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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/643 20060101AFI20230829BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20230829BHJP
   C08G 77/388 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
D06M15/643
C08G77/26
C08G77/388
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021520781
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2020019619
(87)【国際公開番号】W WO2020235522
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019096143
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 優太
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019739(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109400882(CN,A)
【文献】特開平01-272621(JP,A)
【文献】CAI,Y. et al.,Epoxy-modified polysiloxane with amino side chains,Youjigui Cailiao,2012年,Vol.26, No.1,pp.6-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
D06M 13/00-15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端及び/又は側鎖に下記一般式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサンを含む繊維処理剤
【化1】
[上記式(1)中、R1は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、aは0~4の整数であり、R2は互いに独立に、水素原子、又は下記一般式
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
で示される基から選ばれる、少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、30mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。波線は結合箇所を表す。]
【請求項2】
上記式(1)中、R2の少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基が、下記一般式で示される基から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の繊維処理剤
【化8】
【化9】
【請求項3】
オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、40mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である請求項1又は2に記載の繊維処理剤
【請求項4】
オルガノポリシロキサンが、分子中にポリオキシアルキレン基を含まない請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維処理剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンに関する。詳細には、耐熱性に優れ、高温処理においても黄変が少ないアミノアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン、及び該オルガノポリシロキサンを含む繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種繊維又は繊維製品に柔軟性や平滑性等を付与するための処理剤として、ジメチルポリシロキサン、エポキシ基含有ポリシロキサン、アミノアルキル基含有ポリシロキサン等の各種オルガノポリシロキサンが幅広く使用されている。中でも特に良好な柔軟性を各種繊維又は繊維製品に付与することができるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンが多く用いられている。特にアミノアルキル基として-C36NH2基、-C36NHC24NH2基などを有するオルガノポリシロキサンを主剤とする繊維処理剤(特許文献1~6:特公昭48-1480号公報、特公昭54-43614号公報、特公昭57-43673号公報、特開昭60-185879号公報、特開昭60-185880号公報、特開昭64-61576号公報等)が、優れた柔軟性を示すため広く使用されている。
【0003】
しかし、-C36NH2基、-C36NHC24NH2基を有するオルガノポリシロキサンを用いて処理した繊維は、加熱処理、乾燥或いは経日による熱や紫外線等によるアミノ基の劣化が起こり、特に白色系乃至は淡色系繊維又は繊維製品ではその色調が黄色に変化し、柔軟性も低下するという重大な欠点を有している。
【0004】
上記の黄色化防止のため、アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンと、有機酸無水物もしくは塩化物(特許文献7:特開昭57-101076号公報)、エポキシ化合物(特許文献8:特開昭59-179884号公報)、高級脂肪酸(特許文献9:特開平1-306683号公報)、又はカーボネート(特許文献10:特開平2-47371号公報)等と反応させることにより、アミノアルキル基を変性させる方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらのものについては、未変性のアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンと比較して黄変性の防止効果改善は認められるが、その効果はまだ不十分である上、繊維への柔軟性や平滑性を付与するという点では未変性のものよりかえって劣るという欠点があった。また、アミノアルキル基を変性させる置換基によっては、置換基自体が熱により黄変し、ポリシロキサン自体が着色するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭48-1480号公報
【文献】特公昭54-43614号公報
【文献】特公昭57-43673号公報
【文献】特開昭60-185879号公報
【文献】特開昭60-185880号公報
【文献】特開昭64-61576号公報
【文献】特開昭57-101076号公報
【文献】特開昭59-179884号公報
【文献】特開平1-306683号公報
【文献】特開平2-47371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、耐熱性に優れ、加熱後にも着色しにくく、かつ処理後の繊維表面に対し、優れた柔軟性を付与可能なオルガノポリシロキサン、及び該オルガノポリシロキサンを含む繊維処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討を進めた結果、分子末端及び/又は側鎖に下記一般式(1)
【化1】
(上記式(1)中、R1は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、aは0~4の整数であり、R2は互いに独立に、水素原子、又は少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、30mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。波線は結合箇所を表す。)
で示される基を有するオルガノポリシロキサンが、処理後の繊維表面に対し、優れた柔軟性を付与することが可能であり、耐熱性に優れ、加熱後にも着色しにくいことを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記のオルガノポリシロキサン及び繊維処理剤を提供する。
[1].
