(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】温度制御システム
(51)【国際特許分類】
F25D 17/02 20060101AFI20230829BHJP
G05D 23/13 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F25D17/02 302
G05D23/13
(21)【出願番号】P 2019209955
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】国保 典男
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 功宏
(72)【発明者】
【氏名】中澤 敏治
(72)【発明者】
【氏名】高梨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】福住 幸大
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020509(JP,A)
【文献】特開平09-298192(JP,A)
【文献】特開2019-024055(JP,A)
【文献】特開平06-174388(JP,A)
【文献】特開2013-105359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/461
G05D 23/13
G05D 23/19
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留するタンクを有し、前記熱媒体を設定温度に調整して供給する調整装置と、
前記調整装置から前記熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、前記調整装置まで戻す循環回路と、
前記流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、前記設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定し、且つ前記変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる制御部と、
を備え
、
前記調整装置から供給される前記熱媒体の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、前記変化後の目標温度、前記温度センサにより検出された前記温度、前記調整装置から前記制御対象までの熱容量、及び前記調整装置の運転状態に基づいて、前記所定時間を設定する、温度制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記調整装置の前記運転状態として最高出力運転に基づいて、前記所定時間を設定し、前記変化タイミングよりも前記所定時間前から前記変化タイミングまで、前記調整装置を最高出力運転させる、請求項
1に記載の温度制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記調整装置の前記運転状態として最高効率運転に基づいて、前記所定時間を設定し、前記変化タイミングよりも前記所定時間前から前記変化タイミングまで、前記調整装置を最高効率運転させる、請求項
1に記載の温度制御システム。
【請求項4】
前記調整部は、前記調整装置から前記流通部まで流通する前記熱媒体と、前記調整装置から前記流通部を介さず前記調整装置まで戻る前記熱媒体との比率を変更する第1分配弁を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項5】
前記調整装置は、第1熱媒体を貯留する第1タンクを有し、前記第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置であり、
前記循環回路は、前記第1調整装置から前記第1熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路であり、
第2熱媒体を第2設定温度に調整して供給する第2調整装置と、
前記第2調整装置から前記第2熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第2流通部まで流通させて、前記第2調整装置まで戻す第2循環回路と、を備え、
前記調整部は、前記第1流通部及び前記第2流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1変化タイミングからアシスト期間だけ前記第2設定温度を変化後の目標温度に対応した第2設定温度に設定し、前記第2調整装置から前記第2流通部へ前記第2熱媒体を供給させる、請求項
5に記載の温度制御システム。
【請求項7】
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留するタンクを有し、前記熱媒体を設定温度に調整して供給する調整装置と、
前記調整装置から前記熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、前記調整装置まで戻す循環回路と、
前記流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、前記設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定し、且つ前記変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる制御部と、
を備え、
前記調整装置は、第1熱媒体を貯留する第1タンクを有し、前記第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置であり、
前記循環回路は、前記第1調整装置から前記第1熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路であり、
第2熱媒体を第2設定温度に調整して供給する第2調整装置と、
前記第2調整装置から前記第2熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第2流通部まで流通させて、前記第2調整装置まで戻す第2循環回路と、を備え、
前記調整部は、前記第1流通部及び前記第2流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させ、
前記制御部は、前記第1変化タイミングからアシスト期間だけ前記第2設定温度を変化後の目標温度に対応した第2設定温度に設定し、前記第2調整装置から前記第2流通部へ前記第2熱媒体を供給させる、温度制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定時間前から前記第1変化タイミングまで、前記第2設定温度を変化前の目標温度に対応した第2設定温度に設定し、前記第2調整装置から前記第2流通部へ前記第2熱媒体を供給させる、請求項
5~7のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項9】
前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体は、共通の共通熱媒体であり、
前記第1流通部及び前記第2流通部は、共通の共通流通部であり、
前記調整部は、前記共通流通部から前記第1調整装置まで流通する前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第2調整装置まで流通する前記共通熱媒体との比率を変更する第2分配弁を含む、請求項
5~8のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項10】
前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体は、共通の共通熱媒体であり、
前記第1流通部及び前記第2流通部は、共通の共通流通部であり、
前記調整部は、前記共通流通部から前記第1調整装置まで流通する前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第1調整装置及び前記第2調整装置を介さず前記共通流通部まで戻る前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第2調整装置まで流通する前記共通熱媒体との比率を変更する第3分配弁を含む、請求項
5~8のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項11】
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第4分配弁を含む、請求項
5~10のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項12】
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留するタンクを有し、前記熱媒体を設定温度に調整して供給する調整装置と、
前記調整装置から前記熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、前記調整装置まで戻す循環回路と、
前記流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、前記設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定し、且つ前記変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる制御部と、
を備え、
前記調整装置は、第1熱媒体を貯留する第1タンクを有し、前記第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置であり、
前記循環回路は、前記第1調整装置から前記第1熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路であり、
第2熱媒体を第2設定温度に調整して供給する第2調整装置と、
前記第2調整装置から前記第2熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第2流通部まで流通させて、前記第2調整装置まで戻す第2循環回路と、を備え、
前記調整部は、前記第1流通部及び前記第2流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させ、
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第4分配弁を含む、温度制御システム。
【請求項13】
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第3流通部及び前記第4流通部を介さず前記熱交換部まで戻る前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第5分配弁を含む、請求項
5~10のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項14】
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留するタンクを有し、前記熱媒体を設定温度に調整して供給する調整装置と、
前記調整装置から前記熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、前記調整装置まで戻す循環回路と、
前記流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、前記設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定し、且つ前記変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる制御部と、
を備え、
前記調整装置は、第1熱媒体を貯留する第1タンクを有し、前記第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置であり、
前記循環回路は、前記第1調整装置から前記第1熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路であり、
第2熱媒体を第2設定温度に調整して供給する第2調整装置と、
前記第2調整装置から前記第2熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第2流通部まで流通させて、前記第2調整装置まで戻す第2循環回路と、を備え、
前記調整部は、前記第1流通部及び前記第2流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させ、
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第3流通部及び前記第4流通部を介さず前記熱交換部まで戻る前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第5分配弁を含む、温度制御システム。
【請求項15】
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留する第1タンクを有し、第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置と、
前記第1調整装置から前記第1熱媒体を第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路と、
前記制御対象を加熱し、発熱量を制御可能なヒータと、
前記第1循環回路から独立しており、前記第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない第3循環回路と、
前記第1流通部と前記第3流通部とで交換する熱量、及び前記ヒータの発熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量及び前記発熱量を調整させる制御部と、
