(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ゼリー食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20230830BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20230830BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20230830BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20230830BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20230830BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20230830BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20230830BHJP
A23G 9/34 20060101ALI20230830BHJP
A23G 9/52 20060101ALI20230830BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L29/30
A23L29/244
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/238
A23L29/281
A23G9/34
A23G9/52
B65D85/72
(21)【出願番号】P 2019131731
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川馬 利広
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159790(JP,A)
【文献】特開2002-272431(JP,A)
【文献】特開平10-117693(JP,A)
【文献】米国特許第05866191(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23G、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤とグリセリンと
エリスリトールとを含み、
-20℃の冷凍下でゼリー状であり、
前記グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下であ
り、
前記グリセリンと前記エリスリトールの含有量比が1:0.1~1:1の範囲内にあることを特徴とする、ゼリー食品。
【請求項2】
さらに、エタノールを含む、請求項
1に記載のゼリー食品。
【請求項3】
スパウト付きパウチ容器に充填されていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のゼリー食品。
【請求項4】
Brix値が25以上40以下である、請求項1~
3の何れか1項に記載のゼリー食品。
【請求項5】
前記ゲル化剤がグルコマンナン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、寒天、ジェランガム、ゼラチン、アルギン酸及びペクチンから選ばれる1又は2以上である、請求項1~
4の何れか1項に記載のゼリー食品。
【請求項6】
含水量が60質量%以上である、請求項1~
5の何れか1項に記載のゼリー食品。
【請求項7】
ゲル化剤と、グリセリンと
、エリスリトールとを配合し、ゼリー原料を調製する工程と、
調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する充填工程を有し、
前記グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下であ
り、
前記グリセリンと前記エリスリトールの含有量比が1:0.1~1:1の範囲内にある、
-20℃の冷凍雰囲気下で飲用可能なゼリー食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、-20℃の冷凍下でゼリー状である、ゼリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー食品(ゼリー飲料)が広く流通している(特許文献1~特許文献5)。また、スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー食品を冷凍することについても研究開発がされている(特許文献1、特許文献4、特許文献5)。
【0003】
例えば、特許文献1には、スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー食品を冷凍庫で凍結し、適度に解凍して飲用するゼリー食品が開示されている。
【0004】
特許文献6には、カルシウムを含有する冷菓生地(脱脂粉乳、生クリーム、牛乳等)中に粒状ゼリーを含有する形態とすることで、-15℃以下の冷凍下であっても未凍結の粒状ゼリーの弾力性を保持することが開示されている。
【0005】
ところで、特許文献7には、冷凍下でゼリー食感を有するバーアイスが開示されている。
また、従来、グリセリンを3~15質量%含むグミ(特許文献8)、グリセリンを2~50質量%含むかき氷(特許文献9)が知られている。
【0006】
また、特許文献10には、グリセリンを5質量%含むシャーベット状飲料(表2 参照)がすっきりとした甘味と、柔らかい氷感を両立できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-27917号公報
【文献】特開2010-259335号公報
【文献】特開2010-17163号公報
【文献】特許4339391号
【文献】特開2002-272431号公報
【文献】特開2014-54213号公報
【文献】特開2016-158512号公報
【文献】特開2015-80419号公報
【文献】特開平11-187819号公報
【文献】特開2015-159790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
種々のスパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー食品が提案されている中、新たな嗜好性をもったゼリー食品の更なる開発が求められていた。
【0009】
上記事情に鑑みなされた本発明は、従来にはない嗜好性をもったゼリー食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、ゲル化剤とグリセリンとを含み、-20℃の冷凍下でゼリー状であり、前記グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下であることを特徴とする、ゼリー食品である。
本発明のゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。
また、本発明によれば、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、さらに、エリスリトールを含み、グリセリンとエリスリトールの含有量比が1:0.1~1:1範囲内にある。
【0012】
グリセリンとエリスリトールの含有量比が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でより適度なゲル強度を有する。そのため、特に、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において、容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
