(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20230829BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230829BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230829BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230829BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20230829BHJP
C08J 7/044 20200101ALI20230829BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G02B5/22
B32B7/023
B32B27/36
C08J5/18 CFD
C08J7/043
C08J7/044
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2019143866
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018148402
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川浪 敬太
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026948(JP,A)
【文献】特開2015-148813(JP,A)
【文献】特開2010-170866(JP,A)
【文献】特開2013-098152(JP,A)
【文献】特開2002-138203(JP,A)
【文献】特開2014-119642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309368(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108279455(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
B32B 7/023
B32B 27/36
C08J 5/18
C08J 7/043
C08J 7/044
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料および/または顔料を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが6%以下であり、450nmの光線透過率が4%以下であり、550nmの光線透過率が20%以上であり、色調(b*)値が50以上であ
り、
前記染料として、黄色染料、赤色染料、青色染料及び茶色染料の4種類を全て含有し、フィルム中の前記各染料の染料含有量(質量%)が、黄色染料≧赤色染料+青色染料+茶色染料であることを特徴する光学フィルム。
【請求項2】
ポリエステルを主成分樹脂として含有する3層のポリエステル樹脂層から構成される積層ポリエステルフィルムである、請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
フィルム中の
前記各染料の染料含有量
(質量%)が、黄色染料≧(赤色染料+青色染料+茶色染料)×1
0である、請求項
1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
一方のフィルム表面層として機能層(X)を備えた、請求項1~
3の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
一方又は他方のフィルム表面層として、前記機能層(X)とは異なる機能層(Y)を備えた、請求項
4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
一方のフィルム表面層として
前記機能層(X)を備え、他方のフィルム表面層として前記機能層(Y)を備えた、請求項
5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記機能層(X)が易接着層であり、前記機能層(Y)が帯電防止層である、請求項
5又は6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか記載の光学フィルムを情報端末機器搭載用に用いることを特徴とする光学フィルム。
【請求項9】
請求項1~
7の何れか記載の光学フィルムを用いたディスプレイユニット。
【請求項10】
請求項1~
7の何れか記載の光学フィルムが
、LED光源の位置を基準として視認側とは反対側に配置されてなる構成を備えたディスプレイユニット。
【請求項11】
前記LED光源は、400nm~480nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値が、500nm~600nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値に比べて大きいことを特徴とする、請求項
10に記載のディスプレイユニット。
【請求項12】
前記LED光源から発光した光線は、上側及び下側の2方向、すなわち視認側及びその反対側の2方向に少なくとも進むように設計された、請求項
10又は
11に記載のディスプレイユニット。
【請求項13】
前記光学フィルムの550nm波長における光線透過率(T1<550>)と、LED光源の550nm波長における相対放射強度(T2<550>)との合計値(T1<550>+T2<550>)が80%以上である、請求項
10~
12の何れか記載のディスプレイユニット。
【請求項14】
前記光学フィルムの450nm波長における光線透過率(T1<450>)と、LED光源の450nm波長における相対放射強度(T2<450>)との合計値(T2<450>+T2<450>)が105%以下である、請求項
10~
13の何れか記載のディスプレイユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源と組み合わせて使用するのに好適な光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性などに優れる長所を活かして、従来から各種工業用途に利用されており、その用途はますます拡大、多様化している。
【0003】
近年、携帯電話やスマートフォンなどの情報端末機器においては、光源の長寿命化に伴い、LED光源の搭載率が増加している。情報端末機器に一般的に使用されている白色LED光源(青色LEDにより黄色蛍光体を発光させるタイプ)の発光スペクトルは、一般的に450nm近傍に発光強度が強いスペクトルを有している。可視光領域(400nm~720nm)において、LED光源の発光スペクトルは、
図1に示すように、450nm近傍のスペクトルの発光強度を100とした場合、特に人が明るいと感じる波長領域(500nm~600nm)の発光強度は50以下程度であり、かなり偏りがある、いわゆる輝線をもつのが特徴的である。
【0004】
このようなLED光源と組み合わせて使用するポリエステルフィルムに関しては、例えば特許文献1において、LEDを光源とする画面の保護用フィルムとして、ウーラム社製エリプソメーターM-2000Dを使用して測定した測定角60°、測定波長235~255nmにおける振幅比の変化ψの最大値のばらつきRψ60が0.10以上5.00以下であるポリエステルフィルムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、色調むらの無い優れた表面品位を有し、さらに光学的に優れた透過性を有する、LEDを光源とする画面の保護などに用いる積層ポリエステルフィルムとして、ポリエステル樹脂からなるポリエステル層と、これとは異なるポリエステル樹脂からなるポリエステル層を有し、厚み方向に交互に30層以上積層され、前記ポリエステル層間の積層界面粗さが0.2nm以上、6.0nm以下である積層ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
なお、染料乃至顔料を含有する光学フィルムに関しては、例えば特許文献3において、ポリオレフィンと二色性染料とを含む偏光フィルムと、前記偏光フィルムの一面に位置する第1光配向膜と、前記第1光配向膜の一面に位置する第1液晶層とを含み、前記偏光フィルム、前記第1光配向膜、および前記第1液晶層は、互いに密着した一体型構造を有する、光学フィルムが開示されている。
特許文献4には、透明基材上に、少なくともハードコート層を有する光学フィルムにおいて、前記ハードコート層が、バインダマトリックスと、黄色顔料とを少なくとも含有し、前記ハードコート層の440nmの波長の光の透過率が80%以下であることを特徴とする、光学フィルムが開示されている。
特許文献5には、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム微粒子を含有する光学フィルムであって、光波長650~700nmの範囲内の光を吸収する染料又は顔料を含有し、かつ、前記光波長範囲内における当該光学フィルムの平均光吸収率が、23℃において、30~85%の範囲内であることを特徴とする光学フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-132990号公報
【文献】特開2017-43083号公報
【文献】特開2017-58659号公報
【文献】特開2017-3884号公報
【文献】国際公開WO2016/158620号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】光技術情報誌「ライトエッジ」No.10 1997年6月、第2章 情報機器と光源の役割
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
表示画面を用いて画像、例えばデジタル画像を読み取る場合、当該画像に要求される分光特性としては、異なる波長域においても発光強度に偏りがなく、連続的な分光スペクトルを持ち、全体的に発光強度が強い光源(例えば太陽光など)が理想的とされる(非特許文献1)。
しかしながら、LED光源を用いて表現される画像の場合、上述のように、LED光源の発光スペクトルが可視光領域のうち長波長側(500nm以上)の発光強度が弱いことに起因して、当該画像の読み取りが困難になることがあった。
このような問題を解決するため、LED光源の発光スペクトル自体を、可視光領域の長波長側(例えば、500nm以上)の発光強度を全体的に上げようとすると、元々LED光源が十分な発光強度を持っていた領域、すなわち450nm近傍領域の発光強度が逆に低下することがあった。このように、可視光領域(400nm~720nm)全体の発光強度を均一に向上させることは簡単なことではなかった。
また、前記発光強度の偏りが、表示画面の色彩の偏りの原因とも考えられている。例えば450nmの発光強度が必要以上に強い場合、表示画面の色彩が青っぽくなる傾向にあった。
【0010】
ところで、携帯電話やスマートフォンなどの情報端末機器に搭載している液晶ディスプレイ(LCD)において、情報入力する際には抵抗膜方式、静電容量方式等などのタッチパネル方式が一般的に採用されている。
タッチパネル方式には、構成部材として透明電極が使用されるのが一般的である。この透明電極は、例えば、酸化錫を含有するインジウム酸化物(ITO)或いは酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物から構成される透明導電層を、ガラス或いは透明な樹脂フィルム基材に積層して構成されるのが一般的である。
