(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】回収性に優れる樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20230829BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20230829BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20230829BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230829BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20230829BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20230829BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230829BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L29/04 C
C08L53/02
C08K5/098
C08F297/08
B32B27/28 102
B32B27/30 Z
B32B27/32 Z
(21)【出願番号】P 2019220820
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-315442(JP,A)
【文献】特開平03-277642(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040523(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078089(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/072653(WO,A1)
【文献】特開2005-029727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 251/00-283/00
C08F 283/02-289/00
C08F 291/00-297/08
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)100質量部に対し、エチレン単位含有量が15~60モル%、けん化度が85モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を0.1~20質量部及び芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を0.1~10質量部含み、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)がハロゲ
ンを有
し、
芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1.0g/10min以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが
1.0g/10min以上100g/10min
以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)がハロゲンを有するスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)が、エチレン単位含有量15モル%以上40モル%未満のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B1)及びエチレン単位含有量40モル%以上60モル%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B2)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を有する多価金属化合物(G)を含み、樹脂組成物中における多価金属化合物(G)の含有量に対し、樹脂組成物中におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の含有率(質量%)を乗じて算出される、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量が5~1000ppmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
酸変性ポリオレフィン(D)をポリオレフィン(A)100質量部に対し0.1~20質量部含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオレフィン(A)層及び前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層を備える多層構造体を構成する層の少なくとも1層に、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を含む多層構造体を溶融混練する工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリオレフィン(A)層及び前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層を含む多層構造体と、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を主成分として含むエチレン-ビニルアルコール共重合体回収助剤とを溶融混練する工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物層、ポリオレフィン(A)層、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層及び酸変性ポリオレフィン(D)層を含む多層構造体。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物層を有する、成形品。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物に用いられる芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を主成分として含む、エチレン-ビニルアルコール共重合体回収助剤。
【請求項12】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)100質量部に対し、請求項11に記載の回収助剤を0.1~30質量部含む、自己回収型エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン及びエチレン-ビニルアルコール共重合体を含有する樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンに代表される熱可塑性樹脂からなる層と、バリア性に優れるエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略称することがある)からなる層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして食品包装容器や燃料容器などの各種用途に用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトル、タンクなどの各種成形品として用いられる。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形して熱可塑性樹脂層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂層とEVOH層を含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、溶融成形時にダイに目ヤニと称される相分離異物(樹脂の相容性に起因)が付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難な場合があった。
【0004】
このようなゲル化や相溶性を改善させる方法として、EVOHの回収物に対して回収助剤を添加する方法が知られている。特許文献1には、EVOHを含む粉砕物に、オレフィン-カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はそのケン化物、脂肪酸金属塩、及び/又は特定の金属化合物を含有する回収助剤を添加する方法が記載されている。また、特許文献2には、EVOHを含む粉砕物に配合する樹脂組成物として、酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪酸金属塩及び/又は特定の金属化合物を含有する回収助剤を添加する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-234971号公報