分子末端及び/又は側鎖に下記一般式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサン。
【化2】
(上記式(1)中、R1は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、aは0~4の整数であり、R2は互いに独立に、水素原子、又は少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、30mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。波線は結合箇所を表す。)
[2].
上記式(1)中、R2の少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基が、下記一般式(2)又は(3)で示される基である[1]に記載のオルガノポリシロキサン。
【化3】
(上記式(2)、(3)中、R3は炭素数1~10の2価有機基であり、Xはそれぞれ独立に炭素数1~8の1価炭化水素基、水酸基又はハロゲン原子であり、bは0~5の整数である。波線は結合箇所を表す。)
[3].
上記式(1)中、R2の少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基が、下記一般式で示される基から選ばれる1種又は2種以上である[1]に記載のオルガノポリシロキサン。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
[4].
オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、40mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である[1]~[3]のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
[5].
分子中にポリオキシアルキレン基を含まない[1]~[4]のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
[6].
[1]~[5]のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンを含む繊維処理剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分子末端及び/又は側鎖に上記一般式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサンは、繊維に対し、優れた柔軟性を付与することができる。また、本発明の上記オルガノポリシロキサンは、耐熱性に優れ、加熱後も着色や外観の変化が起こりにくい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
[オルガノポリシロキサン]
本発明は、分子末端及び/又は側鎖に下記一般式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサンである。
【化15】
(上記式(1)中、R1は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、aは0~4の整数であり、R2は互いに独立に、水素原子、又は少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合するR2で示される基のうち、30mol%以上が少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。波線は結合箇所を表す。)
【0013】
該オルガノポリシロキサンは、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれの構造でもよいが、好ましくは直鎖状である。該オルガノポリシロキサン中、上記式(1)で示される基は、ポリシロキサン骨格のケイ素原子に結合しており、分子末端及び分子途中のいずれに存在していてもよいが、分子末端、分子途中のいずれかに存在していることがより好ましい。該オルガノポリシロキサンは、1分子中に上記式(1)で示される基を少なくとも1個、好ましくは2~50個有するものである。
【0014】
上記式(1)中、R1は炭素数1~8の2価炭化水素基である。該2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等のアルキレン基が好ましく、中でもプロピレン基が好ましい。
aは0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0015】
2は水素原子、又は少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。R2の少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基として、具体的には、下記一般式(2)、(3)で示される基が挙げられる。
【化16】
(上記式(2)、(3)中、R3は炭素数1~10の2価有機基であり、Xはそれぞれ独立に炭素数1~8の1価炭化水素基、水酸基又はハロゲン原子であり、bは0~5の整数である。波線は結合箇所を表す。)
【0016】
上記式(2)、(3)中、R3は炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の2価有機基であり、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化17】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0017】
また、上記式(2)中、Xはそれぞれ独立に炭素数1~8の1価炭化水素基、水酸基又はハロゲン原子である。Xとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基などの炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4の1価炭化水素基、水酸基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子が例示できる。
bは0~5の整数であり、好ましくは0~3の整数である。
【0018】
式(2)、(3)で示される基として、より詳細には、以下の基が挙げられる。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0019】
上記式(1)で示される基としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【化29】
(式中、R2は上記と同じである。波線は結合箇所を表す。)
【0020】
本発明のオルガノポリシロキサンは、窒素原子に結合するR2で示される基のうち、30mol%以上、好ましくは30~95mol%、より好ましくは40~95mol%、特に好ましくは50~95mol%が、少なくとも1個の芳香族基を含む炭素数7~20の1価有機基である。よって、式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサン中のR2のうち、水素原子は、0~70mol%、好ましくは5~70mol%、より好ましくは5~60mol%、特に好ましくは5~50mol%である。
【0021】
本発明のオルガノポリシロキサンにおいて、上記式(1)で示される基以外のポリシロキサン骨格のケイ素原子に結合している基としては、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基、水酸基又は炭素数1~20、好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基であることが好ましい。
