(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】酸化鉱石の製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/02 20060101AFI20230829BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20230829BHJP
C22C 33/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C22B23/02
C22B5/10
C22C33/04 H
(21)【出願番号】P 2019144791
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】井関 隆士
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-156140(JP,A)
【文献】特開2008-180451(JP,A)
【文献】特開2003-207273(JP,A)
【文献】特許第3086450(JP,B1)
【文献】特開2019-099831(JP,A)
【文献】特開2018-127693(JP,A)
【文献】特開2018-197381(JP,A)
【文献】特開2011-099153(JP,A)
【文献】特開平11-193423(JP,A)
【文献】特開2019-019346(JP,A)
【文献】特開昭63-235436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C21B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物に還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る製錬方法であって、
酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を外熱式キルンにより乾燥する乾燥工程
と、
乾燥後の前記混合物を加熱して還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る還元工程と、
を有
し、
前記乾燥工程では、前記外熱式キルンに装入した前記混合物全量に対する前記混合物の乾燥中に流れ出たダストの量であるダスト発生率が3.6%以下である
酸化鉱石の製錬方法。
【請求項2】
前記乾燥工程では、前記外熱式キルンにより前記混合物中の水分率が10.0質量%以下となるように乾燥する
請求項1に記載の酸化鉱石の製錬方法。
【請求項3】
前記外熱式キルンは熱源としてバーナーを備える
請求項1又は2に記載の酸化鉱石の製錬方法。
【請求項4】
前記乾燥工程では、前記外熱式キルンの内部を負圧
にして前記混合物を乾燥する
請求項1から3のいずれかに記載の酸化鉱石の製錬方法。
【請求項5】
前記乾燥工程での乾燥後の混合物を還元炉に装入し、該混合物を加熱して還元することによってメタルとスラグとを含む熔融状態の還元物を得る還元工程を有する
請求項1から4のいずれかに記載の酸化鉱石の製錬方法。
【請求項6】
前記酸化鉱石はニッケル酸化鉱石であり、該ニッケル酸化鉱石を還元してフェロニッケルを製造する
請求項1から5のいずれかに記載の酸化鉱石の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉱石の製錬方法に関するものであり、例えば、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を原料として炭素質還元剤により還元することで還元物を得る製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化鉱石の一種であるリモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法として、熔錬炉を使用してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用して鉄とニッケルの合金(以下、鉄とニッケルの合金を「フェロニッケル」ともいう)を製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して高温高圧で酸浸出し、ニッケルやコバルトが混在した混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
【0003】
上述した様々な方法の中で、特に乾式製錬法を用いてニッケル酸化鉱石を還元して製錬する場合、反応を進めるために原料のニッケル酸化鉱石を適度な大きさに破砕する等する処理が前処理として行われる。そして、その破砕されたニッケル酸化鉱石と、それ以外の成分、例えばバインダーやコークス等の還元剤とを混合して混合物として、その混合物に還元処理を施すのが一般的である。
【0004】
混合物は還元処理において混合物内で均一に還元が進まないと、得られる還元物の組成が不均一になり、メタルが分散したり偏在したりする等の不都合が生じる。そのため、ペレットを作製する際には混合物を均一に混合し、得られた混合物を還元する際には可能な限り均一な温度を維持することが重要となる。
【0005】
