(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】低誘電正接シリカゾル及び低誘電正接シリカゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20230830BHJP
C01B 33/145 20060101ALI20230830BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230830BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C01B33/145
C01B33/18 Z
C08K3/36
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2023534721
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2023002302
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022012170
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022110565
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 恵
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 雅敏
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/188934(WO,A1)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220756(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)、(ii)、及び(iii)の事項を満たす、1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子。
(i)平均一次粒子径が5nm~120nmである、
(ii)水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下である、
(iii)下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下である、
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
【請求項2】
前記シリカ粒子の表面の少なくとも一部が、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物で被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項3】
前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも一部が結合してなる、請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物の置換基が、炭素原子数1~10のアルキル基、フェニル基、フェニルメチル基、及びビニル基からなる群から少なくとも一種選択される、請求項2又は請求項3に記載のシリカ粒子。
【請求項5】
前記有機ケイ素化合物が、前記置換基とともに加水分解性基を有する化合物である、請求項2乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のシリカ粒子。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物が、下記式(a)~(g)で示される化合物から少なくとも一種選択される、請求項2又は請求項3に記載のシリカ粒子。
【化1】
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物が、前記シリカ粒子の表面積1nm
2当たり0.5個~6個の割合で、該シリカ粒子の表面を被覆してなるか又は表面に結合してなる、請求項2乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のシリカ粒子。
【請求項8】
請求項1に記載のシリカ粒子が水、又は有機溶媒に分散した、シリカ分散液。
【請求項9】
請求項2乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のシリカ粒子がアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エーテル類、エステル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に分散した、シリカ分散液。
【請求項10】
請求項2乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のシリカ粒子と、有機樹脂材料とを含むコンポジット材料。
【請求項11】
前記有機樹脂材料が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のコンポジット材料。
【請求項12】
半導体デバイス材料、銅張積層板、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料及びセンシング材料からなる群から選択される用途を有する、請求項10又は請求項11に記載のコンポジット材料。
【請求項13】
平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子と、
アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物とを、有機溶媒中で混合する工程を含む、
表面修飾シリカ粒子の製造方法。
【請求項14】
下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:平均一次粒子径が5~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記アルコール溶媒を除去する工程、
を含む、
表面修飾シリカ粒子の製造方法。
【請求項15】
(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は両方が減圧下で行われる、
請求項14に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法。
【請求項16】
(A)工程で準備するシリカゾルが、水分量が0.1~2質量%のシリカゾルである、請求項14に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法。
【請求項17】
(A)工程で準備するシリカゾルが、200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを、炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルである、請求項14に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法。
【請求項18】
下記(A)工程及び(B)工程:
(A)工程:平均一次粒子径が5~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
を含む、
表面修飾シリカ分散液の製造方法。
【請求項19】
下記(D)工程:
(D)(B)工程後のシリカゾルをアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶媒置換する工程、
をさらに含む、
請求項18に記載の表面修飾シリカ分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電正接の低いシリカ粒子とその分散液、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、5Gなどの通信分野における情報通信量の増加に伴い、電子機器や通信機器等において高周波数帯の活用が広がっている。
高周波数帯の適用に伴い、回路信号の伝送損失が大きくなる問題が生じるため、一般的にアンテナ・回路・基板等の電気電子部品を構成する絶縁体には、誘電正接の低い材料が用いられる。絶縁体材料に用いられるポリマー材料は、一般に誘電率が低いが、誘電正接は高いものが多い。一方、セラミック材料はその逆の特性を持つものが多い。そのため、これら材料を組み合わせ、低誘電率と低誘電正接の両特性を両立させたセラミックフィラー充填ポリマー材料が普及している(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
上記セラミックフィラー(無機充填材)として、マイクロオーダーの大きさを有する溶融シリカが一般に広く普及しているが、製造上生じる粗大粒子が成形品の性能に大きな影響を与えるため、粗大粒子の分離や除去が課題となっている(非特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
