み、かつ、第2の物質がポリイソシアネートを含む態様、又は、第1の物質がアルデヒドを含み、かつ、第2の物質がフェノール化合物を含む態様が好ましい。
【0051】
第2の物質の混合方法としては、第2の物質を溶媒又は分散媒と混合した状態(溶液状態又は分散液状態)で、第1の混合工程で得られた混合体に混合する方法、第2の物質自体が液状(例えば溶融状態)又は固形状の状態で、第1の混合工程で得られた混合体に混合する方法などが挙げられる。溶媒としては、水、親水性溶媒(水と相溶する溶媒)、水及び親水性溶媒の混合溶媒等を用いることができる。親水性溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;エチレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;テトラヒドロフラン等のエーテルなどが挙げられる。分散媒としては、上述した炭化水素系分散媒を用いることができる。
【0052】
第2の物質を含有する液における第2の物質の含有量は、樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、液の全体を基準として下記の範囲であってよい。第2の物質の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であってよい。第2の物質の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は、10質量%以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0053】
第2の物質の量は、樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、樹脂粒子100質量部に対して下記の範囲であってよい。第2の物質の量は、0.01質部以上、0.05質量部以上、0.8質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、4.5質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、又は、10質量部以上であってよい。第2の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、又は、2質量部以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の量は、0.01~50質量部であってよい。
【0054】
第2の物質の量は、樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、第1の物質100質量部に対して下記の範囲であってよい。第2の物質の量は、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、50質量部以上、80質量部以上、100質量部以上、110質量部以上、119質量部以上、120質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、250質量部以上、又は、300質量部以上であってよい。第2の物質の量は、500質量部以下、400質量部以下、350質量部以下、300質量部以下、250質量部以下、200質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、119質量部以下、110質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、又は、50質量部以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の量は、1~500質量部であってよい。
【0055】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、第1の混合工程の前に、樹脂粒子を分散媒又は気体に分散させることにより樹脂粒子の分散体を得る工程(分散工程)を備えてよい。本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、第1の混合工程の前に、少なくとも水を含む溶媒に第1の物質を添加することにより、第1の物質及び水を含む液(例えば第1の物質の水溶液)を得る工程を備えてよい。
【0056】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、第2の混合工程で得られた粒子に脱水処理を施す脱水工程(乾燥工程)を備えてよい。脱水工程では、第2の混合工程で得られた粒子における水分の少なくとも一部を除去する。脱水工程では、加熱処理を施すことにより脱水処理を施してよい。加熱温度は、例えば100~150℃であってよい。
【実施例
【0057】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
<評価用粒子の作製>
(実施例1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン293g、及び、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(分散剤、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤をn-ヘプタンに溶解させた後、混合物を50℃まで冷却した。
【0059】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより75モル%のアクリル酸を中和した。その後、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第1段目の水溶液を調製した。
【0060】
そして、上述の第1段目の水溶液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n-ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加することにより反応液を得た。そして、撹拌機の回転数550rpmで反応液を撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬させることにより反応液を昇温し、重合反応を60分間進行させることにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0061】
次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することにより75モル%のアクリル酸を中和した。その後、アクリル酸水溶液が入ったビーカーに、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.103g(0.381ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0062】
