(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法および発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20230830BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20230830BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230830BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01L33/62
F21V23/00 160
H01L21/56 R
H01L21/56 J
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2019165984
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】前田 利恵
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雅昭
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0129906(US,A1)
【文献】特開2015-015378(JP,A)
【文献】特開2004-047617(JP,A)
【文献】特開2019-087658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0033853(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0069375(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F01S 5/00 - 5/50
H01L 21/56
H01L 21/28 - 21/288
H01L 21/44 - 21/445
H01L 23/12
H01L 29/40 - 29/51
H05K 3/10 - 3/16
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極性の第1電極
および前記第1極性とは異なる第2極性の第3電極を含む第1発光素子
と前記第1電極
および前記第3電極を覆う第1樹脂
とを有する第1発光構造の前記第1樹脂の一部と、
前記第1極性の第2電極
および前記第2極性の第4電極を含む第2発光素子
と前記第2電極
および前記第4電極を覆う第2樹脂
とを有する第2発光構造の前記第2樹脂の一部と、第3樹脂に覆われた導体部を有する回路素子の前記第3樹脂の一部とを除去することにより、前記第1樹脂と前記第3樹脂とにまたがる第1溝、前記第2樹脂と前記第3樹脂とにまたがる第2溝、
ならびに、平面視において
前記第1発光素子の前記第3電極に重なる部分、前記第2発光素子の前記第4電極に重なる部分、および前記第1溝と前記第2溝との間に延びる部分を含む第3溝を形成する工程であって、前記第1電極の少なくとも一部および前記回路素子の前記導体部の一部は、前記第1溝の内部に露出されており、前記第2電極の少なくとも一部および前記回路素子の前記導体部の他の一部は、前記第2溝の内部に露出されており、前記第3溝は、
前記第1樹脂、前記第2樹脂、および前記第3樹脂に形成される溝である、溝形成工程と、
前記第1溝および前記第2溝の内部を第1導電材料で充填することによって、
空間的に分離されることにより電気的に独立した複数の部分を含む第1配線を形成する、第1配線形成工程と、
前記第3溝の内部を第2導電材料で充填することによって、前記第1配線から電気的に分離された第2配線を形成する、第2配線形成工程とを含む、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1配線形成工程および前記第2配線形成工程は、一括して実行される、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記溝形成工程の前に、上面を有する支持体を準備する支持体準備工程と、
前記支持体準備工程と前記溝形成工程との間に、前記第1電極
、前記第2電極
、前記第3電極、および前記第4電極を前記支持体とは反対側に向けて前記第1発光素子および前記第2発光素子を前記支持体の前記上面側に配置し、前記支持体の前記上面側であって前記第1発光素子および前記第2発光素子の間に前記回路素子の前記導体部を配置する素子配置工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記素子配置工程と前記溝形成工程との間に、
前記回路素子の前記導体部を樹脂材料で覆い、前記樹脂材料を硬化させることにより前記第3樹脂を形成する第3樹脂形成工程をさらに含
み、
前記第3樹脂形成工程は、前記支持体の前記上面のうち、前記第1発光素子と前記回路素子との間の領域の一部、および、前記第2発光素子と前記回路素子との間の領域の一部を前記樹脂材料の一部で充填することを含む、請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記回路素子の前記導体部は、第1端子および第2端子を含み、
前記溝形成工程において前記第1溝の内部に露出される前記導体部の前記一部は、前記第1端子の表面の少なくとも一部であり、前記溝形成工程において前記第2溝の内部に露出される前記導体部の前記他の一部は、前記第2端子の表面の少なくとも一部である、請求項3または4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3樹脂形成工程は、前記回路素子の前記導体部の全体を前記第3樹脂で覆う工程を含み、
前記溝形成工程は、前記回路素子の前記導体部の前記一部に達する第1穴および前記導体部の前記他の一部に達する第2穴を前記第3樹脂に形成する工程を含み、
前記第1配線形成工程は、前記第1穴および前記第2穴のそれぞれの内部にビアを形成する工程を含む、請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記素子配置工程は、前記支持体の前記上面と前記回路素子の前記導体部との間に支持部材を介在させることにより、前記第1電極の表面、前記第2電極の表面、前記導体部の前記一部および前記他の一部の高さを揃える工程を含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1樹脂、前記第2樹脂および前記第3樹脂のそれぞれは、単一の樹脂層の一部で
ある、請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1配線形成工程は、
前記第1導電材料としての第1導電性ペーストを印刷により前記第1溝および前記第2溝の内部に配置する工程と、
前記第1導電性ペーストを硬化させる工程と
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2配線形成工程は、
前記第2導電材料としての第2導電性ペーストを印刷により前記第3溝の内部に配置する工程と、
前記第2導電性ペーストを硬化させる工程と
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記溝形成工程は、レーザ光の照射により、前記第1樹脂の前記一部と、前記第2樹脂の前記一部と、前記第3樹脂の前記一部とを除去する工程を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
第1極性の第1電極および前記第1極性とは異なる第2極性の第2電極を含む第1発光素子と、
本体部、ならびに、前記本体部を介して互いに電気的に接続された第1端子および第2端子を含む回路素子と、
前記第1発光素子の前記第1電極と前記回路素子の前記第1端子とを結ぶ前記第1極性の第1配線と、
前記第1配線と同じレイヤーに位置し、
前記第1発光素子の前記第2電極に電気的に接続する部分ならびに平面視において前記回路素子の前記第1端子および前記第2端子の間において延びる部分を含む前記第2極性の第2配線と
を備え、
前記回路素子の前記本体部は、前記第1配線と前記第1発光素子の前記第1電極との界面よりも前記第1配線とは反対側に離れた位置に配置されている、発光装置。
【請求項13】
前記第1発光素子および前記回路素子を一括して覆う被覆部をさらに備え、
前記第1配線は、前記被覆部のうち前記回路素子の前記第1端子および前記第2端子側に設けられた第1溝の内部および第2溝の内部にそれぞれ配置された第1部分および第2部分を含み、
前記第2配線は、前記被覆部のうち
、前記第1発光素子の前記第2電極の上、および前記第1溝と前記第2溝との間に設けられた第3溝の内部に配置されている、請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第1配線のうち平面視において前記第1発光素子の前記第1電極と前記回路素子の
前記第1端子との間に位置する部分は、第1方向に延びており、
前記第2配線のうち平面視において前記回路素子の前記第1端子および前記第2端子の間に位置する部分は、前記第1方向に交差する第2方向に延びている、請求項12または13に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDに代表される半導体発光素子が照明等の光源に広く用いられている。例えば、配線基板等の上に複数の発光素子を配置し、配線基板に設けられた配線を介してそれらの発光素子を電気的に接続することにより、線状光源が実現されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の発光素子を含む光源の構成において複数の発光素子を互いに接続する配線を配線基板側に設けようとすると、複数の発光素子の配列ごとに、その配列に応じた配線を有する配線基板を準備する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある実施形態による発光装置の製造方法は、第1電極を含む第1発光素子および前記第1電極を覆う第1樹脂を有する第1発光構造の前記第1樹脂の一部と、第2電極を含む第2発光素子および前記第2電極を覆う第2樹脂を有する第2発光構造の前記第2樹脂の一部と、第3樹脂に覆われた導体部を有する回路素子の前記第3樹脂の一部とを除去することにより、前記第1樹脂と前記第3樹脂とにまたがる第1溝、前記第2樹脂と前記第3樹脂とにまたがる第2溝、および、平面視において前記第1溝と前記第2溝との間に延びる部分を含む第3溝を形成する工程であって、前記第1電極の少なくとも一部および前記回路素子の前記導体部の一部は、前記第1溝の内部に露出されており、前記第2電極の少なくとも一部および前記回路素子の前記導体部の他の一部は、前記第2溝の内部に露出されており、前記第3溝は、前記第3樹脂に形成される溝である、溝形成工程と、前記第1溝および前記第2溝の内部を第1導電材料で充填することによって、独立した複数の部分を含む第1配線を形成する、第1配線形成工程と、前記第3溝の内部を第2導電材料で充填することによって、前記第1配線から電気的に分離された第2配線を形成する、第2配線形成工程とを含む。
【0006】
本開示の他のある実施形態による発光装置は、第1極性の第1電極および前記第1極性とは異なる第2極性の第2電極を含む第1発光素子と、本体部、ならびに、前記本体部を介して互いに電気的に接続された第1端子および第2端子を含む回路素子と、前記第1発光素子の前記第1電極と前記回路素子の前記第1端子とを結ぶ前記第1極性の第1配線と、前記第1配線と同じレイヤーに位置し、平面視において前記回路素子の前記第1端子および前記第2端子の間において延びる部分を含む前記第2極性の第2配線とを備え、前記回路素子の前記本体部は、前記第1配線と前記第1発光素子の前記第1電極との界面よりも前記第1配線とは反対側に離れた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくともいずれかの実施形態によれば、複数の発光素子の配列ごとに、その配列に応じた配線を有する配線基板を準備する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示のある実施形態による発光装置を下面側から見た外観の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に示す発光装置200を発光装置200の中央付近でZX面に垂直に切断したときの断面を模式的に示す図である。