一方、平均粒子径がナノオーダーのシリカ粒子は、製造上の粗大粒子が生じにくく、且つ、ろ過や遠心分離が可能であるため、万が一、粗大粒子が生じた場合においても分離・除去することが容易であるという点で優位とされている。またナノオーダーの粒子は、透明ポリマー材料への適用が可能であることやマイクロオーダーのフィラーに比べて複合効果が大きいなど様々なメリットがあるとされている(特許文献5、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-24916号公報
【文献】特許第6793282号公報
【文献】特開2004-269636号公報
【文献】特許第6546386号公報
【文献】特許第5862886号公報
【文献】特許第6813815号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】(株)富士キメラ総研、2019年12月、No.831906736、2020年~2030年をターゲットとする次世代新規低誘電マテリアルの徹底探索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、セラミックフィラーにおいて、ナノオーダーの粒子は様々な長所を有するものの、既存のナノオーダーの粒子は誘電正接が高く、高周波数帯で作動する電子機器等の材料への適用は困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、低誘電正接を有するナノオーダーの粒子を提供すること、具体的には、1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子とその分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく誠意検討を重ねた結果、平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積と窒素吸着による比表面積との比が0.6以下であり、且つ、全シラノール基率が5%以下であるシリカ粒子が、1GHzにおける誘電正接が0.01以下という低い誘電特性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
さらに本発明者らは、前記シリカ粒子表面の少なくとも一部をアルキル基、及び/又は不飽和結合を有する置換基を有する有機ケイ素化合物で修飾したシリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)においても、1GHzにおける誘電正接が0.01以下という低い誘電特性を示す粒子となることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、下記(i)、(ii)、及び(iii)の事項を満たす、1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子に関する。
(i)平均一次粒子径が5nm~120nmである、
(ii)水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下である、
(iii)下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下である、
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
第2観点として、前記シリカ粒子の表面の少なくとも一部が、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物で被覆されていることを特徴とする、第1観点に記載のシリカ粒子に関する。
第3観点として、前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも一部が結合してなる、第1観点に記載のシリカ粒子に関する。
第4観点として、前記有機ケイ素化合物の置換基が、炭素原子数1~10のアルキル基、フェニル基、フェニルメチル基、及びビニル基からなる群から少なくとも一種選択される、第2観点又は第3観点に記載のシリカ粒子に関する。
第5観点として、前記有機ケイ素化合物が、前記置換基とともに加水分解性基を有する化合物である、第2観点乃至第4観点のうちいずれか一に記載のシリカ粒子に関する。
第6観点として、前記有機ケイ素化合物が、下記式(a)~(g)で示される化合物から少なくとも一種選択される、第2観点又は第3観点に記載のシリカ粒子に関する。
【化1】
第7観点として、前記有機ケイ素化合物が、前記シリカ粒子の表面積1nm
2当たり0.5個~6個の割合で、該シリカ粒子の表面を被覆してなるか又は表面に結合してなる、第2観点乃至第6観点のうちいずれか一に記載のシリカ粒子に関する。
第8観点として、第1観点に記載のシリカ粒子が水、又は有機溶媒に分散した、シリカ分散液に関する。
第9観点として、第2観点乃至第7観点のうちいずれか一に記載のシリカ粒子がアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エーテル類、エステル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に分散した、シリカ分散液に関する。
第10観点として、第2観点乃至第7観点のうちいずれか一に記載のシリカ粒子と、有機樹脂材料とを含むコンポジット材料に関する。
第11観点として、前記有機樹脂材料が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、第10観点に記載のコンポジット材料に関する。
第12観点として、半導体デバイス材料、銅張積層板、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料及びセンシング材料からなる群から選択される用途を有する、第10観点又は第11観点に記載のコンポジット材料に関する。
第13観点として、平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子と、
アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物とを、有機溶媒中で混合する工程を含む、表面修飾シリカ粒子の製造方法に関する。
第14観点として、下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:平均一次粒子径が5~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記アルコール溶媒を除去する工程、
を含む、
表面修飾シリカ粒子の製造方法に関する。
第15観点として、(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は両方が減圧下で行われる、第14観点に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法に関する。
第16観点として、(A)工程で準備するシリカゾルが、水分量が0.1~2質量%のシリカゾルである、第14観点に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法に関する。
第17観点として、(A)工程で準備するシリカゾルが、200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを、炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルである、第14観点に記載の表面修飾シリカ粒子の製造方法に関する。
第18観点として、下記(A)工程及び(B)工程:
(A)工程:平均一次粒子径が5~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(S
H2O)と窒素吸着による比表面積(S
N2)との比(S
H2O/S
N2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、
29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
を含む、表面修飾シリカ分散液の製造方法に関する。
第19観点として、下記(D)工程:
(D)(B)工程後のシリカゾルをアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶媒置換する工程、をさらに含む、第18観点に記載の表面修飾シリカ分散液の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリカ粒子、及び表面修飾シリカは、低い誘電特性を示すという効果を奏する。また、有機溶媒にも良好に分散可能である。さらに本発明によるシリカ粒子は有機樹脂材料とコンポジット材料を形成することが可能なため、半導体デバイス材料などの製造が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<シリカ粒子>
本発明のシリカ粒子は、下記(i)、(ii)及び(iii)の事項を満たす、1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子である。
(i)平均一次粒子径が5nm~120nmである、
(ii)水蒸気吸着による比表面積(SH2O)と窒素吸着による比表面積(SN2)との比(SH2O/SN2)が0.6以下である、
(iii)下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下である、
