(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、飛行体、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/12 20060101AFI20230830BHJP
B64D 45/04 20060101ALI20230830BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G05D1/12 H
B64D45/04 B
G05D1/10
(21)【出願番号】P 2019151300
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】000230700
【氏名又は名称】日本海工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 泰範
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】外城 正昭
(72)【発明者】
【氏名】篠井 隆之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354199(JP,A)
【文献】特開平4-71998(JP,A)
【文献】特開2017-74821(JP,A)
【文献】特開2017-119477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0014760(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108583920(CN,A)
【文献】特開昭56-154397(JP,A)
【文献】特開2018-176905(JP,A)
【文献】特開2019-34651(JP,A)
【文献】特開2017-30739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/10
B64D 45/04
G05D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御装置であって、
前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定された、前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御部、
を備える制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記飛行体および前記浮体の位置関係と、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性と、に基づいて決定された複数の前記降着経路を記憶する降着経路記憶部と、
前記飛行体が飛行予定である前記降着経路を有効降着経路として、前記降着経路記憶部に記憶された前記複数の降着経路のうちのいずれかを前記有効降着経路として判定する、降着経路判定部と、
を備え、
前記飛行制御部は、前記有効降着経路に従って前記飛行体を飛行させる、
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を算出する位置情報算出部をさらに備え、
前記降着経路判定部は、前記位置情報算出部で算出された位置情報に基づいて、前記降着経路記憶部に記憶された前記複数の降着経路のうちのいずれかを前記有効降着経路として判定する、
制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の制御装置であって、
前記有効降着経路が決定された後、前記飛行体および前記浮体の位置情報に基づいて、前記有効降着経路を変更する必要があるか否かを判定する降着経路変更判定部をさらに備え、
有効降着経路を変更する必要があると判定された場合、前記降着経路判定部は、前記有効降着経路とは異なる降着経路を新たな有効降着経路として判定する、
制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記降着経路変更判定部は、前記有効降着経路が更新された場合に、前記有効降着経路を変更する必要があるか否かを再度判定する、
制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部で算出された前記飛行体および前記浮体の位置情報と、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性と、に基づいて前記降着経路を算出する降着経路算出部と、
を備え、
前記飛行制御部は、算出された前記降着経路に従って前記飛行体を飛行させる、
制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置であって、
前記降着経路が算出された後、前記飛行体および前記浮体の位置情報に基づいて、前記降着経路を変更する必要があるか否かを判定する算出経路変更判定部をさらに備え、
前記降着経路を変更する必要があると判定された場合、前記降着経路算出部は、前記降着経路とは異なる新たな降着経路を算出する、
制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記飛行体と、
を備え、
前記飛行体は、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を検知する位置情報検知部、
を有する、制御システム。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記飛行体と、
前記浮体と、
を備え、
前記飛行体および/または前記浮体は、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を検知する位置情報検知部、
を有する、制御システム。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の制御装置を備える、
飛行体。
【請求項11】
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御方法であって、
前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路を、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定する降着経路決定ステップと、
前記降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御ステップと、
を備える制御方法。
【請求項12】
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御装置としてのコンピュータを、
