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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/66 20130101AFI20230831BHJP
   G02F 2/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
H04B10/66
G02F2/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020067429
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021164133
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
(72)【発明者】
【氏名】種村 拓夫
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198383(WO,A1)
【文献】特開2019-161355(JP,A)
【文献】特開2017-133969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0204894(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0218933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/66
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号光を受信し、前記第1信号光の第1偏波の第1成分と、前記第1信号光の前記第1偏波とは直交する第2偏波の第2成分との和に対応する前記第1偏波の第2信号光と、前記第1成分と前記第2成分との差に対応する前記第1偏波の第3信号光と、を出力する変換手段と、
前記第2信号光と前記第3信号光とに基づき前記第1信号光のストークスパラメータに対応する信号を出力する出力手段と、
を備えていることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記変換手段は、
テーパ型モード変換器と、
前記テーパ型モード変換器の出射面に接続される第1導波路及び第2導波路と、
を有し、
前記第1偏波の前記第1成分は、TEモードの0次成分として前記テーパ型モード変換器に入射され、前記第2偏波の前記第2成分は、TMモードの0次成分として前記テーパ型モード変換器に入射され、
前記テーパ型モード変換器は、入射されたTMモードの0次成分を前記出射面においてTEモードの1次成分に変換し、入射されたTEモードの0次成分を前記出射面においてTEモードの0次成分のままに維持し、
前記TEモードの0次成分と前記TEモードの1次成分を2分岐して前記第1導波路と前記第2導波路のそれぞれに入射させることで、前記第1導波路から前記第2信号光を出力し、前記第2導波路から前記第3信号光を出力することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記出力手段は、
前記第2信号光を光電変換する第1光電変換手段と、
前記第3信号光を光電変換する第2光電変換手段と、
前記第1光電変換手段の出力と前記第2光電変換手段の出力との差に基づく第1信号を出力する第1減算手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記第1信号は、ストークスパラメータSを示す信号であることを特徴とする請求項3に記載の光受信装置。
【請求項5】
前記出力手段は、
前記第3信号光の位相を90度だけ進めて第4信号光とし、前記第2信号光と前記第4信号光との和に対応する第5信号光と、前記第2信号光と前記第4信号光との差に対応する第6信号光と、を出力する加減算手段と、
前記第5信号光を光電変換する第3光電変換手段と、
前記第6信号光を光電変換する第4光電変換手段と、
前記第3光電変換手段の出力と前記第4光電変換手段の出力との差に基づく第2信号を出力する第2減算手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光受信装置。
【請求項6】
前記第2信号は、ストークスパラメータSを示す信号であることを特徴とする請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記加減算手段は、
前記第2信号光と前記第3信号光との和に対応する第7信号光と、前記第2信号光と前記第3信号光との差に対応する第8信号光と、を出力し、
前記出力手段は、さらに、
前記第7信号光を光電変換する第5光電変換手段と、
前記第8信号光を光電変換する第6光電変換手段と、
前記第5光電変換手段の出力と前記第6光電変換手段の出力との差に基づく第3信号を出力する減算手段と、
を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の光受信装置。
【請求項8】
前記第3信号は、ストークスパラメータSを示す信号であることを特徴とする請求項7に記載の光受信装置。
【請求項9】
