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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230829BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230829BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230829BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20230829BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J175/04
C09D11/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022000232
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2020081932の分割
【原出願日】2014-01-27
(65)【公開番号】P2022033262
(43)【公開日】2022-02-28
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064079(JP,A)
【文献】特開2009-215528(JP,A)
【文献】特開2012-242473(JP,A)
【文献】特開2012-196953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、基材の片面上に積層した粘着フィルムにおいて、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合せた70~95重量部と、
(B)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合せた5~30重量部と、を合計した100重量部に対して、他の共重合性モノマーとして、
(C)水酸基及びカルボキシル基を有しておらず且つ窒素原子を有するビニルモノマーの少なくとも1種以上を合せた2~50重量部と、
(D)ヒドロキシル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上を合せた0.1~10重量部とを、カルボキシル基を有する共重合性ビニルモノマーを含有しないで共重合させた重量平均分子量20万~200万の共重合体であり、
前記架橋剤が、3官能イソシアネート化合物であり、
前記粘着フィルムは、
厚さが20μmの時の、貼り合わせた初期粘着力が3.0(N/25mm)以上であり、
前記初期粘着力が、下記の粘着力の測定方法により測定された値であり、
前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であり、
前記粘着剤層の表面抵抗率が5.0×10+10Ω/□以下である
ことを特徴とする粘着フィルム。
[粘着力の測定方法]
厚さ180μmの偏光板(フィルム)の片面に、測定対象とする粘着剤層を転写して粘着フィルムを得、得られた粘着フィルムをソーダライムガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせて50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理し、その後23℃×50%RHの雰囲気下に戻して1時間経過後の前記粘着フィルムの剥離強度を、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠し、引張試験機によって180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着力とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の層間の貼合などに用いられる粘着剤層、及び粘着フィルムに関する。さらに詳細には、厚さ1μm~20μmの薄膜にも拘わらず、高粘着力、高密着性の性能を有する粘着剤層、及びそれを用いた粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を介して偏光板、位相差板などの光学部材を液晶セルなどの被着体に貼合するため、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献1~2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基を有するモノマー、及び窒素原子を有するビニルモノマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
また、粘着剤層の屈折率を高めるために、種々の工夫をした粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献3~8参照)。
特許文献3には、芳香族環を有し、屈折率1.51~1.75のタッキファイヤーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献4には、芳香族環を有するアクリル酸変性モノマーの共重合性ポリマーを含む粘着剤組成物を含有する粘着シートが記載されている。
特許文献5には、芳香族環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献6には、アクリル系樹脂と、エチレン性不飽和基を1つ有する芳香族化合物を含有する粘着剤組成物が硬化されてなる粘着剤が記載されている。
特許文献7には、芳香族モノマーを含有するアクリル系の粘着剤を介して、位相差フィルム及び複屈折板を互いに固着してなる光学部品が記載されている。
特許文献8には、芳香族ジイソシアネートと、芳香族ポリエステルジオールを反応させてなるウレタン樹脂を含む粘着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-177022号公報
【文献】特開2012-201734号公報
【文献】特開2007-084762号公報
【文献】特開2011-153169号公報
【文献】特開2012-167188号公報
【文献】特開2012-021148号公報
【文献】特開2006-293281号公報
【文献】特開2009-091522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年において、光学部材の層間を貼合するのに用いる粘着フィルムに対して要求されている事項は、光学部材の薄膜化を図るために、粘着剤層の厚さを20μm以下に薄くした粘着フィルムとすることである。
一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例していることから、粘着剤層の厚さを薄くすると、それに伴って粘着力が低下してしまう。
【0005】
しかし、近年求められている粘着フィルムは、粘着剤層の厚さを薄くしても、従来の粘着フィルム(粘着剤層の厚さが約30μmと厚い)と同等の粘着力を有しており、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長時間放置した後の耐久性についても、従来の粘着フィルムと同等以上の性能を有することが求められている。
また、粘着剤層の厚さを薄くできること、及び、エージング処理(恒温で養生を行うこと)を施す必要がない粘着剤層を形成できることから、粘着フィルムの基材を省いた粘着剤層のみからなる、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の部材構成をした、NCF(Non Carrier Film)の形態とすることが求められている。
【0006】
また、従来の粘着フィルムでは、被着体に粘着フィルムを貼り合せた後に、エージング処理が施されるために、被着体と粘着剤層との密着性の向上を図ることができた。
しかしながら、NCFの形態をした粘着フィルムは、すでに粘着剤層のエージングを終了させていることから、被着体と粘着剤層との密着力が不足する。そのため、被着体の表面に対して、コロナ処理などの表面処理をする必要があるという問題があった。
