(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】高性能の真空絶縁グレージングユニット
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20230828BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20230828BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
E06B3/663 A
E06B3/663 E
E06B3/677
(21)【出願番号】P 2020565756
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2019063196
(87)【国際公開番号】W WO2019224238
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ベン トラド, アブデッラゼク
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフィル, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, ピエール
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064982(JP,A)
【文献】特表2010-513197(JP,A)
【文献】特開平11-228189(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093321(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322461(US,A1)
【文献】特表2014-525387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
E06B 3/663
E06B 3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面面積を含む真空絶縁グレージングユニット(VIG)(1)であって、前記真空絶縁グレージングユニットが、
(a)第1のガラス板(1a)及び第2のガラス板(1b)と、
(b)前記平面面積にわたって分布され、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に位置付けられ、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の距離を維持するk個の離隔スペーサ(Pi)であって、前記離隔スペーサ(Pi)のそれぞれが、セル面積(Ai)を有するセル(Ri)を画定し、前記セル(Ri)が、全ての前記離隔スペーサと関連した前記セルと組み合わされてボロノイ分割を形成し、前記ボロノイ分割がセル面積分布によって特徴づけられ、但しk∈N及びk>8である、k個の離隔スペーサ(Pi)と、
(c)前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の距離を密封する周囲接着シール(4)であって、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に閉囲され、前記平面面積を画定する前記周囲接着シールの内周によって囲まれた内部容積Vを画定する周囲接着シール(4)とを含み、但し前記内周が、縦軸X1に沿った長さLにわたって、及び前記縦軸X1に垂直な横軸X2に沿った幅Wにわたって延在する実質的に矩形の幾何形状を有し、L≧Wであり、前記内部容積が真空下にあり、
前記平面面積が以下のように、すなわち
・4つの角領域(B)であって、それぞれが、半径Rbの円の4分の1の幾何形状を有し、但しRb<W/2であり、それぞれが、前記周囲シールの前記矩形の内周の角に中心を持つ、4つの角領域(B)と、
・前記4つの角領域を除く前記平面面積を覆う補完領域(A)とに分割され、前記補完領域(A)が、それ自体、
・第1の角領域と第2の角領域との間に延在する第1の縦ストリップ領域(AL)、及び第3の角領域と第4の角領域との間に延在する第2の縦ストリップ領域(AL)であって、各縦ストリップ領域が、前記平面面積の縦縁部に隣接する前記縦軸X1に沿って延在し、前記縦縁部から0.1Wに等しい、横軸X2に沿って測定された幅を有する、第1の縦ストリップ領域(AL)及び第2の縦ストリップ領域(AL)と、
・前記第1の角領域と前記第3の角領域との間に延在する第1の横ストリップ領域(AW)、及び前記第2の角領域と前記第4の角領域との間に延在する第2の横ストリップ領域(AW)であって、各横ストリップ領域が、前記平面面積の横縁部に隣接する前記横軸X2に沿って延在し、前記横縁部から0.1Wに等しい、前記縦軸X1に沿って測定された幅を有する、第1の横ストリップ領域(AW)及び第2の横ストリップ領域(AW)と、
・前記第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)並びに前記第1及び第2の横ストリップ領域(AW)を切り取った前記補完領域(A)の前記面積を覆う中心領域(AC)とに分割されているものにおいて、
前記4つの角領域(B)のそれぞれに置かれた前記セルの前記セル面積分布の第10のパーセンタイルS
B10は、それぞれが前記中心領域(AC)、並びに前記第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれ、並びに/又は前記第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれた前記セルの前記セル面積分布の第10のパーセンタイルS
AC10、及びS
AL10及び/又はS
AW10より小さく、前記中心領域(AC)に置かれた前記セルの前記セル面積分布の第10のパーセンタイルS
AC10は、前記第1及び第2の縦及び横ストリップ領域(AL、AW)の前記第10のパーセンタイルS
AL10及びS
AW10以上であり、
S
B10、S
AL10、及びS
AW10の前記値は、前記内周に隣接した全ての前記セルの前記セル面積を無視して決定され、セル(Ri)が、領域(AC、AL、AW、B)に閉囲されており、
・前記対応する離隔スペーサ(Pi)が前記領域内に含まれる場合、又は
・前記対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっている場合、前記セル(Ri)は、前記セル面積(Ai)の最大の断片を含む前記領域に閉囲され、
・前記対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっており、前記セル面積が前記2つの領域の間で均等に分布されている場合、前記セル面積は、前記第10のパーセンタイルS
B10、S
AC10、S
AL10、及びS
AW10の決定には無視さ
れ、
前記中心領域(AC)に置かれた前記セルの前記セル面積分布の第90のパーセンタイルS
AC90
は、前記4つの角領域(B)のそれぞれに置かれた前記セルの前記セル面積分布の前記第10のパーセンタイルS
B10
のm倍より大きく(S
AC90
>mS
B10
)、m≧2.0である、真空絶縁グレージングユニット。
【請求項2】
前記内周に隣接する前記4つの角領域(B)のそれぞれに置かれた全ての前記セルの前記セル面積は、それに直接隣接する全ての前記セルの前記セル面積以下である、請求項1に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項3】
Rbは、前記幅Wの20%~40%、典型的には前記幅Wの30%±5%であり、好ましくは前記長さLの15%~35%であり、より好ましくは80~400mm、さらに好ましくは100~300mmである、請求項1
又は2に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項4】
S
B10は、20~5000mm
2、好ましくは25~3600mm
2、より好ましくは100~2500mm
2、最も好ましくは150~900mm
2である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項5】
S
AC10
は、50~9000mm
2、好ましくは100~7200mm
2、より好ましくは400~5000mm
2、最も好ましくは500~1800mm
2である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項6】
前記第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれ、及び/又は前記第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれた前記セルの前記セル面積分布の第90のパーセンタイルS
AL90及びS
AW90は、それぞれが前記中心領域(AC)に置かれた前記セルの前記セル面積分布の第90のパーセンタイルS
AC90より小さい、請求項1~
5のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項7】
縦又は横ストリップ領域(AL、AW)内に含まれるボロノイセルの前記セル面積の前記第10のパーセンタイルS
AL10、S
AW10は、25~9000mm
2、好ましくは36~7200mm
2、より好ましくは121~5000mm
2である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項8】
前記平面面積の対角線を遮る前記セル面積(Ai)は、前記平面面積の角から前記中心(c)へと単調に増加し、任意選択で前記平面面積の縁部に隣接する前記セルを無視して、一定値の1つ又は複数のプラトーを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項9】
前記第1及び第2のガラス板の少なくとも1つは、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸ガラス又はホウケイ酸ガラスから作られる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項10】
