(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】光半導体装置用金属構造の製造方法、パッケージ、及びポリアリルアミン重合体を含む溶液
(51)【国際特許分類】
H01L 33/64 20100101AFI20230830BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20230830BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20230830BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01L33/64
H01L33/48
H01L23/14 M
H01L23/14 R
H01L23/48 Y
(21)【出願番号】P 2021561379
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043380
(87)【国際公開番号】W WO2021106781
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019216173
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020014772
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 和也
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159618(JP,A)
【文献】特開2013-239540(JP,A)
【文献】国際公開第2009/020182(WO,A1)
【文献】特開2012-111811(JP,A)
【文献】特開2016-025017(JP,A)
【文献】特開2016-053147(JP,A)
【文献】特開2012-052148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0086733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 23/14
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体装置用金属構造の製造方法であって、
(1)一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっきを有する最表層を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の浸漬及び/又は塗布を行う処理工程
を備え、
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液が、さらに、トリアジン化合物を含有する、
光半導体装置用金属構造の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、前記ポリアリルアミン重合体の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、前記トリアジン化合物の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記トリアジン化合物が、トリアジンチオール化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)を行う際の前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の温度が15℃以上50℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)を行う処理時間が3秒以上60秒以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)の後、
(2)前記工程(1)を経た基体を洗浄する工程、及び
(3)前記工程(2)を経た基体を乾燥する工程
をこの順に備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(3)の後、
(4)前記工程(2)を経た基体を熱処理する工程
を備える、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基体が、銅又は銅合金を含有する母材を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記最表層と前記母材との間に、ニッケル若しくはニッケル合金めっき層、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、並びに白金若しくは白金合金めっき層よりなる群から選ばれる少なくとも1種を備える、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
光半導体装置の製造方法であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法により製造された光半導体装置用金属構造を用いた前記基体と接するように、樹脂成形体を成形する工程
を備える、製造方法。
【請求項12】
一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっきを有する最表層を備える基体と、
前記基体に成形される樹脂成形体と、
を備え、前記基体の最表層にポリアリルアミン重合体及びトリアジン化合物を含む膜が付着している、パッケージ。
【請求項13】
前記ポリアリルアミン重合体及びトリアジン化合物を含む膜の厚みが10nm以上500nm以下である、請求項12に記載のパッケージ。
【請求項14】
前記トリアジン化合物が、トリアジンチオール化合物である、請求項12又は13に記載のパッケージ。
【請求項15】
光半導体装置中の
、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する最表層を一部又は全面に備えるリードフレームと隣接する樹脂成形体との密着性を向上させるために使用される、ポリアリルアミン重合体及びトリアジン化合物を含む溶液。
【請求項16】
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、前記ポリアリルアミン重合体の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
前記溶液の総量を100質量%として、前記トリアジン化合物の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項15又は16に記載の溶液。
【請求項18】
光半導体装置用金属構造の製造方法であって、
(1)一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する最表層を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の浸漬及び/又は塗布を行う処理工程
を備え、
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液が、さらに、トリアジン化合物を含有する、
光半導体装置用金属構造の製造方法。
【請求項19】
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、前記ポリアリルアミン重合体の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、前記トリアジン化合物の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記トリアジン化合物が、トリアジンチオール化合物である、請求項18~20のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置用金属構造の製造方法、パッケージ、及びポリアリルアミン重合体を含む溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう。)のような半導体発光素子(以下、「発光素子」ともいう。)を備える光半導体装置は、例えば、車載用光源、一般照明用光源、液晶表示装置のバックライト、プロジェクターの光源等として用いられている。
【0003】
光半導体装置においては、通常、発光素子からの光に対して高い反射率を有する銀又は銀合金のめっきを表面に設けたリードフレーム又は基板が採用されている。一方、銀又は銀合金は硫化物によって硫化しやすいため、耐硫化性に優れた金めっきを表面に設けた基板を備えた光半導体装置を採用することもある(例えば、特許文献1~2参照)。金又は金合金を表面に設けたリードフレーム又は基板を備えた光半導体装置は、例えば高い信頼性が要求される車載用の光半導体装置として用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-347596号公報
【文献】特開2006-093365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、樹脂材料との密着性を高めた光半導体装置用金属構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置用金属構造の製造方法は、(1)一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっきを有する最表層を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の浸漬及び/又は塗布を行う処理工程を備える。
【0007】
本発明の一実施形態に係るパッケージは、一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっきを有する最表層を備える基体と、前記基体に成形される樹脂成形体と、を備え、前記基体の最表層にポリアリルアミン重合体が付着している。
【0008】
本発明の一実施形態に係るポリアリルアミン重合体を含む溶液は、光半導体装置中のリードフレームと隣接する樹脂成形体との密着性を向上させるために使用される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置用金属構造の製造方法は、(1)一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する最表層を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の浸漬及び/又は塗布を行う処理工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、樹脂材料との密着性を高めた光半導体装置用金属構造の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)一実施形態に係る光半導体装置を示す概略平面図である。(B)一実施形態に係る光半導体装置であり
図1(A)のX-X線における断面を示す概略断面図である。
【
図2】(A)一実施形態に係る光半導体装置用金属構造の一部の概略断面図である。(B)他の実施形態に係る光半導体装置用金属構造の一部の概略断面図である。
【
図3】(A)他の実施形態に係る光半導体装置を示す概略斜視図である。(B)他の実施形態に係る光半導体装置であり
図3(A)のY-Y線における断面を示す概略断面図である。
【
図4】(A)光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。(B)光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。(C)光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。(D)光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態について、適宜図面を参照にして説明する。ただし、以下に説明する光半導体装置用金属構造の製造方法、パッケージ、及びポリアリルアミン重合体を含む溶液は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、特定の記載がない限り、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。また、実施の形態において説明するめっき液の組成及びめっき操作条件は、一例である。また、実施の形態において説明する内容は、他の実施の形態にも適用可能である。図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称又は符号は、原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。
