IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許7339809感光性樹脂組成物、感光性ドライフィルム、感光性ドライフィルムの製造方法、パターン化されたレジスト膜の製造方法、めっき造形物の製造方法、及び多官能ビニルエーテル化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性ドライフィルム、感光性ドライフィルムの製造方法、パターン化されたレジスト膜の製造方法、めっき造形物の製造方法、及び多官能ビニルエーテル化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20230830BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230830BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G03F7/027
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 512
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019150051
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021032945
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/054788(WO,A1)
【文献】特開2011-022509(JP,A)
【文献】特開2019-066829(JP,A)
【文献】特開平01-126638(JP,A)
【文献】特開2000-122284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0187867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
G03F 7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)とを含み、
前記基材ポリマー(A)がカルボキシ基、及び/又は水酸基を有し、
前記多官能ビニルエーテルモノマー(B)が、下記式(B1):
-(-Rb1-O-CH=CHn1・・・(B1)
で表される化合物を含み、
前記式(B1)において、Rは、単環式骨格、及び/又は2以上の単環が縮合した縮合環式骨格を含むn1価の連結基であり、Rにおける単環式骨格の数と、縮合環式骨格を構成する単環の数との合計が2以上であり、Rb1は、単結合、又は2価の連結基であり、2以上のRb1は同一であっても異なっていてもよく、n1が2以上の整数であり、
前記式(B1)で表される化合物が、下記式(B2):
-(-Rb2-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2)
で表される化合物であり、
前記式(B2)において、R及びn1は前記式(B1)と同様であり、Rb2がエステル結合であり、Rb3が2価の炭化水素基である、めっき造形物形成用の鋳型形成に用いられる感光性樹脂組成物。
【請求項2】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)を含み、
前記基材ポリマー(A)が、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(C1)である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記基材ポリマー(A)が(メタ)アクリル系ポリマー(A3)を含む、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
酸拡散制御剤(F)を含む、請求項2又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
キノンジアジド基を有する感光剤(G)を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記式(B2)で表される化合物が、下記式(B3):
B1-(-CO-O-Rb3-O-CH=CHn2・・・(B3)
で表される化合物であり、
前記式(B3)において、Rb3は前記式(B2)と同様であり、n2が2以上4以下の整数であり、RB1が下記式(B3-1)~(B3-3):
-RB2-Rb4-RB2-・・・(B3-1)
-RB2-Rb4-RB3<・・・(B3-2)
>RB3-Rb4-RB3<・・・(B3-3)
のいずれかで表される2価以上4価以下の連結基であり、RB2が置換基を有してもよいフェニレン基であり、RB3が置換基を有してもよいベンゼントリイル基であり、Rb4が、単結合又は2価の連結基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された感光性樹脂層とを有し、前記感光性樹脂層が請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性ドライフィルム。
【請求項8】
基材フィルム上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成することを含む、感光性ドライフィルムの製造方法。
【請求項9】
金属表面を有する基板上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する積層工程と、
前記感光性樹脂層に、位置選択的に活性光線又は放射線を照射する露光工程と、
露光後の前記感光性樹脂層を現像する現像工程と、を含む、パターン化されたレジスト膜の製造方法。
【請求項10】
金属表面を有する基板上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成からなる感光性樹脂層を積層する積層工程と、
前記感光性樹脂層に、活性光線又は放射線を照射する露光工程と、
露光後の前記感光性樹脂層を現像して、めっき造形物を形成するための鋳型付き基板を作製する現像工程と、
前記鋳型付き基板にめっきを施して、鋳型内にめっき造形物を形成する工程と、
を含む、めっき造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を備える感光性ドライフィルムと、当該感光性ドライフィルムの製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたレジスト膜の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いて作成された鋳型付き基板を用いるめっき造形物の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物に好適に配合され得る多官能ビニルエーテル化合物とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ホトファブリケーションが精密微細加工技術の主流となっている。ホトファブリケーションとは、ホトレジスト組成物を被加工物表面に塗布してホトレジスト層を形成し、ホトリソグラフィー技術によってホトレジスト層をパターニングし、パターニングされたホトレジスト層(ホトレジストパターン)をマスクとして化学エッチング、電解エッチング、又は電気めっきを主体とするエレクトロフォーミング等を行って、半導体パッケージ等の各種精密部品を製造する技術の総称である。
【0003】
また、近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、半導体パッケージの高密度実装技術が進み、パッケージの多ピン薄膜実装化、パッケージサイズの小型化、フリップチップ方式による2次元実装技術、3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。このような高密度実装技術においては、接続端子として、例えば、パッケージ上に突出したバンプ等の突起電極(実装端子)や、ウェーハ上のペリフェラル端子から延びる再配線と実装端子とを接続するメタルポスト等が基板上に高精度に配置される。
【0004】
上記のようなホトファブリケーションにはホトレジスト組成物が使用されるが、そのようなホトレジスト組成物としては、酸発生剤を含む化学増幅型ホトレジスト組成物が知られている(特許文献1、2等を参照)。化学増幅型ホトレジスト組成物は、放射線照射(露光)により酸発生剤から酸が発生し、加熱処理により酸の拡散が促進されて、組成物中のベース樹脂等に対し酸触媒反応を起こし、そのアルカリ溶解性が変化するというものである。
【0005】
このような化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物は、例えばめっき工程によるバンプやメタルポストのようなめっき造形物の形成等に用いられている。具体的には、化学増幅型ホトレジスト組成物を用いて、金属基板のような支持体上に所望の膜厚のホトレジスト層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像して、バンプやメタルポストを形成する部分が選択的に除去(剥離)された鋳型として使用されるホトレジストパターンを形成する。そして、この除去された部分(非レジスト部)に銅等の導体をめっきによって埋め込んだ後、その周囲のホトレジストパターンを除去することにより、バンプやメタルポストを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-176112号公報
【文献】特開平11-52562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バンプやメタルポスト等のめっき造形物を形成するための鋳型となるレジストパターンの形成に用いられるホトレジスト組成物には、所望する形状のめっき造形物を安定して製造するために、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成できることや、室温である程度の長期間保管していても増粘やゲル化が生じない保管安定性が望まれる。そうすることにより、精密なバンプやメタルポスト等の接続端子を形成できる。
【0008】
しかし、特許文献1、2等に開示されるような、従来から知られるホトレジスト組成物は、バンプやメタルポスト等のめっき造形物を形成するための鋳型となるレジストパターンの形成に用いられるホトレジスト組成物に要求される上記の性能を満たさない場合がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成できる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を備える感光性ドライフィルムと、当該感光性ドライフィルムの製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたレジスト膜の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いて作成された鋳型付き基板を用いるめっき造形物の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物に好適に配合され得る多官能ビニルエーテル化合物とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、カルボキシ基、及び/又は水酸基を有する基材ポリマー(A)を含有する感光性樹脂組成物に、環式骨格を含む特定の構造の多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含有させることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
本発明の第1の態様は、
基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)とを含み、
基材ポリマー(A)がカルボキシ基、及び/又は水酸基を有し、
多官能ビニルエーテルモノマー(B)が、下記式(B1):
-(-Rb1-O-CH=CHn1・・・(B1)
で表される化合物を含み、
式(B1)において、Rは、単環式骨格、及び/又は2以上の単環が縮合した縮合環式骨格を含むn1価の連結基であり、Rにおける単環式骨格の数と、縮合環式骨格を構成する単環の数との合計が2以上であり、Rb1は、単結合、又は2価の連結基であり、2以上のRb1は同一であっても異なっていてもよく、n1が2以上の整数である、めっき造形物形成用の鋳型形成に用いられる感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第2の態様は、基材フィルムと、基材フィルムの表面に形成された感光性樹脂層とを有し、感光性樹脂層が第1の態様にかかる感光性樹脂組成物からなる感光性ドライフィルムである。
【0013】
本発明の第3の態様は、基材フィルム上に、第1の態様にかかる感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成することを含む、感光性ドライフィルムの製造方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、
金属表面を有する基板上に、第1の態様にかかる感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する積層工程と、
感光性樹脂層に、位置選択的に活性光線又は放射線を照射する露光工程と、
露光後の感光性樹脂層を現像する現像工程と、を含む、パターン化されたレジスト膜の製造方法である。
【0015】
本発明の第5の態様は、
金属表面を有する基板上に、第1の態様にかかる感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する積層工程と、
感光性樹脂層に、活性光線又は放射線を照射する露光工程と、
露光後の感光性樹脂層を現像して、めっき造形物を形成するための鋳型付き基板を作製する現像工程と、
鋳型付き基板にめっきを施して、鋳型内にめっき造形物を形成する工程と、
を含む、めっき造形物の製造方法である。
【0016】
本発明の第6の態様は、下記式(B3):
B1-(-CO-O-Rb3-O-CH=CHn2・・・(B3)
で表され、
式(B3)において、Rb3が2価の炭化水素基であり、n2が2以上4以下の整数であり、RB1が下記式(B3-1)~(B3-3):
-RB2-Rb4-PB2-・・・(B3-1)
-RB2-Rb4-RB3<・・・(B3-2)
>RB3-Rb4-RB3<・・・(B3-3)
のいずれかで表される2価以上4価以下の連結基であり、RB2が置換基を有してもよいフェニレン基であり、RB3が置換基を有してもよいベンゼントリイル基であり、Rb4が、単結合又は2価の連結基である、多官能ビニルエーテル化合物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成できる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を備える感光性ドライフィルムと、当該感光性ドライフィルムの製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたレジスト膜の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物を用いて製造される鋳型付き基板に対してめっきを施すめっき造形物の製造方法と、前述の感光性樹脂組成物の成分として好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪感光性樹脂組成物≫
感光性樹脂組成物は、基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)とを含む。かかる感光性樹脂組成物は、めっき造形物形成用の鋳型形成に用いられる。
基材ポリマー(A)は、カルボキシ基、及び/又は水酸基を有する。
多官能ビニルエーテルモノマー(B)は、下記式(B1):
-(-Rb1-O-CH=CHn1・・・(B1)
で表される化合物である。
式(B1)において、Rは、2以上の単環式骨格、及び/又は2以上の単環が縮合した縮合環式骨格を含むn1価の連結基であり、Rb1は、単結合、又は2価の連結基であり、2以上のRb1は同一であっても異なっていてもよく、n1が2以上の整数である、めっき造形物形成用の鋳型形成に用いられる感光性樹脂組成物である。
【0019】
上記の感光性樹脂組成物を用いて形成される、めっき造形物形成用の鋳型は、クラックの発生が抑制され、且つめっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくい。
理由は定かではないものの、めっき造形物形成用の鋳型として用いられるパターン化されたレジスト膜において、前述の基材ポリマ(A)が有するカルボキシ基、及び/又は水酸基と、特定の構造を有する多官能ビニルエーテルモノマー(B)との間で生じる架橋反応が生じることによって上記の効果が得られると考えられる。
【0020】
感光性樹脂組成物は、ポジ型又はネガ型のいずれであってもよい。
【0021】
感光性樹脂組成物がネガ型である場合の好適な例としては、上記の基材ポリマー(A)、及び多官能ビニルエーテルモノマー(B)に加えて、単官能又は多官能(メタ)アクリレートモノマー等の光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0022】
かかるネガ感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する場合、感光性樹脂組成物からなる塗布膜をベークすることで、基材ポリマー(A)が有するカルボキシ基、及び/又は水酸基と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)が有するビニルオキシ基とが反応し、基材ポリマー(A)の分子鎖が架橋される。ここで、基材ポリマー(A)が有するカルボキシ基やフェノール性水酸基等のアルカリ可溶性基の量を、多官能ビニルエーテルモノマー(B)が有するビニルオキシ基の量よりも過剰量に設定しておくと、架橋された基材ポリマー(A)はアルカリ可溶性基を有する。架橋された基材ポリマー(A)は、アルカリ可溶性基を有することによってアルカリ可溶性を示す。
そして、架橋された基材ポリマー(A)を含む塗布膜を位置選択的に露光すると、光重合開始剤の作用により光重合性モノマーが重合することで、露光部がアルカリ現像液に対して不溶化する。
他方、未露光部は、光重合性モノマーが重合していないことと、架橋された基材ポリマー(A)がアルカリ可溶性を示すこととによって、アルカリ現像液に対して可溶である。
従って、上記の基材ポリマー(A)、基材ポリマー多官能ビニルエーテルモノマー(B)に加えて、単官能又は多官能(メタ)アクリレートモノマー等の光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むネガ型感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する場合、感光性樹脂組成物からなる塗布膜をベークした後に、位置選択的な露光と、アルカリ現像液による現像とを施すことにより、アルカリ現像液に対して可溶な未露光部が除かれ、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくい架橋された基材ポリマー(A)を含むレジストパターンを形成できる。
