(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】枚葉式ウエハ洗浄機においてSOI基板を処理するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 643C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019157281
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-22
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】セバスティエン レドラピエー
(72)【発明者】
【氏名】ロロン, ビラボー
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530865(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035864(WO,A1)
【文献】特開2004-235559(JP,A)
【文献】特開2017-188665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0062840(US,A1)
【文献】特開2007-027270(JP,A)
【文献】特開2010-056376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉式ウエハ洗浄機において
厚さが50nm未満の薄いシリコン層を特徴とするSOI基板(1)を処理するためのプロセスであって、前記洗浄機が、
回転運動を行うことができる、前記基板(1)を把持するためのシステムと、
前記基板(1)の前面(1a)上に第1の溶液をスプレーの形態で吐出するための第1のノズル(10)と、
を備える、プロセスにおいて、
液滴の単位面積当たりの運動エネルギーが30ジュール/m
2以下であ
り、
前記枚葉式ウエハ洗浄機が、前記基板(1)の背面(1b)上に第2の溶液を吐出するための第2のノズル(20)を備え、
前記枚葉式ウエハ洗浄機が、前記基板(1)の前記前面(1a)上に第3の溶液を低圧又は中圧の液体ジェットの形態で吐出するための第3のノズル(30)を備え、前記第2の溶液が、前記前面(1a)が前記第3の溶液又は前記第1の溶液の前記吐出によって保護されている場合にのみ、前記基板(1)の前記背面(1b)上に吐出される、ことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記スプレーが、毎分0.1リットル~毎分0.2リット
ルの流量を呈する前記第1
の溶液と、毎分70リットル以
下の流量を呈する窒素ガスとの混合物から形成されている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記基板(1)の前記背面(1b)上への溶液の前記吐出が、前記基板(1)の前記前面(1a)上への溶液の前記吐出と同期している、請求項
1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記枚葉式ウエハ洗浄機が、吐出後に前記溶液を収集するように前記基板(1)の周囲のスペースに配置された複数のテーパ付き収集器(40)を備え、各収集器(40)の位置が、前記基板を把持するための前記システムの前記回転運動の速度が毎分600回転以下の場合にのみ変更される、請求項1~
3のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスの分野に関する。詳細には、本発明は、枚葉式ウエハ洗浄機を使用して、SOI(シリコンオンインシュレータ)基板を洗浄するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉式ウエハ洗浄機(SWC)は、大口径(特に300mm)のウエハの洗浄において高性能のため、マイクロエレクロニクスプロセスで一般的に使用されている。具体的には、枚葉式ウエハ洗浄機によって、薬浴において一連の浸漬によって機能するバッチ洗浄機にしばしば関連付けられるような、ウエハのエッジにあるなんらかの欠陥を抑えることが可能になる。同一バッチ内のウエハ間の相互汚染のリスクも、枚葉式ウエハ洗浄機を用いることで低くなる。最後に、これらの洗浄機は、必要に応じて各ウエハに適合させることができる洗浄シーケンスを選択する際の柔軟性を高めることができる。
