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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ボンベ保管管理庫
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
F17C13/08 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023071229
(22)【出願日】2023-04-25
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596163770
【氏名又は名称】株式会社RYODEN
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 修
(72)【発明者】
【氏名】城 和則
(72)【発明者】
【氏名】野口 明之
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-155659(JP,A)
【文献】特開2022-32189(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0029423(KR,A)
【文献】米国特許第10845006(US,B2)
【文献】米国特許第10247363(US,B2)
【文献】特開2019-71039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の金属製のガスボンベを収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるボンベ保管管理庫であって、
内部が複数のエリアに区画され、各区画に前記ガスボンベを一列に収容する金属製の筐体と、
各区画内に前記ガスボンベの列方向に延びるように配設されたケーブル型アンテナと、
該ケーブル型アンテナと無線通信可能なRFIDタグと、
該RFIDタグを取り付け可能な外周面を有し、前記ガスボンベの首部に掛けることができる環状のRFタグホルダと、を備え、
前記ケーブル型アンテナは、前記RFIDタグを取り付けた前記RFタグホルダが首部に掛けられた前記ガスボンベを前記筐体内に収容した状態において、同一区画内の全てのRFIDタグと対向可能な位置に配設されていることを特徴とするボンベ保管管理庫。
【請求項2】
前記ケーブル型アンテナは、前記RFIDタグと1cm以上3cm以下の距離で対向するように配設されていることを特徴とする請求項1記載のボンベ保管管理庫。
【請求項3】
前記ガスボンベを列方向に搬送する搬送手段を備え、
前記ケーブル型アンテナは、前記RFタグホルダよりも高い位置、かつ前記RFIDタグと2cm以上の距離で対向するように配設されていることを特徴とする請求項2記載のボンベ保管管理庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルゴン等の高圧ガスを封入した複数のガスボンベを保管管理するボンベ保管管理庫に関する。
【背景技術】
【0002】
アルゴン等の高圧ガスを封入したガスボンベを保管管理するボンベ保管管理庫として、例えば特許文献1に開示されるようなRFID(Radio Frequency Identification)システムを用いたものがある。
RFIDシステムとは、管理対象(物品)にRFIDタグを取り付けて、アンテナから発信した電波によってRFIDタグのID情報を読み取ることで、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)の画面上で物品管理を行うことができるシステムである。
【0003】
特許文献1の「ボンベ保管庫」は、筐体内部が区画分けされており、各区画にはRFIDタグをつけたガスボンベが一列に並べて収容される。RFIDタグの情報を各区画に設けられたアンテナで読み取ることにより、各区画に収容されているガスボンベの情報をPC画面上で確認することができる。
これにより個々のガスボンベが保管庫内のどの区画に収容されているかを管理できるようになるので、取出しの際に対象とするガスボンベを保管庫内で探す手間が省け、効率的である。
【0004】
また、ケーブル型アンテナを用いたRFIDシステムによって物品管理を行う「物品管理装置」が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7000615号公報
【文献】特開2022-032189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RFIDシステムの電波は、金属面に当たると反射する性質がある。