【文献】特開2002-121342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のEVOH回収助剤を用いて得られる回収物は、溶融成形を繰り返し行った場合に、スクリュー及びダイへの劣化物等の樹脂の付着が起こる場合や、色相が悪化する場合や、衝撃強度が劣る場合があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ポリオレフィン(以下「PO」と略記する場合がある)及びEVOHを含む樹脂組成物において、溶融成形を繰り返し行った場合でも色相の悪化並びにスクリュー及びダイへの劣化物等の樹脂の付着を低減でき、かつ、耐衝撃性及び外観に優れた成形品が得られる樹脂組成物、当該樹脂組成物の製造方法並びに当該樹脂組成物を用いた多層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
[1]ポリオレフィン(A)100質量部に対し、エチレン単位含有量が15~60モル%、けん化度が85モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を0.1~20質量部及び芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を0.1~10質量部含み、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)がハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、樹脂組成物;
[2]芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1~100g/10minである、[1]の樹脂組成物;
[3]芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)がハロゲンを有するスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体である[1]または[2]の樹脂組成物;
[4]前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)が、エチレン単位含有量15モル%以上40モル%未満のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B1)及びエチレン単位含有量40モル%以上60モル%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B2)を含む、[1]~[3]のいずれかの樹脂組成物;
[5]マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を有する多価金属化合物(G)を含み、樹脂組成物中における多価金属化合物(G)の含有量に対し、樹脂組成物中におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の含有率(質量%)を乗じて算出される、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量が5~1000ppmである、[1]~[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]酸変性ポリオレフィン(D)をポリオレフィン(A)100質量部に対し0.1~20質量部含む、[1]~[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7]ポリオレフィン(A)層及び前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層を備える多層構造体を構成する層の少なくとも1層に、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を含む多層構造体を溶融混練する工程を含む、[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物の製造方法;
[8]ポリオレフィン(A)層及び前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層を含む多層構造体と、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を主成分として含むエチレン-ビニルアルコール共重合体回収助剤とを溶融混練する工程を含む、[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物の製造方法;
[9][1]~[6]のいずれかの樹脂組成物層、ポリオレフィン(A)層、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)層及び酸変性ポリオレフィン(D)層を含む多層構造体;
[10][1]~[6]のいずれかの樹脂組成物層を有する、成形品;
[11][1]~[6]のいずれかの樹脂組成物に用いられる芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)を主成分として含む、エチレン-ビニルアルコール共重合体回収助剤;
[12]エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)100質量部に対し、[11]の回収助剤を0.1~30質量部含む、自己回収型エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物;を提供することで達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、溶融成形を繰り返し行った場合でも色相の悪化並びにスクリュー及びダイへの劣化物等の樹脂の付着を低減でき、かつ耐衝撃性及び外観に優れた成形品が得られる樹脂組成物、当該樹脂組成物の製造方法並びに当該樹脂組成物を用いた多層構造体を提供できる。以下、本明細書において、溶融成形を繰り返し行った場合における、色相並びにスクリュー及びダイへの劣化物等の樹脂の付着に関する効果を「回収性」と表現する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、EVOHを含む多層構造体の「回収」とは、製造または成形する際に発生するトリム(端部)、バリもしくはスクラップ(不良品)等の不要な部分を再資源化することを意味し、回収された多層構造体を裁断し、押出機を用いて溶融混練する工程が一般に採用される。また、「回収物」とは、回収によって得られた樹脂組成物を意味する。また、本明細書において「EVOH回収助剤」とは、EVOHを含む多層構造体を回収する際に添加することを目的とした添加剤であって、EVOHの回収性を高める効果を奏する添加剤を意味する。また、本明細書において「自己回収型EVOH樹脂組成物」とは、EVOH樹脂組成物層を含む多層構造体を溶融混練(回収)する際に、回収助剤を新たに添加せずとも、本発明の樹脂組成物において良好な回収性を示すEVOH樹脂組成物を意味する。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、PO(A)100質量部に対し、エチレン単位含有量が15~60モル%、けん化度が85モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)(以下「EVOH(B)」と略記する場合がある)を0.1~20質量部、芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)(以下「重合体(C)」と略記する場合がある)を0.1~10質量部含み、重合体(C)がハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する。
【0012】
(PO(A))
本発明の樹脂組成物は、PO(A)を含むことで、本発明の樹脂組成物の回収性が良好となる。PO(A)としては、例えば、ポリプロピレン;プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したプロピレン系共重合体;低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;エチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したエチレン系共重合体;ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などが挙げられる。中でも、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、ポリエチレンまたはエチレン系共重合体が好ましく、耐熱性に優れる観点からポリプロピレンまたはプロピレン系重合体が好ましい。PO(A)は、1種単独で用いても2種以上を併用して用いても良い。
【0013】