【0013】
なお、本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0014】
実施の形態1:光半導体装置(その1)
図1A及び
図1Bに、実施形態1の光半導体装置100の構造を示す。本実施形態の光半導体装置100は、平面視において矩形である発光素子2と、一対の板状の光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10(以下、単に「リードフレーム10」とも称する。)と、リードフレーム10の一部が埋め込まれた樹脂成形体3と、を備える。
【0015】
樹脂成形体3は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物によって構成され得る。また、樹脂成形体3は、樹脂組成物中に後述するようなTiO2等の充填材(フィラー)を含むことができる。この充填材は、発光素子2からの光を反射する反射材料としてもよい。樹脂成形体3は、底面と側面とを持つ凹部を形成しており、凹部の底面は一対のリードフレーム10の一部で構成され、側面は、所定の傾斜角度を有する反射面として側壁部31が形成されている。一対のリードフレーム10の間は、樹脂成形体3を構成する樹脂組成物によって埋められ、樹脂成形体3の底面の一部32を構成する。本実施形態の樹脂成形体3は、平面視において横長の形状である。樹脂成形体3の外面には、一対の板状のリードフレーム10の一部が外部端子部として露出し、外部端子部は樹脂成形体3の下面に沿って折り曲げられている。発光素子2は、凹部の底面を構成する一方のリードフレーム10に搭載される。発光素子2は封止部材5により被覆されている。封止部材5は、例えば、発光素子2からの光を波長変換する蛍光体と封止材料を含む。封止部材5の材料は、透光性樹脂を含むことが好ましい。蛍光体は、発光素子2からの光により励起されて、発光素子2からの光を波長変換し、特定の波長範囲に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する。また、発光素子2は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は一対のリードフレーム10とそれぞれワイヤ6を介して電気的に接続されている。一対のリードフレーム10を介して、外部からの電力の供給を受けて光半導体装置100を発光させることができる。後述する実施の形態で説明する光半導体装置用金属構造からなるリードフレーム10又は基体は、例えば樹脂成形体3、封止部材5等の樹脂材料を用いて形成された部材と接触する部位を有する。この際、リードフレーム10又は基体を構成する光半導体装置用金属構造1と樹脂成形体3とを含むパッケージは、本実施形態を構成するものであり、リードフレーム10又は基体を構成する光半導体装置用金属構造1と樹脂成形体3との密着性が改善されている。なお、リードフレーム10又は基体を構成する光半導体装置用金属構造1については、詳しくは後述する。本明細書において、樹脂材料は、少なくとも樹脂を含む材料をいう。樹脂材料は、例えば樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。
【0016】
光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10は、発光素子2を搭載する搭載部材、発光素子2から出射された光を反射する反射部材、発光素子2と電気的に接続される導電部材としての機能を兼ねている。さらに、リードフレーム10は発光素子2から発せられる熱の放散を行う放熱部材としての機能を兼ねていてもよい。光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10は、実施形態1のように、発光素子2の下方に設けられていてもよく、発光素子2を取り囲むリフレクタ形状に設けられていてもよい。また、リードフレーム10は、板状のリードフレームであってもよい。
【0017】
また、光半導体装置用金属構造1は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを有するため、樹脂との密着性が良く、光半導体装置100においては、例えば封止部材5及び樹脂成形体3との密着性を向上することができる。なお、最表層1dを形成する方法は公知の表面処理であってよく、特に制限されないが、例えば、めっき(電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、スパッタリングめっき、物理蒸着や化学蒸着を含む蒸着めっき)、溶射等を採用できる。一般的に、光半導体装置は、樹脂成形体の反射率を向上させて全光束を増大するために樹脂成形体中のTiO2等充填材の含有量を増加させたり、演色性を向上するために封止部材内の蛍光体の含有量を増加させたりすることがある。樹脂材料にこれらのような不純物質を多量に添加すると、光半導体装置のリードフレームと樹脂材料との密着性が低下する傾向がある。一方、本実施形態の光半導体装置100の、光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10は、樹脂材料との密着性が高いので、樹脂材料中の不純物質(酸化チタン、蛍光体等)の含有量を増加させる場合であっても、このリードフレーム10を用いた光半導体装置100をプリント基板にはんだリフロー実装する工程において、はんだが光半導体装置100内に侵入することや封止材料が樹脂成形体3の外に漏れるのを防止することができる。なお、ポリアリルアミン重合体を含む溶液については、詳しくは後述する。
【0018】
さらに、光半導体装置用金属構造1は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを有するため、銀又は銀合金のめっき層を最表層として有する場合であっても、硫化又は酸化による変色を抑制することができ、硫化変色又は酸化変色による光束の低下を抑制し、高い光束を維持することができる。
【0019】
実施の形態2:光半導体装置用金属構造(その1)
光半導体装置用金属構造1は、リードフレームや基体に用いることができる。また、光半導体装置用金属構造1を絶縁性の基板上に配線として形成することで、プリント基板やセラミック基板等に用いることができる。本開示において、基体とは、光半導体装置用金属構造1を備えることができる部材であり、例えば、リードフレーム、金属板、ワイヤ、セラミック基板、プリント基板、フレキシブル基板、シリコンウエハ、GaAsウエハ、GaNウエハ、コンデンサ等の金属端子付きセラミック部品、抵抗器等の金属端子付き有機部品、ピンコネクタ、丸形コネクタ、ソケット、樹脂付きコネクタ、レーザーステム等の気密部品であってよい。
【0020】
図2Aは、光半導体装置用金属構造1の一実施形態を示す概略断面図である。
【0021】
光半導体装置用金属構造1は、最表層と母材1aとの間に、ニッケル若しくはニッケル合金めっき層、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、並びに白金若しくは白金合金めっき層よりなる群から選ばれる少なくとも1種を備えることができる。
【0022】
光半導体装置用金属構造1は、
図2Aに示すように、母材1aを中心として、互いに対向する一対の二面において、例えば、銅又は銅合金を含有する導電性の母材1aと、前記母材1a上に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dとをこの順に有することができる。
【0023】
発光素子2とのダイボンディング性向上、ワイヤボンディング性向上、及びはんだ実装性向上による信頼性向上の観点から、光半導体装置用金属構造1は、金、銀、金合金又は銀合金を最表層として有する。金及び銀のビッカース硬さは、ニッケル、パラジウム、ロジウム及び白金のビッカース硬さよりも小さく、柔らかい金属であるため、発光素子2のダイボンディングやワイヤボンディングが容易となる。また、金及び銀は貴金属であり、ニッケル、パラジウム、ロジウム及び白金に比べて酸化しにくいため、はんだ実装に影響を及ぼしにくい。
【0024】
光半導体装置用金属構造1の最表層が金又は金合金層である場合は、最表層1dとして金又は金合金のめっき層を形成することが好ましい。また、最表層1dが銀又は銀合金層である場合は、最表層1dとして銀又は銀合金のめっき層を形成するとともに、当該銀又は銀合金のめっき層の下地層として金又は金合金のめっき層1c2を形成することが好ましい。これは、金が銀よりも安定した金属であるためである。すなわち、最表層1dが銀又は銀合金層である場合は、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと最表層1dとの間に、金又は金合金のめっき層1c2を有していてもよい。
【0025】
なお、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの詳細は後述する。
【0026】
板状の母材1aの一対の対向する二面は上面又は底面という場合があり、板状の母材1aの他の対向する二面は側面という場合がある。
【0027】
金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dは、光半導体装置用金属構造1の全ての表面に設けられている必要はない。つまり、光半導体装置用金属構造1の表面の少なくとも一部が金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dであればよい。例えば、
図1に示した樹脂成形体3の凹部の底面に露出していない、リードフレーム10のうち、樹脂成形体3の側壁部31の内部に埋設された第一埋設部12や封止部材5と密着している第二埋設部13は、樹脂との密着性の観点から、その表面にポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを有することが好ましいが、樹脂成形体3の外部に露出した外部端子部や光半導体装置の底面側に露出した実装部には、その表面に金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dが設けられていなくてもよい。このように光半導体装置用金属構造1の一部に金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを設けるためには、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを形成する際に、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを必要としない部分を保護テープ等でマスクし、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを表面の一部に形成することができる。
【0028】
ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dは、樹脂成形体3又は封止部材5と直接密着してない部位であるなら、本実施形態のように板状の光半導体装置用金属構造1の一対の対向する二面、例えば上面及び底面との両方に設けられていてもよく、ある面のみに設けられ他の面には設けられていなくてもよい。また、一つの面の中で一部のみに設けられてもよい。また、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dは、設けられている全領域にわたって同一の厚みであってもよく、厚みが異なっていてもよい。厚みを異ならせることにより、より効果的にコストを低減することができる。例えば、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dが光半導体装置用金属構造1の上面と底面とに設けられ、一方の面での厚みが他方よりも厚くてもよい。樹脂成形体3又は封止部材5と直接密着している部分にポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを設けることで、例えば光半導体装置100をプリント基板にはんだリフロー実装する際に、はんだが光半導体装置100内に浸入することをより効果的に抑制することができる。
