(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2019206667
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正義
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034516(JP,A)
【文献】特開2005-198410(JP,A)
【文献】特開2010-252314(JP,A)
【文献】特開平06-233525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0001461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子に直流の入力電圧が印加する第1スイッチングトランジスタと、該第1スイッチングトランジスタの第2端子に第1端子が接続され第2端子が接地された第2スイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタの第2端子に対して第1端子がインダクタを介して接続され第2端子が出力端子に接続された第3スイッチングトランジスタと、第1端子が前記第3スイッチングトランジスタの前記第1端子に接続され第2端子が接地された第4スイッチングトランジスタのそれぞれの第3端子を、降圧モード、昇降圧モード又は昇圧モードでそれぞれ駆動し、前記出力端子から出力する出力電圧を目標電圧に制御するスイッチング制御回路において、
外部入力信号が入力すると該外部入力信号に同期した周波数の鋸波電圧を発振し、前記外部入力信号が入力していないときは所定の周波数の鋸波電圧を自励発振する発振回路と、
前記鋸波電圧を波形整形してPWM基準波形電圧を生成するOSCPWM生成回路と、
前記出力電圧と前記目標電圧に相当する電圧の比較により生成したレベルの異なる第1誤差電圧と第2誤差電圧と第3誤差電圧を前記PWM
基準波形電圧とそれぞれ比較することで、前記降圧モード用の第1PWM制御電圧と、前記昇降圧モード用の第2PWM制御電圧と、
前記昇圧モード用の第3PWM制御電圧を生成するPWM制御回路と、
前記発振回路で発振された前記鋸波電圧のピーク値に応じた互いに異なる値の第1基準電圧と第2基準電圧を生成し、前記鋸波電圧を前記第1基準電圧と前記第2基準電圧と比較して第1基準デューティ電圧と第2基準デューティ電圧を生成する基準デューティ生成回路と、
前記第1基準デューティ電圧と前記第2基準デューティ電圧の論理の組み合わせに応じて前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つを選択する選択回路と、
該選択回路で選択された前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つによって前記第1乃至第4スイッチングトランジスタの第3端子を駆動する駆動回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング制御回路において、
前記基準デューティ生成回路は、前記鋸波電圧のピーク値をホールドするピークホールド回路と、該ピークホールド回路から出力する電圧を分圧して前記第1基準電圧を生成する第1分圧回路と、前記ピークホールド回路から出力する電圧を分圧して前記第2基準電圧を生成する第2分圧回路と、前記鋸波電圧と前記第1基準電圧を比較して前記第1基準デューティ電圧を生成する第1コンパレータと、前記鋸波電圧と前記第2基準電圧を比較して前記第2基準デューティ電圧を生成する第2コンパレータとを備えることを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチング制御回路において、
前記第1乃至第3誤差電圧は、前記第1PWM制御電圧が小デューティ、前記第2PWM制御電圧が中デューティ、前記第3PWM制御電圧が大デューティとなるように設定されている、
ことを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のスイッチング制御回路において、
前記選択回路は、前記第1基準デューティ電圧の所定エッジのタイミング時に前記第1PWM制御電圧が第1論理のとき第1論理を保持し第2論理のとき第2論理を保持する第1選択電圧と、前記第2基準デューティ電圧の所定エッジのタイミング時に前記第2PWM制御電圧が第1論理のとき第1論理を保持し第2論理のとき第2論理を保持する第2選択電圧とを生成し、