【0003】
枚葉式ウエハ洗浄機では、ウエハは、その周囲でフィンガによって保持され、様々な洗浄又は薄層化(化学エッチング)のシーケンス全体を通して回転することによって移動する。化学溶液及び/又はリンス溶液を吐出するためのアームがウエハの上を移動するように構成されおり、吐出された溶液は、遠心効果によってウエハの表面全体に広げられ、ウエハのエッジを越えて放り捨てられる。ウエハの周囲のスペースに配置された複数のテーパ付き収集器によって、洗浄又は薄層化のシーケンスで連続的に吐出される化学溶液を選択的に収集することができる。収集器は、ウエハに対する高度を変えることができ、したがって、各収集器は、特定の溶液がウエハのエッジを越えて放り捨てられるときに特定の溶液を収集するように配置され、以て、不適合な化学溶液の混合を回避することができる。
【0004】
枚葉式ウエハ洗浄機は、例えば、非常に薄いシリコン層(典型的には、数ナノメートル~数十ナノメートル)を有するSOIウエハ、特にFDSOI(完全空乏化SOI)ウエハのシリコン表面層の最終的な洗浄及び/又は薄層化に使用することができる。
【0005】
本出願人は、枚葉式ウエハ洗浄機において最終洗浄にかけられた、表面シリコン層の厚さが約10~12nmであるFDSOIウエハのHF欠陥の数が、薬浴マルチウエハ洗浄機での同様の洗浄(ウエハ当たり約2つの欠陥)と比較して、500%増加することを観測した。これらの数値は、表面層の特性によって変化する傾向があるが、HF欠陥の増加は、相変わらず大きく、枚葉式ウエハ洗浄機におけるSOI基板を洗浄又はエッチングするプロセスを改善する必要があると思われる。
【0006】
HF欠陥は、シリコン表面層の表面欠陥又はバルク欠陥に対応し、前記表面層を貫いてSOI基板の直下の酸化物層への進入路をもたらすことが想起される。これらの欠陥は、ウエハをフッ化水素(HF)酸の溶液に浸漬することによって明らかにされ、フッ化水素酸は、表面層を貫いて侵入することによって、酸化物層を侵し、欠陥を明らかにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の欠点の全て又は一部を克服することを目的とする。本発明は、枚葉式ウエハ洗浄機においてSOIウエハを洗浄及び/又は薄層化するプロセスに関する。詳細には、本発明は、枚葉式ウエハ洗浄機において洗浄後のFDSOI基板のHF欠陥を減少させるための解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枚葉式ウエハ洗浄機においてSOI基板を処理するプロセスに関し、前記洗浄機が、
回転運動を行うことができる、基板を把持するためのシステムと、
基板の前面上に第1の溶液をスプレーの形態で吐出するための第1のノズルと、
を備えており、
本プロセスは、液滴の単位面積当たりの運動エネルギーが30ジュール/m2以下であるという点で注目に値する。
【0009】
単独で又は任意の技術的に実現可能な組合せで実施することができる本発明の他の有利且つ非限定的な特徴によると、
スプレーは、毎分0.1リットル~毎分0.2リットルの流量を呈する第1の液体溶液と、毎分70リットル以下、好ましくは毎分60リットル以下の流量を呈する窒素ガスとの混合物から形成され、
枚葉式ウエハ洗浄機は、基板の背面上に第2の溶液を吐出するための第2のノズルを備え、第2の溶液が、前面が第1の溶液の吐出によって、又は窒素クッションの形成によって保護されている場合にのみ、基板の背面上に吐出され、
枚葉式ウエハ洗浄機は、基板の前面上に第3の溶液を低圧又は中圧の液体ジェットの形態で吐出するための第3のノズルを備え、第2の溶液が、前面が第3の溶液又は第1の溶液の吐出によって、或は窒素クッションの形成によって保護されている場合にのみ、基板の背面上に吐出され、
窒素クッションは、基板の前面とスクリーンプレートとの間に形成され、スクリーンプレートが前記前面と平行に、前面から短い距離に配置され、圧力下で窒素を放出することができ、
基板の背面上への溶液の吐出は、基板の前面上への溶液の吐出と同期しており、
枚葉式ウエハ洗浄機は、吐出後に溶液を収集するように基板の周囲のスペースに配置された複数のテーパ付き収集器を備え、各収集器の位置が、基板を把持するためのシステムの回転運動の速度が毎分600回転以下の場合にのみ変更される。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】(i)は、枚葉式ウエハ洗浄機の図であり、(ii)は、枚葉式ウエハ洗浄機の図である。