前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定された、前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御部と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受けて移動(漂流)する浮体に接近および/または降着させる制御装置、制御システム、飛行体、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律式または遠隔操縦の無人飛行体(いわゆるドローン;drone)の利用範囲が拡大している。例えば、マルチコプター式の無人飛行体を被災地における救援活動等に利用することが考えられている。
【0003】
無人飛行体は充電等のエネルギー補充のため、定期的に充電設備まで戻る必要がある。しかしながら、救援活動領域から充電設備まで距離が遠い場合には、エネルギー補充のための往復によって多くのエネルギーと時間が消費されてしまい、救援活動が十分に行えない場合がある。
【0004】
このため、救援活動領域が湖沼や海岸に近接している場合には、充電設備を設けた浮体を水面に配置し、無人飛行体を浮体に降着させてエネルギー補充を行うことが考えられる。このような浮体を数多く設置することにより、救援活動領域から充電設備までの距離を短くすることができるため、エネルギー消費量を抑制できるとともに、救援活動時間を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭56-154397号公報
【文献】特開2018-176905号公報
【文献】特開2019-034651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えばマルチコプター式の無人飛行体は、飛行中に下向きの空気流(下降流)を発生させている。このため、無人飛行体を小型の浮体に降着させる場合、飛行体が浮体に接近すると飛行体の下降流によって浮体が移動(漂流)する。飛行体を浮体に降着させる実験を行ったところ、飛行体の下降流による影響は、飛行体が浮体に接近するほど強くなるため、飛行体を浮体に接近させようとすると浮体がより遠くに離れていく状態となり、飛行体を小型の浮体に降着させることは容易ではないことがあきらかになった。
【0007】
ここで、特許文献1には、ヘリコプターを艦船に強制的に着艦させる技術が開示されている。ヘリコプターは強い下降流を発生させるものの、ヘリコプターを搭載可能な艦船は、一般的にヘリコプターよりも質量が十分大きい。ヘリコプターが艦船に着艦する場合のように、両者の質量差が十分ある場合には、飛行体の下降流が浮体の位置に与える影響は無視できる程度であると考えられる。
【0008】
特許文献2には、水面に浮遊する無人探査装置(無人機)をドローン等の飛翔体で捕獲する技術が開示されている。特許文献2の飛翔体は、水面に浮遊する無人探査装置に対して捕獲装置を降下させ、捕獲装置を無人探査装置に係止させる。特許文献2には、飛翔体の下降流による影響については開示されていない。
【0009】
特許文献3の実施形態2には、水面に浮遊する計測部を無人飛行体で回収する技術が開示されている。特許文献3の無人飛行体は、水面に浮遊する計測部の上方に飛来し、計測部に降着・結合したのち離水して計測部を回収する。計測部は無人飛行体で回収できる程度の質量であり、無人飛行体の下降流の影響を受けると考えられるものの、特許文献3には、無人飛行体の下降流による影響については開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の制御装置、制御システム、飛行体、制御方法、およびプログラムのうち、制御装置は、
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御装置であって、
前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定された、前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御部、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の制御装置によれば、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る制御システムを構成する飛行体および浮体の概略を示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る制御システムを構成する飛行体および浮体の概略を示す平面図である。
【
図3】
図3は、制御システムの構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、降着経路の一例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、有効降着経路を判定するフローを示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る制御システムの構成を示す概略図である。
【
図7】
図7は、有効降着経路の変更を判定するフローを示す図である。
【
図8】
図8は、飛行体の降着飛行を示す側面図である。
【
図9】
図9は、飛行体の降着飛行を示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係る制御システムの構成を示す概略図である。
【
図11】
図11は、降着経路を算出するフローを示す図である。
【
図12】
図12は、算出された降着経路の変更を判定するフローを示す図である。
【
図15】
図15は、コンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかる制御装置は、
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御装置であって、
前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定された、前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御部、
を備える(第1の構成)。
【0015】
上記構成によれば、飛行制御部は、浮体が下降流を受けた場合の浮体の運動特性に基づいて決定された降着経路に従って飛行体を飛行させる。このため、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させることができる。
【0016】
上記第1の構成において、
前記飛行体および前記浮体の位置関係と、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性と、に基づいて決定された複数の前記降着経路を記憶する降着経路記憶部と、
前記飛行体が飛行予定である前記降着経路を有効降着経路として、前記降着経路記憶部に記憶された前記複数の降着経路のうちのいずれかを前記有効降着経路として判定する、降着経路判定部と、
を備え、
前記飛行制御部は、前記有効降着経路に従って前記飛行体を飛行させてもよい(第2の構成)。
【0017】
上記構成によれば、降着経路判定部は、降着経路記憶部に記憶された複数の降着経路のうちのいずれかを有効降着経路として判定し、飛行制御部は、有効降着経路に従って飛行体を飛行させる。このため、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させることができる。