このような透明電極は、金属酸化物層の反射および吸収の繰り返しに由来する可視光短波長域の透過率低下が起こりやすく、その結果、黄色或いは茶色に着色しやすい傾向にある。そのため、タッチパネル下部に配置される液晶表示装置においては、その色彩が、本来、予想もしない色彩を表示する場合があった。そのため、金属ナノ粒子、導電性高分子など、他の導電材料に着目した透明導電フィルムの開発も鋭意検討されているが、前記課題解決には不十分な状況であった。
【0011】
そこで本発明は、LED光源と組み合わせて画像表示装置に組み込んだ際、ディスプレイに供給される光に関し、可視光領域の発光強度を均一化することができ、表示画面の色彩の均一化することができ、それでいて輝度が低下するのを防ぐことができ、さらには、透明電極と組み合わせてディスプレイユニットを構成した際に、該透明電極の経時劣化に伴う、表示画面の色彩変化を抑制することが可能な、新たな光学フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、染料および/または顔料を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが6%以下であり、450nmの光線透過率が4%以下であり、550nmの光線透過率が20%以上であり、色調(b*)値が50以上であることを特徴する光学フィルムを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提案する光学フィルムによれば、LED光源と組み合わせて画像表示装置に組み込んだ際、ディスプレイに供給される光に関し、LED光源から発する光の発光性能(光線透過率)を阻害することなく、LED光源から発する光の発光強度が不足する波長領域、すなわち550nmの発光強度を補強することができるから、輝度を低下させることなく、発光強度の均一化を図ることができる。すなわち、LED光源から発する光は、本来的に波長領域ごとに光線透過率に偏りがあるのに対し、本光学フィルムを組み合わせて使用することで、各波長の光線透過率の偏りを解消して均一化することができるから、表示画面の色彩の均一化を図ることができ、輝度の向上をも図ることができる。よって、例えば550nm近傍の可視光領域の光を用いて、(デジタル)画像を読み取る場合、従来のように(デジタル)画像がぼやけることもなく、より鮮明な(デジタル)画像として、読み取ることが可能となる。
さらに、本光学フィルムを始めからディスプレイの構成部材として搭載することを前提として、来る将来に構成部材の経時劣化、例えば上述のような透明電極の経時劣化に伴い、変色することによる表示画面の色彩変化を予測し、染料や顔料の種類と量を調整するなどして、本光学フィルムの色調を、当該変化後の色調と同程度の色調に合わせこんでおくことで、劣化部材の変化後の色相と同調させることができ、その結果、表示画面の色彩変化を目立たなくすることができる。よって、本来、表示画面が有するはずの色彩とは異なる、予期しない色彩になることを事前に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一般的なLED光源(青色LEDにより黄色蛍光体を発光させるタイプ)の波長別発光強度の一例を示したグラフ(横軸:測定波長(nm)、縦軸:相対放射強度(%))である。
【
図2】本発明の実施形態の一例に係るディスプレイユニットの構成例及びその構成例における光の進み方の一例を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の実施形態の一例に係る、フィルム積層体構成でのディスプレイユニットにおける光の進み方の一例を模式的に示した図である。
【
図4】従来の光学フィルムの分光スペクトルの典型的なパターンの一例として、光学用ポリイミドフィルムの分光スペクトルの一例を示したグラフ(横軸:測定波長(nm)、縦軸:透過率(%))である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<<本光学フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る光学フィルム(「本光学フィルム」と称する)は、染料および/または顔料を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが6%以下であり、450nmの光線透過率が4%以下であり、550nmの光線透過率が20%以上であり、b*値が50以上であることを特徴する光学フィルムである。
【0017】
本発明において「ポリエステルフィルム」とは、ポリエステル樹脂層を備えたフィルムを意味し、該「ポリエステル樹脂層」とは、主成分樹脂としてポリエステルを含有する層を意味し、該「主成分樹脂」とは、当該層を構成する樹脂の中で最も含有質量割合の高い樹脂の意である。
【0018】
<フィルムヘーズ>
本光学フィルムは、光学用途に対応するために、フィルムヘーズが6%以下であるのが好ましく、中でも4%以下、その中でも3%以下、その中でも特に2%以下であるのがさらに好ましい。フィルムヘーズの下限は限定されず、0%以上であればよいが、通常は0.5%以上程度である。
【0019】
<色調>
本光学フィルムは、構成部材の経時劣化による色調変化を防止する観点から、その色調(b*値)は50以上であるのが好ましく、中でも60以上、その中でも70以上、その中でも特に80以上であるのがさらに好ましい。なお、上限に関しては、98程度を目安にするのが好ましい。色調(b*)値が上記範囲であるフィルムとは、視覚的に少なくとも黄色を呈したフィルムを意味する。通常、何ら着色要因となる物質を含有していないポリエステルフィルムであれば、色調(b*)値は-5~+3程度である。
本光学フィルムの色調(b*値)を上記範囲にするためには、例えば黄色染料を多めに配合して、基本となる色調を設定し、その他の色の染料あるいは顔料を適宜組み合わせるなどをすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0020】
<光線透過率>
本光学フィルムは、波長450nmの光線透過率が4%以下であり、波長550nmの光線透過率が20%以上であるのが好ましい。
上述のようにLED光源の発光スペクトルは、一般的に450nm近傍に発光強度が強いスペクトルを有しており、450nm近傍のスペクトルの発光強度に比べて、550nm近傍の発光強度は顕著に低いという特徴を有している。そのため、本光学フィルムが上記波長領域において上記光線透過率を有していれば、本光学フィルムをLED光源と組み合わせて画像表示装置に組み込んだ際、LED光源から発する光の発光性能(光線透過率)を阻害することなく、LED光源から発する光の発光強度が不足する波長領域を補強することができるから、輝度を低下させることなく、発光強度の均一化を図ることができる。
かかる観点から、本光学フィルムにおいて、波長450nmの光線透過率は4%以下であるのが好ましく、中でも3%以下、その中でも2%以下であるのがさらに好ましい。
なお、本光学フィルムの波長450nmの光線透過率の下限は限定されず、通常、0%以上であり、好ましくは0.01%以上である。
他方、波長550nmの光線透過率は20%以上である必要があり、中でも25%以上或いは80%以下、その中でも30%以上或いは80%以下であるのがさらに好ましい。
【0021】
さらに、表示画面の色彩均一化の観点から、少なくとも可視光領域の短波長(400nm)側から長波長(720nm)側に至る領域においては、高波長側になるほど光線透過率が大きいことが好ましい。より具体的には、(1)400nm、(2)550nm、(3)650nm、(4)720nmの各測定波長における透過率が高波長側になるほど大きくなるのが好ましい。
【0022】
さらに次の(5)~(8)の要件の何れか1つ以上を満足するのが好ましく、(5)~(8)の要件のうち何れか2つ以上を満足するのがより好ましく、(5)~(8)の要件のうち何れか3つ以上を満足するのが更に好ましく、特に(5)~(8)の要件を全て満足するのがより好ましい。
【0023】
(5)400nm~480nmの測定波長範囲における光線透過率の最大値は、表示画面の色彩均一化の観点から、3%以下であることが好ましく、中でも2%以下、その中でも1%以下であるのがさらに好ましい。
(6)500~600nmの測定波長範囲における光線透過率の最大値は、表示画面の色彩均一化の観点から、30~85%であるのが好ましく、中でも40%以上或いは80%以下、その中でも50%以上或いは70%以下であるのがさらに好ましい。
【0024】
(7)610~680nmの測定波長範囲における光線透過率の最大値は、表示画面の色彩均一化の観点から、51~70%であるのが好ましく、中でも55%以上或いは70%以下、その中でも60%以上或いは70%以下であるのがさらに好ましい。
(8)700~720nmの測定波長範囲における光線透過率の最大値は、表示画面の色彩均一化の観点から、61~80%であるのが好ましく、中でも65%以上或いは80%以下、その中でも70%以上或いは80%以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
本光学フィルムにおいて、上述のように特定波長領域ごとに光線透過率を制御するためには、ポリエステルフィルムが含有する染料および/または顔料の種類と量を調整して制御するのが好ましい。特に黄色染料、赤色染料、青色染料、茶色染料から選択される、少なくとも2種類以上、中でも3種類以上、その中でも4種類以上の染料を適宜選択してポリエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0026】
<フィルム構成>
本光学フィルムは、ポリエステル樹脂層からなる単層のポリエステルフィルムであってもよいし、2層以上のポリエステル樹脂層からなる複層のポリエステルフィルムであってもよい。この際、3層またはそれ以上の多層であってもよい。
【0027】
本光学フィルムが、3層のポリエステル樹脂層からなるポリエステルフィルムである場合の一例として、効果的に各種の特性の向上を図る目的で、表層としてのポリエステル樹脂層と、中間層としてのポリエステル樹脂層の原料を変えて、3層構成にしてなる構成例を挙げることができる。
また、同じく3層のポリエステル樹脂層からなるポリエステルフィルムの一例として、中間層を構成するポリエステル樹脂層のみが染料および/または顔料を含有し、両表層は、染料および/または顔料を実質的に含有しないポリエステル樹脂層から構成する例を挙げることができる。かかる構成とすれば、染料および/または顔料のブリードアウトを防止することができる。
また、同じく3層のポリエステル樹脂層からなるポリエステルフィルムの一例として、中間層及び両表層を構成するポリエステル樹脂層が顔料を含有する構成する例を挙げることができる。
なお、本発明において、「表層」とは、その表層を備えたフィルムにおいて、露出する面を構成する層の意味であり、それ以外の層は中間層と呼ぶ。
【0028】
(機能層)
本光学フィルムは、一方のフィルム表面層として機能層(X)を備えることができる。また、一方又は他方のフィルム表面層として、前記機能層(X)とは異なる機能層(Y)を備えた構成とすることもできる。例えば、一方のフィルム表面層として機能層(X)を備え、他方のフィルム表面層として前記機能層(Y)を備えた構成とすることができる。
【0029】