前記第1選択電圧の論理と前記第2選択電圧の論理の組み合わせにより、前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つを選択する、
ことを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、
前記降圧モード時に、前記第1PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタと前記第2スイッチングトランジスタが逆相でON/OFFし、前記第3スイッチングトランジスタがONし、前記第4スイッチングトランジスタがOFFし、
前記昇降圧モード時に、前記第2PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタと前記第4スイッチングトランジスタが同相でON/OFFし、前記第2スイッチングトランジスタと前記第3スイッチングトランジスタが前記第1スイッチングトランジスタと逆相でON/OFFし、
前記昇圧モード時に、前記第3PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタがONし、前記第2スイッチングトランジスタがOFFし、前記第3スイッチングトランジスタと前記第4スイッチングトランジスタが逆相でON/OFFする、
ように制御することを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、
前記第2スイッチングトランジスタが、アノードが接地されカソードが前記第1スイッチングトランジスタの第2端子に接続される第1ダイオードに置き換えられ、
前記第3スイッチングトランジスタが、アノードが前記第4スイッチングトランジスタの第1端子に接続されカソードが前記出力端子に接続される第2ダイオードに置き換えられ、
前記駆動回路は、前記選択回路で選択された前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つによって前記第1及び第4スイッチングトランジスタの第3端子を駆動する、
ことを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、
前記駆動回路は、前記選択回路から出力する前記第1乃至第3PWM制御電圧のレベルを低レベルから高レベルにシフトするレベルシフト回路を含むことを特徴とするスイッチング制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧の変動に応じて出力電圧が変動する際に、スイッチングトランジスタの動作モードを降圧モード→昇降圧モード→昇圧モードに切り替えたり、昇圧モード→昇降圧モード→降圧モードに切り替えたりするスイッチング制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチング制御回路は特許文献1に記載がある。このスイッチング制御回路では、入力電圧が低下してきたときは降圧モード→昇降圧モード→昇圧モードに順次動作モードを切り替え、入力電圧が上昇してきたときは昇圧モード→昇降圧モード→降圧モードに順次動作モードを切り替えている。そして、これらの動作モードの切り替え時に同時に、鋸波電圧の中心レベルを、切り替え後の動作モードでのデューティ比が実現できるようなレベルにシフトさせることで、動作モードの切り替えの後に当該のデューティ比になるまでの移行時間を短縮して、動作モードの切り替え時に発生する出力電圧のオーバーシュートを低減させている。
【0003】
ところが、特許文献1のスイッチング制御回路では、動作モードの切り替え時に、鋸波電圧の中心レベルを切り替える必要があるので、鋸波電圧を発生させるため電圧範囲を広くする必要がある。
【0004】
一方、特許文献2に記載のように、鋸波電圧の中心レベルは一定にし、出力電圧と目標電圧との差分をとって誤差電圧を生成する手法がある。これを利用すれば、この誤差電圧から3つの誤差電圧を生成し、この3つの誤差電圧と鋸波電圧を比較することで、降圧モード用、昇降圧モード用、昇圧モード用のPWM制御電圧をそれぞれ生成することで、鋸波電圧の動作電圧範囲を広くする必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-163447号公報
【文献】特開2005-057954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1つの鋸波電圧と3つの誤差電圧の比較によって降圧モード用、昇降圧モード用、昇圧モード用のPWM制御電圧を生成する場合は、その3つのPWM制御電圧から1つのPWM制御電圧を選択して1つの動作モードを決める必要があり、この場合は、鋸波電圧を2つの基準電圧で比較して1つのPWM制御電圧を選択する信号を作成することができる。