【0029】
[母材1a]
光半導体装置用金属構造1は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを有する母材1aを有する。本実施形態においては、母材1aは、光半導体装置用金属構造1のおおまかな形状を決定する材料として用いられる。
【0030】
母材1aの材料としては、特に制限はなく、銅、鉄、これらの合金、クラッド材(例えば銅/鉄ニッケル合金/銅の積層)等を好適に用いることができる。銅合金を採用する場合、銅と鉄、錫、ニッケル等との合金を採用することができ、その場合の銅の含有量は77.5質量%以上99.5質量%以下とすることが好ましい。鉄合金を採用する場合、鉄とニッケル、コバルト等との合金を採用することができ、その場合の鉄の含有量は55.0質量%以上99.9質量%以下とすることが好ましい。銅及び銅合金は、放熱性に優れているため、好ましく用いることができる。特に、板状の銅及び銅合金は、機械的特性、電気的特性、加工性等の面においても優れており、好ましい。クラッド材は、線膨張係数を低く抑えることができるため、光半導体装置100の信頼性を高めることができる。
【0031】
母材1aの厚さ、形状等については、光半導体装置100の形状等に応じて種々選択することができる。例えば、板状、塊状、膜状等の形状とすることができる。さらには、セラミック等に印刷等で設けられる配線パターンであってもよく、形成された配線パターンに銅又は銅合金をめっきしたものであってもよい。
【0032】
光半導体装置用金属構造1の光の反射率を高めるため、母材1aの平坦度は、なるべく高いことが好ましい。例えば、母材1aの表面粗さRaは0.5μm以下が好ましい。これにより、母材1aの上に必要に応じて設けられるニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じて設けられるパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1、並びに金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの平坦度をさらに高めることができる。また、母材1aの平坦度が高いと、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの平坦度も高くすることができ、光半導体装置用金属構造1の反射率を良好に高めることができる。母材1aの平坦度は、圧延処理、物理研磨、化学研磨等の処理を行うことで高めることができるほか、母材1aを構成する材料と同種類の材料のめっきを行うことによって、母材1aの平坦度を高めることもできる。例えば、銅合金からなる母材1aの場合は、銅合金めっきを行い、母材1aの平坦度を高めることができる。
【0033】
[ニッケル又はニッケル合金めっき層1b]
本実施形態の光半導体装置用金属構造1は、母材1a上にニッケル又はニッケル合金めっき層1bを有することが好ましい。
【0034】
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さは、好ましくは0.5μm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さが0.5μm以上であると、母材1aから母材1aに含まれる金属が下地層であるパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1や、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dへ拡散することをさらに効果的に低減することができる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さが10μm以下であると、原材料や製造コストが低減できる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの材料としては、例えば、ニッケルのほか、ニッケルリン、ニッケル錫、ニッケルコバルト等の合金を用いることができる。ニッケル合金を採用する場合は、ニッケルの含有量は、90.0質量%以上99.0質量%以下とすることが好ましい。
【0035】
実施の形態3:光半導体装置用金属構造(その2)
図2Bは、光半導体装置用金属構造1の他の実施形態を示す概略断面図である。光半導体装置用金属構造1は、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dとの間に、下地層1cを有していてもよい。下地層1cは、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を有することが好ましい。
【0036】
光半導体装置用金属構造1は、
図2Bに示すように、母材1aを中心として、互いに対向する一対の二面において、母材1a上に、例えば、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dとをこの順に有することができる。
図2Bでは、光半導体装置用金属構造1は、上記したニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dとの間に、さらにパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を備える。すなわち、光半導体装置用金属構造1は、母材1aと、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1と、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dと、をこの順に積層している。光半導体装置用金属構造1は、板状の母材1aを中心として互いに対向する二対の四面において、母材1aを中心にくるむように、例えば、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、必要に応じて、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1と、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dとをこの順に有していてもよい。
【0037】
上述したように、発光素子2とのダイボンディング性向上、ワイヤボンディング性向上、及びはんだ実装性向上による信頼性向上の観点から、光半導体装置用金属構造1は、金、銀、金合金又は銀合金を最表層として有する。光半導体装置用金属構造1の最表層が金又は金合金層である場合は、最表層1dとして金又は金合金のめっき層を形成することが好ましい。また、最表層1dが銀又は銀合金層である場合は、最表層1dとして銀又は銀合金のめっき層を形成するとともに、当該銀又は銀合金のめっき層の下地層として金又は金合金のめっき層1c2を形成することが好ましい。
【0038】
下地層1cは、上述の貴金属めっき層1c1のみとしてもよく、金又は金合金のめっき層1c2のみとしてもよい。また、貴金属めっき層1c1の上に金又は金合金のめっき層1c2を積層してもよく、貴金属めっき層1c1と金又は金合金のめっき層1c2とをあわせて下地層1cとすることができる。
【0039】
[パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1]
本実施形態の光半導体装置用金属構造1は、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bに接触する下地層として、パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を有することが好ましい。銅を含む材料からなる母材1aを用いた場合、母材1aの上にニッケル又はニッケル合金めっき層1bを設け、その上に第2の下地層としてパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を設け、さらに、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dをこの順に積層させることが好ましい。このような構成とすることで、例えば母材1aに銅が含まれる場合、母材1aに含まれる銅が、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dに拡散することをより抑制することができ、積層された各層の密着性を高めることができる。また、母材1aに含まれる銅の拡散がより抑制されることで、光半導体装置用金属構造1をリードフレーム10として用いた場合に、ワイヤボンディング性をさらに高めることができる。
【0040】
貴金属めっき層1c1の厚さは、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上0.1μm以下である。貴金属めっき層1c1の厚さが0.01μm以上0.3μm以下であると、母材1aに含まれる金属が最表層である金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dまで拡散していくことをより抑制することができ、光半導体装置用金属構造1をリードフレーム10として用いた場合に、ワイヤボンディング性をさらに高めることができる。パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層の材料としては、例えば、パラジウムのほか、ニッケル、リン、コバルト、銅等の合金を用いることができる。パラジウム合金を採用する場合は、パラジウムの含有量は、75.0質量%以上97.0質量%以下とすることが好ましい。ロジウム若しくはロジウム合金めっき層の材料としては、例えば、ロジウムのほか、ニッケル、コバルト、白金等の合金を用いることができる。ロジウム合金を採用する場合は、ロジウムの含有量は、75.0質量%以上99.0質量%以下とすることが好ましい。白金若しくは白金合金めっき層の材料としては、例えば、白金のほか、ニッケル、コバルト、銅等の合金を用いることができる。白金合金を採用する場合は、白金の含有量は、75.0質量%以上99.0質量%以下とすることが好ましい。
【0041】
金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの下地層である貴金属めっき層1c1は、硫化防止と母材1aに含まれる金属の他の層への拡散防止の役割の両方を兼ねる層としてもよい。これにより、コストをより低減することができる。例えば、金は硫黄成分と反応しにくく、母材1aに含まれる金属の拡散防止の効果も高いため、好ましく用いることができる。
【0042】
光半導体装置用金属構造1は、例えば、後述する
図3A及び3Bに示すように、略平板状のリードフレーム10であることが好ましい。これにより、光半導体装置用金属構造1の反射部材としての信頼性を高めることができる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bは、母材1aとして用いられる銅、鉄、これらの合金、クラッド材(例えば銅/鉄ニッケル合金/銅の積層)等よりも多少脆いので、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bを備える光半導体装置用金属構造1は、屈曲させずに平板状のまま用いることが好ましい。
【0043】
実施の形態4:光半導体装置(その2)
図3A及び
図3Bは、実施形態4の光半導体装置200の構造を示す。本実施形態の光半導体装置200は、屈曲部を有さないリードフレーム10を有する。実施形態4の光半導体装置200において、実施形態1の光半導体装置100と共通する部材には、同一の符号を付した。