【
図1b】枚葉式ウエハ洗浄機において標準処理に従って処理された複数のFDSOI基板の前面の積層マップであり、表1は、枚葉式ウエハ洗浄機において基板に適用された標準処理を示す。
【
図2】本発明によるプロセスの第1の実施形態に従って処理された複数のFDSOI基板の前面の積層マップであり、表2は、本発明によるプロセスの第1の実施形態に従って枚葉式ウエハ洗浄機において基板に適用された処理を示す。
【
図3】本発明によるプロセスの第2の実施形態に従って処理された複数のFDSOI基板の前面の積層マップであり、表3は、本発明によるプロセスの第2の実施形態に従って枚葉式ウエハ洗浄機において基板に適用された処理を示す。
【
図4】本発明によるプロセスの第3の実施形態に従って処理された複数のFDSOI基板の前面の積層マップであり、本発明によるプロセスの第3の実施形態に従って枚葉式ウエハ洗浄機において基板に適用された処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、枚葉式ウエハ洗浄機(SWC)においてSOI基板を処理するためのプロセスに関する。
【0013】
そのような洗浄機は、処理される基板1を把持するためのシステム(図示せず)が配置された処理チャンバを備える。典型的には、前記システムは、基板1をその周囲で機械的に保持するための少なくとも3つのフィンガを含むが、これに限定されない。把持システムは、回転運動を行うことができ、この回転運動が一連の処理の間に基板1に伝達される。
【0014】
枚葉式ウエハ洗浄機は、基板1の前面1a上に少なくとも1つの溶液を吐出するための少なくとも1つのノズル10、30も備える。基板1の前面1aは、活性面と呼ばれるものであることが想起される。特にSOI基板については、活性面は、シリコン表面層の自由面である。ノズル10、30は、典型的には、基板1の中心に実質的に面するようにノズルを位置決めすることができる及び/又は例えば円弧状に前後に移動することによって基板の上を移動することができる可動アームによって支えられている。ノズル10、30によって分配された溶液は、遠心効果によって基板1の表面全体にわたって広げられる。
【0015】
様々なタイプの液体溶液を基板1の前面1a上に吐出することができる。例として、様々な濃度の化合物、又はリンス溶液(超純水)とともに、以下の酸性又は塩基性の化学溶液、すなわち、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、オゾン(O3)、SC2-Standard Clean2(HCl/H2O2/H2O)、SC1-Standard Clean1(NH3/H2O2/H2O)を挙げることができる。
【0016】
これらは、低圧又は中圧の液体ジェットの形態で(典型的には、0.5~2.5l/分で)、或はスプレーの形態で吐出され得る。スプレーは、高圧のガスを低圧の所望の溶液の液体と混合することによって形成される。使用されるガスは、典型的には、窒素である。
【0017】
基板1の前面1a上に吐出するために、枚葉式ウエハ洗浄機は、特に、第1の溶液をスプレーの形態で吐出することができる第1のノズル10を備える。本明細書の残りの部分の全体を通して、用語「第1の溶液」は、スプレーの形態で基板1の前面1a上に吐出される任意の溶液を指す。第1の溶液は、上述した様々な液体溶液から選択することができる。
【0018】
スプレー吐出は、従来、基板1の表面から特定の汚染物質を効果的に除去するために使用されている。露出しているか、均一な層を特徴としているかにかかわらず、構造化されているか、構造化していないかにかかわらず、シリコンで作られた基板を洗浄するために、スプレーは、通常、0.5l/分~250l/分の流量を有する窒素と、50ml/分~300ml/分の流量を有する液体(例えば、SC1の溶液であってもよい前記第1の溶液)との混合物から形成される。
【0019】
枚葉式ウエハ洗浄機は、有利には、基板1の前面1aの反対側の基板1の背面1b上に少なくとも1つの溶液を吐出するための少なくとも1つのノズル20を備える。このノズル20は、基板1の中心に実質的に面するように前記ノズルを背面1b上に位置決めすることができる固定アームによって支えることができる。或は、アームは、移動可能であってもよく、基板1の中心に実質的に面するようにノズル20を位置決めすることができ、及び/又は例えば、円弧状に前後に移動することによって基板の下を移動することができる。ノズル20によって分配される溶液は、遠心効果によって基板1の裏面全体1bにわたって広げられる。