【
図3】本開示の他のある実施形態による発光装置の例示的な製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図5】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図7】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図9】発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図10】発光装置の製造方法の第1の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】発光装置の製造方法の第1の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図12】発光装置の製造方法の第1の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図13】
図10~
図12に示す製造方法によって得られる発光装置200Bの模式的な断面図である。
【
図14】発光装置の製造方法の第2の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図15】発光装置の製造方法の第2の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図16】発光装置の製造方法の第2の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図17】
図14~
図16に示す製造方法によって得られる発光装置200Cの模式的な断面図である。
【
図18】本開示の実施形態に適用可能なジャンパ素子としてのジャンパチップの一例を示す模式的な断面図である。
【
図19】発光装置の製造方法の第3の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図20】発光装置の製造方法の第3の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図21】発光構造間に配置するジャンパ素子として利用可能なジャンパ部材の他の例を示す。
【
図22】発光装置の製造方法の第4の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図23】発光装置の製造方法の第4の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【
図24】発光装置の製造方法の第4の変形例を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による発光装置およびその製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。
【0010】
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の発光装置および製造装置等における、寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0011】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0012】
(発光装置の実施形態)
図1は、本開示のある実施形態による例示的な発光装置を示す。
図1に示す発光装置200は、第1発光素子を含む第1発光構造100Aと、第2発光素子を含む第2発光構造100Bと、これらの発光構造を覆う被覆部120とを有する。
図1では、下面200bを上に向けた状態の発光装置200が描かれている。なお、説明の便宜のために、
図1には、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印もあわせて示されている。
図1に例示する構成において、第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bは、
図1中のX方向に沿って配置されており、発光装置200は、全体として、Y方向と比較してX方向に長い長方体形状を有している。ここでは、発光装置200の下面200bの長方形状の長辺は、図のX方向と平行であり、長方形状の短辺は、図のY方向と平行である。以降、本開示の他の図面においてもX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を図示することがある。
【0013】
後述するように、被覆部120は、光反射性の材料から形成される。第1発光構造100A中の第1発光素子から発せされた光、および、第2発光構造100B中の第2発光素子から発せされた光は、下面200bとは反対側に位置する上面200a側から取り出される。後に詳しく説明するように、第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bは、発光装置200の下面200bとは反対側の上面100aの側に、透光性の第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bをそれぞれ有する。第1発光構造100A中の第1発光素子110Aからの光および第2発光構造100B中の第2発光素子110Bからの光は、それぞれ、第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bを介して発光装置200の外部に取り出される。なお、本明細書における「透光性」の用語は、入射した光に対して拡散性を示すことをも包含するように解釈され、「透明」であることに限定されない。例えば「透光性」は、入射した光に対して60%以上、好ましくは70%以上の透過率を示すことをいう。
【0014】
この例では、第1発光構造100Aは、発光装置200の下面200b側に位置する第1電極111Aおよび第2電極112Aを有している。同様に、第2発光構造100Bは、発光装置200の下面200b側に位置する第1電極111Bおよび第2電極112Bを有する。第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bの詳細は、後述する。
【0015】
図1に示すように、発光装置200は、下面200b側に第1配線210および第2配線220を有する。
図1に例示する構成において、第1配線210は、第1発光構造100Aの第1電極111Aに接続された第1部分211と、第2発光構造100Bの第1電極111Bに接続された第2部分212とを含む。
【0016】
第1配線210の第1部分211は、被覆部120の下面(発光装置200の上面200aとは反対側に位置する面)に設けられた第1溝G1の内部に位置し、外部に露出されたその表面は、被覆部120の下面に概ね整合している。同様に、被覆部120の下面には、さらに第2溝G2が設けられており、第1配線210の第2部分212は、この第2溝G2の内部に位置する。第2部分212の表面も、被覆部120の下面に概ね整合している。
【0017】
平面視において、第1溝G1は、第1発光構造100Aの第1電極111Aと重なる部分を含む。換言すれば、第1溝G1の内部において第1電極111Aの一部が露出されている。第1電極111Aは、その一部が第1溝G1の内部に露出されることにより、第1配線210の第1部分211と電気的に接続されている。他方、第2溝G2は、平面視において第2発光構造100Bの第1電極111Bと重なる部分を含む。第1電極111Bは、その一部が第2溝G2の内部に露出されることにより、第1配線210の第2部分212と電気的に接続される。
【0018】
第1配線210の第1部分211に接続された第1電極111Aは、第1発光構造100A中の第1発光素子の例えば正極である。同様に、第1配線210の第2部分212に接続された第1電極111Bは、第2発光構造100B中の第2発光素子の例えば正極である。第1配線210の第1部分211および第2部分212は、第1配線210のうち空間的に分離されることにより電気的に独立した2つの部分である。ただし、ここでは、第1部分211および第2部分212は、被覆部120の内部に配置されたジャンパ素子250を介して互いに電気的に接続されている。すなわち、第1配線210は、第1発光構造100A中の第1発光素子110Aおよび第2発光構造100B中の第2発光素子110Bに電流を供給する第1極性の配線であるといえる。本明細書において、配線に関する「極性」は、配線自体の導電性ではなく、その配線に接続された発光素子等の電極の極性によって指定される。
【0019】
後に断面図を参照して詳しく説明するように、ジャンパ素子250は、第1端子と、第2端子と、第1端子および第2端子を互いに電気的に接続する本体部とを含む。ここで、上述の第1溝G1は、平面視においてジャンパ素子250の第1端子と重なる部分を含み、第2溝G2は、平面視においてジャンパ素子250の第2端子と重なる部分を含む。ジャンパ素子250の第1端子の一部および第2端子の一部は、第1溝G1の内部および第2溝G2の内部において露出されている。
【0020】
すなわち、ジャンパ素子250の第1端子は、第1配線210の例えば第1部分211に接続され、ジャンパ素子250の第2端子は、第1配線210の第2部分212に接続される。したがって、第1配線210の第1部分211は、第1発光素子の例えば正極と、ジャンパ素子250の第1端子とを電気的に接続し、第1配線210の第2部分212は、第2発光素子の正極と、ジャンパ素子250の第2端子とを電気的に接続する。なお、本明細書において、「ジャンパ素子」の用語は、このような、第1端子、第2端子および本体部を含む素子を広く包含するように解釈され、市販のいわゆる「ジャンパチップ」に限定されない。
【0021】
他方、この例では、第2配線220は、第1発光素子の例えば負極である第2電極112Aと、第2発光素子の負極である第2電極112Bとを互いに電気的に接続する。すなわち、第2配線220は、ここでは、第1配線210の第1極性とは異なる第2極性の配線である。
【0022】
第2配線220は、第1配線210と同じレイヤーに位置する。すなわち、第2配線220は、被覆部120の下面に設けられた第3溝G3の内部に位置している。第1配線210と同様に、第2配線220の、外部に露出された表面は、典型的には、発光装置200の下面200bと整合している。
【0023】
図1に示すように、この例では、第3溝G3は、平面視において第1発光素子の第2電極112Aに重なる部分および第2発光素子の第2電極112Bに重なる部分に加えて、第1溝G1と第2溝G2との間において延びる部分を含む。したがって、第2配線220は、
図1中に点線の楕円で示すように、平面視においてジャンパ素子250の第1端子と第2端子との間において延びる交差部220cをその一部に有している。後述するように、ジャンパ素子250のうち第1端子と第2端子とを電気的に互いに接続する本体部は、第1配線210よりも発光装置200の下面200bから遠い位置にある。したがって、第2配線220の交差部220cと、ジャンパ素子250の本体部との間には、例えば被覆部120等の絶縁部が介在し、これらは互いに接触しない。このように、第2配線220は、ジャンパ素子250および第1配線210から電気的に分離されている。
【0024】
図1に例示する構成において、第1配線210および第2配線220は、それぞれ、発光装置200の外縁付近にまで延長されることにより形成された端子部210eおよび端子部220eを有する。これら端子部210eおよび220eは、はんだ等の接合部材を介して、ドライバ回路などの外部の電源と接続される。発光装置200の端子部210eおよび220eに電源を接続することにより、第1発光構造100A中の第1発光素子と、第2発光構造100B中の第2発光素子とを一括して駆動させることができる。はんだ等の接合部材を介して、端子部210eおよび220eを、それぞれ、配線基板に設けられた配線の正側の配線および負側の配線に接続してもよい。この場合、配線基板に電源を接続することにより、第1発光構造100A中の第1発光素子と、第2発光構造100B中の第2発光素子とを一括して駆動させることができる。