【0044】
次に、実施形態1の光半導体装置100及び実施形態4の光半導体装置200を構成する各部材について説明する。
【0045】
[発光素子2]
発光素子2は、任意の波長の半導体発光素子を選択することができる。例えば、青色、緑色発光の発光素子2としては、InGaN、GaN、AlGaN等の窒化物系半導体やGaPを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる発光素子2を用いることもできる。用いる発光素子2の組成や発光色、大きさや、個数等は目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
光半導体装置100又は光半導体装置200が波長変換可能な部材を備える場合には、その波長変換可能な部材を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子2とすることもできる。
【0047】
発光素子2は、光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10上に実装することが好ましい。これにより、光半導体装置100又は光半導体装置200の光取出し効率をより向上させることができる。
【0048】
発光素子2は、導電部材と電気的に接続される正負の電極を有していることが好ましい。これらの正負の電極は一面側に設けられていてもよく、発光素子2の上下両面に設けられていてもよい。導電部材との接続は、後述の接合部材4とワイヤ6によってなされてもよく、フリップチップ実装によってなされてもよい。
【0049】
[樹脂成形体3]
樹脂成形体3は、一対のリードフレーム10を一体的に保持する樹脂組成物からなる部材である。樹脂成形体3の平面視形状は、
図1Aに示すような一対の対向する辺が他の対向する辺よりも長い、平面が略長方形状であってもよく、
図3Aに示すような四角形状であってもよい。その他、樹脂成形体3は、多角形、更にそれらを組み合わせたような形状とすることもできる。樹脂成形体3が凹部を有する場合、凹部の側壁部31は、その内側面は
図3Bに示すような底面に対して傾斜した角度で設けた傾斜面を有してもよく、略垂直な角度であってもよく、段差面を有していてもよい。また、その高さや開口部の形状等についても、目的や用途に応じて適宜選択することができる。凹部の内部にはリードフレーム10が設けられることが好ましい。一対のリードフレーム10、10の間は、樹脂成形体3を構成する樹脂組成物によって埋められ、樹脂成形体3の底面の一部32を構成することが好ましい。
【0050】
樹脂成形体3は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。特に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂を含む組成物としては、封止部材5に用いられる樹脂に比してガス透過性の低い樹脂が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂等の変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂組成物等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂を含む組成物としては、粘度が低く流動しやすい樹脂が好ましく、具体的にはポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等を挙げることができる。樹脂成形体3を構成する樹脂組成物には、充填材(フィラー)としてTiO2、SiO2、Al2O3、MgO、MgCO3、CaCO3、Mg(OH)2、Ca(OH)2等の少なくとも1種の無機粒子を含有してもよい。樹脂成形体3を構成する樹脂組成物に、フィラーとして前記無機粒子を含まれることによって、樹脂成形体3の光の透過率を調整することができる。なお、発光装置の全光束増大を目的として、樹脂材料の反射率を向上させるために、白色成分であるTiO2を増量させる場合(例えば、樹脂組成物総量を100質量%として、TiO2の含有量を20質量%以上60質量%以下とする場合)には、光半導体装置用金属構造1と樹脂材料との間で密着低下の懸念があるが、本実施形態では、このような場合であっても、最表層に金、銀、金合金又は銀合金を有する基体(リードフレーム10、基板等)と樹脂材料との間の密着性を向上させることができる。
【0051】
なお、樹脂成形体3の他に、リードフレーム10を保持する部材としては、セラミックやガラスや金属等の無機物で形成されてもよい。これにより、劣化等が少なく、信頼性の高い光半導体装置100又は光半導体装置200とすることができる。
【0052】
[接合部材4]
接合部材4は、発光素子2をリードフレーム10に固定し実装する部材である。導電性の接合部材4の材料として、銀、金、パラジウム等の少なくとも1種を含む導電性ペースト、金-錫、錫-銀-銅等の共晶はんだ材料、低融点金属等のろう材、銅、銀、金粒子、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dと同様の材料を用いることができる。絶縁性の接合部材4としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を用いる場合は、発光素子2からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子2の実装面にアルミニウム膜や銀膜等の反射率の高い金属層や誘電体反射膜を設けることができる。
【0053】
[封止部材5]
封止部材5は、発光素子2、リードフレーム10、ワイヤ6、後述する保護膜の各部材を被覆するよう設けられる。光半導体装置100又は光半導体装置200は、封止部材5を備えることで、被覆した部材を塵芥や水分、更には外力等から保護することができ、光半導体装置の信頼性を高めることができる。特に、保護膜を形成した後に封止部材5を保護膜上に設けることで、保護膜を保護することができるため、光半導体装置の信頼性が高まる。
【0054】
封止部材5は、発光素子2からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。封止部材5に用いる具体的な材料としては、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、フッ素樹脂組成物等、発光素子からの光を透過可能な透光性を有する絶縁樹脂組成物を挙げることができる。特にジメチルシリコーン、フェニル含有量の少ないフェニルシリコーン、フッ素系シリコーン樹脂等シロキサン骨格をベースに持つ樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0055】
封止部材5の形成方法は、封止部材5を構成する材料に樹脂が含まれる場合、ポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法、スプレー塗布等を用いることができる。光半導体装置が凹部を有する樹脂成形体3を備える場合は、ポッティング法が好ましく、光半導体装置が平板状の基体を用いる場合は、圧縮成型法やトランスファモールド法が好ましい。
【0056】
封止部材5は、
図1B又は
図3Bに示すように、樹脂成形体3の凹部内を充填するよう設けることが好ましい。
【0057】
封止部材5の外表面の形状については、光半導体装置100に求められる配光特性等に応じて種々選択することができる。例えば、上面を凸状レンズ形状、凹状レンズ形状、フレネルレンズ形状、粗面などとすることで、光半導体装置の指向特性や光取出し効率を調整することができる。
【0058】
封止部材5には、着色剤、光拡散材、光反射材、各種フィラー、波長変換部材等を含有させることもできる。
【0059】
波長変換部材は、発光素子2の光を波長変換させる材料である。発光素子2からの発光が青色光の場合、波長変換部材としては、アルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG:Ce」と呼ぶ。)が好適に用いられる。YAG:Ce蛍光体は、発光素子からの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を発するため、白色系の混色光を発する高出力な光半導体装置を、比較的簡単に形成することができる。
【0060】
[ワイヤ6]
ワイヤ6は発光素子2とリードフレーム10等の導電部材とを接続する。ワイヤ6の材料は、金、銀、アルミニウム、銅、これらの合金等が好適に用いられる。また、ワイヤ6は、コアの表面にコアと別の材料で被覆層を設けたもの、例えば、銅のコアの表面にパラジウムやパラジウム金合金等を被覆層として設けたものを用いることもできる。なかでも、ワイヤ6の材料は、信頼性の高い金、銀、銀合金のいずれか1種から選ばれることが好ましい。また、特に、光反射率の高い銀又は銀合金であることが好ましい。この場合は特に、ワイヤ6は保護膜によって被覆されることが好ましい。これにより、銀を含むワイヤの硫化や断線をより防止し、光半導体装置100の信頼性をより高めることができる。また、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属構造の母材1aが銅を含有し、ワイヤ6が銀又は銀合金からなる場合、光半導体装置用金属構造1が、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bを備えることによって、銅と銀での間の局部電池の形成を抑制することができる。これにより、リードフレーム10及びワイヤ6の劣化がより抑制され、より信頼性の高い光半導体装置とすることができる。さらに、ワイヤ6は、上述の光半導体装置用金属構造1を備えるリードフレーム10と同様に、光半導体装置用金属構造1を備えていてもよい。これにより、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理した最表層1dを有するため、樹脂との密着性が良く、光半導体装置100又は光半導体装置200においては、例えば封止部材5との密着性を向上することができる。
【0061】
[保護膜]
光半導体装置100又は光半導体装置200はさらに、保護膜を備えてもよい。保護膜は、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属構造1の表面に設けられた金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを少なくとも被覆することができる。保護膜は、主としてリードフレーム10を構成する光半導体装置用金属構造1の表面の金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの変色又は腐食を抑制する部材である。保護膜は、さらに、任意に、発光素子2、接合部材4、樹脂成形体3等のリードフレーム10又は基体以外の部材の表面や、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dが設けられていない光半導体装置用金属構造1の表面を被覆してもよい。ワイヤ6が銀又は銀合金である場合や、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dが銀又は銀合金層である場合、保護膜はワイヤ6や最表層1dを被覆するよう設けられることが好ましい。これにより、銀を含むワイヤの硫化や断線をより防止し、光半導体装置100又は光半導体装置200の信頼性をより高めることができる。
【0062】
保護膜は、スパッタ法、化学蒸着法、原子層堆積法(以下、ALD(Atomic Layer Deposision)とも呼ぶ)によって形成されることが好ましい。特に、ALD法によれば、非常に均一な保護膜を製膜することができるとともに、形成された保護膜が他の成膜方法で得られる保護膜に比較して緻密であるため、例えばリードフレーム10を構成する光半導体装置用金属構造1の最表層1dの硫化や変色を非常に有効に防止することができる。
【0063】