これらの要求事項および問題を克服した粘着フィルムが、必要とされている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、厚さ1μm~20μmの薄膜にも拘わらず、高粘着力、高密着性の性能を有する粘着剤層、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層において、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を主成分のモノマーとし、他の共重合性モノマーとして、共重合可能な窒素原子を有するビニルモノマーの少なくとも1種以上を含有させて、共重合及び架橋させることにより、強靭な粘着力と高密着性の性能を併せて有する粘着剤層とすることを技術思想としている。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層において、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合せた70~95重量部と、(B)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合せた5~30重量部と、を合計した100重量部に対して、他の共重合性モノマーとして、(C)水酸基及びカルボキシル基を有しておらず且つ窒素原子を有するビニルモノマーの少なくとも1種以上を合せた2~50重量部と、(D)ヒドロキシル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上を合せた0.1~10重量部とを、カルボキシル基を有する共重合性ビニルモノマーを含有しないで共重合させた重量平均分子量20万~200万の共重合体であり、前記(C)水酸基及びカルボキシル基を有しておらず且つ窒素原子を有するビニルモノマーが、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタムからなる群から選択した少なくとも1種以上の化合物であり、前記架橋剤が、3官能イソシアネート化合物であり、前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることを特徴とする粘着剤層を提供する。
【0010】
また、前記粘着剤層の厚さが20μmの時の、貼り合わせた初期粘着力が3.0(N/25mm)以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記粘着剤組成物が、帯電防止剤を含有してなることが好ましい。
【0012】
また、前記帯電防止剤が、融点25~50℃のイオン性化合物であることが好ましい。
【0013】
また、前記粘着剤組成物に、融点25~50℃のイオン性化合物を0.1~5.0重量部含有し、粘着剤層の表面抵抗率が5.0×10+10Ω/□以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記粘着剤層が、離型フィルムの片面に形成されてなり、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板とディスプレイパネルの貼り合せに用いられるフィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の要求事項および問題を克服して、厚さ1μm~20μmの薄膜にも拘わらず、高粘着力、高密着性の性能を有する粘着剤層、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層において、前記アクリル系ポリマーが、主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上とを含有し、他の共重合性モノマーとして、窒素原子を有するビニルモノマーの少なくとも1種以上と、ヒドロキシル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上とを含有する共重合体であり、前記粘着剤組成物を架橋する架橋剤が3官能イソシアネート化合物であり、前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、厚さが20μmの時の、貼り合わせた初期粘着力が3.0(N/25mm)以上であり、屈折率が1.47~1.50であることを特徴とする。
本明細書において、アクリル系ポリマー(共重合体)がモノマーを含有する(含む)趣旨の記載は、主にモノマーがアクリル系ポリマー(共重合体)中に共重合されることを意味するものの、原料モノマーの一部がアクリル系ポリマー(共重合体)中に未反応のまま残存することを排除するものではない。
【0022】
アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、これと(B)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを合わせた100重量部に対する割合が、70~95重量部であることが好ましい。
【0023】
芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、エチレングリコール o-フェニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール o-フェニルフェニルエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。屈折率が高い粘着剤層を得るためには、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。
これらの芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、主成分のモノマーであるアルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと混合することにより、得られる粘着剤層の屈折率を上昇させて調整でき、光学部材間の屈折率差を少なくして、全反射を低減させることにより全光線透過率を向上させることができる。
また、本発明に係わる粘着剤層において、(B)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、前記(A)と前記(B)とを合わせた主成分の(メタ)アクリレートモノマー100重量部の内、5~30重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0024】
窒素原子を有するビニルモノマーとしては、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの環状窒素ビニル化合物、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどの少なくとも1種以上が挙げられる。
【0025】
前記窒素原子を有するビニルモノマーとしては、後述する(D)の化合物と区別可能とするため、水酸基を有しないものが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を有しないものがより好ましい。このようなモノマーとしては、上に例示したモノマー、例えば、N,N-ジアルキル置換アミノ基やN,N-ジアルキル置換アミド基を有するアクリル系モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのN-ビニル置換ラクタム類;N-(メタ)アクリロイルモルホリンなどのN-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0026】
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物の前記アクリル系ポリマーに含有させる窒素原子を有するビニルモノマーは、粘着剤層に対して必要な粘着力及び耐久性を付与させることができる。本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物の前記アクリル系ポリマーに含有させる窒素原子を有するビニルモノマーは、前記(A)と前記(B)とを合わせた主成分の(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、2~50重量部であることが好ましい。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物の前記アクリル系ポリマーに含有させる窒素原子を有するビニルモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタムなどが特に好適に使用される。
【0027】
ヒドロキシル基を有する共重合性ビニルモノマー(ヒドロキシル基を有するモノマー)としては、例えば、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物の前記アクリル系ポリマーに含有させるヒドロキシル基を有するモノマーは、得られる粘着剤層が透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性に影響を与えるとされる、カルボキシル基を有するモノマーの含有量を減らすための共重合性モノマーとして使用できる。そのため、ヒドロキシル基を有するモノマーは、粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物の前記アクリル系ポリマーに含有させるヒドロキシル基を有するモノマーは、前記(A)と前記(B)とを合わせた主成分の(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましい。