【0025】
図2は、ジャンパ素子250を通る位置で下面200bに垂直に発光装置200を切断したときの断面の一例を模式的に示す。
図2に示す断面は、発光装置200の中央付近でZX面に垂直に発光装置200を切断したときに得られる断面に相当する。
【0026】
図1を参照しながら説明したように、ここでは、発光装置200は、被覆部120の内部に配置された、第1発光構造100A,第2発光構造100Bおよびジャンパ素子250を有する。
図2にその断面が表されたジャンパ部材250Aは、上述のジャンパ素子250の一例である。
【0027】
第1発光構造100Aは、第1電極111Aおよび第2電極112Aを有する第1発光素子110Aをその一部に含む。第1発光素子110Aは、LEDなどの発光半導体発光素子であり、第1電極111Aおよび第2電極112Aに加えて、これらの電極が設けられた半導体積層構造115Aを含む。
【0028】
第1発光素子110Aの上面側(すなわち発光装置200の上面200a側)には、例えば、第1保護部材130Aおよび波長変換部材140Aが配置される。
図2に模式的に示すように、第1発光素子110Aの上方に位置する第1保護部材130Aの上面は、発光装置200の上面200aに整合している。波長変換部材140Aは、第1発光素子110Aと第1保護部材130Aとの間に位置する。
図2に示す例では、第1発光素子110Aは、反射性樹脂部材160Aによって覆われている。
【0029】
本実施形態において、第2発光構造100Bは、第1発光構造100Aと概ね同様の構成を有する。すなわち、第2発光構造100Bは、第2発光素子110Bと、第2保護部材130Bと、波長変換部材140Bと、第2発光素子110Bを覆う反射性樹脂部材160Bとを有する。第2発光素子110Bの上方に位置する第2保護部材130Bの上面は、発光装置200の上面200aに整合している。第1発光素子110Aと同様に、第2発光素子110Bは、第1電極111Bおよび第2電極112Bならびに半導体積層構造115Bを有する。
【0030】
第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bのそれぞれは、単体においても例えば白色光を発する光源として利用可能な構成を有し得る。第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bは、構成が共通する光源であってもよいし、これらの間で一部の構成が異なっていてもよい。
【0031】
ジャンパ部材250Aは、第1端子251Aと、第2端子252Aと、これらの端子が接続された本体部255Aとを含む。第1端子251Aは、第1配線210の第1部分211を介して第1発光素子110Aの第1電極111Aに接続されており、他方、第2端子252Aは、第1配線210の第2部分212を介して第2発光素子110Bの第1電極111Bに接続されている。ジャンパ部材250Aの本体部255Aは、第1端子251Aと第2端子252Aとを互いに電気的に接続する導体部分を少なくとも含んでいる。すなわち、第1発光素子110Aの第1電極111Aと、第2発光素子110Bの第1電極111Bとは、第1配線210およびジャンパ部材250Aを介して互いに電気的に接続されている。
【0032】
図2に示すように、断面視において、第1配線210の第1部分211と第2部分212との間には、第2配線220の交差部220cが位置している。ジャンパ部材250Aの本体部255Aは、第1配線210と発光素子の電極との界面(例えば第1部分211と第1発光素子110Aの第1電極111Aとの界面)よりも第1配線210とは反対側に離れた位置にある。換言すれば、ジャンパ部材250Aの本体部255Aは、第1配線210と発光素子の電極との界面よりも低い位置にあり、第2配線220に直接に接しない。
【0033】
図1および
図2から理解されるように、第1配線210のうち第1発光素子110Aの第1電極111Aとジャンパ部材250Aの第1端子251Aとの間に位置する部分(この例では第1部分211の一部)は、図のX方向(第1方向)に延びている。同様に、第1配線210のうち第2発光素子110Bの第1電極111Bとジャンパ部材250Aの第2端子252Aとの間に位置する部分(この例では第2部分212の一部)も、図のX方向に延びている。これに対し、第2配線220のうちジャンパ部材250Aの第1端子251Aと第2端子252Aとの間に位置する部分(この例では交差部220c)は、第1方向とは異なる第2方向(この例では図のY方向)に延びる。
【0034】
図2に例示する構成において、ジャンパ部材250Aは、反射性樹脂部材260Aによって覆われている。また、この例では、発光装置200の下面200b側に樹脂層270Aが配置されている。第1発光構造100Aの反射性樹脂部材160A、第2発光構造100Bの反射性樹脂部材160B、ジャンパ部材250Aを取り囲む反射性樹脂部材260A、および、発光装置200の下面200b側に位置する樹脂層270Aは、全体として、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Aを覆う被覆部120を構成する。
【0035】
後述するように、第1配線210および第2配線220は、第1発光素子110A等を覆う被覆部120に形成される溝部の内部に形成される。これらの溝部は、例えば、発光装置200の下面200b側に位置する樹脂層をパターニングすることにより形成される。あるいは、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ素子を一体的に覆う樹脂部材の一部を除去することによって形成され得る。
【0036】
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、工程の複雑化を回避しながら、正側の配線と負側の配線との間の交差を発光装置側に形成可能である。したがって、多層基板等を不要としながらも、極性の異なる配線間に比較的容易に交差を設けることができる。さらに、発光素子同士を接続する配線が発光装置側に形成されるので、基本的に、発光構造の数またはレイアウトに応じて、発光装置を支持する配線基板のデザインを都度変更する必要がない。このため、発光構造の数またはレイアウトに応じた配線を有する配線基板を基本的に不要とでき、製造コストを低減することができる。
【0037】
これまでの説明から容易に理解されるように、発光構造およびジャンパ素子に関する数および配置は、基本的に任意であり、上述した例に限定されない。したがって、用途に応じて発光素子の配置、発光素子間の接続等の設計に関して高い自由度が得られる。例えば、パッシブマトリクス駆動で動作する複数の発光素子を含む発光装置を比較的安価で提供し得る。
【0038】
また、例えばレーザ光のビームの走査によって溝を形成し、溝の内部に導電材料を配置することによって第1配線210および第2配線220を形成するので、配線のデザインに高い自由度が得られる。さらに、溝の形状を変更することによって配線の厚さを増大させることも比較的容易であるので、アスペクト比の大きな配線を形成でき、配線抵抗の増大を抑制しながら、発光装置中において発光素子を高密度に配置することが可能になる。発光素子を高密度に配置することが可能になることにより、発光装置を小型化できる。
【0039】
以下、発光装置200の各構成要素をより詳細に説明する。
【0040】
[発光素子]
第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bの典型例は、LEDである。第1発光素子110Aは、半導体積層構造115Aを含み、第2発光素子110Bは、半導体積層構造115Bを含む。半導体積層構造115Aおよび半導体積層構造115Bは、一般に、活性層と、活性層を挟むn型半導体層およびp型半導体層とを含む。半導体積層構造は、紫外~可視域の発光が可能な窒化物半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を含んでいてもよい。なお、第1発光素子110Aの構成と、第2発光素子110Bの構成とは、互いに異なっていてもよいし、共通であってもよい。ここでは、第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bが基本的に共通の構成を有するとし、第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bとして、ともに、青色光を出射するLEDを例示する。
【0041】
半導体積層構造115Aは、n型半導体層およびp型半導体層等を含む複数の半導体層を支持する、サファイアまたは窒化ガリウム等の支持基板をさらに有し得る。この場合、支持基板の主面のうち、複数の半導体層が形成される主面とは反対側の主面が半導体積層構造115Aの上面を構成し、かつ、半導体積層構造115Aの上面は、第1発光素子110Aの上面に一致する。
【0042】
第1発光素子110Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aは、半導体積層構造115Aの上面とは反対側に設けられる。第1電極111Aおよび第2電極112Aは、半導体積層構造115Aに所定の電流を供給する機能を有する。第1電極111Aおよび第2電極112Aは、例えば、Cu電極である。同様に、第2発光素子110Bの第1電極111Bおよび第2電極112Bも、半導体積層構造115Bの上面とは反対側に位置するCu電極であり得る。
【0043】
第1発光素子110Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aの下面は、半導体積層構造115Aを被覆する反射性樹脂部材160Aの下面に概ね整合している。したがって、
図2に例示する構成においては、第1電極111Aの少なくとも一部および第2電極112Aの少なくとも一部は、それぞれ、発光装置200の下面200b側の第1溝G1の内部および第3溝G3の内部において露出されている。同様に、ここでは、第2発光素子110Bの第1電極111Bおよび第2電極112Bの下面は、半導体積層構造115Bを被覆する反射性樹脂部材160Bの下面に概ね整合している。その結果、第1電極111Bの少なくとも一部および第2電極112Bの少なくとも一部も、それぞれ、第2溝G2の内部および第3溝G3の内部において露出されている。
【0044】
[保護部材]
第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bは、それぞれ、発光装置200において第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bの上面の上方に位置する板状の部材である。第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bは、発光素子(第1発光素子110Aまたは第2発光素子110B)側に位置する下面と、発光装置200の上面200a側に位置する上面と、これらの面の間に位置する側面とを有する。第1保護部材130Aの側面および第2保護部材130Bの側面は、被覆部120に覆われており、第1保護部材130Aの上面および第2保護部材130Bの上面は、発光装置200の上面200aのうち発光素子からの光が取り出される発光領域を構成する。
【0045】
第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bの材料の例は、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、トリメチルペンテン樹脂もしくはポリノルボルネン樹脂、または、これらの樹脂の2種以上を含む樹脂組成物である。第1保護部材130Aを形成するための材料と、第2保護部材130Bを形成するための材料とは、共通であってもよいし、異なっていてもよい。保護部材の材料に例えば母材とは屈折率の異なる材料を分散させることにより、保護部材に光拡散性を付与してもよい。第1保護部材130Aおよび/または第2保護部材130Bは、ガラスから形成された層であってもよい。
【0046】