加えて、還元処理により生成するメタル(フェロニッケル)を粗大化させることも非常に重要な技術である。生成したフェロニッケルが、例えば数10μm以上数100μm以下の細かな大きさであった場合、同時に生成するスラグと分離することが困難となり、フェロニッケルとしての回収率(収率)が大きく低下してしまう。そのため、還元後のフェロニッケルを粗大化する処理が必要となる。
【0006】
例えば、特許文献1には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含む混合物を加熱して、混合物に含まれる金属酸化物を還元溶融して粒状金属を製造するにあたり、粒状金属の生産性を一層高める技術を提案すること、を目的とする技術が開示されている。具体的には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含む混合物を、移動床型還元溶融炉の炉床上に供給して加熱し、金属酸化物を還元溶融した後、得られる粒状金属を冷却してから炉外へ排出して回収する粒状金属の製造方法である。その加熱では、混合物中の酸化鉄を固体還元する炉の前半領域における炉内温度を1300℃以上1450℃以下とし、塊成物中の還元鉄を浸炭、溶融させ、凝集させる炉の後半領域における炉内温度を1400℃以上1550℃以下とすると共に、炉床上に敷き詰めた混合物同士の距離を0としたときの混合物の炉床への最大投影面積率に対し、炉床上に敷き詰めた混合物の炉床への投影面積率の相対値を敷密度としたとき、炉床上における混合物の敷密度を0.5以上0.8以下として加熱する際に、平均直径が19.5mm以上32mm以下の混合物を炉床上に供給することを特徴としている。
【0007】
また、特許文献1には、混合物の敷密度と平均直径と併せて制御することによって、粒状金属鉄の生産性を向上できる、ことも示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、あくまで混合物の外面側での反応に関する技術であるが、還元反応に最も重要な要素は、還元反応が起きる混合物内の状態であることはいうまでもない。すなわち、混合物の内部での還元反応が制御することによって、反応効率や均一な還元反応が実現し、その結果高品質のメタルを製造することができると考えられる。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の技術のように、混合物の直径が決められた範囲に限定されると、混合物を製造する際の収率の低下が避けられず、その結果としてコストアップになる懸念がある。なお、混合物の敷密度が0.5以上0.8以下の範囲では、細密充填でないうえ、混合物を積層することも難しくなるため、効率の低い処理となってしまう。
【0010】
上述したように、ニッケル酸化鉱石を混合、還元して、ニッケルと鉄とを含むメタルを製造するにあたって、生産性を高くすること、低コスト化すること、高品質化することは、重要な要素であるにもかかわらず、多くの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を含む混合物を還元することでメタルを製造する製錬方法において、得られるメタルの回収率を向上させるとともに、メタルの品位を高めることにより高品質のメタルを効率的に製造することができる酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、還元処理を施すに先立ち、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物を外熱式キルンにより乾燥する乾燥工程を有することによって上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
(1)本発明の第1は、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物に還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る製錬方法であって、前記混合物を外熱式キルンにより乾燥する乾燥工程を有する酸化鉱石の製錬方法である。
【0015】
(2)本発明の第2は、第1の発明において、前記外熱式キルンにより前記混合物中の水分率は10.0質量%以下となるように乾燥する酸化鉱石の製錬方法である。
【0016】
(3)本発明の第3は、第1又は第2の発明において、前記外熱式キルンは熱源としてバーナーを備える酸化鉱石の製錬方法である。
【0017】
(4)本発明の第4は、第1から第3のいずれかの発明において、前記外熱式キルンの内部を負圧して前記混合物を乾燥する酸化鉱石の製錬方法である。
【0018】
(5)本発明の第5は、第1から第4のいずれかの発明において、前記乾燥工程での乾燥後の混合物を還元炉に装入し、該混合物を加熱して還元することによってメタルとスラグとを含む熔融状態の還元物を得る還元工程を有する酸化鉱石の製錬方法である。
【0019】
(6)本発明の第6は、第1から第5のいずれかの発明において、前記酸化鉱石はニッケル酸化鉱石であり、該ニッケル酸化鉱石を還元してフェロニッケルを製造する酸化鉱石の製錬方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る酸化鉱石の製錬方法によれば、得られるメタルの回収率を向上させるとともに、高品質なメタルを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。