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
【0012】
<平均一次粒子径>
本発明にかかるシリカ粒子の平均一次粒子径は、粒子表面への吸着分子として窒素ガスを用いたBET法により測定される比表面積(SN2)から算出された比表面積径を採用することができる。
比表面積径(平均一次粒子径:D(nm))は、窒素吸着法(BET法)によって測定された比表面積SN2(m2/g)から、D(nm)=2720/Sの式によって計算される一次粒子径であり、球状シリカ粒子に換算した粒子直径を意味する。
本発明にかかるシリカ粒子は、平均一次粒子径が5nm~120nmの範囲、例えば5nm~100nmの範囲のものを用いることができる。
平均一次粒子径を5nm~100nmのシリカ粒子とすることで、低い誘電正接を示すとともに、有機溶媒へ良好に分散させることができる。また、該シリカ粒子を用いたコンポジット材料を成型した場合に、欠陥の抑制や、高い透明性を発現させることができる。
【0013】
<窒素吸着による比表面積(SN2)>
本発明にかかるシリカ粒子は、窒素吸着による比表面積(SN2)が25~550m2/g、又は25~300m2/g、又は25~250m2/gの範囲のものを用いることができる。
比表面積(SN2)を25~250m2/gとすることで、低い誘電正接を維持しながら、有機ケイ素化合物による表面修飾を効率的に行うことができる。
【0014】
<水蒸気吸着による比表面積(SH2O)>
シリカ粒子の水蒸気吸着による比表面積(SH2O)は、粒子表面への吸着分子として水蒸気を用いたBET法により測定することができる。
本発明にかかるシリカ粒子は、水蒸気吸着による比表面積(SH2O)が5~500m2/g、又は5~300m2/g、又は5~100m2/gの範囲のものを用いることができる。
比表面積(SH2O)を上記数値範囲とすることで、有機溶媒へ当該シリカ粒子を良好に分散させることができ、また有機ケイ素化合物による表面修飾も効率的に行うことができる。さらに、比表面積(SH2O)を5~100m2/gとすることで、吸湿による誘電正接の低下も抑制することができる。
【0015】
<比表面積比(SH2O/SN2)>
水蒸気吸着による比表面積(SH2O)と窒素吸着による比表面積(SN2)との比(SH2O/SN2)は、粒子の表面積あたりの活性点(表面シラノール)の存在量の指標であり、この値が大きいほどシリカ表面に活性点が多く存在することを示す。
本発明にかかるシリカ粒子は、上記比表面積比(SH2O/SN2)が0.6以下のものを用いることができる。このようなSH2O/SN2を有するシリカ粒子を用いることで、誘電正接の増加を招くことなく、有機溶媒への分散性を良好なものとし、また有機ケイ素化合物によるシリカ粒子の表面修飾を効率的に行うことができる。
【0016】
<全シラノール基率>
シリカ中のケイ素原子には、ヒドロキシ基と結合していないケイ素(Q4)、及び1つ(Q3)、2つ(Q2)、又は3つ(Q1)のヒドロキシ基と結合しているケイ素が存在する。
すなわち、本発明では主にシリカ中のケイ素原子は、下記式に示すように、2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子(Q2)、3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子(Q3)、そして4つの酸素原子が結合したケイ素原子(Q4)の3つの構造をとる。
【化2】
そして、シリカ中のケイ素原子におけるQ2、Q3、Q4の割合を求めることで、当該シリカのシラノール(Si-OH)基量を見積もることができる。
本明細書において、全シラノール基率とは、シリカ粒子に存在するQ2~Q4構造の全ケイ素原子におけるシラノール基の存在率を表す。
【0017】
上記Q2~Q4構造のケイ素原子が有するシラノール基の存在率は、例えば該存在率の調査対象であるシリカ粒子を含む水分散シリカゾルを用いた29Si NMR法により測定することができる。
具体的には、29Si NMR法より得られたスペクトルを波形分離し、ケミカルシフト-80ppmから-105ppm間に観測されたピークをQ2構造由来、-90ppmから-115ppm間に観測されるピークをQ3構造由来、-95ppmから-130ppm間に観測されるピークをQ4構造由来と同定する。このとき、各ピークの面積値の合計(100%)に対するQ2~Q4の各ピーク面積値の割合(%)が、測定対象であるシリカ粒子における各構造(Q2~Q4)の含有比率(mol%)となる。そしてこの値と、Q2~Q4の各構造における酸素原子とヒドロキシ基の合計モル数に対するヒドロキシ基の含有割合を用いて、次式に従って全シラノール基率(%)を算出することができる。
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
上記式中、Q2、Q3及びQ4はそれぞれ、29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)、すなわち上記NMR測定結果から得られる各構造の含有比率を示す。
【0018】
本発明にかかるシリカ粒子において、全シラノール基率は5%以下であり、5%より大きいと、誘電率・誘電正接ともに低い誘電特性を示すことができない。
【0019】
また、本発明のシリカ粒子は、その製造方法に特に制限はないが、好ましくは水中で200~380℃で加熱処理されたものである。前記加熱処理は耐圧容器(オートクレーブ)を用いて行うことができる。
【0020】
<有機ケイ素化合物>
本発明のシリカ粒子は、シリカ粒子の表面の少なくとも一部がアルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基(これらをまとめて単に“置換基”とも称する)を有する有機ケイ素化合物で被覆されている態様、あるいは、前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも一部が結合してなる態様、すなわち粒子表面が有機ケイ素化合物により修飾された表面修飾シリカ粒子の態様も含むものである(以下、これらの態様をまとめて「表面修飾シリカ粒子」とも称する)。本明細書において、「表面修飾」とは、前記有機ケイ素化合物によってシリカ粒子表面が被覆されている態様、並びに、前記有機ケイ素化合物がシリカ粒子表面に結合している態様のいずれをも含む。
なお本発明において、「シリカ粒子の表面の少なくとも一部が有機ケイ素化合物で被覆されている」とは、後述する有機ケイ素化合物がシリカ粒子表面の少なくとも一部を被覆した態様であればよく、すなわち、該有機ケイ素化合物がシリカ粒子の表面の一部を覆う態様、該有機ケイ素化合物がシリカ粒子の表面全体を覆う態様を包含するものである。この態様は、有機ケイ素化合物とシリカ粒子表面との結合の有無は問わない。
また本発明において、「シリカ粒子の少なくとも一部の表面に有機ケイ素化合物の少なくとも一部が結合してなる」とは、後述する有機ケイ素化合物がシリカ粒子表面の少なくとも一部に結合した態様であればよく、すなわち、該有機ケイ素化合物がシリカ粒子の表面の一部に結合してなる態様、該有機ケイ素化合物がシリカ粒子の表面の一部に結合し表面の少なくとも一部を覆う態様、さらには、該有機ケイ素化合物がシリカ粒子の表面全体に結合し表面全体を覆う態様などを包含するものである。
【0021】
有機ケイ素化合物は、前記置換基を有する化合物であればよく、例えば、前記置換基及び後述する加水分解性基を有するケイ素化合物、前記置換基及びSi-O-Si結合を有する有機ケイ素化合物、及び前記置換基及びSi-N-Si結合を有する有機ケイ素化合物を挙げることができる。これら有機ケイ素化合物を用いて前記シリカ粒子を表面修飾することにより、表面修飾シリカ粒子を得ることができる。
【0022】
前記有機ケイ素化合物の置換基における前記アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基としては、炭素原子数1~10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、デシル基)、フェニル基、フェニルメチル基、ビニル基が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なってもよい。
前記加水分解性基としてはアルコキシ基が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。アルコキシ基としては、炭素原子数1~3のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0023】
前記有機ケイ素化合物が、前記置換基及び加水分解性基を有するケイ素化合物である場合、置換基数と加水分解性基数に特に制限は無いが、ケイ素原子あたり、前記置換基数1~3個、及び加水分解性基1~3個(ただし両基の合計は4以内)を有することが好ましい。
前記置換基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ジビニルジプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどが挙げられる。
これらの中でも、下記式(a)~式(g)で示される有機ケイ素化合物を好ましく挙げることができる。
【化3】
【0024】
