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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/42 20060101AFI20230829BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20230829BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H03F1/42
H03F3/34
H03F3/45 110
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019027772
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020136895
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横田 猛昭
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001968(US,A1)
【文献】特開2010-263579(JP,A)
【文献】特開2009-225095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に所定の駆動電圧または駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電圧または駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、
第1および第2の入力電圧の差に応じた一対の出力を生成する入力回路と、
前記第1の入力電圧に対応する前記入力回路の第1の出力端子と第1の電源電圧端子との間に設けられ、その制御端子と出力端子とが短絡されている増幅用の第1のトランジスタと、
前記第2の入力電圧に対応する前記入力回路の第2の出力端子と前記第1の電源電圧端子との間に設けられ、その制御端子が前記第1のトランジスタの制御端子に接続されている増幅用の第2のトランジスタと、
その第1の電極が前記第1のトランジスタの出力端子に接続され、その第2の電極が前記第2のトランジスタの出力端子に接続されている位相補償用のコンデンサと、
その入力端子が前記第2のトランジスタの出力端子に接続され、その出力端子が前記負荷に接続されている出力回路と、
前記第2のトランジスタの出力端子と第2の電源電圧端子との間に設けられている第1のスイッチと、
前記第2のトランジスタの出力端子と前記第2の電源電圧端子との間に前記第1のスイッチと直列接続で設けられ、前記コンデンサに対して一定のバイアス電圧を与えるための電圧降下を発生する電圧バイアス素子と
を有し、
前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第1のスイッチがオン状態になって、前記電圧バイアス素子より前記出力回路に前記駆動電圧または駆動電流を出力させるには至らない前記バイアス電圧が前記コンデンサの第2の電極、前記第2のトランジスタの出力端子および前記出力回路の入力端子に印加されるとともに、前記コンデンサの第1の電極の電位が前記バイアス電圧と等しい値または第2の電極の電位より前記第2の電源電圧端子の電位側にずれた一定の値に保持され、
前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記第1のスイッチがオフ状態になって、前記出力回路が前記第2のトランジスタの出力電圧に応じて前記駆動電圧または駆動電流を出力する、
駆動回路。
【請求項2】
前記入力回路の前記第1の出力端子と前記第2の電源電圧端子との間に第2のスイッチが設けられ、
前記第2のスイッチは、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時はオン状態になり、前記2値信号の論理値が前記第1論理値である時はオフ状態になる、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1および第2のトランジスタは、前記入力回路にカスコード接続されている、請求項1または請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第1の電源電圧端子と前記電圧バイアス素子との間に設けられている定電流源と、
前記第1の電源電圧端子と前記電圧バイアス素子との間に前記定電流源と直列接続で設けられている第3のスイッチと
を有し、
前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第3のスイッチがオン状態になって、前記定電流源より一定の電流が前記電圧バイアス素子に供給され、
前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記第3のスイッチがオフ状態になって、前記定電流源から前記電圧バイアス素子への電流供給が絶たれる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第1の入力電圧は一定の電圧値を有し、前記第2の入力電圧は前記駆動電圧または駆動電流の瞬時値を表すセンス電圧である、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第1の電源電圧端子と前記電圧バイアス素子との間に設けられている定電流源を有し、
前記定電流源より前記電圧バイアス素子に供給される電流の電流値は、前記第1の入力電圧の電圧値に対応している、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記駆動電圧または駆動電流の設定値に対応した電流値を有する基準電流を生成する基準電流生成回路と、
前記基準電流に基づいて、前記基準電流の電流値に対応した電圧値を有する基準電圧を前記第1の入力電圧として生成する基準電圧生成回路と
を有し、
前記基準電流生成回路および前記定電流源は、1個のカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタおよび第4のトランジスタをそれぞれ含む、
請求項6に記載の駆動回路。
【請求項8】
外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に一定の駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、
一定の基準電圧と前記駆動電流の瞬時値を表す電流センス電圧とを入力し、両入力電圧の誤差に応じたシングルの出力を発生する増幅回路と、
前記増幅回路に設けられ、そのゲートとドレインとが短絡されている増幅用の第1のMOSFETと、
前記増幅回路に設けられ、そのゲート端子が前記第1のMOSFETのゲートに接続されている増幅用の第2のMOSFETと、
その第1の電極が前記第1のMOSFETのドレインに接続され、その第2の電極が前記第2のMOSFETのドレインに接続されている位相補償用のコンデンサと、
そのゲートが前記第2のMOSFETのドレインに接続されているドライブ用または出力用の第3のMOSFETと、
前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第3のMOSFETをオフ状態に保持しつつ前記コンデンサの第2の電極、電圧降下に応じた一定のバイアス電圧を前記第2のMOSFETのドレインおよび前記第3のMOSFETのゲートに印加し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記バイアス電圧を発生しないで、前記第2のMOSFETのドレイン電圧を前記第3のMOSFETのゲートに直接入力させる電圧バイアス回路と、