を備える温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の温度を制御する温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被冷却物に供給される冷却液の温度(供給側検出温度)を検出し、供給側検出温度が目標温度になるようにフィードバック制御を行う冷却装置がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷却装置では、被冷却物から戻される冷却液の温度(戻り側検出温度)を検出し、戻り側検出温度の時間に対する変化度合を求め、上記フィードバック制御の制御条件を、変化度合に対応する制御条件に変更している。上記構成によれば、被冷却物の負荷変動等により戻り側検出温度が急激に変動した場合であっても、精度の高い安定した温度制御を確保することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷却装置(温度制御システム)は、戻り側検出温度が急激に変動した後に、フィードバック制御の制御条件を変更している。このため、特許文献1に記載の冷却装置では、被冷却物の負荷変動や目標温度の変化が生じた場合に、供給側検出温度を目標温度に追従させるには限度がある。一方、供給側検出温度を目標温度に追従させる追従性を向上させようとすれば、冷却装置の駆動状態を常に高く保っておく必要があり、冷却装置でのエネルギ消費が増加することとなる。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、エネルギ消費を抑制しつつ、制御対象の温度を目標温度に追従させる追従性を向上させることのできる温度制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留するタンクを有し、前記熱媒体を設定温度に調整して供給する調整装置と、
前記調整装置から前記熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、前記調整装置まで戻す循環回路と、
前記流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、前記設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定し、且つ前記変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる制御部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、温度制御システムは、制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する。
【0008】
ここで、調整装置は、熱媒体を貯留するタンクを有し、熱媒体を設定温度に調整して供給する。このため、調整装置は、設定温度又は設定温度に近い温度に調整した熱媒体を、タンクに貯留しておくことができる。循環回路は、調整装置から熱媒体を制御対象に熱供給可能な流通部まで流通させて、調整装置まで戻す。このため、調整装置から流通部まで熱媒体を流通させ、流通部から制御対象に熱を供給することで、制御対象の温度を制御することができる。なお、制御対象に熱を供給するとは、制御対象を冷却する場合と加熱する場合とを含む。
【0009】
制御対象の目標温度が時間経過に応じて変化した場合、制御対象の温度を目標温度に速やかに追従させる必要がある。この点、制御部は、記憶部に記憶されている時間経過と目標温度との関係に基づいて、目標温度が変化する変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定する。このため、調整装置は、変化後の目標温度に対応した設定温度に調整した熱媒体を、変化タイミングまでにタンクに貯留しておくことができる。したがって、調整装置は、目標温度が変化した後に、タンクから予め温度を調整しておいた熱媒体を供給することができ、制御対象の温度を目標温度に追従させる追従性を向上させることができる。そして、変化タイミングよりも所定時間前から変化後の目標温度に対応した設定温度に設定すればよく、調整装置の駆動状態を常に高く保っておく必要がないため、調整装置でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0010】
変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定した場合、調整装置から流通部へ供給される熱媒体の温度が、設定温度を変更する前の熱媒体の温度から変化する。この点、制御部は、変化タイミングまで制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、流通部から制御対象へ供給する熱量を調整部により調整させる。したがって、変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定したとしても、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【0011】
第2の手段では、前記調整装置から供給される前記熱媒体の温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、前記変化後の目標温度、前記温度センサにより検出された前記温度、前記調整装置から前記制御対象までの熱容量、及び前記調整装置の運転状態に基づいて、前記所定時間を設定する。
【0012】
目標温度が変化する変化タイミングまでに、調整装置が予めタンクに貯留しておくべき熱量は、制御対象の変化後の目標温度、現在の熱媒体の温度、及び調整装置から制御対象までの熱容量に相関している。また、調整装置がタンクに必要な熱量を貯留するまでに要する時間は、調整装置の運転状態に相関している。
【0013】
この点、上記構成によれば、温度センサは、調整装置から供給される熱媒体の温度を検出する。そして、制御部は、制御対象の変化後の目標温度、温度センサにより検出された温度、調整装置から制御対象までの熱容量、及び調整装置の運転状態に基づいて、所定時間を設定する。したがって、所定時間を適切に設定することができ、制御対象の温度を目標温度に追従させる追従性を向上させつつ、調整装置でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0014】
第3の手段では、前記制御部は、前記調整装置の前記運転状態として最高出力運転に基づいて、前記所定時間を設定し、前記変化タイミングよりも前記所定時間前から前記変化タイミングまで、前記調整装置を最高出力運転させる。こうした構成によれば、調整装置が予めタンクに必要な熱量を貯留するための時間を最短にすることができ、調整装置の設定温度を目標温度に対応した設定温度に設定する通常制御の時間を長くすることができる。したがって、制御対象の温度を目標温度に制御する精度を向上させることができる。
【0015】
第4の手段では、前記制御部は、前記調整装置の前記運転状態として最高効率運転に基づいて、前記所定時間を設定し、前記変化タイミングよりも前記所定時間前から前記変化タイミングまで、前記調整装置を最高効率運転させる。こうした構成によれば、調整装置が予めタンクに必要な熱量を貯留する際に、調整装置を最高効率運転させることができ、調整装置のエネルギ消費を抑制することができる。
【0016】
第5の手段では、前記調整部は、前記調整装置から前記流通部まで流通する前記熱媒体と、前記調整装置から前記流通部を介さず前記調整装置まで戻る前記熱媒体との比率を変更する第1分配弁を含む。
【0017】
上記構成によれば、第1分配弁は、調整装置から流通部まで流通する熱媒体と、調整装置から流通部を介さず調整装置まで戻る熱媒体との比率を変更する。このため、調整装置から、流通部に供給する熱量と、調整装置に戻す熱量との比率を、第1分配弁により変更することができる。したがって、流通部に供給する熱量を第1分配弁により変更することで、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。さらに、変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定したとしても、流通部に供給する熱量を第1分配弁により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【0018】
第6の手段では、前記調整装置は、第1熱媒体を貯留する第1タンクを有し、前記第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置であり、
前記循環回路は、前記第1調整装置から前記第1熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路であり、
第2熱媒体を第2設定温度に調整して供給する第2調整装置と、
前記第2調整装置から前記第2熱媒体を前記制御対象に熱供給可能な第2流通部まで流通させて、前記第2調整装置まで戻す第2循環回路と、を備え
前記調整部は、前記第1流通部及び前記第2流通部から前記制御対象へ供給する熱量を調整し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量を調整させる。
【0019】
上記構成によれば、温度制御システムは、第1調整装置、第1循環回路、第2調整装置、及び第2循環回路を備えている。このため、第1調整装置及び第2調整装置から、それぞれ第1流通部及び第2流通部まで第1熱媒体及び第2熱媒体を流通させ、第1流通部及び第2流通部から制御対象に熱を供給することで、制御対象の温度を制御することができる。
【0020】
制御部は、記憶部に記憶されている時間経過と目標温度との関係に基づいて、目標温度が第1調整装置から第1流通部へ第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定する。このため、第1調整装置は、変化後の目標温度に対応した第1設定温度に調整した第1熱媒体を、第1変化タイミングまでに第1タンクに貯留しておくことができる。したがって、第1調整装置は、目標温度が変化した後に、第1タンクから予め温度を調整しておいた第1熱媒体を供給することができ、制御対象の温度を目標温度に追従させる追従性を向上させることができる。そして、第1変化タイミングよりも所定時間前から変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定すればよく、第1調整装置の駆動状態を常に高く保っておく必要がないため、第1調整装置でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0021】
変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定した場合、第1調整装置から第1流通部へ供給される第1熱媒体の温度が、第1設定温度を変更する前の第1熱媒体の温度から変化する。この点、制御部は、第1変化タイミングまで制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、第1流通部から制御対象へ供給する熱量を調整部により調整させる。しかも、制御部は、第2流通部から制御対象へ供給する熱量も調整部により調整させる。このため、第1流通部から制御対象へ供給する熱量を調整部により調整するだけでは制御対象の温度を目標温度に制御しにくい場合であっても、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【0022】
第7の手段では、前記制御部は、前記第1変化タイミングからアシスト期間だけ前記第2設定温度を変化後の目標温度に対応した第2設定温度に設定し、前記第2調整装置から前記第2流通部へ前記第2熱媒体を供給させる。こうした構成によれば、第1調整装置から第1流通部へ第1熱媒体を供給して制御対象の温度を変化後の目標温度に制御する際に、第2調整装置から第2流通部へ第2熱媒体を供給してアシストすることができるため、制御対象の温度を目標温度に追従させる追従性をさらに向上させることができる。
【0023】
目標温度が第1調整装置から第1流通部へ第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定した場合、以下の問題が生じるおそれがある。すなわち、制御対象の温度を目標温度に制御しつつ、予め温度を調整しておいた第1熱媒体を第1タンクに貯留するまでの時間(所定時間)が長くなるおそれがある。
【0024】
この点、第8の手段では、前記制御部は、前記所定時間前から前記第1変化タイミングまで、前記第2設定温度を変化前の目標温度に対応した第2設定温度に設定し、前記第2調整装置から前記第2流通部へ前記第2熱媒体を供給させる。こうした構成によれば、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定しつつ、第1調整装置から第1流通部へ第1熱媒体を供給して制御対象の温度を変化前の目標温度に制御する際に、第2調整装置から第2流通部へ第2熱媒体を供給してアシストすることができるため、上記所定時間が長くなることを抑制することができる。
【0025】
第9の手段では、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体は、共通の共通熱媒体であり、前記第1流通部及び前記第2流通部は、共通の共通流通部であり、前記調整部は、前記共通流通部から前記第1調整装置まで流通する前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第2調整装置まで流通する前記共通熱媒体との比率を変更する第2分配弁を含む。
【0026】
上記構成によれば、第2分配弁は、共通流通部から第1調整装置まで流通する共通熱媒体と、共通流通部から第2調整装置まで流通する共通熱媒体との比率を変更する。すなわち、第2分配弁は、第1調整装置から共通流通部まで流通する共通熱媒体と、第2調整装置から共通流通部まで流通する共通熱媒体との比率を変更する。このため、第1調整装置から共通流通部に供給する熱量と、第2調整装置から共通流通部に供給する熱量との比率を、第2分配弁により変更することができる。したがって、共通流通部に供給する熱量を第2分配弁により変更することで、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。さらに、第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定したとしても、共通流通部に供給する熱量を第2分配弁により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【0027】
第10の手段では、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体は、共通の共通熱媒体であり、前記第1流通部及び前記第2流通部は、共通の共通流通部であり、前記調整部は、前記共通流通部から前記第1調整装置まで流通する前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第1調整装置及び前記第2調整装置を介さず前記共通流通部まで戻る前記共通熱媒体と、前記共通流通部から前記第2調整装置まで流通する前記共通熱媒体との比率を変更する第3分配弁を含む。
【0028】
