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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】皮下埋込型通電ポート
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/122 20210101AFI20230901BHJP
   A61N 1/378 20060101ALI20230901BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230901BHJP
【FI】
A61M60/122
A61N1/378
H02J50/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018031660
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019146645
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆
(72)【発明者】
【氏名】柴 建次
(72)【発明者】
【氏名】増澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】巽 英介
(72)【発明者】
【氏名】岸上 兆一
(72)【発明者】
【氏名】柳園 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】香川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 高紀
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-102672(JP,A)
【文献】特開2004-164947(JP,A)
【文献】米国特許第6070103(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
A61B 5/0215
A61B 5/0265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートであって、
体内に配置されるハウジングに設けられた電極収容部に対して、導電性の電極部材が収容されて充填材が充填されていると共に、該電極収容部の壁部には穿刺可能な蓋部材で覆われた受電口が設けられて、接触式給電ポートが構成されており、該電極収容部において該電極部材が収容されて該充填材が充填された領域の周壁の内周面が、底部側に向かって次第に広がって設けられていると共に、
経皮的な通電を行う電界及び/又は磁界の作用による非接触式給電ポートを併せて備えていることを特徴とする皮下埋込型通電ポート。
【請求項2】
体内に配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートであって、
体内に配置されるハウジングに設けられた電極収容部に対して、導電性の電極部材が収容されて充填材が充填されていると共に、該電極収容部の壁部には穿刺可能な蓋部材で覆われた受電口が設けられて、接触式給電ポートが構成されていると共に、
経皮的な通電を行う電界及び/又は磁界の作用による非接触式給電ポートを併せて備えていると共に、該非接触式給電ポートの電極として体内に埋設された治療器具の金属ケースが組み合わされることにより、該皮下埋込型通電ポートが該金属ケースを含んで構成されていることを特徴とする皮下埋込型通電ポート。
【請求項3】
前記非接触式給電ポートの複数を併せて備えている請求項1又は2に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項4】
前記電極部材が、金属製の線状材の湾曲構造体によって構成されている請求項1~の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項5】
前記電極部材が、金属製の多孔の板状体によって構成されている請求項1~の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項6】
前記金属製の多孔の板状体としてメッシュ構造体が採用されている請求項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項7】
前記メッシュ構造体が、折り曲げられ及び/又は重ね合わされた状態で、前記電極収容部に収容配置されている請求項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項8】
前記電極部材の電気抵抗率が1000μΩcm以下である請求項1~の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項9】
前記充填材がゲル状であり且つ電気抵抗率が1000μΩcm以上である請求項1~の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項10】
体組織に接する外表面が電気絶縁材で構成されている請求項1~の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項11】
前記ハウジングには複数の前記電極部材が互いに電気的に独立した状態で収容配置されている請求項1~10の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項12】