前記置換基及びSi-O-Si結合を有する有機ケイ素化合物の置換基における、前記アルキル基(例えば炭素原子数1~10のアルキル基)、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基としては、メチル基、デシル基、フェニル基、フェニルメチル基、ビニル基が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なってもよい。特にメチル基が好ましく、有機ケイ素化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシロキサンが挙げられる。
前記置換基及びSi-N-Si結合を有する有機ケイ素化合物の置換基における、前記アルキル基(例えば炭素原子数1~10のアルキル基)、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基としては、メチル基、デシル基、フェニル基、フェニルメチル基、ビニル基が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なってもよい。特にメチル基が好ましく、有機ケイ素化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0025】
前記有機ケイ素化合物による表面処理(修飾)量、すなわち、シリカ粒子表面を被覆又は表面に結合した有機ケイ素化合物は、シリカ粒子の表面積1nm2当たり、例えば0.5個~6個程度の範囲とすることができる。
【0026】
表面修飾シリカ粒子の製造方法、すなわち、前記有機ケイ素化合物によるシリカ粒子表面の被覆(表面処理)方法は、特に制限はないが、例えば、シリカ粒子の有機溶媒分散液に、例えば前記式(a)~(g)で表される有機ケイ素化合物の少なくとも一種を添加し混合することで、有機ケイ素化合物の加水分解と縮合が生じてシリカ粒子を表面修飾することができる。
【0027】
有機ケイ素化合物の添加量は、シリカ粒子の表面積1nm2当たり、例えば有機ケイ素化合物が0.5個~6.0個程度の範囲で表面修飾されるように添加することができる。例えばシリカ粒子の表面積1nm2当たり0.5個~10.0個、又は1.0個~8.0個、又は1.0個~6.0個にて添加することができる。なお表面修飾に寄与しない余剰の有機ケイ素化合物が系内に存在していてもよいが、好ましい有機ケイ素化合物の添加量はシリカ粒子が表面積1nm2当たり1.0個~6.0個である。
【0028】
有機ケイ素化合物の加水分解は完全に加水分解を行うことでも、部分的に加水分解することでもよいが、水が必要であり、前記有機ケイ素化合物の加水分解性基又は[Si-O-Si]結合又は[Si-N-Si]結合の1モルに対して1モル程度以上の水を添加することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分を利用することもできる。
加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を用いる場合は、完全に加水分解を行うことでも、部分的に加水分解することでもよいが、水が必要であり、前記有機ケイ素化合物の加水分解性基1モルに対して1モル程度以上の水を添加することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分を利用することもできる。
加水分解し縮合させる際に、触媒を用いることもできる。加水分解触媒としてはキレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、又は無機塩基を単独で用い又は併用することができる。より具体的には、例えば、塩酸水溶液、酢酸、アンモニア水溶液等を用いることができる。
【0029】
<誘電特性の測定>
シリカ粒子の誘電率及び誘電正接は、シリカ粒子の乾燥粉を用い、専用の装置を用いて測定することができる。専用の装置としては、例えば、ベクトルネットワークアナライザ(商品名:FieldFox N6626A、KEYSIGHT TECHNOLOGIES製)などが挙げられる。
有機樹脂材料とコンポジット化し絶縁体用途に適応する場合、シリカ粒子の周波数1GHzにおける誘電正接が0.01以下、特に0.009以下であることが好ましい。また、誘電正接の下限値としては、0.00001、又は0.00005、又は0.0001、又は0.0005である。
【0030】
<シリカ分散液(1)>
本発明のシリカ分散液は、前記シリカ粒子が水、又は有機溶媒に分散した分散液である。本分散液の分散質であるシリカ粒子は、その粒子表面が前記有機ケイ素化合物によって表面修飾(被覆・結合)されているかは問わない。
前記有機溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類などが挙げられる。
前記アルコール類は、例えば炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトン類は、例えば炭素原子数1~5のケトン類が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記エーテル類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
前記アミド類は、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
<表面修飾シリカ分散液[シリカ分散液(2)]>
本発明のシリカ分散液はまた、粒子表面が前記有機ケイ素化合物によって表面修飾(被覆・結合)されているシリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)の分散液の態様も含み、以下この態様の分散液を「表面修飾シリカ分散液」(「表面修飾シリカ粒子の分散液」ともいう)と称する。
本発明の表面修飾シリカ分散液は、前記表面修飾シリカ粒子がアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エーテル類、エステル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に分散した分散液である。
前記アルコール類は、例えば炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトン類は、例えば炭素原子数1~5のケトン類が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記炭化水素類は、例えばトルエン、キシレン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
前記アミド類は、例えば、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
前記エーテル類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
前記エステル類は、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記アミン類は、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリンなどが挙げられる。
該表面修飾シリカ分散液中における表面修飾シリカ粒子の含有量は、(表面修飾)シリカ濃度として表わすことができる。表面修飾シリカ濃度は、表面修飾シリカ分散液を1000℃で焼成した後に得られる焼成残分を計量することで算出することができる。表面修飾シリカ分散液における表面修飾シリカ濃度は、例えば1質量%~60質量%、又は10質量%~60質量%、10質量%~40質量%とすることができる。
また、前記表面修飾シリカ分散液の水分含有量は5質量%以下であることが好ましい。このような水分含有量にすることで、分散液の安定性が良好となることや有機樹脂材料とのコンポジット材料を得やすくなることがある。
【0032】
<コンポジット材料>
本発明にかかるコンポジット材料は、本発明に係るシリカ粒子と有機樹脂材料とを含むコンポジット材料である。コンポジット材料に配合されるシリカ粒子は、その粒子表面が前記有機ケイ素化合物によって表面修飾(被覆・結合)されているかは問わないが、好ましい態様として表面修飾されたシリカ粒子を用いることができる。
前記有機樹脂材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種から選択することができる。
【0033】
前記コンポジット材料の作製方法は、特に制限はないが、例えば、シリカ粒子又は表面修飾シリカ粒子の分散液と有機樹脂材料のモノマー又はポリマー溶液とを混合し重合性組成物を調製した後、余剰な溶媒を除去した後に、光又は熱硬化させることによりコンポジット材料を得ることができる。また、シリカ粒子又は表面修飾シリカ粒子の粉末を、直接、有機樹脂材料のモノマー又はポリマー溶液に添加し重合性組成物を作製し、余剰な溶媒を除去した後に、光又は熱硬化させることでもコンポジット材料を得ることができる。
重合性組成物におけるシリカ粒子又は表面修飾シリカ粒子と有機樹脂材料のモノマー又はポリマー溶液との混合割合は、(表面修飾)シリカ粒子と有機樹脂材料のモノマー又はポリマーとの質量比で、(表面修飾)シリカ粒子:有機樹脂材料のモノマー乃至ポリマー=1:100~0.1、例えば1:20~0.1にて含有することができる。
【0034】