【0007】
しかし、鋸波電圧は定電流充電で生成され、外部入力信号の周波数が低いほど鋸波電圧のピーク値が大きくなる。したがって、ユーザ独自に周波数、例えば、マイクロコンピュータの動作周波数に同期させる場合のように、鋸波電圧を周波数のまちまちな外部入力信号に同期させる必要がある場合には、そのピーク値がまちまちとなるので、1つの動作モード選択用の適正な信号を作成することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、鋸波電圧を周波数がまちまちな外部入力信号に同期させても動作モード選択用の適正な信号を作成することができるようにしたスイッチング制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、第1端子に直流の入力電圧が印加する第1スイッチングトランジスタと、該第1スイッチングトランジスタの第2端子に第1端子が接続され第2端子が接地された第2スイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタの第2端子に対して第1端子がインダクタを介して接続され第2端子が出力端子に接続された第3スイッチングトランジスタと、第1端子が前記第3スイッチングトランジスタの前記第1端子に接続され第2端子が接地された第4スイッチングトランジスタのそれぞれの第3端子を、降圧モード、昇降圧モード又は昇圧モードでそれぞれ駆動し、前記出力端子から出力する出力電圧を目標電圧に制御するスイッチング制御回路において、外部入力信号が入力すると該外部入力信号に同期した周波数の鋸波電圧を発振し、前記外部入力信号が入力していないときは所定の周波数の鋸波電圧を自励発振する発振回路と、前記鋸波電圧を波形整形してPWM基準波形電圧を生成するOSCPWM生成回路と、前記出力電圧と前記目標電圧に相当する電圧の比較により生成したレベルの異なる第1誤差電圧と第2誤差電圧と第3誤差電圧を前記PWM基準波形電圧とそれぞれ比較することで、前記降圧モード用の第1PWM制御電圧と、前記昇降圧モード用の第2PWM制御電圧と、前記昇圧モード用の第3PWM制御電圧を生成するPWM制御回路と、前記発振回路で発振された前記鋸波電圧のピーク値に応じた互いに異なる値の第1基準電圧と第2基準電圧を生成し、前記鋸波電圧を前記第1基準電圧と前記第2基準電圧と比較して第1基準デューティ電圧と第2基準デューティ電圧を生成する基準デューティ生成回路と、前記第1基準デューティ電圧と前記第2基準デューティ電圧の論理の組み合わせに応じて前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つを選択する選択回路と、該選択回路で選択された前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つによって前記第1乃至第4スイッチングトランジスタの第3端子を駆動する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のスイッチング制御回路において、前記基準デューティ生成回路は、前記鋸波電圧のピーク値をホールドするピークホールド回路と、該ピークホールド回路から出力する電圧を分圧して前記第1基準電圧を生成する第1分圧回路と、前記ピークホールド回路から出力する電圧を分圧して前記第2基準電圧を生成する第2分圧回路と、前記鋸波電圧と前記第1基準電圧を比較して前記第1基準デューティ電圧を生成する第1コンパレータと、前記鋸波電圧と前記第2基準電圧を比較して前記第2基準デューティ電圧を生成する第2コンパレータとを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のスイッチング制御回路において、前記第1乃至第3誤差電圧は、前記第1PWM制御電圧が小デューティ、前記第2PWM制御電圧が中デューティ、前記第3PWM制御電圧が大デューティとなるように設定されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載のスイッチング制御回路において、前記選択回路は、前記第1基準デューティ電圧の所定エッジのタイミング時に前記第1PWM制御電圧が第1論理のとき第1論理を保持し第2論理のとき第2論理を保持する第1選択電圧と、前記第2基準デューティ電圧の所定エッジのタイミング時に前記第