【0023】
感光性樹脂組成物がポジ型である場合の好適な例としては、上記の基材ポリマー(A)、及び多官能ビニルエーテルモノマー(B)に加えて、露光によって感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性を高める感光剤(G)を含む感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0024】
上記のポジ型感光性樹脂組成物からなる塗布膜が加熱されると、基材ポリマー(A)が有するカルボキシ基、及び/又は水酸基と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)が有するビニルオキシ基とが反応し、基材ポリマー(A)の分子鎖が架橋されることで、感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する。
しかし、加熱後の塗布膜を、位置選択的に露光する場合、上記の感光剤(G)の作用によって露光部がアルカリ現像液に対して可溶化する。
【0025】
従って、上記の基材ポリマー(A)、及び多官能ビニルエーテルモノマー(B)に加えて、露光によって感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性を高める感光剤(G)を含むポジ型感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する場合、感光性樹脂組成物からなる塗布膜をベークした後に、位置選択的な露光と、アルカリ現像液による現像とを施すことにより、アルカリ現像液に対して可溶な露光部が除かれ、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくい架橋された基材ポリマー(A)を含むレジストパターンを形成できる。
【0026】
感光剤(G)は、露光によって分子内に生じる光反応によって、感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性を高める感光性の化合物である。光酸発生剤や、光塩基発生剤等の作用による脱保護反応等によりアルカリ現像液に対して可溶化する化合物は、感光剤(G)に含めない。典型的には、感光剤(G)としては、ナフトキノンジアジド基含有化合物が挙げられる。
【0027】
キノンジアジド基含有化合物としては、フェノール化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物との完全エステル化物や部分エステル化物が挙げられる。上記フェノール化合物としては、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;トリス(4-ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)-5-ヒドロキシフェノール、2,6-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;1,1-ビス〔3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5-ジメチル-3-(4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5-ジメチル-3-(4-ヒドロキシベンジル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メタン、ビス[3-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)-4-ヒドロキシ-5-エチルフェニル]メタン、ビス[3-(3,5-ジエチル-4-ヒドロキシベンジル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メタン、ビス[3-(3,5-ジエチル-4-ヒドロキシベンジル)-4-ヒドロキシ-5-エチルフェニル]メタン、ビス[2-ヒドロキシ-3-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)-5-メチルフェニル]メタン、ビス[2-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-5-メチルフェニル]メタン、ビス[4-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-5-メチルフェニル]メタン、ビス[2,5-ジメチル-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;2,4-ビス[2-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシベンジル)-5-メチルベンジル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシベンジル)-5-メチルベンジル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,6-ビス[2,5-ジメチル-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-ヒドロキシベンジル]-4-メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物等のリニア型ポリフェノール化合物;ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4-トリヒドロキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルメタン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3’-フルオロ-4´-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジメチルフェニル)プロパン等のビスフェノール型化合物;1-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1-[1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、上記ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸クロライド又はナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸クロライド等が挙げられる。
【0029】
また、他のキノンジアジド基含有化合物、例えばオルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジド又はオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類等のこれらの核置換誘導体、さらにはオルトキノンジアジドスルホニルクロリドと水酸基又はアミノ基をもつ化合物、例えばフェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p-アミノジフェニルアミン等との反応生成物等も用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらのキノンジアジド基含有化合物は、例えば上記のフェノール化合物と、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸クロライド又はナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸クロライドとをジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下に縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより製造することができる。
【0031】
感光剤(G)の使用量は、基材ポリマー(A)の質量と多官能ビニルエーテルモノマー(B)の質量との合計に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。感光剤(G)の使用量の下限は、例えば、基材ポリマー(A)の質量と多官能ビニルエーテルモノマー(B)の質量との合計に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
ポジ型感光性樹脂組成物の他の好ましい例としては、上記の基材ポリマー(A)としての酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂、及び多官能ビニルエーテルモノマー(B)に加えて、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物が挙げられる。
酸発生剤(C)を含む、上記のポジ型感光性樹脂組成物は、感度及び解像性が良好である点で、感光性樹脂組成物として特に好ましい。
【0033】
以下、特に好ましい感光性樹脂組成物である、上記の基材ポリマー(A)、多官能ビニルエーテルモノマー(B)、及び活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)を含み、基材ポリマー(A)として酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物に関して、必須又は任意の成分と、ポジ型感光性樹脂組成物の製造方法とについて以下に説明する。
なお、以下に説明する多官能ビニルエーテルモノマー(B)に関する構成は、本願発明にかかる感光性樹脂組成物のいずれにも共通する構成である。
【0034】
<基材ポリマー(A)>
以下、特に好ましいポジ型感光性樹脂組成物において、基材ポリマー(A)として含まれる、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂について説明する。酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂としては、特に限定されず、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する任意の樹脂を用いることができる。その中でも、ノボラック樹脂(A1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)、及びアクリル樹脂(A3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
なお、ノボラック樹脂(A1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)、及びアクリル樹脂(A3)は、いずれもカルボキシ基、及び/又は水酸基を必須に含む。
【0035】
[ノボラック樹脂(A1)]
ノボラック樹脂(A1)としては、下記式(a1)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0036】
【化1】
【0037】
上記式(a1)中、R1aは、酸解離性溶解抑制基を示し、R2a、R3aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0038】
式(a1)で表される構成単位を含む樹脂は、ノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基に対して酸解離性溶解抑制基を導入することにより調製され得る。他方で、基材ポリマー(A)は、前述の通り、カルボキシ基、及び/又は水酸基を含む。このため、フェノール性水酸基を有するノボラック樹脂を用いてノボラック樹脂(A1)を調製する際、ノボラック樹脂(A1)が所望する量の水酸基を有するように酸解離性溶解用抑制基の導入量が調整される。
【0039】
上記R1aで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記式(a2)、(a3)で表される基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0040】
【化2】
【0041】
上記式(a2)、(a3)中、R4a、R5aは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R6aは、炭素原子数1以上10以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R7aは、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1を表す。
【0042】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
ここで、上記式(a2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert-ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。また、上記式(a3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ-tert-ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素原子数が1以上6以下の基が挙げられる。
【0044】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)としては、下記式(a4)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
基材ポリマー(A)は、前述の通り、カルボキシ基、及び/又は水酸基を含む。このため、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)としての式(a4)で表される構成単位を含む樹脂は、当該樹脂が、式(a4)で表される構成単位とともに、(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸に由来する構成単位やヒドロキシスチレン類に由来する構成単位を所望する量含むように調製される。
【0045】
【化3】
【0046】
上記式(a4)中、R8aは、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R9aは、酸解離性溶解抑制基を表す。
【0047】
上記炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、例えば炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0048】
上記R9aで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記式(a2)、(a3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0049】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A2)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0050】
[アクリル樹脂(A3)]
アクリル樹脂(A3)としては、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大するアクリル樹脂であって、従来から、種々の感光性樹脂組成物に配合されているものであれば、特に限定されない。
ただし、基材ポリマー(A)は、前述の通り、カルボキシ基、及び/又は水酸基を含む。このため、アクリル樹脂(A3)は、ノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基に対して酸解離性溶解抑制基を導入することにより調製され得る。このため、アクリル樹脂(A3)は、(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸に由来する構成単位や、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を所望する量含むように調製される。
アクリル樹脂(A3)は、例えば、-SO-含有環式基、又はラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a-3)を含有するのが好ましい。かかる場合、レジストパターンを形成する際に、好ましい断面形状を有するレジストパターンを形成しやすい。
【0051】
(-SO-含有環式基)
ここで、「-SO-含有環式基」とは、その環骨格中に-SO-を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、-SO-における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に-SO-を含む環をひとつ目の環として数え、当該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。-SO-含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
【0052】
-SO-含有環式基は、特に、その環骨格中に-O-SO-を含む環式基、すなわち-O-SO-中の-O-S-が環骨格の一部を形成するサルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
【0053】
-SO-含有環式基の炭素原子数は、3以上30以下が好ましく、4以上20以下がより好ましく、4以上15以下がさらに好ましく、4以上12以下が特に好ましい。当該炭素原子数は環骨格を構成する炭素原子の数であり、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
【0054】
-SO-含有環式基は、-SO-含有脂肪族環式基であってもよく、-SO-含有芳香族環式基であってもよい。好ましくは-SO-含有脂肪族環式基である。
【0055】
-SO-含有脂肪族環式基としては、その環骨格を構成する炭素原子の一部が-SO-、又は-O-SO-で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基が挙げられる。より具体的には、その環骨格を構成する-CH-が-SO-で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基、その環を構成する-CH-CH-が-O-SO-で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基等が挙げられる。
【0056】
当該脂環式炭化水素環の炭素原子数は、3以上20以下が好ましく、3以上12以下がより好ましい。当該脂環式炭化水素環は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、炭素原子数3以上6以下のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。当該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂環式炭化水素環としては、炭素原子数7以上12以下のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、当該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0057】