【0013】
また、グリセリンとエリスリトールの含有量比が上記範囲内にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含む。そのため、グリセリンとエリスリトールの含有量比が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記ゼリー食品は、スパウト付きパウチ容器に充填されている。
このような形態のゼリー食品は、冷凍庫から取り出した後、飲み口から飲用する感覚で手軽に喫食することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい形態では、Brix値が25以上40以下である。
Brix値が25以上40以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度なゲル強度を有する。そのため、特に、前述したスパウト付きパウチ容器に充填される形態において、飲み口から吐出させた場合、吐出時に剪断力が加わった場合でも、良好なゼリー食感を有する。
【0016】
また、Brix値が上記範囲内にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含む。そのため、Brix値が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい形態では、含水量が60質量%以上である。
含水量が下限以上にあることで、容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。また、含水量が下限以上であるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含む。そのため、含水量が下限以上であるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる。
【0018】
また、本発明の好ましい形態では、さらに、エタノールを含む。
エタノールを用いることで、-20℃の冷凍下において良好なゼリー食感とすることができる。また、エタノールは、少量で前記ゼリー食感を良好とする効果を奏するため、風味に与える影響を小さくすることができる。
【0019】
また、本発明は、ゲル化剤と、グリセリンとを配合し、ゼリー原料を調製する工程と、調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する充填工程を有し、前記グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下である、-20℃の冷凍雰囲気下で飲用可能なゼリー食品の製造方法でもある。
【0020】
本発明によれば、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含むゼリー食品を製造することができる。そのため、含水量が下限以上であるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる、ゼリー食品を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来にはない嗜好性をもったゼリー食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0023】
本発明のゼリー食品は、多糖類やゼラチン等を含む高分子原料のネットワークに水が保持された組織を主とし、全体として弾力性及び保形性を有する。
ここで、「ゼリー状」とは、ゼリー食品が弾力性及び保形性を有している状態を指す。
「ゼリー状」であることは、スプーンですくった際に、ゼリー食品が崩壊することなく、角が立った状態であることで評価することができる。そして、ゼリー状の食品は、口に入れ、咀嚼したときに、弾性を感じながら崩壊していく食感(本明細書において「ゼリー食感」等という。)を有する。
【0024】
また、「-20℃の冷凍下」とは、ゼリー食品が-20℃雰囲気の冷凍庫内に一定時間(例えば24時間以上)保管され、十分に冷却された状態をいう。
本発明においては、ゼリー食品を前記冷凍庫内から室温(20℃)に取り出してすぐ(3分以内)に評価した際にゼリー状であれば、「-20℃の冷凍下でゼリー状である」と評価することができる。
【0025】
以下、本発明のゼリー食品のより好ましい形態を説明する。
【0026】
本発明のゼリー食品の包装形態は特に限定されず、例えば、スパウト付きパウチ容器に充填されている形態を好ましく挙げることができる。
スパウト付きパウチ容器に充填されている形態であることで、冷凍庫で冷凍した状態のものを、特段の解凍操作をすることなく、容器の外側から手で掴んだり押したりして飲み口からゼリー食品を吐出させ、飲用する感覚で喫食することができる。
なお、このような形態のゼリー食品は、一般的にゼリー飲料などと呼ばれる。
【0027】
ここで、スパウト付きパウチ容器としては、例えば、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを挙げることができる(特許3663084号、特許3477396号、特許3659775号参照)。また、スパウト付きパウチ容器の飲み口とゼリー食品の収容部分をプラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器で一体成型したものであってもよい。また、スパウト部は、パウチ容器の上部のみにあってもよく、パウチ内部まで侵入しているものであってもよい。さらに、スパウト部(ストロー部)がなくても、パウチ容器先端部分が窄まった形状になっており、ストローの代わりになっている容器(オリヒロ社「Tパウチ」など)であってもよい(例:特許4988882号)。
ここで、スパウト付きパウチ容器が備えるストロー部の有無や形状は、押出し後のゼリー食品の食感に影響を与える。そのため、求める押出し後のゼリー食品に求める食感に合わせて、スパウト付きパウチ容器が備えるストロー部の有無や形状を適宜選択することが可能である。なお、ストロー部がパウチ容器内に侵入していると、押出し後のゼリー食品は崩壊する傾向にある。
【0028】
本発明のゼリー食品は、常温で流通する製品として提供することも、冷凍状態(-18℃以下)で流通する冷凍ゼリー食品として提供することもできる。何れの場合も、家庭用や業務用冷凍庫の温度域(-18~-20℃)で冷凍した後に喫食する形態とすることができる。また、一度冷凍されたゼリー食品を常温で解凍しながら喫食する形態とすることもできる。
【0029】
以下、本発明のゼリー食品に含まれる各成分について好ましい形態を説明する。
なお、本明細書における各成分の含有量(濃度)に関する記載において、「ゼリー食品全体」とは、特に断りがない限り容器内に収容される可食部分全体を示し、容器は含まない。
【0030】
本発明のゼリー食品は、そのグリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下である。
【0031】
グリセリンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。
グリセリンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品は、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において、容器を手で掴んだり押したりすることにより飲み口から容易に吐出させることができる。
【0032】
ゼリー食品におけるグリセリンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは5質量%よりも多く、より好ましくは6質量%よりも多く、より好ましくは7質量%よりも多く、より好ましくは8質量%よりも多く、より好ましくは8.5質量%よりも多く、さらに好ましくは9質量%よりも多く、特に好ましくは9.5質量%よりも多い。