2PWM制御電圧が第1論理のとき第1論理を保持し第2論理のとき第2論理を保持する第2選択電圧とを生成し、前記第1選択電圧の論理と前記第2選択電圧の論理の組み合わせにより、前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つを選択する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、前記降圧モード時に、前記第1PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタと前記第2スイッチングトランジスタが逆相でON/OFFし、前記第3スイッチングトランジスタがONし、前記第4スイッチングトランジスタがOFFし、
前記昇降圧モード時に、前記第2PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタと前記第4スイッチングトランジスタが同相でON/OFFし、前記第2スイッチングトランジスタと前記第3スイッチングトランジスタが前記第1スイッチングトランジスタと逆相でON/OFFし、前記昇圧モード時に、前記第3PWM制御電圧が選択され、前記第1スイッチングトランジスタがONし、前記第2スイッチングトランジスタがOFFし、前記第3スイッチングトランジスタと前記第4スイッチングトランジスタが逆相でON/OFFする、ように制御することを特徴とする。
【0014】
請求項6にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、前記第2スイッチングトランジスタが、アノードが接地されカソードが前記第1スイッチングトランジスタの第2端子に接続される第1ダイオードに置き換えられ、前記第3スイッチングトランジスタが、アノードが前記第4スイッチングトランジスタの第1端子に接続されカソードが前記出力端子に接続される第2ダイオードに置き換えられ、前記駆動回路は、前記選択回路で選択された前記第1乃至第3PWM制御電圧のうちの1つによって前記第1及び第4スイッチングトランジスタの第3端子を駆動する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のスイッチング制御回路において、前記駆動回路は、前記選択回路から出力する前記第1乃至第3PWM制御電圧のレベルを低レベルから高レベルにシフトするレベルシフト回路を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鋸波電圧のピーク値に応じて2つの基準電圧を生成するので、鋸波電圧を周波数のまちまちな外部入力信号に同期させても適正な動作モード選択用の信号を作成することができ、適正なスイッチング制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例のスイッチング制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のスイッチング制御回路の発振回路の回路図である。
【
図3】
図1のスイッチング制御回路の基準電圧生成回路の回路図である。
【
図4】
図1のスイッチング制御回路のデューティ生成回路の動作波形図である。
【
図5】
図1のスイッチング制御回路の選択回路の動作波形図である。
【
図6】
図1のスイッチング制御回路の選択回路の真理値の説明図である。
【
図7】
図1のスイッチング制御回路の全体の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に本発明の実施例のスイッチング制御回路100を示す。このスイッチング制御回路100は半導体集積回路で構成される。そして、そのスイッチング制御回路100によってON/OFFが個別に制御されるNMOSのスイッチングトランジスタMN1,MN2,MN3,MN4と、インダクタL1と、出力コンデンサC1と、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する分圧抵抗Rd1,Rd2が外部接続されている。C2,C3,C4は安定化用のキャパシタである。
【0019】