前記第1及び第2のガラス板はそれぞれ、内部表面及び外部表面を有し、前記内部表面は前記内部容積Vに面し、前記内部表面及び外部表面の少なくとも1つは、少なくとも熱線反射フィルム又は低放射率フィルムを備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項11】
前記第1のガラス板及び第2のガラス板はそれぞれ、外部表面を有し、前記外部表面は、前記真空絶縁グレージングユニットの外部に面し、前記外部表面の少なくとも1つは、積層アセンブリを形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって少なくとも1つのガラスシートに積層される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項12】
前記第1及び第2のガラス板の前記外部表面の少なくとも1つは、周囲スペーサバーを介して前記真空絶縁グレージングユニットの前記周囲に沿って第3のガラス板に結合されて、周囲縁部シールによって密封された絶縁空洞を生成する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の真空絶縁ガラスを生産するための方法であって、前記方法は、以下のステップ、すなわち
・公知の機械的及び熱的特性の、並びに所与の厚さdの第1及び第2のガラス板(1a、1b)を準備することと、
・大気圧応力の最大許容量をもたらすための最大ボロノイセル面積Ai_maxを計算することと、
・中心領域(AC)内で前記最大ボロノイセル面積Ai_maxによって特徴づけられる離隔スペーサ分布を画定し、前記中心領域(AC)内で離隔スペーサのこのセル面積分布の第10のパーセンタイルS
AC10を決定することと、
・前記中心領域(AC)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の前記第10のパーセンタイルS
AC10以下である、前記縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の前記第10のパーセンタイルS
AL10、S
AW10によって特徴づけられる、前記第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)内並びに前記第1及び第2の横ストリップ領域(AW)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・前記中心領域(AC)並びに前記縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の前記第10のパーセンタイルS
AC10、S
AL10、及びS
AW10より低い、各角領域(B)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の第10のパーセンタイルS
B10によって特徴づけられる、4つの角領域(B)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・前述の離隔スペーサ分布に従って、前記第1のガラス板(1a)の表面にk個の離隔スペーサを位置付け、前記表面に周囲接着シール(4)を付与して矩形平面面積の周囲を画定することと、
・前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間にギャップを残して、前記周囲接着シールによって囲まれた、前記k個の離隔スペーサ及び周囲接着シール(4)の上の前記第2のガラス板(1b)を結合することと、
・圧力を0.1ミリバール未満に低下させるために、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の前記ギャップから気体を排出することとを含み、
S
B10は、前記矩形平面面積の縁部に隣接するセルを無視して決定され、S
AL10及びS
AW10は、前記矩形平面面積の縁部に隣接するセルを無視して決定される、方法。
【請求項14】
以下のステップ、すなわち
・前記中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサの前記セル面積の第90のパーセンタイルS
AC90を決定することと、
・前記中心領域(AC)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の前記第90のパーセンタイルS
AC90の1/m倍以下である、各角領域(B)に置かれた前記離隔スペーサの前記セル面積の第10のパーセンタイルS
B10によって特徴づけられる、前記4つの角領域(B)内の離隔スペーサ分布を画定することを含み、
m≧1.6、好ましくはm≧1.8、より好ましくはm≧2.0である請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的には高い断熱特性を有する真空絶縁グレージングユニット(VIG)に関する。第1のガラス板を第2のガラス板から離したままにするために使用される離隔スペーサの数は低減され、VIGの表面にそれらを分布することは、その断熱性能を向上し、VIGが内部環境と外部環境との間の高い温度差に曝された時であっても、機械的安定性を確保するために最適化される。
【背景技術】
【0002】
真空絶縁グレージングユニットは、典型的には間に配置された「真空」、すなわち大気圧より低い圧力空間を有する2つの離間したガラスのシート又は板を含む。これらのシートは、周辺接着シール及び、スペーサ又はピラーとも呼ばれる、支持する離隔スペーサの配列によって相互接続され、スペーサ又はピラーは、前記シートを一定の離間距離、典型的には50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~150μmの範囲に保持する。
【0003】
低圧に排気した窓の設計及び生産の取り扱いにはいくつかの問題があり、例えば低レベルの真空を達成し、それを長時間にわたって維持するために、極めて低い気体透過性を有し、長時間にわたって無視できる程度のガスしか放出しない材料を使用して、窓の周囲を中心にシールを作る必要がある。加えて、離隔スペーサの配列が、大気圧に耐えるのに十分な機械的強度を確保する一方で、離間したガラス板を維持するために、ガラスシートの間に与えられなければならない。
【0004】
VIG内で、第1のガラス板は、内部表面及び外部表面を有する。第2のガラス板は、内部表面及び外部表面を有する。内部表面は、VIGの内部容積に面し、スペーサと接触する。外部表面は、VIGの外部に面する。
【0005】
VIGがその耐用期間中に曝される荷重への抵抗は、満たさなければならない必須要件である。衝撃のような偶発的荷重を除いて、VIGは、主に2つのタイプの荷重、すなわち大気圧応力σpを誘発する大気圧荷重、及び第1のガラス板の外部表面と第2のガラス板の外部表面との間(例えば内部環境と外部環境との間、又は寒い部屋と暖かい部屋との間)のVIGの厚さを横切る温度差によって起こる熱膨張誘発荷重に曝される。熱膨張誘発荷重は、前記ガラス板の表面に熱応力σtを発生する。
【0006】
高い断熱特性のVIGを設計する本発明の目的のために、ガラス板の表面の引張応力のみが考慮されている。事実、当業者に公知であるように、引張応力は、ガラス板内の亀裂形成の主な原因であり、これは最終的に破断点をもたらす。更に、外部表面上の引張応力のみが考慮される。事実、VIGの内部容積は真空下にあり、従って本質的に水がない。VIGの内部表面は、こうして湿気又は水蒸気に曝されないので、外部表面より実質的に機械的に安定していることが、当業者にはよく知られている。
【0007】
大気圧応力
大気圧応力は、離隔スペーサの上のVIGを構成するガラス板の外部表面に約105Pa(大気圧)の均一な圧力を加えたことによるものである。なぜなら、板の内部表面は真空に曝されるが、板の外部表面は大気圧に曝されてシートが互いに向かって曲がるからである。しかし、2つのガラス板を分離する離隔スペーサが存在すると、2つのガラス板の接触を防げるが、各離隔スペーサの上のガラス板の外部表面に永久に引張応力を誘発する。ガラス板の外部表面の離隔スペーサPiの上に発生される大気圧応力σpiは、よく知られている。ピッチλによって互いから分離された離隔スペーサの正方形配列に対して、この応力は、式σp=0.11λ2/d2[MPa]によって特徴づけられることができ、dはガラス板の厚さである。例えば厚さd=5mmの第1及び第2のガラス板、及びピッチλ=30mmの正方形配列に配置された離隔スペーサから構成されたVIGの外部表面に加えられる(引張)大気圧応力は、約4MPaのオーダであることができる。大気圧応力σpiの分布は、各スペーサの上に置かれた離散面積から構成される。単位面積当たりのスペーサの数は非常に高いので、また、計算及び表示を簡素化するために、大気圧応力σpiの分布は、本明細書では大気圧応力σpの連続した分布として取り扱う。例えばピッチλ=20mmの正方形配列に配置されたスペーサを備えた1000x1000mmのVIGは、k=2500のスペーサを含む。
【0008】
方程式からσpについて、ピッチλが低減する時、又は換言すると離隔スペーサの数が増加する時、離隔スペーサの上に誘発される大気圧応力が低減することが分かる。しかし、各離隔スペーサは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に熱橋を形成する。離隔スペーサが低い伝導性材料から作成されても、離隔スペーサを通る熱伝導率は、常に真空ギャップ間より高い。従って離隔スペーサの数を増加することにより、VIGの断熱が低減する。
【0009】
厳密に言えば、「ピッチλ」は、離隔スペーサの正方形配列を特徴づけるために使用されるに過ぎない。簡潔にするために、「ピッチλ」の定義は、本文書では所与のスペーサをその隣接スペーサのいずれかから分離する最短距離として、スペーサのいずれかの配置に対して拡大される。この「非公式の」定義は、正方形配列に適用可能な元の定義を尊重し、離隔スペーサのいずれかの配置の少なくとも部分的な特徴づけを可能にする。
【0010】
熱誘発応力