【0028】
本発明の粘着剤層に用いる粘着剤組成物の共重合体は、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合わせた70~95重量部と、(B)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を合わせた5~30重量部とを合わせた100重量部に対して、(C)窒素原子を有するビニルモノマーの1種以上を2~50重量部と、(D)ヒドロキシル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種0.1~10重量部とからなることが好ましい。
また、前記アクリル系ポリマーが、そのモノマーとして、カルボキシル基を有する共重合性ビニルモノマーを含有していないことが好ましい。ポリマーがカルボキシル基を有する場合、酸によりITO等の被着体を腐食させるおそれがある。
【0029】
共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。共重合体の重量平均分子量は、20万~200万であることが好ましい。
前記共重合体は、アクリル系ポリマーであることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーや(メタ)アクリルアミド類などのアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。
前記粘着剤層のゲル分率が、50~70%であることが好ましい。
【0030】
前記粘着剤組成物は、上記の共重合体に、架橋剤や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値などの特性を調整することができる。
架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などの(E)3官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0031】
3官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体からなる、少なくとも一種以上が好ましい。
【0032】
3官能イソシアネート化合物を用いて共重合体を架橋する場合、共重合体が、架橋剤と架橋反応可能な官能基(特に、ヒドロキシル基)を有することが好ましく、また、これらの官能基を側鎖に有するモノマーを含有することが好ましい。また、粘着剤組成物が、架橋剤として、(E)3官能イソシアネート化合物0.001~1重量部を、含有することが好ましい。なお、重量部の基準は、前記共重合体における(A)から(D)と同じである。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤は、常温(例えば25℃)で固体であることが好ましく、より具体的には、帯電防止剤は、融点が25~50℃のイオン性化合物である。帯電防止剤は、アクリロイル基を有する4級アンモニウム塩型イオン性化合物であってもよい。
これらの帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル系ポリマーとの親和性は高いと推測される。
帯電防止性能を付与した場合、前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗率が5.0×10+10Ω/□以下であることが好ましい。
【0034】
融点が25~50℃のイオン性化合物である帯電防止剤としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が25~50℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1-アルキルピリジニウム(2~6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオンや、1,3-ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0035】
前記アクリロイル基を有する4級アンモニウム塩型イオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム〔R-C2n-OCOCQ=CH、ただし、Q=HまたはCH、R=アルキル〕等の(メタ)アクリロイル基を有する4級アンモニウムであり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、有機スルホン酸塩(RSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )、フッ素原子を有するイミド塩(R )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。フッ素原子を有するイミド塩(R )のRとしては、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基等のパーフルオロアルカンスルホニル基やフルオロスルホニル基が挙げられる。フッ素原子を有するイミド塩としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩〔(FSO〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩〔(CFSO〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩〔(CSO〕等のビススルホニルイミド塩が挙げられる。
【0036】
融点が25~50℃のイオン性化合物である帯電防止剤は、特に限定されるものでない。ピリジニウムカチオンを有する、融点が25~50℃のイオン性化合物の具体例としては、1-オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1-ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、3-メチル-1-ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1-ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4-メチル-1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩等が挙げられる。
また、前記アクリロイル基を有する4級アンモニウム塩型イオン性化合物の具体例としては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート 六フッ化リン酸メチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・PF 、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドメチル塩〔(CH(CHOCOCQ=CH・(CFSO、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート ビス(フルオロスルホニル)イミドメチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・(FSO、ただし、Q=HまたはCH〕等が挙げられる。
また、融点が25~50℃のイオン性化合物は、前記(A)と前記(B)とを合わせた主成分の(メタ)アクリレートモノマーの100重量部に対して、0.1~5.0重量部の割合で含有されることが好ましい。
【0037】
本発明の粘着剤組成物は、ディスプレイパネルなどに対しての光学部材の貼り合わせ用として使用する場合、シランカップリング剤を添加することが好ましい。添加するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種類、又は2種類以上を混合して用いることができ、添加量としては、粘着剤組成物の100重量部に対し、通常0.001~5重量部を添加するのが好ましい。
【0038】
その他の任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0039】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。
光学部材の層間の貼合などに用いる場合、厚さが薄い粘着剤層であることが望ましく、前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであることが好ましい。また、一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例しているが、厚さが20μmの時の、貼り合わせた初期粘着力が3.0(N/25mm)以上であることが好ましい。