前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は前記コンデンサの第1の電極の電位が第2の電極の電位と等しい値または第2の電極の電位より前記バイアス電圧のバイアス方向とは逆方向にずれた一定の値に保持されるように前記第1のMOSFETに電流バイアスをかけ、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記駆動電流の電流値に応じて変化する電流が前記第1のMOSFETを流れるように前記第1のMOSFETに電流バイアスをかける電流バイアス回路と
を有する駆動回路。
【請求項9】
前記電圧バイアス回路は、前記第1のMOSFETと同一導電型でダイオード接続された第4のMOSFETを含む、請求項8に記載の駆動回路。
【請求項10】
外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に一定の駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、
一定の基準電圧と前記駆動電流の瞬時値を表す電流センス電圧とを入力し、両入力電圧の誤差に応じたシングルの出力を発生する増幅回路と、
前記増幅回路に設けられ、そのゲートとドレインとが短絡されている増幅用の第1のMOSFETと、
前記増幅回路に設けられ、そのゲート端子が前記第1のMOSFETのゲートに接続されている増幅用の第2のMOSFETと、
その第1の電極が前記第1のMOSFETのドレインに接続され、その第2の電極が前記第2のMOSFETのドレインに接続されている位相補償用のコンデンサと、
そのゲートが前記第2のMOSFETのドレインに接続されているドライブ用または出力用の第3のMOSFETと、
前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第3のMOSFETをオフ状態に保持しつつ前記コンデンサの第2の電極、電圧降下に応じた一定のバイアス電圧を前記第2のMOSFETのドレインおよび前記第3のMOSFETのゲートに印加し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記バイアス電圧を発生しないで、前記第2のMOSFETのドレイン電圧を前記第3のMOSFETのゲートに直接入力させる電圧バイアス回路と、
前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記増幅回路から独立して前記電圧バイアス回路に一定の電流を供給し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記電圧バイアス回路への電流供給を断つ電流供給回路と
を有する駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2値信号に応動して負荷を駆動する駆動回路に係り、特に位相補償用のコンデンサを有する駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動回路は、コントローラ、信号処理回路あるいはロジック回路のように比較的小さな電力で信号を発生する信号発生回路と負荷との間に介在するインタフェース回路であり、信号発生回路に代わって電力の大きな信号を負荷に供給する。
【0003】
従来から、様々な用途の駆動回路に演算増幅器が用いられている。演算増幅器は、内部が複数段(一般的には入力段、利得段、出力段)に分かれており、各段に1個または複数個のトランジスタを設け、安定動作のために負帰還ループを付けている。
【0004】
演算増幅器の中には、増幅率を効率よく上げるために、入力段の差動対(一対のトランジスタ)に別の一対のトランジスタをカスコード接続するものがある。この場合、カスコード回路の一対のトランジスタがたとえばMOSFETであるとすると、典型的には、両MOSFETのソースを差動対の出力端子にそれぞれ接続し、両MOSFETのゲートを共通接続してそれらに所定のバイアス電圧を印加し、両MOSFETのドレインを定電流源または抵抗等の電流バイアス回路を介して電源電圧端子にそれぞれ接続し、両MOSFETのドレインから差動の出力を取り出すようにしている(たとえば特許文献1,2)。また、図示省略するが、両MOSFETのゲートを共通接続したうえで一方(基準側)のMOSFETのドレインに短絡接続し、他方のMOSFETのドレインからシングルの出力を取り出すことも可能である。
【0005】
一般に、演算増幅器は、大きな利得と所望の入出力特性が得られやすい反面、高域の周波数で不所望に発振しやすい性質がある。この発振を防止するためには、位相遅れ180°の周波数で負帰還のゲインを1以下にする必要があり、そのための手段として位相遅れを調整できる位相補償用のコンデンサが用いられている。
【0006】
通常、内蔵型の位相補償コンデンサは増幅段に設けられる。上記のようなカスコード型の演算増幅器では、カスコード回路内の上記一対のMOSFETのドレイン間に位相補償コンデンサが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-225095号公報
【文献】特開2010-263579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえばPWM(パルス幅変調)方式の駆動のように周波数の高いパルスまたは2値信号を扱う駆動回路は、出力の立ち上がり速度いわゆるスルーレートが重要であり、スルーレートが十分に高くないと、入力パルスに対する出力パルスの応答速度が不足して、出力パルスの波形にひずみが生じ、たとえばLED(発光ダイオード)等のPWM駆動においては調光周波数や調光デューティのダイナミックレンジが制限される。
【0009】
この点に関して、従来の駆動回路は、上記のようにそれぞれの制御端子が共通接続される増幅用の一対のトランジスタを備えて両トランジスタの出力端子の間に位相補償用のコンデンサを設ける場合には、入力の2値信号に応じてオン・オフ動作が切り替わる際にそのコンデンサで不所望な充放電が行われることになって、増幅段の出力ひいては出力段の駆動出力の立ち上がりに遅延が生じて、スルーレートが低下するという課題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するものであり、増幅部にそれぞれの制御端子が共通接続される一対の増幅用トランジスタの出力端子間に位相補償用のコンデンサを設ける構成において、スルーレートを大きく向上させる駆動回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点における駆動回路は、外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に所定の駆動電圧または駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電圧または駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、第1および第2の入力電圧の差に応じた一対の出力を生成する入力回路と、前記第1の入力電圧に対応する前記入力回路の第1の出力端子と第1の電源電圧端子との間に設けられ、その制御端子と出力端子とが短絡されている増幅用の第1のトランジスタと、前記第2の入力電圧に対応する前記入力回路の第2の出力端子と前記第1の電源電圧端子との間に設けられ、その制御端子が前記第1のトランジスタの制御端子に接続されている増幅用の第2のトランジスタと、その第1の電極が前記第1のトランジスタの出力端子に接続され、その第2の電極が前記第2のトランジスタの出力端子に接続されている位相補償用のコンデンサと、その入力端子が前記第2のトランジスタの出力端子に接続され、その出力端子が前記負荷に接続されている出力回路と、前記第2のトランジスタの出力端子と第2の電源電圧端子との間に設けられている第1のスイッチと、前記第2のトランジスタの出力端子と前記第2の電源電圧端子との間に前記第1のスイッチと直列接続で設けられ、前記コンデンサに対して一定のバイアス電圧を与えるための電圧降下を発生する電圧バイアス素子とを有し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第1のスイッチがオン状態になって、前記電圧バイアス素子より前記出力回路に前記駆動電圧または駆動電流を出力させるには至らない前記バイアス電圧が前記コンデンサの第2の電極、前記第2のトランジスタの出力端子および前記出力回路の入力端子に印加されるとともに、前記コンデンサの第1の電極の電位が前記バイアス電圧と等しい値または第2の電極の電位より前記第2の電源電圧端子の電位側にずれた一定の値に保持され、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記第1のスイッチがオフ状態になって、前記出力回路が前記第2のトランジスタの出力電圧に応じて前記駆動電圧または駆動電流を出力する。