熱誘発応力は、例えば周囲接着シール(4)のため、又はVIGの周囲を締め付ける枠のために、第1及び第2のガラス板が互いに対して自由に動かない時に、第1のガラス板の外部表面の温度T1と第2のガラス板の外部表面の温度T2との間に温度差があるとすぐに生じる。熱応力は、温度T1とT2との差が増加するにつれて増加する。熱応力σtは、例えばVIGが内部空間と外部空間との間の過酷な温度差に曝される時(典型的にはVIGが内部を外部環境から分離する時)に、ガラス板上に誘発する可能性がある。ほとんどの過酷な条件では、内部温度と外部温度との差は、40℃以上に達する可能性がある。温度差に曝された時、2つのガラス板は異なる膨張の仕方をする。ガラス板は、一方では周囲接着シールのため、また、他方ではVIGを締め付ける枠のために、互いに対して自由に動かないので、VIGの2つのガラス板の異なる熱膨張により板が曲がり、従って応力を生み出す。大気圧応力と違い、VIGの外部表面の上の熱応力σtを特徴づける解析方程式はなく、熱応力σtは離隔スペーサの数及び配置に依存しない。続いて、熱応力σtは、高温に曝された第1の板の外部表面の温度勾配によって誘発された引張応力を指し、温度勾配は、VIGの第1の板が高温に曝され、第2の板が低温に曝されることによって生み出される。
【0011】
離隔スペーサは、少なくとも大気圧荷重に対する機械的安定性を確保するために、VIGを構成するガラス板の内部表面の上に分布されなければならない。ほとんどのVIGは、今までのところ周期パターン、典型的には正方形、中心を持つ(centred)正方形、又は(中心を持つ)六角形のパターンに従って分布された離隔スペーサを有する。しかし、大気圧応力に加えて曝される熱応力は、平面表面に均質に分布されない。その結果、規則的な周期パターンに従って離隔スペーサを分布することは、最適な選択肢でない可能性がある。
【0012】
独国実用新案第202011101242U1号明細書は、内方に渦巻く楕円形螺旋に沿って延在する(中心を持つ)六角形に配置されたスペーサの分布を備えたVIGについて記載している。この配置は、グレージングの中心に加えられた強い荷重によって生成された応力場のパターンにほぼ従うように記載されている。重要なのは、中心を持つ六角形に配置されたスペーサで縁部を補強することである一方で、離隔スペーサは、真空絶縁グレージングの中心領域に六角形に(中心を持たずに)配置されることである。前記実用新案に記載された離隔スペーサの分布は、熱応力場のパターンに従わないように思われる。
【発明の概要】
【0013】
上に論じたように、離隔スペーサは、存在するスペーサと同じ数の熱橋を2つのガラス板の間に形成するので、VIGの熱特性に弊害をもたらす。従って、断熱を高めるために離隔スペーサの数を低減し、機械的安定性を確保するために真空絶縁グレージングの表面にわたってそれらの分布を最適化することが望ましい。本発明は、離隔スペーサの分布を真空絶縁グレージングの面積にわたる熱応力の分布と一致させることを提案する。このために、熱応力分布は、より高いレベルの応力に曝される面積をより低いレベルの応力に曝される面積から区別するために、有限要素法(fem)によって数値的に特徴づけられる。本発明のこの態様及び他の態様について、以下の章でより詳細に記載する。
【0014】
添付の独立請求項は、本発明を規定する。従属請求項は、好ましい実施形態を規定する。具体的には本発明は、平面面積(平面領域)を含む真空絶縁グレージングユニット(VIG)に関し、
真空絶縁グレージングユニットが、
(a)第1のガラス板及び第2のガラス板と、
(b)平面面積にわたって分布され、第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を維持するk個の離隔スペーサ(discrete spacer)(Pi)であって、離隔スペーサ(Pi)のそれぞれが、セル面積(Ai)を有するセル(Ri)を画定し、セル(Ri)が、全ての離隔スペーサと関連したセルと組み合わされてボロノイ分割(tessellation)を形成し、ボロノイ分割がセル面積分布によって特徴づけられ、但しk∈N及びk>8である、k個の離隔スペーサ(Pi)と、
(c)第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を密封する周囲接着シール(4)であって、第1のガラス板と第2のガラス板との間に閉囲され、平面面積を画定する周囲接着シールの内周によって囲まれた内部容積Vを画定する周囲接着シール(4)とを含む。但し内周が、縦軸X1に沿った長さLにわたって、及び縦軸X1に垂直な横軸X2に沿った幅Wにわたって延在する実質的に矩形の幾何形状を有し、L≧Wであり、内部容積が真空下にある。
【0015】
平面面積は以下のように、すなわち
・4つの角領域(B)であって、それぞれが、半径Rbの円の4分の1の幾何形状を有し、但しRb<W/2であり、それぞれが、周囲シールの矩形の内周の角に中心を持つ、4つの角領域(B)と、
・4つの角領域を除く平面面積を覆う補完領域(A)とに分割され、補完領域(A)が、それ自体、
・第1の角領域と第2の角領域との間に延在する第1の縦ストリップ領域(AL)、及び第3の角領域と第4の角領域との間に延在する第2の縦ストリップ領域(AL)であって、各縦ストリップ領域が、平面面積の縦縁部に隣接する縦軸X1に沿って延在し、縦縁部から0.1Wに等しい、横軸X2に沿って測定された幅を有する、第1の縦ストリップ領域(AL)及び第2の縦ストリップ領域(AL)と、
・第1の角領域と第3の角領域との間に延在する第1の横ストリップ領域(AW)、及び第2の角領域と第4の角領域との間に延在する第2の横ストリップ領域(AW)であって、各横ストリップ領域が、平面面積の横縁部に隣接する横軸X2に沿って延在し、横縁部から0.1Wに等しい、縦軸X1に沿って測定された幅を有する、第1の横ストリップ領域(AW)及び第2の横ストリップ領域(AW)と、
・第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)並びに第1及び第2の横ストリップ領域(AW)を切り取った補完領域(A)の面積を覆う中心領域(AC)とに分割されている。
【0016】
4つの角領域(B)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSB10は、それぞれが中心領域(AC)、並びに第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれ、及び/又は第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれた、セルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10及びSAL10及び/又はSAW10より小さく、SB10、SAL10、及びSAW10の値は、内周に隣接した全てのセルのセル面積を無視して決定される。
【0017】
中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10は、第1及び第2の縦及び横ストリップ領域(AL、AW)の第10のパーセンタイルSAL10及びSAW10以上でなければならない。
【0018】
セル(Ri)は、領域(AC、AL、AW、B)に閉囲され、
・対応する離隔スペーサ(Pi)が領域内に含まれる場合、又は
・対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっている場合、セル(Ri)は、セル面積(Ai)の最大の断片を含む領域に閉囲され、
・対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっており、セル面積が2つの領域の間で均等に分布される場合、前記セル面積は、第10のパーセンタイルSB10、SAC10、SAL10、及びSAW10の決定には無視される。
【0019】
好ましい実施形態では、内周に隣接する4つの角領域(B)のそれぞれに置かれた全てのセルのセル面積は、それに直接隣接する全てのセルのセル面積以下である。真空絶縁グレージングを支持する枠のタイプに依存して、高い熱応力は、角領域の縁部の近隣に集中することがある。これらの領域におけるセル面積を低減することにより、大気圧応力の一部からガラス板を解放する。
【0020】
熱応力は、角領域(B)内より中心領域(AC)内で実質的に低いことがあり得るので、中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第90のパーセンタイルSAC90は、4つの角領域(B)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSB10のm倍より大きく(SAC90>mSB10)、m≧1.6、好ましくはm≧1.8、より好ましくはm≧2.0である。
【0021】
Rbの値は、実際に真空絶縁グレージングの耐用期間中に予想される熱応力のレベルに依存する。内部環境と外部環境との間の過酷な温度差に曝される真空絶縁グレージングにとって、熱応力のレベルが高い角領域はより広くなり、より高い値のRbをもたらす。実際には、Rbは、幅Wの20%~40%、典型的には幅Wの30%±5%であり、長さLの15%~35%であることが好ましい。実寸に関して、Rbは、80~400mm、より好ましくは100~300mmであることができる。
【0022】
角領域(B)に置かれたセルのセル面積の第10のパーセンタイルSB10は、20~5000mm2、好ましくは25~3600mm2、より好ましくは100~2500mm2、最も好ましくは150~900mm2であることが好ましい。それとは対照的に、中心領域(C)に置かれたセルのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10は、50~9000mm2、好ましくは100~7200mm2、より好ましくは400~5000mm2、最も好ましくは500~1800mm2であることが好ましい。
【0023】
熱応力は、中心領域内よりVIGの縁部において高いので、第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれ、及び/又は第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第90のパーセンタイルSAL90及びSAW90は、それぞれが中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第90のパーセンタイルSAC90より小さいことが好ましい。
【0024】