本発明の粘着剤層を、光学部材として、例えば偏光板(偏光フィルム)に貼合する場合、偏光板に対する粘着力が、上述の下限値以上であることが望ましい。一般に、偏光フィルムは、ヨウ素を吸着したポリビニルアルコール(PVA)のフィルムを主体にし、その表面に、けん化処理したトリアセチルセルロース(TAC)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の保護層を設けたものがある。そこで、本発明の粘着剤層は、けん化処理したトリアセチルセルロース(TAC)等の被着体に対する粘着力が、上述の下限値以上であることが望ましい。
【0040】
本発明に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0041】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0042】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0043】
本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルの貼り合せに用いることができる。ディスプレイパネルとしては液晶表示装置や有機EL等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【実施例
【0044】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0045】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート90重量部、ベンジルアクリレート10重量部、N-ビニルピロリドン10重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート2.5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1を得た。アクリル共重合体の一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2~5及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)~(D)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3に用いるアクリル共重合体溶液を得た。なお、特に測定結果を示さないが、実施例2~5及び比較例1~3のアクリル共重合体溶液に含まれる共重合体の重量平均分子量は、20万~200万の範囲内である。
【0046】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル共重合体溶液1に対して、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)0.5重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、剥離フィルムの片面上に有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(E)、(F)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~5及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0047】
【表1】
【0048】
表1では、(A)群と(B)群との合計を100重量部として求めた、(C)群から(F)群までの添加割合として、重量部の数値を括弧で囲んで示す。ただし、実施例3では(A)群と(B)群との合計を110重量部とし、実施例5では(A)群と(B)群との合計を90重量部とし、比較例2では(A)群と(C)群との合計を100重量部としている。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同L-45は日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを意味し、TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。
【0049】
【表2】
【0050】
<試験方法及び評価>
実施例1~5及び比較例1~3における粘着フィルムから剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させ、偏光板(フィルム)の片面に粘着剤層を転写した。
【0051】
<粘着力の測定方法>
厚さ180μmの偏光板(フィルム)の片面に粘着剤層を転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。
粘着フィルムをソーダライムガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過後の粘着フィルムの剥離強度を引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着剤層の粘着力とした。
【0052】
<ゲル分率>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤質量(g)×100
【0053】
<密着性の試験方法>
粘着力を測定した後の試料である粘着フィルムの粘着剤層を目視で確認し、基材層の偏光板(フィルム)からの脱落状態で密着性を判断した。
○・・基材層から粘着剤層が全く脱落していない。
△・・基材層から粘着剤層が一部浮き上がり脱落している。
×・・基材層から粘着剤層が脱落して、被着体のガラスに転着している。
【0054】
<リワーク性>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法でソーダライムガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、70℃、DRYの雰囲気下に24時間放置後、室温に取り出し、粘着フィルムをガラス板から剥がした際の、被着体表面の糊残りを目視にて確認した。
○・・糊残りが全く確認されない。
△・・糊残りが僅かに確認された。
×・・糊残りが明確に確認された。
【0055】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法でソーダライムガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、60℃×90%RHの雰囲気下に250時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着フィルムの状態を目視で観察して耐久性を判断した。
○・・粘着フィルムの剥がれ及び発泡が全くない。
△・・粘着フィルムの一部に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・粘着フィルムの全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0056】
<屈折率の測定方法>
23℃の粘着剤層の屈折率を、アッベ式屈折計(メーカ名:ERMA、型式:ER-2S)で測定する。
【0057】
<表面抵抗率の測定方法>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0058】
表3に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例1~5の粘着フィルムは、厚さ20μmの粘着剤層の初期粘着力が3.0N/25mm以上であり、粘着剤層の屈折率が1.47~1.50の範囲内であり、密着性、リワーク性、及び耐久性にも優れていた。すなわち、実施例1~5の粘着フィルムでは、要求事項および問題を克服することができた。また、実施例3~5の粘着フィルムは、帯電防止性能を有するのに十分な、5.0×10+10Ω/□以下の表面抵抗率を有する。
【0061】
比較例1の粘着フィルムは、ゲル分率が高く、厚さ20μmの粘着剤層の初期粘着力が弱い。また、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含まないため、粘着剤層の屈折率が低い。また、密着性、及び耐久性にも劣っていた。
比較例2の粘着フィルムは、ゲル分率が低く、厚さ5μmの粘着剤層の粘着力が弱い。また、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含まないため、粘着剤層の屈折率が低い。また、密着性、リワーク性、及び耐久性にも、劣っていた。
比較例3の粘着フィルムは、ゲル分率が低く、リワーク性、及び耐久性にも劣っていた。
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、従来の要求事項および問題を克服することができなかった。