【0018】
上記第2の構成において、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を算出する位置情報算出部をさらに備え、
前記降着経路判定部は、前記位置情報算出部で算出された位置情報に基づいて、前記降着経路記憶部に記憶された前記複数の降着経路のうちのいずれかを前記有効降着経路として判定してもよい(第3の構成)。
【0019】
上記構成によれば、降着経路判定部は、位置情報算出部で算出された位置情報に基づいて、降着経路記憶部に記憶された複数の降着経路のうちのいずれかを有効降着経路として判定する。このため、飛行体および浮体の相対位置に対応した降着経路を有効降着経路に決定することができる。
【0020】
上記第2または第3の構成において、
前記有効降着経路が決定された後、前記飛行体および前記浮体の位置情報に基づいて、前記有効降着経路を変更する必要があるか否かを判定する降着経路変更判定部をさらに備え、
有効降着経路を変更する必要があると判定された場合、前記降着経路判定部は、前記有効降着経路とは異なる降着経路を新たな有効降着経路として判定してもよい(第4の構成)。
【0021】
上記構成によれば、降着経路変更判定部によって有効降着経路を変更する必要があると判定された場合、降着経路判定部は、新たな有効降着経路を決定する。このため、例えば飛行体の下降流以外の外乱がある場合でも、有効降着経路を変更することにより、飛行体を精度よく浮体に接近および/または降着させることができる。
【0022】
上記第4の構成において、
前記降着経路変更判定部は、前記有効降着経路が更新された場合に、前記有効降着経路を変更する必要があるか否かを再度判定してもよい(第5の構成)。
【0023】
上記構成によれば、降着経路変更判定部は、有効降着経路が更新された場合に、有効降着経路を変更する必要があるか否かを再度判定する。このため、より精度よく、飛行体を浮体に接近および/または降着させることができる。
【0024】
上記第1の構成において、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部で算出された前記飛行体および前記浮体の位置情報と、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性と、に基づいて前記降着経路を算出する降着経路算出部と、
を備え、
前記飛行制御部は、算出された前記降着経路に従って前記飛行体を飛行させてもよい(第6の構成)。
【0025】
上記構成によれば、降着経路算出部は、位置情報算出部で算出された飛行体および浮体の位置情報と、浮体が下降流を受けた場合の浮体の運動特性と、に基づいて降着経路を算出し、飛行制御部は、算出された降着経路に従って飛行体を飛行させる。このため、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させることができる。
【0026】
上記第6の構成において、
前記降着経路が算出された後、前記飛行体および前記浮体の位置情報に基づいて、前記降着経路を変更する必要があるか否かを判定する算出経路変更判定部をさらに備え、
前記降着経路を変更する必要があると判定された場合、前記降着経路算出部は、前記降着経路とは異なる新たな降着経路を算出してもよい(第7の構成)。
【0027】
上記構成によれば、算出経路変更判定部が降着経路を変更する必要があると判定した場合、降着経路算出部は、先に算出された降着経路とは異なる新たな降着経路を算出する。このため、例えば飛行体の下降流以外の外乱がある場合でも、新たな降着経路を算出することにより、飛行体を精度よく浮体に接近および/または降着させることができる。
【0028】
本発明の一実施形態にかかる制御システムは、
上記第1から第7のいずれかの構成の制御装置と、
前記飛行体と、
を備え、
前記飛行体は、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を検知する位置情報検知部、
を有する(第8の構成)。
【0029】
上記構成によれば、飛行中に下降流を発生させる飛行体を、下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させることができる。
【0030】
本発明の一実施形態にかかる制御システムは、
上記第1から第7のいずれかの構成の制御装置と、
前記飛行体と、
前記浮体と、
を備え、
前記飛行体および/または前記浮体は、
前記飛行体および前記浮体の位置情報を検知する位置情報検知部、
を有する(第9の構成)。
【0031】
上記構成によれば、制御システムの一部を浮体に担わせることにより、飛行体の負荷を軽減させることができる。
【0032】
本発明の一実施形態にかかる飛行体は、
上記第1から第7のいずれかの構成の制御装置を備える(第10の構成)。
【0033】
本発明の一実施形態にかかる制御方法は、
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御方法であって、
前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路を、前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定する降着経路決定ステップと、
前記降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御ステップと、
を備える(第11の構成)。
【0034】
本発明の一実施形態にかかるプログラムは、
飛行中に下降流を発生させる飛行体を、前記下降流の影響を受ける浮体に接近および/または降着させる制御装置としてのコンピュータを、
前記浮体が前記下降流を受けた場合の前記浮体の運動特性に基づいて決定された、前記下降流の影響を受けて移動する前記浮体の移動先に向けて飛行させる経路である降着経路に従って前記飛行体を飛行させる飛行制御部と、
して機能させる(第12の構成)。
【0035】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る制御システム100を詳しく説明する。本実施形態にかかる制御システム100は、飛行中に下降流を発生させる飛行体10、および飛行体10からの下降流DFの影響を受ける浮体30を含んでいる。制御システム100は、飛行体10からの下降流DFの影響を受けて移動(漂流)する浮体30に飛行体10を自律的に降着させる飛行に関するシステムである。飛行体10を浮体30に自律的に降着させる飛行を降着飛行とする。また、飛行体10を浮体30に自律的に降着させるように飛行させる経路を降着経路とする。
【0036】
以下の説明では、降着飛行に関するシステムについて主に説明する。降着飛行以外の飛行については、オペレータが無線操縦システムを用いて操縦を行う場合や、降着飛行以外でも飛行体10が自律飛行を行う場合があるが、降着飛行以外の飛行に関しては詳細な説明を省略する。
【0037】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。図中、矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0038】