保護膜の材料としては、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、ZnO、Nb2O5、MgO、In2O3、Ta2O5、HfO2、SeO、Y2O3、SnO2等の酸化物や、AlN、TiN、ZrN等の窒化物、ZnF2、SrF2等のフッ化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。
【0064】
光半導体装置100又は光半導体装置200は、上記の他、種々の部材を備えることができる。例えば、保護素子としてツェナーダイオードを搭載することができる。
【0065】
[光半導体装置の製造方法]
次に、光半導体装置の製造方法の一例として、実施形態4の光半導体装置200の製造方法を
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dに基づき説明する。
【0066】
図4Aに示すように、実施形態2又は3の光半導体装置用金属構造1からなるリードフレーム10を準備する。具体的には、光半導体装置用金属構造1の母材1aを構成する例えば銅の金属板をパンチングし、後述する光半導体装置用金属構造1の製造方法で説明するように、必要に応じてニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じてパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1、さらに金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを形成し、ポリアリルアミン重合体を含む溶液に浸漬及び/又は塗布する処理した後、必要に応じて水洗又は湯洗処理(洗浄)し、乾燥を行ったリードフレームであるリードフレーム10を形成する。
【0067】
図4Bに示すように、光半導体装置用金属構造1を用いたリードフレーム10と接するように、トランスファモールド法で樹脂成形体3を成形することができる。樹脂成形体3は、一対のリードフレーム10が、それぞれに樹脂成形体3の凹部の底面に露出するように形成され得る。つまり、リードフレーム10はそれぞれの樹脂成形体3の凹部の底面に露出され得る。
【0068】
次に、
図4Cに示すように、樹脂成形体3が形成されたリードフレーム10の発光素子2を搭載する領域に、接合部材4を介して発光素子2を搭載することができる。そして、発光素子2とリードフレーム10とをワイヤによって接続することができる。その後、樹脂成形体3のそれぞれの凹部内に封止部材5を設けることができる。
【0069】
そして、
図4Dに示すようなリードフレーム10と樹脂成形体3を、ダイシングソー等を用いて切断し、
図3A及び
図3Bに示すような個々の光半導体装置に個片化することができる。この切断により、光半導体装置200の外側面にリードフレーム10の断面が露出する。この断面においては、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属構造1の銅等の母材1aと、必要に応じてニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じてパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1、さらにポリアリルアミン重合体を含む溶液に浸漬及び/又は塗布する処理した金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dが露出している。
【0070】
実施の形態5:光半導体装置用金属構造の製造方法
次に、光半導体装置用金属構造の製造方法について説明する。
【0071】
実施形態1の光半導体装置用金属構造の製造方法は、
(1)一部又は全面に、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっき)を有する最表層(金、銀、金合金又は銀合金の最表層1d)を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の浸漬及び/又は塗布を行う処理工程
を備える。
【0072】
本開示においてめっきとは、例えば、電解めっき、無電解めっき等の湿式めっきや、溶融めっき、スパッタリングめっき、物理蒸着や化学蒸着を含む蒸着めっき等の乾式めっき等により形成される金属皮膜である。
【0073】
また、基体は、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する最表層を備えていればよく、最表層は表面処理により形成された金属皮膜でなくてもよい。言い換えると、基体自体が金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0074】
基体は、ウェットエッチングにより、所定の位置に段差を形成し、段差を形成した後に、前記工程を行うこともできる。
【0075】
また、上記したように、母材1aの上には、必要に応じてニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じてパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を形成することが好ましい。このため、上記した工程(1)を施す前に、必要に応じて母材1aに対してニッケル又はニッケル合金めっき層1bを形成する工程と、必要に応じてニッケル又はニッケル合金めっき層1bに対してパラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を形成する工程と、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを形成する工程とを備えることが好ましい。また、上記したように、最表層が銀又は銀合金層である場合には、上記した貴金属めっき層1c1の上に金又は金合金のめっき層1c2を形成し、その上に銀又は銀合金層を形成することが好ましい。このため、最表層が銀又は銀合金層である場合には、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを形成する工程は、金又は金合金のめっき層を形成する工程と、銀又は銀合金の最表層を形成する工程を備えることが好ましい。金又は金合金のめっき層1c2の厚みは、0.003μm以上0.5μm以下とすることができる。なお、最表層1dは、必ずしもめっきに限定されるものではなく、溶射により形成した金属皮膜でもよい。これら各層を形成する工程は、各層の形成が容易であるため、上述のめっきによって金属皮膜を形成する方法により行うことが好ましく、電解めっき又は無電解めっきにより行うことがより好ましい。なかでも電解めっきは層の形成速度が速く、量産性を高めることができるため、好ましい。
【0076】
上記した各層を形成する前に、母材1aの前処理を行うこともできる。前処理としては、希硫酸、希硝酸、希塩酸等の酸処理や、水酸化ナトリウム等のアルカリ処理等が挙げられ、これらを1回又は数回、同じ処理又は異なる処理を組合せて行ってもよい。前処理を数回行う場合は、各処理後に純水を用いて流水洗浄することが好ましい。母材1aが銅又は銅合金からなる金属板の場合、前処理に希硫酸を用いることが好ましい。母材1aが鉄又は鉄合金からなる金属板の場合、前処理に希塩酸を用いることが好ましい。
【0077】
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bを形成する工程において、前記めっき層を構成する材料が純ニッケルの場合は、例えばスルファミン酸ニッケルを含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。また、ニッケルリン合金を使用する場合は、次亜リン酸ニッケルめっき液を使用して無電解めっきして形成することができる。
【0078】
パラジウム若しくはパラジウム合金めっき層、ロジウム若しくはロジウム合金めっき層、白金若しくは白金合金めっき層等からなる貴金属めっき層1c1を形成する工程において、前記めっき層を構成する材料がパラジウム又はパラジウム合金の場合は、例えばテトラアンミンパラジウム塩化物を含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。前記めっき層を構成する材料がロジウム又はロジウム合金の場合は、例えば硫酸ロジウムを含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。前記めっき層を構成する材料が白金又は白金合金の場合は、例えばジニトロジアミン白金塩を含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。
【0079】
[金、銀、金合金又は銀合金の最表層1d]
金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dは、光半導体装置用金属構造1の表面に設けられる。金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの厚さは、0.003μm以上0.5μm以下であり、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下である。金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの厚さを0.003μm以上とすると、発光素子2とのダイボンド性やワイヤ6とのワイヤボンディング性をより向上させることができる。また、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの厚さが0.5μm以下であると、高価な貴金属の使用量をより少なくすることができ、コストをより低減できる。なお、金合金を採用する場合は、金の含有量は75.0質量%以上99.9質量%以下とすることが好ましく、銀合金を採用する場合は、銀の含有量は75.0質量%以上99.9質量%以下とすることが好ましい。
【0080】
上記最表層1dが金又は金合金層である場合、前記金又は金合金層を電解めっきにより形成する場合は、シアン化金カリウム又はシアン化金を金属金濃度で0.5g/L以上10g/L以下含み、電気伝導塩を30g/L以上150g/L以下含む、めっき液を用いることが好ましい。金合金めっきの場合は、合金金属として、シアン化銀カリウムやシアン化銅カリウム等を1g/L以上5g/L以下添加することによって、それぞれ金銀合金めっきあるいは金銅合金めっき層を得ることができる。
【0081】
上記最表層1dが銀又は銀合金層である場合、前記銀又は銀合金層を電解めっきにより形成する場合は、シアン化銀カリウム又はシアン銀を金属銀として20g/L以上80g/L以下含み、遊離シアン化カリウム又は電気伝導塩を50g/L以上150g/L以下含む、めっき液を用いることが好ましい。また、このめっき液には、さらにセレン化合物や有機硫黄化合物を光沢剤として添加することもできる。銀合金めっきの場合は、合金金属として、シアン化金カリウムやシアン化銅カリウムなどを5g/L以上20g/L以下添加することによって、それぞれ銀金合金めっきあるいは銀銅合金めっき層を得ることができる。
【0082】
前記めっき液は、シアン塩、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、硫酸塩等の1種以上の電気伝導塩を5g/L以上150g/L以下含むことが好ましい。めっき液に含まれる電気伝導塩が5g/L以上150g/L以下であれば、めっき液の電気抵抗が高くなりすぎることなく、また、めっき液の粘性が過剰となることなく、イオン移動度が低下しにくく、工業的により安定してめっき液を使用することができる。また、めっき液に含まれる電気伝導塩が5g/L以上150g/L以下であれば、めっき液の粘性が過剰となることなく、被めっき物による、いわゆるめっき液の持ち出しも少なくなるので、より経済的に金、銀、金合金又は銀合金のめっきを施すことができる。シアン塩としては、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が上げられる。リン酸塩としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、ピロリン酸カリウム等が挙げられる。硝酸塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。クエン酸塩としては、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0083】
