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特許7339412積層造形用Ni系合金粉末および積層造形体
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  • 特許-積層造形用Ni系合金粉末および積層造形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】積層造形用Ni系合金粉末および積層造形体
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230829BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20230829BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230829BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20230829BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20230829BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20230829BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230829BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B22F1/00 M
B22F10/20
B22F10/34
C22C1/04 B
C22C19/05 B
C22C30/00
C22C38/00 302Z
C22C38/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022165787
(22)【出願日】2022-10-14
(65)【公開番号】P2023064068
(43)【公開日】2023-05-10
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2021174187
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由夏
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 透
(72)【発明者】
【氏名】前田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】相川 芳和
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/187368(WO,A1)
【文献】特表2020-528967(JP,A)
【文献】国際公開第2021/066142(WO,A1)
【文献】特開2006-312779(JP,A)
【文献】特開2019-089334(JP,A)
【文献】特開2021-011615(JP,A)
【文献】特表2012-517524(JP,A)
【文献】CHEN, W. et al.,Grain Boundary Segregation of Boron in INCONEL 718,METALLURGICAL AND MATERIALS TRANSACTIONS A,スイス,Springer,1998年07月31日,Vol.29A,PP.1947-1954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 1/00- 1/10
C22C 19/00-19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
Ni:40.00~70.00%、
Cr:15.00~25.00%、
Mo:0.10~12.00%、
Nb:3.00~7.00%、
Al:0.10~1.50%、
Ti:0.10~2.00%、
Si:0.01~0.40%、
C:0.001~0.15%、
B:0.0002~0.0016%を含有し、
S:≦0.002%であって、
W、Coの1種以上の合計量W+Co:0~7.00%であって、
残部がFe及び不可避的不純物からなる合金粉末が、
さらに以下の関係式A1の値が200以上でA2の値が200以下であって、平均粒径(D 50 )が10~100μmである積層造形用のNi系合金粉末。

A1=5.1C+0.3Cr+3.5Mo+2.9W+0.4Co+19.0Nb+9.4Al+33.0Ti+120.1B+48.8
A2=270.4C+0.5Cr+0.6Mo+0.3W+0.1Co+10.0Nb+30.5Al+15.8Ti+2009.1B+4094.3S+62.1
なお、関係式の右辺の元素記号には質量%の値を代入する。
【請求項2】
請求項1に記載のNi系合金粉末を用いて造形された積層造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属積層造形に適したNi系合金粉末およびこの粉末を用いた積層造形体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属からなる造形物の製作に、3Dプリンターが使用されはじめている。この3Dプリンターとは、積層造形法によって造形物が製作するものであり、金属積層造形法の代表的な方式にはパウダーベッド方式(粉末床溶融結合方式)やメタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)などがある。
【0003】