【
図2】乾燥処理に使用する外熱式キルンの構成の一例を示す断面図である。
【
図3】内熱式キルンの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0023】
≪酸化鉱石の製錬方法≫
本実施の形態に係る酸化鉱石の製錬方法は、原料鉱石である酸化鉱石(酸化物)を炭素質還元剤と混合し、その混合物に対して製錬炉(還元炉)内で還元処理を施すことによって、メタルとスラグとを生成させるものである。
【0024】
例えば、酸化鉱石として、酸化ニッケルや酸化鉄等を含有するニッケル酸化鉱石を原料とし、そのニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物を得て、混合物に含まれるニッケルを優先的に還元し、また鉄を部分的に還元することで、鉄-ニッケル合金のメタルを生成させ、さらに、そのメタルを分離することによってフェロニッケルを製造するニッケル製錬方法が挙げられる。
【0025】
以下では、酸化鉱石としてニッケル酸化鉱石を原料としたときの製錬方法を例に挙げてより詳細に説明する。
【0026】
具体的に、
図1は、このニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。ニッケル酸化鉱石の製錬方法は、
図1に示すように、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物を得る混合工程S1と、得られた混合物を外熱式キルンにより乾燥する乾燥工程S2と、乾燥後の混合物に還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る還元工程S3と、得られた還元物からメタルを回収する回収工程S4と、を含む。
【0027】
<1.混合工程>
混合工程S1は、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物を得る工程である。具体的に、混合工程S1では、まず、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に、炭素質還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.1mm以上0.8mm以下程度の粉末を添加して混合し、混合物を得る。なお、混合処理は、混合機等を用いて行うことができる。
【0028】
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe2O3)とを少なくとも含有する。
【0029】
炭素質還元剤の含有量(混合物中に含まれる炭素質還元剤の含有量)としては、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルの全量をニッケルメタル還元するのに必要な化学当量と、酸化鉄(酸化第二鉄)を金属鉄に還元するのに必要な化学当量との両者合計値(便宜的に「化学当量の合計値」ともいう)を100質量%としたときに、50.0質量%以下の割合とすることが好ましく、40.0質量%以下の割合とすることがより好ましい。鉄の還元量を抑えて、ニッケル品位を高めることができ、高品質のフェロニッケルを製造することができる。また、炭素質還元剤の混合量は、化学当量の合計値を100質量%としたときに、10.0質量%以上の割合とすることが好ましく、15.0質量%以上の割合とすることがより好ましい。ニッケルの還元を効率的に進行させることができ生産性が向上する。
【0030】
任意成分の添加剤である鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50.0質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。また、フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。また、バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
【0031】
混合工程S1では、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を均一に混合することによって混合物を得る。下記表1に、混合工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(質量%)の一例を示すが、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
【0032】
【0033】
混合に際しては、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、混合後に混練を行ってもよい。混練は、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸混練機、二軸混練機等を用いて行うことができる。混合物を混練することによって、その混合物にせん断力を加え、炭素質還元剤や原料粉末等の凝集を解いて均一に混合できるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。これにより、その混合物において還元反応が起りやすくなるとともに均一に反応させることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることができる。