PO(A)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.1g/10min以上が好ましく、0.5g/10min以上がより好ましい。また、PO(A)のMFRは50g/10min以下が好ましく、10g/10min以下がより好ましい。PO(A)のMFRが上記範囲内であると、回収性が良好となる傾向となる。
【0014】
(EVOH(B))
EVOH(B)はエチレン単位含有量が15~60モル%であり、けん化度が85モル%以上である。EVOH(B)は、エチレン-ビニルエステル共重合体をけん化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0015】
EVOH(B)のエチレン単位含有量は20モル%以上が好ましく、23モル%以上がより好ましい。また、EVOH(B)のエチレン単位含有量は55モル%以下が好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。EVOH(B)のエチレン単位含有量が15モル%未満の場合、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した場合にスクリューへの樹脂の付着量が増大する傾向となる。また、エチレン単位含有量が60モル%を超えると、例えば、本発明の樹脂組成物をEVOH(B)を含む多層構造体を回収再利用して製造する場合、原料となる多層構造体のバリア性が低下する傾向となる。
【0016】
EVOH(B)のビニルエステル単位のけん化度は、90モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、100モル%であってもよい。EVOH(B)のけん化度が85モル%未満であると、回収性が悪化する傾向となる。EVOH(B)のエチレン単位含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0017】
EVOH(B)は、エチレンとビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOH(B)が前記他の単量体単位を有する場合、EVOH(B)の全構造単位に対する前記他の単量体単位の含有量は30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下が特に好ましい。また、EVOH(B)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.10モル%であってもよい。前記他の単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0018】
EVOH(B)は、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の手法で後変性されていてもよい。
【0019】
EVOH(B)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重下で測定したMFRは0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましい。また、EVOH(B)のMFRは、100g/10min以下が好ましく、50g/10min以下がより好ましく、30g/10min以下がさらに好ましい。EVOH(B)のMFRが上記範囲であると、本発明の樹脂組成物の回収性が良好になる傾向となる。
【0020】
本発明の樹脂組成物中のEVOH(B)の含有量は、PO(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、1質量部以上が好ましい。EVOH(B)の含有量が0.1質量部未満であると、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した場合に、回収性の問題が生じにくく、重合体(C)を添加することで奏される効果の影響が小さくなる。また、EVOH(B)の含有量は、PO(A)100質量部に対して20質量部以下であり、15質量部以下が好ましい。EVOH(B)の含有量が20質量部を超える場合には、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した際に、回収性が悪化し、得られる成形品の耐衝撃性が低下する。
【0021】
EVOH(B)は一種単独で用いても、2種以上併用してもよい。EVOH(B)を2種以上併用する場合は、エチレン単位含有量が15モル%以上40モル%未満のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B1)(以下「EVOH(B1)」と略記する場合がある)と、エチレン単位含有量40モル%以上60モル%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(B2)(以下「EVOH(B2)」と略記する場合がある)を含むことが、本発明の樹脂組成物の回収性及び耐衝撃性を高める観点から好ましく、本発明の樹脂組成物を、EVOH(B)を含む多層構造体を回収することで製造する場合、原料となる多層構造体のガスバリア性を良好な状態で保ちつつ、本発明の樹脂組成物の回収性及び耐衝撃性を高めることができる傾向となる。EVOH(B1)のエチレン単位含有量は20モル%以上が好ましく、23モル%以上がより好ましい。また、EVOH(B1)のエチレン単位含有量は37モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。EVOH(B2)のエチレン単位含有量は55モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。なお、EVOH(B1)及びEVOH(B2)のけん化度及びMFRの好適な範囲は、上述したEVOH(B)の好適な範囲と同様である。
【0022】
(芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C))
重合体(C)は、芳香族ビニル化合物とオレフィンとを単量体単位として含む、ブロック共重合体であり、ハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する。本発明の樹脂組成物は、重合体(C)を含むことで、良好な回収性が得られ、かつ、耐衝撃性及び外観に優れた成形品が得られる樹脂組成物が得られる傾向となる。重合体(C)としては、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(b1)と、オレフィン単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するブロック共重合体が好ましい。重合体(C)は、分子中に少なくとも1個の重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の重合体ブロック(b2)を有していることが好ましく、その構造は特に限定されない。例えば、前記ブロック共重合体は、直鎖状、2以上に枝分かれした分岐鎖状及び星型のいずれの分子鎖形態を有していてもよい。重合体(C)として用いられるブロック構造は、例えばb1-b2で表されるジブロック構造、b1-b2-b1またはb2-b1-b2で表されるトリブロック構造、b1-b2-b1-b2で表されるテトラブロック構造、b1とb2とが計5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
重合体ブロック(b1)の構成単位である芳香族ビニル化合物単位は、付加重合により芳香族ビニル化合物から誘導される単位である。芳香族ビニル化合物としては例えばスチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン等のスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などが挙げられる。中でも、芳香族ビニル化合物はスチレン類であることが好ましく、スチレンがより好ましい。重合体ブロック(b1)を構成する芳香族ビニル化合物単位は1種でも、2種類以上であってもよい。重合体ブロック(b1)は、スチレン単位からなるものであることが好ましい。
【0024】
得られる樹脂組成物の機械的特性が向上する観点から、重合体ブロック(b1)の数平均分子量の下限は1000であることが好ましく、2000であることがより好ましい。一方、重合体ブロック(b1)の数平均分子量の上限は400000であることが好ましく、200000であることがより好ましい。
【0025】
重合体ブロック(b2)の構成単位であるオレフィン単位は、付加重合によりオレフィンから誘導される単位である。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等が挙げられる。中でも、オレフィンはイソブチレンであることが好ましい。重合体ブロック(b2)を構成するオレフィン単位は1種でも、2種以上であってもよい。重合体ブロック(b2)はイソブチレン単位からなるものであることが好ましい。
【0026】