平面面積の対角線を遮るセル面積(Ai)は、好ましくは平面面積の角から中心へと単調に増加し、任意選択で平面面積の縁部に隣接するセルを無視して、一定値の1つ又は複数のプラトーを含む。
【0025】
本発明は、真空絶縁ガラスユニットを生成するための方法にも関し、前記方法は、以下のステップ、すなわち
・公知の機械的及び熱的特性、並びに所与の厚さdの第1及び第2のガラス板(1a、1b)を準備することと、
・大気圧応力の最大許容値をもたらすための最大ボロノイセル面積Ai_maxを計算することと、(但しVIGの各ガラス板は、例えば前記離隔スペーサのボロノイセル面積に基づいて離隔スペーサの上に誘発された大気圧応力を概算し、あらゆるタイプの離隔スペーサの配置にも適用できる、本発明者らによって提案された方程式σp=0.11Ai_max/dj2[MPa]を使用して抵抗することができ、djは第1又は第2のガラス板の厚さである(j=1又は2)。離隔スペーサの正方形配列の配置について、ボロノイセル面積Ai=λ2であり、λはピッチである。前記方程式のAi_maxをλmax2に置換することにより、文献に提案されているようにσp=0.11λmax2/d2[MPa]をもたらす。)
・中心領域(AC)内で最大ボロノイセル面積Ai_maxによって特徴づけられる離隔スペーサ分布を画定し、中心領域(AC)内で離隔スペーサのこのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10を決定することと、
・中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10以下である、縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAL10、SAW10によって特徴づけられる、第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)内並びに第1及び第2の横ストリップ領域(AW)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・中心領域(AC)並びに縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10、SAL10、及びSAW10より低い、各角領域(B)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSB10によって特徴づけられる、4つの角領域(B)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・前述の離隔スペーサ分布に従って、第1のガラス板(1a)の表面にk個の離隔スペーサを位置付け、表面に周囲接着シール(4)を付与して矩形平面面積の周囲を画定することと、
・第1のガラス板と第2のガラス板との間にギャップを残して、周囲接着シールによって囲まれた、k個の離隔スペーサ及び周囲接着シール(4)の上の第2のガラス板(1b)を結合することと、
・圧力を0.1ミリバール未満に低下させるために、第1のガラス板と第2のガラス板との間のギャップから気体を排出することとを含み、
SB10は、矩形平面面積の縁部に隣接するセルを無視して決定され、SAL10及びSAW10は、矩形平面面積の縁部に隣接するセルを無視して決定される。
【0026】
方法は、以下のステップ、すなわち
・中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第90のパーセンタイルSAC90を決定することと、
・中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第90のパーセンタイルSAC90の1/m倍以下である、各角領域(B)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSB10によって特徴づけられる、4つの角領域(B)内の離隔スペーサ分布を画定することを更に含むことができ、m≧1.6、好ましくはm≧1.8、より好ましくはm≧2.0である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の性質をより完全に理解するために、以下の詳細な説明を添付図面とともに参照する。
【
図1】
図1(a)は、真空絶縁グレージングユニット(VIG)の正面図を示し、
図1(b)は、VIGの角における
図1(a)の拡大図を示し、
図1(c)は、断面図を示す。
【
図3】
図3(a)は、離隔スペーサの中心を持つ六角形に対するボロノイ分割の例を示し、
図3(b)は、離隔スペーサのランダム分布に対するボロノイ分割の例を示す。
【
図4】
図4は、4つの角領域(B)、中心領域(AC)、並びに縦及び横ストリップ領域(AL、AW)を備える、本発明によるVIGのセル面積分布を特徴づけるために使用される平面面積の分割を示す。
【
図5】
図5(a)は、本発明による離隔スペーサ分布を含むVIGの例の正面図を示し、
図5(b)は、対応するボロノイセル及び領域を備えた同じ図を示す。
【
図6】
図6は、グラフに示した第10、第50、及び第90のパーセンタイルを備えたセル面積分布を示す。
【
図7】
図7は、各領域内の様々なセル幾何形状、それらの表面面積(Ai)、値の分類リストにおけるそれらのランクi、第10及び第90のパーセンタイルに対応する第nのランクの値、並びに第10及び第90のパーセンタイルの面積の値を記録する表である。
【
図8】
図8は、
図5のVIGのB領域、AC領域、及びAL領域のセル面積分布を示す。
【
図9】
図9は、対角線Dを遮るボロノイセルのセル面積Aiのプロットを示す。
【
図10】
図10は、本発明によるスペーサ分布の4つの実施形態を示す。
【
図11】
図11(a)は、本発明によるVIGの対角線に沿って加えられた応力を示し、
図11(b)は、従来技術によるVIGの対角線に沿って加えられた応力を示し、
図11(c)は、本発明の代替実施形態によるVIGの対角線に沿って加えられた応力を示し、それらを比較する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、平面面積を含む真空絶縁グレージングユニット(VIG)に関し、このVIGは、
図1(c)に例示されたように第1のガラス板(1a)及び第2のガラス板(1b)を含む。k個の離隔スペーサ(Pi)は、平面面積にわたって分布され、第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、第1のガラス板(1a)と第2のガラス板(1b)との間の距離を維持し、k∈N及びk>8、好ましくはk>100、より好ましくはk>400である。
図1(a)は、VIGの従来技術の離隔スペーサの中心を持つ六角形分布を示す。上に論じたように、ピッチλは、本明細書では2つの隣接する離隔スペーサの間の最短距離と定義される。周囲接着シール(4)は、第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を密封し、第1のガラス板と第2のガラス板との間を閉囲し、平面面積を画定する周囲接着シールの内周によって囲まれた内部容積Vを画定する。内周は、縦軸X1に沿った長さLにわたって、及び縦軸X1に垂直な横軸X2に沿った幅Wにわたって延在する実質的に矩形の幾何形状を有し、L≧Wであり、内部容積は真空下にある。実際に、また、
図1(b)に例示されたように、周囲接着シールは、周囲接着シールが屈曲の半径を形成することがあるので、角に鋭い直角を形成しないことがある。内周及び平面面積は、90°の角(cs)を持つ矩形に内接すると考えられる(
図1(b)の角(cs)における白い破線参照)。続けて、矩形への幾何形状参照が角(cs)又は対角線(D)などの平面面積と関連付けられた時、このような参照は、平面面積が内接する前記矩形に関して行われる。
【0029】
本発明によるVIGの寸法は、1000~5000mm、好ましくは2000~4000mmである長さL、及び500~3000mm、好ましくは1000~2500mmである幅Wからなることが好ましい。
【0030】
熱応力分布
図2は、内部空間と外部空間との温度差40℃に曝された、2つの5mmの厚さのガラス板によって形成された、木製枠で長さL、及び幅W(L=W=1000mm)に締め付けられたVIGの4分の1への熱応力σt分布のグラフ表示を示す。
図2は、より高い温度に曝されたVIG板の外部表面に誘発された引張応力分布を表す。応力レベルは、約0MPaの白い面積から約24MPaの最も濃い面積まで増加する。このデータは独自のものであり、本発明者らによる内部作業の結果である。上に論じたように、ピッチλ=30mmの正方形配列に配置された離隔スペーサについては、大気圧応力σpは約4MPaのオーダであることができる。
【0031】
平面面積の分割
平面面積は、応力分布を反映するためにいくつかの帯域、すなわち
・4つの角領域(B)であって、それぞれが、半径Rbの円の4分の1の幾何形状を有し、但しRb<W/2であり、好ましくはRb<W/10であり、それぞれが、周囲接着シール(4)の矩形の内周の角に中心を持つ、4つの角領域(B)と、
・4つの角領域を除く平面面積を覆う補完領域(A)とを含む。
補完領域(A)は、3つの小領域、すなわち
・第1の角領域と第2の角領域との間に延在する第1の縦ストリップ領域(AL)、及び第3の角領域と第4の角領域との間に延在する第2の縦ストリップ領域(AL)であって、各縦ストリップ領域が、平面面積の縦縁部に隣接する縦軸X1に沿って延在し、縦縁部から0.1Wに等しい、横軸X2に沿って測定された幅を有する、第1の縦ストリップ領域(AL)及び第2の縦ストリップ領域(AL)と、
・第1の角領域と第3の角領域との間に延在する第1の横ストリップ領域(AW)、及び第2の角領域と第4の角領域との間に延在する第2の横ストリップ領域(AW)であって、各横ストリップ領域が、平面面積の横縁部に隣接する横軸X2に沿って延在し、横縁部から0.1Wに等しい、縦軸X1に沿って測定された幅を有する、第1の横ストリップ領域(AW)及び第2の横ストリップ領域(AW)と、
・第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)並びに第1及び第2の横ストリップ領域(AW)を切り取った補完領域(A)の面積を覆う中心領域(AC)とに更に分割される。
【0032】
ボロノイ分割