ガスボンベ、及びガスボンベを収容する筐体は一般的に金属製であるので、ボンベ保管庫の筐体内部はRFID電波の乱反射が発生しやすい環境である。
【0007】
この反射波がアンテナから出力された電波に干渉すると、互いに打ち消しあって通信不可領域が発生する(以下、これを「NULL点」という)。筐体内でNULL点が多発すると、RFIDタグを安定して読み取ることができなくなるため、乱反射を抑制し、NULL点を低減することが求められている。
【0008】
乱反射を抑制するには、アンテナの電波出力を弱くすればよい。しかし、特許文献1のような平板状のアンテナを天井面に取り付ける場合、電波出力は、アンテナから最も遠い位置にあるRFIDタグを読み取り可能な強さに設定する必要があり、電波出力を弱くするとしても限界があった。
【0009】
また、特許文献2の物品管理装置においては、平板状のアンテナではなくケーブル型アンテナを用いることで、無線通信可能な領域を容易に変更できるようにしている。
しかし、前述したように、管理対象物がガスボンベの場合、対象物自体が金属製で、かつ、金属で囲われた空間内での管理となるため、RFIDシステムを使用するには厳しい環境である。
そのため、このような環境を前提としていない特許文献2では、電波の乱反射を防止して安定した管理ができるとは言えない。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するものであり、RFIDシステムを用い、金属製の筐体内でガスボンベを安定して保管管理できるボンベ保管管理庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係るボンベ保管管理庫は、複数本の金属製のガスボンベを収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものであって、
内部が複数のエリアに区画され、各区画に前記ガスボンベを一列に収容する金属製の筐体と、
各区画内に前記ガスボンベの列方向に延びるように配設されたケーブル型アンテナと、
該ケーブル型アンテナと無線通信可能なRFIDタグと、
該RFIDタグを取り付け可能な外周面を有し、前記ガスボンベの首部に掛けることができる環状のRFタグホルダと、を備え、
前記ケーブル型アンテナは、前記RFIDタグを取り付けた前記RFタグホルダが首部に掛けられた前記ガスボンベを前記筐体内に収容した状態において、同一区画内の全てのRFIDタグと対向可能な位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ケーブル型アンテナは、前記RFIDタグと1cm以上3cm以下の距離で対向するように配設されていることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記ガスボンベを列方向に搬送する搬送手段を備え、
前記ケーブル型アンテナは、前記RFタグホルダよりも高い位置、かつ前記RFIDタグと2cm以上の距離で対向するように配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るボンベ保管管理庫は、RFIDタグを取り付け可能な外周面を有し、ガスボンベの首部に掛けることができる環状のRFタグホルダと、同一区画内の全てのRFIDタグと対向可能な位置に配設されたケーブル型アンテナとを備えたことにより、安定してガスボンベを保管管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態にかかるボンベ保管管理庫の内部構造を示す正面図である。
図2図1に示したボンベ保管管理庫の内部構造を示す側面図である。
図3図1に示したボンベ保管管理庫の上面図である。
図4図1に示したボンベ保管管理庫内に設置される遮蔽板の説明図である。
図5図1に示したボンベ保管管理庫の各区画に設けられるボンベストッカーの説明図である。
図6】RFIDタグを取り付けたRFタグホルダの説明図である。
図7】ガスボンベを筐体内に収容した状態におけるケーブル型アンテナとRFタグホルダの位置関係を説明する図である(その1)。
図8】ガスボンベを筐体内に収容した状態におけるケーブル型アンテナとRFタグホルダの位置関係を説明する図である(その2)。
図9】RFタグホルダが首部に掛けられたガスボンベを上面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態に係るボンベ保管管理庫1は、複数本の金属製のガスボンベ3を収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものあって、図1図2に示すように、内部が複数の区画(区画A、B、C)に区分された筐体5と、筐体5内において区画ごとに設置されたケーブル型アンテナ7と、ケーブル型アンテナ7と無線通信可能なRFIDタグ9(図6参照)と、RFIDタグ9を保持するRFタグホルダ11と、を備えたものである。