【0012】
上記構成の駆動回路においては、駆動電圧または駆動電流の出力を停止している期間中に、電圧バイアス素子より位相補償コンデンサの第2の電極に一定のバイアス電圧が印加されるとともに、位相補償コンデンサの第1の電極の電位が第2の電極の電位と等しい値または第2の電極の電位より第2の電源電圧端子の電位側にずれた一定の値に保持される。これにより、駆動電圧または駆動電流の出力を開始または再開する際に、位相補償コンデンサが放電を起こすことなく第2のトランジスタの出力電圧がバイアス電圧の値から所期の立ち上がりまたは立ち下げを開始し、あるいは位相補償コンデンサが放電してもそれによって第2のトランジスタの出力電圧におけるバイアス電圧の値からの所期の立ち上がりまたは立ち下がりが一層強められる。
【0013】
本発明の第2の観点における駆動回路は、外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に一定の駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、一定の基準電圧と前記駆動電流の瞬時値を表す電流センス電圧とを入力し、両入力電圧の誤差に応じたシングルの出力を発生する増幅回路と、前記増幅回路に設けられ、そのゲートとドレインとが短絡されている増幅用の第1のMOSFETと、前記増幅回路に設けられ、そのゲート端子が前記第1のMOSFETのゲートに接続されている増幅用の第2のMOSFETと、その第1の電極が前記第1のMOSFETのドレインに接続され、その第2の電極が前記第2のMOSFETのドレインに接続されている位相補償用のコンデンサと、そのゲートが前記第2のMOSFETのドレインに接続されているドライブ用または出力用の第3のMOSFETと、前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第3のMOSFETをオフ状態に保持しつつ前記コンデンサ第2の電極、電圧降下に応じた一定のバイアス電圧を前記第2のMOSFETのドレインおよび前記第3のMOSFETのゲートに印加し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記バイアス電圧を発生しないで、前記第2のMOSFETのドレイン電圧を前記第3のMOSFETのゲートに直接入力させる電圧バイアス回路と、前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は前記コンデンサの第1の電極の電位が第2の電極の電位と等しい値または第2の電極の電位より前記バイアス電圧のバイアス方向とは逆方向にずれた一定の値に保持されるように前記第1のMOSFETに電流バイアスをかけ、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記駆動電流の電流値に応じて変化する電流が前記第1のMOSFETを流れるように前記第1のMOSFETに電流バイアスをかける電流バイアス回路とを有する。
【0014】
上記構成の駆動回路においては、駆動電流の出力を停止している期間中に、電圧バイアス回路より位相補償コンデンサの第2の電極に一定のバイアス電圧が印加される一方で、電流バイアス回路により位相補償コンデンサの第1の電極の電位が第2の電極の電位と等しい値または第2の電極の電位よりバイアス電圧のバイアス方向とは逆方向にずれた一定の値に保持される。これにより、駆動電流の出力を開始または再開する際に、位相補償コンデンサが放電を起こすことなく第2のMOSFETのドレイン電圧および第3のMOSFETのゲート電圧がバイアス電圧の値から所期の立ち上がりまたは立ち下げを開始し、あるいは位相補償コンデンサが放電してもそれによって第2のMOSFETのドレイン電圧ないし第3のMOSFETのゲート電圧におけるバイアス電圧の値からの所期の立ち上がりまたは立ち下がりが一層強められる。
【0015】
本発明の第3の観点における駆動回路は、外部からの2値信号を入力し、前記2値信号の論理値が第1の論理値である時は負荷に一定の駆動電流を供給し、前記2値信号の論理値が第2の論理値である時は前記負荷に対して前記駆動電流の供給を絶つ駆動回路であって、一定の基準電圧と前記駆動電流の瞬時値を表す電流センス電圧とを入力し、両入力信号の誤差に応じたシングルの出力を発生する増幅回路と、前記増幅回路に設けられ、そのゲートとドレインとが短絡されている増幅用の第1のMOSFETと、前記増幅回路に設けられ、そのゲート端子が前記第1のMOSFETのゲートに接続されている増幅用の第2のMOSFETと、その第1の電極が前記第1のMOSFETのドレインに接続され、その第2の電極が前記第2のMOSFETのドレインに接続されている位相補償用のコンデンサと、そのゲートが前記第2のMOSFETのドレインに接続されているドライブ用または出力用の第3のMOSFETと、前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記第3のMOSFETをオフ状態に保持しつつ前記コンデンサ第2の電極、電圧降下に応じた一定のバイアス電圧を前記第2のMOSFETのドレインおよび前記第3のMOSFETのゲートに印加し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記バイアス電圧を発生しないで、前記第2のMOSFETのドレイン電圧を前記第3のMOSFETのゲートに直接入力させる電圧バイアス回路と、前記2値信号に応動し、前記2値信号の論理値が前記第2の論理値である時は、前記増幅回路から独立して前記電圧バイアス回路に一定の電流を供給し、前記2値信号の論理値が前記第1の論理値である時は、前記電圧バイアス回路への電流供給を断つ電流供給回路とを有する。
【0016】
上記構成の駆動回路においては、駆動電流の出力を停止している期間中に、電圧バイアス素子より位相補償コンデンサの第2の電極に一定のバイアス電圧が印加され、増幅回路から独立している電流供給回路より電圧バイアス素子に供給されることによりバイアス電圧の電圧値が増大する方向に任意に調整される。駆動電流の出力を開始または再開する際には、第2のMOSFETのドレイン電圧および第3のMOSFETのゲート電圧における所期の立ち上がりまたは立ち下げを任意調整可能なバイアス電圧の値から開始させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の駆動回路によれば、上記のような構成および作用により、増幅部にそれぞれの制御端子が共通接続される一対の増幅用トランジスタの出力端子間に位相補償用のコンデンサを設ける構成において、スルーレートを大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明における駆動回路の典型的な使用形態を示すブロック図である。