-SO-含有環式基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
【0058】
当該置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0059】
当該置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前述の置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基が酸素原子(-O-)に結合した基が挙げられる。
【0060】
当該置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0061】
当該置換基のハロゲン化アルキル基としては、前述のアルキル基の水素原子の一部又は全部が前述のハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0062】
当該置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前述の置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の一部又は全部が前述のハロゲン原子で置換された基が挙げられる。当該ハロゲン化アルキル基としてはフッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0063】
前述の-COOR”、-OC(=O)R”におけるR”は、いずれも、水素原子又は炭素原子数1以上15以下の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基である。
【0064】
R”が直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基の場合、当該鎖状のアルキル基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0065】
R”が環状のアルキル基の場合、当該環状のアルキル基の炭素原子数は3以上15以下が好ましく、4以上12以下がより好ましく、5以上10以下が特に好ましい。具体的には、フッ素原子、又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0066】
当該置換基としてのヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。具体的には、前述の置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0067】
-SO-含有環式基として、より具体的には、下記式(3-1)~(3-4)で表される基が挙げられる。
【化4】
(式中、A’は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり、zは0以上2以下の整数であり、R10aはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、又はシアノ基であり、R”は水素原子、又はアルキル基である。)
【0068】
上記式(3-1)~(3-4)中、A’は、酸素原子(-O-)若しくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、酸素原子、又は硫黄原子である。A’における炭素原子数1以上5以下のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
【0069】
当該アルキレン基が酸素原子又は硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前述のアルキレン基の末端又は炭素原子間に-O-、又は-S-が介在する基が挙げられ、例えば-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A’としては、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、又は-O-が好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0070】
zは0、1、及び2のいずれであってもよく、0が最も好ましい。zが2である場合、複数のR10aはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0071】
10aにおけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、-SO-含有環式基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、及びヒドロキシアルキル基について、上記で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
以下に、前述の式(3-1)~(3-4)で表される具体的な環式基を例示する。なお、式中の「Ac」はアセチル基を示す。
【0073】
【化5】
【0074】
【化6】
【0075】
-SO-含有環式基としては、上記の中では、前述の式(3-1)で表される基が好ましく、前述の化学式(3-1-1)、(3-1-18)、(3-3-1)、及び(3-4-1)のいずれかで表される基からなる群から選択される少なくとも一種がより好ましく、前述の化学式(3-1-1)で表される基が最も好ましい。
【0076】
(ラクトン含有環式基)
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
【0077】
構成単位(a-3)におけるラクトン環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、4~6員環ラクトンから水素原子を1つ除いた基、例えばβ-プロピオノラクトンから水素原子を1つ除いた基、γ-ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ-バレロラクトンから水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0078】
構成単位(a-3)としては、-SO-含有環式基、又はラクトン含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されないが、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって-SO-含有環式基を含む構成単位(a-3-S)、及びα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であってラクトン含有環式基を含む構成単位(a-3-L)からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位が好ましい。
【0079】
〔構成単位(a-3-S)〕
構成単位(a-3-S)の例として、より具体的には、下記式(a-S1)で表される構成単位が挙げられる。
【0080】
【化7】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上5以下のハロゲン化アルキル基であり、R11aは-SO-含有環式基であり、R12aは単結合、又は2価の連結基である。)
【0081】
式(a-S1)中、Rは前記と同様である。
11aは、前記で挙げた-SO-含有環式基と同様である。
12aは、単結合、2価の連結基のいずれであってもよい。本発明の効果に優れることから、2価の連結基であることが好ましい。
【0082】
12aにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0083】
・置換基を有していてもよい2価の炭化水素基
2価の連結基としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。当該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。通常は飽和炭化水素基が好ましい。当該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0084】
前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上5以下がさらに好ましい。
【0085】
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
【0086】
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0087】
上記の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子を置換する置換基(水素原子以外の基又は原子)を有していてもよく、有していなくてもよい。当該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1以上5以下のフッ素化アルキル基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
【0088】
上記の構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、当該環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、当該環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。上記の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前述と同様のものが挙げられる。
【0089】
環状の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、3以上20以下が好ましく、3以上12以下がより好ましい。
【0090】
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。当該モノシクロアルカンの炭素原子数は、3以上6以下が好ましい。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。当該ポリシクロアルカンの炭素原子数は、7以上12以下が好ましい。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0091】
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子を置換する置換基(水素原子以外の基又は原子)を有していてもよいし、有していなくてもよい。当該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
【0092】
上記の置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、及びtert-ブチル基がより好ましい。
【0093】
上記の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基が特に好ましい。
【0094】
上記の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0095】
上記の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前述のアルキル基の水素原子の一部又は全部が上記のハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0096】
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部が-O-、又は-S-で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0097】
2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する2価の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。芳香環は、4n+2個のπ電子を持つ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5以上30以下が好ましく、5以上20以下がより好ましく、6以上15以下がさらに好ましく、6以上12以下が特に好ましい。ただし、当該炭素原子数には、置換基の炭素原子数を含まないものとする。
【0098】
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0099】
2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基として具体的には、上記の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基、又はヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えば、ビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;上記の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基、又はヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。
【0100】
上記のアリール基、又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1以上4以下が好ましく、1以上2以下がより好ましく、1が特に好ましい。
【0101】
上記の芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば、当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
【0102】
上記の置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、及びtert-ブチル基がより好ましい。
【0103】
上記の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基がより好ましい。
【0104】
上記の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0105】
上記の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前述のアルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0106】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子であり、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0107】
ヘテロ原子を含む2価の連結基として、具体的には、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-C(=NH)-、=N-等の非炭化水素系連結基、これらの非炭化水素系連結基の少なくとも1種と2価の炭化水素基との組み合わせ等が挙げられる。当該2価の炭化水素基としては、上述した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様のものが挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0108】
上記のうち、-C(=O)-NH-中の-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-中のHは、それぞれ、アルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。当該置換基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0109】
12aにおける2価の連結基としては、特に、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、環状の脂肪族炭化水素基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。
【0110】
12aにおける2価の連結基が直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基である場合、該アルキレン基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましく、1以上3以下が最も好ましい。具体的には、前述の2価の連結基としての「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」の説明中、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基として挙げた直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
【0111】
12aにおける2価の連結基が環状の脂肪族炭化水素基である場合、当該環状の脂肪族炭化水素基としては、前述の2価の連結基としての「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」の説明中、「構造中に環を含む脂肪族炭化水素基」として挙げた環状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0112】
当該環状の脂肪族炭化水素基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、又はテトラシクロドデカンから水素原子が二個以上除かれた基が特に好ましい。
【0113】
12aにおける2価の連結基が、ヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、当該連結基として好ましいものとして、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y-O-Y-、-[Y-C(=O)-O]m’-Y-、又は-Y-O-C(=O)-Y-で表される基[式中、Y、及びYはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m’は0以上3以下の整数である。]等が挙げられる。
【0114】
12aにおける2価の連結基が-NH-の場合、-NH-中の水素原子はアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。当該置換基(アルキル基、アシル基等)の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0115】
式-Y-O-Y-、-[Y-C(=O)-O]m’-Y-、又は-Y-O-C(=O)-Y-中、Y、及びYは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。当該2価の炭化水素基としては、前記2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
