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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H01L21/78 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019143119
(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公開番号】P2021027127
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】茨木 幹之
(72)【発明者】
【氏名】山本 稔
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
(72)【発明者】
【氏名】爲本 広昭
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037470(JP,A)
【文献】特開2018-142702(JP,A)
【文献】特開2012-028452(JP,A)
【文献】特開2017-017163(JP,A)
【文献】特開2006-203251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイアから構成される基板に、上面視において、複数の六角形形状が充填された形状の分割予定線にしたがってレーザ光を走査して照射し、前記分割予定線に沿って前記基板内に第1改質層を形成する第1工程と、
前記基板に、前記分割予定線にしたがって前記第1工程における照射強度よりも強い照射強度のレーザ光を走査して照射し、前記基板内に前記第1改質層と重なる第2改質層を形成する第2工程と、
を含
前記レーザ光はパルスレーザ光であり、前記第1工程及び第2工程において、前記レーザ光を所定のピッチで分割予定線上に照射し、
前記第1工程におけるピッチは、前記第2工程におけるピッチよりも小さい、
発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記分割予定線は、前記六角形形状の6つの辺の延伸方向がそれぞれ前記サファイアからなる基板の劈開面と交差するように規定されている請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、
前記六角形形状の一対の第1対辺に平行な第1方向の分割予定線全体にレーザ光を照射する第1照射工程と、
前記第1照射工程後に、前記六角形形状の前記第1対辺とは異なる一対の第2対辺と平行な第2方向の分割予定線全体にレーザ光を照射する第2照射工程と、
前記第2照射工程後に、前記六角形形状の前記第1対辺及び第2対辺とは異なる一対の第3対辺と平行な第3方向の分割予定線全体にレーザ光を照射する第3照射工程と、
を含む、
請求項1又は2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1照射工程は、
前記第1方向にレーザ光を走査して第1方向の一つの直線上に位置する複数に分断された分割予定線上にレーザ光を照射する第1走査照射工程と、
レーザ光の照射位置を前記第1対辺間の距離だけ平行移動させて第1走査照射工程を繰り返す第1繰り返し工程と、
を含み、
前記第2照射工程は、
前記第2方向にレーザ光を走査して第2方向の一つの直線上に位置する複数に分断された分割予定線上にレーザ光を照射する第2走査照射工程と、
レーザ光の照射位置を前記第2対辺間の距離だけ平行移動させて第2走査照射工程を繰り返す第2繰り返し工程と、
を含み、
前記第3照射工程は、
前記第3方向にレーザ光を走査して第3方向の一つの直線上に位置する複数に分断された分割予定線上にレーザ光を照射する第3走査照射工程と、
レーザ光の照射位置を前記第3対辺間の距離だけ平行移動させて第3走査照射工程を繰り返す第3繰り返し工程と、
を含む、
請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光はパルスレーザ光であり、前記第1工程及び第2工程において、前記レーザ光を所定のピッチで分割予定線上に照射し、
前記第1工程において、前記分断された分割予定線の一端と、当該分割予定線における前記レーザ光の照射開始点との間の距離、及び、前記分断された分割予定線の他端と、当該分割予定線における前記レーザ光の照射停止点との間の距離は、前記第1工程におけるピッチよりも長く、
前記第2工程において、前記分断された分割予定線の一端と、当該分割予定線における前記レーザ光の照射開始点との間の距離、及び、前記分断された分割予定線の他端と、前記レーザ光の照射停止点との間の距離は、前記第2工程におけるピッチよりも長い、請求項4に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程におけるピッチは、1μm以上6μm以下であり、
前記第2工程におけるピッチは、2μm以上10μm以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程における照射強度は、0.6μJ以上 10.0μJ以下であり、