前記電極部材が、体内設置の電気デバイスとの間で通電を行なう通電手段を有している請求項1~11の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項13】
前記ハウジングにおいて、前記受電口に対して反対側に位置する底壁部分が、穿刺針の貫通を阻止する強度壁部とされている請求項1~12の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項14】
体外から穿刺されて前記蓋部材を貫通して前記ハウジングの前記電極収容部に差し入れられることにより前記電極部材に接触して導通される導通針が、組み合わされて構成されている請求項1~13の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項15】
前記電極部材において請求項又はに記載のメッシュ構造体が採用されていると共に、前記導通針において前記電極収容部に差し入れられて該メッシュ構造体に接触する先端部分が該メッシュ構造体におけるメッシュの開口サイズよりも太い外寸サイズとされている請求項14に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項16】
前記導通針が、前記電極収容部に差し入れられて前記電極部材に接触する先端部分を複数本有している請求項14又は15に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項17】
前記導通針において、複数の電極部が互いに電気的に独立して設けられている請求項1416の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート。
【請求項18】
複数の電極部材が収容配置された請求項11に記載の前記ハウジングを備えていると共に、前記導通針には、前記複数の電極部が長さ方向に独立して設けられており、該導通針が前記蓋部材を貫通して該ハウジングへ差し入れられることで、該導通針の該複数の電極部が各該電極部材に導通されるようになっている請求項17に記載の皮下埋込型通電ポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下に埋設状態で配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内に埋め込まれて用いられる電気デバイスが幾つか提案されている。例えば医療用の体内電気デバイスとして、人工心臓やペースメーカー、神経刺激装置などが知られている。
【0003】
ところで、体内に設置される電気デバイスでは、体外から電力を供給したり、体内外で情報を送受信したりするに際して、体外に設置される電源や体外装置などとの間での通電や給電が必要となる場合がある。
【0004】
ところが、皮膚を貫通して配線を常設することは貫通部位の感染症などが問題となりやすい。また、電磁誘導を利用した非接触型の経皮伝導も提案されているが、電磁場発生のコイルを含むトランス装置や高周波を発生させるインバータ装置をはじめとした複雑な装置が必要となることから、予期しない不具合の発生時の緊急対応が難しい場合があり、緊急時の信頼性の向上が望まれていた。
【0005】
なお、特開2013-85953号公報(特許文献1)には、ポケット状の受針口の底部に導電板を配置した皮下埋込型電気ソケットが提案されており、体外から穿刺される通電用中空針の先端を導電板に押し付けて当接させることで体内外での通電を実現するようにした機構が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の皮下埋込型電気ソケットでは、受針口の最底部に導電板が配置されているために、通電用中空針を最深位置まで差し入れなければ通電が実現されず、しかも、通電用中空針の先端は穿刺のために先鋭形状とされていることから、平板形状の導電板への接触面積が小さく、且つ安定した接触状態の維持も難しかった。そのために、低い導通抵抗で安定した通電状態を維持することが難しいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-85953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、比較的簡単な装置で通電を行なうことが可能であり、緊急時にも高い信頼性をもって速やかに且つ安定して通電状態を実現および維持することが可能となる、新規な構造の皮下埋込型通電ポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、体内に配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートであって、体内に配置されるハウジングに設けられた電極収容部に対して、導電性の電極部材が収容されて充填材が充填されていると共に、該電極収容部の壁部には穿刺可能な蓋部材で覆われた受電口が設けられて、接触式給電ポートが構成されており、該電極収容部において該電極部材が収容されて該充填材が充填された領域の周壁の内周面が、底部側に向かって次第に広がって設けられていると共に、経皮的な通電を行う電界及び/又は磁界の作用による非接触式給電ポートを併せて備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材が電極収容部への収容状態で配されていることから、導通針を電極収容部の最深部まで差し入れなくても通電可能とされ得る。