【0020】
様々なタイプの液体溶液、特に、前面1a上に吐出するための上述した溶液を基板1の背面1b上に吐出することができる。典型的には、これらは、低圧又は中圧の液体ジェットの形態で(典型的には、0.5~2.5l/分で)吐出され得る。
【0021】
基板1の背面1b上に吐出するために、枚葉式ウエハ洗浄機は、特に、第2の溶液を吐出することができる第2のノズル20を備える。本明細書の残りの部分の全体を通して、用語「第2の溶液」は、基板1の背面1b上に吐出される任意の溶液を指す。
【0022】
枚葉式ウエハ洗浄機は、低圧又は中圧の液体ジェットの形態の溶液を基板1の前面1a上に吐出することを可能にする少なくとも1つの他のノズル30(「第3のノズル」と呼ばれる)を備えるのが有利である。本明細書の残りの部分の全体を通して、用語「第3の溶液」は、低圧又は中圧の液体ジェットの形態で基板1の前面1a上に吐出される任意の溶液を指す。第3の溶液は、上述した様々な液体溶液から選択することができる。
【0023】
枚葉式ウエハ洗浄機は、有利には、基板1(
図1a(i))の周囲のスペースに配置された、基板1を処理するために使用される第1、第2、及び/又は第3の溶液を選択的に収集するように意図された複数の収集器40を備える。各収集器40は、形状がテーパ付けされており、基板1に対する高度を変えることができ、したがって、各収集器40は、特定の溶液がウエハ(
図1a(ii))のエッジを越えて放り捨てられるときに、特定の溶液を収集するように配置され得る。
【0024】
例として、洗浄シーケンス、例えば、
オゾン(O3)、
リンス(脱イオン水を表すDIW)、
SC1又はSC2、
SC1スプレー(スプレーの形態で吐出される)、
リンス(DIW)、
SC2、
リンス(DIW)
を使用して、SOI基板から有機化合物、微粒子、及び金属汚染物を除去することができる。表1は、例えば、露出した、又は均一な層(例えば、酸化物など)を特徴とするシリコン基板に適用された従来技術によるこのようなシーケンスの標準パラメータを含む。様々な成分の割合-SC1の場合はNH3/H2O2/H2O、及びSC2の場合はHCl/H2O2/H2O-は、第1のノズル10、第2のノズル20、及び第3のノズル30を通る流量とともに、表1の括弧間に示されている。
【0025】
ステップ1、2、3、5、6及び7では、第3のノズル30は、低圧又は中圧の液体ジェットの形態で基板1の前面1a上に吐出する(毎分約2リットルの流量)。
【0026】
ステップ4では、SC1溶液が第1のノズル10からスプレーの形態で吐出され、スプレーは、流量が毎分0.05リットルの第1の溶液(本例ではSC1)と、流量が毎分100リットルの窒素ガスとの混合物から形成されている。
【0027】
本出願人は、枚葉式ウエハ洗浄機においてこの標準シーケンスをSOI基板1に適用した。それ自体よく知られているように、SOI基板は、キャリア基板上に配置されたシリコン表面層と埋め込み酸化シリコン層とを含む。SOI基板は、スマートカット(SmartCut)(商標)プロセスを使用して製造することができ、このプロセスは、軽い水素及び/又はヘリウムのイオンをドナー基板に注入すること、並びにこのドナー基板を、例えば分子付着によってキャリア基板に接合すること基づき、酸化ケイ素の層がこれらの2つの基板間に挿入される。次いで、剥離ステップにより、薄い表面層を、イオンの注入深さによって規定された脆弱化された平面と同じレベルにあるドナー基板から分離することができる。場合によっては高温熱処理を含む仕上げステップにより、最後に活性層に必要な表面及び結晶品質が与えられる。本プロセスは、非常に薄いシリコン表面層を製造するのに特に適している。SOI基板を仕上げるステップは、シリコン表面層を洗浄及び/又は薄層化するシーケンスも含む。
【0028】
特に、標準シーケンスがシリコン表面層と埋め込み酸化ケイ素とを含むFDSOI基板に適用され、それらの厚さは、それぞれ10nm及び30nmであった。
【0029】
そのような洗浄シーケンスにより、シリコン基板と同様に、SOI基板1の前面1a及び背面1bを洗浄することができ、さらに、そのような洗浄シーケンスにより、SC1溶液が前面1a上に吐出されるとき、表面欠陥を除去するように、又は正確な層厚に達するようにシリコン表面層を数ナノメートルだけ薄くすることができる。
【0030】