重合性組成物は重合開始剤を使用することにより、光又は熱にて硬化させることができる。光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤、又は光カチオン重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤、又は熱カチオン重合開始剤が挙げられる。また、重合開始剤は、重合性組成物100質量部に対して、0.01質量部~50質量部の範囲で用いることができる。
また任意成分として、従来の重合性組成物(コンポジット材料)に使用される慣用の添加剤、例えば、硬化促進用の触媒や顔料、ラジカル捕捉剤(クエンチャー)、レベリング剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0035】
本発明のコンポジット材料は、使用用途に応じて適切な有機樹脂材料を選択することにより、半導体デバイス材料、銅張積層板、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料又はセンシング材料として用いることができる。
【0036】
<表面修飾シリカ粒子の製造方法>
本発明の一態様である表面修飾シリカ粒子は、平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(SH2O)と窒素吸着による比表面積(SN2)との比(SH2O/SN2)が0.6以下であり、且つ、全シラノール基率が5%以下であるシリカ粒子と、アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基を有する有機ケイ素化合物とを、有機溶媒中で混合する工程を含みて製造することができる。
前記シリカ粒子及び有機ケイ素化合物は、それぞれ前述したものを用いることができる。
【0037】
上記混合工程において、有機ケイ素化合物の添加量は、シリカ粒子の表面積1nm2当たり0.5個~6個の割合で表面修飾される量とすることができる。具体的には、シリカ粒子が表面積1nm2当たり0.5個~10.0個、又は1.0個~8.0個、又は1.5~6.0個の割合となるように、有機ケイ素化合物を添加することができる。なお、表面修飾に寄与しない余剰の有機ケイ素化合物が反応系内に存在していてもよい。
【0038】
前記混合工程に用いる有機溶媒は、アルコール及び/又はケトン系溶媒を含む有機溶媒を用いることができる。
アルコールは炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶媒は炭素原子数1~5のケトン系溶媒が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトンなどが挙げられる。
【0039】
前記混合工程は、前記有機ケイ素化合物の加水分解と縮合反応が進行する温度であれば、特に制限されず、例えば20℃以上120℃未満の温度にて行うことができる。
反応効率の点では有機溶媒の沸点付近で行なうことが好ましく、例えば、メタノールを含む有機溶媒を用いて混合工程を実施するのであれば65℃付近で行なうことが好ましい。なお、混合工程におけるシリカ濃度や有機ケイ素化合物濃度の変化を抑えることを目的に、必要に応じて還流装置などを備えた装置で反応を実施してもよい。また混合工程は、同一の温度で複数回行うこともでき、また異なる温度で複数回行うこともできる。
なお、混合工程は30分から24時間にて行うことができ、工業的な観点から24時間以内で行なうことが望ましい。
【0040】
さらに、前記混合工程は、有機アミンを用いてpH調整する工程を含むことができる。このpH調整工程は、混合工程の前、混合工程の途中、混合工程後のいずれか1回、または複数回行なうことができる。
前記有機アミンとしては第2級、又は第3級アミンを用いることができる。第2級、又は第3級アミンとして、アルキルアミン、アリルアミン、アラルキルアミン、脂環式アミン、アルカノールアミン及び環状アミン等を用いることができる。
具体的には、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-イソプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、キヌクリジン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノナ-5-エン、1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン、ジアリルアミン等が挙げられる。これらの有機アミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機アミンの添加量は、シリカ粒子の質量に対して、0.001~5質量%、0.01~1質量%にて行うことができる。また、有機アミンの添加により、混合溶液のpHを4.0~11.0に調整することができ、好ましくはpH7.5~9.5である。
【0041】
また、混合工程後に得られた液、すなわち、表面修飾シリカ粒子を含有する液は、表面修飾シリカ分散液として、前述したコンポジット材料の製造に用いることができる。
そして、コンポジット材料の製造しやすさの観点などから、前記混合工程により得られた混合液に含まれる、有機溶媒の少なくとも一部を、他の有機溶媒に置換することができる。他の有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類及び含窒素有機化合物類からなる群から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を用いることができる。これら置換する溶媒は、混合液の有機溶媒と異なっていれば特に制限はなく、コンポジット化しようする有機樹脂材料の溶解性の観点で選択してもよい。
他の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、そしてジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド等のアミド類やトリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン等のアミン類などの含窒素有機化合物類などが挙げられる。
置換方法は公知の方法を用いることができ、例えば、ロータリーエバポレータ等による蒸発法、あるいは、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法により他の有機溶媒に置換することができる。
【0042】
表面修飾シリカ粒子の製造方法の具体例の一つとして、下記(A)工程乃至(C)工程を含む製造方法を挙げることができるが、これら方法(工程)には限定されない。
(A)工程:平均一次粒子径が5~120nmであり、水蒸気吸着による比表面積(SH2O)と窒素吸着による比表面積(SN2)との比(SH2O/SN2)が0.6以下であり、且つ、下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下:
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
[式(1)中、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、29Si NMR測定により得られるケイ素原子の構造に由来するピーク面積の合計(100%)に対する各ケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合(%)であって、Q2は2つの酸素原子及び2つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q3は3つの酸素原子及び1つのヒドロキシ基が結合したケイ素原子の構造、Q4は4つの酸素原子が結合したケイ素原子の構造に由来するピーク面積の割合を表す。]
であるシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記アルコール溶媒を除去する工程。
本製造方法における有機ケイ素化合物の添加量や、(B)工程、すなわち加水分解の条件等は前述のとおりとすることができる。
【0043】
前記(A)工程で準備するシリカゾルは、0.1~2質量%の水分量を有するシリカゾルとすることができる。
また(A)工程で準備するシリカゾルは、200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを、炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルとすることができる。
【0044】
前記(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は双方は、例えば減圧下で実施することができる。
なお(B)工程の前、(B)工程の途中、また(B)工程後の何れか又は複数において、必要に応じて、前述の有機アミンを用いたpH調製する工程を含んでいてもよい。
【0045】
また、前記(B)工程後のシリカゾルは表面修飾シリカ分散液として、前述したコンポジット材料の製造に用いることができ、例えば後述する(D)工程によって溶媒置換してもよい。
すなわち、表面修飾シリカ分散液の製造方法の具体例として、下記(A)工程及び(B)工程を含む製造方法、そして(A)工程、(B)工程に加えさらに(D)工程を含む製造方法を挙げることができるが、これら方法(工程)には限定されない。