グリセリンの含有量が下限以上にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含む。そのため、グリセリンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる。
【0033】
また、ゼリー食品におけるグリセリンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは14.5質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、特に好ましくは10.5質量%以下である。
グリセリンの含有量が上限以下にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含む。そのため、グリセリンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができる。
【0034】
また、本発明のゼリー食品は、ゲル化剤を含む。
【0035】
ゼリー食品におけるゲル化剤の含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。
ゲル化剤の含有量を下限以上とすることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
また、ゲル化剤の含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感と、氷様食感をより好適に両立することができる。
【0036】
ゼリー食品におけるゲル化剤の含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下、特に好ましくは0.35質量%以下である。
ゲル化剤の含有量を上限以下とすることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
また、ゲル化剤の含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感と、氷様食感をより好適に両立することができる。
【0037】
また、グリセリンとゲル化剤の含有量比は、1:0.01~1:0.04、より好ましくは1:0.01~1:0.03、さらに好ましくは1:0.02~1:0.03の範囲内にあることが好ましい。
グリセリンとゲル化剤の含有量比が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感と、氷様食感をより好適に両立することができる。
【0038】
ここで、ゲル化剤としては、グルコマンナン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、寒天、ジェランガム、ゼラチン、アルギン酸及びペクチンから選ばれる1又は2以上を好ましく挙げることができる。
【0039】
以下、各ゲル化剤における、ゼリー食品における含有量の好ましい形態について、説明する。
【0040】
ゼリー食品におけるグルコマンナンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。
グルコマンナンの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感となる。
【0041】
また、ゼリー食品におけるグルコマンナンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.09質量%以下である。
グルコマンナンの含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0042】
また、カラギナンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。
カラギナンの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感となる。
【0043】
カラギナンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
カラギナンの含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0044】
また、キサンタンガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.04質量%以上である。
キサンタンガムの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感となる。
【0045】
また、キサンタンガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.15質量%以下、中でも好ましくは0.1質量%以下である。
キサンタンガムの含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0046】
ジェランガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。
ジェランガムの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感となる。
【0047】
また、ジェランガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
ジェランガムの含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0048】
寒天の含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。寒天の含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感となる。
【0049】
また、寒天の含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
寒天の含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0050】
ここで、本発明におけるゲル化剤は、グルコマンナン、カラギナンを含むことが好ましい。
【0051】
グルコマンナンとカラギナンの合計含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.25質量%以下である。
グルコマンナンとカラギナンの合計含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
また、グルコマンナンとカラギナンの合計含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.13質量%以上である。
カラギナンの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でより適度な強度を示し、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0052】
また、グルコマンナンの含有量と、カラギナンの配合質量比は、1:0.5~1:2、より好ましくは1:0.7~1:1.3の範囲内にあることが好ましい。
グルコマンナンの含有量と、カラギナンの含有量の配合比が上記範囲内にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。
【0053】