上記機能層とは、各種機能を備えた層の意味であり、例えば、次に説明する易接着層、帯電防止層などの層を挙げることができる。但し、機能層の種類をこれらに限定するものではなく、例えば、ブロッキング防止層、離型層、難燃層、ハードコート層、印刷層等が挙げられる。
具体的な構成例としては、例えば、本光学フィルムの一方のフィルム表面層として易接着層を設け、他方のフィルム表面層として帯電防止層を設ける例を挙げることができる。
易接着層及び帯電防止層については後述する。
【0030】
<ポリエステル>
本光学フィルムにおいて各ポリエステル樹脂層の主成分樹脂をなすポリエステルは、ホモポリエステルであってもよいし、また、共重合ポリエステルであってもよい。
【0031】
ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
この種の代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等を例示することができる。
【0032】
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種または二種以上を挙げることができ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を挙げることができる。
この種の代表的なポリエステルとして、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
【0033】
本光学フィルムにおいて各ポリエステル樹脂層の主成分樹脂をなすポリエステルの極限粘度は、通常0.3~0.9dl/gであるのが好ましく、中でも0.4dl/g以上或いは0.8dl/g以下、その中でも0.5dl/g以上或いは0.8dl/g以下であるのがさらに好ましい。
ここで、極限粘度の測定方法は、後述する実施例に記載された方法である。
なお、本光学フィルム自体の好ましい極限粘度の範囲、各ポリエステル樹脂層の好ましい極限粘度の範囲についても、上記範囲と同様である。
【0034】
<染料・顔料>
本光学フィルムがポリエステル樹脂層からなる単層構成である場合は、当該ポリエステル樹脂層が染料および/または顔料を含有するのが好ましい。他方、2層以上のポリエステル樹脂層からなる複層構成である場合は、少なくとも何れかのポリエステル樹脂層が染料および/または顔料を含有するのが好ましく、中でも、中間層を構成するポリエステル樹脂層が染料および/または顔料を含有するのが好ましい。特に染料を使用する場合は、染料のブリードアウトを低減させる観点から、中間層が染料を含有し、表層は染料を実質的に含有しない構成とするのが好ましい。
なお、実質的に含有しないとは、意図して含有させないという意味であり、不可避的に含有する場合を包含するという趣旨でもある。
【0035】
(染料)
上記染料としては、本光学フィルムの製造時の温度に耐えられるだけの耐熱性、並びに、分散性などを考慮して使用するのが好ましい。かかる観点から、化学構造的には、例えばアントラキノン系、フタロシアニン系、ぺリノン系、イソキノリン系等の染料が好ましい。
染色処方的には、分散性染料、油溶性染料が好適である。
なお、一般に顔料として分類されているものであっても、上記のように溶融ポリエステル中で溶解するものであれば、本発明では染料として用いることができる。具体例として、フタロシアニン系などの銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロムなどの金属イオンとの錯塩染料などを例示することができる。
【0036】
前述のような特定波長領域ごとの光線透過率を制御する観点から、黄色染料、赤色染料、青色染料及び茶色染料のうちの少なくとも2種類以上の染料を組み合わせて使用するのが好ましく、中でも3種類以上の染料を組み合わせて使用するのがさらに好ましく、その中でも特に4種類の染料を組み合わせて使用するのがさらに好ましい。
本発明では、上記染料の分類は、英国染料染色学会、あるいは米国繊維化学技術・染色技術協会による「カラーインデックス」の分類に基づくものである。
【0037】
2種類の染料の組み合わせとしては、黄色染料と赤色染料、黄色染料と青色染料、黄色染料と茶色染料、赤色染料と青色染料、赤色染料と茶色染料、青色染料と茶色染料の組み合わせを挙げることができる。
また、3種類の染料の組み合わせとしては、黄色染料と赤色染料と青色染料、黄色染料と赤色染料と茶色染料、黄色染料と青色染料と茶色染料、赤色染料と青色染料と茶色染料の組み合わせを挙げることができる。
【0038】
各層における染料の含有量(2種類以上の場合は総量)は、0.01~10質量%であるの好ましく、中でも0.05質量%以上或いは7質量%以下、その中でも0.1質量%以上或いは5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
また、上述のように2種類以上の染料を組み合わせて使用する場合、所望する色調確保の観点から、その一例として、黄色染料を多めに配合して、基本となる色調を設定し、その他の色の染料あるいは顔料を適宜組み合わせるなどをすればよい。
具体的には、フィルム中の染料含有量が、(式1)黄色染料≧赤色染料+青色染料+茶色染料(質量%)を満足するように調整するのが好ましい。
さらに、フィルム中の染料含有量が、(式2)黄色染料≧(赤色染料+青色染料+茶色染料)×10(質量%)を満足するように調整するのがより好ましい。
なお、上記(式1)(式2)において、黄色染料、赤色染料、青色染料及び茶色染料は、各染料のフィルム中の含有割合(質量%)を示している。
【0040】
(顔料)
上記顔料としては、光学フィルムに色相を付与するに際して、特にその種類は限定されるわけではなく、必要特性に応じて、適宜選択することができる。例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の粒子が例示される。これらは、ポリエステル中での分散性、耐候性向上などの観点から、アルミニウム、ケイ素、亜鉛などの酸化物などで表面処理されたものであってもよい。
【0041】
無機系着色顔料としては、例えば硫酸カルシウム、アスベスチン、カオリン、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸塩、硫酸塩、リトポン、硫化亜鉛、アンチモン白、四三酸化鉄、クロム酸バリウム、カドミウムエロー、チタンエロー、黄色酸化鉄、黄土、亜鉄酸亜鉛、雄黄、鉛シアナミド、鉛酸カルシウム、赤口黄鉛、クロムバーミリオン、ベンガラ、アンバー、鉛丹、銀朱、カドミウム赤、カドミウムマーキュリーレッド、アンチモン朱、モリブデートオレンジ、黄鉛、マンガン紫、群青、紺青、セルリアンブルー、呉須、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメート、コバルトグリーン、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ビリジアン、エメラルドグリーン、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム等を例示することができ。
【0042】
また、有機系着色顔料を使用してもよく、その具体例としては、例えばアゾ着色顔料、フタロシアニン系、酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ、縮合多環着色顔料、ニトロソ系、アリザリンレーキ系、金属錯塩アゾメチン系、アニリンブラック、アルカリブルー等の着色顔料を例示することができる。
上記アゾ着色顔料としては、例えばモノアゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、金属錯塩アゾ系などの着色顔料を挙げることができ、上記縮合多環顔料としては、例えばアンスラキノン系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、イソインドリン系フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系などの着色顔料を挙げることができる。
【0043】
着色顔料の平均粒径は、5.0μm以下であるのが好ましく、中でも0.01μm以上或いは4.0μm以下、その中でも0.05μm以上或いは3.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
<その他の成分>
ポリエステル樹脂層は、上記ポリエステル、染料乃至顔料のほか、必要に応じて、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが可能である。また、必要に応じて従来公知の帯電防止剤、耐候剤、耐光剤、遮光剤、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、蛍光増白剤等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。例えば視認性を高めるため、白色顔料などの顔料を添加させることができる。
なお、前述した顔料が粒子状である場合、その他の成分としての粒子と重複する場合があるが、本発明においては、光学フィルムの色相に寄与する(影響を及ぼす)粒子であれば、顔料として扱うものとする。その際、当該顔料としての粒子が、その他の成分としての粒子の機能を兼備していてもよい。
【0045】
(粒子)
上述のように、ポリエステル樹脂層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが可能である。
上記粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、酸化チタン、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、セライト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、酸化ケイ素、カオリン、タルク、カーボンブラック、架橋高分子微粉体を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0046】
一方、当該粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0047】
また、当該粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μmの範囲である。
【0048】
さらにポリエステル樹脂層中の粒子含有量については、粒子を含有するポリエステル樹脂層に対し、通常、5質量%以下、好ましくは0.005~4質量%、さらに好ましくは0.005~2質量%の範囲である。
【0049】
<染料、顔料、粒子を含有させる方法>
ポリエステルに粒子や色剤を含有させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、重合工程に添加する方法、押出機を用いて粒子や染料を練込みマスターバッチとする方法等を挙げることができる。
【0050】
<厚み>
本光学フィルムの厚みは10~250μmであるのが好ましく、中でも25μm以上或いは125μm以下、その中でも38μm以上或いは100μm以下であるのがさらに好ましい。
【0051】
<製造方法>
次に、本光学フィルムの製造方法の一例について説明する。