次に、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を25℃に冷却し、上述の第2段目の水溶液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、フラスコ内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、第2段目の重合反応を60分間行うことにより含水ゲル状重合体を得た。
【0063】
その後、125℃に設定した油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により257.7gの水を系外へ抜き出した。次いで、上記フラスコを引き上げた後、その下部が油浴にわずかに接している状態で内温を83℃に調節した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加した後、内温を83℃で2時間保持した。
【0064】
その後、125℃に設定した油浴にフラスコを再度浸漬して昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら245gの水を系外へ抜き出した。そして、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって乾燥物(重合物)を得た。この乾燥物を目開き850μmの篩に通過させることにより、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂粒子(被コーティング体)236.8gを得た。
【0065】
モノマー種Aの溶液として、ポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製、DKポリオール3817)4.0g及びイオン交換水76.0gの混合液(ポリオール水溶液)80.0gを調製した。また、モノマー種Bの溶液として、トリレン-2,4-ジイソシアナート1.9g及びアセトン17.1gの混合液(イソシアネート溶液)19.0gを調製した。
【0066】
次に、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、上述の吸水性樹脂粒子(逆相懸濁重合法により得られた吸水性樹脂粒子、被コーティング体)40.0gを加えた。その後、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン480gを加えた後に1000rpmで撹拌することにより、分散体である分散液を得た。
【0067】
この分散液に上述のモノマー種Aの溶液80gを添加した後、室温で30分間撹拌した。続いて、上述のモノマー種Bの溶液19.0gを添加した後、室温で120分間撹拌することにより、吸水性樹脂粒子の表面で逐次重合反応を進行させて反応物を得た。
【0068】
その後、125℃の油浴で反応物を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら76gの水を系外へ抜き出した。そして、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させさせることによって乾燥物(重合物)を得た。この乾燥物を目開き850μmの篩に通過させることにより、評価用粒子として、ポリウレタンにより吸水性樹脂粒子がコーティングされて得られた被覆樹脂粒子38.2gを得た。
【0069】
(実施例2)
モノマー種Aの溶液を37質量%ホルムアルデヒド水溶液1.08g及びイオン交換水6.92gの混合液8.0gに変更し、モノマー種Bの溶液をフェノール1.26g及びアセトン11.34gの混合液12.6gに変更したこと以外は実施例1と同様に行うことにより評価用粒子として被覆樹脂粒子を作製した。
【0070】
(実施例3)
撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに509.71g(7.07モル)の100%アクリル酸を入れた。このアクリル酸を撹拌しながら、セパラブルフラスコ内にイオン交換水436.47gを加えた。その後、氷浴(1℃)下で444.68gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより単量体濃度45.08質量%のアクリル酸部分中和液(中和率:75.44モル%)1390.86gを調製した。本操作を3回繰り返し、後述の重合に用いた。
【0071】
上述のアクリル酸部分中和液2781.72gにイオン交換水406.89g及びポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)2.90g(5.576ミリモル)を加えて反応液(単量体水溶液)を得た。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間窒素ガス置換した。次いで、温度計、窒素吹込み管、開閉可能な蓋、2本のシグマ型羽根及びジャケットを備えるステンレス製双腕型ニーダーに上述の反応液を供給した後、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、2.0質量%の過硫酸ナトリウム水溶液92.63g(7.780ミリモル)及び0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液15.85gを加えた。約1分後に温度が上昇し始め、重合が開始した。6分後に重合中の最高温度は93℃を示した。その後、ジャケット温度を60℃に保ちながら撹拌し続け、重合を開始してから60分後に含水ゲルを取り出した。得られた含水ゲルを喜連ローヤル社製のミートチョッパー12VR-750SDXに順次投入し、細分化した。ミートチョッパーの尖端に位置するプレートの穴の径は6.4mmであった。
【0072】
この細分化された粒子状含水ゲルを目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げた後、160℃で60分間熱風乾燥することによって乾燥物を得た。
【0073】
次いで、遠心粉砕機(Retsch社製、ZM200、スクリーン口径1mm、12000rpm)を用いて乾燥物を粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子を得た。さらに、この吸水性樹脂粒子を目開き850μmの金網、目開き250μmの金網及び目開き180μmの金網で分級することにより、目開き850μmの金網を通過し、かつ、目開き250μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子を得た。
【0074】
