(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20230830BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20230830BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230830BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230830BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20230830BHJP
C08G 2/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08L59/00
C08L83/04
C08K5/13
C08K7/14
C08K5/3492
C08G2/00
(21)【出願番号】P 2019158191
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】喜来 直裕
(72)【発明者】
【氏名】増田 栄次
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-011117(JP,A)
【文献】特開2000-230026(JP,A)
【文献】特開2004-359791(JP,A)
【文献】特開2009-167425(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169438(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102604017(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/00- 59/04
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 2/00- 2/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01~1.0質量部と、
(C)ガラス繊維1~100質量部と、
(D)(a)トリオキサンと、
(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と、
(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを、
重合反応させた共重合体0.1~20質量部と、
を含有するポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01~1.0質量部と、
(C)ガラス繊維1~100質量部と、
(D)(a)トリオキサンと、
(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と、
(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを、
重合反応させた共重合体0.1~20質量部と、
(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体を(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.001~3質量部と、
を含有するポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)化合物が、
エポキシ基および環状アセタール基から選ばれる少なくとも一種のトリオキサン共重合性官能基ならびにアルコキシシリル基を有し、該トリオキサン共重合性官能基と該アルコキシシリル基は、炭素-炭素結合またはエーテル結合から選択される結合連鎖のみによって結合している化合物、
である請求項1
または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記(c)化合物が、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2
に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)化合物が、
下記式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上のシラン化合物の縮合物であり、アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンである、
請求項1
または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
R
1
nSi(OR
2)
4-n (1)
(式(1)においてR
1は1価炭化水素基を表し、R
2は炭素数4以下のアルキル基を表す。nは0~3の整数である。)
【請求項6】
前記式(1)におけるR
1がメチル基またはフェニル基から選ばれる少なくとも1種である、
請求項
5に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマーである、請求項1~6のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1~1.0質量部と、
(C)ガラス繊維1~100質量部と、
(D)(a)トリオキサンと
(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と
(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを、
重合反応させた共重合体 0.1~20質量部と、
を含有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、
前記共重合体(D)が、カチオン重合触媒
として、パーフルオロアルカンスルホン酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸から選ばれる1種以上を使用して得られるポリアセタール共重合体であるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性の優れたポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂の機械強度を向上させるため、ガラス繊維を配合することが従来から知られている。しかしながら、ポリアセタール樹脂は化学的な活性に乏しいため、単にポリアセタール樹脂にガラス繊維を配合して溶融混練しても十分な補強効果が生じ難い。
【0003】
この点を改良するために、ガラス系無機充填材をエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等で表面処理したものを使用することや、これらの化合物をガラス系無機充填材と併用して配合することが提案されている(特許文献1、2および3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-91551号公報