本光学フィルムは、無延伸フィルム(シート)であってもよいし、延伸フィルムであってもよい。中でも、耐熱性、物理的特性等の観点から延伸フィルムが好ましい。また、延伸フィルムである場合、1軸延伸フィルムであってもよいし、2軸延伸フィルムであってもよい。ここでは、本光学フィルムの好ましい形態の一例として、3層のポリエステル樹脂層からなり、その中間層のみに染料および/又は顔料を含有させ、表層には染料及び顔料を含有させない構成のものの製造方法について説明する。但し、このような構成のものに限定するものではない。
【0052】
染料および/又は顔料を所定量含有させ、さらに必要に応じて粒子など他の材料を所定量含有させて、中間層形成用のポリエステル樹脂組成物を調製する一方、これら染料及び顔料を含有させないで表層形成用のポリエステル樹脂組成物を調製して、各々別の溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーを押出口金内において層流状で接合積層させてスリット状のダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法を採用するのが好ましい。
【0053】
延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70~120℃で2~6倍に延伸し、一軸延伸フィルムとした後、横方向に90~160℃で2~6倍延伸を行い二軸延伸フィルムとし、150~250℃で1~600秒間熱処理を行う。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に15%以下で弛緩する方法を挙げることができる。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0054】
<機能層>
次に、上記機能層(X)又は(Y)として設けることができる各種機能層として、易接着層、帯電防止層について順次説明する。
【0055】
<易接着層>
易接着層は、各種光学部材との接着性を高めるための層であり、必要に応じて設けることができる。
易接着層形成用組成物は、少なくとも炭素-炭素二重結合を有する化合物およびウレタン樹脂のいずれかを含有する層とするのが好ましい。
【0056】
(炭素-炭素二重結合を有する化合物)
上記炭素-炭素二重結合を有する化合物は、例えば単官能(メタ)アクリレート基、二官能(メタ)アクリレート基、多官能(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基等を有する化合物を挙げることができる。
なお、「(メタ)アクリレート化合物」の表記は「アクリレート化合物および/またはメタクリレート化合物」を表す。
【0057】
単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0058】
二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0060】
これら単官能(メタ)アクリレート基を有する化合物、二官能(メタ)アクリレート基を有する化合物、多官能(メタ)アクリレート基を有する化合物、ビニル基を有する化合物及びアリル基を有する化合物を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
密着性向上の観点から、これらの(メタ)アクリレート化合物の中でも、二官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートが好ましく、その中でも多官能(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0061】
(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、炭素-炭素二重結合部の(メタ)アクリレート化合物に対する割合は、3質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。その上限は通常40質量%である。
【0062】
(ウレタン樹脂)
上記ウレタン樹脂は、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物であればよく、ポリオールとイソシアネートの反応により得られる高分子化合物であればよい。
当該ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などを挙げることができ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。密着性向上の観点から、ポリカーボネートポリオール類またはポリエステルポリオール類が好ましく、ポリカーボネートポリオール類がより好ましい。
【0063】
上記ウレタン樹脂を構成するポリカーボネートポリオール類としては、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られるものを挙げることができる。
この際、多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等を挙げることができる。
カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等を挙げることができ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等を挙げることができる。
【0064】
上記ウレタン樹脂を構成するポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等を挙げることができる。
【0065】
上記ウレタン樹脂を構成するポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。
【0066】
上記ウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート類としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を例示することができる。これらは単独で用いても複数種併用してもよく、これらのポリイソシアネート化合物は2量体やイソシアヌル環に代表されるような3量体、あるいはそれ以上の重合体であってもよい。また、上記イソシアネートの中でも、活性エネルギー線硬化性塗料との密着性向上、および紫外線による黄変防止の点から、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0067】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミン等を挙げることができる。
【0068】
ウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいし、また、水を媒体とするものでもよい。
水系のウレタン樹脂の場合、ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものを挙げることができ、中でもカルボキシル基が好ましい。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法を採用することができる。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法を採用することができる。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるウレタン樹脂は、塗布液の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を他の架橋剤による架橋反応点として利用できる。これにより、塗布液状態での安定性に優れ、得られる易接着層の耐久性、耐水性、耐ブロッキング性等を更に改善することが可能となる。
【0069】
(バインダーポリマー)
易接着層形成用組成物は、ウレタン樹脂又は炭素-炭素二重結合を有する化合物の他に、塗布外観、透明性、密着性向上の観点から、バインダーポリマーを含有するのが好ましい。
【0070】
バインダーポリマーとは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するポリマーであり、必要条件として数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するポリマーであればよい。
【0071】
バインダーポリマーの具体例としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、又、これらのうちの2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
バインダーポリマーとしての上記ポリエステル樹脂は、主な構成成分として下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物から構成される樹脂であればよい。
【0073】
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸および、2,6-ナフタレンジカルnボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。
【0074】
多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、エチレングリコール変性ビスフェノールA、ジエチレングリコール変性ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物の中からそれぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0075】
バインダーポリマーとしての上記ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であればよい。例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変成化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。
【0076】
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではなく、100以上であるのが好ましく、中でも300以上或いは40000以下、その中でも500以上或いは10000以下であるのがさらに好ましい。かかる範囲を満足することで塗布層の耐水性を確保できる。
ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されなく、70モル%以上であるのが好ましく、中でも80モル%以上或いは99.9モル%以下、その中でも86モル%以上或いは97モル%以下、その中でも95モル%以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
易接着層形成用組成物中のバインダーポリマーの含有量は、30質量%以上であるのが好ましく、中でも40質量%以上、その中でも50質量%以上であるのがさらに好ましい。
他方、良好な塗膜強度を得る観点からは、易接着層形成用組成物中のバインダーポリマーの含有量は、90質量%以下であるのが好ましく、中でも80質量%以下、その中でも75質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0078】
(架橋剤)
易接着層形成用組成物は、さらに架橋剤を含有することにより、硬化後に得られる、易接着層の架橋度を高めて、その接着性及び耐久性を高めることができる。
【0079】