また、電極収容部へ刺し入れられた導通針の先端だけでなく、外周面に対しても電極部材を接触させて通電させることが可能になることから、確実で安定した通電状態が実現され得る。更に、本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば蓋部材に対して導通針を針軸方向に対して傾斜した状態で穿刺することも可能であると共に、内部領域が広がることで電極部材の収容スペースも容易に確保可能になる。加えて、本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、接触式の通電ポートと非接触式の通電ポートを採用することで、例えば接触式通電ポートと非接触式給電ポートとの一方を、他方に不具合が発生した場合の緊急用のバックアップとすることができる。特に、電気デバイスへの通常の給電を非接触式給電ポートを利用して行うことで、患者の負担が抑えられるとともに、緊急的な給電を接触式通電ポートを利用して行うことで、より確実な給電が実現され得る。
また、本発明の第2の態様は、体内に配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートであって、体内に配置されるハウジングに設けられた電極収容部に対して、導電性の電極部材が収容されて充填材が充填されていると共に、該電極収容部の壁部には穿刺可能な蓋部材で覆われた受電口が設けられて、接触式給電ポートが構成されていると共に、経皮的な通電を行う電界及び/又は磁界の作用による非接触式給電ポートを併せて備えていると共に、該非接触式給電ポートの電極として体内に埋設された治療器具の金属ケースが組み合わされることにより、該皮下埋込型通電ポートが該金属ケースを含んで構成されていることを特徴とするものである。
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、該非接触式給電ポートの複数を併せて備えているものである。
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば複数の非接触式給電ポートのうちの何れか1つを通常の給電用のポートとして利用することができるとともに、残りの非接触式給電ポート及び/又は接触式通電ポートを、通常の給電ポートに不具合が発生した場合の緊急用のバックアップとして利用することができる。
【0011】
本発明の第の態様は、前記第1~第の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記電極部材が、金属製の線状材の湾曲構造体によって構成されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、線状材を丸めたり折り曲げたりした湾曲構造体が電極部材として採用されていることにより、電極収容部において導通針の穿刺用の空間を残しつつ、導通針における電極部材への接触効率や接触安定性の向上を図ることも可能になる。
【0013】
本発明の第の態様は、前記第1~第の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記電極部材が、金属製の多孔の板状体によって構成されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材に形成された孔に導通針が嵌まり込んだり挿通されたりすることで電極部材と導通針とが接触することから、電極部材と導通針との接触状態の安定化を図ることができる。
【0015】
本発明の第の態様は、前記第の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記金属製の多孔の板状体としてメッシュ構造体が採用されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材としてメッシュ構造体を採用したことで、例えばパンチ穴を設けた多孔板に比して板面積に対する孔数や孔の総開口面積を大きくすることができて、導通針の孔への入り込み等による安定した接触状態がより発現され易くなる。
【0017】
本発明の第の態様は、前記第の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記メッシュ構造体が、折り曲げられ及び/又は重ね合わされた状態で、前記電極収容部に収容配置されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、重ね合わされることで実質的に複数層とされたメッシュ構造体に対して導通針が挿通されることで、電極部材と導通針との接触面積の向上が図られるとともに、接触状態もより安定して維持され得る。
【0019】
本発明の第の態様は、前記第1~第の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記電極部材の電気抵抗率が1000μΩcm以下であるものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材の材質として電気抵抗率の比較的小さい材質を採用することで、電極部材と導通針との接触による通電効率の向上が図られ得る。
【0021】