前記第2工程における照射強度は、0.7μJ以上 30.0μJ以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子の製造方法、特にサファイア基板を備える発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ状の加工対象物をレーザ光によって切断する方法として、所望の形状に規定した切断予定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射して、加工対象物内に改質層を形成し、改質層に沿って加工対象物を切断する方法がある。特許文献1では、切断予定ラインを上面視において格子状に規定し、加工対象物を矩形形状のデバイスに切断する方法が開示されている。また、特許文献1では、加工対象物として主としてシリコンウエハを用いた場合の実施例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-268104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載された従来のレーザ加工方法を、例えば、発光素子に用いられるサファイア基板に適用して六角形のデバイスに分割しようとすると精度良く分割することができないという課題があった。
【0005】
そこで、本開示は、サファイア基板を六角形形状に精度良く分割できる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発光素子の製造方法は、
サファイアから構成される基板に、上面視において、複数の正六角形形状が充填された形状の分割予定線にしたがってレーザ光を走査して照射し、前記分割予定線に沿って前記基板内に第1改質層を形成する第1工程と、
前記基板に、前記分割予定線にしたがって前記第1工程における照射強度よりも強い照射強度のレーザ光を走査して照射し、前記基板内に前記第1改質層と重なる第2改質層を形成する第2工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態に係る製造方法によれば、サファイア基板を六角形形状に精度良く分割できる発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】複数の正六角形が充填された形状の分割予定ラインの一例を示す図である。
図2】本発明に係る製造方法により製造される発光素子の構成を簡略化して示す斜視図である。
図3図2に示す発光素子のA-A線における断面図である。
図4】本発明に係る発光素子の製造方法における分割予定ラインを示す図である。
図5】本発明に係る発光素子の製造方法における分割予定ラインを示す図である。
図6】本発明に係る発光素子の製造方法における分割予定ラインを示す図である。
図7】本発明に係る発光素子の製造方法における分割予定ラインを示す図である。
図8】本発明に係る発光素子の製造方法におけるレーザ光の照射開始位置及び照射停止位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する発光素子の製造方法は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
本発明者らは、サファイア基板に、上面視において複数の正六角形形状が充填された形状の分割予定線に沿ってレーザ光を照射してサファイア基板を六角形形状のデバイス領域に分割する検討を行った。
【0011】
レーザ光としては、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザなどのパルスレーザ光を用いることが好ましい。パルスレーザ光のパルス幅としては、100fsec~1000psecが挙げられる。また、レーザ光の波長としてはサファイア基板5を透過可能な波長が選択される。例えば、300~1100nmが挙げられる。サファイア基板5を透過可能な波長のレーザとしては、Nd:YAGレーザ、Yb:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザ、チタンサファイアレーザ、KGWレーザ等が挙げられる。レーザ光のレーザスポット径は、1~10μmが挙げられる。例えば、スポット径1.5μm、波長1045nm、パルス幅1psec(ピコ秒)のレーザを用いる。またパルス間隔が数+ピコから数百ナノ間隔でパルス波を発振するバーストパルスモードを用いてもよい。
【0012】
複数の正六角形形状が充填された分割予定線100は、図1に示すように、各正六角形形状の一辺の集合体であり、第1方向の一つの直線上に位置する複数に分断された第1分割予定線11aと、第2方向の一つの直線上に位置する複数に分断された第2分割予定線12aと、第3方向の一つの直線上に位置する複数に分断された第3分割予定線13aと、を含む。つまり、分割予定線100は1つの方向に着目すれば連続した直線ではなく、この点が例えば特許文献1等に示された一方向に連続した分割予定線を含むものとは異なっている。