ここで、非置換又は置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、及びエイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基;ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
本発明のオルガノポリシロキサンにおいては、ポリシロキサン骨格のケイ素原子に結合している基として、上記式(1)で示される基以外に窒素原子を含まないことが好ましい。
【0022】
なお、本発明のオルガノポリシロキサンは、分子中にポリオキシアルキレン基を含まないことが好ましい。ポリオキシアルキレン基は、酸化劣化により着色し、オルガノポリシロキサンの外観を損なう可能性がある。また、繊維に処理した際、ポリオキシアルキレン基の着色に起因し、繊維の黄変につながる可能性がある。
【0023】
本発明のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が20~100,000mPa・sであることが好ましく、50~50,000mPa・sであることがより好ましく、100~25,000mPa・sであることが特に好ましい。なお、本発明において、粘度はBM型粘度計(例えば、東京計器社製)により25℃で測定した値である(以下、同じ)。
【0024】
また、本発明のオルガノポリシロキサンのアミン当量は、200~20,000g/molであることが好ましく、300~10,000g/molであることがより好ましい。なお、このアミン当量とは分子量/Nの数であり、アミン当量は中和滴定法、例えば、平沼産業社製の自動滴定装置により測定できる。
【0025】
本発明のオルガノポリシロキサンとして、好ましくは、下記一般式(4)、(5)で示されるオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である。
【化30】
(上記式(4)、(5)中、R4は互いに独立に、上記式(1)で示される基であり、R5は互いに独立に、炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R6は互いに独立に、-OYで示される基であり、Yは水素原子又はR5である。R7は互いに独立に、R5又はR6である。cは5~2,000の整数であり、c’は互いに独立に0~1,500の整数で、c’の合計は5~2,000の整数であり、dは0~50の整数であり、d’は互いに独立に0~30の整数で、d’の合計は0~50の整数であり、eは結合するケイ素原子毎に独立に0~3の整数であり、fは結合するケイ素原子毎に独立に0~3の整数であり、各末端においてe+fは0~3の整数である。但し、dと複数のfの合計は1~50の整数であり、複数のd’及び複数のfの合計は1~50の整数である。gは0~1,000の整数であり、hは0~1,000の整数であり、g+hは1以上の整数である。)
【0026】
上記式(4)、(5)中、R4は互いに独立に、上記式(1)で示される基である。
【0027】
上記式(4)、(5)において、R5は、互いに独立に、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~8の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、及びエイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基;ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基等が挙げられる。中でも、工業的にメチル基が好ましい。
【0028】
上記式(4)、(5)において、R6は互いに独立に、-OYで示される基である。Yは水素原子又は上記R5の選択肢の中から選ばれる基である。該Yとして、好ましくは、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基である。中でもR6は、水酸基、メトキシ基、又はエトキシ基が好ましい。
【0029】
上記式(4)、(5)において、R7は、互いに独立に、R5又はR6の選択肢の中から選ばれる基であり、好ましくはR5である。なお、上記式(4)、(5)において、R6は1分子中に0~10個有することが好ましい。
【0030】
上記式(4)、(5)において、eは結合するケイ素原子毎に独立に0~3の整数、好ましくは0又は1であり、fは結合するケイ素原子毎に独立に0~3の整数、好ましくは0又は1であり、各末端においてe+fは0~3の整数、好ましくは0、1又は2である。
【0031】
また、上記式(4)において、cは5~2,000の整数であり、好ましくは10~1,000の整数である。cが上記下限値より小さいと、繊維に柔軟性又は平滑性を付与する効果が不十分となる。また、cが上記上限値より大きいと、オルガノポリシロキサンが高粘度となり、取扱いや乳化が難しくなるため好ましくない。
dは0~50の整数であり、好ましくは0~30の整数である。dが上記上限値より大きいと、黄変しやすくなるため好ましくない。但し、dと複数のfの合計(即ち、式(4)における分子中のR4の数)は1~50の整数、好ましくは1~30の整数である。
【0032】
上記式(5)において、c’は互いに独立に0~1,500の整数、好ましくは5~980の整数で、c’の合計は5~2,000の整数、好ましくは10~1,000の整数である。c’の合計が上記下限値より小さいと、繊維に柔軟性又は平滑性を付与する効果が不十分となる。また、c’の合計が上記上限値より大きいと、オルガノポリシロキサンが高粘度となり、取扱いや乳化が難しくなるため好ましくない。
d’は互いに独立に0~30の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数で、d’の合計は0~50の整数、好ましくは0~20の整数である。d’の合計が上記上限値より大きいと、黄変しやすくなるため好ましくない。但し、複数のd’及び複数のfの合計(即ち、式(5)における分子中のR4の数)は1~50の整数、好ましくは2~20の整数である。
gは0~1,000の整数、好ましくは0~50の整数であり、hは0~1,000の整数、好ましくは1~50の整数であり、g+hは1以上の整数、好ましくは1~50の整数である。
【0033】
上記式(4)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化31】
【化32】
【化33】
(式中、R4、R5、R6、R7、c、eは上記と同じである。d1は1~50の整数、好ましくは2~30の整数であり、f1は互いに独立に0~3の整数であるが、f1の合計は1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、各末端においてe+f1はそれぞれ0~3の整数、好ましくは1又は2である。なお、上記一番目の式において末端のいずれか一方のe+f1が0の場合、他方のe+f1は1~3の整数である。)
【0034】
上記式(4)で示されるオルガノポリシロキサンとして、より好ましくは、下記のものが挙げられる。
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
(式中、R4、R5、R6、c及びd1は上記と同じである。)
【0035】
上記式(5)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化41】
【化42】
【化43】
(式中、R4、R5、R6、R7、c’、d’、e、f、c’の合計、d’の合計、各末端におけるe+f、複数のd’及び複数のfの合計は上記と同じである。g1は1~1,000の整数、好ましくは1~50の整数であり、h1は1~1,000の整数、好ましくは1~50の整数であり、g1+h1は1~50の整数である。)
【0036】
上記式(5)で示されるオルガノポリシロキサンとして、より好ましくは、下記のものが挙げられる。
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
(式中、R4、R5、R6、c’、d’、c’の合計、d’の合計、g1、h1、g1+h1は上記と同じである。)