[全体構成]
まず、制御システム100の全体構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る制御システム100を構成する飛行体10および浮体30の概略を示す側面図である。
図2は、実施形態1に係る制御システム100を構成する飛行体10および浮体30の概略を示す平面図である。
図1において実線で示した飛行体10は、浮体30に降着する前の状態を示しており、仮想線(二点鎖線)で示した飛行体10は、浮体30に降着した状態を示している。
【0039】
図1および
図2に示すように、本実施形態における飛行体10は、自律式の無人飛行体(いわゆるドローン)である。飛行体10は、複数の回転翼14を有するマルチコプター式である。複数の回転翼14は、飛行中に下向きの空気流(下降流)DFを発生させる。下降流DFは、飛行体10の質量が大きくなるほど強くなる。下降流DFは、飛行体10が浮体30に接近するほど、浮体30に与える影響が強くなり、浮体30を移動(漂流)させやすくなる。
【0040】
飛行体10は、本体部11、アーム12、電動モータ13、および回転翼14を有している。本体部11には、制御装置200、バッテリ(図示せず)、位置情報検知部190が設けられている。アーム12は4本設けられており、本体部11に対して放射状に取り付けられている。電動モータ13は、各アーム12の先端部において回転軸が上方に向くように配置されている。回転翼14は、電動モータ13の回転軸に取り付けられている。電動モータ13を駆動させる電力は、本体部11に搭載されたバッテリから供給される。
【0041】
制御装置200は、飛行体10の降着飛行を制御して、下降流DFの影響を受けて移動する浮体30に飛行体10を降着させる。制御装置200は、降着飛行において、複数の電動モータ13の動作を制御して各回転翼14の回転速度を調節することにより、飛行体10の飛行中における姿勢、高度、方向等を制御する。制御装置200の具体的な構成については後述する。
【0042】
位置情報検知部190は、飛行体10の位置情報、および浮体30の位置情報を検知する。
【0043】
浮体30は、降着した飛行体30を水面WL上に支持できる程度の浮力を有する部材である。本実施形態では、浮体30は円柱形状を有しており、質量は飛行体10とほぼ同等であるものとする。浮体30には、降着した飛行体10に給電するための給電設備(図示せず)が設けられている。
【0044】
浮体30の上部には、現在位置表示部31が設けられている。現在位置表示部31は、例えば、飛行体10に設けられた測域センサ197からのレーザー光を反射するレーザー反射体である。
【0045】
なお、飛行体10は、降着飛行の際に自律飛行が可能であれば、必ずしも完全な自律式でなくともよい。例えば、降着飛行時以外は、オペレータにより遠隔操作可能であってもよい。また、飛行体10は、無人飛行体に限定されず、操縦者等が搭乗する有人飛行体であってもよい。飛行体10は、回転翼機に限定されず、降着時に下降流DFを発生させるものであれば、固定翼機やチルトローター式の垂直離着陸機であってもよい。また、駆動源は電動モータに限定されず、レシプロエンジンやターボシャフトエンジン等の内燃機関であってもよい。
【0046】
飛行体10が浮体30に降着した状態とは、飛行体10が直接浮体30上に降り立つ状態だけでなく、飛行体10が浮体30と直接的または間接的に接続された状態も含む。例えば、飛行体10と浮体30とが充電設備を介して接続される状態や、飛行体10が浮体30を把持し、回収するような場合も含む。
【0047】
また、制御システム100は、飛行体10を浮体30に降着させるだけでなく、飛行体10を浮体30に接近させた状態とすることを目的としてもよい。接近した状態は、例えば、飛行体10と浮体30が一時的に近接する状態や、飛行体10と浮体30とが一定期間一定の範囲内に存在する状態も含む。例えば、飛行体10が浮体30に接近し、非接触状態で充電できる範囲に存在する状態も含む。
【0048】
浮体30は、円柱形状に限定されず、他の形状であってもよい。例えば、浮体30は、推進装置を有する船舶の形態を有していてもよい。船舶は、例えば、本願出願人が提案する複数の船体を有する船舶(特許第6332824号)であってもよい。
【0049】
図3は、制御システム100の構成を示す概略図である。制御システム100は、飛行体10の降着飛行を制御するシステムである。制御システム100は、飛行体10、飛行体10に設けられている制御装置200、位置情報検知部190、および電動モータ13を含んでいる。
【0050】
位置情報検知部190は、飛行体位置情報検知部191および浮体位置情報検知部192を有している。飛行体位置情報検知部191は、飛行体10の位置情報を検知する。飛行体位置情報検知部191は、GPSセンサ194、方位センサ195、および高度センサ196を有している。浮体位置情報検知部192は、浮体30の位置情報を検知する。浮体位置情報検知部192は、測域センサ197を有している。
【0051】
GPSセンサ194は、GPS(GlobalPositioningSystem)衛星からのGPS信号を受信する。GPSセンサ194で受信されたGPS信号は、制御装置200に入力される。制御装置200は、GPSセンサ194からのGPS信号に基づいて、飛行体10の現在位置の座標を算出する。
【0052】
方位センサ195は、飛行体10が飛行する方位を検出する。方位センサ195からの検出信号は、制御装置200に入力される。制御装置200は、方位センサ195からの検出信号に基づいて、飛行体10が飛行する方位を算出する。
【0053】
高度センサ196は、飛行体10の高度を検出する。高度センサ196は、例えば、気圧センサである。高度センサ196からの検出信号は、制御装置200に入力される。制御装置200は、高度センサ196からの検出信号に基づいて、飛行体10の高度を算出する。
【0054】
測域センサ197は、飛行体10から浮体30までの相対的な距離を検出する。測域センサ197は、例えばレーザー光を利用して飛行体10から浮体30までの相対的な距離を検出する。制御装置200は、測域センサ197からの検出信号に基づいて、飛行体10から浮体30までの相対的な距離を算出する。
【0055】
制御装置200は、飛行体10から浮体30までの相対的な距離情報L(
図4の仮想線Lの長さL1)と、飛行体10の高度情報H(
図4の高さH1)により、飛行体10から浮体30までを結ぶ仮想線Lと水面WLとがなす角度θ(
図4のθ1)を算出する。
【0056】
制御装置200は、飛行体10から浮体30までの相対的な距離情報L、飛行体10の高度情報H、および、飛行体10の位置座標に基づいて、浮体10の位置座標を算出することもできる。
【0057】
制御装置200には、飛行体10に設けられている複数の電動モータ13が接続されている。制御装置200は、電動モータ13を制御することにより、飛行体10の降着飛行を制御する。
【0058】
制御装置200は、メモリ181、位置情報算出部182、降着経路判定部183、および飛行制御部187を備えている。