図2】一実施形態における駆動回路の構成を示す回路図である。
図3】上記実施形態の駆動回路における各部の波形を示す波形図である。
図4】比較例の駆動回路の構成を示す回路図である。
図5】比較例の駆動回路における各部の波形を示す波形図である。
図6】第2の実施形態における駆動回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[本発明における駆動回路の使用形態]
【0020】
図1に示すように、本発明における駆動回路10は、典型的には、2値信号発生回路12と負荷14との間に介在して使用される。2値信号発生回路12は、たとえばPWM信号、オン・オフ信号、ディジタル信号等のような任意の2値信号CSを所定の電力(通常は比較的小さい電力)で発生する。駆動回路10は、2値信号発生回路12からの2値信号CSを入力し、その2値信号CSに対応した2値レベルまたはパルスの出力を所要の電力で負荷14に供給する。
【0021】
ここで、駆動回路10の負荷14に対する駆動様式には定電圧駆動型と定電流駆動型の2種類がある。定電圧駆動型の場合は、2値信号CSがHレベルになっている期間中に駆動回路10より負荷14に一定の電圧レベルを有する駆動電圧DVが供給され、2値信号CSがLレベルになっている期間中は駆動電圧DVの供給が絶たれる。定電流駆動型の場合は、2値信号CSがHレベルになっている期間中に駆動回路10より負荷14に一定の電流値を有する駆動電流DIが供給され、2値信号CSがLレベルになっている期間中は駆動電流DIの供給が絶たれる。2値信号CSの2値論理と駆動出力(DV,DI)の2値論理とを逆にする関係(反転関係)も可能である。
【0022】
定電流駆動型には、図1の(a)のように駆動回路10から負荷14に駆動電流DIを流し込む方式(ソース型)と、図1の(b)のように電源から負荷14を介して駆動回路10側に駆動電流DIを引き込む方式(シンク型)とがある。たとえば、LEDをPWM方式で駆動する場合は、引き込み(シンク)の定電流駆動型が多く用いられている。
【0023】
本発明における駆動回路10は、好ましくは集積回路として構築され、2値信号発生回路12から完全に独立していてもよく、あるいは共通の半導体チップ上に2値信号発生回路12と一体的に搭載されてもよい。

[第1の実施形態における駆動回路の構成]
【0024】
図2に、本発明の第1の実施形態における駆動回路10の回路構成を示す。この駆動回路10は、引き込み(シンク型)の定電流駆動に用いられるCMOS駆動回路として構成されている。この駆動回路10は、主な構成要素として、入力回路20、利得回路22、出力回路24、位相補償用コンデンサ25、スイッチ26,28、電圧バイアス素子30を有している。
【0025】
この駆動回路10の制御信号入力端子10(IN)には、2値信号発生回路12(図1)より上記のような2値信号たとえばPWM信号CSが入力される。駆動回路10の出力端子10(OUT)は、負荷14を介して正極性の駆動用電源電圧VCCを与える電源端子に接続される。
【0026】
入力回路20において、一対のP型MOSFET32,34は略同じ構成および特性を有し、1個の差動対を構成している。より詳しくは、両P型MOSFET32,34のそれぞれのソースが共通接続され、正極性の一定の電源電圧VDDを与える第1の電源電圧端子(以下、「正極電源端子」と称する。)に定電流源35を介して接続されている。両P型MOSFET32,34のそれぞれのドレインは略同じ構成および特性を有する定電流源36,38を介してグランド電位の第2の電源電圧端子(以下、「グランド端子」と称する。)に接続されている。そして、一方(基準側)のP型MOSFET32のゲートには基準電圧源40より予め設定された一定の電圧値を有する基準電圧Vが入力され、他方のP型MOSFET34のゲートにはモニタ抵抗42より駆動電流DIの電流値(瞬時値)Iを表す電流センス電圧Vがフィードバック信号として入力される。
【0027】
利得回路22は入力回路20と組み合わせて誤差増幅回路を構成している。利得回路22において、それぞれのゲートが共通接続されている増幅用の一対のN型MOSFET44,46は略同じ構成および特性を有し、カスコード回路を構成している。この実施形態では、両N型MOSFET44,46が入力回路20の差動対(32,34)に折り返し式でカスコード接続されている。
【0028】
より詳しくは、一方のN型MOSFET44のソースは、入力回路20の差動対(32,34)の第1の出力端子であるP型MOSFET32のドレインに接続されるとともに、定電流源36を介してグランド端子に接続されている。このN型MOSFET44は、そのドレインが定電流源48を介して正極電源端子に接続されるとともに、ゲートに短絡接続されている。
【0029】
他方のN型MOSFET46は、そのゲートがN型MOSFET44のゲートに共通接続されたうえで、N型MOSFET44のドレインに接続されている。N型MOSFET46のソースは、入力回路20の差動対(32,34)の第2の出力端子であるP型MOSFET34のドレインに接続されるとともに、定電流源38を介してグランド端子に接続されている。N型MOSFET46のドレインは、定電流源50を介して正極電源端子に接続されるとともに、利得回路22のシングル出力端子として、出力回路24のドライバ段のN型MOSFET52のゲートに直接接続されている。なお、両定電流源48,50は略同じ構成および特性を有している。
【0030】
位相補償用コンデンサ25は、両N型MOSFET44,46のドレインまたは出力端子の間に設けられている。すなわち、位相補償用コンデンサ25の一方の電極25aがN型MOSFET44のドレインに接続され、他方の電極25bがN型MOSFET46のドレインに接続されている。
【0031】
出力回路24において、ドライブ段のN型MOSFET52は、ソースフォロア回路を構成しており、そのドレインが正極電源端子に接続される一方で、ソースが定電流源54を介してグランド端子に接続されるとともに、出力段のN型MOSFET56のゲートに接続されている。N型MOSFET52のゲートは、上記のように利得回路22の出力端子であるN型MOSFET46のドレインに接続されている。
【0032】
出力段のN型MOSFET56は、そのドレインが駆動回路10の出力端子10(OUT)を介して負荷14に接続され、そのソースがモニタ抵抗42を介してグランド端子に接続されている。N型MOSFET56のソースとモニタ抵抗42との間のノードMは、入力回路20のP型MOSFET34のゲートに帰還ループを介して接続されている。
【0033】
上記のように構成された入力回路20、利得回路22および出力回路24は、基準電圧源40およびモニタ抵抗42を伴って、負荷14に供給される駆動電流DIの電流瞬時値Iを基準電圧Vに応じた設定電流値Iに一致させるための定電流回路58を形成している。
【0034】
この定電流回路58において、定電流源35,36,38は差動対のP型MOSFET32,34に対する電流バイアス回路として機能し、定電流源48,50,36,38はカスコード回路のN型MOSFET44,46に対する電流バイアス回路として機能する。これらの定電流源35,36,38,48,50は、たとえば1個のMOSFETに一定のゲートバイアス電圧を与えて構成してよく、あるいは抵抗素子もしくはカレントミラー回路で構成することも可能である。
【0035】
いま、負荷14に電流値Iの駆動電流DIが流れているとすると、V=R42×Iで表される電流センス電圧VがノードMに得られる。ここで、R42はモニタ抵抗42の抵抗値である。この電流センス電圧Vは、ノードMからフィードバック信号として入力回路20のP型MOSFET34のゲートに与えられる。一方、基準側のP型MOSFET32のゲートには基準電圧源40より基準電圧Vが入力されている。
【0036】