各離隔スペーサは、隣接する離隔スペーサが影響を与える面積に囲まれた、影響のある所与の面積にわたってガラス板に支持効果を有する。このような状況は、ボロノイ分割を形成するボロノイセルを使用して記載することができる。数学では、ボロノイ分割又は図形は、平面の特定のサブセット内の点への距離に基づいた領域への平面の分割である。その点のセットは、平面面積にわたって分布されたk個の離隔スペーサによって形成される。各離隔スペーサに対して、他のいずれに対してよりもその離隔スペーサに近い全ての点から成る対応する領域がある。これらの領域は、「ボロノイセル」(Ri)又は単にセル面積(Ai)を有する「セル」と呼ばれ、セル面積(Ai)は、各離隔スペーサが影響を与える面積を画定する。k個のセルによって形成されたボロノイ分割は、セル面積分布によって特徴づけられる。ボロノイ分割のセル面積(Ai)は、単位面積当たりの離隔スペーサの数kが低減するにつれて増加する。例えば第2のVIGの離隔スペーサ、又はVIGの第2の部分の離隔スペーサの数k2より小さい離隔スペーサの数k1を含む、第1のVIG又はVIGの第1の部分は、第2のVIG、又はVIGの第2の部分より大きい平均セル面積を有するセル面積分布を特徴づける。
【0033】
図3は、ボロノイ分割の2つの例を示す。
図3(a)は、中心を持つ六角形分布による標準ピッチλで配置された離隔スペーサの配列のボロノイ分割を例示する。ボロノイセルは、その中に中心を持つ対応する離隔スペーサを備えた、全てが同じ寸法の六角形である。
図3(b)は、離隔スペーサのランダム配置を示す。一つのボロノイ分割だけが、あらゆるタイプの離隔スペーサの所与の分布に関連付けることができることが見られる。
【0034】
パーセンタイル
図6に示されたように、最小から最大へと分類されたセル面積のN個の値のリストの第Pのパーセンタイルは、本明細書ではリスト内の最小値と定義され、ここで、前記最小値は、P%以下のデータが前記最小値より厳密に低く、セル面積のN個の値の少なくともP%はその最小値以下であるようなものであり、Pは0~100に含まれる。セル面積のN個の値の分類されたリストの第Pのパーセンタイルは、公式n=NP/100でk個の分類された値の対応するランクnを決定することから成る、最も近いランクメソッド(the nearest-rank method)によって得ることができる。この公式で得た値nが整数でない場合は、nは最も近い整数に四捨五入される。第Pのパーセンタイルのセル面積値は、セル面積のN個の値の分類されたリストの(四捨五入した)第nのランクに一覧にされた(listed)値である。N<100について、同じ値が2つ以上のパーセンタイルに使用されることができることは明らかである。第50のパーセンタイルは中央値と呼ばれ、第1及び第100のパーセンタイルは、それぞれが番号付きリストにおける最小値及び最大値と定義される。
【0035】
例えば
図5(b)及び
図7の表(a)を参照すると、半径Rbの角領域に含まれる12個のボロノイセルが存在する。それぞれがセル面積Ai(B)=1/2λ
2(但しi=1~11)を有する11個の菱形、及びセル面積A12(B)=5/8λ
2の家形の1つのセルが存在し、ここでλは、例えば縦ストリップ領域(AL)に存在するスペーサの正方形配列のピッチである。最も近いランクメソッドによって得られた12個の値のこのリストの第10のパーセンタイルは、A1(B)=1/2λ
2であり、これは第nのランクで一覧にされた面積値であり、n=NP/100=12x10/100=round(1.2)=1である。同様に、中心領域の第10のパーセンタイルは、ランクn=3に一覧にされた面積値であり、これはA3(AC)=λ
2である。縦ストリップ領域(AL)の1つのボロノイセルは、家形のセル面積A1(AL)=3/4λ
2であり、6つのボロノイセルは、正方形の面積Ai(AL)=λ
2であり、i=2~7である。結果として、領域ALの第10のパーセンタイルは、3/4λ
2に等しい。全てのこれらの結果は、
図7の表(a)~(c)にまとめられている。
【0036】
セル面積分布
所与の厚さのガラス板から作成されたVIGの大気圧への抵抗を増加するための簡単な解決策は、離隔スペーサ(Pi)の数を増加することである。しかし、離隔スペーサの数が増加すると、VIGの断熱特性に弊害をもたらす。離隔スペーサの数を低減し、従ってVIGの断熱特性を向上し、同時に大気圧応力及び熱応力への機械的抵抗を確保するように平面面積にわたる離隔スペーサ分布を最適化するために、以下の条件が本発明において提案される。
【0037】
4つの角領域(B)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSB10は、
・中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10、並びに
・第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAL10、並びに/又は
・第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAW10より小さい。
【0038】
中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10の値は、第1及び第2の縦及び横ストリップ領域(AL、AW)の第10のパーセンタイルSAL10及びSAW10以上である。
【0039】
S
B10、S
AL10、及びS
AW10の値は、内周に隣接した全てのセルのセル面積を無視して決定される(
図5(b)に例示された4分の1のグレージングの縁部に沿った濃い影が付けられたセルを参照)。
【0040】
セル(Ri)は、領域(AC、AL、AW、B)に閉囲され、
・対応する離隔スペーサ(Pi)が前記領域内に含まれる場合、又は
・対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっている場合、セル(Ri)は、セル面積(Sk)の最大の断片を含む領域に閉囲され、
・対応する離隔スペーサが2つの領域(AC、AL、AW、B)に跨がっており、セル面積が2つの領域の間で均等に分布される場合、前記セル面積は、第10のパーセンタイルSB10、SAC10、SAL10、及びSAW10の決定には無視される。
【0041】
内周に隣接する4つの角面積(B)のそれぞれに置かれた全てのセルのセル面積は、好ましくはそれに直接隣接する全てのセルのセル面積以下である。
【0042】
図5(a)は、角のより低いピッチ及び中心面積内のより大きいピッチ、並びにこれらの2つの面積の間の中間ピッチによって特徴づけられる、特定のスペーサ分布を表すVIGの4分の1を示す、本発明の実施形態を例示する。この分布は、平面面積にわたる熱応力分布にほぼ一致し、その例は
図2に例示されている。離隔スペーサの間に最大ピッチを有する中心領域は、熱応力がその領域内でゼロに近い(
図2参照)ので、主に大気圧に耐えるように寸法化しなければならない。最短ピッチは、角に集中する。なぜなら、角における高レベルの大気応力と熱応力の組合せにVIGが耐えなければならないからである。
【0043】
図5(b)は、
図5(a)と同じ離隔スペーサの分布を備えた同じ(4分の1の)VIGを例示する。
図5bでは、角領域(B)、中心領域(AC)、並びに縦及び横ストリップ領域(AL、AW)の分布が同定され、離隔スペーサのボロノイセル及び対角線Dも同定されている。図では、Rb=0.25Wである。実際には、Rbは幅Wの20%~40%、典型的には幅Wの30%±5%であることができる。平面面積の長さと比べると、Rbは、L≠Wの時に長さLの15%~35%であることができる。角領域の半径Rbは、好ましくは80~400mm、より好ましくは100~300mmである。Rbの値は、VIGが機械的に耐えるように設計された熱応力のレベルに大きく依存する。高い熱抵抗を必要とする状態では、Rbの値は増加するのに対して、低い熱抵抗しか必要としない状態では、Rbの値は低減することができる。
【0044】
図8は、角領域(B)(白い丸及び短い破線)、中心領域(AC)(黒い丸及び実線)、並びに縦ストリップ領域(AL)(白い正方形及び長い破線)における、
図5に例示された真空絶縁グレージングのセル面積分布を例示する。前記領域内のセル面積の第10及び第90のパーセンタイルの値が、プロットに同定されている。
【0045】
B領域の第10のパーセンタイルS
B10を決定するために考慮した離隔スペーサは、
図5(b)で影が付けられている。内周に隣接した全てのボロノイセルのセル面積は、無視され、
図5(b)に濃い影付き領域で同定されている。
図7の表(a)に一覧にしたように、
図5の例では、2つのタイプのボロノイセル(セル面積Ai=1/2λ
2の11個の正方形のセル、及びセル面積Ai=5/8λ
2の1つの家形セル)だけが、B領域の第10のパーセンタイルS
B10を決定するために考慮される。
図7の表に一覧にしたように、また
図8に例示したように、
図5の例のB領域の第10のパーセンタイルS
B10は、S
B10=1/2λ
2である。B領域に必要なスペーサの間の
図5に関して上述されたより低いピッチは、VIGの残り(
図8参照)と比べてB領域の第10のパーセンタイルS
B10の低い値によって反映される。
【0046】
図5(b)を参照すると、縦ストリップ領域(AL)のボロノイセルは、1つを除いて全て同一であり、正方形のピッチλであり、家形を有する残りの1つのセルは、3/4λ
2のセル面積を有する(
図5(b)の上列の水平の破線面積を参照)。AL領域内のセル面積の第10のパーセンタイルは、n=1のランクにあり、従ってS
AL10’=3/4λ
2である(
図7の表(b)及び
図8参照)。
【0047】
図7の表(c)に例示したように、中心領域(AC)は、約27個のセルを含み、半分以上(18個)はセル面積Ai=λ
2の正方形のセルである。
図7の表(c)に示したように、最も近いランクメソッドは、S
AC10=λ
2であるように、n=3のランクにあるような中心領域の第10のパーセンタイルの値をもたらす。第90のパーセンタイルは、n=25のランクの値に対応し、S
AC90=2λ
2をもたらす(
図7の表(c)及び
図8参照)。
【0048】
図7の表には、セルが他の4分の1のVIGと重なる状態で、
図5に表された4分の1のVIGに基づいて計算されたので、セルの断片が存在する。