本発明の第の態様は、前記第1~第の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記充填材がゲル状であり且つ電気抵抗率が1000μΩcm以上であるものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、充填材の材質として電気抵抗率の比較的大きい材質を採用することで、例えばゲル状の充填材の漏れ出しなどによる不用意な通電損傷が防止され得る。
【0023】
本発明の第10の態様は、前記第1~第の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、体組織に接する外表面が電気絶縁材で構成されているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、安全性の向上が図られ得る。
【0025】
本発明の第11の態様は、前記第1~第10の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記ハウジングには複数の前記電極部材が互いに電気的に独立した状態で収容配置されているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、複数の電極部材によって導通針への接触や通電の向上を図ったり、導通針に対して複数の通電点を設定したりすることができると共に、極性の異なる通電点を設定することも可能となって、設計自由度の向上が図られ得る。
【0027】
本発明の第12の態様は、前記第1~第11の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記電極部材が、体内設置の電気デバイスとの間で通電を行なう通電手段を有しているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、体内設置の電気デバイスに対して、例えばリード線などの通電手段を介して安定して電力を供給することができる。
【0031】
本発明の第13の態様は、前記第1~第12の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記ハウジングにおいて、前記受電口に対して反対側に位置する底壁部分が、穿刺針の貫通を阻止する強度壁部とされているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、強度壁部により、穿刺針(導通針)の穿刺操作力が大きくなっても不用意にハウジングを貫通することが防止され得る。
【0037】
本発明の第14の態様は、前記第1~第13の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、体外から穿刺されて前記蓋部材を貫通して前記ハウジングの前記電極収容部に差し入れられることにより前記電極部材に接触して導通される導通針が、組み合わされて構成されているものである。
【0038】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針が組み合わされて構成されることで、医療現場などにおける取扱いなどが容易とされ得る。
【0039】
本発明の第15の態様は、前記第14の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記電極部材において前記第又は第の態様に記載のメッシュ構造体が採用されていると共に、前記導通針において前記電極収容部に差し入れられて該メッシュ構造体に接触する先端部分が該メッシュ構造体におけるメッシュの開口サイズよりも太い外寸サイズとされているものである。
【0040】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針がメッシュ構造体の開口部分を押し広げるように電極部材に挿通されることから、より確実な電極部材と導通針との接触が達成され得る。
【0041】
本発明の第16の態様は、前記第14又は第15の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記導通針が、前記電極収容部に差し入れられて前記電極部材に接触する先端部分を複数本有しているものである。
【0042】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針の先端部分において複数本のうちの少なくとも1本が電極部材に接触すれば電気的な導通が達成されることから、電極部材と導通針との接触が安定して実現され得る。
【0043】
本発明の第17の態様は、前記第14~第16の何れかの態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、前記導通針において、複数の電極部が互いに電気的に独立して設けられているものである。
【0044】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば導通針において複数の電極部におけるそれぞれの電気的な特性や機能を相互に異ならせることも可能となる。
【0045】
本発明の第18の態様は、前記第17の態様に係る皮下埋込型通電ポートにおいて、複数の電極部材が収容配置された前記第11の態様に記載の前記ハウジングを備えていると共に、前記導通針には、前記複数の電極部が長さ方向に独立して設けられており、該導通針が前記蓋部材を貫通して該ハウジングへ差し入れられることで、該導通針の該複数の電極部が各該電極部材に導通されるようになっているものである。