第1保護部材130Aおよび第2保護部材130Bは、例えば、透光性の接着剤によって第1発光素子110Aの上面および第2発光素子110Bの上面にそれぞれ接合される。
図2では簡単のために図示が省略されているが、硬化後の接着剤は、発光素子の本体(半導体積層構造115Aまたは半導体積層構造115B)の側面を覆う部分を有し得る。
【0047】
[波長変換部材]
波長変換部材140Aおよび波長変換部材140Bは、樹脂等の母材に蛍光体の粒子が分散された部材である。
図2に示すように、波長変換部材140Aは、第1発光素子110Aと第1保護部材130Aとの間に位置し、波長変換部材140Bは、第2発光素子110Bと第2保護部材130Bとの間に位置する。
図2に例示する構成において、波長変換部材140Aは、第1保護部材130Aの側面に整合した側面を有しており、波長変換部材140Bは、第2保護部材130Bの側面に整合した側面を有する。これらの側面もまた、被覆部120に覆われている。
【0048】
波長変換部材140Aおよび波長変換部材140Bは、発光素子から出射された光の少なくとも一部を吸収し、発光素子からの光の波長とは異なる波長の光を発する。例えば、波長変換部材140Aおよび波長変換部材140Bは、それぞれ、第1発光素子110Aからの青色光の一部および第2発光素子110Bからの青色光の一部を波長変換して黄色光を発する。このような構成によれば、波長変換部材を通過した青色光と、波長変換部材から発せられた黄色光との混色によって、白色光が得られる。
【0049】
波長変換部材140Aおよび波長変換部材140Bの母材としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂もしくはフッ素樹脂、または、これらの樹脂の2種以上を含む樹脂を用いることができる。母材に分散させる蛍光体としては、公知の材料を適用することができる。蛍光体の例は、YAG系蛍光体、フッ化物系蛍光体、窒化物蛍光体等である。YAG系蛍光体は、青色光を黄色光に変換する波長変換部材の例であり、フッ化物系蛍光体の一種であるKSF系蛍光体、ならびに、窒化物蛍光体であるCASN蛍光体およびSCASN蛍光体は、青色光を赤色光に変換する波長変換部材の例である。窒化物蛍光体の他の一種であるβサイアロン蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換部材の例である。蛍光体は、量子ドット蛍光体であってもよい。
【0050】
なお、波長変換部材140Aの母材中に分散させる蛍光体と、波長変換部材140Bの母材中に分散させる蛍光体とを異ならせてもよい。すなわち、発光装置200中の第1発光構造100Aから発せられる光の波長と、第2発光構造100Bから発せられる光の波長とが一致していることは、本開示の実施形態において必須ではない。
【0051】
[ジャンパ素子]
ジャンパ素子250は、発光装置200において極性の共通する配線同士を互いに電気的に接続する機能を有する回路素子である。例えば
図2に示すジャンパ部材250Aは、第1発光素子110Aの第1電極111Aに接続された、第1配線210の第1部分211と、第2発光素子110Bの第1電極111Bに接続された、第1配線210の第2部分212とを互いに電気的に接続している。
【0052】
ジャンパ素子250としては、第1極性の配線と、第1極性とは異なる第2極性の配線との間の電気的絶縁を確保しながら、これらの間に交差を形成できるような導体部を含む部材であれば、上述のジャンパ部材250Aに限定されず、任意の構成の部材を適用し得る。ジャンパ素子250の一例としてのジャンパ部材250Aは、本体部255A、第1端子251Aおよび第2端子252Aを含んでおり、これらの全体が、第1極性の配線と第2極性の配線との間に交差を形成する導体部を構成する。
【0053】
例えば、ジャンパ部材250Aに代えて、例えば市販のジャンパチップ(ゼロオーム抵抗とも呼ばれる。)をジャンパ素子250として利用することも可能である。一般に、ジャンパチップは、セラミックスおよびガラスエポキシ等の絶縁性の基材の片面または両面に導電層を設け、基材の端部を除いて導電層の表面を絶縁層で覆った構造を有する。導電層のうち絶縁層で覆われていない部分には、めっき等で形成された端子部が設けられる。ジャンパ素子250のいくつかの具体例は、後述する。
【0054】
[反射性樹脂部材]
反射性樹脂部材160Aは、第1発光構造100Aにおいて第1発光素子110Aの半導体積層構造115Aの側面を取り囲むようにして第1発光素子110Aを覆う部材である。反射性樹脂部材160Aは、第1発光素子110Aの発光ピーク波長の光に対して60%以上の反射率を有する。同様に、反射性樹脂部材160Bは、第2発光構造100Bにおいて第2発光素子110Bを覆っており、第2発光素子110Bの発光ピーク波長の光に対して60%以上の反射率を示す。反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bは、発光素子(第1発光素子110Aまたは第2発光素子110B)の発光ピーク波長の光に対して好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の反射率を示し得る。
【0055】
反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bの材料としては、例えば光反射性のフィラーが分散された樹脂組成物を用いることができる。反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bの母材としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)等を用い得る。光反射性のフィラーとしては、金属の粒子、または、母材よりも高い屈折率を有する無機材料もしくは有機材料の粒子を用いることができる。光反射性のフィラーの例は、二酸化チタン、酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウムの粒子、または、酸化イットリウムおよび酸化ガドリニウム等の各種希土類酸化物の粒子等である。高い反射率を得る観点からは、反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bが白色を有すると有利である。反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bの材料としては、ガラス繊維強化樹脂、または、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムもしくは酸化ジルコニウム等のセラミックも用い得る。
【0056】
図2に例示する構成において、反射性樹脂部材160Aは、第1発光素子110Aの半導体積層構造115Aの下面のうち、第1電極111Aおよび第2電極112Aが配置された領域を除く領域を覆う。また、反射性樹脂部材160Bは、第2発光素子110Bの半導体積層構造115Bの下面のうち、第1電極111Bおよび第2電極112B(
図2において不図示)が配置された領域を除く領域を覆う。発光素子の半導体積層構造の下面のうち、第1電極および第2電極が配置された領域を除く領域を反射性樹脂部材(反射性樹脂部材160A、反射性樹脂部材160B)によって覆うことにより、発光素子から発光装置200の下面200b側へ出射された光を反射性樹脂部材によって発光装置200の上面200a側へ反射させることができる。したがって、発光装置200の下面200b側からの光の漏れを抑制して光の取出し効率を向上させ得る。
【0057】
[被覆部]
被覆部120は、全体として第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bに加えてジャンパ素子250をも覆う構造である。被覆部120の下面側、すなわち、発光装置200の下面200b側には、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3が設けられる。
【0058】
典型的には、被覆部120は、第1発光素子110Aを覆う反射性樹脂部材160Aおよび第2発光素子110Bを覆う反射性樹脂部材160Bの材料と同様の材料から形成される。すなわち、被覆部120は、典型的には、光反射性のフィラーが分散された樹脂組成物等から形成され、光反射性である。なお、被覆部120を形成するための材料が反射性樹脂部材160Aまたは反射性樹脂部材160Bの材料に厳密に一致している必要はない。被覆部120の材料と、反射性樹脂部材160Aの材料または反射性樹脂部材160Bの材料との間で、母材、光反射性のフィラーの種類または含有量等が異なっていることもあり得る。
【0059】
被覆部120は、光反射性を有する点で反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bと共通し、したがって、被覆部120を、反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bをその一部に含む構造とみなすことができる。このような見方において、被覆部120は、第1発光素子110Aを覆う部分と、第2発光素子110Bを覆う部分とを含む。また、被覆部120は、これら以外の部分、換言すれば、ジャンパ素子250を覆う部分をも含んでいる。これら第1発光素子110Aを覆う部分、第2発光素子110Bを覆う部分、および、ジャンパ素子250を覆う部分を、それぞれ、第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂と呼ぶことにすれば、上述の第1溝G1は、第1樹脂と第3樹脂とにまたがって形成され、第2溝G2は、第2樹脂と第3樹脂とにまたがって形成される。第3溝G3のうち、上述の交差部220cが配置される部分は、被覆部120のうち第3樹脂に形成される。
【0060】
後に図面を参照して詳しく説明するように、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3は、レーザ光の走査によって形成され得る。これらの溝の形成にレーザ光の走査を適用する場合、レーザ光を吸収する材料が被覆部120中に分散されていると、レーザ光を効率的に被覆部120に吸収させて被覆部120の表面の部分的な除去を効率的に行い得る。
【0061】
レーザ光を吸収する材料の典型例は、着色材である。例えば、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形成に、中心波長が紫外域にあるUVレーザを適用する場合、二酸化チタン、カーボン、硫酸バリウム、酸化亜鉛等のフィラーを、レーザ光を吸収する材料として被覆部120中に分散させ得る。第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形成に、532nmの波長を有するレーザを出力する、グリーンレーザと呼ばれるレーザ光源を適用する場合には、カーボン、酸化ニッケル、酸化鉄(III)等をフィラーに用いることができ、中心波長が赤外域にあるIRレーザを適用する場合には、カーボン、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、タングステン複合酸化物等をフィラーに用い得る。
【0062】
被覆部120が発泡プラスチックから形成されていると、被覆部120が、それぞれが複数の孔(pore)を有するセルを含むことにより、溝の底部に自然に微細な凹凸が形成される。したがって、被覆部120と、後述する第1配線210および第2配線220との間のアンカー効果の向上が期待できる。
【0063】
[第1配線および第2配線]
第1配線210および第2配線220は、発光装置200の下面200bに形成された溝の内部に位置する導電構造である。
図1および
図2に示すように、第1配線210は、第1部分211および第2部分212を含み、第1部分211および第2部分212は、それぞれ、第1溝G1および第2溝G2の内部に位置する。他方、第2配線220は、第1溝G1および第2溝G2とは分離されて形成された第3溝G3の内部に配置されている。
図1に示すように、第1配線210の第1部分211および第2部分212は、それぞれ、平面視において第1溝G1および第2溝G2の形状に整合した形状を有し、第2配線220も、平面視において第3溝G3の形状に整合した形状を有する。なお、