差動対の両入力電圧(V,V)が等しい値で安定しているときは、両P型MOSFET32,34に電流量の等しいドレイン電流が流れ、カスコード回路の両N型MOSFET44,46にも電流量の等しいドレイン電流が流れる。
【0037】
しかし、電流センス電圧Vが基準電圧Vより低い(つまり駆動電流DIの電流値Iが設定電流値Iより小さい)ときは、入力回路20ではP型MOSFET34のゲート電圧が低下してドレイン電流が増加し、これによって利得回路22ではN型MOSFET46のソース電圧が上昇してドレイン電流が減少し、ドレイン電圧が上昇する。N型MOSFET46のドレイン電圧(利得回路22の出力電圧)が上昇すると、出力回路24ではドライブ用N型MOSFET52の出力電圧が同様に上昇して、出力用N型MOSFET56のドレイン電流つまり駆動電流DIの電流値Iが増大する。
【0038】
電流センス電圧Vが基準電圧Vより高いとき(つまり駆動電流DIの電流値Iが設定電流値Iより大きい)ときは、入力回路20ではP型MOSFET34のゲート電圧が上昇してそのドレイン電流が減少し、これによって利得回路22ではN型MOSFET46のソース電圧が低下してドレイン電流が増加し、ドレイン電圧が下がる。N型MOSFET46のドレイン電圧が下がると、ドライブ用N型MOSFET52の出力電圧が同様に下がり、出力用N型MOSFET56のドレイン電流(駆動電流)DIの電流値Iが減少する。
【0039】
このように、負荷14に駆動電流DIが流れる時は、定電流回路58が演算増幅器の負帰還動作を利用して、駆動電流DIの電流値(瞬時値)Iを基準電圧Vに応じた設定電流値Iに一致させるようになっている。
【0040】
位相補償用のコンデンサ25は、定電流回路58が負帰還動作を行う際の発振を防止するためのものである。このコンデンサ25の静電容量は、可及的に広いダイナミックレンジを確保しつつ発振またはリンギングの発生を確実に防止できるほどの位相余裕が得られる最適な値に選定される。
【0041】
この駆動回路10において、利得回路22の出力端子であるN型MOSFET46のドレインとグランド端子との間に直列接続で設けられているスイッチ26および電圧バイアス素子30は、位相補償コンデンサ25に対する電圧バイアス回路62を構成している。
【0042】
スイッチ26は、本来的には、PWM信号CSのデューティ比に応じて定電流回路58を間欠的に動作させるために設けられている。PWM信号CSがHレベルのときは、スイッチ26がオフして定電流回路58をイネーブル(作動)状態に切り替え、PWM信号CSがLレベルのときは、スイッチ26がオンして定電流回路58をディセーブル(停止)状態に切り替えるようになっている。
【0043】
この実施形態におけるスイッチ26は、N型MOSFETからなり、そのソースがグランド端子に接続され、そのドレインが電圧バイアス素子30を介して位相補償コンデンサ25の第2電極25b、利得回路22のN型MOSFET46のドレインおよび出力回路24のドライブ用N型MOSFET52のゲートに接続されている。スイッチ26のゲート端子には、インバータ回路60を介して制御信号入力端子10(IN)が接続されている。
【0044】
電圧バイアス素子30は、スイッチ26がオンしている間(駆動回路10が駆動電流DIの出力を停止している間)、位相補償コンデンサ25の第2電極25b、利得回路22のN型MOSFET46のドレインおよび出力回路24のドライブ用N型MOSFET52のゲートに一定のバイアス電圧を印加するためのものである。
【0045】
この実施形態における電圧バイアス素子30は、ダイオード接続されたN型MOSFETによって構成されている。このN型MOSFETは、好ましくは利得回路22の基準側N型MOSFET44,46と略同一の構成および特性を有している。電圧バイアス素子30に電流が流れるときは、電圧バイアス素子(N型MOSFETのゲート・ソース間)30で電圧降下が生じる。この電圧降下は、ダイオードの順方向電圧と同じであり、電流に対して略対数関数的に依存する電圧値を有する。電圧バイアス回路62(26,30)の詳しい作用は後述する。
【0046】
入力回路20の基準側出力端子(P型MOSFET32のドレイン)とグランド端子との間に設けられているスイッチ28は、駆動電流DIの出力を停止している間だけ利得回路22の基準側N型MOSFET44に対して電流バイアス回路の一部を構成する。この実施形態におけるスイッチ28は、N型MOSFETからなり、そのソースがグランド端子に接続され、そのドレインがN型MOSFET44のソースに接続されている。スイッチ28のゲートには、インバータ回路60を介して制御信号入力端子10(IN)が接続されている。スイッチ28の作用についても後に詳しく説明する。

[実施形態における駆動回路の作用]
【0047】
以下、図3を参照して、この駆動回路10の作用を説明する。2値信号発生回路12(図1)より制御信号入力端子10(IN)に与えられるPWM信号CSは、一定の周波数と可変のデューティ比でHレベルとLレベルとを交互に繰り返す。
【0048】
PWM信号CSがLレベルになっている期間(駆動電流DIの出力を停止している期間)中は、両スイッチ26,28のいずれもオンする。この場合、各スイッチ26,28をそれぞれ構成しているN型MOSFETは飽和状態でオンするので、それらの電圧降下は実質的にゼロとみなすことができる。
【0049】
スイッチ26がオンしている時は、正極電源端子から定電流源50、電圧バイアス素子30およびオン状態のスイッチ26を通ってグランド端子に至る電流路(以下、「電流路B」と称する。)が形成され、この電流路Bに一定の電流BIが流れる。この時、電圧バイアス素子30で電圧降下が発生し、その電圧降下がバイアス電圧Vとして位相補償コンデンサ25の第2電極25bに印加される。こうして、位相補償コンデンサ25の第2電極25bはバイアス電圧Vに等しい電位に保持される。そして、利得回路22の出力であるN型MOSFET46のドレイン電圧もバイアス電圧Vに保持される。
【0050】
また、電圧バイアス素子30より発生されるバイアス電圧Vは出力回路24のドライブ用N型MOSFET52のゲート端子にも印加される。しかし、バイアス電圧VはN型MOSFET52のしきい値電圧より低い値に設定されるため、N型MOSFET52はオフ状態に保持される。このため、出力用N型MOSFET56より駆動電流DIは出力されず、モニタ電圧Vはゼロである。このとき、入力回路20では、電圧センス電圧Vを入力するP型MOSFET34が定電流源35より供給される電流の殆どを流し、基準側P型MOSFET32は電流をほとんど流さない。もっとも、利得回路22の両N型MOSFET44,46は、入力回路20の入出力状態とは関係なく、以下に述べるようにオン状態の両スイッチ26,28によって一定のバイアス状態に保持される。
【0051】
スイッチ28がオンしている時は、正極電源端子から定電流源48、N型MOSFET44およびオン状態の第2のスイッチ28を通ってグランド端子に至る電流路(以下、「電流路A」と称する。)が形成され、この電流路Aに一定の電流AIが流れる。この時、N型MOSFET44は、そのドレインとゲートが短絡接続されているので、電圧バイアス素子30と同様にダイオード接続されたMOSFETとして動作する。これにより、位相補償コンデンサ25の第1電極25aは、N型MOSFET44のゲート・ソース間に発生する電圧降下Vに等しい電位に保持される。
【0052】
ここで、N型MOSFET44と電圧バイアス素子30のN型MOSFETとは略同一の構成および特性を有しているので、N型MOSFET44の電圧降下Vと電圧バイアス素子30の電圧降下(バイアス電圧)Vとは略等しい関係にある。
【0053】
こうして、PWM信号CSがLレベルになっている期間(駆動電流DIの出力を停止している期間)中は、利得回路22の位相補償コンデンサ25を挟んで左右対称の2つの電流路A,Bに略等しい電流AI,BIがそれぞれ流れ、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bは略等しい電位に保持される。このとき、位相補償コンデンサ25の充電電圧ないし充電電荷は略ゼロである。