また分割予定線100はサファイア基板2を構成するサファイアのm軸方向に沿うほうが望ましい。
【0013】
この分割予定線が一直線上で分断されている点が形状精度よく六角形デバイスに分割することを困難にしているのではないかと考え、分割状態を確認したところ以下のような知見を得た。
第1に、1つの正六角形形状の一辺にレーザ光を照射したとき、改質層から生じたクラックが、上面視において改質層に沿って水平方向に伸展すると、分割予定線の延長線上の分割予定ではないところにまで伸展することがあった。つまり、クラックが改質層に沿って伸展すると、クラックがデバイス形成領域内に伸展し、歩留まりの低下の要因となる。また、図1において104の部号を付して示すように、正六角形形状のデバイス形成領域の角部の内側で分割される場合があり、歩留まりの低下の要因となっていた。
【0014】
そこで、本発明者らは、水平方向(第1方向、第2方向、第3方向)への亀裂の伸展を抑制するために弱い強度で分割予定線全体にレーザ光を照射して基板内に第1改質層を形成し(第1工程)、その後、レーザ光の強度を高くして分割予定線全体にレーザ光を照射して第1改質層に重なるように第2改質層を形成する(第2工程)ようにした。その結果、第2工程において、クラックが分割予定線ではないところにまで伸展することが抑制でき、かつ正六角形形状のデバイス形成領域の角部の内側で分割されることも抑制できることが確認された。
すなわち、第1工程における弱い強度で形成された第1改質層は、第2工程における亀裂の伸展を誘導する改質層であり、この第1改質層は第2工程の第2改質層が形成されたときに第2改質層における亀裂の発生位置の起点となるとともに、第1~第3分割予定線の端部では亀裂の伸展を抑制する機能を果たすと考えられる。
【0015】
本開示に係る発光素子の製造方法は、上記知見に基づいてなされたものであり、
サファイアから構成される基板に、上面視において、複数の六角形形状が充填された形状の分割予定線にしたがってレーザ光を走査して照射し、前記分割予定線に沿って前記基板内に第1改質層を形成する第1工程と、
前記基板に、前記分割予定線にしたがって前記第1工程における照射強度よりも強い照射強度のレーザ光を走査して照射し、前記基板内に前記第1改質層と重なる第2改質層を形成する第2工程と、
を含む。
【0016】
以下、本開示に係る発光素子の製造方法について詳細に説明する。
【0017】
初めに、図2及び図3を参照して、本発明に係る発光素子の製造方法によって製造される発光素子1を説明する。発光素子1は、上面及び下面が正六角形である略六角柱形状のサファイア基板2と、サファイア基板2の上面に設けられた半導体構造3とを含む。サファイア基板2の一辺(正六角形の一辺)の長さは、例えば、300μm以上、3000μm以下である。
【0018】
サファイア基板2の厚さは、例えば、50μm以上、500μm以下である。
【0019】
半導体構造3は、図3に示すように、第1半導体層4、第2半導体層5と、第1半導体層4と第2半導体層5の間に設けられた発光層6とを含む。尚、図3において、サファイア基板2は、半導体構造3より薄く描かれているが、実際は、図2に示すようにサファイア基板2は、半導体構造3より厚いものである。第1半導体層4は、例えば、n型半導体層を含む。第2半導体層5は、例えば、p型半導体層を含む。半導体構造3はさらに、第1半導体層4に接続された第1コンタクト電極7と、第2半導体層5に接続された第2コンタクト電極8とを備えている。半導体構造3の上面視における形状もまた、略正六角形形状である。サファイア基板2上に設けられた半導体構造3は、第1コンタクト電極7と第2コンタクト電極8とを露出させるように設けられた絶縁膜9によって覆われている。
【0020】
絶縁膜9は、例えば、SiO、ZrO、SiN等が挙げられる。
【0021】
以下、略六角柱形状のサファイア基板2を含む発光素子1の製造方法について説明する。
発光素子1の製造方法は、
(1)サファイアからなる基板(サファイアウエハ)と、分割後に発光素子1のサファイア基板2となる領域にそれぞれ設けられた複数の半導体構造3と、半導体構造3上にそれぞれ設けられた第1コンタクト電極7及び第2コンタクト電極8とを含むウエハ10を準備するウエハ準備工程と、
(2)分割後に各発光素子1のサファイア基板2となる領域に区分する分割予定線14に沿ってサファイア基板2にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
(3)分割予定線14に沿ってウエハ10を分割して個々の発光素子1に個片化する工程と、を含む。
ここで、レーザ光照射工程はさらに、第1の照射強度でレーザ光を照射する第1工程と、第1の照射強度よりも強い第2の照射強度でレーザ光を照射する第2工程と、を含む。
以下、適宜図4から図7を参照ながら、各工程について詳細に説明する。
【0022】
1.ウエハ準備工程
本工程では、上述したようにサファイアウエハ及びサファイアウエハ上に設けられた複数の半導体構造3を備えるウエハ10を準備する。本明細書において、ウエハ10は、サファイアウエハと、サファイアウエハ上に設けられた複数の半導体構造3と、各半導体構造3上に設けられた第1コンタクト電極7及び第2コンタクト電極8を含むものとする。