図1に示す、第1配線210および第2配線220の形状は、あくまでも例示であり、平面視における第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形状は、基本的に任意である。
【0064】
図2では、第1配線210と第1溝G1の底との界面、第1配線210と第2溝G2の底との界面、および、第2配線220と第3溝G3の底との界面が平坦面として描かれている。しかしながら、第1配線210の底面および第2配線220の底面が平坦面であることは、本開示の実施形態において必須ではない。例えば、レーザ光の照射によって被覆部120に第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成するような場合、これらの溝の表面は、凹凸を有し得る。
【0065】
本開示の実施形態によれば、例えば印刷によって導電ペーストのような導電材料で第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を充填することにより、第1配線210および第2配線220を効率的に形成することが可能である。第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の表面が凹凸を有していると、被覆部120に形成された凹部の内部も導電材料で充填され得る。したがって、第1配線210および第2配線220は、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の凹凸に追従した形状の凹凸を含む底面を有し得る。第1配線210および第2配線220の底面の形状を、被覆部120に形成された溝の表面の凹凸形状に整合した形状とすることによって、より大きなアンカー効果を生じさせ得る。すなわち、第1配線210または第2配線220の発光装置200からの剥離を抑制する効果が得られる。後述するように、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の底面は、複数の溝等の構造から形成され得る。
【0066】
なお、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3は、例えば5μm以上50μm以下の深さを有する。第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3がこのような深さを有し得ることに対応して、第1配線210および第2配線220も概ね5μm以上50μm以下程度の範囲の厚さを有し得る。
【0067】
(発光装置の製造方法の実施形態)
以下、本開示の実施形態による発光装置の製造方法を説明する。
図3は、発光装置の例示的な製造方法を示すフローチャートである。
図3に例示する製造方法は、第1発光素子を覆う第1樹脂の一部、第2発光素子を覆う第2樹脂の一部、および、導体部を有する回路素子を覆う第3樹脂の一部の除去により、第1溝、第2溝および第3溝を形成する工程(ステップS1)と、第1溝および第2溝の内部を第1導電材料で充填することによって第1配線を形成する工程(ステップS2)と、第3溝の内部を第2導電材料で充填することによって第2配線を形成する工程(ステップS3)とを含む。以下、各工程の詳細を説明する。
【0068】
(溝形成工程)
まず、第1発光素子110Aをその一部に含む第1発光構造100Aと、第2発光素子110Bをその一部に含む第2発光構造100Bと、ジャンパ素子250とを準備する。第1発光構造100Aおよび/または第2発光構造100Bは、作製によって準備されてもよいし、購入によって準備されてもよい。上述したように、第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bのそれぞれは、単体においても光源として利用可能な構成を有し得る。第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bとして、例えば、LEDパッケージ等の名称で市販されている光源を用いることができる。
【0069】
ジャンパ素子250としては、間隔をあけて配置された2つの端部であって、それぞれが端子として機能可能な2つの端部と、これらの端部間を電気的に接続する本体部とを有する回路素子を広く利用できる。ここでは、
図2に示すジャンパ部材250Aをジャンパ素子250として用いる例を説明する。
【0070】
次に、上面を有する支持体を準備する(支持体準備工程)。ここでは、
図4に示すように、平坦な上面400aを有する支持体400を準備している。支持体400としては、例えば、リングフレーム等に支持された耐熱性の粘着テープを用いることができる。
【0071】
次に、第1発光構造100A、第2発光構造100Bおよびジャンパ部材250Aを支持体上に配置する(素子配置工程)。簡単のため、ここでは、第1発光構造100A、ジャンパ部材250Aおよび第2発光構造100Bを図のX方向に沿って一次元的にこの順で配置した例を示す。ただし、支持体上に配置される素子の数および配置は、この例に限定されない。例えば、3以上の発光構造を支持体上に二次元に配置してもかまわない。この場合、発光構造の数および配置に応じて、ジャンパ素子の数および配置を決定すればよい。
【0072】
このとき、
図4に模式的に示すように、第1電極111Aおよび第2電極112Aを支持体400とは反対側に向けて第1発光構造100Aを支持体400の上面400a上に一時的に固定する。第2発光構造100Bも同様に、第1電極111Bおよび第2電極112B(
図4において不図示)を支持体400とは反対側に向けた状態で支持体400の上面400a上に一時的に固定されている。ここでは、第1発光構造100Aは、第1保護部材130Aおよび波長変換部材140Aの積層体を含んでおり、また、第2発光構造100Bは、第2保護部材130Bおよび波長変換部材140Bの積層体を含んでいる。したがって、第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bは、支持体400の上面400aの上方に位置する。
【0073】
この例では、第1発光構造100Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aの下面は、反射性樹脂部材160Aから露出されており、第2発光構造100Bの第1電極111Bおよび第2電極112Bの下面も、反射性樹脂部材160Bから露出されている。支持体400の上方に第1発光素子110Aおよび第2発光素子110Bが配置された状態において、第1発光素子110Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aの下面と、第2発光素子110Bの第1電極111Bおよび第2電極112Bの下面とは、支持体400の上面400aを基準として概ね同じ高さにある。
【0074】
本明細書では、発光素子の電極が,発光素子を覆う樹脂に覆われているか、発光素子を覆う樹脂から露出されているかに関わらず、電極の設けられた発光素子をその一部に含む構造に対して共通して「発光構造」の用語を使用する。支持体上に配置された状態において、発光素子を覆う反射性樹脂部材から電極の下面が露出されていることは、本開示の実施形態において必須ではない。
【0075】
図4に示すように、ジャンパ部材250Aも同様に、第1端子251Aおよび第2端子252Aを支持体400とは反対側に向けて支持体400の上面400a上に配置される。ただし、ここでは、支持体400の上面400aとジャンパ部材250Aとの間に支持部材280を介在させた状態でジャンパ部材250Aを支持体400に一時的に固定している。すなわち、ここでは、ジャンパ部材250Aの配置の前に、支持体400の上面400a上に支持部材280を配置する工程(支持部材配置工程)を実行している。
【0076】
ジャンパ素子の高さと、発光構造の高さとは、多くの場合、一致しない。例えば市販のジャンパチップは、発光素子に加えて波長変換部材等を含むパッケージの形で提供される発光構造と比較して、一般に、より小さな厚さを有し得る。支持体400とジャンパ部材250Aとの間に適当な厚さの支持部材280を介在させることにより、
図4に点線で示すように、第1端子251Aおよび第2端子252Aの下面の位置を第1電極111Aおよび第2電極112Aならびに第1電極111Bおよび第2電極112B(
図4において不図示)の下面の位置に概ね一致させることが可能になる。
【0077】
支持部材280としては、発光構造の高さとジャンパ部材250Aの高さとの差に相当する高さを有する部材であれば好適に用いることができる。典型的には、支持部材280は、絶縁性であるが、導電性の部材を支持部材280に適用してもかまわない。支持部材280の例は、樹脂シート、樹脂ブロック、金属板等である。ジャンパ部材250Aは、例えば接着剤によって支持部材280に固定される。
【0078】
次に、
図5に示すように、支持体400の上面400aのうち、第1発光構造100Aとジャンパ部材250Aとの間の領域、および、第2発光構造100Bとジャンパ部材250Aとの間の領域を樹脂材料で充填する。その後、樹脂材料を硬化させることにより、第1発光構造100A、第2発光構造100Bおよびジャンパ部材250Aを一括して覆う樹脂層120Tを得ることができる。
【0079】
図5に例示する構成において、樹脂層120Tは、支持体400または支持部材280と接している部分を除いて、第1発光構造100Aの全体、第2発光構造100Bの全体およびジャンパ部材250Aの全体を覆っている(被覆工程)。これにより、第1発光構造100A、第2発光構造100Bおよびジャンパ部材250が一体とされた構造が支持体400上に得られる。
【0080】
樹脂層120Tの材料としては、反射性樹脂部材160Aまたは反射性樹脂部材160Bの材料と同様の材料を用い得る。樹脂層120T形成の工程は、トランスファー成形、スプレー塗布、圧縮成形等を適用することによって実行できる。なお、反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bの材料と共通の材料から樹脂層120Tを形成した場合、断面視において、第1発光構造100Aと樹脂層120Tとの間、および、第2発光構造100Bと樹脂層120Tとの間に明確な境界が見られないこともあり得る。また、樹脂層120Tの材料と、支持部材280の材料とを共通とした場合、同様に、支持部材280と樹脂層120Tとの間に明確な境界が見られないことがあり得る。以下では、支持部材280の材料と同一の材料から樹脂層120Tを形成した例を説明する。
【0081】
次に、
図6に模式的に示すように、必要に応じて、研削加工等によって支持体400とは反対の側から樹脂層120Tの一部を除去し、樹脂層120Tの厚さを低減する。ここでは、樹脂層120Tの一部の除去により、第1発光構造100Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aの下面、第2発光構造100Bの第1電極111Bおよび第2電極112B(
図6において不図示)の下面、ならびに、ジャンパ部材250Aの第1端子251Aおよび第2端子252Aの下面を樹脂層120Tから露出させている。なお、後述するように、第1電極111Aおよび第2電極112A、第1電極111Bおよび第2電極112B、ならびに、第1端子251Aおよび第2端子252Aの下面が樹脂層120Tから露出されていることは、本開示の実施形態において必須ではない。
【0082】
また、樹脂層120Tの一部の除去により、支持体400上に、少なくともジャンパ部材250Aを覆う反射性樹脂部材260Aが形成される(第3樹脂形成工程)。この例では、支持部材280は、
図2を参照しながら説明した反射性樹脂部材260Aの一部を構成している。
【0083】
ここでは、樹脂層120Tの一部の除去後、
図7に示すように、支持体400上の構造の表面に樹脂層270Sを配置している。樹脂層270Sとしては、例えば、粘着層を有する樹脂テープを用いることができる。樹脂層120Tの研削面への樹脂テープの貼付後、加熱、紫外線の照射等によって樹脂テープの粘着層を硬化させる。あるいは、所定の厚さを有する樹脂シートを支持体400上の構造上に接着剤等によって配置することにより、樹脂層270Sを形成してもよい。樹脂層270Sの厚さは、典型的には、5μm以上100μm以下の範囲である。