【0037】
上記式(4)で示されるオルガノポリシロキサンとして、より具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
(式中、c、d1は上記と同じである。R2'は上述した基の他に、水素原子を70mol%以下含んでいてもよい。波線は結合箇所を表す。)
【0038】
上記式(5)で示されるオルガノポリシロキサンとして、より具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
(式中、c’、d’、c’の合計、d’の合計、g1、h1、g1+h1は上記と同じである。R2'は上述した基の他に、水素原子を70mol%以下含んでいてもよい。波線は結合箇所を表す。)
【0039】
[オルガノポリシロキサンの製造方法]
本発明のオルガノポリシロキサンである上記一般式(4)、(5)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンは、公知の合成方法により容易に得ることができる。例えば、下記一般式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサンと、下記一般式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物との反応により、容易に得ることができる。
【化59】
[上記式(6)、(7)中、R5、R6、R7、c、c’、d、d’、e、f、g、h、c’の合計、d’の合計、各末端におけるe+f、dと複数のfの合計、複数のd’及び複数のfの合計、g+hは上記と同じである。Zは下記式で示される基である。
【化60】
(式中、R1、aは上記と同じである。波線は結合箇所を表す。)]
【化61】
(上記式(8)、(9)中、X、bは上記と同じである。R8は単結合又は炭素数1~8の2価有機基である。)
【0040】
上記式(6)、(7)中、Zとしては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化62】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0041】
上記式(6)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記に示すものが挙げられる。
【化63】
【化64】
【化65】
(式中、R5、R6、Z、c、d1は上記と同じである。)
【0042】
上記式(7)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記に示すものが挙げられる。
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
(式中、R5、R6、Z、c’、d’、c’の合計、d’の合計、g1、h1、g1+h1は上記と同じである。)
【0043】
上記式(6)、(7)で示されるオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が5~100,000mPa・sであることが好ましく、10~50,000mPa・sであることがより好ましく、20~40,000mPa・sであることが特に好ましい。
【0044】
また、上記式(6)、(7)で示されるオルガノポリシロキサンのアミン当量は、150~17,500g/molであることが好ましく、200~8,000g/molであることがより好ましい。なお、このアミン当量とは分子量/Nの数であり、アミン当量は中和滴定法、例えば、平沼産業社製の自動滴定装置により測定できる。
【0045】
上記式(6)、(7)で示されるオルガノポリシロキサンは、公知の合成方法により容易に得ることができる。例えば、アルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの触媒存在下に、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンと、3-アミノプロピルジメトキシメチルシランやN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノアルキル基含有アルコキシシラン、又はその加水分解物、及びその他の原料としてヘキサメチルジシロキサン等から選択される化合物とを平衡化反応することにより得られる。
また、無触媒下あるいはアルカリ金属水酸化物などの触媒存在下に、両末端ヒドロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンと、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルメトキシジメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノアルキル基含有アルコキシシランとを脱メタノール反応することにより得られる。
【0046】
上記式(8)、(9)中、R8は単結合又は炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4の2価有機基であり、2価有機基として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
-CH2O-
-CH2CH2CH2CH2
【0047】
上記式(8)、(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物としては、例えば、下記に示すものが挙げられる。
【化70】
(式中、X、bは上記と同じである。)
【0048】
また、上記式(8)、(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物のエポキシ当量は、50~5,000g/molであることが好ましく、100~3,000g/molであることがより好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは分子量/エポキシ基の数であり、このエポキシ当量は滴定法、例えば、平沼産業社製の自動滴定装置により測定できる。
上記式(8)、(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
上記式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサンと、上記式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物の使用量は、式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対して、式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物のエポキシ基の個数の比が0.3~1.2、特に0.3~0.95となる量が好ましい。式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物量が少なすぎると耐熱性が劣る場合があり、多すぎると繊維への柔軟性付与効果が乏しくなる場合がある。
なお、本発明においては、式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサン中に含まれるNH基中、30mol%以上、好ましくは30~95mol%、より好ましくは40~95mol%、特に好ましくは50~95mol%が、式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物と反応して式(1)で示される基となることが好ましい。
【0050】
上記式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサンと、上記式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物との反応は、従来公知の方法に従えばよく、特に制限されない。例えば、無溶剤下又はイソプロピルアルコール等の低級アルコール、トルエン、キシレン等の溶剤存在下にて、50~120℃、特には70~100℃で1~5時間、特には2~4時間反応させればよい。