前記金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを形成する工程において、前記めっき液を用いて、前記めっき液の液温が20℃以上70℃以下、陽極に金、銀又は金銀合金からなる可溶性電極、あるいは、ステンレス又は白金、白金被覆チタン電極を使用して、導電性の基体の陰極電流密度が0.1A/dm2以上10A/dm2以下とし、めっき時間が5秒間以上10分間以下の条件で、電解めっきを行うことが好ましい。
【0084】
なお、上記最表層1dである金、銀、金合金又は銀合金層が、めっきや溶射等によって形成された金属皮膜ではない、例えば金属板、ワイヤである場合は、常法により形成又は準備することができる。
【0085】
金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dは、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を、浸漬及び/又は塗布して処理したものである。これにより、ポリアリルアミン重合体を含む膜が、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dを備える基体に付着する。ポリアリルアミン重合体を含む膜の厚みは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。ポリアリルアミン重合体を含む膜の厚みを500nm以下とすることにより、発光素子のダイボンディング、ワイヤボンディング又ははんだ実装をさらに良好とすることができる。また、ポリアリルアミン重合体を含む膜の厚みを10nm以上とすることにより、光半導体装置用金属構造1と樹脂材料との密着性をさらに向上させることができる。
【0086】
ポリアリルアミン重合体としては、特に制限されるわけではないが、通常は、一級アミンであるアリルアミンのホモポリマーが想定されており、具体的には、
一般式(1):
【0087】
【0088】
[式中、nは25~440を示す。]
で表されるポリアリルアミン重合体が挙げられる。これらポリアリルアミン重合体は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0089】
上記したポリアリルアミン重合体の重量平均分子量は、樹脂材料との密着性の観点から、1600以上25000以下が好ましく、3000以上18000以下がより好ましい。
【0090】
上記のようなポリアリルアミン重合体は、公知又は市販品を用いることができるし、重合して用いることもできる。市販品を用いる場合、ニットーボーメディカル株式会社からPAA(登録商標)という商品名で販売されているので,容易に入手することができる。
【0091】
このポリアリルアミン重合体は水溶性のため、様々な濃度の水溶液を製作することができる。なかでも、経済性及び作業のしやすさから、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、0.01質量%以上1.0質量%以下の水溶液とすることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下の水溶液とすることがより好ましい。ポリアリルアミン重合体を含む溶液の濃度を0.01質量%以上とすることで、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dへさらに十分に付着させることができ、樹脂材料との密着性をより改善しやすい。ポリアリルアミン重合体を含む溶液の濃度を1.0質量%以下とすることで、樹脂材料との密着性の改善のみならず、水溶液の粘性を高くし過ぎることがなく、光半導体装置用金属構造1とともに処理液が持ち出されにくく、より経済的である。
【0092】
本実施形態において、ポリアリルアミン重合体を含む溶液は、トリアジン化合物を含んでいてもよい。すなわち、基体に付着したポリアリルアミン重合体を含む膜は、トリアジン化合物を含有していてもよい。このように、ポリアリルアミン重合体及びトリアジン化合物の双方を含有することにより、樹脂材料との密着性をさらに向上させることができる。トリアジン化合物は、金との密着性に優れているため、最表層1dとして金又は金合金層を採用した場合に、特に樹脂材料との密着性を向上させることができる。
【0093】
トリアジン化合物としては、樹脂材料との密着性をより改善しやすい観点から、トリアジンチオール化合物が好ましい。特に、一般式(2):
【0094】
【0095】
[式中、Yは窒素原子又は硫黄原子を示す。R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属原子又は置換若しくは非置換アルキル基を示す。mは1又は2を示し、Yが窒素原子の場合はmは2を示し、Yが硫黄原子の場合はmは1を示す。]
で表されるトリアジン化合物が挙げられる。
【0096】
一般式(2)において、R1、R2及びR3で示されるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子等が挙げられる。
【0097】
一般式(2)において、R1、R2及びR3で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10(特に1~6)のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基は、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等の置換基を1~3個有していてもよい。
【0098】
このようなトリアジン化合物としては、具体的には、
【0099】
【0100】
等が挙げられる。これらトリアジン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0101】
これらトリアジン化合物は、公知又は市販品を用いることができる。例えば、1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールのナトリウム塩は、三協化成株式会社からサンチオールという商品名で販売しており容易に入手することができるとともに、水溶性であるため適切な濃度の処理液を準備できるので好ましい。
【0102】
上記のトリアジン化合物は、経済性及び作業のしやすさから、ポリアリルアミン重合体を含む溶液がさらにトリアジン化合物を含む場合、そのポリアリルアミン重合体を含む溶液の総量を100質量%として、トリアジン化合物の含有量を0.01質量%以上1.0質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下の水溶液とすることがより好ましい。トリアジン化合物を含む溶液の濃度を0.01質量%以上とすることで、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dへさらに十分に付着させることができ、樹脂材料との密着性をより改善しやすい。トリアジン化合物を含む溶液の濃度を1.0質量%以下とすることで、樹脂材料との密着性の改善のみならず、水溶液の粘性を高くし過ぎることがなく、光半導体装置用金属構造1とともに処理液が持ち出されにくく、より経済的である。
【0103】
トリアジン化合物は金及び銀(特に金)との密着性に優れており、特にトリアジンチオール化合物は金とS(硫黄)との分子間力により金との密着性がよいが、水洗するとその効力が弱まる懸念がある。一方、ポリアリルアミン重合体は分子量が大きく、ポリアリルアミン重合体を含む溶液は粘りがあるため、本実施形態の処理により金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dの表面に付着してポリアリルアミン重合体を含む膜を形成しやすい。このポリアリルアミン重合体を含む膜により金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dと樹脂材料との密着性が向上し、また、ポリアリルアミン重合体を含む膜がトリアジン化合物を含有する場合は、ポリアリルアミン重合体を含む膜がトリアジン化合物を留めるため、密着性向上においてさらによい効果が得られると推測する。
【0104】
上記したポリアリルアミン重合体を含む溶液には、金、銀、金合金又は銀合金の最表層1dへの濡れ性及び溶解安定性をさらに改善させやすくするため、適切なアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を添加することもできる。
【0105】
上記したポリアリルアミン重合体を含む溶液には、溶解安定性を維持しやすいため、適切な有機溶剤や適切なpH緩衝剤を添加することもできる。pH緩衝剤としては、例えば、ほう酸若しくはその塩、二リン酸若しくはその塩、リン酸若しくはその塩、又はクエン酸若しくはその塩が挙げられる。
【0106】
なお、上記したポリアリルアミン重合体を含む溶液は、あらかじめ濃縮液を作成しておき、処理装置にて使用する場合は、この濃縮液を適宜水で希釈して使用してもよい。
【0107】
上記したポリアリルアミン重合体を含む溶液は、特に、光半導体装置100又は光半導体装置200中のリードフレーム10と隣接する樹脂成形体3との密着性を向上させるために使用されるうえで有用である。
【0108】
金、銀、金合金又は銀合金層に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を処理する方法としては、浸漬及び/又は塗布を行って処理することが好ましい。浸漬処理する場合は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液中に、金、銀、金合金又は銀合金層をすべて浸漬してもよいし、樹脂材料と接触する部分のみ浸漬してもよい。浸漬処理する場合は、適切な撹拌処理や噴流処理を行うことが好ましい。一方、塗布処理(特に吹きかけ処理)を行う場合は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を公知の手段で塗布してもよいし、公知の手段で吹きかけ処理(スプレー処理等)を施してもよい。具体的には、スプレーで金、銀、金合金又は銀合金層に直角に吹きかけてもよいし、水平又は角度をかけて吹きかけてもよい。また、吹きかけ噴流でもよいしシャワ-のようにしてもよい。また、上記浸漬と塗布とを両方施してもよく、これらの順序は特に問わない。
【0109】
金、銀、金合金又は銀合金層に対して、浸漬及び/又は塗布を行う際には、ポリアリルアミン重合体を含む溶液の温度は、15℃以上50℃以下が好ましい。溶液の温度を15℃以上とすることで、金、銀、金合金又は銀合金層の表面に、ポリアリルアミン重合体及び必要に応じてトリアジン化合物の皮膜を適度な時間で付着させることができる。また、溶液の温度を50℃以下とすることで、乾燥時にシミになることをより抑制しやすい。
【0110】
金、銀、金合金又は銀合金層に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を浸漬及び/又は塗布処理する時間は、浸漬及び/又は塗布方法や処理液の温度によって適宜調整できるが、通常、3秒以上60秒以下が好ましい。処理時間を3秒以上とすることで、金、銀、金合金又は銀合金層の表面に、ポリアリルアミン重合体及び必要に応じてトリアジン化合物の皮膜をより均一に付着させやすい。また、処理時間を60秒以下とすることで、生産性がより向上させやすい。
【0111】
本実施形態の製造方法においては、このようにして工程(1)を経た後に、
(2)前記工程(1)を経た基体を洗浄する工程、及び
(3)前記工程(2)を経た基体を乾燥する工程
をこの順に備えることもできる。洗浄(特に水洗又は湯洗)及び乾燥は、常法にしたがい行うことができる。
【0112】