【0017】
本願発明は、RFIDシステムを安定して使用できるようにした点に特徴があるので、まずはこのRFIDシステムについて説明する。
本実施の形態のRFIDシステムは、特許文献1のRFIDシステム(特許文献1の図6参照)と同様に、管理対象であるガスボンベ3に取り付けられたRFIDタグ9のID情報を筐体5に設定されたアンテナ(本実施の形態ではケーブル型アンテナ7)で読み取ることにより、筐体5内のガスボンベ3を図示しないPC上で管理可能としたものである。
【0018】
ボンベ保管管理庫1に保管されているガスボンベ3の首部にはRFIDタグ9が取り付けられたRFタグホルダ11がかけられており、ケーブル型アンテナ7から送信される電波によってRFIDタグ9のID情報が反射波としてケーブル型アンテナ7で受信され、受信されたID情報がPCに送信される。
【0019】
PCには管理対象となるボンベ保管管理庫1の情報や、各ボンベ保管管理庫1において保管対象となるガスボンベ3の情報が記憶されている。
ボンベ保管管理庫1の情報としては、保管庫内がどのような区画になっているかといった区画情報、各区画に保管されるガスボンベ3の本数、各区画に保管されるべきガスボンベ3のガス種類等がある。
またガスボンベ3の情報としては、ガス種類、充填日、製造日等であり、これらは保管対象となるガスボンベ3に付けられているRFIDタグ9のID情報と関連付けられている。
【0020】
PCは、受信したID情報と上記PC内に記憶された情報を照合し、その結果をPC画面に表示する。
【0021】
上記のようなRFIDシステムを安定して利用可能としたボンベ保管管理庫1の各構成を図1図5に基づいて説明する。
【0022】
<筐体>
筐体5は、ガスボンベ3を収容するものであり、外観が直方体形状の金属製である。筐体5は遮蔽板13によって内部空間を3つに区画されており、各区画A、B、Cにはボンベストッカー15が設置されている。
一つの区画に設置されたボンベストッカー15に収容されるガスボンベ3は同一種類のものである。
【0023】
筐体5の上面の略中央部(図3参照)には、ガス検知器付きの排気口17が設けられている。排気口17には図示しないダクトが接続され、排気口17から排気されるガスはダクトを介してガス処理装置(図示なし)に送られて処理される。
これは、保管されるガスボンベ3には有毒ガスが充填されることもあり、ガスボンベ3からガス漏れが発生した場合の対策のためのものである。
【0024】
また、筐体5の上面には、筐体5の入側及び出側を開閉するためのシャッター装置19が設けられている。
【0025】
遮蔽板13は、ケーブル型アンテナ7から発信される電波が各区画間を通過しないよう、金属板によって構成されている。
遮蔽板13の下端は、図4に示すように、隣の区画との間に所定の隙間Sが設けられており、また、遮蔽板13の上部にはガスが通過可能なメッシュ部20が形成されている。このような隙間Sを設け、メッシュ部20を形成した理由は以下の通りである。
【0026】
上述のように、筐体5の上面には排気口17が一つ設けられており、筐体5内のどの区画に保管されているガスボンベ3からガス漏れがあったとしても排気口17にガスが流れるようにする必要がある。
しかし、仮に遮蔽板13がガスの通過を完全に仕切るものであったなら区画ごとに排気口17を設けなければならないが、区画ごとに排気口17を設けるとコストが高くなる。
そこで、本実施の形態では、遮蔽板13の下方に隙間Sを形成すると共に上部にメッシュ部20を設け、電波を遮蔽すると共にガスの通過を許容できるようにした。
これによって、排気口17を一つにしつつ、区画毎のガスボンベ3の管理を可能にしている。
【0027】
ボンベストッカー15は、図5に示すように、保管するガスボンベ3を一列に収容するフレーム21と、フレーム21の底部に搬送路を形成する搬送ローラ23と、収容されるガスボンベ3を保持するボンベ保持片25と、搬送路の最奥において搬送されるガスボンベ3が搬送路から離脱するのを防止するストッパー部材27とを備えている。
【0028】
搬送ローラ23をモーター駆動することにより、ガスボンベ3の列方向、図面奥側から手前側に向かってガスボンベ3が移動し、最初のガスボンベ3はストッパー部材27の手前まで搬送される。この搬送ローラ23及び搬送ローラ23を駆動するモーターは、本発明の搬送手段に相当する。また、ボンベ保持片25はガスボンベ3が搬送方向に移動するのを許容するが反対方向への移動を規制し、ガスボンベ3を保持する。