【0051】
上記式(6)又は(7)で示されるオルガノポリシロキサンと、上記式(8)及び/又は(9)で示される芳香族基含有エポキシ化合物とを上述した方法によって反応させることにより、本発明のオルガノポリシロキサンである上記式(4)、(5)で示されるオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0052】
[繊維処理剤]
本発明の分子末端及び/又は側鎖に式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサンは、耐熱性に優れ、加熱後も着色や外観の変化が起こりにくく、かつ処理後の繊維表面に対し、優れた柔軟性を付与できることから、繊維処理剤に用いることが好適である。
【0053】
本発明の繊維処理剤には、必要に応じて各種溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
溶剤を配合する場合の使用量は特に制限はないが、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して2,000~200,000質量部が好ましく、5,000~100,000質量部が特に好ましい。
【0054】
また、本発明の繊維処理剤を乳化物とする場合、乳化剤としては特に限定はないが、例えば、非イオン性(ノニオン系)界面活性剤としては、エトキシ化高級アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸アミド、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、そのHLBは5~20の範囲内にあることが好ましく、特に10~16の範囲内にあることが好ましい。また、アニオン系界面活性剤の例としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩、エトキシ化高級アルコール硫酸エステル塩、エトキシ化アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、エトキシ化高級アルコールリン酸塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン塩酸塩、ココナットアミンアセテート、アルキルアミンアセテート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性系界面活性剤としては、例えば、N-アシルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニオベタイン類、N-アシルアミドプロピル-N,N’-ジメチル-N’-β-ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類等が例示される。
乳化剤を配合する場合の使用量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して5~50質量部が好ましく、より好ましくは10~30質量部である。また乳化の際の水の使用量は、オルガノポリシロキサン純分濃度が10~80質量%となるようにすればよく、好ましくは20~70質量%となるような量である。
【0055】
上記の乳化物は、従来公知の方法で得ることができ、上記オルガノポリシロキサンと界面活性剤を混合し、これをホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー、万能混合機(商品名)、ウルトラミキサー(商品名)、プラネタリーミキサー(商品名)、コンビミックス(商品名)、三本ロールミキサーなどの乳化機で乳化すればよい。
【0056】
なお、本発明の繊維処理剤には、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤等の繊維用薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、消臭剤、抗菌剤等の成分を添加することもできる。
【0057】
また、本発明の繊維処理剤を繊維に付着させる際には、浸漬、スプレー、ロールコート等により繊維に付着させることができる。付着量は繊維の種類により異なり特に限定されないが、繊維処理剤に配合されるオルガノポリシロキサンの付着量として繊維の0.01~10質量%の範囲とするのが一般的である。次いで熱風吹き付け、加熱炉等で乾燥させればよい。繊維の種類によっても異なるが、乾燥は100~180℃、30秒~5分の範囲で行えばよい。
【0058】
また、本発明の繊維処理剤で処理可能な繊維又は繊維製品についても特に限定はなく、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、モヘア等の天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、スパンデックス等の合成繊維、これらを組み合わせた混紡の繊維に対しても全て有効である。また、その形態、形状にも制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等のような原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布等の多様な加工形態のものも本発明の繊維処理剤の処理可能な対象となる。
【0059】
本発明の分子末端及び/又は側鎖に式(1)で示される基を有するオルガノポリシロキサンは、繊維処理用途以外にも、塗料用、接着剤用、シーリング剤用、インク用、紙用等の含浸剤用並びに表面処理用や、化粧品用等として、種々の用途に利用することができる。この際、必要に応じて、添加剤を用いることができる。
【0060】
添加剤としては、例えば、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤等の繊維用薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【実施例
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度はBM型粘度計(東京計器社製)により25℃で測定した値であり、アミン当量及びエポキシ当量は平沼産業社製の自動滴定装置により測定した値である。
【0062】
[合成例1]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、下記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、下記式(B-1)で示されるフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:151g/mol)34.15g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、フェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.95となる量)、及びイソプロピルアルコール3.35gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-1)で示されるオルガノポリシロキサン)130gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は1,120mPa・s、アミン当量は1,060g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は仕込み量に対して5mol%であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち90mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化71】