【0046】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば電気的な特性や機能が異ならされた複数の電極部材のそれぞれに対して、対応するように電気的な特性や機能が異ならされた導通針における複数の電極部を接触させることで、複数の異なる電気的な特性や機能が発揮され得る。
【発明の効果】
【0047】
本発明に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材と導通針との接触安定性の向上が図られ得る。また、かかる通電ポートを簡単な構造をもって構成することで、緊急時においても信頼性の高い導通(通電)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型通電ポートを含んで構成される経皮エネルギー伝送システムを説明するための説明図。
図2】本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型通電ポートを示す縦断面図であって、電気デバイスに対して電極部材と導通針とを接触させて給電する状態を説明するための説明図。
図3図2に示された皮下埋込型通電ポートにおいて電気デバイスに対して非接触的に給電する状態を説明するための説明図。
図4図1に示された経皮エネルギー伝送システムの作動を説明するためのフローチャート図。
図5】本発明の第2の実施形態としての皮下埋込型通電ポートを示す縦断面図。
図6図5に示された皮下埋込型通電ポートの別の態様を示す縦断面図。
図7】本発明の第3の実施形態としての皮下埋込型通電ポートを示す縦断面図。
図8図7に示された皮下埋込型通電ポートの別の態様を示す縦断面図。
図9】本発明で採用され得る導通針の具体的な構造の1例を示す正面図。
図10】本発明の別の態様としての皮下埋込型通電ポートを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0050】
先ず、図1には、本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型通電ポート10を含んで構成される経皮エネルギー伝送システム12が示されている。かかる経皮エネルギー伝送システム12により、体内に設置される電気デバイスに対して、皮膚を貫通する配線を常設することなく通電や給電がなされるようになっている。なお、図1,2中の一点鎖線は患者の皮膚Sを示しており、当該一点鎖線Sよりも図1中の右方および図2中の下方が患者の体内となっている。
【0051】
より詳細には、図2にも示されるように、皮下埋込型通電ポート10は、体内に配置されるハウジング14を備えている。このハウジング14の形状や材質などは何等限定されるものではないが、本実施形態では、全体として略円錐台形状とされており、皮膚S側の方が底部側よりも小さな面積とされている。また、ハウジング14は、電気絶縁性を有する硬質の合成樹脂により形成されることが望ましい。
【0052】
そして、ハウジング14の内部には、皮膚Sに向かって開口する電極収容部16が形成されている。本実施形態の電極収容部16は有底の穴形状とされている。なお、電極収容部16の断面形状や開口部18の形状は何等限定されるものでなく、例えば円形状や矩形状とされ得る。特に、本実施形態では、2つの電極収容部16,16が、略同じ形状をもって相互に独立して形成されている。
【0053】
電極収容部16の開口部18は蓋部材20で覆われており、電極収容部16が密閉されている。これにより、ハウジング14は、外部空間に対して実質的に遮断された電極収容部16を備えており、当該電極収容部16の上底壁部が蓋部材20により構成されている。蓋部材20は、ゴムやエラストマなどの弾性を有する材質により形成されており、後述する導通針36が穿刺可能とされているとともに、導通針36の抜去後に弾性的な復元作用により電極収容部16が再密閉されるようになっている。また、電極収容部16の開口部18を含んで受電口が構成されている。
【0054】
さらに、電極収容部16には、導電性の電極部材22が収容されているとともに、充填材24が充填されている。
【0055】
電極部材22の材質は、導電性を有する材質、即ち電気抵抗率の小さい材質であれば何等限定されるものではないが、例えば電気抵抗率が1000μΩcm以下の材質が好適に採用される。具体的には、銅、銀、ステンレス、又はそれらの合金や複合材などが好適に採用される。具体的には、電極部材22としては、例えば藤倉化成株式会社製「ドータイト(商品名)」などが好適に採用される。
【0056】
また、電極部材22の形状は何等限定されるものではないが、本実施形態では、多孔の板状体として形成されており、特に本実施形態では、メッシュ構造体(メッシュを有する板状体)として形成されている。すなわち、本実施形態の電極部材22は、所定太さの銅線を所定の間隔で格子状に重ね合わせて相互に固定したり編むこと等によって形成されている。なお、銅線の断面形状は限定されたものではなく、例えば円形や三角形、四角形などの多角形をしていてもよく、また中実、中空であるかを問わない。また、本実施形態ではメッシュ構造体(電極部材22)が平らなものを用いていたが、このような態様に限定されるものではなく、例えば波打っている形状であってもよい。