複数の半導体構造3はそれぞれ上面視で略六角形形状に形成されている。隣接する半導体構造3は、上面視において互いの正六角形形状の辺が対向するように配置され、かつサファイアウエハの上面において分割予定線14を含む領域が所定の幅に露出されるように分離されている。尚、上述したように、半導体構造3はそれぞれ封止樹脂9によって覆われているが、封止樹脂9もサファイアウエハの上面において分割予定線14を含む領域が所定の幅に露出されるように分離されていることが好ましい。
【0023】
2.レーザ光照射工程
レーザ光照射工程は、分割後に各発光素子1のサファイア基板2となる領域に区分する分割予定線14に沿ってサファイアウエハにレーザ光を照射する工程である。
分割予定線14は、レーザ光を照射する位置を規定する仮想的な線であり、例えば、隣接する半導体構造3間に露出したサファイアウエハ表面2aの中心線である。分割予定線14は、レーザ光を走査してサファイアウエハの所定の位置に照射できるようにレーザ光照射装置等を制御する制御部に格納されている。このように、分割予定線14は、隣接する半導体構造3の間に規定されており、図4に示すように、サファイア基板2の上面視において、複数の正六角形形状が充填された形状である。つまり、分割予定線14の1つの正六角形形状はそれぞれ、1つの半導体構造3を内包している。ここで、分割予定線14は、正六角形14aの各辺がサファイア基板2の劈開面と交差、すなわち、分割予定線14は劈開方向と一致しないように規定することが好ましい。分割予定線14を劈開方向と一致しないように規定することにより、レーザ光を照射したときに不要な方向に亀裂が伸展することを効果的に抑えることができる。
【0024】
複数の正六角形形状が充填された分割予定線14は、図4に示すように、互いに120°異なる第1方向x、第2方向y、第3方向zのいずれかに延伸する線分の集合である。つまり、分割予定線14は、第1方向xに延伸する第1分割予定線群11と、第2方向yに延伸する第2分割予定線群12と、第3方向zに延伸する第3分割予定線群13の3つの分割予定線群に分けることができる。
【0025】
ここで、第1分割予定線群11に注目すると、図5に示すように、第1分割予定線群11は、第1方向xに伸びる複数(n行)の直線上L1に等間隔に分断されて配置されている。n行の直線L1の隣り合う直線L1は、正六角形14aの向かい合う対辺間の半分の長さである。1つの直線L1上に配置される各第1分割予定線11aは、正六角形14aの一辺である。1つの直線L1上に配置される各第1分割予定線11aは、正六角形14aの1対の対角間の長さ毎に配置されている。
【0026】
同様に、第2分割予定線群12に注目すると、図6に示すように、第2分割予定線群12は、第2方向yに伸びる複数(m行)の直線L2上に等間隔に分断されて配置されている。m行の直線L2の隣り合う直線は、正六角形14aの向かい合う対辺間の半分の長さである。1つの直線L2上に配置される各第2分割予定線12aは、正六角形14aの一辺である。1つの直線L2上に配置される各第2分割予定線12aは、正六角形14aの1対の対角間の長さ毎に配置されている。
【0027】
同様に、第3分割予定線群13に注目すると、図7に示すように、第3分割予定線群13は、第3方向zに伸びる複数(l行)の直線L3上に等間隔に分断されて配置されている。l行の直線L3の隣り合う直線は、正六角形14aの向かい合う対辺間の半分の長さである。1つの直線パスL3上に配置される各第3分割予定線13aは、正六角形14aの一辺である。1つの直線L3上に配置される各第3分割予定線13aは、正六角形14aの1対の対角間の長さ毎に配置されている。
【0028】
以下、それぞれ分割予定線14に沿ってレーザ光を照射する第1工程及び第2工程について説明する。
尚、本明細書において、分割予定線14に沿ってレーザ光を照射するとは、分割予定線14を基準にしてサファイアウエハの所定の位置にレーザ光を集光して照射することをいう。
<第1工程>
本工程では、サファイアウエハに規定された分割予定線14に沿って、サファイアウエハの照射表面2aに第1の照射強度のレーザ光を走査して照射し、サファイア基板2内に第1改質層を形成する。ここで、レーザ光を照射する照射表面2aは、サファイアウエハの厚さ方向の所定の深さの位置に第1改質層が形成される限りサファイアウエハの半導体構造が形成された面であってもよいし、その反対側の裏面であってもよいが、反対側の裏面であることが好ましい。後述する第2工程についても同様である。本工程は、続く第2工程におけるクラックの伸展を誘導する改質層を形成することを目的としている。そのため、第1改質層の厚さは、サファイア基板2の厚さに対して比較的薄くてよい。
【0029】
レーザ光は、一定の速度vで直線走査され、一回の直線走査の間に、一つの直線上に位置する複数に分断された分割予定線11a、12a、13aに沿って照射される。該分割予定線11a、12a、13aは、一つの直線上に一定の間隔で配置されているので、レーザ光は、一定の間隔で照射のON/OFF切替が行われる。