重合体ブロック(b2)の数平均分子量は10000以上が好ましく、400000以下が好ましい。
【0027】
重合体(C)が重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)とを有する場合、その割合は、適宜決定すればよいが、前記ブロック共重合体中の重合体ブロック(b1)の含有量の下限は、重合体(C)全質量に対して5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。重合体ブロック(b1)の含有量が上記の下限以上の場合には、本発明の樹脂組成物の回収性が良好になる傾向となる。一方、重合体ブロック(b1)の含有量の上限は、重合体(C)全質量に対して80質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。重合体ブロック(b1)の含有量が上記の上限以下の場合には、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性が向上する傾向となる。なお、重合体(C)中に複数の重合体ブロック(b1)が含有されている場合、それらの合計量を、重合体ブロック(b1)の含有量とする。
【0028】
重合体(C)としては、重合体(C)がハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していればよく、そのベースとなる樹脂としては、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)などを挙げることができ、中でも熱安定性及び回収性に優れる観点から、ハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)が好ましく、ハロゲンを有するSIBSがより好ましく用いられる。
【0029】
重合体(C)が、ハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことで、本発明の樹脂組成物における重合体(C)の相溶性が向上する傾向となり、本発明の樹脂組成物の回収性をより高められる傾向となる。中でも、ハロゲンを有することが、本発明の樹脂組成物の回収性をより高められる観点から好ましい。重合体(C)に、ハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物の構造を導入する手段は特に限定されず、例えば、かかる基を有する単量体を用いて共重合しても、重合開始材由来の基として導入しても、後変性により導入してもよい。重合体(C)には、任意の方法によりその他の官能基が導入されていてもよい。導入され得る官能基の例としては、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基などのエーテル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシル基などのエステル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アシルアミノ基などのアミド基等が挙げられる。
【0030】
重合体(C)におけるハロゲン、エポキシ基、カルボキシル基及びカルボン酸無水物の構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基の含有量は、本発明の樹脂組成物の回収性をより高める観点から0.005~3.00質量%であることが好ましく、0.01~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
重合体(C)の数平均分子量の下限は12000が好ましく、30000がより好ましい。一方、重合体(C)の数平均分子量の上限は、600000が好ましく、400000がより好ましい。
【0032】
重合体(C)のJISK7210:2014に準拠して測定した、230℃、2160g荷重下で測定したMFRの下限は、0.1g/10分が好ましく、1.0g/10分がより好ましく、4.0g/10分がさらに好ましく、8.0g/10分が特に好ましい。一方、重合体(C)のMFRの上限は、100g/10分が好ましく、50g/10分がより好ましく、30g/10分がさらに好ましい。MFRが上記の範囲の場合には、得られる樹脂組成物の回収性が向上する傾向となる。
【0033】
重合体(C)の屈折率としては1.50以上が好ましく、1.52以上がより好ましく、1.58以下であっても、1.55以下であってもよい。重合体(C)の屈折率が上記範囲であると、EVOH(B)との屈折率差が小さくなり、例えば、本発明の樹脂組成物を、EVOH(B)を含む多層構造体を回収再利用して製造する場合、原料となる多層構造体の透明性が良好となる傾向となる。屈折率を上記範囲するためには重合体ブロック(b1)の含有量を15質量%以上とし、重合体ブロック(b2)をイソブチレンにすることが好ましい。重合体(C)の屈折率はJIS K7142:2014に準じて測定でき、具体的にはアッペ屈折率計を使用して測定できる。
【0034】
樹脂組成物中の重合体(C)の含有量は、PO(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、0.3質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましい。重合体(C)の含有量が0.1質量部未満であると、本発明の樹脂組成物の回収性が著しく悪化すると同時に、耐衝撃性が悪化する。また、重合体(C)の含有量はPO(A)100質量部に対して10質量部以下であり、8質量部以下が好ましい。重合体(C)の含有量が10質量部を超えると、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した場合の色相とスクリューへの劣化物等の付着が悪化する傾向となる。重合体(C)は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0035】
ゲル化や繰り返し溶融成形時のスクリューへの付着が抑制される観点から、本発明の樹脂組成物はマグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を有する多価金属化合物(G)を含むことが好ましい。多価金属化合物(G)の金属原子としては、マグネシウム又はカルシウムを含むことがより好ましく、マグネシウムを含むことがさらに好ましい。
【0036】
多価金属化合物(G)は水酸化物塩またはカルボン酸塩であることが好ましい。前記カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸が好ましく、脂肪族カルボン酸がより好ましい。脂肪族カルボン酸としては、炭素数5以上の高級脂肪族カルボン酸及び炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸が挙げられる。カルボン酸塩の炭素数は1~20が好ましく、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、酢酸が好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物が多価金属化合物(G)を含有する場合、樹脂組成物中における多価金属化合物(G)の含有量に対し、樹脂組成物中におけるEVOH(B)の含有率(質量%)を乗じて算出される、EVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量は5ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましく、40ppm以上がさらに好ましく、70ppm以上が特に好ましい。EVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量が5ppm以上であると、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した際に、樹脂のゲル化や押出機内のスクリューへの付着が抑制される傾向となる。また、EVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量は1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましく、150ppm以下が特に好ましい。EVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量が1000ppm以下であると、本発明の樹脂組成物を繰り返し溶融成形した際の色相が良好となる傾向となる。なお、本明細書におけるEVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量の算出方法を例示すると、例えば樹脂組成物中の多価金属化合物(G)が500ppmであり、EVOH(B)の含有率が10質量%であったとすると、EVOH(B)に対する多価金属化合物(G)の含有量は50ppmとなる。
【0038】