【0059】
メモリ181は、飛行体10の降着飛行に関するデータを記憶している。メモリ181には、降着経路データDE1、降着経路判定基準データDE2、および電動モータ制御データDE3が保存されている。
【0060】
降着経路データDE1には、下降流DFの影響を受けて移動(漂流)する浮体30に飛行体10を降着させるための降着経路FRに関するデータが複数記憶されている。降着経路データDE1は、本発明の降着経路記憶部に相当する。ここで、降着経路FRについて
図4を用いて説明する。
【0061】
図4は、降着経路FRの一例を示す側面図である。
図4に示すように、降着経路FRは、飛行体10が発生させる下降流DFによって浮体10が初期位置である位置QA1から位置QA2、QA3を経て位置QA4に移動(漂流)する場合に、飛行体10を位置QA4において浮体30に降着させるための予め決定された飛行経路である。
【0062】
降着経路FRは、初期位置PA1にある飛行体10を初期位置QA1にある浮体30に向けて飛行させる経路ではなく、はじめから移動後の浮体30の位置である位置QA4に向けて飛行させる経路であることを特徴とする。言い換えると、飛行体10は、下降流DFによって移動する浮体30を後から追いかけて飛行するのではなく、下降流DFによって移動する浮体30の移動後の位置が位置QA4であることを予測し、当初から位置QA4に向けて飛行する。飛行体10は、浮体30が位置QA4に移動してくるタイミングで位置PA4に飛来して、位置PA4において位置QA4に移動してきた浮体30に降着する。
【0063】
降着経路FRは、飛行体10および浮体30の位置関係と、浮体30が下降流DFを受けた場合の浮体30の運動特性とに基づいて作成される。浮体30が下降流DFを受けた場合の浮体30の運動特性は、事前の実験等に基づいて把握することができる。
【0064】
発明者による実験によれば、飛行体10および浮体30の質量や寸法、初期位置PA1における飛行体10の高度H、飛行体10の初期位置PA1から浮体30の初期位置QA1までの距離L、高度Hと距離Lから算出される俯角θ等の条件が決定されると、飛行体10の下降流DFによって浮体30が受ける荷重が一意に決定され、浮体30の加速度、速度、位置を事前に予測することが可能であるとの知見が得られている。
【0065】
この知見に基づいて、例えば、
図4に示したように、飛行体10を初期位置PA1からPA2、PA3を経てPA4に飛行させた場合に、浮体30が下降流DFの影響により初期位置QA1からQA2、QA3を経てQA4に移動(漂流)することが予測できる。このため、飛行体10を初期位置PA1からPA4に向けて飛行させ、このときの下降流DFの影響で位置QA4に移動した浮体30に降着させる降着経路FRを作成することができる。
【0066】
複数の条件の下で複数の降着経路FRを予め作成しておき、降着経路FRが降着経路データDE1に複数記憶されることにより、さまざまな条件の下で適切な降着経路FRを選択することが可能となる。なお、例えば、浮体30の質量や寸法が異なると下降流DFを受けた場合の浮体30の運動特性が変化し、飛行体10の質量が異なると下降流DFの強さが変化する。また、飛行体10および浮体30のそれぞれの初期位置など、飛行体10および浮体30の位置関係によって下降流DFが浮体DFに及ぼす影響は変化する。このため、複数の降着経路FRを作成するために変化させる条件としては、飛行体10および浮体30の位置関係や、浮体30の質量や寸法が含まれる。
【0067】
降着経路FRは、実験に基づいて決定されるだけでなく、人工知能や機械学習の手法を用いて作成されてもよい。
【0068】
図3に戻って、降着経路判定基準データDE2には、降着経路データDE1に記憶された複数の降着経路FRのうち、降着飛行の飛行経路として選択されるための判定基準が記憶されている。飛行体10が飛行を予定する飛行経路として選択された降着経路FRは、有効降着経路FRDとされる。
【0069】
降着経路判定基準データDE2には、当該飛行体10の質量、降着する浮体30の質量や寸法が記憶されている。また、降着経路判定基準データDE2には、飛行体10および浮体30の質量や寸法、初期位置PA1における飛行体10の高度H、飛行体10の初期位置PA1から浮体30の初期位置QA1までの距離L、飛行体10から浮体30に対する俯角θ等の条件と、この条件に応じた最適な降着経路FRとの関係が記憶されている。
【0070】
電動モータ制御データDE3には、複数の降着経路FRに従って降着飛行するための各電動モータ13の制御に関するデータが記憶されている。各電動モータ13の制御に関するデータは、例えば、
図4に示した降着経路FRに従って飛行体10を降着飛行させるための各電動モータ13の出力制御に関するデータである。
【0071】
位置情報算出部182は、位置情報検知部190からの検出信号に基づいて、飛行体10の現在位置の位置情報、および、浮体30の現在位置の位置情報を算出する。具体的には、位置情報算出部182は、飛行体位置情報検知部191に含まれるGPSセンサ194、方位センサ195、および高度センサ196の検出信号に基づいて飛行体10の位置情報を算出する。また、位置情報算出部182は、浮体位置情報検知部192に含まれる測域センサ197の検出信号に基づいて浮体30の位置情報を算出する。
【0072】
降着経路判定部183は、メモリ181に記憶されている降着経路データDE1、および降着経路判定基準データDE2を参照して、飛行体10および浮体30の質量、寸法、飛行体10の初期位置PA1における位置情報、および浮体30の初期位置QA1における位置情報等に基づいて、降着経路データDE1に含まれる複数の降着経路FRのうち、条件に適合した降着経路FRを有効降着経路FRDとして判定する。
【0073】
飛行制御部187は、メモリ181に記憶されている電動モータ制御データDE3を参照し、降着経路判定部183で判定された有効降着経路FRDに対応させて、各電動モータ13の出力を制御する。例えば、
図4に示したように、各電動モータ13の出力を制御することによって飛行体10を降着経路FR(有効降着経路FRD)に従って降着飛行させ、飛行体10を位置QA4において浮体30に降着させる。
【0074】
[有効降着経路判定フロー]
図5は、有効降着経路FRDを判定するフローを示す図である。
図5では、制御システム100の制御のうち、有効降着経路FRDを判定するためのフローを示している。
【0075】
図5に示すような有効降着経路判定フローがスタートすると(スタート)、まず、ステップSA1で、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる飛行体位置情報検知部191からの検出信号に基づいて、飛行体10の初期位置PA1における位置情報を算出する。
【0076】
ステップSA2では、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる浮体位置情報検知部192からの検出信号に基づいて、浮体30の初期位置QA1における位置情報を算出する。
【0077】