【0054】
PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わると(図3の時点ta,tc)、両スイッチ(N型MOSFET)26,28はそれまでのオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0055】
スイッチ26がオフすると、電流路Bに電流BIが流れなくなって、電圧バイアス素子30からバイアス電圧Vは発生されず、電圧バイアス回路62(26,30)は利得回路22、位相補償コンデンサ25および出力回路24から電気的に遮断または隔離される。代わって、正極電源端子から定電流源50、N型MOSFET46および定電流源38を通って、N型MOSFET46に対する本来のバイアス電流が流れるようになる。そして、N型MOSFET46のドレイン電圧がそのまま直接にドライブ用N型MOSFET52のゲートに印加されるようになる。
【0056】
一方、スイッチ28もオフすることで、電流路Aで電流AIが流れなくなり、代わって正極電源端子から定電流源48、N型MOSFET44および定電流源36を通って、N型MOSFET44に対する本来のバイアス電流が流れるようになる。
【0057】
こうして入力回路20、利得回路22および出力回路24の間で相互に入出力関係が結ばれ、定電流回路58が負帰還動作を再開する。そして、モニタ抵抗42より発生される電流センス電圧Vを基準電圧Vに一致させるように(つまり駆動電流DIを設定電流値Iまで立ち上げるように)、定電流回路58の各部が動作する。
【0058】
この場合、位相補償コンデンサ25においては、PWM信号CSがLレベルの期間(両スイッチ26,28がオン状態の期間)中に両電極25a,25bが略等しい電位に保持されていたので(充電電荷はゼロなので)、PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わった直後(両スイッチ26,28がオン状態からオフ状態に切り替わった直後)に、放電が起こらない。
【0059】
これによって、定電流源50の出力端子ないしN型MOSFET46のドレインから位相補償コンデンサ25に電流(放電電流)が流れず、N型MOSFET46のドレイン電圧がそれまでの安定値V(V>0)から鋭く立ち上がる。出力回路24では、ドライブ用N型MOSFET52がN型MOSFET46のドレイン電圧の立ち上がりに応動して遅滞なく出力用N型MOSFET56の駆動を開始し、駆動電流DIをゼロから設定電流値Iまで一瞬に立ち上げる。
【0060】
なお、利得回路22では、両N型MOSFET44,46のゲートが共通接続されたうえで基準側N型MOSFET44のドレインに接続されているので、出力側N型MOSFET46のドレイン電流が基準側N型MOSFET44のドレイン電流に追従して変化する。詳細には、PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わった直後は入力回路20の基準側P型MOSFET32のドレイン電流が小さいために利得回路22では基準側N型MOSFET44に大きなドレイン電流が流れ、これに追従して出力側N型MOSFET46にも大きなドレイン電流が流れる。そして、電流センス電圧Vの上昇に伴って、入力回路20の基準側P型MOSFET32のドレイン電流が増加するために利得回路22では基準側N型MOSFET44のドレイン電流が減少し、これに追従して出力側N型MOSFET46のドレイン電流も減少する。MOSFET44,46の双方とも、それぞれのドレイン電流が減少するにつれて、それぞれのドレイン電圧が上昇する。こうして、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bの電位は、PWM信号CSがLレベルの時の安定値V,V(V≒V)からPWM信号CSがHレベルの時の安定値V,V(V≒V)まで略等しいレートで上昇する。
【0061】
PWM信号CSがHレベルからLレベルに変わった時は(図3の時点t,t)、両スイッチ26,28はそれまでのオフ状態からオン状態に切り替わり、定電流回路58の各部が上記と逆方向に切り替わる。
【0062】
すなわち、スイッチ26,28がオンすることにより、出力回路24ではN型MOSFET52,56がオフ状態になって駆動電流DIの出力を停止する一方で、利得回路22では入力回路20の入出力状態とは関係なく上記のように位相補償コンデンサ25を挟んで両側の電流路A,Bで略等しい電流AI,BIがそれぞれ流れる。そして、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bの電位は、基準側N型MOSFET44および電圧バイアス回路62の電圧バイアス素子(N型MOSFET)30の電圧降下V,V(V≒V)で与えられる電位までそれぞれ瞬時に下がり、PWM信号CSがLレベルの期間中はそれらの電位に保持される。
【0063】
その後も、PWM信号CSの可変のデューティ比に応じて上記のような定電流回路58の動作と停止が交互に繰り返され、負荷14にはPWM信号CSの可変のデューティ比に応じた駆動電流DIが供給される。
【0064】
上記のように、この実施形態の駆動回路10においては、PWM信号CSの論理値に応じて定電流回路58を動作させている時も停止させている時も、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bが互いに略等しい電位に保持され、切り替わりの際に利得回路22の位相補償コンデンサ25で不所望な放電または充電が行われない。このため、切り替わりの際には、利得回路22の出力電圧(N型MOSFET46のドレイン電圧)が位相補償コンデンサ25が無い場合と同じ状態で出力回路24に与えられる。特に、定電流回路58が停止状態から動作状態に切り替わる際には、利得回路22の出力電圧(N型MOSFET46のドレイン電圧)が位相補償コンデンサ25が無い場合と同じ状態で一定のオフセット値V(V>0)から立ち上がるので、出力回路22のN型MOSFET52,56を遅滞なく応動させ、駆動電流DIをゼロから設定電流値Iまで一瞬に立ち上げることができる。これによって、スルーレートを大きく向上させ、高速応答のPWM駆動を実現することができる。
【0065】
また、スイッチ26,28および電圧バイアス素子30は、定電流回路58が動作する時は負帰還ループから外れるので、定電流回路58の負帰還動作や位相補償コンデンサ25の位相補償作用に影響を及ぼすことはない。
【0066】
これにより、PWM信号CSのパルス幅が狭くても、位相補償コンデンサ25の働きにより発振またはリンギングの発生を防止しつつ、PWM調光周波数やダイナミックレンジを拡げることができる。また、この実施形態によれば、比較的小さい動作電圧の下で大きな利得が得られる折り返し式カスコード型の駆動回路においてスルーレートの大なる向上を実現することができる。

[実施形態における比較例]
【0067】
図4に、この実施形態における比較例の構成を示す。この比較例の駆動回路100は、上記実施形態の駆動回路10からスイッチ28および電圧バイアス素子30を省いた構成に相当する。図5に、この駆動回路100における各部の波形を示す。
【0068】
この比較例の駆動回路100において、スイッチ26は、専らPWM信号CSのデューティ比に応じて定電流回路58を間欠的に動作させるために機能する。PWM信号CSがLレベルの期間中は、スイッチ26がオンして、定電流回路58が停止状態になる。停止期間中、位相補償コンデンサ25の第2電極25bの電位(N型MOSFET46のドレイン電圧)は、オン状態のスイッチ26を介して強制的にグランド電位に保持される。
【0069】