【文献】特開昭61-236851号公報
【文献】特開2018-100355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2および3の如く、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等で表面処理したガラス系無機充填材をポリアセタール樹脂に配合する方法や、これらの化合物をガラス系無機充填材と併用してポリアセタール樹脂に配合する方法では、ポリアセタール樹脂の機械強度、特に引張強度および曲げ強度を十分に向上させることはできず、未だ満足できるものではなかった。
【0006】
このように、従来から公知の方法ではポリアセタール樹脂に高度の機械強度を付与することは困難なものであった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決し、機械特性が一段と優れたポリアセタール樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる課題を解決し上記の如き優れた特性を有するポリアセタール樹脂組成物を得るべく鋭意検討を重ねた結果、特定の組成によってかかる課題が顕著に改善されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01~1.0質量部と、
(C)ガラス繊維1~100質量部と、
(D)(a)トリオキサンと、
(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と、
(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを、
重合反応させた共重合体0.1~20質量部と、
を含有するポリアセタール樹脂組成物。
2. 前記(c)化合物が、
エポキシ基および環状アセタール基から選ばれる少なくとも一種のトリオキサン共重合性官能基ならびにアルコキシシリル基を有し、該トリオキサン共重合性官能基と該アルコキシシリル基は、炭素-炭素結合またはエーテル結合から選択される結合連鎖のみによって結合している化合物、
である前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
3. 前記(c)化合物が、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種である、前記1または2記載のポリアセタール樹脂組成物。
4. 前記(c)化合物が、
下記式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上のシラン化合物の縮合物であり、アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンである、前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
R1
nSi(OR2)4-n (1)
(式(1)においてR1は1価炭化水素基を表し、R2は炭素数4以下のアルキル基を表す。nは0~3の整数である。)
5. 前記式(1)におけるR1がメチル基またはフェニル基から選ばれる少なくとも1種である、前記4記載のポリアセタール樹脂組成物。
6. さらに(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体を(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.001~3質量部を含有する、前記1~5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
7. 前記(A)ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマーである、前記1~6のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0010】
8. 少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1~1.0質量部と、
(C)ガラス繊維1~100質量部と、
(D)(a)トリオキサンと
(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と
(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを、
重合反応させた共重合体 0.1~20質量部と、
を含有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、
該共重合体(D)が、カチオン重合触媒を使用して得られるポリアセタール共重合体であるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
9. 前記カチオン重合触媒が、パーフルオロアルカンスルホン酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸から選ばれる1種以上である前記8に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一段と優れた機械特性を備えたポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、少なくとも(A)ポリアセタール樹脂と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、(C)ガラス繊維と、(D)(a)トリオキサン、(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物および(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物とを重合反応させたポリアセタール共重合体と、を含有することを特徴とする。
【0014】
<(A)ポリアセタール樹脂>
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物の構成について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物の基体である(A)ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン単位(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、アセタールホモポリマー(例えば米国デュポン社製、商品名「デルリン」等)、オキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)製、商品名「ジュラコン」等)が含まれる。
【0015】