【0084】
図7に例示する構成において、樹脂層270Sは、第1発光構造100A、第2発光構造100Bおよび反射性樹脂部材260Aにわたって連続する単一の樹脂部材である。ここで、「単一である」とは、樹脂層270Sを単層に限定することを意図しておらず、樹脂層270Sは、積層シートの形で提供されてもよい。樹脂層270Sは、透光性のシートであってもよいし、顔料等が分散されることにより例えば白色を呈するシートであってもよい。
【0085】
次に、樹脂層270Sの一部を除去することにより、第1溝、第2溝および第3溝を形成する(
図3のステップS1)。ここでは、
図8に模式的に示すように、レーザ光の照射により、樹脂層270Sの一部の除去を実行する。
【0086】
レーザ光の照射には、公知のレーザアブレーション装置を適用できる。
図8では、レーザ光源510およびガルバノミラー520を含むレーザアブレーション装置500を適用した例を示す。レーザアブレーション装置500中のガルバノミラーの個数は、2以上であり得る。レーザ光源510の例は、CO
2レーザ、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO
4レーザ、アルゴンイオンレーザ等である。あるいは、グリーンレーザをレーザ光源510として用いることも可能である。レーザアブレーション装置500は、ファイバーレーザを備える装置であってもよい。また、SHG、THG等を利用した高調波発生器によって第二高調波、第三高調波等を得て樹脂層270Sを加工することも可能である。
【0087】
樹脂層270Sの表面をレーザ光のビームLBで走査することにより、樹脂層270Sのうち所望の領域を選択的に除去可能である。樹脂層270Sのうち、第1発光構造100Aを覆う部分、第2発光構造100Bを覆う部分、および、ジャンパ部材250Aを覆う部分をそれぞれ第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂と呼ぶことにすると、ここでは、樹脂層270Sのうち、少なくとも、第1樹脂の一部、第2樹脂の一部および第3樹脂の一部を除去する。これにより、
図8に示すように、支持体400上の構造の支持体400とは反対側に、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を有する樹脂層270Aを形成できる。樹脂層270Aの形成により、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ素子250を一括して覆う被覆部120を得ることができる。この例では、被覆部120は、反射性樹脂部材160A、反射性樹脂部材160Bおよび反射性樹脂部材260Aをその一部に含む光反射性の構造であるといえる。
【0088】
第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形成の工程においては、第1樹脂のうち第1電極111A上に位置する部分、第2樹脂のうち第1電極111B上に位置する部分、ならびに、第3樹脂のうち第1端子251A上に位置する部分および第2端子252A上に位置する部分が除去される。すなわち、第1発光素子110Aの第1電極111Aの少なくとも一部および第2電極112Aの少なくとも一部、第2発光素子110Bの第1電極111Bの少なくとも一部および第2電極112Bの少なくとも一部、ならびに、ジャンパ部材250Aの第1端子251Aの少なくとも一部および第2端子252Aの少なくとも一部が露出されるように、レーザ光を照射する。このとき、樹脂層270Sの一部とともに発光素子の電極の表面の一部および/またはジャンパ素子の端子の表面の一部が除去されてもかまわない。
【0089】
レーザ光の照射によって第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成する場合、例えば図のXY面においてある方向に沿ったレーザ光のビームの走査を繰り返してもよい。このような照射により、それぞれが走査の方向に沿って延びる複数の微細な溝を形成することができる。第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3のそれぞれは、これらの微細な溝を走査の方向とは異なる方向にそって配置することにより形成された構造であってもよい。
【0090】
レーザスポットの一部を重ねるようにして、例えば図中のX方向およびY方向のいずれとも異なる方向に沿ってレーザ光をパルス照射することにより、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成できる。もちろん、レーザ光のビームの走査方向は、任意であり、レーザ光のビームの走査方向がX方向またはY方向に一致していてもよい。レーザ光の照射条件の一例を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:2.4W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
微細な溝のピッチ:15μmまたは30μm
【0091】
第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3のそれぞれの延びる方向は、レーザ光のビームの走査方向による制約を受けない。すなわち、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3、ひいては、これらの溝の内部に形成される配線の平面視における形状の設計に関して高い自由度が得られる。また、微細な溝の集合の形で第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成することにより、これらの溝の底に微細な凹凸が形成される結果、被覆部120と、後述する第1配線210および第2配線220との間に、より強力なアンカー効果を発現させ得る。
【0092】
ある方向に沿った複数回のレーザ光の走査の後に、これとは異なる照射パターンで第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の底をさらにレーザ光を照射してもよい。例えば、ある方向に沿った1回目のレーザ光の走査の後に、さらに異なる方向に沿った2回目のレーザ光の走査を実行し、1回目のレーザ光の走査によって形成された複数の微細な溝と交差する複数の微細な溝をさらに形成してもよい。あるいは、1回目のレーザ光の走査の後に、ドット状のパターンでレーザ光の照射を実行してもよい。これにより、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の底に、例えばドット状の、相対的に深い複数の凹部を形成できる。ここで、本明細書における「照射パターンが異なる」とは、レーザスポットの移動の軌跡が異なるような動作に限定されず、1回目のレーザ光照射の工程と2回目のレーザ光照射の工程との間でレーザスポットの移動の軌跡(あるいはステージに対するレーザヘッドの相対的な移動の軌跡)を共通としながら、レーザの出力、パルス間隔等を互いに異ならせるような動作をも包含するように広く解釈される。第1の照射パターンとは異なる第2の照射パターンでのさらなるレーザ光の照射を実行することにより、アンカー効果の向上が期待できる。
【0093】
なお、本開示の実施形態において、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成する前の状態において、発光素子の電極(第1電極111A、111B、第2電極112A、112B)およびジャンパ素子の端子(第1端子251Aおよび第2端子252A)が外部に露出されていることは、必ずしも求められない。例えば、レーザ光の照射の前において発光素子の電極およびジャンパ素子の端子が白色の樹脂層等に覆われていることもあり得る。画像認識等により、発光素子の電極およびジャンパ素子の端子の位置が検出可能であれば、樹脂層270Sが例えば白色の樹脂シート等であったとしてもかまわない。
【0094】
図8に示すように、第1溝G1は、第1樹脂と第3樹脂とにまたがって設けられ、第2溝G2は、第2樹脂と第3樹脂とにまたがって設けられる。第3溝G3の少なくとも一部は、第3樹脂に形成され、平面視において第1溝G1と第2溝G2との間に延びる部分を含む。
図8に示すように、第1発光構造100Aの第1電極111Aの少なくとも一部、および、ジャンパ部材250Aの第1端子251Aの少なくとも一部は、第1溝G1の内部に露出されている。また、第2発光構造100Bの第1電極111Bの少なくとも一部、および、ジャンパ部材250Aの第2端子252Aの少なくとも一部は、第2溝G2の内部に露出されている。
【0095】
(第1配線形成工程)
次に、第1溝G1の内部と第2溝G2の内部とを第1導電材料で充填することによって、独立した複数の部分を含む第1配線を形成する(
図3のステップS2)。ここでは、
図9に模式的に示すように、スキージ390を用いた印刷により、第1溝G1および第2溝G2の内部に第1導電材料としての導電ペースト20を配置する例を示している。
【0096】
導電ペースト20としては、エポキシ樹脂等の母材にAu、Ag、Cu等の粒子を分散させた材料を用いることができる。例えば、公知のAuペースト、AgペーストまたはCuペーストを導電ペースト20として用い得る。導電ペースト20は、溶剤を含んでいてもかまわない。導電ペースト20に代えて、例えば、Sn-Bi系はんだに銅粉が含有された合金材料を導電性材料として用いてもよい。
【0097】
第1溝G1および/または第2溝G2の内部、あるいは樹脂層270A上に導電ペースト20を付与し、
図9に太い矢印MVで示すようにスキージ390を樹脂層270Aの表面上で移動させる。このとき、導電ペースト20の一部が第1溝G1および第2溝G2の内部に入り込む。すなわち、第1溝G1および第2溝G2の内部は、導電ペースト20で充填された状態となる。
【0098】
その後、第1溝G1および第2溝G2の内部に配置された導電ペースト20を加熱または光の照射によって硬化させる。導電ペースト20の硬化により、
図2に示す例のように、平面視において第1溝G1の形状に整合した形状を有する第1部分211および第2溝G2の形状に整合した形状を有する第2部分212を含む第1配線210を導電ペースト20から形成することができる。この例では、導電ペースト20の硬化により、第1溝G1の内部に第1配線210の第1部分211が形成され、第2溝G2の内部に第1配線210の第2部分212が形成される。
【0099】
(第2配線形成工程)
この例ではさらに、スキージ390を用いた印刷により、第1溝G1および第2溝G2の内部への第1導電材料の充填と並行して、第3溝G3の内部への第2導電材料の充填が実行されている。ここでは、第1導電材料と共通の導電ペースト20が第2導電材料に用いられている。第3溝G3の内部に配置された、第2導電材料としての導電ペースト20を硬化させることにより、第2配線220を形成することができる(
図3のステップS3)。なお、第1溝G1および第2溝G2の内部への第1導電材料の充填と、第3溝G3の内部への第2導電材料の充填との間の順序に特に制限はない。
【0100】
この第2配線220は、樹脂層270Aによって空間的に分離されることにより、上述の第1配線210からは電気的に分離されている。なお、ここでは、第2導電材料および第1導電材料として共通の導電ペースト20を用いる例を説明している。しかしながら、第1導電材料とは異なる材料を第2導電材料に適用してよいことは、言うまでもない。第2導電材料および第1導電材料として共通の材料を用いることは、第1配線形成の工程と、第2配線形成の工程とを一括して実行することを容易にする。第1配線形成の工程と、第2配線形成の工程とを一括して実行することにより、発光装置200をより効率的に製造し得る。
【0101】
なお、導電ペースト20の付与の方法は、スキージを用いた方法に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、エアロゾルジェット法等の各種の印刷法を適用し得る。もちろん、印刷法以外の方法により、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3に導電ペースト20を付与してもよい。