【0057】
そして、本実施形態では、各電極収容部16において、電極収容部16の内周面形状に対応した外周形状を有する電極部材22の複数枚(図2中では各5枚)が、図2中の上下方向で相互に当接状態で、或いは相互に所定距離を隔てた状態で重ね合わされて収容されている。なお、かかる電極部材22は、例えば1枚の長い板状体からなる電極部材が折り曲げられることで、各電極収容部16内に重ね合わされた状態で収容されてもよい。また、互いに重ね合わされた電極部材22において、メッシュの位置は、相互に位置合わせされる必要はなく、相互に異ならされていてもよい。さらに、各電極部材22におけるメッシュの開口サイズは何等限定されるものではないが、本実施形態では、後述する導通針36の外径寸法よりも僅かに小さくされている。なお、電極部材22は、例えばソリッドの板状体に多数の貫通孔を設けたパンチングメタル等によって構成されてもよい。
【0058】
また、電極収容部16に充填される充填材24の材質は何等限定されるものでないが、本実施形態では、非導電性を有する材質、即ち電気抵抗率の大きい材質で形成されている。具体的には、例えば電気抵抗率が1000μΩcm以上とされる、信越化学工業株式会社製の信越シリコーン(登録商標)「KE-3491」「KE-45」「KE-441」(商品名)などが好適に採用される。特に、上記「KE-3491」や「KE-45」はペースト状(ゲル状)とされており、充填などの取り扱いが容易とされる。また、充填材24は金属であってもよい。すなわち、例えば常温で流動性を有する金属や流動状やゲル状、軟質状の樹脂等の母材中に金属粉などの導電材を分散させた複合材を一方又は両方に採用することなどにより、電極部材22と充填材24とが同じ金属で例えば一体的に設けられてもよいし、電極部材22と充填材24とが異なる金属で構成されてもよい。何れの場合も、電極収容部16には、導通針36が穿刺可能となるように受電口(開口部18)が設けられる。
【0059】
充填材24は、蓋部材20で密閉状態とされた電極収容部16において、電極部材22のまわりに空間が残存しないように充填されることが望ましい。これにより、電極部材22と空気との接触が回避されて、電極部材22の腐食が防止され得る。
【0060】
さらに、各電極収容部16に収容された電極部材22には、通電手段が設けられている。本実施形態では、当該通電手段が、絶縁材で覆われた被覆電線などからなるリード線26により構成されており、当該リード線26が電極部材22からハウジング14の外部に延び出している。本実施形態では、各電極収容部16に収容配置された複数の電極部材22が相互に電気的に接続されており、それら複数の電極部材22に導通された1本のリード線26が設けられている。尤も、複数枚の電極部材22は、電気的に独立していてもよく、電気的に独立した電極部材22毎に、それぞれリード線26が設けられていてもよい。また、電極部材22と後述する電気デバイス(人工心臓28)との間で通電を行う通電手段は、リード線26に限定されるものではない。
【0061】
なお、2つの電極収容部16,16に収容された各複数の電極部材22,22は、相互に電気的に独立していることから、それら2つの電極収容部16,16の各電極部材22,22からは、各別に独立したリード線26,26が延びだしている。
【0062】
そして、各リード線26において、電極部材22に接続される側と反対側の端部は、体内に設置される電気デバイスとしての人工心臓28(VAD)に接続されている。本実施形態の人工心臓28は、図1にも示されるように、相互に電気的に接続されるVADモータ30とVADモータドライバ32を含んで構成されている。そして、各リード線26はそれぞれ、VADモータドライバ32に接続されており、リード線26を通じてVADモータドライバ32に給電されることで、VADモータドライバ32がVADモータ30を駆動させるようになっている。特に、本実施形態では直流型の電気デバイスが採用されており、一方(図2中の右方)のリード線26が人工心臓28(VADモータドライバ32)のプラス端子に接続されているとともに、他方(図2中の左方)のリード線26が人工心臓28(VADモータドライバ32)のマイナス端子に接続されている。
【0063】
また、本実施形態では、ハウジング14において皮膚S側の面に沿って後述する受電コイル42が配されているが、少なくともかかる受電コイル42を覆うようにしてハウジング14の皮膚S側の表面(外表面)が、電気絶縁材からなる絶縁層34で被覆されている。かかる電気絶縁材としては、電気抵抗率の大きい合成樹脂などが好適に採用される。なお、図2中では、絶縁層34の厚さ寸法を略0として示している。尤も、かかる絶縁層34は、例えばハウジング14の全体を電気抵抗率の大きい合成樹脂で形成すると共に、受電コイル42を埋設することで構成されてもよい。また、ハウジング14が金属などの導電性の部材等で形成される場合には、ハウジング14の全体を包み込むように絶縁層34を形成することが望ましい。
【0064】
而して、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10は、穿刺針としての導通針36が体外から皮膚Sを貫通して電極収容部16へ穿刺されるようになっている。導通針36としては、例えば金属等の導電性の中空針又は中実針が用いられ、穿刺し易いように先端が先鋭形状とされるのが良い。なお、本発明に係る皮下埋込型通電ポート10は、かかる導通針36を組み合わせて構成されていてもよい。