尚、本明細書において、レーザ光を走査するとは、レーザ光を出射する光源を移動してレーザ光の照射位置を移動させること、レーザ光を出射する光源を固定した状態でウエハ10を移動してレーザ光の照射位置を移動させること、レーザ光を出射する光源及びウエハ10の双方を移動してレーザ光の照射位置を移動させること、のいずれも含まれる。
【0030】
本工程は、上述した3つの分割予定線群11、12、13それぞれに、レーザ光を照射する第1~第3照射工程を含む。
【0031】
(第1照射工程)
本工程では、第1分割予定線群11にレーザ光を照射する。本工程では、第1方向xにレーザ光を走査して第1方向xの一つの直線L1上に位置する複数に分断された分割予定線11a上にレーザ光を照射する第1走査照射工程を、正六角形14aの1対の対辺間の半分の距離だけ平行移動させて繰り返すことにより(第1繰り返し工程)、第1分割予定線群11全体にレーザ光を照射する。
【0032】
(1)第1走査照射工程
第1走査照射工程について、図5を参照しながら説明する。ここでは、第(i+1)行目の直線L1を例に挙げて説明する。
レーザ光は、図5において矢印B1に示すように、図の左から右に向けて走査されるとする。尚、図5は、ウエハ10の一部の円形の領域を示しており(図6及び図7についても同様)、第(i+1)番目の直線L1上の点20は走査している途中の点である。
【0033】
レーザ光は、図5における第(i+1)行目の直線L1上の点20において、照射がOFFの状態である。
レーザ光は、照射がOFFの状態で第(i+1)行目の直線L1上を点20から矢印B1方向へ走査される。レーザ光は、第1分割予定線11aの第1端21に到達すると、照射がONに切り替えられる。第1端21は正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がONの状態で第1分割予定線11aに沿って走査し続けられ、第1分割予定線11aの第2端22に到達すると、照射をOFFに切り替えられる。第2端22は、正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がOFFの状態でさらに走査を続けられ、次の第1分割予定線11aの第1端21に到達すると、照射がONに切り替えられる。レーザ光は、照射がONの状態で第1分割予定線11aを沿って走査し続けられ、第2端22に到達すると、OFFに切り替えられる。
このように第1分割予定線11aの第1端21及び第2端22に応じてレーザ光の照射のON/OFF切替が行われ、第(i+1)行目の直線L1上に配置された全ての第1分割予定線11aにレーザ光を照射する。
【0034】
以上のようにして、一直線上の第1走査照射工程が終了すると、次にレーザの照射位置を正六角形14aの対辺間の長さの半分だけ平行移動させて、第(i+2)行目の直線L1上に配置された全ての第1分割予定線11aにレーザ光を照射し、以降順次第1走査照射工程を繰り返して実施する。
以上のようにして、第1分割予定線群11全体に第1の照射強度のレーザ光を走査して照射し、サファイアウエハ内の所定の位置に第1改質層を形成する。
【0035】
(第2照射工程)
本工程では、第1照射工程の後、レーザ光の走査方向を第1方向xから反時計回りへ120°異ならせて、第2方向yに延伸する直線L2上に配置される第2分割予定線群12にレーザ光を照射する。
本工程は、第2方向yにレーザ光を走査して第2方向yの一つの直線L2上に位置する複数に分断された分割予定線12a上にレーザ光を照射する第2走査照射工程を、正六角形14aの1対の対辺間の半分の距離だけ平行移動させて繰り返すことにより(第2繰り返し工程)、第2分割予定線群12全体にレーザ光を照射する。
【0036】
(1)第2走査照射工程
第2走査照射工程について、図6を参照しながら説明する。ここでは、第(j+1)行目の直線L2を例に挙げて説明する。
レーザ光は、図6において矢印B2に示すように、図の右下から左上に向けて走査されるとする。尚、第(j+1)番目の直線L2上の点30は走査している途中の点である。
【0037】
レーザ光は、図6にける第(j+1)行目の直線L2上の点30において、照射がOFFの状態である。
レーザ光は、照射がOFFの状態で第(j+1)行目の直線L2上を点30から矢印B2方向へ走査される。レーザ光は、第2分割予定線12aの第1端31に到達すると、照射がONに切り替えられる。第1端31は、正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がONの状態で、正六角形14aの1つの辺である第2分割予定線12aに沿って走査し続けられ、第2分割予定線12aの第2端32に到達すると、照射をOFFに切り替えられる。第2端32は、正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がOFFの状態でさらに走査を続けられ、次の第2分割予定線12aの第1端31に到達すると、照射がONに切り替えられる。レーザ光は、照射がONの状態で第2分割予定線12aに沿って走査し続けられ、第2端32に到達すると、OFFに切り替えられる。