架橋剤としては、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物を使用することが好ましい。中でも密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物またはイソシアネート化合物の少なくとも1種を使用することがより好ましい。
【0080】
架橋剤に用いる上記オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作製できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、0.5~10mmol/gであるのが好ましく、中でも1mmol/g以上或いは9mmol/g以下、その中でも3mmol/g以上或いは8mmol/g以下、その中でも4mmol/g以上或いは6mmol/g以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
架橋剤に用いる上記イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等を例示することができる。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線照射による黄変対策として、脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートが好適である。
【0082】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0083】
イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性向上の点において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0084】
架橋剤に用いる上記エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等を挙げることができる。密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
【0085】
架橋剤に用いる上記メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したタイプ、メラミン化合物の反応性向上のために触媒を併用することもできる。
【0086】
架橋剤に用いる上記カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
このカルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0087】
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、100~1000であるのが好ましく、中でも250以上或いは800以下、その中でも300以上或いは700以下であるのがさらに好ましい。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性が向上する。
【0088】
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0089】
かかる架橋成分を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
【0090】
なお、このようにして易接着層を形成すれば、その易接着層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0091】
易接着層形成用組成物中の架橋剤の含有量は、硬化後に良好な塗膜強度が得られる観点から、10質量%以上であるのが好ましく、中でも20質量%以上、その中でも25質量%以上であるのがさらに好ましい。
他方、粘着剤層など、別の機能層との良好な密着性が得られる観点から、易接着層形成用組成物中の架橋剤の含有量は、70質量%以下であるのが好ましく、中でも60質量%以下、その中でも50質量%以下の範囲であるのがさらに好ましい。
【0092】
(含有成分)
易接着層形成用組成物は、滑り性やブロッキングの改良のため、粒子を含有してもよい。
易接着層が粒子を含有する場合、その平均粒径は、フィルム透明性の観点から、1.0μm以下の範囲であるのが好ましく、中でも0.5μm以下、その中でも0.2μm以下であるのがさらに好ましい。
易接着層が含有する粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等の粒子を挙げることができる。
【0093】
易接着層形成用組成物は、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を含有してもよい。
これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0094】
(易接着層形成用組成物の形成方法)
易接着層形成用組成物を設ける方法は、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0095】
易接着層は、例えば、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングによって設けることができる。但し、この形成方法に限定するものではない。
インラインコーティングによって設ける場合、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1~50質量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布するようにするのが好ましい。
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0096】
易接着層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより易接着層形成用組成物を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
一方、インラインコーティングにより易接着層形成用組成物を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0097】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、易接着層を形成する対象面には、予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0098】
(厚さ)
易接着層の膜厚(乾燥後)は、0.002μm~10.0μmであるのが好ましく、中でも0.005μm以上或いは5μm以下、その中でも0.01μm以上或いは2μm以下、その中でも0.01μm以上或いは0.5μm以下の範囲であるのがさらに好ましい。
易接着層の膜厚が上記の範囲であれば、密着性を確保することができると共に、ブロッキングの悪化やヘーズ上昇等を抑制することができる。
【0099】
<帯電防止層>
帯電防止層は、電子導電性化合物を含有していればよい。
電子導電性有機化合物としては、例えばポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、及びポリチオフェン等が挙げられる。これらの中でポリチオフェン、すなわち、チオフェン若しくはチオフェン誘導体を単独又は共重合して得られる重合体などを挙げることができる。
また、帯電防止層は、上記電子導電性化合物のほかに、ポリアルキレンオキサイド、グリセリン、ポリグリセリン、及びグリセリン又はポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物の群から選ばれる1種以上の化合物又はその誘導体を含有していると、より好ましい。
【0100】
塗布により帯電防止層を形成する際、その塗布液には、例えば界面活性剤、その他のバインダー、粒子、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよい。必要に応じて二種以上を併用してもよい。
また、塗布前にポリエステルフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0101】
なお、帯電防止層を設けた場合、本光学フィルムの表面固有抵抗は1×1011Ω以下が好ましい。表面固有抵抗は1×1011Ωを越える場合には、光学フィルムを使用する加工工程において、剥離帯電等の不具合を生じる場合がある。
【0102】
<機能層の形成方法>
上記機能層の形成方法は、各機能層の項目でも記載したように、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成することが好ましい。但し、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用することも可能である。
【0103】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0104】
<<本フィルム積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る本フィルム積層体は、上記本光学フィルムの片面に、粘着層を介して樹脂フィルムが積層されたフィルム積層体であり、フィルム積層体のフィルムヘーズが15%以下であり、450nmの光線透過率が1%以下であり、550nmの光線透過率が15%~30%であり、色調(b*)値が70以上であることを特徴するフィルム積層体である。
【0105】
<粘着剤層>
本フィルム積層体における「粘着剤層」とは、粘着性を有する材料から構成される層を意味し、本発明における主旨を損なわない範囲において、従来から公知の材料を用いることができる。具体例の一つとして、アクリル系粘着剤を使用する場合について、以下に説明する。
【0106】
アクリル系粘着剤とは、アクリル系モノマーを必須の単量体(モノマー)成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着層のことを意味する。
当該アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として、さらに好ましくは、主たるモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。
さらに、アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0107】
<樹脂フィルム>
本フィルム積層体における樹脂フィルムは、LED光源のLEDを搭載する基板として用いることができる。そのため、LEDの発光に伴い、LED自体が発熱体となるので、耐熱性が良好であることが好ましい。かかる観点から、該樹脂フィルムのガラス転移温度は200℃以上であるのが好ましく、中でも230℃以上、その中でも250℃以上であるのがさらに好ましい。
前記ガラス転移温度条件を満足する樹脂フィルムの中でも、特にポリイミドフィルムが好ましい。
【0108】
ポリイミドフィルムは、市販のポリイミドフィルムを使用しても、流延法、射出法、延伸法等の公知の方法で形成したものを使用してもよい。
該高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムとしては、30モル%以上、特には50モル%以上のビフェニルテトラカルボン酸成分(特に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)と50モル%以上のフェニレンジアミン成分(特にp-フェニレンジアミン)とから、重合およびイミド化によって得られる芳香族ポリイミドであることが、得られるポリイミドフィルムおよび耐熱性、機械的強度などの点から好ましい。