多価金属化合物(G)が低級脂肪族カルボン酸金属塩である場合、樹脂組成物中における低級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量に対し、樹脂組成物中におけるEVOH(B)の含有率(質量%)を乗じて算出される、EVOH(B)に対する低級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量は5ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましい。また、低級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量は500ppm以下が好ましく、150ppm以下がより好ましい。また、多価金属化合物(G)が高級脂肪族カルボン酸金属塩である場合、樹脂組成物中における高級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量に対し、樹脂組成物中におけるEVOH(B)の含有率(質量%)を乗じて算出される、EVOH(B)に対する高級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量は20ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましい。また、高級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量は1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましい。低級脂肪族カルボン酸金属塩または高級脂肪族カルボン酸金属塩の含有量が上記範囲に有ると回収性が良好となる傾向となる。多価金属化合物(G)は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン(D)(以下「酸変性PO(D)」と略記する場合がある)を含んでも良い。本発明の樹脂組成物は、酸変性PO(D)を特定量含むことで、PO(A)及びEVOH(B)の相溶性が向上し、繰り返し溶融成形した場合に、スクリュー及びダイへの劣化物等の樹脂の付着を低減できる傾向となり、耐衝撃性が向上する傾向となる。また、PO(A)を主成分とする層(以下「PO(A)層」と略記する場合がある)及びEVOH(B)を主成分とする層(以下「EVOH(B)層」と略記する場合がある)を備える多層構造体では、PO(A)層とEVOH(B)層との層間接着力を高めるために酸変性PO(D)を主成分とする層(以下「酸変性PO(D)層」と略記する場合がある)を接着層として備えることが多い。酸変性PO(D)層を備える多層構造体を効率的に回収し溶融成形する場合、得られる樹脂組成物には酸変性PO(D)が含まれることとなる。したがって、PO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体を回収して、本発明の樹脂組成物を作製した場合、酸変性PO(D)が含まれる樹脂組成物が得られる傾向となる。ここで、「主成分」とは50質量%超であることを意味し、前記多層構造体において各層を占めるPO(A)、EVOH(B)または酸変性PO(D)の割合は70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0040】
酸変性PO(D)としては、POを酸でグラフト変性させて得られるグラフト変性POや、オレフィンと酸を共重合させて得られる酸変性オレフィン系共重合体が挙げられる。なかでも、酸変性PO(D)としてはグラフト変性POが好適である。PO(A)との相溶性に優れる観点から、酸変性PO(D)が、PO(A)と同じ種類のポリオレフィンを酸変性させたものであることが好ましい。例えば、PO(A)がポリプロピレンである場合には、酸変性PO(D)が酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、PO(A)がポリエチレンである場合には、酸変性PO(D)が酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0041】
酸変性PO(D)として用いられるグラフト変性POとしては、例えば、上述したPO(A)として用いられるものとして例示したPOを酸でグラフト変性させたもの等が挙げられる。POにグラフト化させる酸としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。このうち無水マレイン酸グラフト変性POが最も好適である。
【0042】
酸変性PO(D)として用いられるオレフィン系共重合体としては、PO(A)として用いられるものとして上述したPOに対してさらに共重合成分として酸を含有させたものが挙げられる。このとき用いられる酸としては、上述したPOにグラフト化させる酸として例示したものが挙げられる。
【0043】
酸変性PO(D)の酸価は0.1mgKOH/g以上が好ましく、0.5mgKOH/g以上がより好ましい。酸変性PO(D)の酸価が0.1mgKOH/g以上であると、得られる樹脂組成物の回収性が良好となる傾向にあり、本発明の樹脂組成物をPO(A)層とEVOH(B)層との間に酸変性PO(D)層を備える多層構造体を回収して製造する場合、PO(A)層とEVOH(B)層との層間接着力が良好となる傾向となる。また、酸変性PO(D)の酸価は9mgKOH/g以下が好ましく、7mgKOH/g以下がより好ましく、5mgKOH/g以下がさらに好ましく、3mgKOH/g以下が特に好ましい。酸変性PO(D)の酸価が9mgKOH/g以下であると、本発明の樹脂組成物をPO(A)層とEVOH(B)層との間に酸変性PO(D)層を備える多層構造体を回収して製造する場合、回収前の多層構造体の層厚みを均一に調製しやすくなる傾向となる。酸変性PO(D)は1種単独でも、2種以上併用しても良く、酸変性PO(D)を2種以上含む場合には、それぞれの樹脂の酸価を混合質量比で加重平均した値を酸変性PO(D)の酸価とする。酸変性ポリオレフィンの酸価は、溶剤としてキシレンを用いJIS K 0070:1992に準拠して測定できる。
【0044】
酸変性PO(D)のJIS K 7210:2014に準拠して測定した、190℃、2160g荷重下におけるMFRが0.1~100g/10minであることが好ましい。PO(A)層、EVOH(B)層及び酸変性PO(D)層を備える多層構造体を回収して本発明の樹脂組成物を製造する場合において、酸変性PO(D)のMFRが上記範囲であることで、PO(A)、重合体(C)及びPO(D)との粘度のバランスが良好となる傾向となり、EVOH(B)の分散性が向上し、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が向上する傾向となる。
【0045】
本発明の樹脂組成物における酸変性PO(D)の含有量は、PO(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。また、酸変性PO(D)の含有量は20質量部以下が好ましく、17質量部以下がより好ましい。酸変性PO(D)が上記範囲であると、回収性が良好となる傾向となる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でPO(A)、EVOH(B)、重合体(C)、酸変性PO(D)及び多価金属化合物(G)以外の他の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、PO(A)、EVOH(B)、重合体(C)及び酸変性PO(D)以外の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤を挙げることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。樹脂組成物中における他の添加剤の含有量は、通常50質量%以下であり、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
PO(A)、EVOH(B)、重合体(C)及び酸変性PO(D)以外の樹脂としては、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-チオビス(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオビス(6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0049】
紫外線吸収剤としては、エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0050】
可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N-オレイルパルミトアミド、N-ステアリルエルカアミド、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等が挙げられる。
【0052】