【0029】
なお、本発明において筐体5内にボンベストッカー15を設けることは必須ではなく、各区画内はガスボンベ3を保管して出し入れが容易になっていればよい。
【0030】
<ケーブル型アンテナ>
ケーブル型アンテナ7は、樹脂製のモール等によって直線状に延びた状態に保持されるとともに、ガスボンベ3の列方向に延びるように各区画内に一本ずつ配設されている。各区画に一本ずつケーブル型アンテナ7を設けることでガスボンベ3がどの区画に配置されているかの位置情報を取得して管理することができる。
【0031】
筐体5の側壁又は遮蔽板13には、ケーブル型アンテナ7を取り付けるためのケーブル取付具29がケーブル型アンテナ7の長手方向に所定間隔で複数設けられており、これら複数のケーブル取付具29の先端にケーブル型アンテナ7が支持されている。
ケーブル型アンテナ7の設置高さはガスボンベ3の首部と同程度の高さとなっており、ガスボンベ3を筐体5内に収容すると、ガスボンベ3の首部に掛けられた各RFタグホルダ11の外周面とケーブル型アンテナ7とがそれぞれ対向するようになっている。
なお、ケーブル型アンテナ7が区画内の全てのRFタグホルダ11の外周面と対向するよう、ケーブル型アンテナ7の長さは、筐体5の最も入側に収容されたガスボンベ3から最も出側に収容されたガスボンベ3まで届く長さとする。
【0032】
<RFIDタグ>
RFIDタグ9(図6参照)にはID情報等が書き込まれており、RFタグホルダ11を介してガスボンベ3の首部に取り付けられる。RFIDタグ9のID情報はケーブル型アンテナ7によって読み取られ、ケーブル型アンテナ7が読み取ったID情報と、PCに保存されているID情報に紐づけられたガスボンベ3の情報とを照合することで、当該RFIDタグ9が付けられたガスボンベ3を特定できる。
【0033】
<RFタグホルダ>
RFタグホルダ11は、図6に示すような環状体であり、その外周面にはRFIDタグ9を挿入可能なタグ挿入部11aが形成されている。タグ挿入部11aはRFタグホルダ11の周方向に均等の間隔で3つ形成されており(図6では1つのみ図示)、1つのRFタグホルダ11に3枚のRFIDタグ9を取り付けることができる。複数枚のRFIDタグ9をRFタグホルダ11の外周面に円周方向均等に配置することにより、ガスボンベ3やRFタグホルダ11が回転しても、いずれかのRFIDタグ9の面部(RFIDタグ9のアンテナ)がケーブル型アンテナ7に対向する。
【0034】
ケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9とを上記のような配置関係にすることで、ケーブル型アンテナ7の電波出力が弱くても、RFIDタグ9との間で安定した通信が可能となる。具体的には、ケーブル型アンテナ7の電波出力が20dBm以上あれば、RFIDタグ9のID情報を安定して読み取りできる。
また前述したように、電波の乱反射を低減するためには、なるべく小さな電波出力で通信を行うのが望ましいので、ケーブル型アンテナ7の電波出力は30dBmより小さくするのが好ましく、25dBm以下とするのがより好ましい。
【0035】
また、RFタグホルダ11の外周面にRFIDタグ9を取り付けるようにしたことで下記の利点もある。
RFIDタグ9は矩形状のものが一般的であるが、これを仮にRFタグホルダ11の上面に取り付けようとすると、タグの取付面を長く確保できないので、表面積の小さな短いタグしか取り付けることができない。RFIDタグ9の表面積が小さいとID情報が読み取りにくくなるので、ケーブル型アンテナ7の電波出力を強くする必要がある。しかし、ケーブル型アンテナ7の電波出力を強くすると、金属製の筐体5内で乱反射が発生して前述したNULL点が多発してしまうので好ましくない。
【0036】
この点、本実施の形態のRFタグホルダ11は、タグ挿入部11aをRFタグホルダ11の外周面に設けているので長形のRFIDタグ9を取り付けることができる。これにより、RFIDタグ9の表面積を大きくとることができ、RFIDタグ9のID情報が読み取りやすくなる。したがって、弱い電波でもID情報の読み取りが可能となり、筐体5内に生じる電波の反射を低減できる。
【0037】
また、RFタグホルダ11は弾性を有する樹脂によって構成され、環状体の一か所に形成された切れ目部分を開くように弾性変形させることができる。この部分にガスボンベ3の首部を差し入れるようにしてRFタグホルダ11をガスボンベ3の首部に取り付けることができる。RFタグホルダ11の内径はガスボンベ3の首部の外径に合わせて設定すればよい。もっとも、首部の外径はメーカーによって異なるので、いずれのメーカーのガスボンベ3にも対応できるよう、首部の外径が最も大きいメーカーのガスボンベ3に合わせてRFタグホルダ11の内径を設定するとよい。