ステップSA3では、降着経路判定部183は、降着経路データDE1、および降着経路判定基準データDE2を参照して、飛行体10および浮体30の質量、寸法、飛行体10の初期位置PA1における位置情報、および浮体30の初期位置QA1における位置情報等に基づいて、降着経路データDE1に含まれる複数の降着経路FRのうち、条件に適合した降着経路FRを判定する。
【0078】
ステップSA3で、降着経路データDE1に含まれる降着経路FRのいずれかが、条件に適合した降着経路FRとして判定された場合は(ステップSA3でYes)、その降着経路FRを有効降着経路FRDとして選択し(ステップSA4)、フローを終了する(エンド)。ステップSA3で、条件に適合した降着経路FRが存在しないと判定された場合は(ステップSA3でNo)、ステップSA1に戻る。
【0079】
[動作]
次に、制御システム100における飛行体10の動作について
図4を用いて説明する。制御システム100は、飛行体10が初期位置PA1にあり、浮体30が初期位置QA1にある状態において、上記説明した有効降着経路判定フローに基づいて有効降着経路FRDを判定し、
図4に示した降着経路FRを有効降着経路FRDとして選択したとする。
【0080】
飛行体10は、有効降着経路FRDに従い、初期位置PA1から位置PA4に向けて降下しながら降着飛行を行う。なお、制御システム100が有効降着経路FRDを決定するための基準位置となる飛行体10の初期位置PA1および浮体30の初期位置QA1は、飛行体10の下降流DFの影響が浮体30に及びにくい位置(距離、高度)とすることが好ましい。
【0081】
一方、浮体30は、飛行体10の降着飛行が開始されると、飛行体10からの下降流DFの影響をうけて初期位置QA1から移動(漂流)する。下降流DFの影響は、飛行体10が下降・接近するに従って強くなるため、浮体30の移動速度も大きくなる。有効降着経路FRDは、飛行体10が位置PA4に到達するタイミングで、浮体30が位置PA4の下方の位置QA4に到達するように決定されている。このため、制御システム100は、飛行中に下降流DFを発生させる飛行体10を、下降流DFの影響を受ける浮体30に降着させることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、飛行体10が初期位置PA1にあり、浮体30が初期位置QA1にある状態において、有効降着経路FRDが決定されるため、浮体30に飛行体10が降着するまでの間に自然の風や潮流等の外乱によって浮体30の位置がずれる場合があると考えられる。しかしながら、有効降着経路FRDが決定されてから浮体30に飛行体10が降着するまでの間隔は短く、また、飛行体10の下降流DFの影響に比較して外乱の影響が十分小さい場合には、有効降着経路FRDに従って降着飛行することにより、飛行体10を浮体30に降着させることができる。
【0083】
[実施形態2]
実施形態2の制御システム100Aは、降着飛行中に、選択された有効降着経路FRDを変更する必要がある場合には、記憶された降着経路FRの中から新たな有効降着経路FRDを選択して降着飛行の経路を修正する点が実施形態1と異なっている。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0084】
図6は、実施形態2に係る制御システム100Aの構成を示す概略図である。制御装置200Aは、メモリ181A、位置情報算出部182、降着経路判定部183、および飛行制御部187に加えて、降着経路変更判定部184を備えている。
【0085】
メモリ181Aには、降着経路データDE1、降着経路判定基準データDE2、および電動モータ制御データDE3に加えて、降着経路変更判定基準データDE4が保存されている。
【0086】
降着経路変更判定基準データDE4には、有効降着経路FRDが決定された後、飛行体10Aおよび浮体30Aの現在位置における位置情報に基づいて、有効降着経路FRDを変更する必要があるか否かを判定するための判定基準が記憶されている。
【0087】
降着経路変更判定基準データDE4には、各降着経路FRに従って降着飛行を行った場合における、飛行体10Aと浮体30Aとの相対的な位置関係が記憶されている。また、降着経路変更判定基準データDE4には、降着飛行中における飛行体10Aと浮体30Aとの実際の相対的な位置関係が、記憶されている相対的な位置関係に対して差異が生じている場合に、有効降着経路FRDを変更するための判定基準が記憶されている。判定基準として、例えば、飛行体10Aに対する浮体30Aの実際の相対的な位置と、記憶されている浮体30Aの相対位置との差異の許容値が記憶されている。
【0088】
降着経路変更判定部184は、メモリ181に記憶されている降着経路変更判定基準データDE4、および位置情報算出部182によって算出された飛行体10Aと浮体30Aの現在位置の位置情報を参照して、先に決定された有効降着経路FRDを変更する必要があるか否かを判定する。
【0089】
降着経路変更判定部184によって有効降着経路FRDを変更する必要があると判定された場合には、降着経路判定部183は、メモリ181に記憶されている降着経路データDE1、および降着経路判定基準データDE2を参照して、飛行体10Aの現在位置における位置情報、および浮体30Aの現在位置における位置情報等に基づいて、先に決定された有効降着経路FRDとは異なる降着経路FRを新たな有効降着経路FRDとして選択する。降着経路データDE1に含まれる複数の降着経路FRのうち、その時点における条件に適合した降着経路FRが新たな有効降着経路FRDとして選択される。
【0090】
なお、降着経路変更判定部184は、有効降着経路FRDが更新された場合において、有効降着経路FRDを変更する必要があるか否かを再度判定してもよい。
【0091】
[有効降着経路変更判定フロー]
図7は、有効降着経路FRDの変更を判定するフローを示す図である。
図7に示すような有効降着経路変更判定フローがスタートすると(スタート)、まず、ステップSB1で、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる飛行体位置情報検知部191からの検出信号に基づいて、飛行体10Aの現在位置における位置情報を算出する。
【0092】
ステップSB2では、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる浮体位置情報検知部192からの検出信号に基づいて、浮体30Aの現在位置における位置情報を算出する。
【0093】
ステップSB3では、降着経路変更判定部184は、メモリ181に記憶されている降着経路変更判定基準データDE4、および位置情報算出部182によって算出された飛行体10Aと浮体30Aの現在位置の位置情報を参照して、先に決定された有効降着経路FRDを変更する必要があるか否かを判定する。
【0094】
ステップSB3で、有効降着経路FRDを変更すると判定された場合は(ステップSB3でYes)、ステップSB4に進み、新たな有効降着経路FRDを選択する。ステップSB3で、有効降着経路FRDを変更しないと判定された場合は(ステップSB3でNo)、ステップSB1に戻る。
【0095】