スイッチング制御回路100は、自励発振又は外部同期発振を行って鋸波電圧OSCを生成する発振回路110と、その鋸波電圧OSCを取り込んで2個の基準デューティ電圧DUTY1a,DUTY2aを生成する基準デューティ生成回路120と、鋸波電圧OSCを取り込んで波形整形してPWM基準波形電圧OSC_PWMを生成するOSCPWM生成回路130と、そのPWM基準波形電圧OSC_PWMと帰還電圧Vfbを取り込んで3つのPWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3を生成するPWM制御回路140と、基準デューティ電圧DUTY1a,DUTY2aとPWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3を取り込んで、PWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3のうちの1つを選択して、スイッチングトランジスタMN1,MN2,MN3,MN4を個別にON/OFF制御するゲート制御電圧Vg1,Vg2,Vg3,Vg4を生成する選択回路150と、ゲート制御電圧Vg1,Vg2,Vg3,Vg4を取り込んでスイッチングトランジスタMN1,MN2,MN3,MN4のゲート駆動電圧VG1,VG2,VG3,VG4を出力する駆動回路160とを備える。なお、170は入力電圧VINからレギュラー電圧V1を生成する安定化電源回路、180は入力電圧VINから所定の高電圧V2(>V1)を生成する高電圧電源回路である。
【0020】
図2に発振回路110を示す。この発振回路110は、立下がりエッジ検出回路111、ナンドゲート112、遅延回路で構成されるパルス幅調整回路113、NMOSトランジスタMN0、電流源I0、キャパシタC0、基準電圧Vref0が設定されたコンバータCP0を備える。
【0021】
この発振回路110は、外部入力信号SYNCが入力していないときは自励発振を行う。この自励発振時は、立下がりエッジ検出回路111の出力信号SYNC_Pが“H”に固定されるので、ナンドゲート112がインバータとして働く。ナンドゲート112の出力が“L”となっていて、トランジスタMN0がオフしているときは、キャパシタC0が電流源I0の定電流で充電され、鋸波電圧OSCが所定の傾斜で増大する。その鋸波電圧OSCが基準電圧Vref0を超えると、コンバータCP0の出力が“L”となって、ナンドゲート112の出力が“H”となり、トランジスタMN0がオンして、キャパシタC0の電圧を0Vにリセットする。すると、コンパレータCP0の出力が“H”となり、ナンドゲート112の出力が“L”となり、パルス幅調整回路113にて設定される遅延時間後、キャパシタC0への充電が再開される。以降、同じ動作が繰り返されて、鋸波電圧OSCの自励発振を行う。その鋸波電圧OSCの発振周波数は電流源I0の定電流とキャパシタC0、パルス幅調整回路113の時定数で決まる。
【0022】
一方、外部入力信号SYNCが入力しているときは、その立下がりに同期して信号SYNC_Pが“L”となるので、このときはナンドゲート112はコンパレータCP0の出力信号の“H”、“L”に無関係にその出力を“H”にする。これにより、キャパシタC0の電荷がリセットされ、コンパレータCP0の出力が“H”になる。そして、信号SYNC_Pが“H”に復帰すると、ナンドゲート112の出力が“L”となり、パルス幅調整回路113にて設定される遅延時間後、キャパシタC0の充電が開始される。以降、同じ動作が繰り返されて、鋸波電圧OSCを発生する。この鋸波電圧OSCの発振周波数は外部入力信号SYNCの周波数となる。
【0023】
図1において、基準デューティ回路120は、基準電圧Vref1、Vref2を作成する基準電圧生成回路121と、基準電圧生成回路121で生成された基準電圧Vref1と鋸波電圧OSCを比較するコンパレータCP1と、基準電圧生成回路121で生成された基準電圧Vref2と鋸波電圧OCSを比較するコンパレータCP2を備える。コンパレータCP1からは基準デューティ電圧DUTY1aが出力し、コンパレータCP2から基準デューティ電圧DUTY2aが出力する。基準デューティ電圧DUTY1aよりも基準デューティ電圧DUTY2のデューティが小さくなるように、Vref1>Vref2に設定されている。
【0024】
図3に基準電圧生成回路121を示す。この基準電圧生成回路121は、鋸波電圧OSCのピーク値を保持するピークホールド回路1211と、直列接続された抵抗R11,R12からなる分圧回路1212と、直列接続された分圧抵抗R21,R22からなる別の分圧回路1213を備える。そして、分圧抵抗R11,R12の共通接続点から基準電圧Vref1が取り出され、分圧抵抗R21,R22の共通接続点から基準電圧Vref2が取り出される。分圧回路1212,1213は、Vref1>Vref2となるよう、分圧比が設定されている。
【0025】
図1において、PWM制御回路140は、帰還電圧Vfbが目標出力電圧相当の基準電