前記加減算手段は、光ハイブリッドであることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、ストークスベクトル型の光受信装置を開示している。図1は、非特許文献1に記載の光受信装置の構成図である。偏波ビームスプリッタ(PBS)1には、信号光が入力される。この信号光のX偏波成分の電界をEとし、X偏波とは直交するY偏波成分の電界をEとする。PBS1は、信号光の偏波分離を行って、信号光のX偏波成分とY偏波成分を出力する。信号光のX偏波成分は、図示しないカップラで2分岐され、一方はフォトダイオード(PD)41に出力され、他方は光ハイブリッド3に出力される。なお、PD41と光ハイブリッド3に出力される光の電界は、それぞれaE、bE(a+b=1)の様に一定の分岐比で分配されるが、説明を簡略化するため、定数である係数a、bについては省略している。信号光のY偏波成分は、図示しないカップラで2分岐され、一方はPD46に出力され、他方は偏波回転部(PR)2に出力される。PR2は、入力される光の偏波方向を90度だけ回転させ、偏波回転後の光を光ハイブリッド3に出力する。
【0003】
PD41及びPD46は、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器53に出力する。したがって、減算器53は、Eの2乗成分とEの2乗成分の差を出力する。E及びEは、所謂、直線偏波成分である。したがって、減算器53が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。
【0004】
光ハイブリッド3は、入力される2つの光(電界E1及びE2)に基づき4つの光を出力する。図1に示す様に、電界がE+Eに対応する光はPD42に出力される。電界がE+jEに対応する光はPD43に出力される。電界がE-jEに対応する光はPD44に出力される。電界がE-Eに対応する光はPD45に出力される。PD42及び45は、それぞれ、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器52に出力する。E+E及びE-Eは、所謂、45度偏波成分である。したがって、減算器52が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。PD43及び44は、それぞれ、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器51に出力する。E+jE及びE-jEは、所謂、円偏波成分である。したがって、減算器51が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。
【0005】
非特許文献1によると、ストークスパラメータS~Sに基づき信号光を復調している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Po Dong,et al,"128-Gb/s 100-km transmission with direct detection using silicon photonic Stokes vector receiver and I/Q modulator",Opt.Express 24,14208-14214,2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PBS1やPR2は、非対称構造の光学部材(光学デバイス)であり、このような非対称構造は、例えば、光学部材(光学デバイス)の集積化において好ましくない。
【0008】
本発明は、ストークスパラメータに基づき復調を行う光受信装置に必要な非対称構造の光学部材数を削減するための技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、光受信装置は、第1信号光を受信し、前記第1信号光の第1偏波の第1成分と、前記第1信号光の前記第1偏波とは直交する第2偏波の第2成分との和に対応する前記第1偏波の第2信号光と、前記第1成分と前記第2成分との差に対応する前記第1偏波の第3信号光と、を出力する変換手段と、前記第2信号光と前記第3信号光とに基づき前記第1信号光のストークスパラメータに対応する信号を出力する出力手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ストークスパラメータに基づき復調を行う光受信装置に必要な非対称構造の光学部材数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】背景技術による光受信装置の構成図。
図2】一実施形態による光受信装置の構成図。
図3】一実施形態による変換部の構成図。
図4】一実施形態による変換部における信号光の伝搬の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図2は、本実施形態による光受信装置の構成図である。本実施形態の光受信装置は、ストークスベクトル光受信装置であり、受信する信号光のストークスパラメータS~Sを判定し、判定したストークスパラメータS~Sに基づき信号光を復調する。図2は、光受信装置における図1に対応する部分、つまり、信号光のストークスパラメータS~Sを判定するための構成部分である。図1との相違点を述べると、PBS1が、変換部6に置き換えられ、PR2が削除される。つまり、非対称構造の光学部材数が削除される。なお、変換部6は、対称構造の光学部材である。
【0014】
図3は、変換部6の平面図である。変換部6は、モード変換部と、出射部と、を備えている。なお、出射部は、導波路63と、導波路64と、を有する。モード変換部及び出射部は、例えば、基板上に形成される。図3は、基板とは逆側から見た状態を示している。以下では、モード変換部における光の伝搬方向を、単に、伝搬方向として参照する。また、基板から当該基板上に形成された変換部6に向かう方向を高さ方向と定義し、伝搬方向及び高さ方向の両方に直交する方向を幅方向と定義する。モード変換部は、入射面61と、入射面より幅方向の長さが長い出射面62と、を有する。なお、出射面62は、実際には、モード変換部と出射部との結合面であり、外部に露出する面ではない。