上記構成によれば、温度制御システムは、共通流通部から第1調整装置まで流通する共通熱媒体と、共通流通部から第1調整装置及び第2調整装置を介さず共通流通部まで戻る共通熱媒体と、共通流通部から第2調整装置まで流通する共通熱媒体との比率を変更する第3分配弁を含む。すなわち、第3分配弁は、第1調整装置から共通流通部まで流通する共通熱媒体と、共通流通部から第1調整装置及び第2調整装置を介さず共通流通部まで戻る共通熱媒体と、第2調整装置から共通流通部まで流通する共通熱媒体との比率を変更する。このため、共通流通部が第1調整装置から受け取る熱量と、共通流通部に戻す熱量と、共通流通部が第2調整装置から受け取る熱量との比率を、第3分配弁により変更することができる。したがって、共通流通部に供給する熱量を第3分配弁により変更することで、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。さらに、第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定したとしても、共通流通部に供給する熱量を第3分配弁により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。しかも、共通流通部から第1調整装置及び第2調整装置まで共通熱媒体を流通させず、共通流通部から流出した共通熱媒体を共通流通部にそのまま戻す状態を実現することができる。
【0029】
第11の手段では、
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第4分配弁を含む。
【0030】
上記構成によれば、第3循環回路は、第1循環回路及び第2循環回路から独立しており、第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0031】
第3循環回路は、第3熱媒体が流通し、第1流通部と熱交換する第3流通部と、第3熱媒体が流通し、第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備えている。このため、第1流通部まで供給された熱量を、第1流通部と第3流通部との熱交換を通じて第3流通部に供給することができる。同様に、第2流通部まで供給された熱量を、第2流通部と第4流通部との熱交換を通じて第4流通部に供給することができる。第3循環回路は、第3流通部及び第4流通部から、制御対象と熱交換する熱交換部まで第3熱媒体を流通させて、第3流通部及び第4流通部まで戻す。このため、第3熱媒体を介して、第3流通部及び第4流通部から、制御対象と熱交換する熱交換部まで熱量を供給することができる。
【0032】
第4分配弁は、熱交換部から第3流通部まで流通する第3熱媒体と、熱交換部から第4流通部まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。このため、第3流通部から熱交換部に供給する熱量と、第4流通部から熱交換部に供給する熱量との比率を、第4分配弁により変更することができる。したがって、熱交換部に供給する熱量を第4分配弁により変更することで、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。ここで、上記のように、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を減少させることができる。したがって、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができ、制御対象の温度を制御する応答性を向上させることができる。さらに、第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定したとしても、熱交換部に供給する熱量を第4分配弁により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【0033】
第12の手段では、
前記第2循環回路は、前記第1循環回路から独立しており、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させて、前記第3流通部及び前記第4流通部まで戻し、
前記調整部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第3流通部及び前記第4流通部を介さず前記熱交換部まで戻る前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第5分配弁を含む。
【0034】
上記構成によれば、第5分配弁は、熱交換部から第3流通部まで流通する第3熱媒体と、熱交換部から第3流通部及び第4流通部を介さず熱交換部まで戻る第3熱媒体と、熱交換部から第4流通部まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。このため、熱交換部が第3流通部から受け取る熱量と、熱交換部に戻す熱量と、熱交換部が第4流通部から受け取る熱量との比率を、第5分配弁により変更することができる。したがって、熱交換部に供給する熱量を第5分配弁により変更することで、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。さらに、第1変化タイミングよりも所定時間前に、第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定したとしても、熱交換部に供給する熱量を第5分配弁により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。しかも、熱交換部から第3流通部及び第4流通部まで第3熱媒体を流通させず、熱交換部から流出した第3熱媒体を熱交換部にそのまま戻す状態を実現することができる。
【0035】
第13の手段は、
制御対象の温度を時間経過に応じて変化する目標温度に制御する温度制御システムであって、
熱媒体を貯留する第1タンクを有し、第1熱媒体を第1設定温度に調整して供給する第1調整装置と、
前記第1調整装置から前記第1熱媒体を第1流通部まで流通させて、前記第1調整装置まで戻す第1循環回路と、
前記制御対象を加熱し、発熱量を制御可能なヒータと、
前記第1循環回路から独立しており、前記第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない第3循環回路と、
前記第1流通部と前記第3流通部とで交換する熱量、及び前記ヒータの発熱量を調整する調整部と、
前記時間経過と前記目標温度との関係を予め記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記関係に基づいて、前記目標温度が前記第1調整装置から前記第1流通部へ前記第1熱媒体を供給させる目標温度に変化する第1変化タイミングよりも所定時間前に、前記第1設定温度を変化後の目標温度に対応した第1設定温度に設定し、且つ前記第1変化タイミングまで前記制御対象の温度を変化前の目標温度に制御すべく、前記調整部により前記熱量及び前記発熱量を調整させる制御部と、
を備える。
【0036】
上記構成によれば、第3循環回路は、第1循環回路から独立しており、第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0037】
第1循環回路は、第1の手段の循環回路と同様の作用効果を奏する。そして、第3熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が狭い第1熱媒体を使用しているため、第1熱媒体として安価な熱媒体を使用することができる。ヒータは、制御対象を加熱し、発熱量を制御可能である。このため、熱媒体を用いずに、制御対象を直接加熱することができる。
【0038】
温度制御システムは、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量、及びヒータの発熱量を調整する調整部を備えている。このため、調整部により、第3流通部に供給する熱量、及び制御対象に直接供給する熱量を調整することができ、制御対象の温度を目標温度に制御することができる。ここで、上記のように、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を減少させることができる。したがって、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができ、制御対象の温度を制御する応答性を向上させることができる。さらに、変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度を変化後の目標温度に対応した設定温度に設定したとしても、熱交換部に供給する熱量を調整部により変更することで、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。しかも、制御部は、ヒータから制御対象へ直接供給する熱量も調整部により調整させる。このため、第1流通部から制御対象へ供給する熱量を調整部により調整するだけでは制御対象の温度を目標温度に制御しにくい場合であっても、制御対象の温度が目標温度からずれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】下部電極の目標温度及び第1チラーの設定温度の変化を示すタイムチャート。
【
図6】下部電極の目標温度、第1チラーの設定温度、及び第2チラーの設定温度の変化を示すタイムチャート。
【
図10】第8実施形態の温度制御システムの模式図。
【
図11】下部電極の目標温度、第1チラーの出力、及び第2チラーの出力の変化を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、半導体製造装置の下部電極(制御対象)の温度を制御する温度制御システムに具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図1に示すように、温度制御システム100は、第1循環回路110、及び制御部80等を備えている。
【0042】
第1循環回路110は、第1熱媒体が循環する回路である。第1熱媒体(熱媒体)は、例えばエチレングリコール60%、及び水40%からなる液体である。第1熱媒体は、比較的安価である。第1循環回路110は、第1チラー11、温度センサ19、第1分配弁12等を備えている。
【0043】
第1チラー11(調整装置)は、タンク11a、ポンプ11b等を備えている。第1チラー11は、第1熱媒体の温度を-25~95℃に調整可能である。タンク11a(第1タンク)は、設定温度Tcに調整された第1熱媒体を貯留する。ポンプ11bは、タンク11aに貯留された第1熱媒体を流路17aへ吐出する。流路17aは、第1分配弁12のコモンポート(COM)に接続されている。
【0044】
温度センサ19は、第1チラー11から供給される第1熱媒体の温度を検出し、検出結果を制御部80へ出力する。
【0045】
第1分配弁12(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。Aポートには、流路17bが接続されている。Bポートには、流路17dが接続されている。第1分配弁12は、流路17aから、流路17bへ流れる第1熱媒体の流量と、流路17dへ流れる第1熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。第1分配弁12は、流路17aから流路17bへ第1熱媒体が100%流れる状態と、流路17aから流路17dへ第1熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第1分配弁12では、第1チラー11から供給された第1熱媒体を、流路17bと流路17dとに分配する比率にかかわらず、第1熱媒体の圧力損失が一定である。
【0046】
半導体製造装置90は、上部電極91及び下部電極92を備え、上部電極91と下部電極92との間にプラズマPを発生させる。下部電極92の上には、ウエハー等のワークWが載置される。温度センサ94は、下部電極92の温度を検出する。下部電極92は、熱交換器93と一体化されている。熱交換器93と下部電極92とで熱交換する。
【0047】
熱交換器93(流通部)は、流路17bに接続されており、第1熱媒体が流通する。熱交換器93には、流路18が接続されている。流路18は、熱交換器93と第1チラー11のタンク11aとを接続している。上記流路17dは、第1分配弁12のBポートと流路18とを接続している。すなわち、第1分配弁12は、第1チラー11から熱交換器93まで流通する第1熱媒体と、第1チラー11から熱交換器93を介さず第1チラー11まで戻る第1熱媒体との比率を変更する。そして、熱交換器93において、第1熱媒体と下部電極92とが熱交換する。なお、流路17a、流路17b、流路17d、及び流路18によって、循環回路が構成されている。
【0048】
制御部80は、CPU、ROM、RAM、記憶装置80a、及び入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータである。制御部80は、温度センサ19,94等の検出結果を入力する。制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。目標温度Teは、半導体製造装置90での工程(時間経過)に応じて、90℃、0℃、-20℃等に変更される。プラズマPから下部電極92へ熱が流入するため、プラズマPの発生時には下部電極92の温度は110℃程度まで上昇することがある。これに伴って、熱交換器93から流出する第1熱媒体の温度も110℃近くまで上昇することがある。
【0049】
制御部80は、下部電極92の目標温度Te、温度センサ19,94の検出結果に基づいて、第1チラー11の設定温度Tc及び第1分配弁12の分配比率を制御する。これにより、熱交換器93に流通する第1熱媒体の流量、ひいては熱交換器93に供給する熱量が調整される。すなわち、第1分配弁12は、熱交換器93から下部電極92へ供給する熱量を調整する。そして、制御部80は、下部電極92の温度が目標温度Teになるように、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定するとともに、第1分配弁12の分配比率をフィードバック制御する。
【0050】
図2は、下部電極92の目標温度Te及び第1チラー11の設定温度Tcの変化を示すタイムチャートである。同図に示すように、下部電極92の目標温度Teは、半導体製造装置90での工程(時間経過)に応じて、90℃、0℃、-20℃に周期的に変化する。制御部80の記憶装置80a(記憶部)は、時間経過と目標温度Teとの関係を予め記憶している。例えば、記憶装置80aは、時刻t2まで目標温度Teが90℃であり、時刻t2において目標温度Teが0℃に変化し、その後時刻t4まで目標温度Teが0℃であり、時刻t4において目標温度Teが-20℃に変化し、その後時刻t5まで目標温度Teが-20℃であり、時刻t5において目標温度Teが90℃に変化すること等を記憶している。