(A)工程:平均一次粒子径5~120nmを有するシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程。
(B)工程:アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び不飽和結合を有する置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する有機ケイ素化合物と、(A)工程で得られたシリカゾルとを40~100℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程。
(D)(B)工程後のシリカゾルをアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶媒置換する工程。
本製造方法におけるアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類及びアミン類(含窒素有機化合物類)、エステル類、エーテル類の具体例や溶媒の置換方法等は前述のとおりとすることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0047】
[シリカゾル]
実施例、及び比較例で使用したシリカゾルは以下のとおりである。水分散シリカゾルA~Eにおけるシリカ粒子の特性を表1に示す。
水分散シリカゾルA(日産化学(株)製、pH3、シリカ濃度20質量%)
水分散シリカゾルB(日産化学(株)製、pH3、シリカ濃度20質量%)
水分散シリカゾルC(日産化学(株)製、pH3、シリカ濃度34質量%)
水分散シリカゾルD(日産化学(株)製、pH3、シリカ濃度20質量%)
水分散シリカゾルE(日産化学(株)製、pH3、シリカ濃度20質量%)
なお、水分散シリカゾルEは、後述の実施例1-8の手順にて製造した。
【0048】
【0049】
また、使用した有機ケイ素化合物は、以下のとおりである。
PTMS:フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-103)
MTMS:メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-13)
VTMS:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-1003)
DMDPS:ジメトキシジフェニルシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-202SS)
DMMPS:ジメトキシメチルフェニルシラン(信越化学工業(株)製、商品名:LS-2720)
DTMS:デシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-3103C)
HMDS:ヘキサメチルジシロキサン(信越化学工業(株)製、商品名:KF-96L-0.65CS)
【0050】
以下の方法に従い、水分散シリカゾルA~E、実施例及び比較例で調製した表面修飾シリカ粒子の分散液、並びに該分散液製造工程中のシリカゾル及び分散液の物性を測定及び評価した。
【0051】
[シリカ濃度の測定]
水分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子の分散液、並びに該分散液製造工程中のシリカゾルのシリカ濃度は、これらシリカゾル又は分散液を坩堝に取り、加熱により溶媒を除去した後、1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
【0052】
[水分散シリカゾルのpH測定方法]
水分散シリカゾルのpHは、pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製、MM-43X)を用いて測定した。
[有機溶媒分散シリカゾルのpH測定方法]
メタノール分散シリカゾルのpHは、メタノール分散シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1にて混合した液をpHメーター東亞ディーケーケー(株)製、MM-43X)で測定した。本測定方法で測定したpHはpH(1+1+1)と表記した。
【0053】
[比表面積の測定、並びに比表面積比及び平均一次粒子径]
〈水蒸気吸着法の比表面積(SH2O)の測定〉
水分散シリカゾルにおけるシリカ粒子の水蒸気吸着法の比表面積(SH2O)は、水分散シリカゾル中の水溶性の陽イオン及び陰イオンを、陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)、陰イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIRA400J)、陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)の順で除去した後、該シリカゾルを290℃にて乾燥して測定試料とし、これを水蒸気吸着法の比表面積測定装置(ティー・エイ・インスツルメンツ・ジャパン(株)製、Q5000SA)を用いて測定した。
〈窒素吸着法の比表面積(SN2)の測定〉
水分散シリカゾルにおけるシリカ粒子の窒素吸着法の比表面積(SN2)は、水分散シリカゾル中の水溶性の陽イオンを陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)で除去した後、該シリカゾルを290℃にて乾燥して測定試料とし、これを窒素吸着法の比表面積測定装置 Monosorb(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて測定した。
〔水蒸気吸着の比表面積と窒素吸着の比表面積の比(SH2O/SN2)〕
上記測定で得られた水蒸気吸着法の比表面積と窒素吸着法の比表面積の値を用いて、比表面積比を下記式で算出した。
水蒸気/窒素吸着の比表面積比(SH2O/SN2)=水蒸気吸着法の比表面積/窒素吸着法の比表面積
〔平均一次粒子径〕
平均一次粒子径は、上記の窒素吸着法で得られた比表面積SN2(m2/g)から、下記計算式を用いて球状粒子に換算して算出した。
平均一次粒子径(nm)=2720/S(m2/g)
【0054】
[水分量の測定]
表面修飾シリカ粒子の分散液及びその製造工程中のシリカゾルの水分量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、商品名:MKA-610)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定した。
【0055】
[有機溶媒含有量]
表面修飾シリカ粒子の分散液の有機溶媒含有量はガスクロマトグラフィー((株)島津製作所、GC-2014s)にて求めた。
ガスクロマトグラフィー条件:
カラム:3mm×1mガラスカラム
充填剤:ポーラパックQ
カラム温度:130~230℃(昇温8℃/min)
キャリアー:N2 40mL/min
検出器:FID
注入量:1μL
内部標準:アセトニトリルを採用した。
【0056】
[粘度の測定]
表面修飾シリカ粒子製造工程中の分散液の粘度はオストワルド粘度計(柴田科学(株)製)を用いて測定した。
【0057】
[NMRの測定及び全シラノール基率の算出]
〈29Si NMRスペクトル測定〉
2mLの水分散シリカゾルに0.5mLD2Oを添加して測定試料とし、これを直径10mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製試料菅に入れて測定した。500MHzの核磁気共鳴装置(機種名「ECA 500」、日本電子(株)製)を用い、直径10mmの29Siフリープローブを装着し、観測核を29Siとして、1次元NMRスペクトルを測定した。測定条件は、29Si共鳴周波数を99.36MHz、スペクトル幅を37.4kHz、X_Pulseを90°、Relaxation_Delayを120秒、測定温度を室温とした。データ解析は日本電子〈株〉ソフトウェア「Delta 5.3.1」を使用し、フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについて、ガウス波形(Gauss Model)により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、波形分離解析を行った。波形分離後、ケミカルシフト-80ppmから-105ppm間に観測されたピークをQ2構造由来、-90ppmから-115ppm間に観測されるピークをQ3構造由来、-95ppmから-130ppm間に観測されるピークをQ4構造由来と同定した。
〈全シラノール基率〉
水分散シリカゾル中のシリカ粒子の全シラノール基率は、上記29Si NMRスペクトルデータより得た各ピークの面積値より算出した。
波形分離後の各ピーク(Q2、Q3、Q4)の面積値の合計(100%)に対する、各ピークの面積値の割合(%)を各構造の含有比率とし、下記式(1)より全シラノール基率を算出した。式中のQ2、Q3及びQ4は、NMR測定結果から得られる各構造の含有比率を示す。
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・式(1)
【0058】
[誘電率および誘電正接の測定]