このように第2分割予定線12aの第1端及び第2端に応じてレーザ光のON/OFFの切替が行われ、第(j+1)行目の直線L2上に配置された全ての第2分割予定線12aにレーザ光を照射する。
【0038】
以上のようにして、一直線上の第2走査照射工程が終了すると、次にレーザ照射位置を正六角形14aの対辺間の長さの半分だけ平行移動させて、第(j+2)行目の直線L2上に配置された全ての第2分割予定線12aにレーザ光を照射し、以降順次第2走査照射工程を繰り返して実施する。
以上のようにして、第2分割予定線群12全体に第1の照射強度のレーザ光を走査して照射し、サファイアウエハ内に第1改質層を形成する。
【0039】
(第3照射工程)
本工程では、第2照射工程の後、レーザ光の走査方向を第2方向yから反時計回りへ120°異ならせて、第3方向zに延伸する直線L3上に配置される第3分割予定線群13にレーザ光を照射する。
本工程は、第3方向zにレーザ光を走査して第3方向zの一つの直線L3上に位置する複数に分断された分割予定線13a上にレーザ光を照射する第3走査照射工程を、正六角形14aの1対の対辺間の半分の距離だけ平行移動させて順次第3走査照射工程を繰り返すことにより(第3繰り返し工程)、第3分割予定線群13全体にレーザ光を照射する。
【0040】
(1)第3走査照射工程
第3走査照射工程について、図7を参照しながら説明する。ここでは、第(k+1)行目の直線L3を例に挙げて説明する。
レーザ光は、図7において矢印B3に示すように、図の右上から左下に向けて走査されるとする。第(k+1)番目の直線L3上の点40は走査している途中の点である。
【0041】
レーザ光は、図7にける第(k+1)行目の直線L3上の点40において、照射がOFFの状態である。
レーザ光は、照射がOFFの状態で第(k+1)行目の直線L3上を点40から矢印B3方向へ走査される。レーザ光は、第3分割予定線13aの第1端41に到達すると、照射がONに切り替えられる。第1端41は、正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がONの状態で、正六角形14aの1つの辺である第3分割予定線13aに沿って走査し続けられ、第3分割予定線13aの第2端42に到達すると、照射をOFFに切り替えられる。第2端42は、正六角形14aの1つの頂点である。レーザ光は、照射がOFFの状態でさらに走査を続けられ、次の第3分割予定線13aの第1端41に到達すると、照射がONに切り替えられる。レーザ光は、照射がONの状態で第3分割予定線13aに沿って走査し続けられ、第2端42に到達すると、OFFに切り替えられる。
このように第3分割予定線13aの第1端及び第2端に応じてレーザ光のON/OFFの切替が行われ、第(k+1)行目の直線L3上に配置された全ての第3分割予定線13aにレーザ光を照射する。
【0042】
上記のように一直線上の第3走査照射工程が終了すると、次にレーザ照射位置を正六角形14aの対辺間の長さの半分だけ平行移動させて、第(k+2)行目の直線L3上に配置された全ての第3分割予定線13aにレーザ光を照射し、以降順次第3走査照射工程を繰り返して実施する。
以上のようにして、第3分割予定線群13全体に第1の照射強度のレーザ光を走査して照射し、サファイアウエハ内に第1改質層を形成する。
以上のようにして、分割予定線14全体に対応するサファイアウエハ内に第1改質層を形成する。
【0043】
(ON/OFF切り替え点)
上述したように、第1~第3走査照射工程において、レーザ光は、正六角形14aの頂点である第1端21、31、41に到達すると照射がONに切り替えられ、正六角形14aの頂点である第2端22、32、42に到達すると照射がOFFに切り替えられる。しかしながら、レーザ光照射装置又はウエハ10を移動させるステージ等の走査機構の位置あわせ精度に一定の制限があり、レーザ光のON/OFFを第1端21、31、41に完全に一致させることは困難である。また、レーザ光のON/OFFを第1端21、31、41に完全に一致させようとすると、レーザ光が分割予定線を越えて照射されてしまうことが起こりえる。したがって、レーザ光のON/OFFさせる位置は、走査機構の位置あわせ精度を考慮して照射開始点及び照射停止点を第1端21、31、41より分割予定線の内側に設定することが好ましい(図8)。
【0044】
具体的には、第1分割予定線11aの場合を例に挙げて図8に示すように、例えば、第1端21とレーザ光の照射を開始する照射開始点S1との間隔を、例えば、走査機構により位置が最大ずれたときの距離である開始許容距離d1に設定する。同様に、第2端22とレーザ光が実際に照射痕の形成を停止する照射停止点S2との間隔を、走査機構により位置が最大ずれたときの距離である停止許容距離d2に設定する。開始許容距離d1及び停止許容距離d2は、主にレーザ光照射装置の走査機構の精度に基づいて決定されるが、さらにレーザ光のスイッチング動作のずれを加味して設定することがさらに好ましい。このようにすると、レーザ光が分割予定線11a、12a、13aを逸脱して、デバイス形成領域内への照射を防止できる。
【0045】
(第2工程)