図1bは、枚葉式ウエハ洗浄機において標準シーケンスに従って処理した後の、そしてHF欠陥が明らかにされた後の約30個のFDSOI基板の前面1aの積層マップを示す。(積層マップ上のドットによって表される)各ウエハのHF欠陥の平均的な数は、薬浴マルチウエハ洗浄機での同様の処理と比較して、処理後に約5倍多い。
【0031】
マップは、暗視野顕微鏡法、例えば、KLA-TENCORのサーフスキャンSP(Surfscan SP)(登録商標)に基づいた、欠陥を測定するための計器(しきい値0.1ミクロン)を使用して得られていることに留意されたい。
【0032】
本発明による処理プロセスは、FDSOI基板の前面上に第1の溶液をスプレー吐出するステップが、スプレーの液滴の単位面積当たりの運動エネルギーが30ジュール/m2以下となるように行われるという点で注目に値する。単位面積当たりのこの運動エネルギーは、液滴がウエハ1に衝突するときに液滴によって供給されるエネルギーに対応する。その値は、以下の式に基づいて計算される。
【0033】
【数1】
ここでmは、液滴の質量であり、vは、液滴の速度であり、rは、液滴の半径である。
【0034】
スプレーの液滴の出口速度を特徴付けるための従来技術から知られているシステム及び技法を参照することができる。
【0035】
例えば、ここで使用する枚葉式ウエハ洗浄機では、スプレー吐出するための窒素の流量が毎分45リットルとすると、液滴の運動エネルギーは、約3.35E-9Jである。液滴の衝突面積は、約3.14E-10m2である。したがって、これにより、約10J/m2の単位面積当たりのエネルギーが与えられる。
【0036】
具体的には、本出願人は、SOI基板1の前面1a上へのこれらの液滴のスプレーがシリコン表面層を機械的に損傷する傾向があり、この層の厚さが減少するとともに、特に50nm未満の厚さに対してますます損傷する傾向が高まることを観測した。損傷は、シリコン表面層を貫通する微細孔又は格子欠陥として現れ、これがHF欠陥の増加の原因である。
【0037】
表2は、本発明によるプロセスの第1の実施形態の主要なパラメータを示す。ステップ4で、第1の溶液(SC1)は、
流量が毎分0.1リットル~毎分0.2リットル、好ましくは毎分0.15~0.2リットルの前記第1の溶液と、
流量が毎分70リットル以下、好ましくは毎分60リットル以下の窒素ガスと
の混合物から形成されたスプレーの形態で吐出される。
【0038】
本構成では、SOI基板1の前面1aに達する液滴の単位面積当たりの運動エネルギーは、30ジュール/m2以下であり、これにより、シリコン表面層への損傷が回避され、又は実質的に減少する。
【0039】
ここで使用する例は、第1のSC1タイプの溶液をスプレー吐出する例であるが、溶液の性質は、重要ではなく、溶液は、特に、上述した様々なタイプの溶液から選択することができる。いずれにせよ、本発明によるプロセスは、シリコン表面層に対する機械的な損傷を抑えるように、SOI基板1の前面1aに達するスプレーの液滴の単位面積当たりのエネルギーが30ジュール/m2以下となるように対処する。
【0040】
スプレーの液滴の単位面積当たりの運動エネルギーは、基板の表面の洗浄の有効性を高く保つように、2ジュール/m2よりも高くなるように選択されるのが好ましい。
【0041】
図2は、枚葉式ウエハ洗浄機において第1の実施形態によるプロセスを適用した後の、そしてHF欠陥が明らかにされた後の約30個のFDSOI基板の前面の積層マップを示す。各基板のHF欠陥の平均的な数は、
図1bと比べて約30~40%減少しており、これは、標準シーケンスよりも大幅に改善されていることを表す。
【0042】
プロセス中に、前記基板1の前面1aが第1又は第3の溶液の吐出によって保護されている場合にのみ、第2の溶液が基板1の背面1b上に吐出されるのが有利である。
【0043】
表3は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の主要なパラメータを示す。この第2の実施形態では、第1又は第3の溶液の(前面1a上への)吐出が進行中でない場合、第2の溶液は、(背面1b上に)吐出されない。第2の実施形態は、第1の実施形態で言及したステップ4の最適化されたパラメータをさらに含む。
【0044】
本出願人は、背面1bから基板1のエッジを越えて放り捨てられた液体(第2の溶液)が、特に、収集器40のテーパ付き壁から跳ねることによって、基板1の前面1a上に跳ね返ることを確認した。シリコン表面層が露出している場合、この跳ね返りは、シリコン表面層を機械的に損傷する傾向がある。そのような損傷は、シリコン表面層を貫通する微細孔又は格子欠陥として再び現れ、HF欠陥を引き起こす傾向がある。