【化72】
【化73】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0063】
[合成例2]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、上記式(B-1)で示されるフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:151g/mol)17.98g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、フェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.50となる量)、及びイソプロピルアルコール2.95gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-2)で示されるオルガノポリシロキサン)105gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は250mPa・s、アミン当量は930g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は検出されず、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち50mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化74】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0064】
[合成例3]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、上記式(B-1)で示されるフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:151g/mol)10.79g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、フェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.30となる量)、及びイソプロピルアルコール2.77gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-3)で示されるオルガノポリシロキサン)98gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は110mPa・s、アミン当量は870g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は検出されず、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち30mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化75】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0065】
[合成例4]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、下記式(A-2)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:1,400mPa・s、アミン当量:1,700g/mol)100.00g、上記式(B-1)で示されるフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:151g/mol)12.66g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、フェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.95となる量)、及びイソプロピルアルコール2.82gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-4)で示されるオルガノポリシロキサン)107gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は23,700mPa・s、アミン当量は3,740g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は仕込み量に対して8mol%であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち87mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化76】
【化77】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0066】
[合成例5]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-2)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:1,400mPa・s、アミン当量:1,700g/mol)100.00g、上記式(B-1)で示されるフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:151g/mol)6.66g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、フェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.50となる量)、及びイソプロピルアルコール2.67gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-5)で示されるオルガノポリシロキサン)92gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は5,900mPa・s、アミン当量は2,660g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は検出されず、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち50mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化78】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0067】
[合成例6]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、下記式(B-2)で示されるパラ-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量:225g/mol)50.89g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、パラ-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.95となる量)、及びイソプロピルアルコール3.77gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-6)で示されるオルガノポリシロキサン)142gが得られた。得られた化合物の外観は無色透明であり、粘度は6,140mPa・s、アミン当量は1,200g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は仕込み量に対して7mol%であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち88mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化79】
【化80】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0068】