【0015】
モード変換部は、所謂、テーパ型モード変換器である。信号光は、モード変換部の入射面61から入射される。入射面61から入射された信号光は、伝搬方向に沿って伝搬する。その過程において、0次のTMモードは、1次のTEモードに変換される。なお、0次のTEモードは、0次のTEモードのままに維持される。したがって、信号光のX偏波成分がTEモード(従って、信号光のY偏波成分がTMモード)となる様に入射面61から信号光を入射させると、X偏波成分は、出射面62において0次のTEモードのままであるが、Y偏波成分は、出射面62において1次のTEモード(X偏波)となる。図4は、1次のTEモードの電界成分を示している。図4の左半分の部分に対応する光は、出射面62から導波路63に入射し、図4の右半分の部分に対応する光は、出射面62から導波路64に入射する。つまり、出射面62から導波路63及び導波路64に入射する過程で、1次のTEモードは0次のTEモードに変換される。なお、図4から明らかな様に、出射面62から導波路63に0次のTEモード0として入射する1次のTEモードの部分の電界分布は、出射面62から導波路64に0次のTEモード0として入射する1次のTEモードの部分の電界分布に対して反転している。なお、出射面62に到達した0次のTEモードの光は、そのまま0次のTEモードの光として導波路63及び導波路64に入射する。したがって、出射面62において0次のTEモードであった光の導波路63及び導波路64における電界分布は同じとなる。
【0016】
よって、変換部6は、導波路63から電界(E+E)の光を出力し、導波路64から電界(E-E)の光を出力する。なお、電界に乗ぜられる定数部分については説明の簡略化のために省略している。導波路63からの光と導波路64からの光において、電界成分Eの符号が異なるのは、上述した様に、TMモードで入射したY偏波成分の光は、出射面62において図4の様な電界分布となり、導波路63における電界分布と、導波路64における電界分布が反転するからである。
【0017】
変換部6が出力する電界(E+E)の光は、さらに、図示しないカプラで2分岐され、一方は、PD41に出力され、他方は、光ハイブリッド3のポート#1に出力される。同様に、変換部6が出力する電界(E-E)の光は、さらに、図示しないカプラで2分岐され、一方は、PD46に出力され、他方は、光ハイブリッド3のポート#2に出力される。なお、電界に乗ぜられる定数部分については説明の簡略化のために省略する。
【0018】
PD41及びPD46は、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器53に出力する。したがって、減算器53は、E+Eの2乗成分とE-Eの2乗成分の差を出力する。E+E及びE-Eは、45度偏波成分である。したがって、減算器53が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。
【0019】
光ハイブリッド3は、ポート#1に入力された光とポート#2に入力された光の和をポート#3から出力し、ポート#1に入力された光とポート#2に入力された光の位相を90度だけ進めた光との和をポート#4から出力し、ポート#1に入力された光とポート#2に入力された光の位相を90度だけ遅らせた光との和をポート#5から出力し、ポート#1に入力された光とポート#2に入力された光との差をポート#6から出力する。
【0020】
したがって、ポート#3からは電界2Eの光が出力され、ポート#6からは電界2Eの光が出力される。なお、ポート#3からの電界2Eの光はPD42に出力され、ポート#6からの電界2Eの光はPD45に出力される。PD42及びPD45は、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器52に出力する。2E及び2Eは、直線偏波成分である。したがって、減算器52が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。
【0021】
また、ポート#4からは電界(E+E)+j(E-E)の光が出力され、ポート#5からは電界(E+E)-j(E-E)の光が出力される。なお、ポート#4からの光はPD43に出力され、ポート#5からの光はPD44に出力される。PD43及びPD44は、入力される光の2乗成分に対応する電流を減算器51に出力する。したがって、減算器51は、これらの2乗成分の差を出力する。
【0022】
ここで、ポート#4から出力される光信号の電界は、
(E+E)+j(E-E)=(1+j)(E-jE
であり、ポート#5から出力される光信号の電界は、
(E+E)-j(E-E)=(1-j)(E+jE
であり、共に、円偏波成分である。したがって、減算器51が出力する信号は、ストークスパラメータSに対応する。
【0023】
なお、本実施形態では、光ハイブリッド3を用いて直線偏波成分及び円偏波成分を出力したが、半波長板や1/4波長板等を使用する構成であっても良い。図示しない復調部は、少なくともストークスパラメータS及びSを使用して信号光の復調を行う。したがって、例えば、ストークスパラメータSを復調部で使用しない場合、PD42、PD45及び減算器52を省略することができる。
【0024】
以上、変換部6、光カップラ3、PD41~46は、対称構造の光学部材で構成することができ、光受信装置に必要な非対称構造の光学部材数を削減することができる。
【0025】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
6:変換部、3:光ハイブリッド、41~46:PD、51~53:減算器
図1
図2
図3
図4