一方、電流センス電圧Vがゼロになっているため、入力回路20では基準側P型MOSFET32には電流が殆ど流れず、その代わりに利得回路22では基準側N型MOSFET44で比較的大きなドレイン電流が流れる。この時、正極電源端子から定電流源48、N型MOSFET44および定電流源36を通ってグランド端子に至る電流路(以下、「電流路C」と称する。)が形成され、この電流路Cに一定の電流CIが流れる。こうして、位相補償コンデンサ25の第1電極25aは、定電流源36の電圧降下とN型MOSFET44の電圧降下とを加え合わせた電圧値に相当する電位V(V>V)に保持される。
【0070】
このように、PWM信号CSがLレベルで駆動電流DIの出力を停止している期間中は、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bの電位が互いに等しくはならず、出力側の第2電極25bがグランド電位に保持される一方で、基準側の第1電極25aがグランド電位よりVだけ高い値に保持される。このため、位相補償コンデンサ25は一定量の電荷を蓄積した状態になっている。
【0071】
PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わってスイッチ26がオン状態からオフ状態に切り替わると(図5の時間t,t)、正極電源端子から定電流源50、N型MOSFET46および定電流源38を介して、N型MOSFET46に対する本来の電流バイアスがかけられ、N型MOSFET46のドレイン電圧がゼロ(グランド電位)からの立ち上がりを開始する。しかし、この時、位相補償コンデンサ25が第1電極25a側に放電することにより、第2電極25b側から第1電極25a側に向かう放電電流が流れてその放電に要する時間が遅延時間となり、N型MOSFET46のドレイン電圧は鈍く立ち上がる。その結果、出力回路24では、ドライバ段のN型MOSFET52の応答が遅くなり、駆動電流DIの立ち上がりも遅くなる。
【0072】
このように、比較例の駆動回路100においては、駆動電流DIの出力を開始または再開する際に、利得回路22の出力電圧(N型MOSFET46のドレイン電圧)がゼロから立ち上がりを開始するのに加えて、利得回路22に設けられている位相補償コンデンサ25で第1電極25a側への放電が行われることにより、利得回路22の出力電圧の立ち上がりがさらに遅れてしまい、駆動電流DIを高速に立ち上げることができない。このため、LED等のPWM駆動において調光周波数や調光デューティのダイナミックレンジが制限される。

[第2の実施形態]
【0073】
図6に、本発明の第2の実施形態による駆動回路10Aの回路構成を示す。この駆動回路10Aは、上述した第1の実施形態の駆動回路10(図2)に電流供給回路70および基準電圧・電流生成回路72を付加している。
【0074】
電流供給回路70は、利得回路22から独立しており、正極電源端子と電圧バイアス回路62との間で直列に接続されているスイッチ74と定電流源としてのP型MOSFET76とを有している。
【0075】
スイッチ74は、P型MOSFETからなり、そのソースがP型MOSFET76のドレインに接続され、そのドレインが電圧バイアス素子30の出力端子に接続され、そのゲートは制御信号入力端子10(IN)に接続されている。P型MOSFET76は、そのソースが正極電源端子に接続され、そのゲートが後述する基準電圧・電流生成回路72内のP型MOSFET78,80のゲートと共通接続されたうえで誤差増幅器82の出力端子に接続されている。
【0076】
この電流供給回路70においては、PWM信号CSがLレベルになっている期間(駆動電流DIの出力を停止している期間)中に、スイッチ(P型MOSFET)74がオンして、正極電源端子より定電流源のP型MOSFET76、オン状態のスイッチ74、電圧バイアス素子30、オン状態のスイッチ(N型MOSFET)26を通ってグランド端子に至る経路Eで電流EIが流れる。この電流EIは、基準電圧・電流生成回路72より定電流源であるP型MOSFET76のゲートに与えられる制御電圧に依存している。こうして、電流供給回路70より電圧バイアス素子30に一定の電流EIが供給される。
【0077】
一方で、PWM信号CSがLレベルになっている期間中には、上記したように、正極電源端子より定電流源50、電圧バイアス素子30、オン状態のスイッチ(N型MOSFET)26を通ってグランド端子に至る経路Bで電流BIが流れる。これにより、電圧バイアス素子30で発生する電圧降下つまりバイアス電圧Vは、第1実施形態における電流BIに電流供給回路70からの電流EIが足し合わさったぶんだけ増加することになる。もちろん、バイアス電圧Vの増加量は、出力回路24のドライブ用NMOSFET52のしきい値を超えない範囲で設定される。
【0078】
PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わると、電流供給回路70は、スイッチ(P型MOSFET)74がオフすることによって電圧バイアス回路62への電流EIの供給を絶ち、定電流回路58の負帰還動作には影響を与えない。
【0079】
このように、この駆動回路10Aは、電流供給回路70を備えることで、PWM信号CSがLレベルになっている期間(駆動電流DIの出力を停止している期間)中に電圧バイアス回路62の電圧バイアス素子30で発生されるバイアス電圧Vを、出力回路24のドライブ用NMOSFET52をオフ状態に保つ範囲内で任意に高くし、それによってスルーレートを一層向上させることができる。
【0080】
なお、PWM信号CSがLレベルになっている期間(駆動電流DIの出力を停止している期間)中は、位相補償コンデンサ25の両電極25a,25bの電位が互いに等しくならず、出力側の第2電極25bが基準側の第1電極25aよりも高い電位に保持され、位相補償コンデンサ25は一定量の電荷を蓄積する。このため、PWM信号CSがLレベルからHレベルに変わった直後に、位相補償コンデンサ25が放電する。しかし、この放電では、位相補償コンデンサ25が第2電極25b側に蓄積電荷を放出するので、N型MOSFET46のドレイン電圧を下げる方向に作用するのではなく、むしろ上げる方向に作用する。
【0081】
基準電圧・電流生成回路72は、上記P型MOSFET78,80および誤差増幅器82に加えて、基準電圧源84、抵抗86,88を有している。ここで、抵抗86は、好ましくは外付けの基準電流設定抵抗として設けられ、駆動電流DIの電流値を設定または変更するためそれに見合った抵抗値を有する抵抗素子が交換可能に取り付けられるようになっている。
【0082】
誤差増幅器82、基準電圧源84、P型MOSFET78および抵抗86は、負帰還ループの定電圧回路を構成している。より詳細には、定電流源のP型MOSFET78および抵抗86が正極電源端子とグランド端子との間で直列に接続され、その接続点またはノードFが誤差増幅器82の一方(正極性)の入力端子に接続されている。誤差増幅器82の他方(負極性)の入力端子には基準電圧源84より一定の基準電圧Vが入力される。誤差増幅器82の出力端子はP型MOSFET78のゲートに接続されている。
【0083】
誤差増幅器82は基準電圧VとノードFの電圧Vとの差分に相当する電圧(誤差電圧)を出力し、この誤差電圧によってP型MOSFET78のドレイン電流FIの電流値が制御され、ノードFに抵抗86の電圧降下としてドレイン電流FIの電流値に比例した電圧Vが得られる。そして、負帰還動作により、定常状態ではP型MOSFET78のドレイン電流FIが一定の値つまり基準電流値Iに保持される。この基準電流値Iは、基準電流設定抵抗86の抵抗値をR86とすると、I=V/R86で与えられる。
【0084】
一方、P型MOSFET80および基準電圧生成抵抗88も正極電源端子とグランド端子との間で直列に接続され、その接続点またはノードGが入力回路20の基準側P型MOSFET32のゲートに接続されている。ここで、定電流源のP型MOSFET80は、そのソースが正極電源端子に接続され、そのゲートがP型MOSFET78のゲートに共通接続されており、P型MOSFET78と組み合わせてカレントミラー回路を構成している。