ステップSB4で、飛行体10Aと浮体30Aの現在位置からの降着飛行に適合した別の降着経路FRが存在していると判定された場合は(ステップSB4でYes)、その降着経路FRを新たな有効降着経路FRDとして選択し(ステップSB5)、フローを終了する(エンド)。
【0096】
ステップSB4で、飛行体10Aと浮体30Aの現在位置からの降着飛行に適合した降着経路FRが存在していないと判定された場合は(ステップSB4でNo)、ステップSB1に戻る。この場合は、飛行体10Aは、先に決定されている有効降着経路FRに従って降着飛行を続行するようにする。
【0097】
[動作]
次に、制御システム100Aにおける飛行体10Aの動作について
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、飛行体10Aの降着飛行を示す側面図である。
図9は、飛行体10Aの降着飛行を示す平面図である。制御システム100Aは、飛行体10Aが初期位置PB1にあり、浮体30Aが初期位置QB1にある状態において、上記説明した有効降着経路判定フローに基づいて
図8に示した有効降着経路FRD1を決定したとする。当初決定された有効降着経路FRD1では、浮体30Aが初期位置QB1から位置QB3に移動(漂流)したタイミングで飛行体10Aを浮体30Aに降着させる。飛行体10Aは、有効降着経路FRD1に従い、初期位置PB1から浮体30Aの想定位置である位置QB3に向けて降下しながら降着飛行を行う。
【0098】
一方、浮体30Aは、飛行体10Aの降着飛行が開始されると、飛行体10Aからの下降流DFの影響をうけて初期位置QB1から移動(漂流)する。また、同時に浮体30Aは、自然の風や潮流等の外乱を受ける。その結果、当初の有効降着経路FRD1では、飛行体10Aが位置PB2に到達する時点で、浮体30Aは位置QB2に到達すると予測されていたのに対し、実際には浮体30Aは、位置QB3に到達していたものとする。また、
図9に示すように、浮体30Aは外乱の影響により、平面視で有効降着経路FRD1に交差する方向にも距離D1だけ移動したものとする。
【0099】
この状態において、制御システム100Aは、上記説明した有効降着経路変更判定フローに基づいて、
図8および
図9に示した新たな有効降着経路FRD2を決定する。新たな有効降着経路FRD2は、飛行体10Aの現在位置である位置PB2(高度H2、俯角θ2)と、浮体30Aの現在位置である位置QB3に基づいて決定される。
【0100】
新たな有効降着経路FRD2は、飛行体10Aが位置PB4に到達するタイミングで、浮体30Aが位置PB4の下方の位置QB4に到達するように決定されているものとする。このため、制御システム100Aは、飛行中に下降流DFを発生させる飛行体10Aを、下降流DFの影響を受ける浮体30Aに降着させることができる。
【0101】
本実施形態では、有効降着経路FRD1が決定された後、浮体30Aに飛行体10Aが降着するまでの間に自然の風や潮流等の外乱によって浮体30Aの位置が予測の位置からずれた場合でも、有効降着経路FRD1を有効降着経路FRD2に変更することにより飛行体10Aを浮体30Aに降着させることができる。
【0102】
また、外乱の影響がある場合でも、有効降着経路FRDを複数回変更することにより、浮体30Aの予測位置と実際の位置のずれを小さくすることができ、飛行体10Aを浮体30Aに降着させることができる。
【0103】
[実施形態3]
実施形態3の制御システム100Bは、予め作成された複数の降着経路FRの中から有効降着経路FRDを選択するのではなく、飛行体10Bおよび浮体30Bの現在の位置情報、および浮体30Bの運動特性に基づいて降着経路FRを算出する点が実施形態1と異なっている。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1、2と異なる構成についてのみ説明する。
【0104】
図10は、実施形態3に係る制御システム100Bの構成を示す概略図である。制御装置200Bは、メモリ181B、位置情報算出部182、および飛行制御部187に加えて、降着経路算出部185、および算出経路変更判定部186を備えている。
【0105】
メモリ181Bには、運動特性データDE5、算出降着経路データDE6、算出経路変更判定基準データDE7、および電動モータ制御データDE3が保存されている。
【0106】
運動特性データDE5には、浮体30Bが飛行体10Bの下降流DFを受けた場合の浮体30Bの運動特性が記憶されている。運動特性として、例えば、飛行体10Bおよび浮体30Bの質量や寸法、初期位置PC1における飛行体10Bの高度H(
図13のH3)、飛行体10Bの初期位置PC1から浮体30Bの初期位置QC1までの距離L(
図13のL3)、高度Hと距離Lから算出される俯角θ(
図13のθ3)等の条件と、飛行体10Bの下降流DFによる浮体30Bの運動(加速度、速度、位置)との関係が記憶されている。
【0107】
算出降着経路データDE6には、位置情報算出部182で算出された飛行体10Bおよび浮体30Bの位置情報と、浮体30Bが下降流DFを受けた場合の浮体30Bの運動特性と、に基づいて降着経路算出部185で算出された降着経路FRが記憶される。
【0108】
算出経路変更判定基準データDE7には、降着飛行中における飛行体10Bと浮体30Bとの実際の相対的な位置関係が、算出された降着経路FRにおける相対的な位置関係に対して差異が生じている場合に、降着経路FRを変更するための判定基準が記憶されている。判定基準として、例えば、飛行体10Bに対する浮体30Bの実際の相対的な位置と、算出された降着経路FRにおける飛行体10Bに対する浮体30Bの相対位置との差異の許容値が記憶されている。
【0109】
降着経路算出部185は、位置情報算出部182で算出された飛行体10Bおよび浮体30Bの位置情報と、浮体10Bが下降流DFを受けた場合の浮体10Bの運動特性と、に基づいて降着経路FRを算出する。
【0110】
算出経路変更判定部186は、メモリ181Bに記憶されている算出降着経路データDE6、算出経路変更判定基準データDE7、および位置情報算出部182によって算出された飛行体10Bと浮体30Bの現在位置の位置情報を参照して、先に決定された降着経路FRを変更する必要があるか否かを判定する。
【0111】
算出経路変更判定部186によって降着経路FRを変更する必要があると判定された場合には、降着経路算出部185は、位置情報算出部182で算出された飛行体10Bおよび浮体30Bの現在の位置情報と、浮体10Bが下降流DFを受けた場合の浮体10Bの運動特性と、に基づいて現在の降着経路FRとは異なる新たな降着経路FRを算出する。
【0112】
なお、算出経路変更判定部186は、降着経路FRが更新された場合において、降着経路FRを変更する必要があるか否かを再度判定してもよい。
【0113】
[降着経路算出フロー]
図11は、降着経路FRを算出するフローを示す図である。
図11に示すような降着経路算出フローがスタートすると(スタート)、まず、ステップSC1で、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる飛行体位置情報検知部191からの検出信号に基づいて、飛行体10Bの初期位置PC1における位置情報を算出する。