【0116】
としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1以上5以下の直鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、及びエチレン基が特に好ましい。
【0117】
としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基、及びアルキルメチレン基がより好ましい。当該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1以上5以下の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0118】
式-[Y-C(=O)-O]m’-Y-で表される基において、m’は0以上3以下の整数であり、0以上2以下の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y-C(=O)-O]m’-Y-で表される基としては、式-Y-C(=O)-O-Y-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。当該式中、a’は、1以上10以下の整数であり、1以上8以下の整数が好ましく、1以上5以下の整数がより好ましく、1、又は2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1以上10以下の整数であり、1以上8以下の整数が好ましく、1以上5以下の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0119】
12aにおける2価の連結基について、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、少なくとも1種の非炭化水素基と2価の炭化水素基との組み合わせからなる有機基が好ましい。なかでも、ヘテロ原子として酸素原子を有する直鎖状の基、例えばエーテル結合、又はエステル結合を含む基が好ましく、前述の式-Y-O-Y-、-[Y-C(=O)-O]m’-Y-、又は-Y-O-C(=O)-Y-で表される基がより好ましく、前述の式-[Y-C(=O)-O]m’-Y-、又は-Y-O-C(=O)-Y-で表される基が特に好ましい。
【0120】
12aにおける2価の連結基としては、アルキレン基、又はエステル結合(-C(=O)-O-)を含むものが好ましい。
【0121】
当該アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。当該直鎖状の脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、及びペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。当分岐鎖状のアルキレン基の好適な例としては、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0122】
エステル結合を含む2価の連結基としては、特に、式:-R13a-C(=O)-O-[式中、R13aは2価の連結基である。]で表される基が好ましい。すなわち、構成単位(a-3-S)は、下記式(a-S1-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0123】
【化8】
(式中、R、及びR11aはそれぞれ前記と同様であり、R13aは2価の連結基である。)
【0124】
13aとしては、特に限定されず、例えば、前述のR12aにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。
13aの2価の連結基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はヘテロ原子として酸素原子を含む2価の連結基が好ましい。
【0125】
直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、又はエチレン基が好ましく、メチレン基が特に好ましい。分岐鎖状のアルキレン基としては、アルキルメチレン基、又はアルキルエチレン基が好ましく、-CH(CH)-、-C(CH-、又は-C(CHCH-が特に好ましい。
【0126】
酸素原子を含む2価の連結基としては、エーテル結合、又はエステル結合を含む2価の連結基が好ましく、前述した、-Y-O-Y-、-[Y-C(=O)-O]m’-Y-、又は-Y-O-C(=O)-Y-がより好ましい。Y、及びYは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、m’は0以上3以下の整数である。なかでも、-Y-O-C(=O)-Y-が好ましく、-(CH-O-C(=O)-(CH-で表される基が特に好ましい。cは1以上5以下の整数であり、1又は2が好ましい。dは1以上5以下の整数であり、1又は2が好ましい。
【0127】
構成単位(a-3-S)としては、特に、下記式(a-S1-11)、又は(a-S1-12)で表される構成単位が好ましく、式(a-S1-12)で表される構成単位がより好ましい。
【0128】
【化9】
(式中、R、A’、R10a、z、及びR13aはそれぞれ前記と同じである。)
【0129】
式(a-S1-11)中、A’はメチレン基、酸素原子(-O-)、又は硫黄原子(-S-)であることが好ましい。
【0130】
13aとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は酸素原子を含む2価の連結基が好ましい。R13aにおける直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、酸素原子を含む2価の連結基としては、それぞれ、前述の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、酸素原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
【0131】
式(a-S1-12)で表される構成単位としては、特に、下記式(a-S1-12a)、又は(a-S1-12b)で表される構成単位が好ましい。
【0132】
【化10】
(式中、R、及びA’はそれぞれ前記と同じであり、c~eはそれぞれ独立に1以上3以下の整数である。)
【0133】
〔構成単位(a-3-L)〕
構成単位(a-3-L)の例としては、例えば前述の式(a-S1)中のR11aをラクトン含有環式基で置換したものが挙げられ、より具体的には、下記式(a-L1)~(a-L5)で表される構成単位が挙げられる。
【0134】
【化11】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上5以下のハロゲン化アルキル基であり;R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、又はシアノ基であり、R”は水素原子、又はアルキル基であり;R12aは単結合、又は2価の連結基であり、s”は0以上2以下の整数であり;A”は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、酸素原子、又は硫黄原子であり;rは0又は1である。)
【0135】
式(a-L1)~(a-L5)におけるRは、前述と同様である。
R’におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、-SO-含有環式基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基について前述したものと同様のものが挙げられる。
【0136】
R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
R”におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
R”が直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素原子数1以上10以下であることが好ましく、炭素原子数1以上5以下であることがさらに好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素原子数3以上15以下であることが好ましく、炭素原子数4以上12以下であることがさらに好ましく、炭素原子数5以上10以下が最も好ましい。具体的には、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等を例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
A”としては、前述の式(3-1)中のA’と同様のものが挙げられる。A”は、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、酸素原子(-O-)又は硫黄原子(-S-)であることが好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基、又は-O-がより好ましい。炭素原子数1以上5以下のアルキレン基としては、メチレン基、又はジメチルメチレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0137】
12aは、前述の式(a-S1)中のR12aと同様である。
式(a-L1)中、s”は1又は2であることが好ましい。
以下に、前述の式(a-L1)~(a-L3)で表される構成単位の具体例を例示する。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。
【0138】
【化12】
【0139】
【化13】
【0140】
【化14】
【0141】
構成単位(a-3-L)としては、前述の式(a-L1)~(a-L5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、式(a-L1)~(a-L3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、前述の式(a-L1)、又は(a-L3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
なかでも、前述の式(a-L1-1)、(a-L1-2)、(a-L2-1)、(a-L2-7)、(a-L2-12)、(a-L2-14)、(a-L3-1)、及び(a-L3-5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0142】
また、構成単位(a-3-L)としては、下記式(a-L6)~(a-L7)で表される構成単位も好ましい。
【化15】
式(a-L6)及び(a-L7)中、R及びR12aは前述と同様である。
【0143】
また、アクリル樹脂(A3)は、酸の作用によりアクリル樹脂(A3)のアルカリに対する溶解性を高める構成単位として、酸解離性基を有する下記式(a5)~(a7)で表される構成単位を含む。
【0144】
【化16】
【0145】
上記式(a5)~(a7)中、R14a、及びR18a~R23aは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、R15a~R17aは、それぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基、又は炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を表し、それぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、R16a及びR17aは互いに結合して、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の炭化水素環を形成してもよく、Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0以上4以下の整数を表し、qは0又は1を表す。
【0146】
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0147】
上記R16a及びR17aが互いに結合して炭化水素環を形成しない場合、上記R15a、R16a、及びR17aとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅等が良好な点から、炭素原子数2以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。上記R19a、R20a、R22a、R23aとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0148】
上記R16a及びR17aは、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を形成してもよい。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0149】
さらに、上記R16a及びR17aが形成する脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0150】
上記Yは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0151】
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0152】
また、Yがアルキル基である場合、炭素原子数1以上20以下、好ましくは6以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-イソプロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-tert-ブトキシエチル基、1-メトキシプロピル基、1-エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。
【0153】
上記式(a5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(a5-1)~(a5-33)で表されるものを挙げることができる。
【0154】
【化17】
【0155】
上記式(a5-1)~(a5-33)中、R24aは、水素原子又はメチル基を表す。
【0156】
上記式(a6)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(a6-1)~(a6-26)で表されるものを挙げることができる。
【0157】
【化18】
【0158】
上記式(a6-1)~(a6-26)中、R24aは、水素原子又はメチル基を表す。
【0159】
上記式(a7)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(a7-1)~(a7-15)で表されるものを挙げることができる。
【0160】
【化19】
【0161】
上記式(a7-1)~(a7-15)中、R24aは、水素原子又はメチル基を表す。
【0162】
以上説明した式(a5)~(a7)で表される構成単位の中では、合成がしやすく且つ比較的高感度化しやすい点から、式(a6)で表される構成単位が好ましい。また、式(a6)で表される構成単位の中では、Yがアルキル基である構成単位が好ましく、R19a及びR20aの一方又は双方がアルキル基である構成単位が好ましい。
【0163】
さらに、アクリル樹脂(A3)は、上記式(a5)~(a7)で表される構成単位とともに、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0164】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、エーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物を例示することができ、具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0165】
さらに、アクリル樹脂(A3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含めることができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。
【0166】
このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0167】
上記の通り、アクリル樹脂(A3)は、上記のモノカルボン酸類やジカルボン酸類のようなカルボキシ基を有する重合性化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。しかし、断面形状が良好な矩形である非レジスト部を含むレジストパターンを形成しやすい点から、アクリル樹脂(A3)は、カルボキシ基を有する重合性化合物に由来する構成単位を実質的に含まないのが好ましい。具体的には、アクリル樹脂(A3)中の、カルボキシ基を有する重合性化合物に由来する構成単位の比率は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
アクリル樹脂(A3)において、カルボキシ基を有する重合性化合物に由来する構成単位を比較的多量に含むアクリル樹脂は、カルボキシ基を有する重合性化合物に由来する構成単位を少量しか含まないか、含まないアクリル樹脂と併用されるのが好ましい。
【0168】
また、重合性化合物としては、酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル基含有芳香族化合物類等を挙げることができる。酸非解離性の脂肪族多環式基としては、特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基等が、工業上入手しやすい等の点で好ましい。これらの脂肪族多環式基は、炭素原子数1以上5以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0169】
酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、下記式(a8-1)~(a8-5)の構造のものを例示することができる。
【0170】
【化20】
【0171】
上記式(a8-1)~(a8-5)中、R25aは、水素原子又はメチル基を表す。
【0172】
アクリル樹脂(A3)が、-SO-含有環式基、又はラクトン含有環式基を含む構成単位(a-3)を含む場合、アクリル樹脂(A3)中の構成単位(a-3)の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が特に好ましく、10質量%以上30質量%以下が最も好ましい。ポジ型感光性樹脂組成物が、上記の範囲内の量の構成単位(a-3)を含む場合、良好な現像性と、良好なパターン形状とを両立しやすい。
【0173】
また、アクリル樹脂(A3)は、前述の式(a5)~(a7)で表される構成単位を、5質量%以上含むのが好ましく、10質量%以上含むのがより好ましく、10質量%以上50質量%以下含むのが特に好ましい。
【0174】