[合成例7(比較合成例1)]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、下記式(B-3)で示されるポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテル(エポキシ当量:349g/mol)78.94g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、ポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.95となる量)、及びイソプロピルアルコール4.47gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-7)で示されるオルガノポリシロキサン)170gが得られた。得られた化合物の外観は淡黄色であり、粘度は220mPa・s、アミン当量は1,410g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は仕込み量に対して5mol%であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち90mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化81】
【化82】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0069】
[合成例8(比較合成例2)]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、上記式(B-3)で示されるポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテル(エポキシ当量:349g/mol)41.55g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、ポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.50となる量)、及びイソプロピルアルコール3.34gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-8)で示されるオルガノポリシロキサン)130gが得られた。得られた化合物の外観は淡黄色であり、粘度は160mPa・s、アミン当量は1,210g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は検出されず、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち50mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化83】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0070】
[合成例9(比較合成例3)]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量:840g/mol)100.00g、下記式(B-4)で示されるアルキルグリシジルエーテル(エポキシ当量:281g/mol)63.56g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)の合計個数に対する、アルキルグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が0.95となる量)、及びイソプロピルアルコール4.09gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で4時間付加反応を行った。反応終了後、10mmHgの減圧下、110℃で2時間、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(下記式(C-9)で示されるオルガノポリシロキサン)155gが得られた。得られた化合物の外観は淡黄色であり、粘度は300mPa・s、アミン当量は1,300g/molであった。得られた化合物の1H-NMRを測定したところ、未反応のグリシジル基は仕込み量に対して3mol%であり、オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(-NH)のうち92mol%がグリシジル基と反応したことが示唆された。
【化84】
【化85】
(式中、波線は結合箇所を表す。)
【0071】
[実施例1~6、比較例1~5]
〔評価試験〕
実施例1~6、比較例1~3として、上記合成例で得た(C-1)~(C-9)で示されるオルガノポリシロキサンについて、以下に示す評価試験を行った。また、比較例4は合成例1で用いた式(A-1)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン、比較例5は合成例4で用いた式(A-2)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンをそれぞれそのまま使用し、以下に示す評価試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0072】
1.160℃耐熱性
上記オルガノポリシロキサンを直径6cmのアルミシャーレに2.0g秤量し、160℃に加温した乾燥機にて10分間加熱した。加熱後のオルガノポリシロキサンについて、加熱前と比較して外観変化のないものを○、加熱後に着色が確認されたものを×とした。
【0073】
2.200℃耐熱性
上記オルガノポリシロキサンを直径6cmのアルミシャーレに2.0g秤量し、200℃に加温した乾燥機にて10分間加熱した。加熱後のオルガノポリシロキサンについて、加熱前と比較して外観変化のないものを○、加熱後に着色が確認されたものを×とした。
【0074】
3.柔軟性
上記オルガノポリシロキサンにトルエンを加えて撹拌し、固形分2質量%に希釈して試験液を調製した。該試験液にポリエステル/綿ブロード布(65%/35%、谷頭商店社製)を10秒間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、150℃で2分間乾燥して柔軟性評価用の処理布を作製した。該処理布について、3人のパネラーが手触りし、未処理布と比較して、柔軟性を以下の基準により評価した。
◎:未処理布と比較して触り心地が非常に良好である。
○:未処理布と比較して触り心地が良好である。
△:未処理布と触り心地が同等である。
×:未処理布と比較して触り心地が悪い。
【0075】
4.洗濯耐久性
上記オルガノポリシロキサンにトルエンを加えて撹拌し、固形分2質量%に希釈して試験液を調製した。該試験液にポリエステル/綿ブロード布(65%/35%、谷頭商店社製)を10秒間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、150℃で2分間乾燥して洗濯耐久性評価用の処理布を作製した。その後、該処理布を、JIS L0217 103に準拠した手法により、洗濯機による洗濯を一回行った。洗濯一回後の繊維表面のシリコーン残存量を蛍光X線分析装置(Rigaku社製)にて測定し、洗濯を行っていない場合と比較して、残存率(%)を計算した。
◎:残存率80%以上
○:残存率50%以上80%未満
△:残存率30%以上50%未満
×:残存率30%未満
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示される通り、本発明のオルガノポリシロキサンは、耐熱性に優れ、加熱後にも着色しにくい。さらに、処理後の繊維表面に対し、優れた柔軟性を付与可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のオルガノポリシロキサンは、耐熱性に優れ、加熱後にも着色しにくい。さらに、処理後の繊維表面に対し、優れた柔軟性を付与可能である。