【0034】
また、混合を行った後、あるいは混合及び混練を行った後、押出機を用いて押出してもよい。これにより、混合物に対して圧力(せん断力)が加えられ、炭素質還元剤や原料粉末等の凝集を解いてその混合物をより均一に混合させた状態とすることができる。さらに、混合物内の空隙を減少させることができる。これらのことから、後述する還元工程S3において混合物の還元反応が均一に起りやすくなり、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質なメタルを製造することができる。
【0035】
押出機は、高圧、高せん断力で混合物を混練できるものであることが好ましく、一軸押出機、二軸押出機等を挙げることができる。特に、二軸押出機を備えたものであることが好ましい。高圧、高せん断で混合物を混練することにより、原料粉の混合物の凝集を解くことができ、また効果的に混練することができるうえ、混合物の強度を高めることができる。また、二軸押出機を備えたものを用いることにより、連続的に高い生産性を保ちながら混合物を得ることができる。
【0036】
<2.乾燥工程>
乾燥工程S2は、得られた混合物を外熱式キルンにより乾燥する工程である。これにより、後述する還元工程S3において混合物に含まれる水分に基づく酸化を抑制することができ、得られるメタルの品位を高めることができる。
【0037】
そして、この乾燥工程S2では、混合物を外熱式キルンにより乾燥することを特徴としている。外熱式キルンとは、例えば
図2に示すような、複数のバーナー2により炉3の外部から加熱して内部空間Iの混合物Mを乾燥することができる円筒型の回転炉を挙げることができる。なお、
図2に示した複数のバーナーは外熱式キルンの熱源の一例であり、外熱式キルンの熱源はバーナーに限定されるものではない。
【0038】
例えば、
図3に示すような炉30の内部にバーナー20を備える内熱式キルン10により乾燥して還元処理を施すと、バーナーの炎に起因する燃焼ガスが発生する。すると、その燃焼ガスとともにニッケル酸化鉱石のダスト(微粉)が排ガスとして炉外に排出されてしまい、結果としてメタル回収率が低下することが分かった。
【0039】
このようなメタル回収率の低下は、排ガスからニッケル酸化鉱石を回収して再び還元処理を行うことにより解決することもできるが、排ガスからニッケル酸化鉱石を回収する回収機構等を設けなければならない等の手間やコストもかかり、生産上の観点から好ましいとはいえない。
【0040】
そこで、炉内にバーナーを備えていない外熱式キルンにより混合物を乾燥することにより、混合物中の水分を有効に乾燥除去できるとともに、ニッケル酸化鉱石のダスト(微粉)が炉外に排出されることを効果的に抑制することができる。
【0041】
このような炉内の酸化鉱石のダスト(微粉)の発生量は、混合物中の酸化鉱石全量に対して10質量%以下になることが好ましく、5質量%以下になることがより好ましい。
【0042】
混合物に対する乾燥処理は、その混合物の水分率が10質量%以下となるように乾燥することが好ましく、8質量%以下となるように乾燥することがより好ましく、5質量%以下となるように乾燥することがさらに好ましい。
【0043】
なお、還元炉内への水分の混入を抑制する観点では、混合物の水分率は少ないほど好ましく、混合物の水分率の下限値は特に限定されないが、例えば1質量%以上とすることができる。極端に水分率が低くなるとニッケル酸化鉱石のダスト(微粉)が粉塵として飛散しやすくなる。
【0044】
乾燥温度は特に制限はされないが、例えば180℃以上400℃以下で混合物に乾燥処理を施すことが好ましい。
【0045】
外熱式キルンの熱源は、電気ヒーターであってもバーナーであってもよいが、バーナーであることが好ましい。電気等を用いた加熱に比べて格段に安価に処理を行うことができ、経済効率性を高めることもできる。さらに、バーナーを備えたキルンでは、メンテナンスが非常に容易で、連続操業も有効に行うことができ、操業効率が高めることができる。
【0046】
バーナーを用いた乾燥処理を施す場合、燃料は、LPGガス(液化石油ガス)、LNGガス(天然ガス)、重油、石炭、コークス、微粉炭等の従来公知の燃料であってもよい。
【0047】
また、外熱式キルンにより混合物を乾燥するに際しては、そのキルンの内部を負圧して処理することが好ましい。これにより、ニッケル酸化鉱石のダスト(微粉)が炉外に排出されることをより効果的に抑制することができる。具体的には、炉圧を-3Pa以下-100Pa以上、好ましくは-10Pa以下-70Pa以上に制御して乾燥処理を施すことが好ましい。
【0048】
また、乾燥処理においては、後述する還元工程S3における還元処理後の雰囲気ガスの一部を用いて乾燥するようにしてもよい。具体的には、乾燥処理を行う外熱式キルンと還元処理を行う還元炉との間を配管で繋ぐように構成して、その還元炉の雰囲気ガスを外熱式キルンに導入するようにして、乾燥処理における乾燥ガスとして用いる。これにより、還元処理後の雰囲気ガスを全て排出するのではなく乾燥ガスとして再利用することができるため、より一層にコストを低減させた製錬操業を行うことができる。