アクリル樹脂(A3)は、上記のエーテル結合を有する重合性化合物に由来する構成単位を含むのが好ましい。アクリル樹脂(A3)中の、エーテル結合を有する重合性化合物に由来する構成単位の含有量は、0質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0175】
アクリル樹脂(A3)は、上記の酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構成単位を含むのが好ましい。アクリル樹脂(A3)中の、酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構成単位の含有量は、0質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0176】
ポジ型感光性樹脂組成物が所定の量のアクリル樹脂(A3)を含有する限りにおいて、以上説明したアクリル樹脂(A3)以外のアクリル樹脂も基材ポリマー(A)として用いることができる。このような、アクリル樹脂(A3)以外のアクリル樹脂としては、前述の式(a5)~(a7)で表される構成単位を含む樹脂であれば特に限定されない。
【0177】
以上説明した基材ポリマー(A)のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは10000以上600000以下であり、より好ましくは20000以上400000以下であり、さらに好ましくは30000以上300000以下である。このような質量平均分子量とすることにより、基板からの剥離性を低下させることなく感光性樹脂層の十分な強度を保持でき、さらにはめっき時のプロファイルの膨れや、クラックの発生を防ぐことができる。
【0178】
また、基材ポリマー(A)の分散度は1.05以上が好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とするめっきに対する応力耐性や、めっき処理により得られる金属層が膨らみやすくなるという問題を回避できる。
【0179】
基材ポリマー(A)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全質量に対して5質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。
【0180】
<多官能ビニルエーテルモノマー(B)>
好ましいポジ型感光性樹脂組成物は、多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含有する。多官能ビニルエーテルモノマー(B)は、下記式(B1):
-(-Rb1-O-CH=CHn1・・・(B1)
で表される化合物を含む。
式(B1)において、Rは、単環式骨格、及び/又は2以上の単環が縮合した縮合環式骨格を含むn1価の連結基である。Rにおける単環式骨格の数と、縮合環式骨格を構成する単環の数との合計は、2以上である。Rb1は、単結合、又は2価の連結基である。2以上のRb1は同一であっても異なっていてもよい。n1は、2以上の整数である。
【0181】
ポジ型感光性樹脂組成物が、前述の基材ポリマー(A)とともに、上記の多官能ビニルエーテルモノマーを含むことにより、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成できる。
ポジ型感光性樹脂組成物が、上記の基材ポリマー(A)とともに、多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含む場合、レジストパターンを形成する際にポジ型感光性樹脂組成物からなる塗布膜が加熱されることで、基材ポリマー(A)が有するカルボキシ基、及び/又は水酸基と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)とが反応して基材ポリマー(A)の分子鎖が架橋されるためである。
【0182】
式(B1)において、Rが有するn1個の結合手は、Rに含まれる単環式骨格又は縮合環式骨格に結合しているのが好ましい。
に含まれる単環式骨格は、脂肪族炭化水素環骨格でも、脂肪族複素環骨格でも、芳香族炭化水素骨格でも、芳香族複素環骨格でもよく、芳香族炭化水素骨格が好ましい。Rとしての単環式骨格としては、炭素原子数6以上10以下のシクロアルカン骨格、又はベンゼン骨格が好ましく、ベンゼン骨格がより好ましい。
に含まれる縮合環式骨格は、脂肪族炭化水素環骨格でも、脂肪族複素環骨格でも、芳香族炭化水素骨格でも、芳香族複素環骨格でもよい。また、縮合環式骨格は、脂肪族環と芳香族環とが縮合した縮合環に基づく骨格であってもよい。Rに含まれる縮合環式骨格としては、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、イソボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格、ナフタレン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、フルオレン骨格、及びカルバゾール骨格が好ましい。
に含まれる縮合環式骨格を構成する単環の数は、2以上4以下が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0183】
における単環式骨格又は縮合環式骨格を与える単環又は縮合環は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0184】
における単環式骨格の数と、縮合環式骨格を構成する単環の数との合計は、2以上であり、2以上4以下が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0185】
が、2以上の単環式骨格、又は縮合環式骨格を含む場合、複数の環式骨格は、単結合、又は2価以上の多価連結基により結合される。複数の環式骨格は、単結合、又は2価の連結基により結合されるのが好ましい。
【0186】
複数の環式骨格を連結する2価の連結基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、炭素原子数2以上6以下の不飽和脂肪族炭化水素基、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NH―)、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド結合(-S-)、ジスルフィド結合(-S-S-)、スルホニル基(-SO-)、スルフィニル基(-SO-)、イミノ基(-NH-)、及びアゾ基(-N=N-)等が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキレン基の例としては、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エチレン基(エタン-1,2-ジイル基)、及びプロパン-2,2-ジイル基等が挙げられる。
炭素原子数2以上6以下の不飽和脂肪族炭化水素基の例としては、ビニレン基(エチレン-1,2-ジイル基)、2-ブテン-1,2-ジイル基(-CH-CH=CH-CH-)、及び1,3-ブタジエン-1,4-ジイル基(-CH=CH-CH=CH-)等が挙げられる。
【0187】
n1は2以上の整数である。n1としては、式(B1)で表される化合物の合成又は入手が容易であることから2以上4以下が好ましく、2又は3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0188】
の好適な具体例としては、以下の2価以上4価以下の連結基が挙げられる。
【化21】
【0189】
上記の具体例の中では、以下の連結基がより好ましい。
【化22】
【0190】
b1は、単結合、又は2価の連結基である。2価の連結基は、特に限定されない。例えば、2価の連結基としては、2価の炭化水素基、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NH―)、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド結合(-S-)、ジスルフィド結合(-S-S-)、スルホニル基(-SO-)、スルフィニル基(-SO-)、イミノ基(-NH-)、及びアゾ基(-N=N-)からなる群より選択される1種、又は2種以上の組み合わせが好ましい。
より好ましい2価の連結基としては、後述する式(B2)における-Rb2-Rb3-で表される基が挙げられる。
【0191】
クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成することが特に容易であることから、式(B1)で表される化合物は、下記式(B2):
-(-Rb2-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2)
で表される化合物であるのが好ましい。
式(B2)において、R及びn1は、式(B1)におけるR及びn1と同様である。Rb2は、エーテル結合又はエステル結合である。Rb3は、2価の炭化水素基である。
【0192】
b2としてのエステル結合の向きは特に限定されない。つまり、式(B2)で表される化合物は、以下の式(B2-1)~式(B2-3)で表される化合物のいずれかに該当する。
-(-O-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-1)
-(-CO-O-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-2)
-(-O-CO-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-3)
【0193】
b3としての2価の炭化水素基の炭素原子数は特に限定されない。Rb3としての2価の炭化水素基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。
【0194】
b3としての2価の炭化水素基は、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、脂肪族基と芳香族基との組み合わせであってもよい。Rb3としての2価の炭化水素基としては、柔軟であってレジストパターンのクラックを抑制しやすいことから脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖脂肪族炭化水素基であっても、分岐鎖脂肪族炭化水素基であっても、環状脂肪族炭化水素基であっても、これらの組み合わせであってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖脂肪族炭化水素基、又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0195】
b3としての2価の炭化水素基の具体例としては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エチレン基(エタン-1,2-ジイル基)、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、及びシクロヘキサン-1,2-ジイル基が挙げられる。
これらの中では、エチレン基(エタン-1,2-ジイル基)、プロパン-1,3-ジイル基、及びプロパン-1,2-ジイル基が好ましい。
【0196】
式(B2)で表される化合物は、下記式(B3):
B1-(-CO-O-Rb3-O-CH=CHn2・・・(B3)
で表される化合物であるのが好ましい。
式(B3)において、Rb3は、式(B2)におけるRb3と同様である。n2は、2以上4以下の整数である。RB1は、下記式(B3-1)~(B3-3):
-RB2-Rb4-RB2-・・・(B3-1)
-RB2-Rb4-RB3<・・・(B3-2)
>RB3-Rb4-RB3<・・・(B3-3)
のいずれかで表される2価以上4価以下の連結基である。RB2は置換基を有してもよいフェニレン基である。RB3は、置換基を有してもよいベンゼントリイル基である。Rb4は、単結合又は2価の連結基である。
【0197】
B2としてのフェニレン基としては、p-フェニレン基、及びm-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。RB3としてのベンゼントリイル基としては、ベンゼン-1,3,5-トリイル基、及びベンゼン-1,3,4-トリイル基が好ましく、ベンゼン-1,3,5-トリイル基がより好ましい。
【0198】
B2としてのフェニレン基、又はRB3としてのベンゼントリイル基が有していもよい置換基としてはとしては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0199】
b4は、単結合又は2価の連結基である。Rb4としての2価の連結基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、炭素原子数2以上6以下の不飽和脂肪族炭化水素基、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NH―)、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド結合(-S-)、ジスルフィド結合(-S-S-)、スルホニル基(-SO-)、スルフィニル基(-SO-)、イミノ基(-NH-)、及びアゾ基(-N=N-)等が挙げられる。
【0200】
式(B3-1)で表される2価の連結基としては以下の基が好ましい。
【化23】
【0201】
式(B3-2)で表される3価の連結基としては以下の基が好ましい。
【化24】
【0202】
式(B3-3)で表される4価の連結基としては以下の基がより好ましい。
【化25】
【0203】
式(B3-1)~式(B3-3)で表される連結基の中では、式(B3-1)で表される2価の連結基が好ましい。式(B3-1)で表される2価の連結基の好ましい具体例としては、以下の基が挙げられる。
【化26】
【0204】
以上説明した式(B1)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の2価の基に、下式(B1-i)~(B1-vi)で表される基が結合した化合物が挙げられる。下記の2価の基には、下式(B1-i)~(B1-vi)で表される基から選択される異種の2つの基が結合してもよいが、同種の2つの基が結合するのが好ましい。
-CO-O-CHCH-O-CH=CH・・・(B1-i)
-O-CO-CHCH-O-CH=CH・・・(B1-ii)
-O-CHCH-O-CH=CH・・・(B1-iii)
-CO-O-CHCHCH-O-CH=CH・・・(B1-iv)
-O-CO-CHCHCH-O-CH=CH・・・(B1-v)
-O-CHCHCH-O-CH=CH・・・(B1-vi)
【化27】
【0205】
多官能ビニルエーテルモノマー(B)の質量に対する、式(B1)で表される化合物の質量の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0206】
以上説明した、下記式(B1)で表される化合物の合成方法は特に限定されない。
-(-Rb1-O-CH=CHn1・・・(B1)
合成方法は、R及びRb1の構造を考慮して、適宜選択される。
以下、前述の式(B2)で表される化合物を代表例として、合成方法について説明する。
【0207】
前述の通り、式(B2)で表される化合物は、下記式(B2-1)~式(B2-3)のいずれかで表される化合物に該当する。
-(-O-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-1)
-(-CO-O-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-2)
-(-O-CO-Rb3-O-CH=CHn1・・・(B2-3)
【0208】
式(B2-1)で表される化合物については、R-(OH)n1で表されるポリオールに対して、Hal-Rb3-O-CH=CHで表されるハロゲン含有ビニルエーテル化合物を用いて、所謂、Williamsonのエーテル合成法に従った反応を行うことにより合成することができる。ここで、Halはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0209】
式(B2-2)で表される化合物については、R-(COOH)n1で表される多価カルボン酸化合物と、HO-Rb3-O-CH=CHで表されるアルコールとを、縮合剤の存在下に縮合させる方法により合成することができる。縮合剤としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物やカルボニルジイミダゾール等を用いることができる。
また、R-(COHal)n1で表される多価カルボン酸の酸ハライドと、HO-Rb3-O-CH=CHで表されるアルコールとを、反応させる方法によっても、式(B2-2)で表される化合物を合成することができる。ここで、Halはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0210】
式(B2-3)で表される化合物については、R-(OH)n1で表されるポリオールと、HO-CO-Rb3-O-CH=CHで表されるビニルオキシ基含有カルボン酸とを、縮合剤の存在下に縮合させる方法により合成することができる。縮合剤としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物やカルボニルジイミダゾール等を用いることができる。
また、R-(OH)n1で表されるポリオールと、Hal-CO-Rb3-O-CH=CHで表されるビニルオキシ基含有カルボン酸の酸ハライドとを、反応させる方法によっても、式(B2-3)で表される化合物を合成することができる。ここで、Halはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0211】
上記の各反応において使用される溶媒としては、それぞれの反応に対して不活性な溶媒であれば特に限定されない。上記の各反応において使用し得る溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類等が挙げられる。
上記の各反応における温度及び時間は特に限定されない。反応温度及び反応温度としては、上記の各反応において通常採用される範囲の条件から適宜選択される。
【0212】
多官能ビニルエーテルモノマー(B)が、式(B1)で表される化合物とともに含んでいてもよい化合物の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、1,3-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル1,5-ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、1,10-デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル等の鎖状脂肪族ジビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の環状脂肪族ジビニルエーテル;1,4-ジビニロキシベンゼン、1,3-ジビニロキシベンゼン、1,2-ジビニロキシベンゼン、1,4-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、1,3-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、及び1,2-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル等の芳香族ジビニルエーテル;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、及びジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の3価以上の多価ビニルエーテルが挙げられる。