パウダーベッド方式では、レーザービームまたは電子ビームの照射によって、敷き詰められた粉末のうち照射された部位が溶融し凝固する。この溶融と凝固により、粉末粒子同士が結合する。照射は、金属粉末の一部に選択的になされ、照射がなされなかった部分は、溶融せず、照射がなされた部分のみにおいて、結合層が形成される。
【0004】
形成された結合層の上に、さらに新しい金属粉末が敷き詰められ、それらの金属粉末にレーザービームまたは電子ビームの照射が行われる。すると、照射により、金属粒子が溶融、凝固し、新たな結合層が形成される。また、新たな結合層は、既存の結合層とも結合される。
【0005】
照射による溶融・凝固が順次繰り返されていくことにより、結合層の集合体が徐々に成長する。この成長により、三次元形状を有する造形体が得られる。こうした積層造形法を用いると、複雑な形状の造形物が、容易に得られる。
【0006】
また、メタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)による積層造形法としては、例えば、金属粉末からなる粉末層に光ビームを照射して焼結層を形成し、三次元形状造形物を得る金属光造形用金属粉末として、「鉄系粉末」と、「ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、及び黒鉛から成る群から選ばれる1種類以上の粉末」が混合された粉末の製造方法が提案されている。(特許文献1参照。)。
【0007】
そして、粉末焼結積層法で用いられる粉末のひとつに、Ni基超合金粉末がある。例えば特許文献2に開示されているように、Ni基超合金は、Ti、Alなどを添加して熱処理により金属間化合物を析出させることで耐熱性に優れることから、宇宙・航空機分野のエンジン部品素材などの用途に、鋳造材、鍛造材の形で使用されているが、加工性が悪いことから、ニアネットシェイプで部品を作製できる粉末焼結積層法の適用が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-81840号公報
【文献】国際公開第WO2011/149101号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
Ni系合金粉末の部品を一般の鋳造、鍛造プロセスを用いて母材へと作製した場合には、割れは発生しないとしても、Ni系合金粉末を積層造形法における急速溶融急冷凝固プロセスで部品を造形した場合には、部品内部に割れが生じやすいものとなる。凝固中に不純物成分偏析による濃化が生じ一部分に液相を生じるため、ここが再凝固するときに収縮し割れが生じるからである。
【0010】
このように、Ni系合金粉末は、粉末積層造形法などの急速溶融急冷凝固プロセスを適用すると高合金組成かつ耐熱性向上のための金属間化合物の析出により、内部に微小なクラックが生じ、密度、強度が低下するという問題がある。
【0011】
Ni系合金粉末に割れが生じやすい理由としての凝固割れは、たとえば、析出強化のためにNbを含有するNi基合金においては、γ/Lavesの共晶、γ/NbCの共晶により低温まで融液が残存することから、低融点の融液の存在によってBTR(固液共存域)が広がり、凝固収縮によるひずみの影響によって凝固割れが起こりやすくなる。(γ相とLaves相からなる共晶組織のことを、γ/Lavesの共晶と以下では表記する。)。
【0012】
もっとも、Ni基合金において、Nbはγ''相(ガンマダブルプライム相)による析出強化に有用な成分であり、Cは粒界強化のために必要な成分であるから、これらの成分を減らし過ぎてしまうと、必要な高温強度が得られない。
【0013】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、耐割れ性と高温強度に優れた積層造形用のNi系合金粉末と、これらのNi系合金粉末を用いた積層造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、耐割れ性と高温強度を両立するようなNi系超合金の成分範囲として、強度のパラメータA1がA1≧200、耐割れ性のパラメータA2がA2≦200である範囲のNi系合金粉末を見出した。
【0015】
本発明の課題を解決するための第1の手段は、質量%で、
Ni:40.00~70.00%、
Cr:15.00~25.00%、
Mo:0.10~12.00%、
Nb:3.00~7.00%、
Al:0.10~1.50%、
Ti:0.10~2.00%、
Si:0.01~0.40%、
C:0.001~0.15%、
B:0.0002~0.0040%を含有し、
S:≦0.002%であって、
W、Coの1種以上の合計量W+Co:0~7.00%であって、
残部がFe及び不可避的不純物からなる合金粉末が、
さらに以下の関係式A1の値が200以上でA2の値が200以下であるNi系合金粉末である。
A1=5.1C+0.3Cr+3.5Mo+2.9W+0.4Co+19.0Nb+9.4Al+33.0Ti+120.1B+48.8
A2=270.4C+0.5Cr+0.6Mo+0.3W+0.1Co+10.0Nb+30.5Al+15.8Ti+2009.1B+4094.3S+62.1
なお、関係式の右辺の元素記号には質量%の値を代入する。
【0016】
その第2の手段は、第1の手段に記載のNi系合金粉末を用いて積層造形された積層造形物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層造形用Ni系合金粉末は、これを用いて積層造形することによって、γ/Lavesの共晶、γ/NbCの共晶による凝固割れを抑制しつつ、高い高温強度を示す積層造形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1および比較例1の合金粉末を用いた積層造形体のX線回折(XRD)のパターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の積層造形用Ni系合金粉末の成分組成およびパラメータA1およびA2の値を規定する理由を以下に示す。以下の%は質量%である。