アセタールコポリマーにおいて、コモノマー単位には炭素数2~6程度(好ましくは、炭素数2~4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(-CH2CH2O-)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基等)が含まれる。
【0016】
また、コモノマー単位の含有量は、樹脂の結晶性と化学安定性を大幅に損なわない程度の量、例えば、ポリアセタール重合体の構成単位に占める割合として、一般的には0.01~20モル%、好ましくは、0.03~10モル%、更に好ましくは、0.1~7モル%程度の範囲から選択できる。
【0017】
アセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマー等であってよい。アセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等であってよい。
【0018】
また、このような(A)ポリアセタール樹脂の重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく溶融成形可能であればよい。本発明において配合する(A)ポリアセタール樹脂としては、その熱安定性等の点で特にアセタールコポリマーが好ましい。
【0019】
≪(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤≫
本発明で使用可能な(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、特に限定されるものでなく、例えば、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ジヒドロシンナムアミド)、N,N’-エチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-テトラメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-エチレンビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート等が例示される。
【0020】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。
【0021】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上1質量部以下であり、好ましくは0.02質量部以上0.5質量部以下である。
【0022】
(B)酸化防止剤を上記範囲とすることで、十分な酸化防止特性が得られ、成形加工時等の高温での短期的な酸化劣化や常温での長期的な使用下での酸化劣化に対する(A)ポリアセタール樹脂の安定性も十分なものになり好ましい。
【0023】
<(C)ガラス繊維>
次に本発明で用いられる(C)ガラス繊維はその単繊維直径(短径)が、特に限定されるものではないが、5μm以上15μm以下であることが、機械特性の点から特に好ましい。
なお、本明細書において、ガラス繊維の単繊維直径は、JIS R 3420に準じて測定される25個のフィラメント断面の直径の平均値をいうものとする。
【0024】
平均繊維長(長径)は、1~30mmのものを適宜選択することができ、1~10mmのものが好ましい。なお、本明細書において、平均繊維長は、任意に選択したガラス繊維100個の長さを測定し平均したものである。
チョップトストランドは、数十~数千本のガラス繊維を束ねて所定の長さに切断し製造するため、ガラス繊維の長径が揃っている点で、好ましい。
【0025】
本発明において使用される(C)ガラス繊維は、その表面処理の有無を問うものではないが、表面処理されていないガラス繊維では本発明の目的とする効果が安定して生じない場合がある。諸特性を安定して達成するためには、カップリング剤と結束剤とで表面処理されたものを用いるのが好ましい。
【0026】
カップリング剤としては、チタネート系カップリング剤やシラン系カップリング剤が使用可能である。
チタネート系カップリング剤としては、例えばチタニウム-i-プロポキシオクチレングリコレート、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン等が挙げられる。
【0027】
また、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0028】
ビニルアルコキシシランとしては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
エポキシアルコキシシランとしては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0029】
アミノアルコキシシランとしては、例えばγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
メルカプトアルコキシシランとしては、例えばγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アリルアルコキシシランとしては、例えばγ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アリルチオプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0031】
結束剤としては、ポリマーバインダー、接着促進剤、他の助剤などを使用しているものが好適に使用される。ポリマーバインダーとしては、一般に有機系の材料、例えば水分散性/水溶性の酢酸ポリビニル、ポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、ポリアクリレートまたはポリオレフィン樹脂、それらの混合物など、従来公知のものが好適に使用される。
【0032】
本発明において、(C)ガラス繊維の含有量は、機械特性の点から、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して1~100質量部、好ましくは5~90質量部、特に好ましくは10~70質量部である。
【0033】
<(D)ポリアセタール共重合体>
本発明の(D)ポリアセタール共重合体は、少なくとも(a)トリオキサンと、(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と、(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物と、を重合反応させたポリアセタール共重合体であることを特徴とする。
【0034】
≪(a)トリオキサン≫
本発明において用いられる(a)トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して重合反応に用いられる。
【0035】