【0213】
ポジ型感光性樹脂組成物における、多官能ビニルエーテルモノマー(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。レジストパターン形成時のクラックの発生を特に抑制しやすく、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンの形成が特に容易であることから、ポジ型感光性樹脂組成物における、多官能ビニルエーテルモノマー(B)の含有量は、基材ポリマー(A)100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下が好ましく、1質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0214】
<活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)>
酸発生剤(C)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であり、光により直接又は間接的に酸を発生する化合物であれば特に限定されない。酸発生剤(C)としては、以下に説明する、第一~第五の態様の酸発生剤が好ましい。以下、ポジ型感光性樹脂組成物において好適に使用される酸発生剤(C)の好適な態様について、第一から第五の態様として説明する。
【0215】
酸発生剤(C)における第一の態様としては、下記式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0216】
【化28】
【0217】
上記式(c1)中、X1cは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1cは、X1cに結合している有機基であり、炭素原子数6以上30以下のアリール基、炭素原子数4以上30以下の複素環基、炭素原子数1以上30以下のアルキル基、炭素原子数2以上30以下のアルケニル基、又は炭素原子数2以上30以下のアルキニル基を表し、R1cは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1cの個数はg+h(g-1)+1であり、R1aはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1cが互いに直接、又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR2a-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X1cを含む環構造を形成してもよい。R2aは炭素原子数1以下5以上のアルキル基又は炭素原子数6以下10以上のアリール基である。
【0218】
2cは下記式(c2)で表される構造である。
【0219】
【化29】
【0220】
上記式(c2)中、X4cは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基、炭素原子数6以上20以下のアリーレン基、又は炭素原子数8以上20以下の複素環化合物の2価の基を表し、X4cは炭素原子数1以上8以下のアルキル、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ、炭素原子数6以上10以下のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5cは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR2c-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX4c及びh個のX5cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2aは前述の定義と同じである。
【0221】
3c-はオニウムの対イオンであり、下記式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(c18)で表されるボレートアニオンが挙げられる。
【0222】
【化30】
【0223】
上記式(c17)中、R3cは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1以上5以下の整数である。j個のR3cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0224】
【化31】
【0225】
上記式(c18)中、R4c~R7cは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0226】
上記式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、又は4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0227】
上記式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記式(c19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【0228】
【化32】
【0229】
上記式(c19)中、R8cはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X2cは、上記式(c1)中のX2cと同じ意味を表す。
【0230】
上記式(c19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0231】
上記式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3cはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素原子数は1以上8以下、さらに好ましい炭素原子数は1以上4以下である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記式(c1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0232】
特に好ましいR3cは、炭素原子数が1以上4以下、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。R3cの個数jは、1以上5以下の整数であり、好ましくは2以上4以下、特に好ましくは2又は3である。
【0233】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、又は[(CFCFCFPFが挙げられ、これらのうち、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、又は[((CFCFCFPFが特に好ましい。
【0234】
上記式(c18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0235】
酸発生剤(C)における第二の態様としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-エチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-プロピル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジエトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジプロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-エトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-プロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記式(c3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0236】
【化33】
【0237】
上記式(c3)中、R9c、R10c、R11cは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0238】
また、酸発生剤(C)における第三の態様としては、α-(p-トルエンスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,4-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,6-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(2-クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-1-シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記式(c4)で表される化合物が挙げられる。
【0239】
【化34】
【0240】
上記式(c4)中、R12cは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13cは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0241】
上記式(c4)中、芳香族基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13cは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12cが芳香族基であり、R13cが炭素原子数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0242】
上記式(c4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R12cがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13cがメチル基の化合物、具体的にはα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メチルフェニル)アセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-2,3-ジヒドロキシチオフェン-3-イリデン〕(o-トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記式(c4)で表される酸発生剤としては、具体的には下記式で表される酸発生剤が挙げられる。
【0243】
【化35】
【0244】
また、酸発生剤(C)における第四の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1以上3以下が好ましい。
【0245】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記式(c5)で表される構造が好ましい。
【0246】
【化36】
【0247】
上記式(c5)中、R14c、R15c、R16cのうち少なくとも1つは下記式(c6)で表される基を表し、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14c、R15c、R16cのうちの1つが下記式(c6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0248】
【化37】
【0249】
上記式(c6)中、R17c、R18cは、それぞれ独立に水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R19cは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0以上2以下の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R17cが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18cが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0250】
上記R14c、R15c、R16cのうち上記式(c6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3~9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5以上6以下である。
【0251】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0252】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0253】
これらのカチオン部として好適なカチオンとしては、下記式(c7)、(c8)で表されるカチオン等を挙げることができ、特に下記式(c8)で表される構造が好ましい。
【0254】
【化38】
【0255】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0256】
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なアニオンとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0257】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
【0258】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素原子数1以上20以下の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素原子数1以上10以下であることが好ましい。特に、分岐状や環状のアルキル基は拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0259】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素原子数6以上20以下のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。好ましいアリール基の具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0260】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0261】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記式(c9)で表されるものが挙げられる。
【0262】
【化39】
【0263】
上記式(c9)において、R20cは、下記式(c10)、(c11)、及び(c12)で表される基である。
【0264】
【化40】
【0265】
上記式(c10)中、xは1以上4以下の整数を表す。また、上記式(c11)中、R21cは、水素原子、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1以上3以下の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0266】
また、アニオン部としては、下記式(c13)、(c14)で表される窒素を含有するアニオン部を用いることもできる。
【0267】
【化41】
【0268】
上記式(c13)、(c14)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素原子数は2以上6以下であり、好ましくは3以上5以下、最も好ましくは炭素原子数3である。また、Y、Zは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素原子数は1以上10以下であり、好ましくは1以上7以下、より好ましくは1以上3以下である。
【0269】
のアルキレン基の炭素原子数、又はY、Zのアルキル基の炭素原子数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0270】
また、Xのアルキレン基又はY、Zのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは90%以上100%以下であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0271】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましい化合物としては、下記式(c15)、(c16)で表される化合物が挙げられる。
【0272】
【化42】
【0273】
また、酸発生剤(C)における第五の態様としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N-メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-フェニルスルホニルオキシマレイミド、N-メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチル-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチルチオ-1,8-ナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α-メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0274】
酸発生剤(C)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸発生剤(C)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分質量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%がより好ましい。酸発生剤(C)の使用量を上記の範囲とすることにより、良好な感度を備え、均一な溶液であって、保存安定性に優れる感光性樹脂組成物を調製しやすい。
【0275】
<架橋剤(D)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)との間の架橋反応を触媒的に促進させる架橋剤(D)を含むのが好ましい。架橋剤(D)は、前述の架橋反応を促進させ得る化合物であれば特に限定されない。好ましい架橋剤(D)としては、フェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