【0038】
なお、RFタグホルダ11の形状及び素材は上記の態様に限定されるものではなく、例えば、RFタグホルダ11を切れ目のない環状体としてもよい。その場合にはガスボンベ3の頭部の上からかけるようにしてRFタグホルダ11をガスボンベ3に取り付けることができる。
その場合、RFタグホルダ11の内径をガスボンベ3の頭部の外径以上にする必要があるが、一般的にガスボンベ3の頭部は首部よりも外径が大きいので、RFタグホルダ11が大型化する。この点、本実施の形態のRFタグホルダ11は首部に直接取り付けることができるので、RFタグホルダ11を小型化でき、筐体5内の限られた空間でも問題なく使用できる。
【0039】
ガスボンベ3を収容した状態でのケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9との位置関係について、図7図9を用いてさらに詳しく説明する。
図7は、筐体5の一区画内におけるケーブル型アンテナ7とRFタグホルダ11との位置関係を示す模式図であり、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図である。
図8図7(a)のガスボンベ3、ケーブル型アンテナ7及びRFタグホルダ11を拡大した図である。
図9は、首部にRFタグホルダ11がかけられたガスボンベ3を上面視した図である。
【0040】
前述したように、弱い電波出力でID情報を読み取れるようにするには、ケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9とが近接した距離、例えば3cm以下の距離で対向する必要がある。また、電波の反射を低減するには、ケーブル型アンテナ7は金属面から1cm以上離れているのが望ましい。
したがって、ケーブル型アンテナ7は、筐体5の側壁(又は遮蔽板13)との距離が1cm以上、かつ、RFタグホルダ11の外周面との距離が3cm以下となるよう、ケーブル取付具29によって筐体5の側壁(又は遮蔽板13)に取り付けられている。
【0041】
なお、ケーブル型アンテナ7を金属から離すという観点ではケーブル取付具29を金属以外の素材とするのが好ましいと言えるが、ケーブル取付具29は金属製でも構わない。ケーブル取付具29とケーブル型アンテナ7とが接触する位置は、ケーブル型アンテナ7の全長に亘るものではなく、ケーブル型アンテナ7の長手方向に所定の間隔で数か所のみであるため、たとえ金属製のケーブル取付具29を用いたとしても電波の反射は多く生じない。
【0042】
また、ケーブル型アンテナ7は、ガスボンベ3の首部と同程度の高さに設置されていると説明したが、具体的には、図7図8のようにガスボンベ3に取り付けられたRFタグホルダ11よりも若干高い位置に設置されているのが望ましい。
ガスボンベ3の形状はメーカーによって異なるため、図8の実線に示すように、肩部がなだらかな形状となっている場合もあれば、破線に示すように肩部が張った形状となっている場合もある。肩部が張った形状であると、金属製のガスボンベ3の肩部とケーブル型アンテナ7との距離が近くなるので、ケーブル型アンテナ7はRFタグホルダ11よりも高い位置に設置されているのが好ましい。
【0043】
また、ケーブル型アンテナ7の設置高さをガスボンベ3に取り付けられたRFタグホルダ11よりも高い位置にすることで下記の利点もある。
前述したように、本実施の形態のボンベ保管管理庫1は、ボンベストッカー15の搬送ローラ23をモーター駆動させることによりガスボンベ3を列方向に搬送することができるものである。
搬送の際、振動によってガスボンベ3が数mm上下動するが、ガスボンベ3の肩部が破線のように張った形状であると、ガスボンベ3が振動で上下動した際にガスボンベ3の肩部がケーブル型アンテナ7にぶつかりやすい。したがって、ケーブル型アンテナ7をRFタグホルダ11よりも高い位置にすることでこれを防止できる。
【0044】
また、前述したように、RFタグホルダ11の内径は異なるメーカーのガスボンベ3に対応できるよう、首部の外径が最も大きいメーカーのガスボンベ3に合わせて設定される。したがって、首部の外径が小さいメーカーのガスボンベ3にRFタグホルダ11を取り付けると、ガスボンベ3の首部の外周面とRFタグホルダ11の内周面の間に隙間が生じる。そのため、図9に示すように、RFタグホルダ11がいずれかの方向に偏って、ガスボンベ3の中心軸とRFタグホルダ11の中心軸とが1cm程度ずれる場合がある。
【0045】
ケーブル型アンテナ7とRFタグホルダ11との距離が近すぎると、ケーブル型アンテナ7に近づく方向にRFタグホルダ11が偏った際に、RFタグホルダ11がケーブル型アンテナ7にぶつかってしまう恐れがある。