【0114】
ステップSC2では、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる浮体位置情報検知部192からの検出信号に基づいて、浮体30Bの初期位置QC1における位置情報を算出する。
【0115】
ステップSC3では、降着経路算出部185は、位置情報算出部182で算出された飛行体10Bおよび浮体30Bの初期位置情報と、浮体10Bが下降流DFを受けた場合の浮体10Bの運動特性と、に基づいて降着経路FRを算出する。
【0116】
ステップSC4では、算出された降着経路FRは算出降着経路データDE6に記憶され、フローを終了する(エンド)。
【0117】
[算出降着経路変更判定フロー]
図12は、算出された降着経路FRの変更を判定するフローを示す図である。
図12に示すような算出降着経路変更判定フローがスタートすると(スタート)、まず、ステップSD1で、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる飛行体位置情報検知部191からの検出信号に基づいて、飛行体10Bの現在位置における位置情報を算出する。
【0118】
ステップSD2では、位置情報算出部182は、位置情報検知部190に含まれる浮体位置情報検知部192からの検出信号に基づいて、浮体30Bの現在位置における位置情報を算出する。
【0119】
ステップSD3では、算出経路変更判定部186は、メモリ181Bに記憶されている算出降着経路データDE6、算出経路変更判定基準データDE7、および位置情報算出部182によって算出された飛行体10Bと浮体30Bの現在位置の位置情報を参照して、先に決定された降着経路FRを変更する必要があるか否かを判定する。
【0120】
ステップSD3で、降着経路FRを変更すると判定された場合は(ステップSD3でYes)、ステップSD4に進み、新たな降着経路FRを算出する。ステップSD3で、降着経路FRを変更しないと判定された場合は(ステップSD3でNo)、ステップSD1に戻る。
【0121】
ステップSD4では、降着経路算出部185は、位置情報算出部182で算出された飛行体10Bおよび浮体30Bの現在の位置情報と、浮体10Bが下降流DFを受けた場合の浮体10Bの運動特性と、に基づいて新たな降着経路FRを算出する。
【0122】
ステップSD5では、算出された新たな降着経路FRは算出降着経路データDE6に記憶され、フローを終了する(エンド)。
【0123】
[動作]
次に、制御システム100Bにおける飛行体10Bの動作について
図13および
図14を用いて説明する。
図13は、飛行体10Bの降着飛行を示す側面図である。
図14は、飛行体10Bの降着飛行を示す平面図である。制御システム100Bは、飛行体10Bが初期位置PC1にあり、浮体30が初期位置QC1にある状態において、上記説明した降着経路算出フローに基づいて
図13に示した降着経路FR1を決定したとする。飛行体10Bの初期位置PC1および浮体30の初期位置QC1に基づいて当初算出された降着経路FR1では、浮体30が初期位置QC1から位置QC3に移動(漂流)したタイミングで飛行体10Bを浮体30Bに降着させる。飛行体10Bは、降着経路FR1に従い、初期位置PC1から浮体30Bの想定位置である位置QC3に向けて降下しながら降着飛行を行う。
【0124】
一方、浮体30Bは、飛行体10Bの降着飛行が開始されると、飛行体10Bからの下降流DFの影響をうけて初期位置QC1から移動(漂流)する。また、同時に浮体30Bは、自然の風や潮流等の外乱を受ける。その結果、当初の降着経路FR1では、飛行体10Bが位置PC2に到達する時点で、浮体30Bは位置QC2に到達すると予測されていたのに対し、実際には浮体30Bは、位置QC3に到達していたものとする。また、
図14に示すように、浮体30Bは外乱の影響により、平面視で降着経路FR1に交差する方向にも距離D2だけ移動したものとする。
【0125】
この状態において、制御システム100Bは、上記説明した算出降着経路変更判定フローに基づいて、
図13および
図14に示した新たな降着経路FR2を算出する。新たな降着経路FR2は、飛行体10Bの現在位置である位置PC2(高度H4、俯角θ4)と、浮体30Bの現在位置である位置QC3に基づいて決定される。
【0126】
新たに算出される降着経路FR2は、飛行体10が位置PC4に到達するタイミングで、浮体30Bが位置PC4の下方の位置QC4に到達するものとする。このため、制御システム100Bは、飛行中に下降流DFを発生させる飛行体10を、下降流DFの影響を受ける浮体30Bに降着させることができる。
【0127】
本実施形態では、降着経路FR1が算出された後、浮体30Bに飛行体10Bが降着するまでの間に自然の風や潮流等の外乱によって浮体30Bの位置が予測の位置からずれた場合でも、降着経路FR1を降着経路FR2に変更することにより飛行体10Bを浮体30Bに降着させることができる。
【0128】
また、外乱の影響がある場合でも、降着経路FRを複数回算出することにより、浮体30Bの予測位置と実際の位置のずれを小さくすることができ、飛行体10Bを浮体30Bに降着させることができる。
【0129】
図15は、コンピュータ300の構成を示すブロック図である。コンピュータ300は、例えば、上述の制御システム100Bに含まれている。
図10に示すように、コンピュータ300は、CPU310、記憶装置320、インタフェース330を備える。制御システム100Bに含まれる制御装置200Bの動作は、プログラムの形式で記憶装置320に記憶されている。CPU310は、プログラムを記憶装置320から読み出して、上記処理を実行する。
【0130】
また、CPU310は、プログラムに従って、メモリ181Bに対応する記憶領域を記憶装置320に確保する。
【0131】
[変形例]
本発明に係る制御装置、制御システム、飛行体、制御方法、およびプログラムは、上記説明した実施形態に限定されない。
【0132】
上記実施形態では、制御装置は飛行体に設けられているが、制御装置の一部が浮体に設けられるようにしてもよい。例えば、飛行体と浮体が無線通信によって接続され、浮体から送信された有効降着経路が飛行体に受信され、飛行体が有効降着経路に従って降着飛行するようにしてもよい。
【0133】
降着経路は、直線状の経路としたが、飛行体による下降流の影響を考慮して、曲線状の経路となるようにしてもよい。
【0134】
本実施形態では、飛行体と浮体の質量は同程度であるとして説明したが、飛行体と浮体の質量や寸法はそれぞれ限定されるものではない。また、飛行体および浮体は、オペレータが搭乗して各種作業を行うことができる大きさや設備を備えていてもよい。
【0135】
飛行体が浮体に降着する目的はエネルギー補充に限定されない。例えば、浮体に水中環境調査を行う設備を搭載し、飛行体が浮体に降着して水中環境調査データを回収するようにしてもよい。
【0136】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0137】
10 飛行体
30 浮体
100 制御システム
187 飛行制御部
200 制御装置
DF 下降流
FR 降着経路
FRD 有効降着経路