なお、基材ポリマー(A)、多官能ビニルエーテルモノマー(B)、酸発生剤(C)、及び感光剤(G)等の、架橋剤(D)以外の成分がフェノール性水酸基を有する場合がある。この場合、ポジ型感光性樹脂組成物が架橋剤(D)を含んでいなくても、基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)との間の架橋反応が促進される。
また、後述する含硫黄化合物(E)も、基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)との間の架橋反応を触媒的に促進させるを有する。
以下、フェノール性水酸基を有する化合物について説明する。
【0276】
フェノール性水酸基を有する化合物は、1以上のフェノール性水酸基を有する化合物である。以下、フェノール性水酸基を有する化合物としてのフェノール類について説明する。
【0277】
フェノール類は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。フェノール類は、フェノール性水酸基を有する限りにおいて脂肪族基を有してもよい。フェノール類が1分子中に有するフェノール性水酸基の数は特に限定されない。フェノール類が1分子中に有するフェノール性水酸基の数は、例えば、1以上6以下であり、1以上4以下が好ましい。
【0278】
フェノール類の好適な具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、p-フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸メチル及び没食子酸エチル等の没食子酸エステル、α-ナフトール、並びにβ-ナフトール等が挙げられる。
【0279】
フェノール性水酸基を有する化合物の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェノール性水酸基を有する化合物の使用量は、基材ポリマー(A)と、多官能ビニルエーテルモノマー(B)との架橋反応の促進効果が良好であることから、上記基材ポリマー(A)の質量に対して、10質量ppm以上20質量%以下であり、100質量ppm以上15質量%以下が好ましく、200質量ppm以上10質量%以下が特に好ましい。
【0280】
<含硫黄化合物(E)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、含硫黄化合物(E)を含むのが好ましい。含硫黄化合物(E)は、金属に対して配位し得る硫黄原子を含む化合物である。なお、2以上の互変異性体を生じ得る化合物に関して、少なくとも1つの互変異性体が金属層を構成する金属に対して配位する硫黄原子を含む場合、当該化合物は含硫黄化合物に該当する。
Cu等の金属からなる表面上に、めっき用の鋳型として用いられるレジストパターンを形成する場合、フッティング等の断面形状の不具合が生じやすい。しかし、ポジ型感光性樹脂組成物が含硫黄化合物(E)を含む場合、基板における金属からなる表面上にレジストパターンを形成する場合でも、フッティング等の断面形状の不具合の発生を抑制しやすい。
【0281】
金属に対して配位し得る硫黄原子は、例えば、メルカプト基(-SH)、チオカルボキシ基(-CO-SH)、ジチオカルボキシ基(-CS-SH)、及びチオカルボニル基(-CS-)等として含硫黄化合物に含まれる。
金属に対して配位しやすく、フッティングの抑制効果に優れることから、含硫黄化合物がメルカプト基を有するのが好ましい。
【0282】
メルカプト基を有する含硫黄化合物の好ましい例としては、下記式(e1)で表される化合物が挙げられる。
【化43】
(式中、Re1及びRe2は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Re3は単結合又はアルキレン基を示し、Re4は炭素以外の原子を含んでいてもよいu価の脂肪族基を示し、uは2以上4以下の整数を示す。)
【0283】
e1及びRe2がアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。Re1及びRe2がアルキル基である場合、当該アルキル基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該アルキル基の炭素原子数としては、1以上4以下が好ましく、1又は2であるのが特に好ましく、1であるのが最も好ましい。Re1とRe2との組み合わせとしては、一方が水素原子であり他方がアルキル基であるのが好ましく、一方が水素原子であり他方がメチル基であるのが特に好ましい。
【0284】
e3がアルキレン基である場合、当該アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。Re3がアルキレン基である場合、当該アルキレン基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該アルキレン基の炭素原子数としては、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1又は2であるのが特に好ましく、1であるのが最も好ましい。
【0285】
e4は炭素以外の原子を含んでいてもよい2価以上4価以下の脂肪族基である。Re4が含んでいてもよい炭素以外の原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。Re4である脂肪族基の構造は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよく、これらの構造を組み合わせた構造であってもよい。
【0286】
式(e1)で表される化合物の中では、下記式(e2)で表される化合物がより好ましい。
【化44】
(式(e2)中、Re4及びuは、式(e1)と同意である。)
【0287】
上記式(e2)で表される化合物の中では、下記の化合物が好ましい。
【化45】
【0288】
下記式(e3-L1)~(e3-L7)で表される化合物も、メルカプト基を有する含硫黄化合物の好ましい例として挙げられる。
【化46】
(式(e3-L1)~(e3-L7)中、R’、s”、A”、及びrは、アクリル樹脂(B3)について前述した、式(a-L1)~(a-L7)と同様である。)
【0289】
上記式(e3-L1)~(e3-L7)で表されるメルカプト化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化47】
【0290】
下記式(e3-1)~(e3-4)で表される化合物も、メルカプト基を有する含硫黄化合物の好ましい例として挙げられる。
【化48】
(式(e3-1)~(e3-4)中の略号の定義については、アクリル樹脂(A3)に関して前述した、式(3-1)~(3-4)について前述した通りである。)
【0291】
上記式(e3-1)~(e3-4)で表されるメルカプト化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0292】
【化49】
【0293】
また、メルカプト基を有する化合物の好適な例として、下記式(e4)で表される化合物が挙げられる。
【化50】
(式(e4)において、Re5は、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキルチオ基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上4以下のメルカプトアルキル基、炭素数1以上4以下のハロゲン化アルキル基及びハロゲン原子からなる群より選択される基であり、k1は0以上3以下の整数であり、k0は0以上3以下の整数であり、k1が2又は3である場合、Re5は同一であっても異なっていてもよい。)
【0294】
e5が炭素原子数1以上4以下の水酸基を有していてもよいアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、ヒドロキシメチル基、及びエチル基が好ましい。
【0295】
e5が炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0296】
e5が炭素原子数1以上4以下のアルキルチオ基である場合の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びtert-ブチルチオ基が挙げられる。これらのアルキルチオ基の中では、メチルチオ基、及びエチルチオ基が好ましく、メチルチオ基がより好ましい。
【0297】
e5が炭素原子数1以上4以下のヒドロキシアルキル基である場合の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキル基の中では、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、及び1-ヒドロキシエチル基が好ましく、ヒドロキシメチル基がより好ましい。
【0298】
e5が炭素原子数1以上4以下のメルカプトアルキル基である場合の具体例としては、メルカプトメチル基、2-メルカプトエチル基、1-メルカプトエチル基、3-メルカプト-n-プロピル基、及び4-メルカプト-n-ブチル基等が挙げられる。これらのメルカプトアルキル基の中では、メルカプトメチル基、2-メルカプトエチル基、及び1-メルカプトエチル基が好ましく、メルカプトメチル基がより好ましい。
【0299】
e5が炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。Re5が炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基である場合の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1-クロロ-2-フルオロエチル基、3-クロロ-n-プロピル基、3-ブロモ-n-プロピル基、3-フルオロ-n-プロピル基、及び4-クロロ-n-ブチル基等が挙げられる。これらのハロゲン化アルキル基の中では、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、及びトリフルオロメチル基が好ましく、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、及びトリフルオロメチル基がより好ましい。
【0300】
e5がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0301】
式(e4)において、k1は0以上3以下の整数であり、1がより好ましい。k1が2又は3である場合、複数のRe5は同一であっても異なっていてもよい。
【0302】
式(e4)で表される化合物において、ベンゼン環上のRe5の置換位置は特に限定されない。ベンゼン環上のRe5の置換位置は-(CHk0-SHの結合位置に対してメタ位又はパラ位であるのが好ましい。
【0303】
式(e4)で表される化合物としては、Re5として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を、少なくとも1つ有する化合物が好ましく、Re5として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を1つ有する化合物がより好ましい。式(e4)で表される化合物が、Re5として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を1つ有する場合、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はメルカプトアルキル基のベンゼン環上の置換位置は、-(CHk0-SHの結合位置に対してメタ位又はパラ位であるのが好ましく、パラ位であるのがより好ましい。
【0304】
式(e4)において、k0は0以上3以下の整数である。化合物の調製や、入手が容易であることからk0は0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0305】
式(e4)で表される化合物の具体例としては、p-メルカプトフェノール、p-チオクレゾール、m-チオクレゾール、4-(メチルチオ)ベンゼンチオール、4-メトキシベンゼンチオール、3-メトキシベンゼンチオール、4-エトキシベンゼンチオール、4-イソプロピルオキシベンゼンチオール、4-tert-ブトキシベンゼンチオール、3,4-ジメトキシベンゼンチオール、3,4,5-トリメトキシベンゼンチオール、4-エチルベンゼンチオール、4-イソプロピルベンゼンチオール、4-n-ブチルベンゼンチオール、4-tert-ブチルベンゼンチオール、3-エチルベンゼンチオール、3-イソプロピルベンゼンチオール、3-n-ブチルベンゼンチオール、3-tert-ブチルベンゼンチオール、3,5-ジメチルベンゼンチオール、3,4-ジメチルベンゼンチオール、3-tert-ブチル-4-メチルベンゼンチオール、3-tert-4-メチルベンゼンチオール、3-tert-ブチル-5-メチルベンゼンチオール、4-tert-ブチル-3-メチルベンゼンチオール、4-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプトベンジルアルコール、4-(メルカプトメチル)フェノール、3-(メルカプトメチル)フェノール、1,4-ジ(メルカプトメチル)フェノール、1,3-ジ(メルカプトメチル)フェノール、4-フルオロベンゼンチオール、3-フルオロベンゼンチオール、4-クロロベンゼンチオール、3-クロロベンゼンチオール、4-ブロモベンゼンチオール、4-ヨードベンゼンチオール、3-ブロモベンゼンチオール、3,4-ジクロロベンゼンチオール、3,5-ジクロロベンゼンチオール、3,4-ジフルオロベンゼンチオール、3,5-ジフルオロベンゼンチオール、4-メルカプトカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メルカプトフェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシベンゼンチオール、4-ブロモ-3-メチルベンゼンチオール、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、3-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-メチルチオベンゼンチオール、4-エチルチオベンゼンチオール、4-n-ブチルチオベンゼンチオール、及び4-tert-ブチルチオベンゼンチオール等が挙げられる。
【0306】
また、メルカプト基を有する化合物の好適な例として、下記式(e5)で表される化合物が挙げられる。
【0307】
【化51】
(式(e5)中、Aは1以上の置換基を有してもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい、(m0+m1)価の脂肪族環式基であり、Re10は、水素原子、炭化水素基、又は酸解離性基であり、m1は1以上4以下の整数であり、m0が1又は2であり、Re10の少なくとも1つは、水素原子、又は酸解離性基である。)
【0308】
上記式(e5)で表されるメルカプト化合物としては、下記式(e5-1):
【化52】
(式(e5-1)中、Re11は、水素原子、炭化水素基、又は酸解離性基であり、Re12、及びRe16は、それぞれ独立に水素原子、又はアルキル基であるか、又はRe12とRe16とが、互いに結合して-O-、-S-、-CH-、及び-C(CH-からなる群より選択される2価基を形成してもよく、Re13、Re14、Re15、Re17は、それぞれ独立に水素原子、又はメルカプト基であり、Re19は、水素原子、炭化水素基、又は酸解離性基であり、Re11、及びRe19の少なくとも一方は、水素原子、又は酸解離性基であり、Re13、Re14、Re15、及びRe17の少なくとも1つはメルカプト基である。)
で表されるメルカプト化合物が好ましい。
【0309】
上記式(e5-1)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0310】
【化53】
【化54】
【0311】
またメルカプト基を有する含硫黄化合物としては、メルカプト基で置換された含窒素芳香族複素環を含む化合物、及びメルカプト基で置換された含窒素芳香族複素環を含む化合物の互変異性体が挙げられる。
含窒素芳香族複素環の好適な具体例としては、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、及び1,8-ナフチリジンが挙げられる。
【0312】
含硫黄化合物として好適な含窒素複素環化合物、及び含窒素複素環化合物の互変異性体の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化55】
【0313】
ポジ型感光性樹脂組成物が含硫黄化合物(E)を含む場合、その使用量は、基材ポリマー(A)100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.02質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
【0314】
<酸拡散制御剤(F)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、鋳型として使用されるレジストパターンの形状や、ポジ型感光性樹脂膜の引き置き安定性等の向上のため、さらに酸拡散制御剤(F)を含有することが好ましい。酸拡散制御剤(F)としては、含窒素化合物(F1)が好ましく、さらに必要に応じて、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(F2)を含有させることができる。
【0315】
[含窒素化合物(F1)]
含窒素化合物(F1)としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3,-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、8-オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-S-トリアジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びピリジンや、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、及び2,6-ジフェニルピリジン、2,4,6-トリフェニルピリジン等の置換ピリジン類等を挙げることができる。また、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物等のヒンダードアミン化合物も、含窒素化合物(E1)として用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0316】
含窒素化合物(F1)は、上記基材ポリマー(A)の質量と、多官能ビニルエーテル化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、通常0質量部以上5質量部以下の範囲で用いられるのが好ましく、0質量部以上3質量部以下の範囲で用いられるのが特に好ましい。
【0317】
[有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(F2)]
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(F2)のうち、有機カルボン酸としては、具体的には、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適であり、特にサリチル酸が好ましい。