【0051】
制御部80は、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。例えば、制御部80は、目標温度Teが90℃である場合に設定温度Tcを50℃に設定し、目標温度Teが0℃である場合に設定温度Tcを-5℃に設定し、目標温度Teが-20℃である場合に設定温度Tcを-25℃に設定する。そして、制御部80は、温度センサ19により検出される第1熱媒体の温度T1が設定温度Tcになるように、第1チラー11の出力をフィードバック制御する。また、制御部80は、温度センサ94により検出される下部電極92の温度T3が目標温度Teになるように、第1分配弁12の分配比率をフィードバック制御する。
【0052】
さらに、制御部80は、記憶装置80aに記憶されている上記関係に基づいて、目標温度Teが目標温度Te1から目標温度Te2へ変化する変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2に設定し、且つ変化タイミングまで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1に制御すべく、第1分配弁12により流路17bと流路17dへの分配比率を調整させる。これにより、変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2に調整した第1熱媒体が、変化タイミングまでにタンク11aに貯留される。
【0053】
例えば、制御部80は、時刻t2よりも所定時間Δt1前の時刻t1に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc=-5℃に徐々に変化するように設定し、且つ時刻t2まで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1=90℃に制御すべく、第1分配弁12により流路17bへの分配比率を減少させて流路17dへの分配比率を増加させる。すなわち、第1チラー11から目標温度Te1=90℃に対応した設定温度Tc1=50℃よりも低い温度の第1熱媒体が供給されても下部電極92の温度が目標温度Te1=90℃から低下しないように、流路17bへ流れる第1熱媒体の量を減少させる。なお、時刻t1に、設定温度Tcを徐変させず、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc2=-5℃に一度に設定することもできる。同様に、制御部80は、時刻t4よりも所定時間Δt2前の時刻t3に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc3=-25℃に徐々に変化するように設定(設定温度Tc3=-25℃に一度に設定)し、且つ時刻t4まで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te2=0℃に制御すべく、第1分配弁12により流路17bへの分配比率を減少させて流路17dへの分配比率を増加させる。
【0054】
目標温度Teが変化する変化タイミングまでに、第1チラー11が予めタンク11aに貯留しておくべき熱量は、下部電極92の変化後の目標温度Te2、現在の第1熱媒体の温度、及び第1チラー11から下部電極92までの熱容量Cに相関している。下部電極92の温度を目標温度Te2に制御するための第1チラー11の設定温度Tcは、目標温度Te2に対応した設定温度Tc2である。また、第1チラー11がタンク11aに必要な熱量を貯留するまでに要する時間は、第1チラー11の出力(運転状態)に相関している。
【0055】
そこで、制御部80は、変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2、温度センサ19により検出された第1熱媒体の温度T1、第1チラー11から下部電極92までの熱容量C、及び第1チラー11の出力qに基づいて、上記所定時間Δtを設定する。熱容量Cは、下部電極92、循環する第1熱媒体、熱交換器93、流路17a,17b,18、第1分配弁12、及びタンク11a等、下部電極92の温度を制御する際に温度が変化する部材の熱容量を含む。第1チラー11の出力qは、ここでは所定時間Δtにおいて第1チラー11を最高出力qmで運転し、q=qmとする。詳しくは、制御部80は、Δt=C×(T1-Tc2)/qの式により、所定時間Δtを設定する。なお、第1チラー11が既に出力q1で運転している場合は、q=qm-q1とすればよい。
【0056】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0057】
・下部電極92の目標温度Teが時間経過に応じて変化した場合、下部電極92の温度を目標温度Teに速やかに追従させる必要がある。この点、制御部80は、記憶装置80aに記憶されている時間経過と目標温度Teと関係に基づいて、目標温度Teが変化する変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。このため、第1チラー11は、変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに調整した第1熱媒体を、変化タイミングまでにタンク11aに貯留しておくことができる。したがって、第1チラー11は、目標温度Teが変化した後に、タンク11aから予め温度を調整しておいた第1熱媒体を供給することができ、下部電極92の温度を目標温度Teに追従させる追従性を向上させることができる。そして、変化タイミングよりも所定時間Δt前から変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定すればよく、第1チラー11の駆動状態を常に高く保っておく必要がないため、第1チラー11でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0058】
・変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定した場合、第1チラー11から熱交換器93へ供給される第1熱媒体の温度が、設定温度Tcを変更する前の第1熱媒体の温度から変化する。この点、制御部80は、変化タイミングまで下部電極92の温度を変化前の目標温度Teに制御すべく、第1チラー11から熱交換器93へ供給する熱量、ひいては熱交換器93から下部電極92へ供給する熱量を、第1分配弁12により調整させる。したがって、変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0059】
・制御部80は、下部電極92の変化後の目標温度Te(目標温度Teに対応した設定温度Tc)、温度センサ19により検出された第1熱媒体の温度T1、第1チラー11から下部電極92までの熱容量C、及び第1チラー11の運転状態(出力q)に基づいて、所定時間Δtを設定する。したがって、所定時間Δtを適切に設定することができ、下部電極92の温度を目標温度Teに追従させる追従性を向上させつつ、第1チラー11でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0060】
・制御部80は、第1チラー11の運転状態として最高出力運転(最高出力qm)に基づいて、所定時間Δtを設定し、変化タイミングよりも所定時間Δt前から変化タイミングまで、第1チラー11を最高出力運転させる。こうした構成によれば、第1チラー11が予めタンク11aに必要な熱量を貯留するための所定時間Δtを最短にすることができ、第1チラー11の設定温度Tcを現在の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する通常制御の時間を長くすることができる。したがって、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する精度を向上させることができる。
【0061】
・第1分配弁12は、第1チラー11から熱交換器93まで流通する第1熱媒体と、第1チラー11から熱交換器93を介さず第1チラー11まで戻る第1熱媒体との比率を変更する。このため、第1チラー11から、熱交換器93に供給する熱量と、第1チラー11に戻す熱量との比率を、第1分配弁12により変更することができる。したがって、熱交換器93に供給する熱量を第1分配弁12により変更することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。さらに、変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、熱交換器93に供給する熱量を第1分配弁12により変更することで、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0062】
なお、所定時間Δtにおいて、第1チラー11を運転効率が最高となる最高効率出力qeで運転し、Δt=C×(T1-Tc2)/qの式において、q=qeとして所定時間Δtを設定することもできる。すなわち、制御部80は、第1チラー11の運転状態として最高効率運転に基づいて、所定時間Δtを設定し、変化タイミングよりも所定時間Δt前から変化タイミングまで、第1チラー11を最高効率運転させることもできる。こうした構成によれば、第1チラー11が予めタンク11aに必要な熱量を貯留する際に、第1チラー11を最高効率運転させることができ、第1チラー11のエネルギ消費を抑制することができる。なお、第1チラー11が既に出力q1で運転している場合は、q=qe-q1とすればよい。
【0063】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0064】
図3に示すように、温度制御システム200は、第1循環回路110、第2循環回路120、及び制御部80等を備えている。第1循環回路110は、上記第1熱媒体が循環する回路である。第2循環回路120は、第2熱媒体が循環する回路である。第2熱媒体は、第1熱媒体と同一の液体である。すなわち、第1循環回路110及び第2循環回路120は、共通の上記第1熱媒体(共通熱媒体)が循環する回路である。
【0065】
第1循環回路110(循環回路)は、第1チラー11(第1調整装置)、ニードル弁119等を備えている。第1循環回路110は、上記第1分配弁12を備えていない。
【0066】
ポンプ11bは、タンク11aに貯留された第1熱媒体を流路117へ吐出する。流路117には、第1逆止弁136が設けられている。第1逆止弁136は、第1チラー11から合流点P1への第1熱媒体の流通を許容し、合流点P1から第1チラー11への第1熱媒体の流通を禁止する。第1チラー11のタンク11aと第2分配弁135のBポートとが、流路118によって接続されている。第2分配弁135(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。第1チラー11は、第1熱媒体を設定温度Tc(第1設定温度)に調整して供給する。流路117と流路118とが、流路116によって接続されている。流路116には、ニードル弁119が設けられている。
【0067】
第2循環回路120(循環回路)は、ヒータ121、温度センサ29、ニードル弁129等を備えている。第2循環回路120は、上記第1分配弁12を備えていない。ヒータ121(第2調整装置)は、発熱量を制御可能なヒータである。ヒータ121は、電熱線ヒータやセラミックヒータ等(図示略)と、第1熱媒体を流通させる流路121aとを備えており、流路121aを流通する第1熱媒体を加熱する。ヒータ121は、第2熱媒体(すなわち第1熱媒体)を設定温度Th(第2設定温度)に調整して供給する。ヒータ121の加熱状態は、温度センサ29の検出結果に基づいて制御部80により制御される。
【0068】
ヒータ121の流路121aと上記合流点P1とが、流路127によって接続されている。流路127には、ポンプ122及び第2逆止弁137が設けられている。ポンプ122は、流路127を介して、ヒータ121の流路121aから合流点P1へ第1熱媒体を吐出する。第2逆止弁137は、ポンプ122から合流点P1への第1熱媒体の流通を許容し、合流点P1からポンプ122への第1熱媒体の流通を禁止する。ヒータ121の流路121aと第2分配弁135のAポートとが、流路128によって接続されている。流路127と流路128とが、流路126によって接続されている。流路126には、ニードル弁129が設けられている。
【0069】
流路117及び流路127は、合流点P1において流路135aに接続されている。流路135aは、熱交換器93の流入ポートに接続されている。熱交換器93の流出ポートには、流路135bが接続されている。流路135bには、ポンプ32が設けられている。流路135bは、第2分配弁135のコモンポートに接続されている。
【0070】
第2分配弁135(調整部)は、流路135bから、流路118へ流れる第1熱媒体の流量と、流路128へ流れる第1熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。すなわち、第2分配弁135は、熱交換器93(第1流通部、共通流通部)から第1チラー11まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93(第2流通部、共通流通部)からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率を変更する。第2分配弁135は、流路135bから流路118へ第1熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路128へ第1熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。流路135bから流路118へ第1熱媒体が100%流れる状態において、ニードル弁129は流路127から流路128へ循環させる第1熱媒体の量を調節する。流路135bから流路128へ第1熱媒体が100%流れる状態において、ニードル弁119は流路117から流路118へ循環させる第1熱媒体の量を調節する。第2分配弁135では、ポンプ32から供給された第1熱媒体を、第1チラー11とヒータ121とに分配する比率にかかわらず、第1熱媒体の圧力損失が一定である。なお、第2分配弁135が、流路135bから流路118へ第1熱媒体が100%未満(例えば90%)流れる状態と、流路135bから流路128へ第1熱媒体が100%未満(例えば90%)流れる状態との間で連続的に状態を変更することで、流路116,126、及びニードル弁119,129を省略することもできる。また、ポンプ32を省略することもできる。
【0071】