本工程では、レーザ光の照射強度(第2の照射強度)を第1工程の第1の照射強度より強くして、第1工程における第1走査照射工程、第2走査照射工程、第3走査照射工程と同様に走査させて実施する。なお、第2工程におけるレーザ光のサファイアウエハ内での集光位置(深さ方向における集光位置)は、例えば、第1工程と同様に設定する。以上のようにして、第1工程において形成された第1改質層に重ねて、第1改質層よりも厚い第2改質層を形成する。本工程では、サファイア基板2を分割予定線14に略一致させて分断するためにクラックを発生させる改質層の形成を目的としてレーザ光の照射強度を第1工程より高くしている。そのため、第2改質層の深さ方向における厚さは、第1改質層より厚くなる。
【0046】
(第2工程におけるON/OFF切り替え点)
第2工程においても第1工程と同様、第1~第3走査照射工程において、基本的には、レーザ光は、正六角形14aの頂点である第1端21、31、41に到達すると照射がONに切り替えられ、正六角形14aの頂点である第2端22、32、42に到達すると照射がOFFに切り替えられる。しかしながら、第2工程においても第1工程と同様、レーザ光の走査機構の位置あわせ精度に基づいて、照射開始点及び照射停止点を第1端21、31、41より分割予定線の内側に設定することが好ましい。
【0047】
例えば、第2工程においても、第1分割予定線11aでは、第1端21とレーザ光の照射を開始する照射開始点S1との間隔を、走査機構により位置が最大ずれたときの距離である開始許容距離d1に設定する。同様に、第2端22とレーザ光が実際に照射痕の形成を停止する照射停止点S2との間隔を、走査機構により位置が最大ずれたときの距離である停止許容距離d2に設定する。開始許容距離d1及び停止許容距離d2は、主にレーザ光照射装置の走査機構の精度に基づいて決定されるが、さらにレーザ光のスイッチング動作のずれを加味して照射開始点S1と照射停止点S2とをさらに第1分割予定線11aの内側に設定してもよい。第2分割予定線12a及び第3分割予定線13aについても同様である。
【0048】
またさらに、第2工程では、第1端21と照射開始点S1との間隔を、走査機構による位置ずれた及びレーザ光のスイッチング動作のずれ等により、レーザ光が第1工程における照射開始点S1より第1端21寄りに照射されることがないようにすることが好ましい。したがって、第2工程における照射開始点S1は、第1工程における照射開始点S1より第1端21から離れた位置に設定することが好ましく、例えば、第2工程では、照射開始点S1を第1端21から第1工程における開始許容距離d1の2倍の距離に設定する。照射停止点についても同様であり、第2工程では、第2端22と照射停止点S2との間隔を、照射停止点S2は、第1工程における照射停止点S2より第2端22から離れた位置に設定することが好ましく、例えば、第2工程では、照射停止点S2を第2端22から第1工程における停止許容距離d2の2倍の距離に設定する。
以上のように、第2工程における照射開始点S1及び照射停止点S2を設定することにより、第2改質層を形成したときに生じるクラックの伸展を第1改質層によってより効果的に抑制することができ、デバイス形成領域内におけるクラックの発生をより効果的に抑制できる。
【0049】
サファイア基板2が厚いほど亀裂の伸展範囲を広くする必要があるため第2工程のパルスエネルギーを大きくすることが好ましいが、一方でパルスエネルギーを大きくしすぎると亀裂に蛇行等が生じやすい。したがって、サファイア基板2が厚い場合は、第1工程及び第2工程を行った後、第1工程のパルスエネルギーよりも大きなパルスエネルギーでレーザ光を照射する追加の工程を行うことが好ましい。このような追加の工程により、亀裂の伸展範囲を拡大することができる。追加の工程の深さは、第1工程及び第2工程によって生じる改質領域の範囲内とすることが好ましい。これにより、追加の工程による亀裂が第1工程及び第2工程による亀裂から分離し、枝分かれした亀裂となる可能性を低減することができる。このような追加の工程は複数回行ってもよい。
【0050】
ここで、厚さ200μmのサファイア基板2を用いた場合、第1の照射強度は、例えば、0.6μJ以上10.0μJ以下、好ましくは0.6μJ以上5.0μJ以下であり、第2の照射強度は、例えば、0.7μJ以上30.0μJ以下、好ましくは0.7μJ以上6.0μJ以下の範囲内で、第1の照射強度よりも大きく設定される。レーザ光のフォーカス位置は、例えば、サファイア基板の照射表面2aから30μmの位置である。
【0051】
(照射するレーザ光について)