【0045】
逆に、(第1の溶液又は第3の溶液の吐出が進行中の間に)シリコン表面層が液体層によって覆われている場合、跳ね返りは、表面層に悪影響を及ぼさない。
【0046】
この第2の実施形態によると、(第1のノズル10又は第3のノズル30からの)前面上への吐出と(第2のノズル20からの)背面上への吐出とが同時に行われる。これは、同期吐出として知られている。これには、吐出された溶液を面1a、1bのそれぞれに同時に輸送するのに必要な時間を考慮に入れることが含まれ、必要な時間は、主に溶液を供給するためのパイプの長さに依存する。この同期により、吐出された溶液のいずれかによって面1a、1bの一方が保護されないままの時間を制限又は排除することができ、したがって、保護されていない面が損傷されるリスクを抑える。前面上への吐出と背面上への吐出を同期させることによって、基板1のエッジからの第1、第2、及び/又は第3の溶液の出口角度の変動も抑えられ、以て、収集器40のテーパ付き壁からの跳ね返りのリスクが減少する。
【0047】
図3は、枚葉式ウエハ洗浄機において第2の実施形態によるプロセスを適用した後の、そしてHF欠陥が明らかにされた後の約30個のFDSOI基板の前面の積層マップを示す。各ウエハのHF欠陥の平均的な数は、
図2(第1の実施形態)と比べて約20%減少しており、これは、プロセスの第1の実施形態よりも大幅に改善され、標準シーケンスよりも大幅に改善されていることを表す。
【0048】
前面1a上と背面1b上への吐出を同期させることは、スプレーの形態での前面1a上への第1の溶液の吐出の最適化とは独立に実施することができることに留意されたい。
【0049】
第2の実施形態の一変形形態によると、基板1の前面1aは、第2の溶液が窒素クッションの形成によって基板1の背面1b上に吐出されている間保護されている。窒素クッションは、SOI基板の前面と、前記前面と平行に、典型的には前記前面から約1~2mm離れた短い距離に配置されスクリーンプレートとの間に形成されているのが好ましく、スクリーンプレートは、圧力下で窒素流を放出することができ、これにより、基板1のエッジからの射出が前面1aに戻るのを防ぐ。
【0050】
液体層が、シリコン表面層を、背面上への吐出から生じる跳ね返りから保護するのと同じ方法で、ガス層もこの悪影響を抑えることができる。
【0051】
プロセス全体を通して、基板1を把持するためのシステムの回転運動の速度が毎分600回転以下である場合に、枚葉式ウエハ洗浄機の複数の収集器のうちの各収集器40の位置が変更されるのが有利である。
【0052】
表4は、本発明によるプロセスのこの第3の実施形態の主要なパラメータを示す。この第3の実施形態は、第1及び第2の実施形態で言及した最適化を含み、収集器40の位置が変更されたときに基板1の回転速度を制限する動作を含む。この制限動作により、収集器40のテーパ付き壁から基板1の前面1a上への跳ね返りを抑えることが可能になる。
【0053】
図4は、枚葉式ウエハ洗浄機において第3の実施形態によるプロセスを適用した後の、そしてHF欠陥が明らかにされた後の約30個のFDSOI基板の前面の積層マップを示す。各ウエハのHF欠陥の平均的な数は、
図3(第2の実施形態)と比べて約20%減少しており、これは、プロセスの第1及び第2の実施形態よりも、並びに標準シーケンスよりも大幅に改善されていることを表す。
【0054】
収集器40の位置が変更されたときのウエハの回転速度の制限は、前面1a上と背面1b上への吐出の同期とは独立に、及び/又はスプレーの形態での前面1a上への第1の溶液の吐出の最適化とは独立に実施することができることに留意されたい。
【0055】
本発明によるプロセスは、厚さが50nm未満の薄い(シリコン及び酸化物)層、特にシリコン表面層の厚さが20nm未満の基板を特徴とするSOI基板の処理に特に適している。
【0056】
もちろん、本発明は、記載された実施形態及び実施例に限定されず、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、変形形態が実施形態及び実施例に導入されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…基板、1a…前面、1b…背面、10…ノズル、20…ノズル、30…ノズル、40…収集器。