第2分配弁135の分配比率にかかわらず、ポンプ32の負荷が変化しないため、ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、第1循環回路110及び第2循環回路120に第1熱媒体を循環させる。なお、第1循環回路110及び第2循環回路120は、流路135a,135b、ポンプ32、及び第2分配弁135を共有している。
【0072】
制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。制御部80は、下部電極92の目標温度Te及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第2分配弁135の分配比率を制御する。これにより、第1チラー11に流通する第1熱媒体の流量、ひいては第1チラー11から熱交換器93へ供給する熱量が調整される。また、ヒータ121に流通する第1熱媒体の流量、ひいてはヒータ121から熱交換器93へ供給する熱量が調整される。
【0073】
図2と同様に、制御部80は、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。そして、制御部80は、温度センサ19により検出される第1熱媒体の温度T1が設定温度Tcになるように、第1チラー11の出力をフィードバック制御する。また、制御部80は、温度センサ94により検出される下部電極92の温度T3が目標温度Teになるように、第2分配弁135の分配比率をフィードバック制御する。
【0074】
さらに、制御部80は、記憶装置80aに記憶されている上記関係に基づいて、目標温度Teが目標温度Te1から目標温度Te2へ変化する第1変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2に設定し、且つ第1変化タイミングまで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1に制御すべく、第2分配弁135により流路118と流路128への分配比率を調整させる。加えて、制御部80は、ヒータ121の発熱量を制御する。
【0075】
例えば、制御部80は、時刻t2よりも所定時間Δt1前の時刻t1に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc=-5℃に徐々に変化するように設定し、且つ時刻t2まで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1=90℃に制御すべく、第2分配弁135により流路118への分配比率を減少させて流路128への分配比率を増加させる。この際に、ヒータ121により加熱した第1熱媒体を流路127,135a、ひいては熱交換器93へ供給する。
【0076】
なお、所定時間Δt1において、ヒータ121を停止させて(第1熱媒体を加熱せず)、第2分配弁135により流路118への分配比率を減少させて流路128への分配比率を増加させることもできる。また、流路127,135a,128に第1熱媒体が流れている状態において、第2分配弁135の分配比率を変更せず、ヒータ121により第1熱媒体を加熱することもできる。これらによっても、時刻t1から時刻t2まで、下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1=90℃に制御することができる。
【0077】
時刻t5において、制御部80は、設定温度Tcを変化後の目標温度Te4=90℃に対応した設定温度Tc=50℃に徐々に変化するように設定し、第2分配弁135により流路118への分配比率を減少させて流路128への分配比率を増加させる。この際に、制御部80は、ヒータ121により設定温度Thに調整した第1熱媒体を流路127,135a、ひいては熱交換器93へ供給させ、下部電極92の温度を急激に上昇させる。設定温度Thは、下部電極92の目標温度Te及び温度センサ94の検出結果に基づいて設定される。
【0078】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0079】
・温度制御システム200は、第1チラー11、第1循環回路110、ヒータ121、及び第2循環回路120を備えている。このため、第1チラー11及びヒータ121から、それぞれ熱交換器93(第1流通部、第2流通部)まで第1熱媒体(第2熱媒体)を流通させ、熱交換器93から下部電極92に熱を供給することで、下部電極92の温度を制御することができる。
【0080】
・制御部80は、記憶装置80aに記憶されている時間経過と目標温度Teと関係に基づいて、目標温度Teが第1チラー11から熱交換器93へ第1熱媒体を供給させる目標温度Teに変化する第1変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。このため、第1チラー11は、変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに調整した第1熱媒体を、第1変化タイミングまでにタンク11aに貯留しておくことができる。したがって、第1チラー11は、目標温度Teが変化した後に、タンク11aから予め温度を調整しておいた第1熱媒体を供給することができ、下部電極92の温度を目標温度Teに追従させる追従性を向上させることができる。そして、第1変化タイミングよりも所定時間Δt前から変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定すればよく、第1チラー11の駆動状態を常に高く保っておく必要がないため、第1チラー11でのエネルギ消費を抑制することができる。
【0081】
・制御部80は、第1変化タイミングまで下部電極92の温度を変化前の目標温度Teに制御すべく、第1チラー11から熱交換器93へ供給する熱量、ひいては熱交換器93から下部電極92へ供給する熱量を第2分配弁135により調整させる。しかも、制御部80は、ヒータ121から熱交換器93へ供給する熱量、ひいては熱交換器93から下部電極92へ供給する熱量も第2分配弁135により調整させる。このため、第1チラー11から熱交換器93へ供給する熱量を第2分配弁135により調整するだけでは下部電極92の温度を目標温度Teに制御しにくい場合であっても、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0082】
・第2分配弁135は、熱交換器93(共通流通部)から第1チラー11まで流通する第1熱媒体(共通熱媒体)と、熱交換器93からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率を変更する。すなわち、第2分配弁135は、第1チラー11から熱交換器93まで流通する第1熱媒体と、ヒータ121から熱交換器93まで流通する第1熱媒体との比率を変更する。したがって、熱交換器93に供給する熱量を第2分配弁135により変更することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。
【0083】
・第2分配弁135では、熱交換器93から第1チラー11まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率にかかわらず、第1熱媒体の圧力損失が一定である。このため、ポンプ32により第1循環回路110及び第2循環回路120に第1熱媒体を循環させる場合に、ポンプ32の駆動状態を制御する必要がなく、一定の駆動状態でポンプ32を駆動することができる。
【0084】
なお、第2分配弁135において、熱交換器93から第1チラー11まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率に応じて、第1熱媒体の圧力損失が変動してもよい。その場合、ポンプ32の駆動状態を適宜変更すればよい。
【0085】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0086】
図4に示すように、本実施形態の温度制御システム300は、第2実施形態の温度制御システム200において、第2分配弁135を第3分配弁335に変更している。
【0087】
第3分配弁335(調整部)は、コモンポート、Hポート、Bポート、及びCポートを備える4方弁である。Cポートには、流路118が接続されている。流路118は、第1チラー11のタンク11aに接続されている。Bポートには、流路239が接続されている。流路239は、合流点P1において流路135aに接続されている。流路239には、第3逆止弁138が設けられている。第3逆止弁138は、第3分配弁335から合流点P1への第1熱媒体の流通を許容し、合流点P1から第3分配弁335への第1熱媒体の流通を禁止する。Hポートには、流路128が接続されている。流路128は、ヒータ121の流路121aに接続されている。
【0088】
第3分配弁335は、流路135bから、流路118へ流れる第1熱媒体の流量と、流路239へ流れる第1熱媒体の流量と、流路128へ流れる第1熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。すなわち、第3分配弁335は、熱交換器93から第1チラー11まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93から第1チラー11及びヒータ121を介さず熱交換器93まで戻る第1熱媒体と、熱交換器93からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率を変更する。第3分配弁335は、流路135bから流路118へ第1熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路118,239へ第1熱媒体が流れる状態と、流路135bから流路239へ第1熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路239,128へ第1熱媒体が流れる状態と、流路135bから流路128へ第1熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第3分配弁335では、ポンプ32から供給された第1熱媒体を、流路118と流路239と流路128とに分配する比率にかかわらず、第1熱媒体の圧力損失が一定である。
【0089】
第3分配弁335の分配比率にかかわらず、ポンプ32の負荷が変化しないため、ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、第1循環回路110及び第2循環回路120に第1熱媒体を循環させる。なお、第1循環回路110及び第2循環回路120は、流路135a,135b、ポンプ32、及び第3分配弁335を共有している。
【0090】
制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。制御部80は、下部電極92の目標温度Te及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第3分配弁335の分配比率を制御する。また、
図2と同様に、制御部80は、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。また、制御部80は、ヒータ121の発熱量を制御する。
【0091】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第2実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0092】
・温度制御システム300は、熱交換器93から第1チラー11まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93から第1チラー11及びヒータ121を介さず熱交換器93まで戻る第1熱媒体と、熱交換器93からヒータ121まで流通する第1熱媒体との比率を変更する第3分配弁335を含む。すなわち、第3分配弁335は、第1チラー11から熱交換器93まで流通する第1熱媒体と、熱交換器93から第1チラー11及びヒータ121を介さず熱交換器93まで戻る第1熱媒体と、ヒータ121から熱交換器93まで流通する第1熱媒体との比率を変更する。このため、熱交換器93が第1チラー11から受け取る熱量と、熱交換器93に戻す熱量と、熱交換器93がヒータ121から受け取る熱量との比率を、第3分配弁335により変更することができる。したがって、熱交換器93に供給する熱量を第3分配弁335により変更することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。
【0093】
・第1変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、熱交換器93に供給する熱量を第3分配弁335により変更することで、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0094】
・熱交換器93から第1チラー11及びヒータ121まで第1熱媒体を流通させず、熱交換器93から流出した第1熱媒体を熱交換器93にそのまま戻す状態を実現することができる。
【0095】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1~第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0096】
図5に示すように、本実施形態の温度制御システム300は、第2実施形態の温度制御システム200において、ヒータ121を第2チラー21に変更している。
【0097】
第2チラー21(第2調整装置)は、タンク21a、ポンプ21b等を備えている。第2チラー21は、第2熱媒体の温度を設定温度Tc(第1設定温度)よりも高い設定温度Th(第2設定温度)に調整する。第2熱媒体は、第1熱媒体と同一の液体である。すなわち、第1循環回路110及び第2循環回路120は、共通の上記第1熱媒体(共通熱媒体)が循環する回路である。タンク21a(第2タンク)は、設定温度Thに調整された第2熱媒体(すなわち第1熱媒体)を貯留する。ポンプ21bは、タンク21aに貯留された第1熱媒体を流路127へ吐出する。
【0098】
制御部80は、下部電極92の目標温度Te、温度センサ19,29,94の検出結果に基づいて、第1チラー11の設定温度Tc、第2チラー21の設定温度Th、及び第2分配弁135の分配比率を制御する。これにより、第1チラー11及び第2チラー21からそれぞれ熱交換器93に流通する第1熱媒体の流量、ひいては熱交換器93に供給する熱量が調整される。すなわち、第2分配弁135は、熱交換器93から下部電極92へ供給する熱量を調整する。そして、制御部80は、下部電極92の温度が目標温度Teになるように、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定し、第2チラー21の設定温度Thを目標温度Teに対応した設定温度Thに設定するとともに、第2分配弁135の分配比率をフィードバック制御する。