中でも、グルコマンナン、カラギナンを含み、さらに、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、寒天、ジェランガム、ゼラチン、アルギン酸及びペクチンから選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を含む形態を、好ましい形態として挙げることができる。
【0054】
本発明のBrix値の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。
ゼリー食品のBrix値が下限以上であるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。そのため、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感とスパウト付きパウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0055】
また、本発明のBrix値の上限は、風味の観点から好ましくは45以下、より好ましくは40以下である。
【0056】
なお、ゼリー食品のBrix値を算出する方法としては、糖度計を用いてBrix値を測定する方法を挙げることができる。また、屈折計を用いてBrix値を算出する方法、ゼリー食品中の糖分の濃度をBrix値検量線に照らしてBrix値を定める方法、等を挙げることができる。
【0057】
ここで、ゼリー食品のBrix値は、ゼリー食品中の糖質の含有量を調整することで、調節することができる。
【0058】
ここで、本発明のゼリー食品は、その含水量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
また、本発明のゼリー食品は、その含水量が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
含水率を前記範囲とすることで、-20℃の冷凍下でより良好な食感とすることができる。
【0059】
また、ゲル化剤含有量と含水量の比は、1:150~1:450、より好ましくは1:200~1:400、さらに好ましくは1:250~1:350の範囲内にあることが好ましい。
ゲル化剤含有量と含水量の比が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感と、氷様食感をより好適に両立することができる。
【0060】
また、本発明においては、糖アルコールをさらに含むことが好ましい。
中でも、本発明のゼリー食品は、エリスリトールを含むことが好ましい。
【0061】
エリスリトールの含有量の下限は、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは2.5質量%以上である。
また、エリスリトールの含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4.5質量%以下である。
エリスリトール濃度が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度とすることができるので、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0062】
また、グリセリンとエリスリトールの含有量比は、1:0.1~1:1、より好ましくは1:0.3~1:0.8、さらに好ましくは1:0.4~1:0.6の範囲内にあることが好ましい。
グリセリンとエリスリトールの含有量比が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感と、氷様食感をより好適に両立することができる。
【0063】
また、本発明においては、アルコールをさらに含むことが好ましい。
中でも、本発明のゼリー食品は、エタノールを含むことが好ましい。また、アルコールは、酒類等からの由来であってもよい。
【0064】
エタノールの含有量の下限は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上である。
また、エタノールの含有量の上限は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.4質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
エタノール濃度が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度とすることができるので、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0065】
なお、本発明のゼリー食品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常ゼリー食品に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、ゼリー食品添加物、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤等のほか、乳原料、食物繊維、安定剤などが挙げられる。
【0066】
また、得られるゼリー食品のpHが3.0~6.0、より好ましくは3.0~5.0となるように配合することが好ましく、3.0~4.6がさらに好ましい。得られるゼリー食品のpHが4.6以下とすることで、微生物の繁殖を抑えることができるため、ゼリー食品衛生上好ましい。また、pHを3.0以上とすることでゼリー食品の酸味を抑えることができるため、好ましい。
【0067】
また、本発明は、冷凍した食品にも関する。本明細書において、冷凍した食品は、冷凍状態(-18℃以下)で食される食品を指す。なお、冷凍した食品には、冷凍状態(-18℃以下)で流通するものも、常温で流通し家庭で凍結したものも、含まれる。
【0068】
本発明の冷凍した食品は、
ゲル化剤とグリセリンとエタノールとを含み、
前記グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下であることを特徴とする。
なお、冷凍した食品における、各成分や物性、包装の好ましい形態は、前述した本発明のゼリー食品の説明がそのままあてはまる。
【0069】
以下、本発明のゼリー食品の製造方法について、説明する。
なお、各成分や物性、包装の好ましい形態は、前述した本発明のゼリー食品の説明がそのままあてはまる。
【0070】
(1)調製工程
調製工程は、ゼリー原料を調製する工程である。
この際、本発明では、ゲル化剤と、グリセリンとを配合することを含む。そして、本発明では、グリセリンの含有量が5質量%より多く、15質量%以下となるようゼリー原料を調製することを含む。
【0071】
(2)充填工程
充填工程は、調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する工程である。
スパウト付きパウチ容器へのゼリー原料の充填操作は、例えば本出願人による特許第3527019号公報や、特開平11-157502号公報などに記載された方法によって行うことができる。
【0072】
ここで、本発明のゼリー食品の製造方法においては、上記(1)、(2)の工程を含むものであれば、充填工程後に加熱後冷却するといった方法、調製工程後のゼリー原料を一旦加熱して後、スパウト付きパウチ容器に充填し冷却する方法、加熱を経ない方法の何れの方法を含む。
ここで、加熱する場合には、加熱温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。殺菌条件を強くすることで、冷凍前のゼリー食品を常温流通することにも対応できる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[試験例1] グリセリン量の影響
グリセリン量が、ゼリー食品の物性に与える影響を検討した。
【0075】