圧Vref3より低いとき正の誤差電圧Verr1を出力する誤差増幅器OP1と、電圧
V1が印加する電流源I1及びNMOSトランジスタMN5,MN6からなるカレントミ
ラー回路と、誤差電圧Verr1を分圧して誤差電圧Verr2,Verr3を生成する
抵抗R1,R2と、
OSCPWM生成回路130から出力するPWM
基準波形電圧OSC_PWMを、誤差電圧Verr1,Verr2,Verr3と比較してPWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3を生成するコンパレータCP3,CP4,CP5を備える。PWM制御電圧PWM1は小デューティの降圧モード用、PWM制御電圧PWM2は中デューティの昇降圧モード用、PWM制御電圧PWM3は大デューティの昇圧モード用である。
【0026】
駆動回路160は、選択回路150から出力するゲート制御電圧Vg1,Vg2,Vg3,Vg4をより高電圧にレベルシフトするレベルシフト回路161,162,163,164と、レベルシフト回路161,162,163,164の出力電圧を入力してゲート駆動電圧VG1,VG2,VG3,VG4を出力するドライバ回路165,166,167,168とを備える。ゲート駆動電圧VG1はスイッチングトランジスタMN1のゲートを駆動し、ゲート駆動電圧VG2はスイッチングトランジスタMN2のゲートを駆動し、ゲート駆動電圧VG3はスイッチングトランジスタMN3のゲートを駆動し、ゲート駆動電圧VG4はスイッチングトランジスタMN4のゲートを駆動する。
【0027】
図4に基準デューティ回路120の動作波形を示す。鋸波電圧OSCは立ち下がりから時間t1だけ遅延してから徐々に立ち上がる波形の電圧である。時間t1は発振回路110のパルス幅調整回路113によって設定される。そして、外部入力端子101に外部入力信号SYNCを入力していないときは、鋸波電圧OSCがピーク値Vpに達するごとにキャパシタC0の電荷がリセットされることで、固有の周波数で自励発振を行う。しかし、外部入力信号SYNCが入力すると、その外部入力信号SYNCの立下りごとにリセットされるので、外部入力信号SYNCの周期が短いほど、鋸波電圧OSCのピーク値Vpが低くなる。この鋸波電圧OSCは基準電圧生成回路121に入力することで、そのピーク値Vpが保持され、基準電圧Vref1,Vref2がそのピーク値Vpに比例した値の電圧として出力する。
【0028】
したがって、鋸波電圧OSCが基準電圧Vref1より高いとき“L”となる基準デューティ電圧DUTY1aは、鋸波電圧OSCが自励発振しているときと外部入力信号SYNCに同期しているときで、同じデューティの電圧となる。また、鋸波電圧OSCが基準電圧Vref2より高いとき“L”となる基準デューティ電圧DUTY2aも、鋸波電圧OSCが自励発振しているときと外部入力信号SYNCに同期しているときで、同じデューティの電圧となる。
【0029】
図5に基準デューティ回路120と
OSCPWM生成回路130とPWM制御回路140と選択回路150の動作波形を示す。
図5では鋸波電圧OSCが自励発振している場合の例を示した。PWM
基準波形電圧OSC_PWMは鋸波電圧OSCを波形整形することで、立ち下がり時点から時間t1の経過後に電圧Vaだけ嵩上げされてから徐々に立ち上がる鋸波形状の電圧として生成される。DUTY1はDUTY1aの反転信号、DUTY2はDUTY2aの反転信号である。
【0030】
PWM制御電圧PWM1は、PWM基準波形電圧OSC_PWMが誤差電圧Verr1より高いとき“H”となる。PWM制御電圧PWM2は、PWM基準波形電圧OSC_PWMが誤差電圧Verr2より高いとき“H”となる。PWM制御電圧PWM3は、PWM基準波形電圧OSC_PWMが誤差電圧Verr3より高いとき“H” となる。Verr1>Verr2>Verr3の関係にあるので、PWM制御電圧PWM1~PWM3のデューティ比は、PWM1<PWM2<PWM3の関係となる。
【0031】
選択電圧SW_DUTY1は、基準デューティ電圧DUTY1の立上り時にPWM制御電圧PWM1が“H”になっていると“H”が保持されるが、“L”になっていると“L”が保持される。つまり、PWM制御電圧PWM1のデューティが基準デューティ電圧DUTY1よりも小さくなると、選択電圧SW_DUTY1が“L”になる。
【0032】
また、選択電圧SW_DUTY2は、基準デューティ電圧DUTY2の立上り時にPWM制御電圧PWM2が“H”になっていると“H”が保持されるが、“L”になっていると“L”が保持される。つまり、PWM制御電圧PWM2のデューティが基準デューティ電圧DUTY2よりも小さくなると、選択電圧SW_DUTY2が“L”になる。