【0085】
このように、両P型MOSFET78,80のドレイン電流FI,GIの電流値は任意のカレントミラー比の比例関係にある。たとえば、両P型MOSFET78,80を同一サイズに構成した場合は、カレントミラー比は1:1であり、P型MOSFET80のドレイン電流GIの電流値IはP型MOSFET78のドレイン電流FIの電流値(基準電流値)Iと同じになり、基準電圧生成抵抗88の抵抗値をR88とすると、ノードGの電圧VはV=R88・I=R88・Iで与えられる。このノードGの電圧Vが、駆動電流DIの設定電流値Iを指示する基準電圧として、入力回路20の基準側P型MOSFET32のゲートに入力される。
【0086】
上記のように、基準電流FIを流すP型MOSFET78のゲートは、電流供給回路70で定電流源を構成しているP型MOSFET76のゲートにも共通接続されている。これによって、P型MOSFET76,78の両者はカレントミラー回路を構成し、両P型MOSFET76,78のドレイン電流は任意のカレントミラー比の比例関係にある。たとえば、両P型MOSFET76,78を同一サイズに構成した場合は、カレントミラー比は1:1であり、P型MOSFET76のドレイン電流EIの電流値IはP型MOSFET78のドレイン電流FIの電流値つまり基準電流値Iと同じになる。
【0087】
かかる構成により、電流供給回路70の定電流源であるP型MOSFET76より電圧バイアス素子30に供給される電流EIの電流値Iは、基準電圧・電流生成回路72で生成される基準電流FIの基準電流値Iと比例する関係にあり、ひいては駆動電流DIの設定電流値Iおよびこれを指示する基準電圧Vとも比例する関係にある。
【0088】
たとえば、駆動電流DIの設定電流値Iを増やす場合は、基準電圧生成抵抗86の抵抗値を下げてP型MOSFET78より得られる基準電流値Iを大きくし、それによって基準電圧Vを高くする調整が行われる。そうすると、P型MOSFET78のドレイン電流(基準電流)FIの増加分が電流供給回路70のP型MOSFET76にミラーされ、P型MOSFET76のドレイン電流EIが増加し、電圧バイアス手段30より生ずる電圧降下つまりバイアス電圧Vも上昇する。
【0089】
このように、入力回路20に与えられる基準電圧Vの電圧値に連動して(つまり負荷14に供給される駆動電流DIの設定電流値Iに連動して)、電流供給回路70より電圧バイアス手段30に供給される電流EIの電流値が変化するようになっている。これにより、駆動電流DIの設定電流値Iを増加させた場合でも、駆動電流DIの出力を停止させている期間中に電圧バイアス手段30より利得回路22の出力端子および出力回路24の入力端子に与えられるバイアス電圧Vが相応に増加するので、駆動電流DIの立ち上がり時間の増加を抑制して、高スルーレートを維持することができる。

[他の実施形態又は変形例]
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0091】
たとえば、入力回路20は、上記実施形態におけるような差動対(32,34)の構成に限定されず、基準電圧Vと電流センス電圧Vとを入力して両入力電圧(V,V)の差分に相当する一対の出力を生成する任意の回路構成を採ることができる。
【0092】
上記第1の実施形態は利得回路22を折り返し式のカスコード回路で構成しているので、その一変形例として定電流源36にスイッチ28の機能を担わせることも可能である。すなわち、上記実施形態の駆動回路10(10A)において、スイッチ28を備えなくても、駆動電流DIの出力を停止させている期間中に、正極電源端子から定電流源48、N型MOSFET44および定電流源36を介してグランド端子に至る経路で一定の電流が流れる。この場合、定電流源36の電圧降下が可及的にゼロに近似または近接するように構成することで、N型MOSFET44のドレイン電圧つまり位相補償コンデンサ25の第1電極25aの電位を第2電極25bの電位(V)と等しい値にすることも可能であり、それによって上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
もちろん、利得回路22を非折り返し式のカスコード回路で構成することも可能である。さらには、カスコード回路以外でも、利得回路または増幅回路にそれぞれの制御端子が共通接続されている一対の増幅用トランジスタを備える任意の駆動回路に本発明を適用することができる。
【0094】
出力回路24においては、出力用のN型MOSFET56を省いて、ドライブ用N型MOSFET52の出力端子を負荷または後段の回路に直接接続する構成も可能であり、その場合はN型MOSFET52が出力用のトランジスタを兼ねることになる。
【0095】
電圧バイアス回路62においては、電圧バイアス素子30にダイオード接続のMOSFET以外の電圧降下発生素子たとえば抵抗を用いることも可能である。また、上記実施形態における各スイッチ26,28,74のいずれかをトランスミッションゲートで構成することも可能である。
【0096】
また、上記実施形態の駆動回路において、各部のPMOSトランジスタをNMOSトランジスタに置き換え、各部のNMOSトランジスタをPMOSトランジスタに置き換える変形も可能である。その場合は、グランド端子が第1の電源電圧端子で正極電源端子が第2の電源電圧端子であり、各部の極性、論理または作用が上記実施形態と逆転する。たとえば、電圧バイアス手段30で発生されるバイアス電圧Vは、正極性電源電圧(VDD)より一定値δだけ低い電圧(V=VDD-δ)として与えられる。つまり、上記実施形態におけるバイアス電圧Vがベース電位であるグランド電位(ゼロ)より高くなる方向のバイアス電圧であったのに対して、この場合のバイアス電圧Vはベース電位である正極電源電圧(VDD)より低くなる方向のバイアス電圧となる。
【0097】
この場合、駆動電流DIの出力を停止している期間中に、位相補償コンデンサ25の第2電極25bの電位がバイアス電圧V(=VDD-δ)の値に保持される一方で、第1電極25bの電位は上記第1の実施形態では第2電極25bの電位(VDD-δ)と等しい値に保持され、上記第2の実施形態ではそれより第2の電源電圧(VDD)側にずれた一定の値に保持される。これにより、駆動電流DIの出力を開始する際に、上記第1の実施形態では、位相補償コンデンサ25の放電が起こらず、第2電極25b側の電圧は位相補償コンデンサ25の無いのと同様に安定値(VDD-δ)から引き下げられる。また、上記第2の実施形態では、位相補償コンデンサ25が第1電極25a側に電荷を放出する形態の放電を起こし、これによって第2電極25b側では電圧の引き下げが一層強められる。
【0098】
上記実施形態における駆動回路10,10Aは引き込みの定電流駆動用に構成されたが、流し込みの定電流駆動用に構成されてもよい。さらに、本発明は、定電圧駆動用の駆動回路にも適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
10,10A 駆動回路
14 負荷
20 入力回路
22 利得回路
24 出力回路
25 位相補償用コンデンサ
25a (コンデンサ)第1電極
25b (コンデンサ)第2電極
26,28 スイッチ
32,34 (差動対)P型MOSFET
35,36,38,48,50,54 定電流源
44,46 (増幅用)N型MOSFET
52 (ドライバ段)N型MOSFET
56 (出力段)N型MOSFET
62 電圧バイアス回路
70 電流供給回路
72 基準電圧・電流生成回路
74 スイッチ
76,78,80 (定電流源)P型MOSFET
82 誤差増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6