充填剤としては、グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0053】
帯電防止剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物におけるPO(A)、EVOH(B)及び重合体(C)が占める割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上であっても、100質量%であってもよい。また、本発明の樹脂組成物が酸変性PO(D)を含む場合、本発明の樹脂組成物におけるPO(A)、EVOH(B)、重合体(C)及び酸変性PO(D)が占める割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上であっても、100質量%であってもよい。
【0055】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、PO(A)、EVOH(B)及び重合体(C)をドライブレンドして溶融混練する方法;PO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体と、重合体(C)を主成分として含むEVOH回収助剤とを溶融混練する方法;PO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体の少なくとも1層に、重合体(C)を含む多層構造体を溶融混練する方法等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物がPO(D)を含む場合には、上述したドライブレンドの工程でPO(D)を含ませても、多層構造体に接着層としてPO(D)層を含ませてもよい。また、本発明の樹脂組成物が上述したその他成分を含む場合、その他成分は、上述したドライブレンドの工程で混ぜ合わせても、多層構造体を構成する層中に含ませても、多層構造体を構成する層であっても、溶融混練時に添加してもよい。中でも、PO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体と、重合体(C)とを溶融混錬する工程、またはPO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体を構成する少なくとも1層に重合体(C)を含む多層構造体を溶融混錬する工程を含むことが好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物の製造方法が、PO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体を回収する工程を含む場合、重合体(C)は、EVOH回収助剤として機能する。本発明のEVOH回収助剤は、重合体(C)を主成分として含む。ここで、「主成分」とは50質量%超であることを意味し、本発明のEVOH回収助剤における重合体(C)の割合は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上であっても、95質量%以上であっても、100質量%であってもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物がPO(A)層及びEVOH(B)層を備える多層構造体を構成する少なくとも1層に重合体(C)を含む多層構造体を溶融混錬する工程を含む場合、重合体(C)はEVOH(B)層に含まれていることが、多層構造体の層構成を自由に選択できる観点から好ましい。重合体(C)がEVOH(B)層に含まれている場合、EVOH(B)100質量部に対して、重合体(C)を0.1~30質量部含む、自己回収型EVOH樹脂組成物であることが、原料として使用される多層構造体の透明性の観点から好ましい。自己回収型EVOH樹脂組成物を含む多層構造体を溶融混練する際には、新たに回収助剤を添加する工程が不要となるため、容易に回収できる傾向となる。EVOH(B)及び重合体(C)は、屈折率差が小さくなる傾向となり、EVOH(B)及び重合体(C)を含む自己回収型EVOH樹脂組成物は、透明性が高まる傾向となる。一方で、EVOH(B)及び従来の回収助剤を含む樹脂組成物は、透明性が低くなる傾向となる。すなわち、本発明の樹脂組成物の製造の一態様に用いられる自己回収型EVOH樹脂組成物は、回収前の多層構造体において高い透明度を維持でき、かつ、回収時には新たに回収助剤を添加することなく、高い回収性を示すことができる、優れた樹脂組成物であると言える。
【0058】
本発明の自己回収型EVOH樹脂組成物は、EVOH(B)100質量部に対して、重合体(C)を0.5質量部以上含むことが好ましく、1質量部以上含むことがより好ましい。また、重合体(C)を20質量部以下含むことが好ましく、10質量部以下含むことがより好ましく、6質量部以下含むことがさらに好ましく、4質量部以下含む構成であってもよい。本発明の自己回収型EVOH樹脂組成物における重合体(C)の含有量が上記範囲であると回収性が良好となる傾向となる。
【0059】
本発明の自己回収型EVOH樹脂組成物における、EVOH(B)及び重合体(C)が占める割合は、バリア性の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましく、98質量%以上であっても、100質量%であってもよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、原料として、未使用の樹脂のみを用いても構わないが、原料の少なくとも一部として、上述したような多層構造体の回収物を用いることが、廃棄物量の低減及びコスト削減の観点から好ましい。本発明の樹脂組成物の原料における、前記回収物の割合は50質量%以上が好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、回収物の原料として、市場で消費された包装材料(多層構造体)を用いてもよく、その場合、包装材料を裁断し、必要に応じて分別及び洗浄した後に、押出機を用いて溶融混練する工程が一般に採用される。
【0061】
本発明の樹脂組成物の原料として使用される多層構造体としては、特に限定されず、以下の層構成を備える多層構造体が例示される。なお、下記例示においてPO(A)層を「A」、EVOH(B)層を「B」、酸変性PO(D)層を「D」、本発明の樹脂組成物層を「E」及び直接積層していることを「/」で表現する。なお、下記の多層構造体において少なくとも1層に重合体(C)が含まれていることが好ましい。
3層 A/D/B、A/B/A
5層 A/D/B/D/A、A/D/B/D/E
6層 A/D/B/D/E/A、E/A/D/B/D/A、A/E/D/B/D/E、E/A/D/B/D/E
7層 A/E/D/B/D/E/A、A/E/D/B/D/A/E、E/A/D/B/D/A/E
【0062】
前記多層構造体において、本発明の樹脂組成物層を有していることが、廃棄物量低減及びコスト削減の観点から好ましい。また、層間の接着性が向上する観点から、EVOH(B)層と酸変性PO(D)層とが接触していることが好ましい。
【0063】
前記多層構造体の全体厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。前記全体厚みは、50~8000μmが好適である。全体厚みが50μm以上であることにより、剛性の高い多層構造体が得られる。全体厚みが500μm以上であることがより好適である。一方、全体厚みが8000μm以下であることにより、フレキシブルな多層構造体が得られる。全体厚みが7000μm以下であることがより好適である。
【0064】
前記多層構造体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、一般のポリオレフィンの分野において実施されている成形方法、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等を挙げることができる。なかでも、共押出成形及び共射出成形が好適であり、共押出成形がより好適である。
【0065】
(多層構造体)
本発明の多層構造体は、本発明の樹脂組成物層、PO(A)層、EVOH(B)層及び酸変性PO(D)層を含む多層構造体である。本発明の多層構造体における、好適な層構成及び製造方法については、上述の原料として使用される多層構造体において、本発明の樹脂組成物層を有する例示として記載したものが挙げられる。また、本発明の多層構造体は本発明の効果を阻害しない範囲で、PO(A)層、EVOH(B)層及び酸変性PO(D)層以外の他の樹脂層を有していてもよい。前記他の樹脂層としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体層、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル層、ポリエステルエラストマー層、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド層、ポリスチレン層、ポリ塩化ビニル層、ポリ塩化ビニリデン層、アクリル系樹脂層、ビニルエステル系樹脂層、ポリウレタン層、ポリカーボネート層等が挙げられる。