≪(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物≫
本発明において、(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物をコモノマーとして用いることが可能である。
【0036】
本発明の炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物とは、ポリアセタール共重合体の製造においてコモノマーとして一般に使用される化合物である。具体的には、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキソカン、1,4-ブタンジオールホルマール等が挙げられる。
【0037】
本発明において、(b)成分は、(a)トリオキサン100質量部に対して0.01~20質量部の範囲となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.05~5質量部の範囲である。
【0038】
≪(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物≫
本発明で使用する(c)ケイ素に結合したアルコキシ基を含むケイ素化合物は、分子中にケイ素と結合したアルコキシ基を含む化合物であることを特徴とし、中でも以下に示す二つの化合物(c1)(c2)が好ましい。
【0039】
≪(c1)エポキシ基および環状アセタール基から選ばれる少なくとも一種のトリオキサン共重合性官能基ならびにアルコキシシリル基を有し、該トリオキサン共重合性官能基と該アルコキシシリル基は、炭素-炭素結合またはエーテル結合から選択される結合連鎖のみによって結合している化合物≫
【0040】
本発明で使用する(c1)成分は、エポキシ基および環状アセタール基から選ばれる少なくとも一種のトリオキサン共重合性官能基ならびにアルコキシシリル基を有し、該トリオキサン共重合性官能基と該アルコキシシリル基は、炭素-炭素結合またはエーテル結合から選択される結合連鎖のみによって結合している化合物であることを特徴とする。
【0041】
本発明の(c1)成分において、トリオキサン共重合性官能基とアルコキシシリル基は、炭素-炭素結合またはエーテル結合から選択される結合連鎖のみによって結合している。
【0042】
すなわちトリオキサン共重合官能基とアルコキシシリル基の間には、炭素鎖またはエーテル結合だけが存在することを意味する。その距離は、炭素数として2~20であることが好ましく、エーテル結合の数は、0~5であることが好ましく、0~2であることがさらに好ましい。
【0043】
(c1)成分は、シランカップリング剤として容易に入手することができる。
下記に好ましい化合物を例示する。なお、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。これらのうち、最も好ましい化合物は重合収率の観点から、c1-1(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン)またはc1-2(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン)である。
【0044】
【0045】
【0046】
≪(c2)式(1)で表されるシラン化合物から選ばれる1種以上のシラン化合物を縮合させることで得られ、アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン≫
R1
nSi(OR2)4-n (1)
(式(1)においてR1は1価炭化水素基を表し、R2は炭素数4以下のアルキル基を表す。nは0~3の整数である。)
【0047】
式(1)で表されるシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
本発明で使用する(c2)オルガノポリシロキサン成分は、式(1)で表されるシラン化合物から選ばれる1種以上のシラン化合物を公知の縮合反応触媒、具体的には酸触媒、塩基触媒、有機金属化合物触媒などを用いて、縮合させることにより得られる。
【0049】
具体的には、例えば、特許2904317号公報や同3389338号公報等に記載の方法で(アルコキシ)シラン化合物を部分加水分解縮合し、本発明の効果を生ずる程度のアルコキシ基を含有するものである。
【0050】
本発明の(c2)オルガノポリシロキサン成分がアルコキシ基を有することは、オルガノポリシロキサン中のアルコキシ基を定量することによって知ることができる。例えば、29Si-NMR測定やKOHを加えて熱分解した際に生成するアルコール量で定量することができる。
【0051】
本発明の(c2)オルガノポリシロキサン成分は、アルコキシ基と場合により炭化水素基を含有しかつシロキサン骨格を有する化合物である。アルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0052】
上記炭化水素基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の飽和炭化水素基やフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0053】
本発明の(c2)オルガノポリシロキサン成分にかかる前記式(1)におけるR2は得られるポリアセタール樹脂組成物の機械特性の観点からメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0054】
また、前記(c2)オルガノポリシロキサン成分にかかる前記式(1)におけるR1は得られるポリアセタール樹脂組成物の機械特性の観点からメチル基もしくはフェニル基から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0055】
本発明の(c2)オルガノポリシロキサン成分の市販品としては、例えば、「SR2402Resin」、「AY42-163」、「DC-3074intermediate」及び「DC-3037intermediate」(以上、ダウ・東レ株式会社製)、「KC-89S」、「KR-500」、「X-40-9225」、「X-40-9246」、「X-40-9250」、「KR-9218」、「KR-213」、「KR-510」、「X-40-9227」、「X-40-9247」、「KR-401N」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明において、(c)成分は、(a)トリオキサン100質量部に対して0.01~5質量部の範囲となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.03~1質量部の範囲である。
本発明において、(D)ポリアセタール共重合体の含有量は、機械特性の点から、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.1~20質量部、好ましくは1~20質量部である。
【0057】