市販品の具体例としては、宇部興産社製の商品名「ユーピレックスS」、鐘淵化学工業社製の商品名「アピカルAH」、「アピカルNPI」、東レ・デュポン社製の商品名「カプトンHタイプ」などが例示される。
【0109】
一方、熱可塑性の芳香族ポリイミドは、主鎖にイミド構造を有するポリマーであって、ガラス転移温度が、概ね150~350℃、好ましくは200~300℃の範囲内にあり、ガラス転移温度以上の温度領域で、弾性率が急激に低下するものである。上記熱可塑性の芳香族ポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸成分としてベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物も使用可能であるが、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。そのなかでも特に芳香族テトラカルボン酸成分として、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン二無水物を芳香族テトラカルボン酸成分中30モル%以上、特に50モル%以上使用したものが好ましい。また、芳香族ジアミン成分としては、ジアミノジフェニルエーテル類、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン類が好ましい。また、ジアミン成分として、5~25モル%のジアミノシロキサンと75~95モル%の芳香族ジアミンとを使用したものが好適に使用される。
【0110】
樹脂フィルムの厚みは、特に限定されない。通常は5μm~150μmであり、中でも10μm以上或いは100μm以下が好ましく、その中でも20μm以上或いは75μm以下であるのがさらに好ましい。
【0111】
樹脂フィルムの表面は、プラズマ処理したり、或いは、ポリアミック酸フィルムの段階でその表面をアミノシランカップリング剤で処理したり、さらに乾燥及び加熱処理したものでもよい。
【0112】
<本フィルム積層体の製造方法>
本フィルム積層体は、上記樹脂フィルム上に上記粘着剤層を形成し、本光学フィルムを貼り合わせる方法などにより、製造することができる。
【0113】
<<本ディスプレイユニット>>
本光学フィルム又は本フィルム積層体を用いてディスプレイユニット(「本ディスプレイユニット」と称する)を構成することができる。
【0114】
本ディスプレイユニットの一例として、
図2又は
図3に示すように、本光学フィルム又は本フィルム積層体を、LED光源の下側すなわち視認側とは反対側に配置し、本光学フィルム又は本フィルム積層体の下側すなわち視認側とは反対側には反射材(メタル層)を配置する例を挙げることができる。前記反射材を配置することで、LED光源から発光した光線が上側(視認側)にのみ発光する場合、意図せずに背面側(下側)に漏れる光であっても有効利用することができる。そして、前記LED光源から発光した光線は、上側及び下側の2方向、すなわち視認側及びその反対側の2方向に少なくとも進むように設計されているのが好ましい。
【0115】
上記構成を備えた本ディスプレイユニットであれば、
図2又は
図3に示すように、前記LED光源から発光した光線のうち上側すなわち視認側には、LED光源から発光した光L1が進む一方、前記LED光源から発光した光線のうち下側すなわち視認側とは反対側に進んだ光L1は、本光学フィルム又は本フィルム積層体を通過して所定の波長が吸収された光L2となり、反射材で反射して、再び本光学フィルム又は本フィルム積層体を通過して、所定の波長が吸収された光L2としてLED光源の視認側に供給される。よって、本ディスプレイユニットによれば、視認側に光L1及び光L2を供給することができる。
【0116】
LED光源は、通常、400nm~480nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値が、500nm~600nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値に比べて大きい、例えば1.5~2倍大きいのが普通である。
本光学フィルム又は本フィルム積層体は、400nm~480nmの波長範囲の光線を選択的に吸収し、500nm~600nmの波長範囲の光線を選択的に吸収しないから、本ディスプレイユニットから視認側に供給する光L1及び光L2に関しては、400nm~480nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値と、500nm~600nmの波長範囲における発光スペクトルの最大値との差異を小さくして、発光スペクトルの均一化を図ることができると同時に、光L1及び光L2の加算により輝度を高めることができる。
【0117】
よって、本ディスプレイユニットにおいては、十分な発光強度をもつ波長において、不必要にそれ以上、発光強度を強くする必要がないので、550nmの波長においては、本光学フィルム又は本フィルム積層体の光線透過率(T1<550>>)とLED光源の相対放射強度(T2<550>)との合計値(T1<550>+T2<550>)が80%以上、中でも90%以上、その中でも95%以上とすることができる。
他方、450nmの波長においては、本光学フィルム又は本フィルム積層体の光線透過率(T1<450>)とLED光源の相対放射強度(T2<450>)との合計値(T1<450>+T2<450>)を105%以下、中でも103%以下、その中でも101%以下とすることができる。
ちなみに、550nmの波長におけるLED光源の相対放射強度(T2<550>)は通常30~50%であり、450nmの波長におけるLED光源の相対放射強度(T2<450>)は通常80~100%である。
【0118】
なお、上記LED源は、平行な平面状に光源を並べて配置された直下型方式のものであってもよい。この際、本光学フィルム又は本フィルム積層体とLED光源との間には、必要に応じて、拡散板などを設けてもよい。
また、上記面状光源は、周側に配置されたLED光源と、該LED光源から出射された一次光を視認側に導光させて出射させる導光板とからなるエッジライト方式のものであってもよい。
【0119】
なお、本ディスプレイユニットは、公知の光学部材を任意に備えてもよい。例えば公知の拡散板や拡散シート、プリズムシート、導光板などを備えることが可能である。
【0120】
(本ディスプレイ表示装置)
上記本ディスプレイユニットと、ディスプレイ例えば液晶ユニットを組み合わせてディスプレイ表示装置(「本ディスプレイ表示装置」と称する)、例えば液晶表示装置を構成することができる。
【0121】
この際、液晶セルユニットは、液晶セルを2つに偏光板で挟持した構成であるのが通常である。また、塗布型偏光板(円偏光板)を用いてもよい。
【0122】
本ディスプレイ表示装置は、さらに必要に応じて、透明電極層(例えば、フィルムセンサーなど)、光学補償を行う光学補償部材、カラーフィルター基板、薄層トランジスタ基板、レンズフィルム、拡散シート、ハードコート層、反射防止層、低反射層、アンチグレア層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層、接着層などを任意に設けることが可能である。
【0123】
上述のように、本光学フィルム又は本フィルム積層体を始めからディスプレイの構成部材として搭載することを前提として、来る将来に構成部材の経時劣化、例えば上述のような透明電極の経時劣化に伴い、変色することによる表示画面の色彩変化を予測し、染料や顔料の種類と量を調整するなどして、本光学フィルム又は本フィルム積層体の色調を、当該変化後の色調と同程度の色調に合わせこんでおくことで、劣化部材の変化後の色相と同調させることができ、その結果、表示画面の色彩変化を目立たなくすることができる。例えば、透明電極(ITO部材)の経時劣化に伴って黄色系あるいは茶色系などに変色することを予想して、茶色染料を使用して本光学フィルム又は本フィルム積層体を茶色系に着色しておけばよい。このようにすれば、透明電極(ITO部材)の経時劣化に伴って黄色系あるいは茶色系などに変色した場合であっても、本来、表示画面が有するはずの色彩とは異なる、予期しない色彩になることを事前に防止することができる。
【0124】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0125】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0127】
<材料>
実施例および比較例において使用した各種材料は、以下のようにして準備したものである。
【0128】
(茶色染料)
茶色染料として、下記式(化1)で示される構造を有する、[2,3-ビス[[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]アミノ-N]-2-ブテンジニトリラト(2-)]ニッケルを用意した。
【0129】
【0130】
(青色染料)
青色染料として、下記式(化2)で示される構造を有する、4,11-ジアミノ-2-(3-メトキシプロピル)-1H-ナフト[2,3-f]イソインドール-1,3,5,10(2H)-テトラオンを用意した。
【0131】
【0132】
(赤色染料)
赤色染料として、下記式(化3)で示される構造を有する、3‐メチル‐6‐[(4‐メチルフェニル)アミノ]‐3H‐ジベンゾ[f,ij]イソキノリン‐2,7‐ジオンを用意した。
【0133】
【0134】
(黄色染料)
黄色染料として、下記式(化4)で示される構造を有する、1,1'-[(6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10-アントラセンジオン)を用意した。
【0135】
【0136】
<ポリエステルAの製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの極限粘度は0.65dl/gであった。
【0137】
<ポリエステルBの製造方法>
ポリエステルAの製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65dl/gに相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステルAの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルBを得た。得られたポリエステルBは、極限粘度0.65dl/gであった。
【0138】
<ポリエステルCの製造方法>
ポリエステルAをあらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.85dl/gのポリエステルCを得た。
【0139】
<ポリエステルDの製造方法>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供すると共に、これに上記黄色染料を混合して、溶融混練りを行ってチップ化を行い、極限粘度0.65dl/g、染料濃度9質量%の染料マスターバッチとしてポリエステルDを作製した。
【0140】
<ポリエステルEの製造方法>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供すると共に、これに、上記赤色染料0.5質量%、上記青色染料2.5質量%及び上記茶色染料2質量%の各濃度となるように各染料を混合して、溶融混練りを行ってチップ化を行い、極限粘度0.65dl/g、染料濃度5質量%の染料マスターバッチとしてポリエステルEを作製した。