【0099】
図6は、下部電極92の目標温度Te、第1チラー11の設定温度Tc、及び第2チラー21の設定温度Thの変化を示すタイムチャートである。同図に示すように、下部電極92の目標温度Teは、
図2と同様に変化する。
【0100】
制御部80は、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11及び第2チラー21からの第1熱媒体の供給を実行及び停止する。第1チラー11,第2チラー21は、それぞれポンプ11b,21bを駆動することで第1熱媒体の供給を実行し、ポンプ11b,21bを停止することで第1熱媒体の供給を停止する。例えば、制御部80は、目標温度Teが20℃(境界温度)よりも高い場合に、第1チラー11からの第1熱媒体の供給を停止し、第2チラー21からの第1熱媒体の供給を実行する。一方、制御部80は、目標温度Teが20℃以下である場合に、第1チラー11からの第1熱媒体の供給を実行し、第2チラー21からの第1熱媒体の供給を停止する。
【0101】
制御部80は、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。例えば、制御部80は、目標温度Teが90℃である場合に設定温度Tcを20℃に設定し、ポンプ11bを停止させる。制御部80は、目標温度Teが0℃である場合に設定温度Tcを-5℃に設定し、目標温度Teが-20℃である場合に設定温度Tcを-25℃に設定し、ポンプ11bを駆動させる。そして、制御部80は、温度センサ19により検出される第1熱媒体の温度T1が設定温度Tcになるように、第1チラー11の出力をフィードバック制御する。また、制御部80は、温度センサ94により検出される下部電極92の温度T3が目標温度Teになるように、第2分配弁135の分配比率をフィードバック制御する。
【0102】
また、制御部80は、第2チラー21の設定温度Thを目標温度Teに対応した設定温度Thに設定する。例えば、制御部80は、目標温度Teが90℃である場合に設定温度Thを85℃に設定し、ポンプ21bを駆動させる。制御部80は、目標温度Teが0℃である場合に設定温度Thを20℃に設定し、目標温度Teが-20℃である場合に設定温度Thを20℃に設定し、ポンプ21bを停止させる。そして、制御部80は、温度センサ29により検出される第1熱媒体の温度T2が設定温度Thになるように、第2チラー21の出力をフィードバック制御する。また、制御部80は、温度センサ94により検出される下部電極92の温度T3が目標温度Teになるように、第2分配弁135の分配比率をフィードバック制御する。
【0103】
さらに、制御部80は、記憶装置80aに記憶されている上記関係に基づいて、目標温度Teが目標温度Te1から目標温度Te2へ変化する変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2に設定し、且つ変化タイミングまで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te1に制御すべく、第2分配弁135により流路118と流路128への分配比率を調整させる。これにより、変化後の目標温度Te2に対応した設定温度Tc2に調整した第1熱媒体が、変化タイミングまでにタンク11aに貯留される。
【0104】
例えば、制御部80は、時刻t12よりも所定時間Δt1前の時刻t11に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc=-5℃に徐々に変化するように設定する。このとき、第1チラー11のポンプ11bを駆動していないため、制御部80は、第2分配弁135の分配比率を変更しない。すなわち、第1チラー11は、第1熱媒体の供給を停止した状態で、タンク11aに設定温度Tc2=-5℃に調整した第1熱媒体を貯留する。なお、時刻t11に、設定温度Tcを徐変させず、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc2=-5℃に一度に設定することもできる。
【0105】
また、制御部80は、時刻t14よりも所定時間Δt2前の時刻t13に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc3=-25℃に徐々に変化するように設定し、且つ時刻t14まで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te2=0℃に制御すべく、第2分配弁135により流路118への分配比率を減少させて流路128への分配比率を増加させる。なお、時刻t13に、設定温度Tcを徐変させず、設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc3=-25℃に一度に設定することもできる。
【0106】
また、制御部80は、時刻t16よりも所定時間Δt3前の時刻t15に、設定温度Thを変化後の目標温度Te4=90℃に対応した設定温度Th4=85℃に徐々に変化するように設定する。このとき、第2チラー21のポンプ21bを駆動していないため、制御部80は、第2分配弁135の分配比率を変更しない。すなわち、第2チラー21は、第1熱媒体の供給を停止した状態で、タンク21aに設定温度Th4=85℃に調整した第1熱媒体を貯留する。なお、時刻t15に、設定温度Thを徐変させず、設定温度Thを変化後の目標温度Te4=90℃に対応した設定温度Th4=85℃に一度に設定することもできる。
【0107】
制御部80は、第1実施形態と同様に、Δt=C×(T1-Tc2)/qの式により、所定時間Δtを設定する。このとき、出力qを、最高出力qmとしてもよいし、最高効率出力qeとしてもよい。なお、第1チラー11が既に出力q1で運転している場合は、q=qm-q1、又はq=qe-q1とすればよい。また、第2チラー21により加熱を行う場合は、Δt=C×(Th2-T2)/qの式により、所定時間Δtを設定する。温度T2は、温度センサ29により検出される第2熱媒体の温度である。
【0108】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第2実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0109】
・温度制御システム400は、第1チラー11、第1循環回路110、第2チラー21、及び第2循環回路120を備えている。このため、第1チラー11及び第2チラー21から、それぞれ熱交換器93(第1流通部、第2流通部)まで第1熱媒体(第2熱媒体)を流通させ、熱交換器93から下部電極92に熱を供給することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。
【0110】
・制御部80は、記憶装置80aに記憶されている時間経過と目標温度Teと関係に基づいて、
図6において、目標温度Teが第1チラー11から熱交換器93へ第1熱媒体を供給させる目標温度Te2=0℃に変化する時刻t12(第1変化タイミング)よりも所定時間Δt1前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc2に設定する。このため、第1チラー11は、第1熱媒体の供給を停止した状態で、変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc2に調整した第1熱媒体を、時刻t12までにタンク11aに貯留しておくことができる。したがって、第1チラー11は、目標温度Teが変化した後に、タンク11aから予め温度を調整しておいた第1熱媒体を供給することができ、下部電極92の温度を目標温度Te2=0℃に追従させる追従性を向上させることができる。そして、時刻t12よりも所定時間Δt1前から変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Tc2に設定すればよく、第1チラー11の駆動状態を常に高く保っておく必要がないため、第1チラー11でのエネルギ消費を抑制することができる。
なお、流路117と流路118とを接続する流路116を設け、流路116に流路117から流路118へ循環させる第1熱媒体の量を調節するニードル弁119を設けてもよい。また、流路127と流路128とを接続する流路126を設け、流路126に流路127から流路128へ循環させる第1熱媒体の量を調節するニードル弁129を設けてもよい。
【0111】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1~第4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0112】
図7に示すように、本実施形態の温度制御システム500は、第1循環回路110、第2循環回路120、第3循環回路130、及び制御部80等を備えている。
【0113】
第1循環回路110は、上記第1熱媒体が循環する回路である。第2循環回路120は、第1循環回路110から独立しており、上記第2熱媒体が循環する回路である。第3循環回路130は、第1循環回路110及び第2循環回路120から独立しており、第3熱媒体が循環する回路である。
【0114】
第3熱媒体は、例えばフッ素系の不活性液体である。第3熱媒体の使用可能な下限温度は、第1熱媒体及び第2熱媒体の使用可能な下限温度よりも低い。第3熱媒体の使用可能な上限温度は、第1熱媒体及び第2熱媒体の使用可能な上限温度よりも高い。すなわち、第3熱媒体の使用可能な温度は範囲は、第1熱媒体及び第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも広い。このため、第3熱媒体は、第1熱媒体及び第2熱媒体よりも高価である。
【0115】
第1循環回路110は、第1チラー11、第1流通部114等を備えている。流路117は、第1流通部114に接続されている。第1流通部114は、熱交換器131の内部に設けられており、第1熱媒体が流通する。第1流通部114には、流路118が接続されている。流路118は、第1チラー11のタンク11aに接続されている。
【0116】
第2循環回路120は、第2チラー21、第2流通部124等を備えている。流路127は、第2流通部124に接続されている。第2流通部124は、熱交換器132の内部に設けられており、第2熱媒体が流通する。第2流通部124には、流路128が接続されている。流路128は、第2チラー21のタンク21aに接続されている。
【0117】
第3循環回路130は、第3流通部133、第4流通部134、第4分配弁435、第1逆止弁136、第2逆止弁137、ポンプ32等を備えている。
【0118】
第3流通部133は、熱交換器131の内部に設けられており、第3熱媒体が流通する。第3流通部133は、第1流通部114と一体化されており、第1流通部114と熱交換する。
【0119】
第3流通部133には、流路133aが接続されている。流路133aには、第1逆止弁136が設けられている。第1逆止弁136は、第3流通部133から合流点P1への第3熱媒体の流通を許容し、合流点P1から第3流通部133への第3熱媒体の流通を禁止する。
【0120】
第4流通部134には、流路134aが接続されている。流路134aには、第2逆止弁137が設けられている。第2逆止弁137は、第4流通部134から合流点P1への第3熱媒体の流通を許容し、合流点P1から第4流通部134への第3熱媒体の流通を禁止する。
【0121】
流路133a及び流路134aは、合流点P1において流路135aに接続されている。流路135aは、熱交換器93の流入ポートに接続されている。熱交換器93の流出ポートには、流路135bが接続されている。流路135bには、ポンプ32が設けられている。流路135bは、第4分配弁435のコモンポートに接続されている。
【0122】
第4分配弁435(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。Bポートには、流路135cが接続されている。Aポートには、流路135dが接続されている。流路135cは、熱交換器131の第3流通部133に接続されている。流路135dは、熱交換器132の第4流通部134に接続されている。
【0123】
第4分配弁435は、流路135bから、流路135cへ流れる第3熱媒体の流量と、流路135dへ流れる第3熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。すなわち、第4分配弁435は、熱交換器93から第3流通部133まで流通する第3熱媒体と、熱交換器93から第4流通部134まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。第4分配弁435は、流路135bから流路135cへ第3熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路135dへ第3熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第4分配弁435では、ポンプ32から供給された第3熱媒体を、熱交換器131の第3流通部133と熱交換器132の第4流通部134とに分配する比率にかかわらず、第3熱媒体の圧力損失が一定である。
【0124】
第4分配弁435の分配比率にかかわらず、ポンプ32の負荷が変化しないため、ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、第3循環回路130に第3熱媒体を循環させる。第3循環回路130は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。
【0125】
制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。制御部80は、下部電極92の目標温度Te及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第4分配弁435の分配比率を制御する。これにより、第3流通部133に流通する第3熱媒体の流量、ひいては第1流通部114と第3流通部133とで交換する熱量が調整される。また、第4流通部134に流通する第3熱媒体の流量、ひいては第2流通部124と第4流通部134とで交換する熱量が調整される。
【0126】
制御部80は、下部電極92の目標温度Te、温度センサ19,29,94の検出結果に基づいて、第1チラー11の設定温度Tc、第2チラー21の設定温度Th、及び第4分配弁435の分配比率を制御する。これにより、熱交換器93に供給する熱量が調整される。そして、制御部80は、下部電極92の温度が目標温度Teになるように、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定し、第2チラー21の設定温度Thを目標温度Teに対応した設定温度Thに設定するとともに、第4分配弁435の分配比率をフィードバック制御する。