<(D)ポリアセタール共重合体の重合方法>
本発明の(D)ポリアセタール共重合体の重合方法は、少なくとも、(a)トリオキサンと、(b)炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物と、(c)アルコキシ基を含有するケイ素化合物と、をカチオン重合触媒の存在下重合反応させることを特徴とする。
【0058】
<カチオン重合触媒>
カチオン重合触媒としては、トリオキサンを主モノマーとするカチオン共重合において公知の重合触媒が使用できる。代表的には、ルイス酸、プロトン酸が挙げられる。特に、以下に示すプロトン酸であることが好ましい。
【0059】
≪プロトン酸≫
プロトン酸としては、パーフルオロアルカンスルホン酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸が挙げられる。
パーフルオロアルカンスルホン酸の具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ペンタデカフルオロへプタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸が挙げられる。
【0060】
ヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有する。イソポリ酸とは、イソ多重酸、同核縮合酸、同種多重酸とも称され、V価又はVI価の単一種類の金属を有する無機酸素酸の縮合体から成る高分子量の無機酸素酸をいう。
【0061】
ヘテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。特に、重合活性の観点から、ヘテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸から選択されることが好ましい。
【0062】
イソポリ酸の具体例として、パラタングステン酸、メタタングステン酸等に例示されるイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等に例示されるイソポリモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸等が挙げられる。中でも、重合活性の観点から、イソポリタングステン酸であることが好ましい。
【0063】
≪ルイス酸≫
ルイス酸としては、例えば、ホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
【0064】
重合触媒の量は特に限定されるものでないが、全モノマーの合計に対して0.1ppm以上50ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上30ppm以下であることがより好ましい。特に好ましくは0.1ppm以上10ppm以下である。(以下、単位のppmは全て質量標準である。)
【0065】
本発明の(D)ポリアセタール共重合体の重合方法は、特に限定されるものではない。製造するにあたり、重合装置も特に限定されるものではなく、公知の装置が使用され、バッチ式、連続式等、いずれの方法も可能である。また、重合温度は65℃以上135℃以下に保つことが好ましい。
カチオン重合触媒は、重合に悪影響のない不活性な溶剤で希釈して使用することが好ましい。
【0066】
重合後の重合触媒の失活は従来公知の方法で行うことができる。例えば、重合反応後、重合機より排出される生成反応物、重合機中の反応生成物に塩基性化合物又はその水溶液等を加えて行うこともできる。
重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物は、特に限定されるものでない。重合及び失活の後、必要に応じて更に、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。
【0067】
上記のようにして得られる(D)ポリアセタール共重合体の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィにて測定したポリメタクリル酸メチル相当の重量平均分子量が10000~500000であることが好ましく、特に好ましくは20000~150000である。また、末端基については、-OCH2OHで示されるヘミホルマール末端基量が0~4mmol/kgであることが好ましく、特に好ましくは0~2mmol/kgである。ヘミホルマ-ル末端基量は1H-NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001-11143号公報に記載された方法を参照できる。
【0068】
ヘミホルマール末端基量を上記範囲に制御するためには、重合に供するモノマー、コモノマー総量中の不純物、特に水分を20ppm以下にするのが好ましく、特に好ましくは10ppm以下である。
【0069】
<各種安定剤・添加剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、さらに公知の各種安定剤・添加剤を含有し得る。安定剤としては、含窒素塩基性化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。添加剤としては、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。
【0070】
中でも、含窒素塩基性化合物は、ポリアセタール樹脂組成物の耐熱安定性および機械特性を高めるために用いられる。含窒素塩基性化合物の種類は、特に限定されるものではないが、一例として、(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体が挙げられる。
【0071】
(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体として、具体的には、グアナミン、メラミン、N-ブチルメラミン、N-フェニルメラミン、N,N-ジフェニルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、N,N’,N’’-トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ブチル-sym-トリアジン、アメリン、2,4-ジアミノ-6-ベンジルオキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ブトキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-シクロヘキシル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-クロロ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-sym-トリアジン、2,4-ジオキシ-6-アミノ-sym-トリアジン、2-オキシ-4,6-ジアミノsym-トリアジン、1,1-ビス-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアジニル)メタン、1,2-ビス-(3,5-ジアミノ2,4,6-トリアジニル)エタン〔別称(サクシノグアナミン)〕、1,3-ビス-(3,5)-ジアミノ-2,4,6-トリアジニル)プロパン、1,4-ビス-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアジニル)ブタン、メチレン化メラミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート等である。