【0033】
図6は選択回路150において、PWM制御電圧PWM1~PWM3のうちから1つを選択する論理の説明図である。本実施例では、選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2の論理の組み合わせによって、選択する。つまり、選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2がともに“H”ならPWM制御電圧PWM1を選択し、選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2の一方が“H”で他方が“L”ならPWM制御電圧PWM2を選択し、選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2がともに“L”ならPWM制御電圧PWM3を選択する。
【0034】
図7は選択回路150から出力するゲート制御電圧Vg1,Vg2,Vg3,Vg4の切り替えの波形図である。前記したように、選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2がともに“H”のときは、降圧モード用のPWM制御電圧PWM1が選択され、PWM制御電圧PWM1の反転電圧が同期整流のメインのゲート制御電圧Vg1として出力される。このときのゲート制御電圧Vg2は整流動作するためVg1の反転電圧(ただし、Vg1,Vg2の間にはデットタイムが設定されている)である。このとき、ゲート制御電圧Vg3は“H”に固定されスイッチングトランジスタMN3はONし、ゲート制御電圧Vg4は“L”に固定されスイッチングトランジスタMN4はOFFしている。
【0035】
選択電圧SW_DUTY1が“L”でSW_DUTY2が“H”のときは、昇降圧モード用のPWM制御電圧PWM2が選択され、PWM制御電圧PWM2の反転電圧が同期整流のメインのゲート制御電圧Vg1,Vg4として出力される。このときのゲート制御電圧Vg2,Vg3は整流動作するためVg1の反転電圧(ただし、Vg1,Vg2の間、Vg3,Vg4と間にはデットタイムが設定されている)である。
【0036】
選択電圧SW_DUTY1,SW_DUTY2がともに“L”のときは、昇圧モード用のPWM制御電圧PWM3が選択され、PWM制御電圧PWM3の反転電圧が同期整流のメインのゲート制御電圧Vg4として出力される。このときのゲート制御電圧Vg3は整流動作するためVg4の反転電圧(ただし、Vg3,Vg4の間にはデットタイムが設定されている)である。このとき、ゲート制御電圧Vg1は“H”に固定されてスイッチングトランジスタMN1はONし、ゲート制御電圧Vg2は“L”に固定されスイッチングトランジスタMN2はOFFしている。
【0037】
以上のように、本実施例では、外部入力信号SYNCに同期させて、自励発振の場合と異なる周波数の鋸波電圧OSCを発振させた場合であっても、基準デューティ電圧DUTY1a,DUTY2aは自励発振のときと同じデューティをもつので、自励発振の鋸波電圧OSCで使用する場合と同様に動作させることができる。また、鋸波電圧OSCの中心電圧をシフトさせることはしないので、鋸波電圧生成用の電源電圧を高くする必要がない。また3つの誤差電圧Verr1,Verr2,Verr3によって降圧用、昇降圧用、昇圧用のPWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3を生成するので、それらのPWM制御電圧PWM1,PWM2,PWM3にデューティのばらつきは発生せず、モード毎のPWM制御電圧を安定して出力できる。
【0038】
なお、本実施例では、スイッチングトランジスタMN2,MN3はダイオードに置き換えることができる。このとき、ゲート制御電圧Vg2,Vg3、ゲート駆動電圧VG2,VG3は不要となるので、それらに関連する回路は不要となる。
【符号の説明】
【0039】
100:スイッチング制御回路
110:発振回路、120:基準デューティ生成回路、130:OSCPWM生成回路、140:PWM制御回路、150:選択回路、160:駆動回路、170,180:電源回路
OSC:鋸波電圧
OSC_PWM:PWM基準波形電圧
PWM1~PWM3:PWM制御電圧
DUTY1a、DUTY2a:基準デューティ電圧
DUTY1、DUTY2:基準デューティ電圧
SW_DUTY1,SW_DUTY2:選択電圧
Vg1~VGg4:ゲート制御電圧
VG1~VG4:ゲート駆動電圧