【0127】
制御部80は、第4実施形態と同様に、第1チラー11の設定温度Tc、第2チラー21の設定温度Th、及び第4分配弁435の分配比率を制御する。また、制御部80は、第4実施形態と同様に、第1チラー11からの第1熱媒体の供給を実行及び停止し、第2チラー21からの第2熱媒体の供給を実行及び停止してもよいし、第1チラー11から第1熱媒体を常に供給し、第2チラー21から第2熱媒体を常に供給してもよい。
【0128】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第4実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0129】
・第3循環回路130は、第1循環回路110及び第2循環回路120から独立しており、第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路130にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路130は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路130を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0130】
・第3循環回路130は、第3熱媒体が流通し、第1流通部114と熱交換する第3流通部133と、第3熱媒体が流通し、第2流通部124と熱交換する第4流通部134と、を備えている。このため、第1流通部114まで供給された熱量を、第1流通部114と第3流通部133との熱交換を通じて第3流通部133に供給することができる。同様に、第2流通部124まで供給された熱量を、第2流通部124と第4流通部134との熱交換を通じて第4流通部134に供給することができる。第3循環回路130は、第3流通部133及び第4流通部134から、下部電極92と熱交換する熱交換器93まで第3熱媒体を流通させて、第3流通部133及び第4流通部134まで戻す。このため、第3熱媒体を介して、第3流通部133及び第4流通部134から、下部電極92と熱交換する熱交換器93まで熱量を供給することができる。
【0131】
・第4分配弁435は、熱交換器93から第3流通部133まで流通する第3熱媒体と、熱交換器93から第4流通部134まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。このため、第3流通部133から熱交換器93に供給する熱量と、第4流通部134から熱交換器93に供給する熱量との比率を、第4分配弁435により変更することができる。したがって、熱交換器93に供給する熱量を第4分配弁435により変更することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。
【0132】
・上記第1変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、熱交換器93に供給する熱量を第4分配弁435により変更することで、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0133】
・第3循環回路130を循環する第3熱媒体の量を減少させることができる。したがって、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができ、下部電極92の温度を制御する応答性を向上させることができる。
【0134】
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1~第5実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0135】
図8に示すように、本実施形態の温度制御システム300は、第5実施形態の温度制御システム500において、第4分配弁435を第5分配弁535に変更している。
【0136】
第5分配弁535(調整部)は、コモンポート、Hポート、Bポート、及びCポートを備える4方弁である。Cポートには、流路235が接続されている。流路235は、熱交換器131の第3流通部133に接続されている。Bポートには、流路239が接続されている。流路239は、合流点P1において流路135aに接続されている。流路239には、第3逆止弁138が設けられている。第3逆止弁138は、第5分配弁535から合流点P1への第1熱媒体の流通を許容し、合流点P1から第5分配弁535への第1熱媒体の流通を禁止する。Hポートには、流路237が接続されている。流路237は、熱交換器132の第4流通部134に接続されている。
【0137】
第5分配弁535は、流路135bから、流路235へ流れる第3熱媒体の流量と、流路239へ流れる第3熱媒体の流量と、流路237へ流れる第3熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。すなわち、第5分配弁535は、熱交換器93から第3流通部133まで流通する第3熱媒体と、熱交換器93から第3流通部133及び第4流通部134を介さず熱交換器93まで戻る第3熱媒体と、熱交換器93から第4流通部134まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。第5分配弁535は、流路135bから流路235へ第3熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路235,239へ第3熱媒体が流れる状態と、流路135bから流路239へ第3熱媒体が100%流れる状態と、流路135bから流路239,237へ第3熱媒体が流れる状態と、流路135bから流路237へ第3熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第5分配弁535では、ポンプ32から供給された第3熱媒体を、流路235と流路239と流路237とに分配する比率にかかわらず、第3熱媒体の圧力損失が一定である。
【0138】
第5分配弁535の分配比率にかかわらず、ポンプ32の負荷が変化しないため、ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、熱交換器93に第3熱媒体を循環させる。
【0139】
制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。制御部80は、下部電極92の目標温度Te及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第5分配弁535の分配比率を制御する。また、
図6と同様に、制御部80は、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定し、第2チラー21の設定温度Thを目標温度Teに対応した設定温度Thに設定する。
【0140】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第5実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0141】
・第5分配弁535は、熱交換器93から第3流通部133まで流通する第3熱媒体と、熱交換器93から第3流通部133及び第4流通部134を介さず熱交換器93まで戻る第3熱媒体と、熱交換器93から第4流通部134まで流通する第3熱媒体との比率を変更する。このため、熱交換器93が第3流通部133から受け取る熱量と、熱交換器93に戻す熱量と、熱交換器93が第4流通部134から受け取る熱量との比率を、第5分配弁535により変更することができる。したがって、熱交換器93に供給する熱量を第5分配弁535により変更することで、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。
【0142】
・第1変化タイミングよりも所定時間Δt前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、熱交換器93に供給する熱量を第5分配弁535により変更することで、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0143】
・熱交換器93から第3流通部133及び第4流通部134まで第3熱媒体を流通させず、熱交換器93から流出した第3熱媒体を熱交換器93にそのまま戻す状態を実現することができる。
【0144】
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について、第1,第5実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1~第6実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0145】
図9に示すように、本実施形態の温度制御システム700は、第5実施形態の温度制御システム500の第2循環回路120に代えて、下部電極92を直接加熱するヒータ96を備えている。
【0146】
第1循環回路110は、上記第1熱媒体が循環する回路である。第3循環回路230は、第1循環回路110から独立しており、上記第3熱媒体が循環する回路である。
【0147】
ヒータ96は、発熱量を制御可能なヒータである。ヒータ96は、電熱線ヒータやセラミックヒータ等を備えており、下部電極92に一体化されている。ヒータ96の加熱状態は、制御部80(調整部)により制御される。
【0148】
第6分配弁35(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。第3流通部133と第6分配弁35のコモンポートとが、流路36によって接続されている。第6分配弁35のAポートと熱交換器93の流入ポートとが、流路37によって接続されている。流路37には、流量計33が設けられている。流量計33は、流路37を流れる第3熱媒体の流量を計測する。
【0149】
熱交換器93の流出ポートと第3流通部133とが、流路39によって接続されている。第6分配弁35のBポートと流路39とが、流路38によって接続されている。流路39には、ポンプ32が設けられている。ポンプ32は、流路39において、熱交換器93側から第3熱媒体を吸入し、第3流通部133側へ吐出する。
【0150】
第6分配弁35は、流路36から、流路37へ流れる第3熱媒体の流量と、流路38へ流れる第3熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。すなわち、第6分配弁35は、第3流通部133から熱交換器93まで流通する第3熱媒体と、第3流通部133から熱交換器93を流通させずに第3流通部133へ戻す第3熱媒体との比率を変更する。第6分配弁35は、第3流通部133から熱交換器93へ第3熱媒体が100%流れる状態と、第3流通部133から熱交換器93を流通させずに第3流通部133へ第3熱媒体を100%戻す状態との間で連続的に状態を変更する。第6分配弁35では、第3流通部133から供給された第3熱媒体を、熱交換器93へ分配する比率にかかわらず、第3熱媒体の圧力損失が一定である。
【0151】
第6分配弁35の分配比率にかかわらず、ポンプ32の負荷が変化しないため、ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、第3循環回路230に第3熱媒体を循環させる。第3循環回路230は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。
【0152】
制御部80は、下部電極92の温度を目標温度Teに制御する。制御部80は、下部電極92の目標温度Te、流量計33、及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第6分配弁35の分配比率を制御する。これにより、第3流通部133に流通する第3熱媒体の流量、ひいては第1流通部114と第3流通部133とで交換する熱量が調整される。
【0153】
制御部80は、下部電極92の目標温度Te、温度センサ19,94の検出結果に基づいて、第1チラー11の設定温度Tc、ヒータ96の発熱量、及び第6分配弁35の分配比率を制御する。これにより、熱交換器93に供給する熱量が調整される。そして、制御部80は、下部電極92の温度が目標温度Teになるように、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定し、ヒータ96の発熱量を目標温度Teに対応した発熱量に制御するとともに、第6分配弁35の分配比率をフィードバック制御する。
【0154】
制御部80は、第1実施形態と同様に、第1チラー11の設定温度Tc、及び第6分配弁35の分配比率を制御する。また、制御部80は、第5実施形態と同様に、第1チラー11からの第1熱媒体の供給を実行及び停止してもよいし、第1チラー11から第1熱媒体を常に供給してもよい。
【0155】
図2において、制御部80は、時刻t4よりも所定時間Δt2前の時刻t3に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc=-25℃に徐々に変化するように設定し、且つ時刻t4まで下部電極92の温度を変化前の目標温度Te2=0℃に制御すべく、第6分配弁35により流路38への分配比率を減少させて流路37への分配比率を増加させる。この際に、ヒータ96により下部電極92を加熱する。
【0156】
なお、所定時間Δt2において、ヒータ96を停止させて(下部電極92を加熱せず)、第6分配弁35により流路38への分配比率を減少させて流路37への分配比率を増加させることもできる。また、第6分配弁35の分配比率を変更せず、ヒータ96により下部電極92を加熱することもできる。これらによっても、時刻t3から時刻t4まで、下部電極92の温度を変化前の目標温度Te2=0℃に制御することができる。
【0157】
図2の時刻t5において、制御部80は、設定温度Tcを変化後の目標温度Te4=90℃に対応した設定温度Tc=50℃に徐々に変化するように設定し、第6分配弁35により流路38への分配比率を減少させて流路37への分配比率を増加させる。この際に、制御部80は、ヒータ96により下部電極92を加熱させ、下部電極92の温度を急激に上昇させる。
【0158】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1,第5実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0159】