(1)ゼリー食品の製造
水に、下記表1に示す各原料を加え、ゼリー食品原料を調製した。調製したゼリー食品原料を95℃に加熱し、カップ容器もしくはスパウト付きパウチ容器に充填した。充填後、水槽で冷却し、24時間室温で放置した。さらに冷凍庫(-20℃)で24時間保管することで、比較例1、実施例1~3のゼリー食品を製造した。
なお、本実施例では、スパウト付きパウチ容器として、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを用いた(特許3659775号 参照)。なお、本実施例で用いたスパウト付きパウチ容器は、ストローがパウチ容器内部に侵入している形態である(特許3659775号の
図1 参照)。
【0076】
より具体的には、本実施例で用いたスパウト付きパウチ容器の品名、規格は以下のとおりである。
・品名:CP07ストロー
・規格:80.0(幅)×54.0(折込)×120.00mm(高さ)
・メーカー:(株)細川洋行
【0077】
【0078】
(2)試験内容及び評価項目
製造したゼリー食品について、以下の試験及び評価をおこなった。なお、試験例1におけるBrix値は、デジタル糖度計(光屈折臨界角検出方式)を用いて計測した値である。
【0079】
・ゲル強度(-20℃)
以下の方法により測定した値を、ゼリー食品のゲル強度とした。
レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(N)もしくは、破断しない場合には測定中の最大応力(N)をゲル強度とした。
【0080】
・-20℃冷凍下での性状(性状評価)
-20℃冷凍下での性状について、以下の基準を用いて、ゼリー飲料を専門とする評価者による評価をおこなった。
【0081】
(i)-20℃冷凍下での氷様食感
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させて喫食した(冷凍庫から取り出して3分以内)。
〇…氷の食感を感じる。固い噛みごたえがある。
△…氷の食感を感じる。舌に氷の粒が当たる。
×…氷の食感を感じない。
【0082】
(ii)-20℃冷凍下での氷結晶の有無
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させ、該ゼリー食品中の氷結晶の有無を確認した(冷凍庫から取り出して3分以内)。
【0083】
(iii)-20℃冷凍下でのゼリー食感の評価
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させ、該ゼリー食品中の口に入れ、「ゼリー食感」を評価した(冷凍庫から取り出して3分以内)。
〇…ゼリー食感を感じる。舌や歯で押しつぶした際に弾力を感じる。
△…ゼリー食感を感じる。舌で微妙な弾力の有無を感じ取れる。
×…ゼリー食感を感じない。
【0084】
(iv)-20℃冷凍下でのスパウト付きパウチ容器からの吐出性
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させて喫食した(冷凍庫から取り出して3分以内)。ゼリー食品の吐出性について、以下の基準を用いて、ゼリー飲料を専門とする評価者による評価をおこなった。なお、評価時の品温は-20℃であった。
〇…容器を掴む動作で容易にゼリー食品を吐出することができる。
△…容器を掴む動作でゼリー食品を吐出することができるが、過度な力を入れる必要がある。
×…吐出困難。
【0085】
(3)結果及び考察
表1の結果から、グリセリンの含有量を5質量%より多く、15質量%以下とすることで、スパウト付きのパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で、容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができることがわかった。
また、グリセリンの含有量を5質量%より多く、15質量%以下とすることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感が向上することがわかった。より具体的には、グリセリンの含有量を5質量%より多く、15質量%以下とすることで、製造したゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含むことがわかった。そのため、グリセリンの含有量を5質量%より多く、15質量%以下とすることで、-20℃の冷凍下で、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができることがわかった。
【0086】
[試験例2] ゲル化剤の種類の影響
グリセリン量を一定量含み、-20℃の冷凍下で良好なゼリー食感を有するゼリー食品における、ゲル化剤の種類がゼリー食品の物性に与える影響を検討した。
【0087】
(1)試験内容及び評価項目
表2に示すゲル化剤を含むゼリー食品を試験例1と同じ方法で製造した。
製造したゼリー食品を試験例1と同じ評価方法及び評価基準による評価に供した。
【0088】
なお、試験例2におけるBrix値は、ゼリー食品中の糖分の濃度をBrix値検量線に照らしてBrix値を定める方法により、求めた。
【0089】
【0090】
(2)結果及び考察
表2の結果から、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば、特段ゲル化剤の種類によらず、スパウト付きのパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができることがわかった。
また、グリセリン量を一定量含むゼリー食品においては、何れのゲル化剤を用いた場合であっても、試験例1と同様の結果を得られることがわかった。より具体的には、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含むことがわかった。そのため、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば、特段ゲル化剤の種類によらず、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができることがわかった。
【0091】
[試験例3] エリスリトール量の影響
次に、グリセリン量を一定量含み、-20℃の冷凍下で良好なゼリー食感を有するゼリー食品における、エリスリトールの量がゼリー食品の物性に与える影響について検討した。
【0092】
(1)試験内容及び評価項目
表3に示す量のエリスリトールを含むゼリー食品を試験例1と同じ方法で製造した。
製造したゼリー食品を試験例1と同じ評価方法及び評価基準による評価に供した。なお、試験例3におけるBrix値は、デジタル糖度計(光屈折臨界角検出方式)を用いて計測した値である。
【0093】
【0094】
(2)結果及び考察
表3の結果から、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば、エリスリトール量によらず、スパウト付きのパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができることがわかった。
また、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有し、かつ、喫食時に明瞭に知覚できる大きさの氷結晶を含むことがわかった。そのため、グリセリン量を一定量含むゼリー食品であれば、特段ゲル化剤の種類によらず、ゼリー食感と氷様食感をより好適に両立することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、水分補給や栄養補給を目的としたゼリー食品であって、スパウト付きパウチ容器に充填して提供される製品に応用することができる。