測定周波数1GHz用空洞共振器治具(キーコム(株)製)を用いて、PTFE製のサンプルチューブ(長さ30mm、内径3mm)内に粉末サンプル(後述する実施例2-1~2-9、比較例2-1~2-4で得たシリカ粉末)を充填後、ベクトルネットワークアナライザ(商品名:FieldFox N6626A、KEYSIGHT TECHNOLOGIES製)にて、測定サンプルの誘電率及び誘電正接を測定した。
誘電正接の測定値が0.01以下の場合を低誘電特性「OK」と、誘電正接の測定値が0.01より超えた場合を低誘電特性「NG」と評価した。
【0059】
[実施例1-1]
(a)工程:水分散シリカゾルA 2,500gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積3Lのガラス製反応器に仕込み、加温して該シリカゾルを沸騰させた。反応器内のシリカゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込み、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを1,250g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度40.5質量%、水分量1.5質量%、粘度2.0mPa・sであった。
【0060】
(b)工程:得られたメタノール分散シリカゾル1,000gを2Lのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、窒素吸着法により求められるシリカ粒子の表面積1nm2当たり2.0個になる量にてPTMSを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。その後、pH(1+1+1)が8~9になるようにジイソプロピルアミンを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。その後、さらにシリカ粒子の表面積1nm2あたり1.0個となる量のPTMSを添加し、60℃に加熱して1時間保持し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液を作製した。添加したPTMSの総量は、該ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個であった。
【0061】
(c)工程:その後、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、500~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行い、分散媒をメチルエチルケトンに置換することで、表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液は、シリカ濃度30.5質量%、水分量0.1質量%以下、メタノール量0.1質量%以下であった。
【0062】
[実施例1-2]
実施例1-1の(b)工程におけるPTMSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりVTMS(総量)を3.0個となるように添加したこと以外は、実施例1-1の(a)~(c)工程と同様に操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0063】
[実施例1-3]
実施例1-1の(b)工程におけるPTMSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりDMDPS(総量)を3.0個となるように添加したこと以外は、実施例1-1の(a)~(c)工程と同様に操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0064】
[実施例1-4]
実施例1-1の(b)工程におけるPTMSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりDMMPS(総量)を3.0個添加したこと以外は、実施例1-1の(a)~(c)工程と同様に操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0065】
[実施例1-5]
実施例1-1の(b)工程におけるPTMSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりMTMS(総量)を3.0個添加したこと以外は、実施例1-1の(a)~(c)工程と同様に操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0066】
[実施例1-6]
(a)工程:水分散シリカゾルB 660gをメタノールで1,000gに希釈し、これを2Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら600Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを1,000g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度13.2質量%、水分量1.6質量%、粘度0.9mPa・sであった。
更に、実施例1-1の(b)~(c)工程と同様の操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、そして表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0067】
[実施例1-7]
実施例1-6の(b)工程におけるPTMSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりDMMPS(総量)を3.0個添加したこと以外は、実施例1-6の(a)~(c)工程と同様の操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0068】
[実施例1-8/水分散シリカゾルEの調製]
内容積300mLのSUS製オートクレーブ反応器に、水分散シリカゾル(日産化学(株)製、シリカ濃度30質量%、pH11、平均一次粒子径46nm)129gと、水分散シリカゾル(日産化学(株)製、シリカ濃度32質量%、pH3、平均一次粒子径9nm)121gとを仕込み、300±20℃、で1時間水熱処理を実施した。得られたゾルのうち、100gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B)30gと混合し、30分間撹拌後に濾過することで水分散シリカゾルEを100g得た(pH3、シリカ濃度20質量%、平均一次粒子径74nm)。
【0069】
[実施例1-9]
(a)工程:実施例1-8で得た水分散シリカゾルE 62gをメタノールで130gに希釈し、これを1Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら550Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が1.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを155g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度8質量%、水分量0.5質量%であった。
【0070】
(b)工程:得られたメタノール分散シリカゾル66gを200mLのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、シリカゾル中に含まれる(窒素吸着法により求められる)シリカ粒子の表面積1nm2当たりDMMPS(総量)を3.0個となるように添加し、60℃に加熱して8時間保持し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液を作製した。
【0071】
(c)工程:その後、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、600~400Torrの減圧下で、メチルエチルケトン分散液の水分量が1.0質量%以下になるまで、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行い、分散媒をメチルエチルケトンに置換することで、表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液は、シリカ濃度11質量%、水分量0.03質量%、メタノール量1.3質量%であった。
【0072】
[実施例1-10]
(a)工程:水分散シリカゾルA 2,500gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積3Lのガラス製反応器に仕込み、加温して該シリカゾルを沸騰させた。反応器内のシリカゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込み、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを1,250g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度40.5質量%、水分量1.5質量%、粘度2.5mPa・sであった。
【0073】