【0066】
(成形品)
本発明の樹脂組成物を有する成形品は、溶融成形を長時間連続して行った場合でもスクリューやダイへ付着する劣化物の量が少ない。なおかつ樹脂組成物を用いることにより耐衝撃性及び外観に優れた成形品が得られる。当該成形品は、食品包装容器、医薬品包装容器、工業薬品包装容器、農薬包装容器等の各種包装容器の材料として好適に使用できる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0068】
<評価方法>
(1)メルトフローレート(MFR)
実施例及び比較例で使用する樹脂について、JIS K 7210:2014に準じて、メルトインデクサを用い、温度230℃、荷重2160gの条件下で、試料の流出速度(g/10min)を測定した。
【0069】
(2)回収性評価(ダイビルドアップ、スクリュービルドアップ、回収組成物の色相)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレット6000gを、下記条件にて、溶融混練を行い、再度樹脂組成物ペレットを作製する操作を4回繰り返した。4回目の溶融混練開始から15分間後に、ダイに蓄積された付着樹脂を採取、秤量し、測定値の合計をダイビルドアップ(目ヤニ)量とした。次に、1kgの高密度ポリエチレンでパージした後、スクリューを取り外してスクリューに蓄積された付着樹脂を採取・秤量することでスクリュービルドアップ(ゲル化した樹脂)量を求めた。また、HunterLab社製分光測色計「LabScan XE Sensor」を用い、4回目の溶融混練後に得られた樹脂組成物ペレット(回収品)のYI(イエローインデックス)値を測定した。なお、ダイビルドアップ量は樹脂組成物中の成分の相溶性の指標となり、ダイビルドアップ量が少ない程、相溶性が優れ、相溶性不足に起因する問題が起こりにくくなる。スクリュービルドアップは樹脂組成物中の成分の粘度安定性の指標でありスクリュービルドアップが少ないほど粘度安定性に優れることを示している。また、YI値は対象物の黄色度(黄色み)を表す指標であり、YI値が高いほど黄色度が強く、一方、YI値が低いほど黄色度が弱く、着色が少ないことを表す。
押出機:株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機(2D30W2)
スクリュー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/230/230/230/230℃
吐出速度:6kg/時間
【0070】
(3)単層フィルムの衝撃強度及び外観評価
上記回収性評価にて得られた4回目の溶融混練後の樹脂組成物ペレットを、株式会社東洋精機製作所製20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.5、スクリュー:フルフライト)を用いて、以下の条件にて単層製膜を行い、単層フィルムを得た。
(押出条件)
シリンダー温度:供給部190℃、圧縮部230℃、計量部230℃
ダイ温度:230℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
フィルム厚み:50μm
(衝撃強度測定)
得られた50μmの単層フィルムを用いてフィルムインパクトテスター(株式会社東洋精機製作所製)により衝撃強度を測定した。
(フィルムの外観評価)
また、得られた50μm単層フィルムの外観を以下の基準で評価した。
A:フィルムに異常は観察されなかった。
B:フィルムにスジが観察された。
C:フィルムにスジと顕著な透明性の低下が観察された。
【0071】
(4)透明性評価
実施例及び比較例で得られた厚み20μmの単層フィルムについて、JIS K7375に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR-100型」)を使用しヘイズを測定した。
【0072】
(5)ガスバリア性評価
実施例及び比較例で得られた厚み20μmの単層フィルムについて、20℃、65%RHの条件下で7日間調湿後、JIS K 7126-2(等圧法)に準じ、20℃、65%RHの条件下で酸素透過速度の測定(Mocon社製「OX-TORAN MODEL 2/21」)を行った。
【0073】
合成例1
[芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体C-1の製造]
窒素で置換した攪拌機付きの反応器中に、塩化メチレンとメチルシクロヘキセンとからなる混合溶媒、並びに四塩化チタン及び1,4-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼンとからなる重合開始剤を仕込み、-65℃に冷却した後に、イソブチレンを仕込んで4時間重合させた。さらに、-65℃の冷却下でジメチルアセトアミドおよびスチレンを添加し、4時間重合させた。得られた反応混合物をメタノールで沈殿させて、スチレン含量20%、ハロゲン含有量1.0%、MFR10g/10分(230℃、荷重2160g)のスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体を製造した。各仕込み量は上記各物性が得られるように調整した。得られた重合体(C-1)のMFRはJIS K 7210:2014に準じて、メルトインデクサを用い、温度230℃、荷重2160gの条件下で、試料の流出速度(g/10min)を測定した。ブロック共重合体中のスチレン単位からなる重合体ブロックの含有量は1H-NMRにより求めた。ハロゲン含有量は得られた重合体を燃焼・吸収装置(三菱アナリテック社製AQF-2100H)にて前処理し、得られた処理液をイオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス製ICS-2000)を用いて測定した。
【0074】
合成例2、3、4
[芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体C-2、C-3、C-4の製造]
スチレン、イソブチレンおよび1,4-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼンの仕込み割合を変更し、下記記載の各物性が得られるように変更した以外は合成例1と同様の方法を用いて重合体(C-2)~(C-4)をそれぞれ製造した。
【0075】
<実施例及び比較例で使用した化合物>
PO(A)
・A-1:ノバテック(商標)PP EA7AD (株式会社日本ポリプロピレン製、ポリプロピレン、MFR1.4g/10分(230℃、荷重2160g))
EVOH(B)
・B1-1:エチレン単位含有量27モル%、ケン化度99.9モル%、MFR8.0g/10分(230℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体
・B2-1:エチレン単位含有量44モル%、ケン化度99.9モル%、MFR23g/10分(230℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体
芳香族ビニル化合物とオレフィンとのブロック共重合体(C)
・C-1:スチレン含有量20質量%、ハロゲン含有量1.0質量%、MFR10g/10分(230℃、荷重2160g)のスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体
・C-2:スチレン含有量20質量%、ハロゲン含有量1.5質量%、MFR20g/10分(230℃、荷重2160g)のスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体
・C-3:スチレン含有量20質量%、ハロゲン含有量0.7質量%、MFR5g/10分(230℃、荷重2160g)のスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体
・C-4:スチレン含有量20質量%、ハロゲン含有量0.5質量%、MFR0.6g/10分(230℃、荷重2160g)のスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体
・C-5:タフテック(商標)M1913(株式会社旭化成製、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン含有量30質量%、無水マレイン酸1.8質量%、MFR5g/10分(230℃、荷重2160g))
・C-6:タフテック(商標)H1041(株式会社旭化成製、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン含有量30質量%、MFR5g/10分(230℃、荷重2160g))
酸変性ポリオレフィン(D)
・D-1:アドマー(商標)QF500 (株式会社三井化学製、酸変性ポリプロピレン、MFR3.0g/10分(230℃、荷重2160g)、酸価1.0mgKOH/g))
多価金属化合物(G)
・G-1:水酸化マグネシウム