【0065】
すなわち、各電極収容部16に対して導通針36が体外から差し入れられるようになっており、導通針36の先端部分が皮膚Sおよび蓋部材20を貫通して、導通針36がメッシュ構造体とされた電極部材22と接触されるようになっている。本実施形態では、各電極収容部16において、複数枚の電極部材22が重ね合わされた状態で配置されているとともに、導通針36の外寸サイズ(外径寸法)が、電極部材22におけるメッシュの開口サイズと略同じか僅かに大きくされていることから、電極部材22に導通針36が挿通されることで電極部材22に対して、導通針36において電極収容部16へ差し入れられた先端部分がより確実に接触するようになっている。
【0066】
また、本実施形態では、各導通針36において、電極収容部16に差し入れられる側と反対側の端部が、それぞれリード線38を介して体外バッテリー40に接続されることで、導通針36が通電用の電極とされている。特に、本実施形態では、かかる体外バッテリー40が、緊急用の体外バッテリーとされている。そして、一方(図2中の右方)の導通針36がリード線38を介して体外バッテリー40のプラス端子に接続されているとともに、他方(図2中の左方)の導通針36がリード線38を介して体外バッテリー40のマイナス端子に接続されている。これにより、体外バッテリー40に対して電気的に接続された各導通針36を各電極収容部16に差し入れて電極部材22と接触させることで、リード線26を介して人工心臓28に電力が供給されるようになっている。
【0067】
さらに、本実施形態では、ハウジング14に受電コイル42が組み付けられている。受電コイル42は、導電性の金属線などを図2中の上下方向を中心軸方向として周方向に巻回させることで環状に構成されており、ハウジング14の上端面(即ち、体外に向かう面)に略露呈されているか、ハウジング14や絶縁層34で僅かに覆われた状態で埋設されている。なお、本実施形態では、皮膚Sに向かう面の幅寸法が、厚さ方向に比して大きくされた偏平形の受電コイル42が採用されている。受電コイル42は、リード線44を介して、ハウジング14内に埋設された整流回路46に電気的に接続されているとともに、当該整流回路46が、リード線48を介して人工心臓28に電気的に接続されている。
【0068】
このような受電コイル42には、図3に示されるように、対応した環状の送電コイル50が体外から接近されて給電されるようになっている。なお、送電コイル50は、リード線52により、緊急用のインバータ回路54を介して体外バッテリー(40)に接続されている。
【0069】
また、本実施形態では、緊急用の体外バッテリー40とインバータ回路54とが共通の台座56に取り付けられており、当該台座56には、体外バッテリー40とインバータ回路54が正常に動作しているか否かを確認するための正常動作確認ランプ58,60が設けられている。
【0070】
そして、送電コイル50を受電コイル42に接近対峙させた状態で送電コイル50に通電することで、電磁誘導現象により受電コイル42に誘導起電力が生じて、整流回路46を介して人工心臓28に給電されるようになっている。
【0071】
すなわち、本実施形態の経皮エネルギー伝送システム12では、共通の皮下埋込型通電ポート10において、電極部材22と導通針36とを利用した接触式(即ち、皮膚Sを貫通する)の経皮的なエネルギー伝送システム61aと、空心偏平型の受電コイル42および送電コイル50を利用した非接触式(即ち、皮膚Sを貫通しない)の経皮的なエネルギー伝送システム61bとを並列的に備えている。要するに、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10は、電磁力の作用により人工心臓28に対して経皮的な給電を行う非接触式給電ポート62を併せて備えており、当該非接触式給電ポート62が、ハウジング14や受電コイル42、リード線44,48などを含んで構成されている。なお、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10において、接触式の給電態様と非接触式の給電態様とは択一的に機能することから、図1中において非接触式の給電態様を表す部分を二点鎖線で示す。
【0072】
また、本実施形態の経皮エネルギー伝送システム12は、上記皮下埋込型通電ポート10の他に、2つの非接触式給電ポート64,66を備えている。これら非接触式給電ポート64及び/又は非接触式給電ポート66は、上記皮下埋込型通電ポート10が備える非接触式給電ポート62、即ち空心偏平型のコイルを利用した非接触式の給電ポートと同様の構造であってもよいが、本実施形態では、2つの非接触式給電ポート64,66の何れもが、特開2016-25677号公報に記載の電力伝送装置(10)と同様の構造とされている。なお、かかる非接触式給電ポートは2つ設けられる必要はなく、何れか一方が設けられるだけでもよい。尤も、本発明において、これら非接触式給電ポート64,66は必須なものではない。以下、これら非接触式給電ポート64,66について簡単に説明する。
【0073】