【0318】
リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0319】
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(F2)は、上記基材ポリマー(A)の質量と、多官能ビニルエーテル化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、通常0質量部以上5質量部以下の範囲で用いられるのが好ましく、0質量部以上3質量部以下の範囲で用いられるのが特に好ましい。
【0320】
また、塩を形成させて安定させるために、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(F2)は、上記含窒素化合物(F1)と同等量を用いることが好ましい。
【0321】
<感光剤(G)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、前述の感光剤(G)を含んでいてもよい。
【0322】
<有機溶剤(S)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性の調整の目的等で有機溶剤(S)を含有するのが好ましい。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりポジ型の感光性樹脂組成物に使用されている有機溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0323】
有機溶剤(S)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0324】
有機溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポジ型感光性樹脂組成物を、スピンコート法等により得られる感光性樹脂層の膜厚が10μm以上となるような厚膜用途で用いる場合、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは20質量部以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下となる範囲で、有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0325】
<その他の成分>
ポジ型感光性樹脂組成物は、可塑性を向上させるため、さらにポリビニル樹脂を含有していてもよい。ポリビニル樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリビニル樹脂は、ガラス転移点の低さの点から、好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
【0326】
また、ポジ型感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成される鋳型と金属基板との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。
【0327】
ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0328】
シリコーン系界面活性剤としては、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0329】
ポジ型感光性樹脂組成物は、現像液に対する溶解性の微調整を行うため、酸、酸無水物、又は高沸点溶媒をさらに含有していてもよい。
【0330】
酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
【0331】
また、高沸点溶媒の具体例としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセタート等を挙げることができる。
【0332】
ポジ型感光性樹脂組成物は、感度を向上させるため、増感剤をさらに含有していてもよい。
【0333】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
感光性樹脂組成物は、上記の各成分を通常の方法で混合、撹拌して調製される。上記の各成分を、混合、撹拌する際に使用できる装置としては、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等が挙げられる。上記の各成分を均一に混合した後に、得られた混合物を、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0334】
≪感光性ドライフィルム≫
感光性ドライフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された感光性樹脂層とを有し、感光性樹脂層が前述の感光性樹脂組成物からなる。
【0335】
基材フィルムとしては、光透過性を有するフィルムが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられる。光透過性及び破断強度のバランスに優れる点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0336】
基材フィルム上に、前述の感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成することにより、感光性ドライフィルムが製造される。
基材フィルム上に感光性樹脂層を形成するに際しては、アプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター等を用いて、基材フィルム上に乾燥後の膜厚が好ましくは0.5μm以上300μm以下、より好ましくは1μm以上300μm以下、特に好ましくは3μm以上100μm以下となるように感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。
【0337】
感光性ドライフィルムは、感光性樹脂層の上にさらに保護フィルムを有していてもよい。この保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられる。
【0338】
≪パターン化されたレジスト膜、及び鋳型付き基板の製造方法≫
上記説明した感光性樹脂組成物を用いて、金属表面を有する基板の金属表面上に、パターン化されたレジスト膜を形成する方法は特に限定されない。かかるパターン化されたレジスト膜は、めっき造形物を形成するための鋳型として好適に用いられる。
好適な方法としては、
金属表面を有する基板の金属表面上に、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する積層工程と、
感光性樹脂層に、位置選択的に活性光線又は放射線を照射して露光する露光工程と、
露光後の感光性樹脂層を現像する現像工程と、
を含む、パターン化されたレジスト膜が挙げられる。
めっき造形物を形成するための鋳型を備える鋳型付基板の製造方法は、現像工程において、現像によりめっき造形物を形成するための鋳型を作成することの他は、パターン化されたレジスト膜の製造方法と同様である。
【0339】
感光性樹脂層を積層する基板としては、特に限定されず、従来公知の基板を用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成された基板等を例示することができる。該基板としては、金属表面を有する基板が用いられるが、金属表面を構成する金属種としては、銅、金、アルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
【0340】
感光性樹脂層は、例えば以下のようにして、基板上に積層される。すなわち、液状の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の膜厚の感光性樹脂層を形成する。感光性樹脂層の厚さは、鋳型となるレジストパターンを所望の膜厚で形成できる限り特に限定されない。感光性樹脂層の膜厚は特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、0.5μm以上300μm以下がより好ましく、1μm以上150μm以下が特に好ましく、3μm以上100μm以下が最も好ましい。
【0341】
基板上への感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。感光性樹脂層に対してはプレベークを行うのが好ましい。プレベーク条件は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
【0342】
上記のようにして形成された感光性樹脂層に対して、所定のパターンのマスクを介して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線が選択的に照射(露光)される。
【0343】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、感光性樹脂組成物の組成や感光性樹脂層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm以上10000mJ/cm以下である。また、放射線には、酸を発生させるために、酸発生剤(A)を活性化させる光線が含まれる。
【0344】
露光後は、公知の方法を用いて感光性樹脂層を加熱することにより酸の拡散を促進させて、感光性樹脂膜中の露光された部分において、感光性樹脂層のアルカリ溶解性を変化させる。
【0345】
次いで、露光された感光性樹脂層を、従来知られる方法に従って現像し、不溶な部分を溶解、除去することにより、所定のレジストパターン、又はめっき造形物を形成するための鋳型が形成される。この際、現像液としては、アルカリ性水溶液が使用される。
【0346】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0347】
現像時間は、感光性樹脂組成物の組成や感光性樹脂層の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0348】
現像後は、流水洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。このようにして、金属表面を有する基板の金属表面上に、所望する形状にパターン化されたレジストパターンが形成される。また、このようにして、金属表面を有する基板の金属表面上に、鋳型となるレジストパターンを備える鋳型付き基板を製造できる。
【0349】
≪めっき造形物の製造方法≫
上記の方法で製造される鋳型付き基板にめっきを施すことにより、めっき造形物が製造される。具体的には、上記の方法により形成された鋳型付き基板の鋳型中の非レジスト部(現像液で除去された部分)に、めっきにより金属等の導体を埋め込むことにより、例えば、バンプやメタルポスト等の接続端子のようなめっき造形物を形成することができる。なお、めっき処理方法は特に制限されず、従来から公知の各種方法を採用することができる。めっき液としては、特にハンダめっき、銅めっき、金めっき、ニッケルめっき液が好適に用いられる。残っている鋳型は、最後に、常法に従って剥離液等を用いて除去される。
【実施例
【0350】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0351】
〔調製例1〕
(樹脂(A)の合成)
冷却管、窒素導入管を備えた三ツ口フラスコにメトキシブチルアセテート91.8gを加え、80℃に加熱した。
別途、エチルシクロヘキシルアクリレート(ECHA)70.0gと、メタクリル酸(MA)10.0gと、n-ブチルアクリレート(n-BA)14.0gと、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)46.0gと、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)60.0gと、開始剤V-601HP(富士フィルム和光純薬製)24.9gを、メトキシブチルアセテート252gに溶解させ滴下溶液を調製した。
調製した滴下溶液を3時間かけて三ツ口フラスコに滴下した。滴下完了後、80℃を維持したまま3時間撹拌した。メタノールで再沈殿することで、101.3gの樹脂P1を得た。これをメトキシブチルアセテートに溶解させることで、固形成分濃度70%の樹脂P1の溶液を得た。
得られた樹脂P1の質量平均分子量はMw10600であった。
【0352】
〔調製例2~8〕
モノマーの組成を下表1に記載の組成に変更することの他は、調製例1と同様にして、下記表1に記載の樹脂P2~P8を合成した。
【0353】
【表1】
n-BMA:ブチルメタクリレート
GBLA:γ-ブチロラクトンメタクリレート
【0354】
〔調製例9〕
ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸10g、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩24.35g、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン0.1g、及びエチレングリコールモノビニルエーテル10gを、塩化メチレン40g中で窒素雰囲気下に室温で24時間撹拌した。次いで、反応液を純水50gで5回洗浄した後、洗浄された反応液から溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物を、塩化メチレンで再結晶して、多官能ビニルエーテルモノマー(B)である下記VE2を4.38g得た。
VE2のH-NMRの測定結果は以下の通りであった。H-NMR:カチオンδ(ppm)=8.08(4H,d),7.92(4H,d),6.57(2H,dd),4.53(4H,t),4.28(2H,d),4.04(6H,m)
【化56】
【0355】
〔調製例10〕
ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸10gを、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸10gと等モルのスチルベン-4,4’-ジカルボン酸に変えることの他は、調製例9と同様にして、多官能ビニルエーテルモノマー(B)である下記VE3を得た。
VE3のH-NMRの測定結果は以下の通りであった。H-NMR:カチオンδ(ppm)=7.98(4H,d),7.75(4H,d),7.50(2H,s),6.57(2H,dd),4.50(4H,t),4.24(2H,d),4.04(6H,m)
【化57】
【0356】
〔実施例1~14、及び比較例1~16〕
実施例、及び比較例において、多官能ビニルエーテルモノマー(B)((B)成分)として、下記VE1~VE4を用いた。VE1としては、Jounal of Materials Chemistry, Volume 19, Issue 24, Pages 4085-4087に記載の方法により合成された下記化合物を用いた。
【化58】
【0357】
実施例、及び比較例において、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)((C)成分)として、下記のPAG1~PAG4を用いた。
【化59】
【0358】
実施例、及び比較例において、架橋剤(D)((D)成分)として、フェノール性水酸基を有する化合物であるヒドロキノンモノメチルエーテルを用いた。
【0359】
実施例、及び比較例において、含硫黄化合物(E)として下記の化合物を用いた。
【化60】
【0360】
実施例、及び比較例において、酸拡散制御剤(F)((F)成分)として、下記E1~E4を用いた。
E1:トリ-n-ペンチルアミン
E2:テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート
E3:2,6-ジフェニルピリジン
E4:2,4,6-トリフェニルピリジン
【0361】
表2に記載の種類の基材ポリマー(A)100質量部と、表2に記載の種類及び量の多官能ビニルエーテルモノマー(B)と、表2に記載の種類及び量の酸発生剤(C)と、表2に記載の量の架橋剤(D)としてのヒドロキノンモノメチルエーテルと、表2に記載の量の含硫黄化合物(E)と、表2に記載の種類及び量の酸拡散制御剤(F)と、界面活性剤(BYK310、ビックケミー社製)0.05質量部とを、3-メトキシブチルアセテートに、固形分濃度が60質量%であるように均一に混合、溶解させて各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を得た。
【0362】
得られた各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従い、クラック耐性、及びめっき耐性を評価した。これらの評価結果を表2に記す。
【0363】
<クラック耐性評価>
各実施例、及び比較例の感光性樹脂組成物を、直径8インチの銅基板上に塗布し、膜厚55μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、感光性樹脂層を140℃で5分間プリベークした。プリベーク後、30μm径のスクェアパターンのマスクと露光装置Prisma GHI(ウルトラテック社製)とを用いて、所定のサイズのパターン(レジストパターンのトップのCDが35μm)が形成される露光量にて、ghi線でパターン露光した。次いで、基板をホットプレート上に載置して100℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液(現像液、NMD-3、東京応化工業株式会社製)を露光された感光性樹脂層に滴下した後に23℃で60秒間静置する操作を、計4回繰り返して行った。その後、レジストパターン表面を流水洗浄した後に、窒素ブローしてレジストパターンを得た。このレジストパターンを走査型電子顕微鏡に観察して、クラックの有無を観察した。
クラックが観察された場合を×と判定し、クラックが観察されなかった場合を○と判定した。
【0364】
<めっき耐性評価>
クラック耐性評価において形成したレジストパターンを、硫酸銅めっき液に、28℃で1時間浸漬した後、レジストパターンのトップのCDを測定して
浸漬後のレジストパターンのトップのCDの、浸漬前のレジストパターンのトップのCDに対する変動が±5%以上である場合を×と判定し、前述の変動が±5%未満である場合を○と判定した。
【0365】
【表2】
【0366】
表2より、カルボキシ基、及び/又は水酸基を有する基材ポリマー(A)とともに、式(B1)で表される所定の構造の及び多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含有する実施例の感光性樹脂組成物であれば、クラックの発生を抑制しつつ、めっき条件下でめっき液に接触しても形状が変化しにくいレジストパターンを形成できることが分かる。
他方、比較例からは、感光性樹脂組成物が、カルボキシ基、及び/又は水酸基を有する基材ポリマー(A)を含んでいても、多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含まないか、式(B1)で表される構造に該当しない構造の多官能ビニルエーテルモノマー(B)を含む場合、クラック耐性、及びめっき耐性がともに優れる感光性樹脂組成物が得られないことが分かる。