【0072】
これらのトリアジン誘導体は1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはグアナミン、メラミンであり、中でもメラミンが特に好ましい。
【0073】
本実施形態において、かかる(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体を含有する場合、その含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.001~3質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは0.01~2質量部以下、特に好ましくは0.03~1質量部以下である。上記トリアジン誘導体(E)の含有量が0.001質量部以上であれば、ポリアセタール樹脂の熱安定性を向上することができ、3質量部以下であれば、ポリアセタール樹脂からの滲み出し等の問題がなく好ましい。
【0074】
また、本実施形態の目的とする成形品の性能を大幅に低下させないような範囲であるならば、ガラス繊維以外の公知の無機、有機、及び金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を1種又は2種以上複合させて配合することも可能である。このような充填剤の例としては、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭素繊維、ガラスビーズ等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0075】
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造には、ポリアセタール樹脂およびポリアセタール共重合体を溶融させて表面処理したガラス繊維等とともに混練する機能を有し、好ましくはベント機能を有する装置が使用される。例えば、少なくとも1つのベント孔を有する単軸又は多軸の連続押出し混練機、コニーダー等が挙げられる。溶融混練処理は、ポリアセタール樹脂およびポリアセタール共重合体の融点以上260℃までの温度範囲が好ましい。260℃より高いと重合体の分解劣化が生じ好ましくない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
実施例で使用した(D)ポリアセタール共重合体は以下のようにして調製した。
【0077】
<(D)ポリアセタール共重合体の調製>
熱媒を通すことのできるジャケットと撹拌羽根を有する密閉オートクレーブ中に300gのトリオキサン(TOX)(a)を入れ、さらに(b)成分として1,3-ジオキソラン(DO)および(c)成分として表1に記載の化合物を、それぞれ表1に示した質量部になるように添加した。これら内容物を撹拌し、ジャケットに80℃の温水を通して内部温度を約80℃に保った後、触媒として、リンタングステン酸(PWA)をギ酸メチル溶液の形で(a)と(b)の質量の和に対して4.5ppmまたはトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)をシクロヘキサン溶液の形で(a)と(b)の質量の和に対して1.0ppm添加し、重合反応を行った。
【0078】
実施例で用いた(c)成分は(c1-1)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-303)、(c1-2)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン(試薬;東京化成工業(株)製)、(c2-1)商品名:KR-500(R1:メチル基、R2:メチル基)、(c2-2)商品名:KR-401N(R1:メチル基/フェニル基、R2:メチル基)((c1-2)以外は全て信越化学工業(株)製)である。
【0079】
5分後にこのオートクレーブへトリエチルアミン1000ppmを含む水300gを加えて反応を停止し、内容物を取り出して200メッシュ以下に粉砕した。次いで、アセトンで洗浄した後に、乾燥を行うことにより(D)ポリアセタール共重合体を得た。
【0080】
【0081】
<実施例および比較例>
<ポリアセタール樹脂組成物の調製>
表2に記載の各種成分を表2に記載の添加量(単位:質量部)で混合し、ベント付き二軸の押出機でシリンダー温度200℃にて溶融混練して実施例、比較例に係るペレット状のポリアセタール樹脂組成物を調製した。
なお、表2に記載の本発明実施例、比較例で使用した各種成分は以下のとおりである。
【0082】
(A)ポリアセタール樹脂
トリオキサン96.7質量%と1,3-ジオキソラン3.3質量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(ISO1133に準拠し、190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
Irganox245(BASF社製)
トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(C)ガラス繊維
平均繊維短径9μm、平均繊維長径3mmのチョップドストランド、表面処理剤:アミノシランカップリング剤、結束剤:ウレタンで表面処理を実施したもの
(D)ポリアセタール共重合体
表1に記載の(D-1)~(D-6)を用いた。
(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体
メラミン
【0083】
<評価>
実施例における、機械特性の評価項目及び評価方法は以下の通りである。結果を表2に示す。
[引張試験]
ISO527-1、2に準拠し、ISO Type1A試験片の引張強度(TS)の測定を行った。測定室は、23℃50%RHの雰囲気を保持した。数値の単位はMPaである。
[曲げ試験]
機械物性としてISO178に準拠した曲げ強度(FS)と曲げ弾性率(FM)を測定した。測定室の条件は、23℃50%RHとした。数値の単位はいずれもMPaである。
【0084】
【0085】
表2の機械特性評価から、本発明の樹脂組成物において、機械特性(引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率)に優れていることがわかる。