【0046】
さらに、本実施の形態では、搬送ローラ23を駆動させてガスボンベ3を搬送する際に、その振動によってガスボンベ3が最大1cm程度の幅で左右に揺れることが考えられる。よって、ガスボンベ3の搬送時は、RFタグホルダ11とケーブル型アンテナ7とがさらにぶつかりやすくなる。
【0047】
以上のように、RFタグホルダ11とケーブル型アンテナ7間の距離は、ガスボンベ3の首部とRFタグホルダ11間のクリアランスに起因して1cm、搬送時の振動に起因して1cm、最大2cmの範囲で変動する。
したがって、RFタグホルダ11がケーブル型アンテナ7にぶつかるのを防止するため、ケーブル型アンテナ7は、ガスボンベ3と中心軸を合わせた状態のRFタグホルダ11に対し、その外周面と2cm以上の距離が空くように配設するのが好ましい。また、前述したように、弱い電波出力でID情報を読み取れるようにするためには、ケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9とが3cm以内の距離にあるのが望ましいので、本実施の形態におけるケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9間の好適な距離は2cm以上3cm以下である。
【0048】
したがって、本実施の形態では、ガスボンベ3の首部にかけられたRFタグホルダ11に対し、水平方向から上方向に45°程度の範囲、かつ、RFタグホルダ11の外周面から2cm以上3cm以下となる円弧上にケーブル型アンテナ7を配置するのが最適である(図8参照)。
【0049】
なお、筐体5内でガスボンベ3を搬送する搬送手段を有さない場合には、搬送時の振動による左右の揺れを考慮する必要がないので、ケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9間の距離は1cm以上3cm以下の範囲で設定するとよい。
【0050】
以上のように本実施の形態のボンベ保管管理庫1によれば、ガスボンベ3を筐体5内に収容した際に、ガスボンベ3に取り付けたRFIDタグ9とケーブル型アンテナ7とが近接した位置で対向するので、弱い電波出力でRFIDタグ9のID情報を読み取ることができる。これにより、金属製の筐体5内での電波の乱反射が低減してケーブル型アンテナ7とRFIDタグ9との間でNULL点が発生しにくくなり、ID情報の読み取り精度が向上する。
【0051】
読み取り精度の向上効果としては、例えば下記のような効果を期待できる。
平板形状のアンテナを用いた従来例では、ID情報を正しく読み取ることができたガスボンベ3の数は全体の約80%程度であった。従来例でID情報を正しく読み取れない要因としては、NULL点の多発による通信不良、遮蔽板13の隙間Sから隣接する区画に電波が漏れることによる隣接区画のRFIDタグ9の誤読などがあった。これらはいずれも電波の乱反射によって生じるものである。
これに対し、本実施の形態のボンベ保管管理庫1を用いれば、筐体5内での電波の乱反射を低減するので、約95%程度のガスボンベ3のID情報を正しく認識することが期待できる。
以上のように本願発明は、RFIDシステムによる安定したガスボンベの保管管理を可能とする。
【符号の説明】
【0052】
1 ボンベ保管管理庫
3 ガスボンベ
5 筐体
7 ケーブル型アンテナ
9 RFIDタグ
11 RFタグホルダ
11a タグ挿入部
13 遮蔽板
15 ボンベストッカー
17 排気口
19 シャッター装置
20 メッシュ部
21 フレーム
23 搬送ローラ
25 ボンベ保持片
27 ストッパー部材
29 ケーブル取付具
A、B、C区画
S 隙間
【要約】
【課題】RFIDシステムを用い、金属製の筐体内でガスボンベを安定して保管管理できるボンベ保管管理庫を提供する。
【解決手段】本発明に係るボンベ保管管理庫1は、複数本の金属製のガスボンベ3を収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものであって、内部が複数のエリアに区画され、各区画にガスボンベ3を一列に収容する金属製の筐体5と、各区画内にガスボンベ3の列方向に延びるように配設されたケーブル型アンテナ7と、ケーブル型アンテナ7と無線通信可能なRFIDタグ9と、RFIDタグ9を取り付け可能な外周面を有し、ガスボンベ3の首部に掛けることができる環状のRFタグホルダ11と、を備え、ケーブル型アンテナ7は、RFIDタグ9を取り付けたRFタグホルダ11が首部に掛けられたガスボンベ3を筐体5内に収容した状態において、同一区画内の全てのRFIDタグ9と対向可能な位置に配設されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9