(b)工程:得られたメタノール分散シリカゾル1,000gを2Lのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、メチルエチルケトン(MEK)を150g、さらに窒素吸着法により求められるシリカ粒子の表面積1nm2当たり3個になる量にてDMMPSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、さらにシリカ粒子の表面積1nm2あたり5個となる量のHMDSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pH(1+1+1)が8.0~10.0になるようにジイソプロピルアミンを添加し、60℃に加熱して1時間保持し、表面修飾シリカ粒子のメタノール/MEK分散液を作製した。
【0074】
(c)工程:その後、表面修飾シリカ粒子のメタノール/MEK分散液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行い、分散媒をすべてメチルエチルケトンに置換することで、表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液は、シリカ濃度42.7質量%、水分量0.1質量%以下、メタノール量0.1質量%以下であった。
【0075】
[実施例1-11]
実施例1-10の(b)工程におけるDMMPSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりDTMSを1.0個となるように添加し、同様に60℃で3時間保持したこと以外は、実施例1-10の(a)~(c)工程と同様の操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール/MEK分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0076】
[実施例1-12]
実施例1-10の(b)工程におけるDMMPSを添加した後、追加でシリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりDTMSを1.0個となるように添加して60℃で3時間保持し、その後HMDSをシリカ粒子の表面積1nm2当たり5個となる量で添加したこと以外は、実施例1-10の(a)~(c)工程と同様の操作を実施し、メタノール分散シリカゾル、表面修飾シリカ粒子のメタノール/MEK分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0077】
[実施例1-13]
実施例1-10におけるDMMPSの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たりHMDSを5個添加したこと以外は、実施例1-10と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0078】
[比較例1-1]
(a)工程:水分散シリカゾルC 1,029.4gを2Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら600Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを1,000g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度35質量%、水分量1.5質量%、粘度1.3mPa・sであった。
更に、実施例1-1の(b)~(c)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、そして表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0079】
[比較例1-2]
(a)工程:水分散シリカゾルD 1,525gを2Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら600Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルを1,000g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度30.5質量%、水分量1.7質量%、粘度1.6mPa・sであった。
更に、実施例1-1の(b)~(c)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、そして表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0080】
[比較例1-3、比較例1-4]
比較例1-3として水分散シリカゾルCを、比較例1-4として水分散シリカゾルDを、夫々採用した。
【0081】
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を100℃真空乾燥機で乾燥し、得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、更に150℃で1時間乾燥させてシリカ粉末を作製した。
得られたシリカ粉末について、23℃、周波数1GHzにおけるシリカ粉末の誘電率、及び誘電正接を測定した。表面修飾シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0082】
[実施例2-2~実施例2-7、比較例2-1、比較例2-2]
実施例1-2~実施例1-7、比較例1-1、及び比較例1-2で得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液について、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。表面修飾シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0083】
[実施例2-8]
実施例1-8で得られた水分散シリカゾルEについて、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0084】
[実施例2-9]
実施例1-9で得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液について、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。表面修飾シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0085】
[実施例2-10~実施例2-13]
実施例1-10~実施例1-13で得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液について、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。表面修飾シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0086】
[比較例2-3、比較例2-4]
比較例1-3(水分散シリカゾルC)、比較例1-4(水分散シリカゾルD)について、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。シリカ粒子の誘電特性を表2に示す。
【0087】
【0088】
表2に示すように、平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着表面積/窒素吸着表面積(SH2O/SN2)が0.6以下であり、且つ、全シラノール基率が5%以下のシリカ粒子である、実施例1-1乃至実施例1-13は、周波数1GHzにおける誘電正接の値が0.01以下を示し、非常に優れた低誘電特性を示すシリカ粒子であることが確認された。
【0089】
一方、平均一次粒子径が5nm~120nmであっても、水蒸気吸着表面積/窒素吸着表面積(SH2O/SN2)が0.6より大きい、及び/又は、全シラノール基率が5%より大きいシリカ粒子である、比較例1-1乃至比較例1-4は、誘電正接が0.01より大きい値となり、低誘電特性に劣るシリカ粒子であった。
【0090】
また、平均一次粒子径が5nm~120nmであり、水蒸気吸着表面積/窒素吸着表面積(SH2O/SN2)が0.6以下であり、且つ、全シラノール基率が5%以下であり、有機ケイ素化合物で被覆した表面修飾シリカ粒子である実施例1-1乃至実施例1-7及び実施例1-13は、周波数1GHzにおける誘電正接が0.01以下を示し、非常に優れた低誘電特性を示すシリカ粒子であることが確認された。
【0091】
本発明は、従来の疎水化シリカゾルの誘電正接を半分以下に低減するものであり、高周波用途への適用が期待できる。
【要約】
【課題】1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子とその分散液を提供すること。
【解決手段】下記(i)、(ii)、及び(iii)の事項を満たす、1GHzにおける誘電正接が0.01以下であるシリカ粒子及びその分散液
(i)平均一次粒子径が5nm~120nmである、
(ii)水蒸気吸着による比表面積(SH2O)と窒素吸着による比表面積(SN2)との比(SH2O/SN2)が0.6以下である、
(iii)下記式(1)で示される全シラノール基率が5%以下である、
全シラノール基率(%)=(Q2×2/4+Q3×1/4+Q4×0/4) ・・・・式(1)[式(1)中、Q2、Q3、Q4は、シリカ粒子のケイ素原子におけるQ2構造、Q3構造及びQ4構造の含有比率を示す。]
【選択図】なし