【0102】
この例では、スキージ390を用いた印刷により、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の内部への導電ペースト20の付与を実行している。付与された導電ペースト20のうち樹脂層270Aの表面よりも盛り上がった部分は、スキージ390の移動によって除去される。したがって、第1配線210の表面および第2配線220の表面の位置は、基本的には、樹脂層270Aの表面、換言すれば、被覆部120の下面の位置に一致する。ただし、必要に応じて、導電ペースト20の硬化後に付加的に研磨工程を実施してもよい。例えば、研削砥石を用いて、硬化後の導電ペースト20の表面および樹脂層270Aの表面を研磨してもよい。研磨により、研磨面である第1配線210の表面および第2配線220の表面を発光装置200の下面200bに整合させ得る。また、樹脂層270Aの表面に付着した導電ペースト20の残渣を除去することができる。必要に応じて、硬化後の導電ペースト20上に銅めっきの層またはニッケル-金めっきの層を形成してもよい。以上の工程により、
図1~
図2に示す発光装置200と同様の構造が得られる。
【0103】
(発光装置の製造方法の変形例)
以下、発光装置の製造方法の変形例を説明する。上述した例では、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Aの全体を一体的に覆う樹脂層120Tを形成し、研削等によって発光素子の電極(第1電極111A、111B、第2電極112A、112B)およびジャンパ素子の端子(第1端子251Aおよび第2端子252A)を露出させた後、これら電極および端子を覆うように樹脂層270Sを配置している。しかしながら、以下に説明するように、本開示の実施形態において樹脂層120T上にさらに樹脂層270Sを配置することは、必須ではない。
【0104】
図10は、ある変形例における製造工程を模式的に示す。ここで説明する例において、樹脂層120Tの形成までの工程は、上述した例と基本的に同様であり得る。樹脂層120Tの形成後、
図6を参照しながら説明した例と同様に、研削加工等によって支持体400とは反対の側から樹脂層120Tの一部を除去する。ただし、ここでは、
図10に示すように発光素子の電極(第1電極111A、112A、第2電極112A、112B)およびジャンパ部材の端子(第1端子251Aおよび第2端子252A)が樹脂層120Tに覆われたままとしておく。言い換えれば、発光素子の電極上およびジャンパ部材の端子上には、樹脂層120Tの一部が残っている。発光素子の電極の表面またはジャンパ部材の端子の表面から、研削後の樹脂層120Tの表面(研削面)までの距離は、例えば5μm以上100μm以下の範囲であり得る。
【0105】
次に、例えば
図8を参照しながら説明した例と同様にして、レーザ光の照射により、支持体400とは反対の側から樹脂層120Tの一部を除去する。ここでは、樹脂層120Tのうち第1発光構造100Aを覆う部分、第2発光構造100Bを覆う部分、および、残余の部分をそれぞれ第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂と呼ぶことにする。
図11に示すように、例えばレーザアブレーション装置500を用い、レーザ光のビームLBの走査によって、第1樹脂の一部、第2樹脂の一部および第3樹脂の一部を除去する。これにより、
図8に示す例と同様に、支持体400とは反対側に第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成でき、
図1に示す被覆部120と同様の構造が得られる。第1発光構造100Aの第1電極111Aの少なくとも一部、および、ジャンパ部材250Aの第1端子251Aの少なくとも一部が第1溝G1の内部に露出され、第2発光構造100Bの第1電極111Bの少なくとも一部、および、ジャンパ部材250Aの第2端子252Aの少なくとも一部が第2溝G2の内部に露出される点は、
図8に示す例と同様である。
【0106】
ここでは、第3樹脂の一部の除去により、少なくともジャンパ部材250Aを覆う反射性樹脂部材260Bが支持体400上に形成される。反射性樹脂部材260Bは、支持体400とは反対側の面に第3溝G3を有する。換言すれば、反射性樹脂部材260Bは、ジャンパ素子の端子(この例では第1端子251Aおよび第2端子252A)の表面よりも図の-Z方向に位置する部分を含んでいる。また、この例では、
図11に模式的に示すように、樹脂層120Tの材料の一部は、発光素子の電極の表面よりも図の-Z方向に位置する部分を含んでいる。例えば、第1発光構造100Aを覆う第1樹脂に注目すると、第1樹脂は、第1発光素子110Aの第1電極111Aおよび第2電極112Aの表面よりも図の-Z方向に位置する部分を含む。樹脂層120Tの材料と、反射性樹脂部材160Aの材料とが共通である場合、第1樹脂のうち第1電極111Aおよび第2電極112Aの表面よりも図の-Z方向に位置する部分と、反射性樹脂部材160Aとの間には明確な境界が確認できないことがある。このような場合には、第1樹脂のうち第1電極111Aおよび第2電極112Aの表面よりも図の-Z方向に位置する部分を反射性樹脂部材160Aの一部であるとみなしてもよい。同様に、第2樹脂のうち第2発光素子110Bの第1電極111Bおよび第2電極112Bの表面よりも図の-Z方向に位置する部分を反射性樹脂部材160Bの一部であるとみなし得る。
【0107】
次に、
図9を参照しながら説明した例と同様にして、
図12に示すように、例えば印刷により、第1溝G1および第2溝G2の内部に導電ペースト20を配置する。このとき、第1溝G1および第2溝G2の内部への第1導電材料の配置と、第3溝G3の内部への第2導電材料の配置とを一括して実行してもよい。
【0108】
その後、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の内部に配置された導電ペースト20を加熱または光の照射によって硬化させることにより、平面視において第1溝G1および第2溝G2の形状に整合した形状を有する第1配線210と、平面視において第3溝G3の形状に整合した形状を有する第2配線220とを導電ペースト20から形成することができる。導電ペースト20の硬化後、必要に応じて、硬化後の導電ペースト20の表面の研磨、硬化後の導電ペースト20の表面上へのめっき層の形成等を実行してもよい。
【0109】
支持体400からの分離により、
図13に示す発光装置200Bが得られる。
図13に例示する構成では、被覆部120は、第1発光素子110Aを覆う反射性樹脂部材160A、ジャンパ部材250Aを覆う反射性樹脂部材260B、および、第2発光素子110Bを覆う反射性樹脂部材160Bをその一部に含んでいる。
【0110】
図14は、発光装置の製造方法の他の変形例を模式的に示す。
図4を参照して説明した例と比較して、
図14に示す例では、ジャンパ素子250として、本体部255Bを含むジャンパ部材250Bを第1発光構造100Aと第2発光構造100Bとの間に配置している。ここで、本体部255Bは、少なくとも支持体400とは反対側の表面に導電性を有する部材である。本体部255Bは、金属板等の導電性の部材であってもよい。
図14中に点線で示すように、この例では、本体部255Bの、支持体400とは反対側の表面(以下、「下面250b」と呼ぶことがある。)は、第1発光構造100Aの下面および第2発光構造100Bの下面よりも低い位置にある。
【0111】
第1発光構造100A、第2発光構造100Bおよびジャンパ部材250Bの支持体400への配置後、これらの全体を覆うように支持体400上に樹脂材料を付与する。樹脂材料の硬化により、
図15に示すように、これらの全体を覆うようにして樹脂層120Tを形成する。必要に応じ、研削加工等により、所定の高さまで樹脂層120Tの厚さを低減する。この工程により、ジャンパ部材250Bの全体は、樹脂層120Tの材料によって覆われる(被覆工程)。ここでは、
図10を参照しながら説明した例と同様に、発光素子の電極(第1電極111A、112A、第2電極112A、112B)は、樹脂層120Tに覆われた状態にある。
【0112】
次に、上述の溝形成工程を実行する。ここでは、
図16に模式的に示すように、樹脂層120Tの表面をレーザ光のビームLBで走査することにより、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成する。このとき、第1溝G1および第2溝G2は、それぞれの少なくとも一部が平面視においてジャンパ部材250Bに重なるような形状に形成される。また、このとき、例えば第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形成と並行して、ジャンパ部材250Bの本体部255Bに達する第1穴120sおよび第2穴120tを樹脂層120Tに形成する(穴形成工程)。
【0113】
第1穴120sは、平面視においてジャンパ部材250Bの下面250bの端部付近と重なる位置に設けられ、他方、第2穴120tは、第1穴120sよりも第2発光素子110Bの第1電極111Bの近くに設けられる。なお、第1穴120sおよび第2穴120tの形成は、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の形成と並行して実行されてもよいし、第1溝G1および第2溝G2の形成後に実行されてもよい。後者の場合、第1穴120sおよび第2穴120tは、第1溝G1および第2溝G2の内部に位置する。第1穴120sおよび第2穴120tの形成により、樹脂層120Tの一部から、ジャンパ部材250Bを覆う反射性樹脂部材260Cが形成され、その結果、支持体400上に、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Bを一括して覆う被覆部120が形成される。この例では、反射性樹脂部材260Cは、支持部材280をその一部に含んでいる。
【0114】
次に、上述の第1配線形成工程および第2配線形成工程を実行する。例えば、スキージ390を用い、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の内部を導電ペースト20で充填する。このとき、
図17に模式的に示すように、第1穴120sの内部および第2穴120tの内部も導電ペースト20で充填されてよい。
【0115】
その後、導電ペースト20を硬化させる。導電ペースト20の硬化により、第1溝G1および第2溝G2の内部に第1配線210が形成され、第3溝G3の内部に第2配線220が形成される。また、このとき、導電ペースト20のうち第1穴120sの内部に位置する部分が硬化することにより、第1穴120sの内部に第1ビア251Bが形成され、導電ペースト20のうち第2穴120tの内部に位置する部分が硬化することにより、第2穴120tの内部に第2ビア252Bが形成される(ビア形成工程)。
【0116】
図17に示すように、第1ビア251Bは、第1穴120sの内部を占め、第2ビア252Bは、第2穴120tの内部を占める。第1ビア251Bおよび第2ビア252Bは、ジャンパ部材250Bに接続されることにより、それぞれ、ジャンパ部材250Bの第1端子および第2端子として機能する。これら第1端子および第2端子は、本体部255Bを介して互いに電気的に接続されている。すなわち、第1ビア251Bおよび第2ビア252Bの形成により、第1ビア251Bおよび第2ビア252Bを端子として有するジャンパ素子を被覆部120の内部に形成することができる。
【0117】
第1ビア251Bおよび第2ビア252Bの形成が第1配線210の形成と並行して実行されることは、必須ではない。例えば、第1穴120sおよび第2穴120tの形成後、印刷、スパッタ等によってこれらの穴の内部に導電部材を配置して第1ビア251Bおよび第2ビア252Bを形成した後に第1配線210を形成してもよい。被覆部120を形成してからジャンパ素子の端子を事後的に形成することにより、特別に準備されたジャンパ部材を用いることなく、金属板等の安価かつ一般的な部材を用いて配線の交差を形成することが可能である。
【0118】
その後の工程は、これまでに説明した例と同様であるので説明を省略する。以上の工程により、