【0049】
好ましい実施形態では、中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第90のパーセンタイルS
AC90は、4つの角領域(B)のそれぞれに置かれたセルのセル面積分布の第10のパーセンタイルS
B10のm倍より大きく(S
AC90>mS
B10)、m≧1.6、好ましくはm≧1.8、より好ましくはm≧2.0である。m=S
AC90/S
B10の割合の値は、VIGの角領域(B)におけるスペーサの上に誘発された最低大気圧応力σp,min(B)に対する、VIGの中心領域(AC)内の離隔スペーサの上に誘発された(熱応力は中心領域ではほぼゼロである可能性がある)最高大気応力σp,max(AC)の割合(σp,max(AC)/σp,min(B))を反映するべきである。大気圧応力σpの値は、中心領域(AC)のボロノイセルのボロノイセル面積Aiが平面面積内で最大であるので、中心面積に置かれたスペーサの上で最高であるのに対して、4つの角領域(B)のボロノイセルのボロノイセル面積Aiがそこで最小であるので、4つの角領域(B)で最低である。対照的に、
図2に示されたように、熱応力σtは、角領域(B)内で最高であり、中心領域(AC)で最低である。
図7の表(a)及び(c)に見られるように、
図5に例示された離隔スペーサ分布に対する割合m=S
AC90/S
B10の値は、2λ/λ=2に等しい。
【0050】
多くの場合、角領域(B)内に含まれるボロノイセルのセル面積の第10のパーセンタイルSB10は、20~5000mm2、好ましくは25~3600mm2、より好ましくは100~2500mm2、最も好ましくは150~900mm2であることができる。セル面積のこのような値の物理的意味のより良好な考えを与えるために、スペーサが正方形配列に従って配置される場合、前記セル面積の範囲に対応するピッチλは、4.5~71mm、好ましくは5~60mm、より好ましくは10~50mm、最も好ましくは12~30mmであるだろう。
【0051】
VIGを構成するガラス板上の各離隔スペーサの上に誘発された組み合わせた応力σtot=(σp+σt)は、大気圧応力σpと熱応力σtの合計から構成される。上に述べたように、所与のスペーサPiの上の大気圧応力σpiは、σp=0.11Ai/dj
2[MPa](又は正方形格子に対してσp=0.11λ/dj
2[MPa])で概算することができ、djは第1又は第2のガラス板(j=1又は2)の厚さである。熱応力は、
図2に描かれたような傾向に従う。ガラス板は、組み合わせた応力σtot=(σp+σt)が、あらゆる点で前記ガラス板の曲げ強度の設計値を超えないように、設計して寸法化しなければならない。ガラス板の曲げ強度の設計値は、ガラス板が支持することができる最大許容引張応力の値を与える。
【0052】
熱応力は実質的に角領域(B)で増加するので(
図2参照)、各スペーサの上に誘発された組み合わせた応力σtot=(σp+σt)は、他の領域におけるより、具体的には中心領域(AC)よりVIGの角領域で実質的に高い。平面面積にわたる離隔スペーサの規則的な配置を含むVIGの絶縁特性は、熱応力が局所的に低い中心領域における離隔スペーサを取り除くことによって増加することができるので、中心領域における大気圧応力を増加することにより、組み合わせた応力σtot=(σp+σt)を、ガラス板の曲げ強度の設計値より十分に低く維持することができる。逆に、VIGを構成するガラス板は、VIGの曲げ強度の設計値より低く維持される、角領域(B)における組み合わせた応力の値をもたらすように寸法化することができる。大気圧応力σpは、ボロノイセル面積Aiに比例する(すなわち正方形配列に対するピッチの二乗に比例する)ので、大気圧応力は、角領域におけるボロノイセル面積(又は正方形配列に対するピッチ)を低減することによって局所的に低減されることができる。
【0053】
図11は、角領域におけるボロノイセル面積A(B)=A1、及び残りの領域におけるボロノイセル面積A(AC)=2A1を有する本発明によるVIG(a)についての、並びに全平面面積にわたるボロノイセル面積A(b)=A1によって特徴づけられる、全平面面積にわたって周期的に配置された離隔スペーサの配列を備えた従来技術(P.A.)によるVIG(b)についての、大気圧応力σp(短い破線)、熱応力σt(長い破線)、並びに対角線(D)に沿って組み合わせた応力σtot=(σp+σt)(実線)を例示する。
図11(c)は、本発明によるVIGを示し、そこでは、ボロノイセル面積は、角領域(B)においてA(B)=1/2A1に等しく、中心領域においてA(AC)=A1に等しい。
【0054】
図11(a)を
図11(b)と比べると、最大合計応力σmaxに抵抗するように設計された従来技術のVIGと比べて、本発明では、中心領域(ここでは熱応力は無視できる)におけるボロノイセル面積を増加することにより、本発明によるVIGは、従来技術のVIGと同じレベルの角領域(B)に局所化された最大応力に抵抗することができるが、離隔スペーサの数は実質的に少なくて済み、それに応じてVIGの絶縁特性が増加することがわかる。
【0055】
付随して、
図11(c)と
図11(b)を比べると、角領域で単位面積当たりの離隔スペーサの数が局所的に増加する、すなわちボロノイセル面積A(B)が1/2Alに局所的に低減することにより、角で大気圧応力がセル面積Aiに比例して局所的に低減することがわかる。VIGが曝される最大大気圧σmaxは、従って従来技術(
図11(b)参照)のVIGについてより、本発明(
図11(c)参照)によるVIGについての方が低い。その結果、より薄い厚さの板が、従来技術のVIGと同じ熱条件で同じ絶縁特性に使用することができることになる。
【0056】
図11は、本発明によるVIGが、組み合わせた大気圧と熱応力への同じ機械的抵抗に対して、従来技術のVIGより高い絶縁特性を有することを示し、又はそれに付随して、同等の絶縁特性に対して従来技術のVIGより薄いガラス板を含むことができることを示す。
【0057】
縦又は横ストリップ領域(AL、AW)内に含まれたボロノイセルのセル面積の第10のパーセンタイルSAL10、SAW10は、25~9000mm2、好ましくは36~7200mm2、より好ましくは121~5000mm2であることができる。セル面積のこのような値の物理的意味のより良好な考えを与えるために、離隔スペーサが正方形配列に従って配置される場合、前記セル面積の範囲に対応するピッチλは、5~95mm、好ましくは6~85mm、より好ましくは11~71mmであるだろう。組み合わせた大気圧と熱応力のレベルは、角領域内より縦及び横ストリップ領域(AL、AW)で低いので、それらの領域内の離隔スペーサの間のピッチは、角領域内より高いことが可能であり、中心領域(AC)内のピッチ以下である。
【0058】
縦又は横ストリップ領域(AL、AW)内に含まれたボロノイセルのセル面積の第10のパーセンタイルSAL10、SAW10は、好ましくは中心領域(AC)内に含まれたボロノイセルのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10より小さい。
【0059】
第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)のそれぞれ、並びに/又は第1及び第2の横ストリップ領域(AW)のそれぞれに置かれたセルのセル面積の第90のパーセンタイルS
AL90及びS
AW90は、それぞれが中心領域(AC)に置かれたセルのセル面積分布の第90のパーセンタイルS
AC90より小さいことが好ましい。
図2を参照すると、縁部に沿って角から離れた(すなわち領域AL及びAW内の)熱応力のレベルは、明らかに角領域(B)内より低いが、中心面積(AC)を画定する真空絶縁グレージングの中心より依然として高いことがわかる。これは、冒頭で述べた独国実用新案第20201111242U1号明細書の教示と著しい対照をなす。この文献の教示は、離隔スペーサの(中心を持たない)六角形配列を備えたVIGの中心より、縁部に沿って離隔スペーサの中心を持つ六角形配列を備えた、縁部に沿った離隔スペーサの高い密度の配列(すなわち対応するボロノイセルのセル面積Aiの値はより低い)を与える。これは、この文献は真空絶縁グレージングの中心に垂直に加えられた荷重からもたらされたVIGの面積にわたる応力分布を考慮したのに対して、本発明は、内部環境と外部環境との間の過酷な温度差の適用を受けるVIGの熱応力に焦点を当てるためであると説明される。内部環境の温度は、典型的には20~25℃であるのに対して、外部環境の温度は、冬では-20℃から夏では+35℃まで広がる可能性がある。従って内部環境と外部環境との温度差は、過酷な条件では40℃を超える可能性がある。
【0060】
中心面積(AC)内に含まれたボロノイセルのセル面積の第90のパーセンタイルSAC90は、50~9000mm2、好ましくは100~7200mm2、より好ましくは400~5000mm2、最も好ましくは500~1800mm2であることができる。離隔スペーサの正方形配列のピッチλに関して変換すると、セル面積のこれらの値は、7~95mm、好ましくは10~85mm、より好ましくは20~71mm、最も好ましくは22~42mmであるピッチに対応する。中心面積内のピッチの寸法化は、過酷な熱勾配に曝される場合の熱応力σtの中程度の値ではなく、大気圧応力σpを支持するのに十分であるべきである。
【0061】
図5に例示されたVIGに対して
図9に示されたように、平面面積の対角線を遮るセル面積(Ai)は、平面面積の角から中心(c)へと単調に増加することが好ましい。曲線は、一定値の1つ又は複数のプラトーを含むことができる。
図9(及び
図5)に例示された例では、セル面積は、グレージングの角(cs)から中心へと4倍に増加する。
図9のプロット内の影付き面積は、考慮されていない縁部に隣接したボロノイセルに対応する。
【0062】
本発明は、ガラス板の所与の厚さに対して、最高の熱荷重を支持することができる一方で、離隔スペーサの数を実質的に低減することができ、従って第1のガラス板と第2のガラス板との間の熱橋の数を低減することができるので、従来技術のVIGでこれまで達成している絶縁性よりも高い絶縁性を維持するVIGを提供することができる。
【0063】