この吸水性樹脂粒子(水溶液重合法により得られた吸水性樹脂粒子)を被コーティング体として用いたこと以外は実施例1と同様に行うことによって当該吸水性樹脂粒子をポリウレタンによりコーティングすることで評価用粒子として被覆樹脂粒子を作製した。
【0075】
(実施例4)
モノマー種Aの溶液をポリエーテルポリオール(AGC株式会社製、EXCENOL750ED)0.4g及びイオン交換水7.6gの混合液8.0gに変更し、モノマー種Bの溶液をトリレン-2,4-ジイソシアナート0.48g及びアセトン4.28gの混合液4.76gに変更し、被コーティング体を吸水性樹脂粒子から水溶性樹脂粒子であるヒドロキシエチルセルロース(住友精化株式会社製、AH-15)に変更したこと以外は実施例1と同様に行うことにより評価用粒子として被覆樹脂粒子を作製した。
【0076】
(比較例1)
モノマー種Aの溶液をポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製、DKポリオール3817)4.0g及びアセトン76.0gの混合液80.0gに変更したこと以外は実施例1と同様に行うことにより評価用粒子を作製した。
【0077】
(比較例2)
撹拌機(翼径10cmの錨型撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、実施例1と同様の吸水性樹脂粒子40.0gを加えた。
【0078】
上述のセパラブルフラスコ中の吸水性樹脂粒子を錨型撹拌翼によって室温中、300rpmで撹拌しながら、実施例1と同様のモノマー種Aの溶液80gをハンディスプレーにより10分間かけて吸水性樹脂粒子に噴霧した。なお、吸水性樹脂粒子は錨型撹拌翼によって撹拌されたものの分散状態には至らなかった。その後、実施例1と同様のモノマー種Bの溶液19gをハンディスプレーにより10分間かけて吸水性樹脂粒子に噴霧することにより、吸水性樹脂粒子の表面で逐次重合反応を進行させて反応物を得た。
【0079】
その後、反応物を縦19cm、横23cm、深さ4cmの金属製トレーに移した。105℃に設定した熱風乾燥機により反応物を30分間乾燥することによって乾燥物(重合物)を得た。この乾燥物を目開き850μmの篩に通過させることにより、評価用粒子として、ポリウレタンによりコーティングされた被覆樹脂粒子3.6gを得た。
【0080】
<中位粒子径の測定>
上述の各実施例及び比較例2の被覆樹脂粒子(評価用樹脂)並びに被コーティング体の中位粒子径を下記手順により測定した。
すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き400μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて10分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
各実施例の被覆樹脂粒子の中位粒子径は、413μm(実施例1)、355μm(実施例2)、376μm(実施例3)、167μm(実施例4)であった。比較例2の被覆樹脂粒子の中位粒子径は、850μmを超えていた。実施例1,2及び比較例2の被コーティング体の中位粒子径は357μmであった。実施例3の被コーティング体の中位粒子径は358μmであった。実施例4の被コーティング体の中位粒子径は152μmであった。
実施例1~4では、被コーティング体の中位粒子径に対して被覆樹脂粒子の中位粒子径が大きく変化していないことから、被覆樹脂粒子が凝集していないことが確認された。一方、比較例2では、被コーティング体の中位粒子径に対して被覆樹脂粒子の中位粒子径が大きく変化していることから、被覆樹脂粒子が凝集していることが確認された。比較例2では、被コーティング体(吸水性樹脂粒子)を分散体としなかったため、凝集が発生したと思われる。
【0081】
<評価用粒子の状態観察>
走査電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社(JEOL)製、JSM-6390LA)を用いて評価用粒子の状態を観察した。サンプルステージ上に両面カーボンテープの一方面を貼り付けた後、両面カーボンテープの一方面の他方面に評価用粒子を載せた。加速電圧15kV、動作距離10mmに設定し、評価用粒子を100倍及び500倍の倍率で観察した。図2~7は、実施例1~4及び比較例1~2の評価用粒子のSEM写真を示す図面である。図中、(a)は100倍の写真であり、(b)は500倍の写真である。
【0082】
観察結果によれば、比較例1では、粒子を被覆せず存在する重合反応物であると推測される白い物質がSEM写真において観察されており、被コーティング体である樹脂粒子の表面に被覆部が形成されていないことが確認された。比較例1では、第1の物質(ポリエーテルポリオール)を含む液に水が含まれていないことから、第1の物質が被コーティング体(吸水性樹脂粒子)の表面に充分に保持されず、被覆部が形成されなかったと思われる。
実施例1~4では、白い物質が観察されておらず、被コーティング体である樹脂粒子の表面に被覆部が形成されて被覆樹脂粒子が得られていることが確認された。
比較例2では、白い物質が観察されておらず、被コーティング体である樹脂粒子の表面に被覆部が形成されて被覆樹脂粒子が得られているものの、上述の中位粒子径の測定結果で確認されたように、被覆樹脂粒子が凝集していることが確認された。
【0083】
<粘性挙動の評価>
500mLポリビーカーにイオン交換水を250mL加えた。ジャーテスター(株式会社宮本製作所製、MJS-10H)に上述のビーカーを置いた後、イオン交換水を400rpmで撹拌させながら、実施例4の評価用粒子(被覆樹脂粒子)5gをビーカーに徐々に投入して均一分散させて分散液を得た。粒子の投入開始から2分以内に粒子の全量の投入を完了した。投入が完了した時点での分散液の粘度を粘度計(芝浦セムテック株式会社製、ビスメトロン VS-H1型)で測定し、0分値の粘度(25℃)を得た。その後、分散液を240rpmで撹拌しつつ5分、10分、30分及び60分後の分散液の粘度(25℃)を得た。
【0084】
実施例4の評価用粒子(被覆樹脂粒子)に代えて実施例4の樹脂粒子(被コーティング体)を用いて同様に粘度を測定した。
【0085】
実施例4の評価用粒子を用いた場合の粘度は、16mPa・s(0分)、108mPa・s(5分)、476mPa・s(10分)、790mPa・s(30分)、804mPa・s(60分)であった。実施例4の樹脂粒子を用いた場合の粘度は、8mPa・s(0分)、488mPa・s(5分)、848mPa・s(10分)、920mPa・s(30分)、932mPa・s(60分)であった。樹脂粒子を被覆部で被覆することにより粘性挙動を変化させることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0086】
1…被覆樹脂粒子、1a…樹脂粒子、1b…コーティング層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7