【0141】
[実施例1]
<ポリエステルフィルムF1の製造方法>
上記ポリエステルA及びBを、ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比で混合してA層原料を調製する一方、上記ポリエステルA、D及びEを、ポリエステルA/D/E=82.4/16/1.6(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製し、それぞれ2台の二軸押出機に供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(外層)、B層を中間層として、2種3層の構成で20℃に冷却したキャスティングドラム上に共押出し、冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、90℃にて縦方向に3.0倍延伸した後、下記機能層組成物x、yを、塗布量(乾燥後)が0.04g/m2になるように、それぞれシートの両面に塗布し、次いで、テンター内で予熱工程を経て125℃で4.3倍の横延伸を施した後、230℃で5秒間の熱処理を行い、その後140℃で幅方向に4.0%の弛緩を加え、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/5μm/40μm/5μm/0.04μm、厚み50μmのポリエステルフィルム(サンプル)F1を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は1.216質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は1.152/0.006/0.032/0.026であった。
【0142】
[機能層組成物x、y]
(P)架橋剤
(P1):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(P2):オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー
(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
(P3):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
【0143】
(Q)バインダー樹脂
(Q1):ケン化度が88%の重合度500のポリビニルアルコール
(Q2)ポリエステル樹脂:下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0144】
(R)帯電防止剤
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとN-メチロールアクリルアミドとN-Nジ
メチルアクリルアミドを質量比率で90/5/5の比率で共重合させた、数平均分量が2
0000である、主鎖にカチオンを有するカチオン性基含有樹脂
【0145】
(S)粒子
シリカ粒子(平均粒径:70nm)
【0146】
易接着層としての機能層Xを形成する機能層組成物xは、上記P1、P2、Q2及びS(粒子)を、P1/P2/Q2/S=20/20/55/5(質量%)の比率で配合して調製した。
他方、帯電防止層としての機能層Yを形成する機能層組成物yは、上記P2、P3、Q1、R(帯電防止剤)及びS(粒子)を、P2/P3/Q1/R/S=15/15/25/40/5(質量%)の比率で配合して調製した。
【0147】
[実施例2]
<ポリエステルフィルムF2の製造方法>
上記ポリエステルA及びBを、ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比で混合してA層原料を調製する一方、上記ポリエステルA、D及びEを、ポリエステルA/D/E=93/5/2(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製した以外は、ポリエステルフィルムF1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/12.5μm/100μm/12.5μm/0.04μm、厚み125μmのポリエステルフィルム(サンプル)F2を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は0.44質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は0.36/0.008/0.04/0.032であった。
【0148】
[実施例3]
<ポリエステルフィルムF3の製造方法>
上記ポリエステルA及びBを、ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比で混合してA層原料を調製する一方、上記ポリエステルA、D及びEを、ポリエステルA/D/E=94/5/1(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製した以外は、ポリエステルフィルムF1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/15μm/120μm/15μm/0.04μm、厚み150μmのポリエステルフィルム(サンプル)F3を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は0.40質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は0.36/0.004/0.02/0.016であった。
【0149】
[実施例4]
<ポリエステルフィルムF4の製造方法>
上記ポリエステルA及びBを、ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比で混合してA層原料を調製する一方、上記ポリエステルA、D及びEを、ポリエステルA/D/E=94.5/5/0.5(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製した以外は、ポリエステルフィルムF1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/18μm/144μm/18μm/0.04μm、厚み180μmのポリエステルフィルム(サンプル)F4を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は0.38質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は0.36/0.002/0.01/0.008であった。
【0150】
[実施例5]
<ポリエステルフィルムF5の製造方法>
上記ポリエステルA及びBを、ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比で混合してA層原料を調製する一方、上記ポリエステルA、D及びEを、ポリエステルA/D/E=89/10/1(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製した以外は、ポリエステルフィルムF1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/12.5μm/100μm/12.5μm/0.04μm、厚み125μmのポリエステルフィルム(サンプル)F5を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は0.76質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は0.72/0.004/0.02/0.016であった。
【0151】
[実施例6]
<ポリエステルフィルムF6の製造方法>
実施例1において、機能層X,Yを設ける代わりに機能層Xのみを設けた以外は、実施例1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層=0.04μm/5μm/40μm/5μm、厚み50μmのポリエステルフィルム(サンプル)F6を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は1.216質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は1.152/0.006/0.032/0.026であった。
【0152】
[実施例7]
<ポリエステルフィルムF7の製造方法>
実施例1において、機能層X,Yを設ける代わりに機能層Yのみを設けた以外は、実施例1と同様にして製造し、層構成がA層/B層/A層/機能層Y=5μm/40μm/5μm/0.04μm、厚み50μmのポリエステルフィルム(サンプル)F7を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は1.216質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は1.152/0.006/0.032/0.026であった。
【0153】
[実施例8]
<ポリエステルフィルムF8の製造方法>
実施例1において、A層原料配合をポリエステルA/C=90/10(質量%)の配合比に変更して、且つ、機能層X,Yを設けなかった以外は、実施例1と同様にして製造し、層構成がA層/B層/A層=5μm/40μm/5μm、厚み50μmのポリエステルフィルム(サンプル)F8を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は1.216質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は1.152/0.006/0.032/0.026であった。
【0154】
[比較例1]
<ポリエステルフィルムF9の製造方法>
実施例1のB層原料の調製において、上記ポリエステルA及びDを、ポリエステルA/D=95/5(質量%)の配合比で混合してB層原料を調製した以外は、実施例1と同様にして製造し、層構成が機能層X/A層/B層/A層/機能層Y=0.04μm/12.5μm/100μm/12.5/0.04μm、厚み125μmのポリエステルフィルム(サンプル)F9を得た。
なお、ポリエステルフィルム(サンプル)中の染料顔料濃度は0.36質量%であり、黄色/赤色/青色/茶色の染料質量比率は0.36/0/0/0であった。
【0155】
<評価方法>
実施例・比較例で行った各種数値の測定方法について説明する。
【0156】
(1)ポリエステルの極限粘度(dl/g)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて前記ポリエステルを溶解させて、30℃で極限粘度を測定した。
【0157】
(2)ポリエステル原料中の粒子の平均粒径(d50:μm)
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して、等価球形分布における積算(質量基準)50%の値を測定し、これを平均粒径とした。
【0158】
(3)機能層(X)(Y)の膜厚測定方法
機能層(X)(Y)の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO4染色し、機能層断面を透過型電子顕微鏡(Hitachi社製 H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