たとえガラス板の外部表面に誘発された応力レベルの最高ピークがグレージングの特定領域に丁度局所化されるとしても、VIGのスペーサに関連したボロノイセル(Ri)は、VIGを構成するガラス板が前記ピークに抵抗するように寸法化しなければならない。当技術分野で公知の典型的なVIGの場合のように、離隔スペーサの反復配列が全平面面積にわたって分布される場合、白い中心領域について
図2に示されたように、VIGの一部の領域がそれらの全耐用期間においてこのような高い応力レベルに曝されることはないにしても、ピッチλは、VIGを構成するガラス板が応力の最高ピークに抵抗するように寸法化しなければならないということになる。これは、厳密に必要であるよりはるかに多い離隔スペーサの数の使用をもたらす。
【0064】
全平面面積にわたるこのような反復パターンに従って配置された離隔スペーサを含む、当技術分野で公知の典型的なVIGと比べて、本発明によるVIGを生産するために必要な離隔スペーサの数は、離隔スペーサを角領域(B)などの熱応力の高いピークが予想される場所に集中させているので、40~60%だけ低減することができる。例えば
図5に例示されたVIGを考えると、離隔スペーサの数の低減は、
図5における角面積(B)に限定すると、中心を持つ正方形の配列に従って全平面面積にわたって分布された離隔スペーサを有するVIGと比べて約45%のオーダである。これは、当技術分野で公知の対応する典型的なVIGと比べて、本発明によるVIGでは約30%の断熱の増加をもたらすことができる。
【0065】
図10は、本発明に従って配置された離隔スペーサを含む4分の1のVIGの4つの実施形態を例示する。
図10(a)は、平面面積の各角に正方形を形成する単位面積当たり(=密度)のより高い数の離隔スペーサを備えた、離隔スペーサの規則的な正方形配列を例示する。縦及び横ストリップ領域(AL、AW)は、中心領域(AC)と同じパターンの離隔スペーサを有し、角領域(B)に置かれたセルの第10のパーセンタイルS
B10より実質的に大きい、セル面積の第10のパーセンタイルS
AL10、S
AW10、S
AC10を有する。
【0066】
図10(b)のVIGは、
図10(a)のVIGに類似しているが、横ストリップ領域(AW)は、中心領域(AC)より、及び縦ストリップ領域(AL)より高い密度の離隔スペーサを有する。横ストリップ領域(AW)に置かれたボロノイセルのセル面積の第10のパーセンタイルS
AW10は、B領域内の第10のパーセンタイルと同じである。
【0067】
図10(c)及び(d)は、角に局所化され、矩形平面面積と角を共有する三角形を形成するように配置された、より高い密度の離隔スペーサを有する。縦及び横ストリップ領域(AL、AW)は、中心領域(AC)より高い密度の離隔スペーサを有しても有さなくてもよい(
図10(c)及び(d)のそれぞれを参照)。
図10(d)では、領域AL、AW、AC、及びB内のセル面積の第10のパーセンタイルは、以下の通りである、S
B10<S
AL10=S
AW10<S
AC10。
【0068】
本発明によるVIGを生産するための方法
本発明は、上記のようなVIGを生産するための方法にも関する。方法は、以下のステップ、すなわち
・公知の機械的及び熱的特性の、並びに所与の厚さdの第1及び第2のガラス板(1a、1b)を準備することと、
・例えば公式σp=0.11Ai_max/dj2[MPa]を使用して、大気圧応力の最大許容値をもたらすための最大ボロノイセル面積Ai_maxを計算することと、
・中心領域(AC)内で最大ボロノイセル面積Ai_maxによって特徴づけられる離隔スペーサ分布を画定し、中心領域(AC)内で離隔スペーサのこのセル面積分布の第10のパーセンタイルSAC10を決定することと、
・中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10以下である、縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAL10、SAW10によって特徴づけられる、第1及び第2の縦ストリップ領域(AL)内並びに第1及び第2の横ストリップ領域(AW)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・中心領域(AC)並びに縦及び横ストリップ領域(AL、AW)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSAC10、SAL10、及びSAW10より低い、各角領域(B)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSB10によって特徴づけられる、4つの角領域(B)内の離隔スペーサ分布を画定することと、
・前述の離隔スペーサ分布に従って、第1のガラス板(1a)の表面にk個の離隔スペーサを位置付け、表面に周囲接着シール(4)を付与して矩形平面面積の周囲を画定することと、
・第1のガラス板と第2のガラス板との間にギャップを残して、周囲接着シールによって囲まれた、k個の離隔スペーサ及び周囲接着シール(4)の上の第2のガラス板(1b)を結合することと、
・圧力を0.1ミリバール未満に低下させるために、第1のガラス板と第2のガラス板との間のギャップから気体を排出することとを含む。
但しSB10、SAL10、及びSAW10は、矩形平面面積の縁部に隣接するセルを無視して決定される。縁部に隣接するボロノイセルは、それらの幾何形状が、周囲接着シール(4)の存在によって干渉されるので無視される。
【0069】
中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのボロノイセル面積は、中心領域の一部が大気圧下で壊れないように、最大面積Ai_max以下でなければならない。
【0070】
角領域(B)内の離隔スペーサ分布は、熱応力が前記角領域(B)に集中する状態で、大気圧と熱応力の必要な合計に抵抗するように適切でなければならない。有限要素分析は、あらゆる新しいVIGに対して実行することができる。しかし、経験則として、各角領域(B)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第10のパーセンタイルSB10は、中心領域(AC)に置かれた離隔スペーサのセル面積の第90のパーセンタイルSAC90の1/m倍以下であるように画定することができ、m≧1.6、好ましくはm≧1.8、より好ましくはm≧2.0である。
【0071】
ガラス板
本発明のVIGの第1及び第2のガラス板は、フロート透明、超透明又は色ガラス技術の中から選択することができる。用語「ガラス」は、本明細書ではミネラルガラス若しくは有機ガラスなどのあらゆるタイプのガラス又は等価の透明材料を意味すると理解されたい。使用されるミネラルガラスは、ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸若しくホウケイ酸、結晶体及び多結晶性ガラスなどの1つ又は複数の公知のタイプのガラスに無関係であってもよい。ガラス板は、フロート処理、引抜処理、ロール処理、又は溶融ガラス組成物から始まるガラス板の製造に公知のあらゆる他の処理によって得ることができる。ガラス板は、任意選択で縁部を研磨することができる。縁部を研磨することにより、鋭い縁部を滑らかな縁部にし、これは真空絶縁グレージング、具体的にはグレージングの縁部と接触する可能性がある人々にはるかに安全である。好ましくは本発明による第1及び/又は第2のガラス板の少なくとも1つは、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸ガラス又はホウケイ酸ガラスの板である。より好ましく又より低い生産原価のために、本発明によるガラス板はソーダ石灰シリカガラスの板である。
【0072】
好ましくは、本発明のVIGの第1及び/又は第2のガラス板に対する組成物は、ガラス(Comp.A)の総重量に対して表された重量比の以下の構成要素を含む。より好ましくは、ガラス組成物(Comp.B)は、ソーダ石灰シリカタイプのガラスであり、組成物の基礎ガラスマトリクスは、ガラスの総重量に対して表された重量比の以下の構成要素を含む。
【0073】
本発明のVIGの第1及び第2のガラス板に対する他の好ましいガラス組成物は、ガラスの総重量に対して表された重量比の以下の構成要素を含む。
【0074】
具体的には、本発明による組成物に対する基礎ガラスマトリクスの例は、公開されたPCT特許出願国際公開第2015/150207A1号パンフレット、国際公開第2015/150403A1号パンフレット、国際公開第2016/091672A1号パンフレット、国際公開第2016/169823A1号パンフレット及び国際公開第2018/001965A1号パンフレットに記載されている。
【0075】
ガラス板は、同じ寸法又は異なる寸法であることが可能であり、それによって階段状VIGを形成することができる。本発明の好ましい実施形態では、第1及び第2のガラス板は、それぞれが第1及び第2の周縁部を含み、第1の周縁部は第2の周縁部から窪み、又は第2の周縁部は第1の周縁部から窪む。この構成により、密閉接着シールの強度を強化することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、より高い機械的耐性のために、第1のガラス板及び/又は第2のガラス板は、予め応力を加えられたガラスであることが可能である。予め応力を加えられたガラスとは、熱強化ガラス、熱的硬化安全ガラス、又は化学的強化ガラスを意味する。
【0077】
熱強化ガラスは、外部ガラス表面を圧縮下に置き、内部ガラス表面を張力下に置く、制御された加熱及び冷却の方法を使用して熱処理される。この熱処理方法は、焼鈍しガラスより大きいが、熱的硬化安全ガラスより低い曲げ強度のガラスをもたらす。熱的硬化安全ガラスは、外部ガラス表面を圧縮下に置き、内部ガラス表面を張力下に置く、制御された加熱及び冷却の方法を使用して熱処理される。このような応力により、ガラスは、衝撃を受けた時に、ギザギザの破片に割れる代わりに小さい粒状粒子に砕ける。粒状粒子は、居住者を負傷させる、又は物体を損傷する傾向が少ない。ガラス物品の化学的強化は、ガラスの表層のより小さいアルカリナトリウムイオンをより大きいイオン、例えばアルカリカリウムイオンに交換することを含む、熱誘発イオン交換である。増加した表面の圧縮応力は、前にナトリウムイオンによって占有されていた小さい場所中への、より大きいイオン「ウェッジ」としてガラスに発生する。このような化学的処理は、概して温度及び時間の正確な制御で、より大きいイオンの1つ又は複数の溶融塩を含有する、イオン交換溶融漕内にガラスを沈めることによって実行される。アルミノケイ酸タイプのガラス組成物、例えばAGC株式会社製のDragonTrail(登録商標)の製品範囲からのガラス組成物、又はCorning Inc.製のGorilla(登録商標)の製品範囲からのガラス組成物などは、化学的強化に非常に有効であることも公知である。