・G-2:酢酸マグネシウム
【0076】
[実施例1]
PO(A-1)(ノバテック(商標)EA7AD)、EVOH(B1-1)(エチレン単位含有量27モル%EVOH)及び共重合体(C-1)を質量比(C/B/A)が1/10/100になるようにドライブレンドし、2軸押出機を用いて下記溶融混練条件にて樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットについて、上記評価方法(2)及び(3)の方法に従って、回収性評価並びに単層フィルムの衝撃強度及び外観評価を行った。結果を表1に示す。
<ペレット作製条件>
押出機:株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機(2D30W2) スクリュー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/230/230/230/230℃
吐出速度:6kg/時間
【0077】
[実施例2~14、比較例1~3、5]
PO(A)、EVOH(B1)、EVOH(B2)、重合体(C)、酸変性ポリオレフィン(D)及び多価金属化合物(G)の種類並びに各成分の質量比を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを作製し評価した。なお、EVOH(B2)、酸変性ポリオレフィン(D)及び多価金属化合物(G)は、2軸押出機を用いた溶融混練前のドライブレンドによって樹脂組成物中に含有させた。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例15]
PO(A-1)(ノバテック(商標)EA7AD)、EVOH(B1-1)(エチレン単位含有量27モル%EVOH)及び酸変性PO(D-1)(アドマー(商標)QF500)を用いて、多層フィルム[層構成:PO(A-1)/酸変性PO(D-1)/EVOH(B1-1)/酸変性PO(D-1)/PO(A-1)、厚み(μm):80/8/16/8/80]を作製した。得られた多層フィルムを粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物に回収助剤として共重合体(C-1)を質量比(C/A)が1/100になるようにドライブレンドし、かかるドライブレンド物を樹脂組成物ペレットとして用い、上記評価方法(2)及び(3)の方法に従って、回収性評価並びに単層フィルムの衝撃強度及び外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
<多層フィルムの作製条件>
・PO(A-1)
押出機:32mmφ押出機 GT-32-A(プラスチック工学研究所社製)
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/230/230/230℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
・EVOH(B1-1)
押出機:20mmφ押出機 ラボ機ME型CO-EXT(株式会社東洋精機製作所製)
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/210/220/230℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
・酸変性ポリオレフィン(D―1)
押出機:20mmφ押出機 SZW20GT-20MG-STD(株式会社テクノベル製)
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/230/230/230℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
【0080】
[実施例16]
EVOH(B1-1)(エチレン単位含有量27モル%EVOH)と共重合体(C-1)を質量比(C/B)が5/95になるように2軸押出機を用いて、下記混練条件にて溶融ブレンドし、混合物ペレットを得た。EVOH(B1-1)の代わりに、得られた混合物ペレットを用いた以外は、実施例15と同様に多層フィルム[層構成:PO(A-1)/酸変性PO(D-1)/混合物/酸変性PO(D-1)/PO(A-1)、厚み(μm):80/8/17/8/80]を作製した。得られた多層フィルムを粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物を樹脂組成物ペレットとして用い、上記評価方法(2)及び(3)の方法に従って、回収性評価並びに単層フィルムの衝撃強度及び外観評価を行った。結果を表1に示す。
<混合物ペレットの作製条件>
押出機:株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機 (2D30W2) スクリュー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/220/220/220/220℃
吐出速度:6kg/時間
【0081】
得られた混合ペレットを用い、下記条件にて厚み20μmの単層フィルムを作製し、得られた単層フィルムについて、上記評価方法(4)及び(5)に従って、透明性及びガスバリア性の評価を行った。得られた単層フィルムのヘイズは0.4%と良好な値を示し、酸素透過度は0.2cc・20μm/m2・day・atmと良好なバリア性を示した。
<単層フィルム製膜条件>
押出機:株式会社東洋精機製作所製20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.5、スクリュー:フルフライト)
シリンダー温度:供給部190℃、圧縮部220℃、計量部220℃
ダイ温度:220℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
フィルム厚み:20μm
【0082】
[実施例17]
EVOH(B1-1)(エチレン単位含有量27モル%EVOH)、EVOH(B2-1)(エチレン単位含有量44モル%EVOH)と共重合体(C-1)を質量比(C/B2/B1)が5/19/86になるように2軸押出機を用いて、下記混練条件にて溶融ブレンドし、混合物ペレットを得た。EVOH(B1-1)の代わりに、得られた混合物ペレットを用いた以外は、実施例15と同様に多層フィルム[層構成:PO(A-1)/酸変性PO(D-1)/混合物/酸変性PO(D-1)/PO(A-1)、厚み(μm):80/8/17/8/80]を作製した。得られた多層フィルムを粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物を樹脂組成物ペレットとして用い、上記評価方法(2)及び(3)の方法に従って、回収性評価並びに単層フィルムの衝撃強度及び外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<混合物ペレットの作製条件>
押出機:株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機 (2D30W2) スクリュー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/220/220/220/220℃
吐出速度:6kg/時間
【0084】
得られた混合ペレットについて、実施例16と同様の方法で単層フィルムを作製し、評価した。単層フィルムのヘイズは、0.4%と良好な値を示し、酸素透過度は0.3cc・20μm/m2・day・atmと、実施例16の単層フィルムと比べると多少劣るものの、良好なガスバリア性を維持した。
【0085】
[比較例4]
EVOH(B1-1)(エチレン単位含有量27モル%EVOH)と酸変性PO(D-1)(アドマー(商標)QF500)を質量比(D/B)が5/95になるように2軸押出機を用いて下記混練条件にて溶融ブレンドし、混合物ペレットを得た。実施例15と同様に多層フィルム[層構成:PO(A-1)/酸変性PO(D-1)/混合物/酸変性PO(D-1)/PO(A-1)、厚み(μm):80/8/17/8/80]を作製した。得られた多層フィルムを粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物を樹脂組成物ペレットとして用い、上記評価方法(2)及び(3)の方法に従って、回収性評価並びに単層フィルムの衝撃強度及び外観評価を行った。結果を表1に示す。
<混合物ペレットの作製条件>
押出機:株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機 (2D30W2) スクリュー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/220/220/220/220℃
吐出速度:6kg/時間
【0086】
得られた混合ペレットについて、実施例16と同様の方法で単層フィルムを作製し、評価した。単層フィルムのヘイズは1.3%と悪い値を示し、酸素透過度は0.2cc・20μm/m2・day・atmと良好なガスバリア性を示した。
【0087】