図17に示す発光装置200Cが得られる。この例では、被覆部120は、第1発光素子110Aを覆う反射性樹脂部材160A、ジャンパ部材250Bを覆う反射性樹脂部材260C、および、第2発光素子110Bを覆う反射性樹脂部材160Bをその一部に含む。
【0119】
上述した各例から理解されるように、本開示の実施形態による製造方法では、ジャンパ素子として、導電部分を含む本体部と、導電部分に接続され、互いに分離して配置された端子とを有する回路素子を広く利用できる。例えば、保護素子としてのツェナーダイオードをジャンパ素子として利用することも可能である。あるいは、以下に説明するように、いわゆるジャンパチップを利用して第1配線210と第2配線220との間の交差を形成してもよい。
【0120】
図18は、ジャンパ素子としてのジャンパチップの一例を示す。
図18に示すジャンパチップ250Cは、アルミナ等のセラミックスから形成された板状の基台25と、基台の一方の主面上に設けられた導電層26と、基台25の端部に配置された第1端子251Cおよび第2端子252Cとを含む。図示するように、第1端子251Cは、基台25の一方の端部に位置し、第2端子252Cは、基台25の、第1端子251Cと反対側の端部に位置する。第1端子251Cおよび第2端子252Cのそれぞれは、基台25の側面25cを覆うようにして基台25の上面25aから下面25bにわたって基台25上に形成されており、基台25の下面25b上に設けられた導電層26に電気的に接続されている。
図18に例示する構成において、導電層26は、基台25の2つの主面のうち下面25bに選択的に形成されているが、基台25の両面に導電層26を有するような構成も採り得る。
【0121】
例えば上述のジャンパ部材250Aに代えて、
図18に示すジャンパチップ250Cを用いてもよい。ただし、一般に、市販のジャンパチップは、LEDパッケージ等の発光構造と比較して小さな厚さを有する。そのため、
図19に例示するように、所定の厚さを有する樹脂シート等の厚さ調整用シート280Cにジャンパチップ250Cを接合し、ジャンパチップ250Cを単位としてシート280Cを切断しておいてもよい。なお、ここでは、基台25の下面25bをシート280Cとは反対側に向けて、ジャンパチップ250Cを接着剤等(
図19において不図示)によってシート280Cに固定している。
【0122】
ジャンパチップ250Cのシート280Cへの固定後、シート片のそれぞれがジャンパチップ250Cを含むようにシート280Cを所定のサイズに切り出す。例えば、
図19中に太い破線CTで示す位置でシート280Cを切断する。予めジャンパチップ250Cを樹脂シート片に固定しておくことにより、支持体400上へのジャンパチップ250Cの配置が容易になる。
【0123】
シート280Cの切断後、
図20に示すように、第1発光構造100Aおよび第2発光構造100Bとともに、樹脂シート片に固定されたジャンパチップ250Cを支持体400上に配置する。ここでは、ジャンパチップ250Cを支持する樹脂シート片が、上述の支持部材280の機能を果たす。その後の工程は、例えば、
図5~
図9を参照して説明した例と同様であり得る。ジャンパチップ250Cと支持体400との間に樹脂シート片を介在させることにより、
図20中に点線で示すように、第1端子251Cの表面および第2端子252Cの表面の位置を発光素子の電極(第1電極111A、111B、第2電極112A、112B)の表面の位置に概ね揃えることができる。
【0124】
このような工程によれば、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパチップ250Cを樹脂層120Tで覆った後に樹脂層120Tの厚さを低減することにより、発光素子の電極とともに第1端子251Cおよび第2端子252Cの表面を樹脂層120Tから露出させることが容易になる。すなわち、第1配線210と、ジャンパチップ250Cとの間の電気的接続をより確実とし得る。
【0125】
一般に市販されているジャンパチップを利用することにより、安価な部材で第1配線210と第2配線220との間の交差を形成できるという利点が得られる。表面が絶縁されたツェナーダイオードもしくはバリスタ、または、LCフィルタ等の電磁干渉(EMI)対策のための機能部品をジャンパチップ250Cとして用いることもできる。このような機能部品を発光装置200中のジャンパ素子に適用することにより、発光素子の静電破壊を回避し得る。
【0126】
なお、この例では、レーザ光の照射において、レーザ光の照射条件によっては、樹脂層120Tの一部の除去の際にジャンパチップ250Cの基台25がレーザ光で照射されることがあり得る。しかしながら、ジャンパチップ250Cの基台25は、セラミックス等で形成されており、樹脂を除去する程度の照射条件では、たとえレーザ光の照射に曝されたとしても、第1端子251Cと第2端子252Cとの間の電気的接続が破壊されるような事態は、ほとんど起こらないといえる。
【0127】
もちろん、安価な汎用部品に代えて、配線デザイン等にあわせたジャンパ部材を製作によって予め準備しておき、発光構造間に配置するジャンパ部材250として利用してもよい。
図21は、ジャンパ部材250として利用可能なジャンパ部材の他の例を示す。
【0128】
図21に示すジャンパ部材250Dは、金属等から形成された導体部27と、導体部27を覆う絶縁部28とを有する。絶縁部28は、例えば、反射性樹脂部材160Aおよび反射性樹脂部材160Bの材料と同様の、光反射性の樹脂組成物から形成される。導体部27は、絶縁部28の内部で屈曲しており、ジャンパ部材250Dの上面250aから下面250bに向かって延びる2つの部分を有する。これら2つの部分のそれぞれの一部は、ジャンパ部材250Dの下面250bから露出されている。ここでは、導体部27のうちジャンパ部材250Dの上面250aから下面250bに向かって延びる部分を第1端子251D、第2端子252Dと呼ぶ。ジャンパ部材250Dの導体部27は、第1端子251Dと第2端子252Dとを結ぶ本体部255Dを有する。
【0129】
図22は、ジャンパ部材250Dを利用した、発光装置の例示的な製造方法を模式的に示す。これまでに説明した各例と同様に、第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Dを準備した後、これらを支持体400上に配置する。このとき、ジャンパ部材250Dの上面250aを支持体400の上面400aに対向させてジャンパ部材250Dを支持体400上に一時的に固定する。本実施形態によれば、ジャンパ部材250Dの上面250aから導体部27の本体部255Dまでの距離を任意に調整可能であり、支持体400への第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Dの配置の時点で、ジャンパ部材250Dの下面250bの位置を発光構造(ここでは第1発光構造100Aおよび第2発光構造100B)の下面の位置に概ね揃えることが可能である。換言すれば、支持部材280を不要としながら、第1端子251Dおよび第2端子252Dの表面の位置と、発光素子の電極(第1電極111A、111B、第2電極112A、112B)の表面の位置とを概ね一致させることができる。
【0130】
第1発光素子110A、第2発光素子110Bおよびジャンパ部材250Dの支持体400への配置後、
図5、
図6を参照して説明した例と同様に、これらを覆う樹脂層120Tを形成し、研削加工等によって例えば発光素子の電極が研削面から露出されるまで樹脂層120Tの厚さを低減する。このとき、第1端子251Dおよび第2端子252Dの表面の位置が発光素子の電極の表面の位置と概ね一致していることから、
図23に示すように、第1端子251Dおよび第2端子252Dの表面も研削面から露出されることになる。研削後の樹脂層120Tは、ジャンパ部材250Dを覆う反射性樹脂部材260Cをその一部に含む。
【0131】
その後の工程は、
図7~
図9を参照しながら説明した工程と同様であり得る。例えば、樹脂層120Tの研削面上に樹脂層270Sを配置し、レーザ光の照射等によって樹脂層270Sの一部を除去することにより、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3を形成する。ここでは、
図24に示すように、第1発光素子110Aの第1電極111Aの表面の一部と、ジャンパ部材250Dの第1端子251Dの表面の一部とが、第1溝G1の内部に露出され、第2発光素子110Bの第1電極111Bの表面の一部と、ジャンパ部材250Dの第2端子252Dの表面の一部とが、第2溝G2の内部に露出されている。
【0132】
その後、第1溝G1、第2溝G2および第3溝G3の内部を導電材料で充填することにより、第1配線210および第2配線220を形成できる。これにより、第1発光素子110Aの第1電極111Aと、第2発光素子110Bの第1電極111Bとが、第1配線210およびジャンパ部材250Dの導体部27を介して互いに電気的に接続される。
【0133】
ここで、ジャンパ部材250Dの下面250bから導体部27の本体部255Dまでの距離(
図21中に両矢印Htで示す距離)が50μm以上であると有益である。
図24から理解されるように、第3溝G3のうち第1溝G1と第2溝G2との間に延びる部分は、平面視においてジャンパ部材250Dの本体部255Dと重なる位置に形成される。したがって、樹脂層270Sの一部の除去の工程において、ジャンパ部材250Dの絶縁部28の一部が除去されることもあり得る。ジャンパ部材250Dの下面250bから導体部27の本体部255Dまでの距離が50μm以上であると、このような場合でも第3溝G3の底がジャンパ部材250Dの本体部255Dに達する可能性を低減できる。換言すれば、第1配線210と第2配線220との間のショートを回避しやすい。
【0134】
このように、本開示の実施形態によれば、所望の形状のジャンパ素子を利用することができ、配線の設計に高い自由度が得られ、例えば発光構造の数または配置の変更に対して高い柔軟性が得られる。このため、基本的に、複数の発光素子の配列ごとに、その配列に応じた配線を有する配線基板を用意する必要がない。したがって、発光装置の製造コストを低減することができる。また、それぞれが正極および負極を有する複数の発光素子を配線基板上に配置する従来の構成においては、実装される発光素子の数が増えるにつれて配線基板上の配線が増加するために、配線基板上に大きなスペースが要求される。これに対し、本開示の実施形態によれば、正側の配線と負側の配線との間の交差を含む配線パターンを配線基板側ではなく発光装置側に比較的容易に形成できるので、例えば、外部の電源と接続するための端子を発光装置または配線基板の1箇所に集約することも比較的に容易である。上述した各実施形態は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本開示の実施形態によれば、複雑な配線パターンの形成された基板を基本的に不要とでき、実装の容易な発光装置が提供される。本開示の実施形態は、各種照明用光源、車載用光源、バックライト用光源等に幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0136】
20 導電ペースト
26 導電層
27 導体部
28 絶縁部
100A 第1発光構造
100B 第2発光構造
110A 第1発光素子
110B 第2発光素子
111A 第1発光素子の第1電極
111B 第2発光素子の第1電極
112A 第1発光素子の第2電極
112B 第2発光素子の第2電極
120 被覆部
130A 第1保護部材
130B 第2保護部材
160A、160B 反射性樹脂部材
200、200B、200C 発光装置
210 第1配線
211 第1配線の第1部分
212 第1配線の第2部分
220 第2配線
220c 第2配線の交差部
250 :ジャンパ素子
250A、250B、250D ジャンパ部材
251A、251C、251D 第1端子
251B 第1ビア
252A、252C、252D 第2端子
252B 第2ビア
255A、255B、255D ジャンパ部材の本体部
260A~260C 反射性樹脂部材
500 レーザアブレーション装置
G1 第1溝
G2 第2溝
G3 第3溝