・第3循環回路230は、第1循環回路110から独立しており、第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路230にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路230は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路230を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0160】
・第1循環回路110は、第3熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が狭い第1熱媒体を使用しているため、第1熱媒体として安価な熱媒体を使用することができる。ヒータ96は、下部電極92を加熱し、発熱量を制御可能である。このため、熱媒体を用いずに、下部電極92を直接加熱することができる。
【0161】
・温度制御システム700は、第1流通部114と第3流通部133とで交換する熱量を調整する第6分配弁35を備えている。また、温度制御システム700は、ヒータ96の発熱量を調整する制御部80を備えている。このため、第3流通部133から熱交換器93へ供給する熱量、及び下部電極92に直接供給する熱量を調整することができ、下部電極92の温度を目標温度Teに制御することができる。したがって、変化タイミングよりも所定時間前に、設定温度Tcを変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定したとしても、熱交換器93に供給する熱量を第6分配弁35及び制御部80により変更することで、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0162】
・制御部80は、ヒータ96から下部電極92へ直接供給する熱量も調整する。このため、第1流通部114から第3流通部133、ひいては下部電極92へ供給する熱量を第6分配弁35により調整するだけでは下部電極92の温度を目標温度Teに制御しにくい場合であっても、下部電極92の温度が目標温度Teからずれることを抑制することができる。
【0163】
・ヒータ96は、下部電極92を加熱し、発熱量を制御可能である。このため、熱媒体を用いずに、下部電極92を直接加熱することができ、構成を簡潔にすることができる。
【0164】
(第8実施形態)
以下、第8実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1~第7実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0165】
図10に示すように、温度制御システム800は、第1循環回路10、第2循環回路20、第3循環回路30、及び制御部80等を備えている。
【0166】
第1循環回路10は、上記第1熱媒体が循環する回路である。第2循環回路20は、第1循環回路10から独立しており、上記第2熱媒体(すなわち第1熱媒体)が循環する回路である。
【0167】
第3循環回路30は、第1循環回路10及び第2循環回路20から独立しており、上記第3熱媒体が循環する回路である。
【0168】
第1循環回路10は、第1チラー11、第1分配弁12、流量計13、3つ(複数)の第1流通部14等を備えている。
【0169】
第1チラー11(第1調整装置)は、タンク11a、ポンプ11b等を備えている。流路17aは、第1分配弁12のコモンポート(COM)に接続されている。
【0170】
第1分配弁12(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。Aポートには、流路17bが接続されている。Bポートには、流路17dが接続されている。第1分配弁12は、流路17aから、流路17bへ流れる第1熱媒体の流量と、流路17dへ流れる第1熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。第1分配弁12は、流路17aから流路17bへ第1熱媒体が100%流れる状態と、流路17aから流路17dへ第1熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第1分配弁12では、第1チラー11から供給された第1熱媒体を、3つの第1流通部14と流路17dとに分配する比率にかかわらず、第1熱媒体の圧力損失が一定である。
【0171】
流路17bには、流量計13が設けられている。流量計13は、流路17bを流れる第1熱媒体の流量を計測する。流路17bは、3つ(複数)の流路17cに分岐している。各流路17cは、各第1流通部14に接続されている。3つの第1流通部14は、熱交換器31の内部に設けられており、第1熱媒体が流通する。
【0172】
各第1流通部14には、各流路18aが接続されている。3つ(複数)の流路18aは、流路18bに統合している。流路17dは、第1分配弁12のBポートと流路18bとを接続している。
【0173】
第2循環回路20は、第2チラー21、第2分配弁22、流量計23、3つ(複数)の第2流通部24等を備えている。
【0174】
第2チラー21(第2調整装置)は、タンク21a、ポンプ21b等を備えている。流路27aは、第2分配弁22のコモンポート(COM)に接続されている。
【0175】
第2分配弁22(調整部)は、コモンポート、Aポート、及びBポートを備える3方弁である。Aポートには、流路27bが接続されている。Bポートには、流路27dが接続されている。第2分配弁22は、流路27aから、流路27bへ流れる第2熱媒体の流量と、流路27dへ流れる第2熱媒体の流量との比を、連続的に変更する。第2分配弁22は、流路27aから流路27bへ第2熱媒体が100%流れる状態と、流路27aから流路27dへ第2熱媒体が100%流れる状態との間で連続的に状態を変更する。第2分配弁22では、第2チラー21から供給された第2熱媒体を、3つの第2流通部24と流路27dとに分配する比率にかかわらず、第2熱媒体の圧力損失が一定である。
【0176】
流路27bには、流量計23が設けられている。流量計23は、流路27bを流れる第2熱媒体の流量を計測する。流路27bは、3つ(複数)の流路27cに分岐している。各流路27cは、各第2流通部24に接続されている。3つの第2流通部24は、熱交換器31の内部に設けられており、第2熱媒体が流通する。
【0177】
各第2流通部24には、各流路28aが接続されている。3つ(複数)の流路28aは、流路28bに統合している。流路27dは、第2分配弁22のBポートと流路28bとを接続している。
【0178】
第3循環回路30は、5つ(複数)の共通流通部34、ポンプ32等を備えている。
【0179】
5つの共通流通部34(第3流通部、第4流通部)は、熱交換器31の内部に設けられており、第3熱媒体が流通する。共通流通部34は、第1流通部14及び第2流通部24と一体化されており、第1流通部14及び第2流通部24と熱交換する。
【0180】
各共通流通部34には、各流路35aが接続されている。5つ(複数)の流路35aは、流路35bに統合している。
【0181】
熱交換器93(熱交換部)は、上記流路35bに接続されており、第3熱媒体が流通する。熱交換器93には、流路36bが接続されている。流路36bには、ポンプ32が設けられている。流路36bは、5つ(複数)の流路36cに分岐している。各流路36cは、各共通流通部34に接続されている。
【0182】
ポンプ32は、流路36bにおいて、熱交換器93側から第3熱媒体を吸入し、共通流通部34側へ吐出する。ポンプ32は一定の駆動状態で駆動される。これにより、ポンプ32は、第3循環回路30に第3熱媒体を循環させる。第3循環回路30は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。
【0183】
制御部80は、下部電極92の目標温度Te、流量計13,23及び温度センサ94の検出結果に基づいて、第1分配弁12及び第2分配弁22の分配比率を制御する。これにより、第1流通部14に流通する第1熱媒体の流量、ひいては第1流通部14と共通流通部34(第3流通部)とで交換する熱量が調整される。また、第2流通部24に流通する第2熱媒体の流量、ひいては第2流通部24と共通流通部34(第4流通部)とで交換する熱量が調整される。
【0184】
図11は、下部電極92の目標温度Te、第1チラー11の出力、及び第2チラー21の出力の変化を示すタイムチャートである。同図に示すように、下部電極92の目標温度Teは、
図2と同様に変化する。
【0185】
制御部80は、第4実施形態と同様に、目標温度Teの変化に合わせて、第1チラー11及び第2チラー21からの第1熱媒体の供給を実行及び停止する。制御部80は、第4実施形態と同様に、第1チラー11の設定温度Tcを目標温度Teに対応した設定温度Tcに設定する。そして、制御部80は、温度センサ19により検出される第1熱媒体の温度T1が設定温度Tcになるように、第1チラー11の出力をフィードバック制御する。また、制御部80は、温度センサ94により検出される下部電極92の温度T3が目標温度Teになるように、第1分配弁12の分配比率をフィードバック制御する。制御部80は、第2チラー21及び第2分配弁22も、第4実施形態と同様に制御する。
【0186】
さらに、制御部80は、時刻t21(第1変化タイミング)からアシスト期間Ta1だけ第2チラー21の設定温度Th(第2設定温度)を変化後の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Th2(例えば-5℃、出力100%から漸減)に設定し、第2チラー21から第2流通部24へ第2熱媒体を供給させる。設定温度Th2は、例えば-5℃である。
【0187】
目標温度Teが第1チラー11から第1流通部14へ第1熱媒体を供給させる目標温度Te3=-20℃に変化する時刻t23(第1変化タイミング)よりも所定時間Δt前の時刻t22に、設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc3(例えば-25℃、出力100%)に設定した場合、以下の問題が生じるおそれがある。すなわち、下部電極92の温度を目標温度Te2=0℃に制御しつつ、予め温度を調整しておいた第1熱媒体をタンク11aに貯留するまでの時間(所定時間Δt)が長くなるおそれがある。
【0188】
そこで、制御部80は、所定時間Δt前の時刻t22から時刻t23まで、設定温度Thを変化前の目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Th2(例えば-25℃、出力100%)に設定し、第2チラー21から第2流通部24へ第2熱媒体を供給させる。このとき、第2チラー21のタンク21aに-25℃の第2熱媒体が貯留されるまで、第2分配弁22により第2熱媒体を流路27bへ流通させず流路27dへ流通させ、第2チラー21のタンク21aに-25℃の第2熱媒体が貯留されてから、第2分配弁22により第2熱媒体を流路27bへ流通させるとよい。なお、第2熱媒体が第1熱媒体と異なる液体であり、-25℃まで冷却すると凍結するおそれがある場合は、例えば目標温度Te2=0℃に対応した設定温度Th2=-10℃としてもよい。
【0189】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1,第4,第5実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0190】
・時刻t21において、第1チラー11から第1流通部14へ第1熱媒体を供給して下部電極92の温度を変化後の目標温度Te2=0℃に制御する際に、第2チラー21から第2流通部24へ第2熱媒体を供給してアシストすることができるため、下部電極92の温度を目標温度Te2=0℃に追従させる追従性をさらに向上させることができる。
【0191】
・時刻t22~t23において、第1チラー11の設定温度Tcを変化後の目標温度Te3=-20℃に対応した設定温度Tc3=-25℃に設定しつつ、第1チラー11から第1流通部14へ第1熱媒体を供給して下部電極92の温度を変化前の目標温度Te2=0℃に制御する際に、第2チラー21から第2流通部24へ第2熱媒体を供給してアシストすることができるため、上記所定時間Δtが長くなることを抑制することができる。
【0192】
上記の各実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記の各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0193】
・記憶装置80a(記憶部)は、制御部80の外部に設けられ、制御部80に接続されていてもよい。
【0194】
・第5,第6,第8実施形態において、第1熱媒体と第2熱媒体とが、異なる液体であってもよい。例えば、第1熱媒体と第2熱媒体とにおいて、エチレングリコールと水との割合が互いに異なっていてもよい。また、第1熱媒体と第2熱媒体とが、互いに異なる物質により構成されていてもよい。ただし、第1熱媒体と第2熱媒体とは、第3熱媒体よりも安価であることが望ましい。
【0195】
・変化後の目標温度Teに対応した設定温度Tc,Thに調整した熱媒体をタンク11a,21aに貯留する所定時間Δtを、一定時間に固定することもできる。こうした構成によれば、所定時間Δtを簡易的に設定することができる。
【0196】
・制御対象は、下部電極92に限らず、半導体製造装置90の上部電極91であってもよい。また、上記の各温度制御システムを適用する対象は、半導体製造装置90に限らず、他の製造装置や処理装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0197】
10…第1循環回路、11…第1チラー(第1調整装置)、11a…タンク(第1タンク)、12…第1分配弁(調整部)、14…第1流通部、19…温度センサ、20…第2循環回路、21…第2チラー(第2調整装置)、21a…タンク(第2タンク)、22…第2分配弁(調整部)、24…第2流通部、29…温度センサ、30…第3循環回路、34…共通流通部(第1流通部、第2流通部)、35…第6分配弁(調整部)、80…制御部(調整部)、80a…記憶装置(記憶部)、90…半導体製造装置、92…下部電極(制御対象)、93…熱交換器(熱交換部)、100…温度制御システム、110…第1循環回路、114…第1流通部、120…第2循環回路、124…第2流通部、130…第3循環回路、133…第3流通部、134…第4流通部、135…第2分配弁(調整部)、200…温度制御システム、230…第3循環回路、300…温度制御システム、335…第3分配弁(調整部)、400…温度制御システム、435…第4分配弁(調整部)、500…温度制御システム、535…第5分配弁(調整部)、700…温度制御システム。