第1工程及び第2工程でサファイア基板に照射するレーザ光は、例えば、繰り返し周波数fのパルスレーザ光である。パルスレーザを用いると、第1工程及び第2工程ではレーザ光は一定の速度vで直線走査されるため、パルスレーザ光による照射痕(第1改質層及び第2改質層)はv×1/fで算出されるピッチPで形成される。パルスレーザ光を用いる場合は、第1工程と第2工程とでピッチPを異ならせてもよい。この場合、第2工程のピッチP2が、第1工程のピッチP1よりも長くなるように、各工程における繰り返し周波数f1、f2及び速度v1、v2を設定することが望ましい。これにより、第1工程における開始許容距離d1及び停止許容距離d2をより短くすることができ、第1工程においてより第1端21、31、41及び第2端22、32、42の近傍に至るまでレーザ光を照射することができる。そのため、第2工程におけるレーザ光によって伸展したクラックが分割予定線を越えることを防ぐことができる。第1工程におけるパルスレーザ光の周波数f1は、例えば、50kHzであり、レーザ光の走査速度v1は、例えば、50mm/sec以上300mm/sec以下である。そのため、第1工程におけるパルスレーザ光のピッチP1は、例えば、1μm以上6μm以下である。第2工程におけるパルスレーザ光の周波数f2は、例えば、50kHzであり、レーザ光の走査速度v2は、例えば、100mm/sec以上500mm/sec以下である。そのため、第2工程におけるパルスレーザ光のピッチP2は、例えば、2μm以上10μm以下である。
【0052】
また、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる場合に開始許容距離d1、d1’及び停止許容距離d2、d2’を設定する際は、第1工程における開始許容距離d1及び停止許容距離d2は、第1工程におけるレーザ光の照射痕のピッチP1よりも長く設定され、第2工程における開始許容距離d1’及び停止許容距離d2’は、第2工程におけるレーザ光の照射痕のピッチP2よりも長く設定される。このようにすると、第2工程におけるレーザ光によって伸展したクラックが分割予定線を越えることを防ぐことができる。
【0053】
3.個片化工程
本工程では、ウエハ10を第1改質層及び第2改質層に沿って分断し、複数のデバイスに個片化する。ウエハ10の個片化は、改質層から生じたクラックが十分に伸展してから実施することが望ましい。特に、第2改質層から生じたクラックがサファイア基板2の表面に到達してから個片化を実施することが望ましい。
【0054】
以上のように構成された発光素子の製造方法は、弱い強度で分割予定線14全体にレーザ光を照射して基板内に第1改質層を形成する第1工程と、その後、レーザ光の強度を高くして分割予定線14全体にレーザ光を照射して第1改質層に重なるように第2改質層を形成する第2工程とを含む。これにより、クラックが分割予定線14ではないところにまで伸展することが抑制でき、かつ正六角形形状のデバイス形成領域の角部の内側で分割されることも抑制できる。
【0055】
また、上記の発光素子の製造方法では、レーザ光の照射開始点S1及び照射停止点S2を操作装置の位置精度当を考慮して設定することにより、レーザ光が分割予定線14を逸脱して、正六角形形状のデバイス形成領域内への照射を効果的に抑制することができる。
【0056】
さらに、上記の発光素子の製造方法において、レーザ光が照射される分割予定線14をサファイア基板の劈開面と交差するように規定することにより、レーザ光が照射された時、サファイア基板2の劈開性により分割予定線14を超える亀裂の発生を抑制することができる。これにより、サファイア基板2を分断する際の歩留まりを向上させることができる。
【0057】
以下、実施例について説明する。
実施例では、周波数50kHzのパルスレーザ光を用いて、厚さ200μmのサファイアウエハを分割した。分割予定線14は、上面視において、一辺が970μmの複数の正六角形14aを充填した形状に規定した。第1工程では、パルスレーザ光のパルスエネルギーを2.8μJに設定し、速度100mm/sで走査させた。また、第1工程では、照射開始点S1を規定する開始許容距離d1は、3μmとし、照射停止点S2を規定する停止許容距離d2は、3μmとした。第2工程では、パルスレーザ光のパルスエネルギーを4.0μJに設定し、速度200mm/sで走査させた。第2工程では、照射開始点S1を規定する開始許容距離d1は、5μmとし、照射停止点S2を規定する停止許容距離d2は、5μmとした。
また、パルスレーザ光の集光位置は、第1工程及び第2工程において、サファイアウエハの表面から30μmの位置に設定した。
以上のような条件の下で、サファイアウエハを分割した。その結果、形状精度の高く分割できることが確認された。
【0058】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変更してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変更等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0059】
1 発光素子
2 サファイア基板
3 半導体構造
4 第1半導体層
5 第2半導体層
6 発光層
7 第1コンタクト電極
8 第2コンタクト電極
9 絶縁膜
10 ウエハ
11 第1分割予定線群
11a 第1分割予定線
12 第2分割予定線群
12a 第2分割予定線
13 第3分割予定線群
13a 第3分割予定線
14 分割予定線
14a 正六角形
21、31、41 第1端
22、32、42 第2端
d1 開始許容距離
d2 停止許容距離
S1 照射開始点
S2 照射停止点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8