光半導体装置用金属構造1は、各層を形成した後、工程(4)として、熱処理する工程をさらに含んでもよい。詳細には、上述の工程(3)の後、工程(2)を経た基体を熱処理する工程(4)を備えていてもよい。熱処理は、大気中でもよいし窒素ガス等の不活性雰囲気や水素ガス等の還元雰囲気でもよい。また、熱処理方法としては、熱風恒温器中のようなバッチ処理でもよいし、連続めっき装置の最終工程に熱風炉や赤外炉を設けて連続的に熱処理してもよい。これらの熱処理によって、母材1aや各層の金属が適宜相互拡散し、母材1aとニッケル又はニッケル合金めっき層1bや、各層1b、1c及び1d間の密着が向上しやすい。なお、熱処理の温度と処理時間は,各層の厚さの組み合わせを勘案して決めることができるが、熱処理温度は通常100℃以上500℃以下が好ましい。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
実施例1、4、5、7及び11
図2Aに示すように、以下の母材1aの表面に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bとしてニッケルめっき層、ニッケルスズ合金めっき層又はニッケルコバルト合金めっき層を、その上に最表層1dとして金めっき層を、この順で、以下に示す浴組成を有する各めっき液を用いて、各条件で電解めっきにて光半導体装置用金属構造1を形成した。その後、ポリアリルアミン重合体を含む溶液に浸漬又は吹きかけ処理する工程と、洗浄する工程と、乾燥する工程を行い、この光半導体装置用金属構造1を用いて、一対のリードフレームであるリードフレーム10を用意した。実施例における各層の厚さ(μm)とポリアリルアミン重合体を含む溶液の組成と処理条件は表1に記載した。
【0115】
[実施例1、4、5、7及び11の母材1a]
実施例1、4、5及び7では母材として銅を、実施例11では鉄を使用した。
【0116】
銅の母材:三菱伸銅株式会社製のTAMAC194材をプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
【0117】
鉄の母材:日本製鉄株式会社製のSPCE-SBをプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
【0118】
[実施例1、4、5、7及び11のニッケル又はニッケル合金めっき層1b]
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bとして、実施例1、4及び11ではニッケルめっき層を形成し、実施例5ではニッケルスズ合金めっき層を形成し、実施例7ではニッケルコバルト合金めっき層を形成した。
【0119】
ニッケルめっき層は、標準的なスルファミン酸電解めっき浴として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
【0120】
ニッケルめっき液
スルファミン酸ニッケル=450g/L
塩化ニッケル=10g/L
ほう酸=30g/L
pH4.0。
【0121】
ニッケルスズ合金めっき層は、上記のニッケルめっき層に対して、適量のスルファミン酸スズ(5g/L)を添加しためっき液を用いた。
【0122】
ニッケルコバルト合金めっき層は、上記のニッケルめっき層に対して、適量のスルファミン酸コバルト(15g/L)を添加しためっき液を用いた。
【0123】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温55℃、陰極電流密度5A/dm2で電解めっきしてニッケルめっき層、ニッケルスズ合金めっき層又はニッケルコバルト合金めっき層を形成した。陽極は硫黄添加のニッケル板を使用した。
【0124】
[実施例1、4、5、7及び11の最表層1d]
金めっき液
シアン化金カリウム 金として9g/L
クエン酸カリウム=120g/L
リン酸ニカリウム=30g/L
硫酸タリウム タリウムとして10mg/L
pH 6.3。
【0125】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し、液温68℃、陰極電流密度0.5A/dm2で電解めっきして金めっき層を形成した。陽極は白金被覆チタン不溶性電極を用いた。
【0126】
その後、実施例1、4及び7では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-03(登録商標;重量平均分子量3000)を0.5質量%含有する水溶液に浸漬又は吹きかけ処理し、水洗後乾燥した。なお、浸漬又は吹きかけ処理の条件は表1に示した。
【0127】
また、実施例5では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-08(登録商標;重量平均分子量8000)を0.02質量%及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールトリナトリウム塩(三協化成株式会社製のサンチオールN-W)を0.2質量%含有する水溶液を50℃で35秒間吹きかけ処理し、水洗後乾燥した。
【0128】
また、実施例11では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-15(登録商標;重量平均分子量15000)を0.01質量%及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールトリナトリウム塩(三協化成株式会社製のサンチオールN-W)を0.1質量%含有する水溶液に15℃で3秒間浸漬し、水洗後乾燥した。
【0129】
実施例2、3、6、8、9及び10
図2Bに示すように、以下の母材1aの表面に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bとしてニッケルめっき層又はニッケルリン合金めっき層を、その上に下地層1cとしてパラジウムめっき層、パラジウムニッケル合金めっき層、ロジウムめっき層又はロジウムコバルト合金めっき層を、その上に最表層1dとして金めっき層、金銀合金めっき層又は金コバルトめっき層を、この順で、以下に示す浴組成を有する各めっき液を用いて、各条件で電解めっきにて光半導体装置用金属構造1を形成した。その後、ポリアリルアミン重合体を含む溶液に浸漬する処理工程と、洗浄する工程と、乾燥する工程と、必要に応じて熱処理する工程を行い、この光半導体装置用金属構造1を用いて、一対のリードフレームであるリードフレーム10を用意した。実施例における各層の厚さとポリアリルアミン重合体を含む溶液の組成と処理条件は表1に記載した。
【0130】
[実施例2、3、6、8、9及び10の母材1a]
実施例2、3、6、8及び10では銅基体を、実施例9では42アロイ合金基体を使用した。
【0131】
銅基体は、実施例1と同じものを用いた。
【0132】
42アロイ合金の基体:DOWAメタニクス社製42%Ni-Feの鉄ニッケル合金(Fe-42%Ni)をプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
【0133】
[実施例2、3、6、8、9及び10のニッケル又はニッケル合金めっき層1b]
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bとして、実施例2、3、6、8及び10ではニッケルめっき層を形成し、実施例9ではニッケルリン合金めっき層を形成した。
【0134】
実施例2、3、6、8及び10のニッケルめっき層は、表1に示すめっき厚となるようにしたこと以外は、実施例1と同様のめっき液を用いた。
【0135】
ニッケルリン合金めっき層は、上記のニッケルめっき層に対して、適量の亜リン酸(20g/L)を添加しためっき液を用いた。
【0136】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温55℃、陰極電流密度5A/dm2で電解めっきしてニッケルめっき層又はニッケルリン合金めっき層を形成した。陽極は硫黄添加のニッケル板を使用した。
【0137】
[実施例2、3、6、8、9及び10の下地層1c]
下地層1cとして、実施例2、9及び10ではパラジウムめっき層を形成し、実施例3ではロジウムめっき層を形成し、実施例6ではパラジウムニッケル合金めっき層を形成し、実施例8ではロジウムコバルト合金めっき層を形成した。
【0138】
実施例2、9及び10の下地層1cとしてパラジウムめっき層は、以下の浴組成のめっき液を用いた。
【0139】
パラジウムめっき液
テトラアンミンパラジウム塩化物 パラジウムとして5g/L
硝酸アンモニウム=150g/L
3-ピリジンスルホン酸ナトリウム=5g/L
pH8.5。
【0140】
実施例6のパラジウムニッケル合金めっき層には、上記パラジウムめっき液に対して、適量の硫酸ニッケル(1.0g/L)を添加しためっき液を用いた。
【0141】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し、液温50℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきしてパラジウムめっき層又はパラジウムニッケル合金めっき層を形成した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
【0142】
実施例3の下地層1cとしてロジウムめっき層は、以下の浴組成のめっき液を用いた。
【0143】
ロジウムめっき液
硫酸ロジウム ロジウムとして2g/L
硫酸=50g/L
硫酸鉛 鉛として10mg/L。
【0144】
実施例8のロジウムコバルト合金めっき層には、上記ロジウムめっき液に対して、適量の硫酸コバルト(0.3g/L)を添加しためっき液を用いた。
【0145】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し、液温45℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきしてロジウムめっき層を形成した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
【0146】
[実施例2、3、6、8、9及び10の最表層1d]
最表層1dとして、実施例2では金銀合金めっき層を形成し、実施例3、6、8及び10では金めっき層を形成し、実施例9では金コバルト合金めっき層を形成した。
【0147】
実施例2の金銀合金めっき層1dは、以下の浴組成のめっき液を用いた。
【0148】
金銀合金めっき液2
シアン化金カリウム 金として4.25g/L
シアン化銀カリウム 銀として0.75g/L(金85質量%、銀15質量%)
シアン化カリウム=30g/L
クエン酸カリウム=80g/L
リン酸カリウム=50g/L
pH9.5。
【0149】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温30℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきして金銀合金めっき層を形成した。陽極は白金被覆チタン電極を使用した。
【0150】
実施例3、6、8及び10の最表層1dとして金めっき層は、表1に示すめっき厚となるようにしたこと以外は、実施例1と同様のめっき液を用いて、めっき時間を調整し、他は実施例1と同様の条件で、金めっき層を形成した。
【0151】
実施例9の最表層1dとして金コバルト合金めっき層は、実施例1の金めっき液に対して、適量の硫酸コバルト(1.0g/L)を添加しためっき液を用い、めっき時間を調整し、他は実施例1と同様の条件で、金コバルト合金めっき層を形成した。
【0152】
その後、実施例2及び8では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-08(登録商標;重量平均分子量8000)を0.02質量%及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールトリナトリウム塩(三協化成株式会社製のサンチオールN-W)を0.2質量%含有する水溶液に浸漬し、水洗後乾燥した。なお、浸漬条件は表1に示した。
【0153】
また、実施例3,6及び9では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-15(登録商標;重量平均分子量15000)を0.01質量%及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールトリナトリウム塩(三協化成株式会社製のサンチオールN-W)を0.1質量%含有する水溶液に浸漬し、水洗後乾燥し、実施例9では、さらに、250℃で2時間熱処理した。なお、浸漬条件は表1に示した。