【0049】
なお、下記表2に、乾燥処理後の混合物における固形分中組成(重量部)の一例を示す。なお、混合物の組成としては、これに限定されるものではない。
【表2】
【0050】
<3.還元工程>
還元工程S3は、乾燥後の混合物を加熱して還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る工程である。還元工程S3における加熱還元処理により、製錬反応(還元反応)が進行して、フェロニッケルメタル(以下、単に「メタル」という)と、フェロニッケルスラグ(以下、単に「スラグ」という)とが分かれて生成する。
【0051】
還元工程S3における還元処理は、ニッケル酸化鉱石を含む混合物を還元炉に装入し、所定の還元温度に加熱することによって行われる。還元処理としては、酸化ニッケルを優先的に還元するいわゆる部分還元処理を施してもよいが、還元炉内に投入した酸化鉱石を含む混合物を熔融させて還元する熔融還元処理を施すことが好ましい。これにより、水分に基づく酸化をさらに抑制することができ、得られるメタルの品位を高めることができる。
【0052】
例えば熔融還元処理の場合、熔融還元により得られたメタルとスラグとが比重差によって分離する。具体的には、比重の重いメタルがスラグよりも下層に構成されるように分離する。このように熔融状態のメタル(熔融メタル)がスラグの下に堆積した状態になると、炉内雰囲気において酸素分圧やCO分圧に変動が生じたとしても、スラグの下の炉底に溜まったメタルの組成への影響を抑制することができ、メタルの酸化を効果的に抑えることができる。
【0053】
還元炉の熱源は、特に限定されないが、電気ヒーターであってもバーナーであってもよい。還元炉は単一の炉を用いても、移動炉床炉等の炉床が回転移動等して工程ごとに連続的に処理可能となる炉を用いてもよい。熔融還元処理を施す場合には、熔融炉を用いることが好ましい。
【0054】
<4.回収工程>
回収工程S4は、得られた還元物からメタルを回収する工程である。部分還元処理を施した場合には、混合物に対する還元加熱処理によって得られた、メタル相(メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)からメタル相を分離して回収する。
【0055】
還元工程S3において熔融還元処理を施した場合には、熔融メタルと熔融スラグが比重差によって自然に分離し、メタルは還元炉の炉底に溜まる。そのため、還元炉の炉底付近からメタルを抜いて回収することで、メタルのみを選択的に回収することができる。一方、スラグはメタルの上に浮くため、例えば炉壁(スラグ排出口)から抜いて回収することができる。このように、得られたメタルとスラグとは熔融状態にあるため、その比重差によって容易に分離し、メタルを選択的に回収することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
<実施例、比較例>
(混合工程)
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石、鉄鉱石、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:80質量%、平均粒径:約75μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して実施例、比較例の混合物を得た。なお、炭素質還元剤については、ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量を100質量%としたときに32質量%の割合となる量で含有させた。
【0058】
(乾燥工程)
実施例1~9の混合物については、
図2に模式的に示す外熱式キルン(バーナー加熱)に装入して1時間の乾燥処理を施した。比較例1~3の混合物については
図3に示す内熱式キルン(バーナー加熱)に装入して1時間の乾燥処理を施した。
【0059】
キルンの加熱方式、キルン加熱用の燃料及びキルン内温度を表3に示す。
【0060】
(ダスト発生率と水分率)
各試料について乾燥中に排ガスとともにキルンから流れ出たダストを集塵機で回収し、装入した混合物の量からダスト発生率を算出した。また、乾燥後の混合物の水分測定を行った。
【0061】
【0062】
表3の結果に示したように、外熱式のキルンを用いて還元処理を施した実施例1~9では、ダスト発生率が3.5%以下と低く、良好な結果が得られた。この結果から、本発明の混合物を外熱式キルンにより乾燥して還元処理を施す酸化鉱石の製錬方法であれば、メタル回収率が向上できることが推認される。
【0063】
また、外熱式のキルンを用いて還元処理を施した実施例1~9では混合物の水分率が9.5%以下であった。この結果から、混合物を外熱式キルンにより乾燥して還元処理を施す酸化鉱石の製錬方法であれば、乾燥後の混合物の水分率が十分に低く、良好な結果が得られた。この結果から、本発明の混合物を外熱式キルンにより乾燥して還元処理を施す酸化鉱石の製錬方法であれば、還元工程において混合物に含まれる水分に基づく酸化を抑制することができ、得られるメタルの品位を高めることができ、より高品質のメタルを製造することができることが推認される。
【符号の説明】
【0064】
1 外燃式キルン
2 バーナー
3 炉
I 内部空間
10 内燃式キルン
20 バーナー
30 炉