【0020】
Ni:40.00~70.00%、
Niは、耐食性に寄与する成分である。特にNiは、酸性環境下及び塩素イオン含有環境下における高温での耐食性に寄与する。この観点から、Ni基合金におけるNiの含有率は40.00%以上とする。より好ましくはNiは45.0%以上、さらに好ましくはNiは50.00%以上である。他方、オーステナイト相の安定性の観点およびCr等の他元素との相互作用の観点から、Niの含有率は70.00%以下とする。
【0021】
Cr:15.00~25.00%、
Crは、合金の固溶体強化と高温で使用されるときの耐酸化性の向上に寄与する元素である。このためには、Crは15.00%未満では上記効果が十分には得られない。他方、25.00%を超えるとδ相が生成し、高温強度と靭性が低下する。そこで、Crは15.00~25.00% とする。
【0022】
Mo:0.10~12.00%、
Moは、固溶体強化に寄与し強度を高めるのに有効な元素であるため、0.10%以上とする。もっともMoが多すぎるとμ相またはσ相の生成を助長し、造形物の靭性を損ない、脆化の一因となるため、12.00%以下とする。
【0023】
Nb:3.00~7.00%、
Nbは、炭化物を形成するとともにγ''相を形成し強度を向上させる成分であることから、Nbは3.00%以上含有させる。しかし、Nbが多すぎるとラーベス相生成量が増え、γ/Laves共晶を生成して、生成し割れやすくなるため、Nbは7.00%以下とする。
【0024】
Al:0.10~1.50%、
Alは、γ’相を形成し、クリープ破断強さと耐酸化性を向上させる元素であることから、0.10%以上とする。もっとも、1.50%を超えると高温割れが発生しやすくなり、積層造形時に割れが発生しやすくなるため、1 .50%以下とする。
【0025】
Ti:0.10~2.00%、
Tiは、Alと同様にγ’相を形成し、クリープ破断強さと耐酸化性を向上させる元素であるので、0.10%以上とする。もっとも、2.00%を超えると高温割れが発生しやすくなり、積層造形時に割れが発生しやすくなるため、Tiは2.00%以下とする。
【0026】
Si:0.01~0.40%、
Siは、溶解時の脱酸材として働くとともに、高温での耐酸化性を付与する元素である。このためにはSiは0.01%以上とする。他方、多量に添加しすぎると高温での耐酸化性が劣化するため、Siは0.40% 以下とする。
【0027】
C:0.001~0.15%、
Cは、Nb、TiなどとMC型炭化物を形成するほか、Cr、Mo、WなどとM6C、M73、M236などの炭化物をつくり、合金の高温強さを高める効果がある元素である。そこでCは0.001%以上含有する必要がある。もっとも、Cを過剰に含有すると、γ/NbCの共晶を生成し割れやすくなるため、Cは0.15%以下に抑える必要がある。
【0028】
B:0.0002~0.0040%
Bは、粒界を強化して強度を向上させる効果がある成分である。そこで、Bは0.0002%以上含有させる。もっとも、多すぎると溶接の最終凝固部においてNbの化合物(LavesまたはNbC)の濃化を助長するため、Bは0.0040%以下とする。
【0029】
S:≦0.002%
S は、凝固時に低融点の液相を生じることにより、急速溶融急冷凝固プロセスにおける焼結における割れを助長する。そこで、凝固時に低融点の液相を生じ凝固割れを発生しやすいSの含有量を0.002%以下とすることによって、凝固割れを抑制することとした。
【0030】
W、Coの1種以上の合計量W+Co:0~7.00%
本発明は、WもしくはCoのいずれか1種、もしくはWとCoの双方を含有させることができる。
Wは、固溶強化に寄与するが、過剰のWは、成形体の靱性及び強度を損なう。同様にCoは、γ’相のNi固溶体に対する溶解度を高める。したがってCoは、積層造形物の高温延性及び高温強度を高めることができる成分である。もっとも、過剰のCoは、成形体の靱性及び強度を損なう。
そこで、靱性及び強度の観点から、WとCoの合計量で7.00%以下とする。
【0031】
残部:Feおよび不可避不純物
本発明のNi系合金粉末の残部はFeおよび不可避不純物である。Feは、Niの代替によりコスト低減に有効な元素のため、本発明のNi系合金粉末は、残部をFeおよび不可避不純物とする。
【0032】
関係式A1(=5.1C+0.3Cr+3.5Mo+2.9W+0.4Co+19.0Nb+9.4Al+33.0Ti+120.1B+48.8)の値が200以上で、A2(=270.4C+0.5Cr+0.6Mo+0.3W+0.1Co+10.0Nb+30.5Al+15.8Ti+2009.1B+4094.3S+62.1)の値が200以下であること
本発明は、A1とA2の双方のパラメータを本発明の範囲に満足することで、高温強度と耐割れを両立させることとなる。いずれか片方のパラメータだけを満足するだけでは、高温強度もしくは耐割れ性の一方が満足しないなど、両立が困難なものが含まれることとなるので、これらのパラメータはA1、A2の値を双方とも規定値に満足するものとする。なお、A1とA2のパラメータの意味合いは次のとおりである。
【0033】
A1の値:200以上
A1=5.1C+0.3Cr+3.5Mo+2.9W+0.4Co+19.0Nb+9.4Al+33.0Ti+120.1B+48.8