【0154】
また、実施例10では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-03(登録商標;重量平均分子量3000)を0.5質量%含有する水溶液に20℃で20秒間浸漬処理し、水洗後乾燥し、さらに、450℃で5分熱処理した。なお、浸漬条件は表1に示した。
【0155】
比較例1、2及び3
比較例1として、実施例1と同様の構造で、ニッケルめっき層及び金めっき層の厚さが表1となるようにした金属構造を用意したがポリアリルアミン重合体を含む溶液では処理しなかった。比較例2、3として、実施例10と同様の構造で、ニッケルめっき層、パラジウムめっき層及び金めっき層の厚さが表1に示す比率となるようにした金属構造を用意したがポリアリルアミン重合体を含む溶液では処理しなかった。この金属構造を用いて一対のリードフレームであるリードフレーム10を用意した。
【0156】
光半導体装置
次に、実施例及び比較例の光半導体装置用金属構造をリードフレームとして用いて、
図1A及び1Bに示す光半導体装置と実質的に同様の構造の各光半導体装置を製造した。光半導体装置100が個片化されるまでは、一対のリードフレーム10が複数連結された状態のリードフレーム10に、複数の樹脂成形体3が成形された集合体の状態で各工程を経るが、便宜上、
図1A及び1Bに示す1つの光半導体装置100(単数)で説明する。このリードフレーム10を用いて、
図1A及び
図1Bに示す光半導体装置と実質的に同様の構造の各実施例及び比較例の光半導体装置を製造した。
【0157】
樹脂成形体3は、凹部を有しており、凹部の底面にリードフレーム10が露出されている。そのリードフレーム10の上に、透光性の樹脂を接合部材4として、上面に正負の電極を備える平面視において矩形の発光素子2を載置し、接合した。その後、凹部内にYAG蛍光体と、透光性樹脂を含有する封止材料をポッティング法により滴下し、封止部材5を形成した。
【0158】
樹脂成形体3のはんだ侵入及び封止部材漏れの有無
各実施例及び比較例の光半導体装置を鉛フリーはんだ(Sn-0.3Ag-0.7Cu)ペーストを塗布したプリント基板に設置し、リフロー温度260℃で10秒間実装した後、リフロー後の光半導体装置を剥し、実体顕微鏡を用いて40倍で樹脂成形体3内にはんだ侵入があるか評価するとともに、封止部材漏れの有無についても評価した。その評価結果を表2に示した。
【0159】
耐硫化試験後の全光束維持率
耐硫化信頼性を評価するため、各実施例及び比較例の光半導体装置を温度40℃湿度75%RHの環境下でH2Sを2ppm及びNO2を4ppm含む混合ガスにて100時間暴露処理前後の光半導体装置から発せられる光の全光束を、積分球式分光器を用いて測定し、暴露処理後の全光束を暴露処理前の全光束で除した割合を全光束の維持率として測定した。その結果を表2に示した。
【0160】
【0161】
【0162】
実施例12~22及び比較例4~6
実施例12~22及び比較例4~6では、それぞれ、実施例1~11及び比較例1~3と同様に、母材1a、ニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じて下地層1cとして貴金属のめっき層1c1及び/又は金又は金合金めっき層1c2を形成した。その上に、さらに、以下の銀めっき液を用いて、銀又は銀合金めっき層1dを最表層として形成した。
【0163】
実施例12、13、15、16、17、19、20及び22は以下の銀めっき液を用いて銀めっき層を最表層として形成した。
【0164】
[銀めっき液]
シアン化銀カリウム 銀として40g/L
シアン化カリウム=120g/L
炭酸カリウム=40g/L
セレノシアン酸カリウム=3mg/L。
【0165】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温30℃、陰極電流密度5A/dm2で電解めっきして銀めっき層を形成した。陽極は銀電極を使用した。
【0166】
また、実施例14、18、21は、下記銀金合金めっき液を用いて銀金合金めっき層を最表層として形成した。ただし、シアン化金カリウム濃度は、表3のそれぞれの実施例の銀金合金比率になるよう、実施例14は金として2.0g/L、実施例18は4.0g/L、実施例21は10.0g/Lに調整した。
【0167】
[銀金合金めっき液]
シアン化銀カリウム 銀として40g/L
シアン化金カリウム 金として2.0、4.0又は10.0g/L
シアン化カリウム=120g/L
炭酸カリウム=40g/L
セレノシアン酸カリウム=3mg/L。
【0168】
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温25℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきして銀金合金めっき層を形成した。陽極は白金被覆チタン電極を使用した。
【0169】
その後、実施例12~22では、それぞれ、実施例1~11に準じて、ポリアリルアミン重合体及び必要に応じてトリアジン化合物での処理を施した。なお、比較例4~6では、比較例1~3と同様に、ポリアリルアミン重合体での処理は施さなかった。また、実施例12~22及び比較例4~6についても、実施例1~11及び比較例1~3と同様に、樹脂成形体3のはんだ侵入及び封止部材漏れの有無をそれぞれ評価し、耐硫化試験後の全光束維持率を測定した。製造条件を表3に示し、結果を表4に示す。
【0170】
【0171】
【0172】
実施例23~28及び比較例7~9
図2Aに示すように、以下の母材1aの表面に、必要に応じてニッケル又はニッケル合金めっき層1bとしてニッケルめっき層を、その上に最表層1dとして金、銀又は銀金合金めっき層を、この順で、以下に示す浴組成を有する各めっき液を用いて、各条件で電解めっきにて光半導体装置用金属構造1を形成した。その後、実施例23~28については、ポリアリルアミン重合体を含む溶液に浸漬処理する工程と、洗浄する工程と、乾燥する工程を行った。実施例及び比較例における各層の厚さ(μm)とポリアリルアミン重合体を含む溶液の組成と処理条件は表5に記載した。
【0173】
[実施例23~28及び比較例7~9の母材1a]
実施例23~28及び比較例7~9では母材として純銅板(縦90mm×横60mm×厚さ0.5mmの無酸素銅板)を使用した。
【0174】
[実施例23~24及び比較例7のニッケル又はニッケル合金めっき層1b]
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bとして、実施例23~24及び比較例7ではニッケルめっき層を形成した。なお、実施例25~28及び比較例8~9では、めっき層1bは形成しなかった。
【0175】
実施例23~24及び比較例7のニッケルめっき層は、実施例1と同様のめっき液を用いて、めっき時間を調整し、他は実施例1と同様の条件で、ニッケルめっき層を形成した。
【0176】
[実施例23~28及び比較例7~9の最表層1d]
最表層1dとして、実施例23~24及び比較例7では金めっき層を形成し、実施例25~26及び比較例8では銀めっき層を形成し、実施例27~28及び比較例9では銀金合金めっき層を形成した。
【0177】
実施例23~24及び比較例7の最表層1dとして金めっき層は、実施例1と同様のめっき液を用いて、めっき時間を調整し、他は実施例1と同様の条件で、金めっき層を形成した。
【0178】
実施例25~26及び比較例8の最表層1dとして銀めっき層は、実施例12と同様のめっき液を用いて、めっき時間を調整し、表5に示すめっき厚となるように調整する他は、実施例12と同様の条件で、銀めっき層を形成した。
【0179】
実施例27~28及び比較例9の最表層1dとして銀金合金めっき層は、実施例18と同様のめっき液を用いて、めっき時間を調整し、表5に示すめっき厚となるように調整する他は、実施例18と同様の条件で、銀金合金めっき層を形成した。
【0180】
その後、実施例23及び25では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-08(登録商標;重量平均分子量8000)を0.5質量%含有する水溶液に30℃で15秒間浸漬し、水洗後乾燥した。
【0181】
実施例27では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-03(登録商標;重量平均分子量3000)を0.7質量%含有する水溶液に30℃で15秒間浸漬し、水洗後乾燥した。
【0182】
また、実施例24、26及び28では、ニットーボーメディカル(株)製ポリアリルアミン重合体PAA-08(登録商標;重量平均分子量8000)を0.05質量%及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-チオールトリナトリウム塩(三協化成株式会社製のサンチオールN-W)を0.2質量%含有する水溶液に30℃で15秒間浸漬し、水洗後乾燥した。
【0183】
なお、比較例7~9では、比較例1~3と同様に、ポリアリルアミン重合体での処理は施さなかった。
【0184】
樹脂材料との密着性評価
実施例23~28で得られた光半導体装置用金属構造の最表層及び比較例7~9で得られためっきの最表層にそれぞれ、エポキシ樹脂を塗布した後、7mm径の大きさに型抜きし、その他の箇所の樹脂は除去した。その後、光半導体装置用金属構造の最表層及びめっきの最表層にそれぞれ塗布したエポキシ樹脂を150℃、4時間の熱処理により硬化させた後、実施例23~28及び比較例7~9の各最表層表面とエポキシ樹脂とのシェアー強度を5回測定し、その平均値を算出した。そして、実施例23及び24では比較例7のシェアー強度を100として、実施例25及び26では比較例8のシェアー強度を100として、実施例27及び28では比較例9のシェアー強度を100として、それぞれ相対評価した。なお、シェアー強度は、NordsonDAGE社製万能型ボンドテスター4000PXYを使用して測定した。結果を表5に示す。
【0185】
【0186】
実施例1~22の光半導体装置は、樹脂成形体3内へのはんだの侵入は見られず、また、樹脂成形体3から外部への封止部材の漏れは見られず、樹脂材料とリードフレーム10の密着性が良好であった。また、実施例1~22の光半導体装置は、硫化試験後に硫化試験前とほぼ同様の全光束を維持していた。また、実施例1~22の光半導体装置用金属構造は、部材を構成する樹脂材料との密着性が良好であった。
【0187】
比較例1~6の光半導体装置は、樹脂成形体3内にはんだの侵入があり、樹脂成形体3から外部への封止部材の漏れがあったため、部材を構成する樹脂材料とリードフレーム10の密着性が改善されていなかった。また、比較例4~6の光半導体装置では、硫化試験における全光束維持率が著しく低下した。
【0188】
さらに、実施例23~28の光半導体装置用金属構造では、比較例7~9の光半導体装置用金属構造と比較すると、シェアー強度を向上させることができ、樹脂材料との密着性が良好であった。この効果は、ポリアリルアミン重合体を含む溶液中にトリアジン化合物も併用して含む実施例24、26及び28ではより顕著であった。
【0189】
以上のように、本開示に係る光半導体装置用金属構造は、最表層に金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは、金、銀、金合金及び銀合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種のめっき)を有する最表層を備える基体に対して、ポリアリルアミン重合体を含む溶液を浸漬したり、塗布したりすることにより、表面にポリアリルアミン重合体を付着させた基体を容易に製造することができる。結果的に、樹脂材料との密着性を高めた光半導体装置用金属構造を製造することができる。
【符号の説明】
【0190】
1 光半導体装置用金属構造
1a 母材
1b ニッケル又はニッケル合金のめっき層
1c 下地層
1c1 貴金属のめっき層
1c2 金又は金合金のめっき層
1d 最表層 金、銀、金合金又は銀合金層
12 第一埋設部
13 第二埋設部
2 発光素子
3 樹脂成形体
31 側壁部
32 底面の一部
4 接合部材
5 封止部材
6 ワイヤ
10 リードフレーム
100 光半導体装置
200 光半導体装置