【0078】
本発明の一部の実施形態では、低放射フィルム、日射調整フィルム(熱線反射フィルム)、反射防止フィルム、防曇フィルムなどのフィルム、好ましくは熱線反射フィルム又は低放射フィルムを、真空絶縁グレージングユニットの第1並びに/又は第2のガラス板(1a、1b)の内部表面及び/若しくは外部表面の少なくとも1つの上に与えることができる。本発明の好ましい実施形態では、VIGの第2のガラス板(1b)の内部表面は、熱線反射フィルム又は低Eフィルムを備える。
【0079】
本発明の一実施形態では、第1及び/又は第2のガラス板(1a、1b)の外部表面は、安全且つ安心のために、少なくとも1つのガラスシート及び少なくとも1つのポリマー中間層によって形成された積層アセンブリであることができる。積層ガラスは、粉砕した時に一緒に保持するタイプの安全ガラスである。壊れた場合に、積層ガラスは、その複数の層のガラスの間の熱可塑性中間層によって適所に保持される。中間層は、壊れた時であってもガラスの層に接着したままであり、その高い強度によりガラスが大きく鋭い片に分裂するのを防ぐ。
【0080】
積層アセンブリ内で、少なくとも1つのガラスシートは、好ましくは0.5mm以上の厚さZsを有する(Zs≧0.5mm)。厚さは板の外部表面に対して垂直方向に測定される。少なくとも1つのポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、コポリエステル、ポリアセタール、環状オレフィンポリマー(COP)、アイオノマ、及び/若しくは紫外線活性接着剤、並びにガラス積層体を製造する分野で公知の他の材料からなる群から選択された材料を含む、透明又は半透明ポリマー中間層である。これらの材料のあらゆる互換性のある組合せを使用して混合した材料も適することが可能である。防音材で強化された防音ガラスも、窓又はドアの性能を向上するために本概念と互換性がある。このような場合、ポリマー中間層は、2つのポリビニルブチラールフィルムの間に挿入した少なくとも1つの追加の防音材料を含む。
【0081】
本発明は、絶縁又は非絶縁内部空間を閉囲するガラス板(2枚、3枚若しくはそれ以上)を含むあらゆるタイプのグレージングユニット(複層グレージングユニットとも呼ばれる)にも適用することができる。但し部分真空がこれらの内部空間の少なくとも1つの中に発生することを条件とする。従って、一実施形態では、本発明のVIGの機械的性能を改善するために、第3の追加のガラス板が、周縁スペーサバーを介してVIGの周囲に沿って第1及び/又は第2のガラス板(1a、1b)の外部表面の少なくとも1つに結合することができ、周縁シールによって密封された絶縁空洞を生成する。前記周囲スペーサバーは、第3のガラス板と、第1及び第2のガラス板の外部表面の少なくとも1つとの間にある特定の距離を維持する。典型的には前記スペーサバーは乾燥剤を含み、典型的には6mm~20mm、好ましくは9~15mmの厚さを有する。概して前記第2の内部容積は、空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素又はそれらの組合せから成る群から選択された所定の気体で充填される。前記所定の気体は、熱伝達を防ぐために効果的であり、且つ/又は音響透過を低減するために使用されてもよい。
【0082】
スペーサ
本発明の真空絶縁グレージングユニットは、2つのガラス板を互いから分離したままにし、従って内部容積Vを形成するために、第1のガラス板(1a)と第2のガラス板(1b)との間に挟まれた複数の離隔スペーサを含む。離隔スペーサは、上述したようにボロノイセルによって画定された配列に従って平面面積に分布される。
【0083】
離隔スペーサは、円筒、球、糸状、砂時計形状、C字型、十字型、プリズム形状などの様々な形状を有することができる。小さいスペーサ、すなわち概して5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下のガラス板への接触表面を有するスペーサを使用することが好ましい。上に示されたように、これらの寸法は、大気圧応力に対して良好な機械抵抗を与えることができる一方で、見た目が目立たない。
【0084】
離隔スペーサは、大気圧の影響下でガラス板の表面から加えられた圧力に対して耐久性が十分な強度を有する材料から作られなければならず、離隔スペーサは、焼付及び焼成などの高温工程に耐えることができなければならず、VIGが製造された後に排出される気体の量は少なくなければならない。このような材料は、好ましくは硬質金属材料、石英ガラス又はセラミック材料、具体的には鉄、タングステン、ニッケル、クロム、チタニウム、モリブデン、炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケル・クロム鋼、マンガン鋼、クロム・マンガン鋼、クロム・モリブデン鋼、ケイ素鋼、ニクロム、ジュラルミンなどのような金属材料、又はコランダム、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などのようなセラミック材料である。
【0085】
周囲接着シール
本発明の真空絶縁グレージングユニットのガラス板(1a、1b)の間の内部容積Vは、ガラス板の周囲に隣接して置かれた密閉接着シール(4)内に閉囲される。密閉接着シールは、VIGを包囲する大気中に存在する空気又はあらゆる他の気体に対して不透過性であり、好ましくは硬質である。
【0086】
様々な密閉接着シール技術が存在する。第1のタイプのシール(最も一般的である)は、融点がグレージングユニットのガラス板を構成するガラスの融点より低い、半田ガラスに基づいたシールである。このタイプのシールの使用は、低E層の選択を、半田ガラスの適用に必要な熱サイクルによって分解されない低E層、すなわち恐らく250℃までの高さの温度に耐えることができる低E層に限定する。
【0087】
第2のタイプのシールは、金属シール、例えば柔らかいスズ合金の半田などの半田付け可能な材料の層で少なくとも一部が覆われたタイ下層を介して、グレージングユニットの周囲に半田付けされた薄い厚さ(<500μm)の金属ストリップを含む。前述のガラスシールに対して勝るこの金属シールの1つの実質的な利点は、金属シールは、部分的に変形するので、VIGの厚さを横切る温度勾配に曝された時に、第1の板と第2の板との間の膨張差の一部を吸収できることである。
【0088】
特許出願国際公開第2011/061208A1号パンフレットは、真空絶縁グレージングユニット用の金属から作成された周囲接着シールの一例を記載している。記載されたシールは、例えばガラス板の周囲の上に与えられた接着帯に半田付け可能な材料を用いて半田付けされた銅から作成された、金属ストリップである。
【0089】
内部容積
0.1ミリバール未満、好ましくは0.01ミリバール未満の絶対圧力の真空が、第1及び第2のガラス板並びに離隔スペーサの組によって画定され、本発明のVIG内の周囲接着シールによって閉鎖された、内部容積V内に生成することができる。
【0090】
本発明のVIGの内部容積は、気体、例えば空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素又はそれらの組合せ(これらに限られない)を含むことができる。この従来の構造を有する絶縁ユニットを通るエネルギーの伝達は、内部容積内に気体が存在するために、単一のガラス板と比べて低減される。
【0091】
内部容積は、あらゆる気体をポンプ供給されてもよく、従って真空グレージングユニットを生成する。真空絶縁グレージングユニットを通るエネルギー伝達は、真空によって大幅に低減される。グレージングユニットの内部容積に真空を発生させるために、内部容積を外部と連通させる中空ガラス管が、概してガラス板の1つの主面上に与えられる。こうして部分真空は、ガラス管の外側端部に連結されたポンプの力で、内部容積内に存在する気体をポンプで吸い出すことにより内部容積に発生される。
【0092】
真空絶縁グレージングユニット内に所与の真空レベルを延長した期間にわたって維持するために、ゲッタがグレージングユニット内に使用されてもよい。詳細には、グレージングユニットを構成するガラス板の内部表面は、ガラス内に予め吸収した気体を経時的に開放することがあり、それによって真空絶縁グレージングユニット内の内圧を増加し、こうして真空性能を低減する。概してこのようなゲッタは、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、アルミニウム、その他の合金から成り、薄層の形(数ミクロンの厚さ)、或いは見えないように(例えば外部のエナメルにより、周囲不透過性シールの一部により、若しくは枠により隠れている)グレージングユニットのガラス板の間に置かれたブロック又はタブレットの形で付着される。ゲッタは、その表面に室温で不動態化層を形成する。従って不動態化層を消失させ、こうしてその合金のゲッタリング特性を活性化するために加熱されなければならない。ゲッタは「加熱活性化」すると言われる。
【符号の説明】
【0093】
1 真空絶縁グレージングユニット
1a、1b 第1及び第2のガラス板
4 周囲接着シール
A 補完領域
AC 中心領域
Ai ボロノイセルRiの面積
AL 縦ストリップ領域
AW 横ストリップ領域
B 角領域
c 矩形平面面積の中心
cs 矩形平面面積の(挿入された)角
d VIGの厚さ
D 矩形平面面積の対角線
k 離隔スペーサの数
L 矩形平面面積の長さ
n ランク
N リストの値の総数
P パーセンタイル
Pi 離隔スペーサi
Rb B領域の半径
Ri スペーサPiに関連したボロノイセル
Sxp 領域x=A、AL、AW、又はBに置かれたセル面積の第pのパーセンタイル
W 矩形平面面積の幅
X1、X2 縦及び横軸
λ、λmax ピッチ、及び大気圧応力σpに対する所与の抵抗のための最大ピッチ
σp、σt 大気圧及び熱応力