各元素成分には質量%の含有値を代入する。
A1は、強度のパラメータであり、A1の値が200以上であると、高温強度が十分に確保される。
【0034】
A2の値:200以下
A2=270.4C+0.5Cr+0.6Mo+0.3W+0.1Co+10.0Nb+30.5Al+15.8Ti+2009.1B+4094.3S+62.1
各元素成分には質量%の含有値を代入する。
A2は耐割れ性のパラメータであり、A2の値が200であると、割れ数が抑制される。
【0035】
50:10~100μm
次に、本発明のNi系合金粉末は、その平均粒径(D50)が10~100μmであることが好ましい。D50が10μm未満であると、微粉化により粉末の流動性が低下する。他方、D50が100μmを超えると充填率が低下し、積層造形による積層造形体の密度が低下する。
【0036】
以下、本発明のNi系合金粉末の製造について説明する。
合金粉末の製造方法としては、水アトマイズ法、単ロール急冷法、双ロール急冷法、ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法及び遠心アトマイズ法が例示される。このうち、Ni系合金粉末の好ましい製造方法は、単ロール冷却法、ガスアトマイズ法及びディスクアトマイズ法である。また、合金粉末の作製のために、メカニカルミリング等が施されて粉砕して粉体を得ることもできる。ミリング方法としては、ボールミル法、ビーズミル法、遊星ボールミル法、アトライタ法及び振動ボールミル法が例示される。
【0037】
本発明における積層造形に用いるNi系合金粉末は、球状化の観点からは、とりわけガスアトマイズ法が好ましい。そこで、以下の実施の形態では、ガスアトマイズによる製造で得られた合金粉末を用いて説明する。
【0038】
実施例No.1~8、比較例No.9~14について、表1に記載の成分組成およびA1およびA2のパラメータの値からなる粉末材料をガスアトマイズ法によりそれぞれ合金粉末として得た後、これを150μm以下に分級し、供試材用の合金粉末とした。ガスアトマイズは、真空中にてアルミナ製坩堝で所定の配分となるようにした原料を高周波誘導加熱で溶解し、坩堝下の直径5mmのノズルから溶融した合金を落下させ、これに高圧アルゴンまたは高圧窒素を噴霧することで実施した。
【0039】
【表1】
【0040】
‐は分析下限値未満の微量を含む。便宜上0%とみなす。
また、表では示さないが、これらの合金粉末で造形した積層造形体を分析したが、分析誤差の範囲内で表1の成分と同じであった。
【0041】
次いでこれらの粉末を用いてメタルデポジション方式の3次元積層造形装置を用いて角10mmのブロックを作製した。なお、本発明の合金粉末はパウダーベッド方式にも適用できるので、積層造形体はパウダーベッド方式でも作製することは可能である。以下ではメタルデポジション方式で作成した供試片を用いた実施例を例に説明する。表2に、実施例、比較例について、各粉体のD50と、これらの粉体を用いて得られた供試材の積層造形物の特性(引張強度、割れ数、相対密度)について示す。
【0042】
【表2】
【0043】
[割れ評価]
角10mmブロックを造形方向に対して平行に切断した試験片について、光学顕微鏡を用いて、ブロック断面を×100で5視野撮影し、得られた画像中の割れの数を画像解析により算出した。
【0044】
[相対密度評価]
相対密度は、角10mmブロックをアルキメデス法により測定した密度を、成分分析値から求められる計算比重で割った値として、算出した。
【0045】
[引張り試験]
積層造形物から、切削にてJIS G0567 I‐6 型試験片(φ6×GL30mm)を作製した。この試験片を、650℃の環境下で引張り試験に供し、引張強度を測定した。
【0046】
[D50の測定方法]
平均粒子径D50の測定は、粉末の全体積が100%とされて、累積カーブが求められる。このカーブ上の、累積体積が50%である点の粒子径が、D50である。粒子直径D50は、レーザー回折散乱法によって測定される。この測定に適した装置として、日機装社のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000」が挙げられる。この装置のセル内に、粉末が純水と共に流し込まれ、粒子の光散乱情報に基づいて、粒子径が検出される。
【0047】
また、図1に、実施例1および比較例1の成分組成の粉末で造形した積層造形体のXRDの測定結果のパターンを図示する。実施例1と比較例1の積層造形体を比較すると、比較例1の組成で造形した積層造形体のXRDにおいて観測されているLavesおよびNbCの信号強度は、実施例1においては比較例1に比して弱くなっていることがわかった。このことからも、凝固割れの原因となるこれらの相が本発明では抑制されていることが確認された。
【0048】
表2に示すように、本発明のNi系合金粉末により作成された積層造形物は、比較例に比べて耐割れ性および高温強度の双方が両立されており、耐割れ性および高温強度(たとえば引張試験で950MPa以上など)のいずれにも優れた特性を示した。
【0049】
他方、比較例9はNbが過少であり、高温強度に劣るものとなった。
比較例10は、Sが過多であり、耐割れ性が劣るものとなった。
比較例11は、Bが過多であり、耐割れ性が劣るものとなった。
比較例12は、Alが過多であり、耐割れ性が劣るものとなった。
比較例13は、Tiが過多であり、耐割れ性が劣るものとなった。
比較例14は、Cが過多であり、耐割れ性が劣るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のNi系合金粉末は、メタルデポジション方式またはパウダーベッド方式の積層造形向けの金属粉末に適している。
図1