【0159】
(4)フィルムヘーズ、全光線透過率
JIS K 7136に準拠し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター DH-2000を使用して、ヘーズ及び全光線透過率を測定した。
【0160】
(5)光学フィルムの色目評価(b*)
実施例および比較例で作製したポリエステルフィルム(サンプル)を用いて、分光測色計「CM-3700d」(コニカミノルタ社製)により、色調反射法b*値を測定した。測定に際して、光源にはC光源を使用した。
【0161】
(6)接着性の評価方法(実用特性代用評価)
紫外線硬化アクリル樹脂であるカヤノーバFOP-1100(日本化薬株式会社製)74質量部とメチルエチルケトン86質量部との混合塗液を、ポリエステルフィルム(サンプル)の機能層(X)形成面に乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、70℃で1分間乾燥して溶剤を除去した後、紫外線を60mJ/cm2照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
得られたハードコート層付きフィルムを、10mm×10mmの大きさにクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT-18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
《判定基準》
〇(very good):機能層(X)とハードコート層の間で剥離した面積が20%未満。
●(good):機能層(X)とハードコート層の間で剥離した面積が20%以上50%未満
△(not good):機能層(X)とハードコート層の間で剥離した面積が50%以上。
【0162】
(7)帯電防止性の評価方法
日本ヒューレット・パッカード株式会社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気で、ポリエステルフィルム(サンプル)を30分間調湿後、表面抵抗値を測定した。
《判定基準》
○(good):1×1011Ω以下。
△(not good):1×1011Ωを越える。
【0163】
(8)表示画面の明るさ(均一性)評価(実用特性代用評価)
コニカミノルタ社製分光測色計「CM-3700d」を用いて、ポリエステルフィルム(サンプル)について、400nm~720nmの波長領域において、各測定波長における光線透過率(T1)を測定した。
一方、評価用のLED面光源(TRYTEC社製TREVIEWER A4-500)を用いて、400nm~720nmまでの各測定波長における相対放射強度(T2)を測定した。そして、450nmと550nmにおける、T1とT2との合計値(T1+T2)を求めた。
次に、両面発光型LED面光源の一方にアルミ製反射板を取り付け、面光源とアルミ製反射板との間に、実施例および比較例のサンプルを挟み、側面を遮光テープでマスキングした。その後、アルミ製反射板を取り付けていない側のLED光源面から、目視観察により、光源の明るさおよび光源の色調を官能評価した。T1とT2との合計値の結果と官能評価の結果から、下記基準により判定を行った。
《判定基準》
○(good):450nm:T1<450>+T2<450>の合計値が105%以下。
550nm:T1<550>+T2<550>の合計値が80%以上。 (表示画面が均一に白く鮮やかに見える。)
×(poor):450nm:T1<450>+T2<450>の合計値が105%を超える。
(表示画面が部分的に青みの強い色調の画面に見える。)
又は、
550nm:T1<550>+T2<550>の合計値が80%未満。
(表示画面の明るさがアルミ製反射板を取り付け前と大きく変わらない。)
【0164】
(9)色調認識性(実用特性代用評価)
劣化した透明電極層の色調代用評価として、次の試験を行った。
インクジェットプリンターを用いて、A4判サイズの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材(100μm)上に茶色系に調色した染料から構成される塗布液をプリンター用インキとして用い、格子状のパターン印刷を行った。
次に、その下に前記格子状のパターン印刷層付き透明フィルムの上にポリエステルフィルム(サンプル)を配置した。ポリエステルフィルム(サンプル)側から目視観察した時のパターン印刷層の見え方につき、下記判定基準により、判定を行った。
《判定基準》
○(good):フィルム色と同調して、パターン印刷層が見えにくくなる。
△(usual):フィルム色と同調しているが、パターン印刷層の輪郭がわずかに確認できる。
×(poor):明瞭にパターン印刷層が確認できる。
【0165】
なお、本評価に用いた基準サンプル(劣化した透明電極層の代用評価)の光学特性は
以下の通りである。
L*値:64.9 a*値:13.5 b*値:96.7
【0166】
(10)総合評価
上記評価、すなわち表示画面の明るさ、色調認識性、接着性、帯電防止性の各項目における判定結果に基づき、下記基準により、実施例および比較例で得られたポリエステルフィルム(サンプル)の総合評価をした。
《判定基準》
○(good):表示画面の明るさ、色調認識性、接着性、帯電防止性のすべての項目が○判定。
△(not good):表示画面の明るさ及び色調認識性はいずれも〇判定だが、接着性及び帯電防止性のうち、少なくとも1つが△
×(poor):表示画面の明るさ及び色調認識性のうち、少なくとも一つが×判定。
【0167】
<評価結果>
上記実施例および比較例で得られた、各光学フィルムの特性を下記表1に示す。
【0168】
【0169】
<考察>
比較例1あるいは参考例(
図4)より、光学用途に使用される一般的なフィルムは、測定波長に関係なく、全体的に光線透過率を高く設計する傾向にあることが確認された。さらに、単純にフィルムを着色させただけでは、選択的な光制御機能を持たないことが確認された。例えば分光スペクトルより、測定波長ごとの光線透過率が、ほぼ一定であることが確認された。また、450nm波長の光の発光強度が不必要に強い場合には、得られる表示画面の色彩が部分的に青っぽい色彩となり、均一な白い色彩を有する表示画面を得るのが困難であることも分かった。
これに対し、実施例で得られた光学フィルムを用いることにより、特定波長領域における光線透過率を選択的に制御できることがわかった。
【0170】
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、光学フィルムにおける特定波長領域の透過率を任意に制御することで、本来、透過させたくない波長領域の光を遮断することができる。
具体的には、染料および/または顔料を用いてポリエステルフィルムのフィルムヘーズ、色調(b
*)値、さらには各波長毎の光線透過率を制御することができ、フィルムヘーズを6%以下に調整し、450nmの光線透過率を4%以下に調整し、550nmの光線透過率を20%以上に調整し、且つ色調(b
*)値を50以上に調整して本光学フィルムを調製することができる。
LED光源から発する光は、波長ごとに光線透過率に偏りがあり、特に人が明るいと感じる波長領域(500nm~600nm)の発光強度が弱い傾向にあった(
図1)。しかし、同じ波長領域に発光スペクトルのピークを持つLED光源を本光学フィルムとともにディスプレイに搭載すると、LED光源から発する光を阻害することなく、むしろ、発光強度が不足する波長領域を補強して、全体を均一化することを目的とする。その結果、LED光源の各波長の光線透過率の偏りを解消、均一化するため、表示画面の色彩の均一化並びにさらなる輝度向上を図ることができることが分かった。
【0171】
また、
図2に示すように、LED光源と反射材(メタル層)との間に本光学フィルムを配置し、LED光源から発した光が上下2方向、すなわち、本光学フィルム側と視認側の2方向に進むようにしてなる構成を備えたディスプレイユニットにおいて、本発明の効果をより一層享受することができる。
LED光源から発する光は、視認側に向かう光L1(ToP)と、下側に向かう光L1(Bottom)との2方向の光がある。前記光L1(Bottom)は、本光学フィルムを通過した後、400nm~720nm波長における光線透過率が段階的に高波長側になるほど、順に大きくなるように波長分布が補正された光L2となる。該光L2は、反射材(メタル層)で反射した後、向きを変えて、そのまま視認側に向かって戻ってくる。その後、前記光L1(Top)と合流した状態で、表示画面へと向かう。その結果、LED光源の視認側の光量(光L1(ToP)+光L2)が全体的に増加し、且つ、より均一化することにより、表示画面の色彩の均一化およびさらなる輝度向上が可能となる。例えば、550nm近傍の波長の光を用いて、(デジタル)画像を読み取る際にも、(デジタル)画像がぼやけることもなく、より鮮明な(デジタル)画像として、読み取ることが可能となる。
【0172】
さらに、また、本光学フィルム自身が茶色系などに着色している場合には、ディスプレイ用構成部材の経時劣化、たとえば、透明電極(ITO部材)の経時劣化に伴う着色(黄色系あるいは茶色系などに変色する現象)により、本来、表示画面が有するはずの色彩とは異なる、予期しない色彩になることを事前に防止することができる。すなわち、本光学フィルムを、始めからディスプレイの構成部材として搭載することを前提として、来る将来に構成部材の経時劣化(例えば、透明電極)に伴い、変色することによる表示画面の色彩変化を予測し、本光学フィルムをあらかじめ、同程度の色調に合わせこんでおくことで、劣化部材の変化後の色相と同調することができ、その結果、表示画面の色彩変化を目立たなくすることができる。
【0173】
前述の通り、本発明者による検討結果より、LED光源が本来有する発光性能を活かしつつ、光源の発光強度の「補強」という、まったく新しい着想により設計された、本光学フィルムを用いることで、細やかな光線透過率の選択的な制御、および色調調整が可能となる。また、得られる異質な作用効果に着目して、ディスプレイ(表示画面)用構成部材に応用したのが本願発明である。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の光学フィルムによれば、特定波長領域の光線透過率を任意に制御する、いわゆる光制御性が良好である。特にLED光源と組み合わせて用いた場合、LED光源から発する光の発光性能(光線透過率)を阻害することなく、むしろ、可視光領域の短波長(400nm)側から長波長(720nm)側にいたるまで、発光強度が不足する波長領域を選択的に補強して、全体を均一化することを目的とする。その結果、元々、LED光源から発する光は波長ごとに光線透過率に偏りがあり、そのことが表示画面の色彩の偏り(例えば、450nmの発光強度が強すぎる場合、得られる表示画面の色彩において、青みが強くなる傾向にある。)の原因とも考えられていたが、本光学フィルムを併用することで、その偏りを解消し、均一化することで、表示画面の色彩の均一化並びにさらなる輝度向上が可能となる。例えば、550nm近傍の可視光領域の波長の光を利用して(デジタル)画像を読み取る場合でも、(デジタル)画像がぼやけることもなく、鮮明な(デジタル)画像として、読み取ることが可能となる。
また、フィルム自体の着色に伴い、透明電極層など、構成部材の経時劣化に伴う、表示画面の予期せぬ色彩変化を抑制することも可能である。さらに機能層をフィルムに設けた場合にはハードコート層などの機能層に対する接着性および帯電防止性を付与することが可能であるため、その工業的価値は高い。