すなわち、非接触式給電ポート64,66は、体側に配置された二次コイル68a,68bを備えている。当該二次コイル68a,68bは、ハウジング70a,70b内に配された整流回路72a,72bと電気的に接続されており、当該整流回路72a,72bは、リード線74a,74bを介してVADモータドライバ32に電気的に接続されている。また、二次コイル68a,68bは、一次コイル76a,76bと体内又は体外で交差(結合)しており、当該一次コイル76a,76bがリード線78a,78bを介してインバータ回路80a,80bに電気的に接続されるようになっている。そして、これらインバータ回路80a,80bが、共通の体外バッテリー82に電気的に接続されている。かかる二次コイル68a,68bまたは一次コイル76a,76bの少なくとも一方は、例えば他方に対して引っ掛けることができるように構成される。すなわち、例えば二次コイル68a,68bまたは一次コイル76a,76bの少なくとも一方が開閉可能な開口部を有しており、他方を一方の開口部を通じて押し入れることができるとともに、当該開口部を通過することで閉じることができるように構成され得る。また、二次コイル68a,68bまたは一次コイル76a,76bの少なくとも一方がc字形状になって、他方に引っ掛けることができるように構成されていてもよい。なお、非接触式給電ポート64,66は空心偏平型のコイルを利用する態様であってもよく、かかる場合には、何れも空心偏平型とされる二次コイル68a,68bと一次コイル76a,76bとをそれぞれ近づけて体内外で対向させるような構成とされる。
【0074】
かかる一次コイル76a,76bに体外バッテリー82から電力が供給されることで、一次コイル76a,76bに入力された交流電力が電磁誘導によって二次コイル68a,68bに伝送されて、人工心臓28(VADモータドライバ32)に対して経皮的な給電が行われるようになっている。すなわち、これら一次コイル76a、二次コイル68a、体外バッテリー82などを含んで第1のエネルギー伝送システム83aが構成されているとともに、一次コイル76b、二次コイル68b、体外バッテリー82などを含んで第2のエネルギー伝送システム83bが構成されている。本実施形態の第1および第2のエネルギー伝送システム83a,83bは、一次コイル76a,76bと二次コイル68a,68bとが体外で結合する体外結合型のエネルギー伝送システムとされている。
【0075】
なお、上記インバータ回路80a,80bおよび体外バッテリー82は、共通の台座84に取り付けられており、当該台座84には、一次コイル76a,76bにおける電流値が正常とされる範囲内か否かを確認するための正常動作確認ランプ86,88が設けられている。かかる正常動作確認ランプ86,88は、例えばそれぞれ1つずつ設けられて、異常動作を検出した場合に点灯するようにしてもよいし、図1に示されるように、それぞれ一対ずつ設けられて、正常動作中は一方(例えば、黒色)のランプが点灯するとともに、異常動作が検出された場合は他方(例えば、白色)のランプが点灯するようになっていてもよい。
【0076】
以上の如き構造とされた経皮エネルギー伝送システム12の作動を、図4のフローチャートに示す。かかるフローチャートは本明細書の記載の一部を為すものであって、フローチャートによって作動を理解することができるし、作動は本発明品の一用途を例示するだけのものであって発明を限定するものでないが、念のために以下に簡単に説明する。なお、皮下埋込型通電ポート10(非接触式給電ポート62)や非接触式給電ポート64,66、人工心臓28は、施術により予め体内に埋め込まれているものとする。また、本実施形態のように非接触式給電ポート64,66が2つ設けられる場合には、通常使用として両給電ポート64,66を利用することも可能であるし、一方を他方が故障した際のバックアップとして利用することも可能である。特に、本実施形態では、非接触式給電ポート62を利用したエネルギー伝送システム61bが、第1および第2のエネルギー伝送システム83a,83bのバックアップとされているとともに、皮下埋込型通電ポート10を利用したエネルギー伝送システム61aが、エネルギー伝送システム61bの更なるバックアップとされている。
【0077】
なお、非接触式給電ポートを2つ用いて人工心臓28の駆動に必要な電力を半分ずつ電力伝送する場合には、一方の非接触式給電ポートの位相を他方に対して逆相にすることで、放射電磁ノイズを低減させることができる。放射電磁ノイズは、国際規格CISPR11の範囲内に収める必要があり、低減できればできるほどよい。以下の説明では、通常使用として両給電ポート64,66を利用する態様を説明する。
【0078】
先ず、S1において、一次コイル76a,76bを二次コイル68a,68bに取り付ける。次に、S2,S3において、体外バッテリー82の電源をONにして一次コイル76a,76bへの送電を開始する。これにより、体外バッテリー82から人工心臓28に給電されて、人工心臓28が駆動せしめられる。また、S4,S5,S6,S7において、一次コイル76a,76bの電流値I1 ,I2 により給電状態を監視し、異常が検知された場合には再確認を行ない、それでも異常状態が継続する場合には、S8においてアラーム3が報知される。その後、緊急用のエネルギー伝送システム61bにおいて送電コイル50と受電コイル42とによる送電処理が実行される。
【0079】
すなわち、S9において、体外バッテリー40の電源をONにして送電コイル50への送電を開始するとともに、送電コイル50を受電コイル42に接近させることにより、体外バッテリー40から人工心臓28に給電する。また、S10において、インバータ回路54の電流値I3 を測定して給電状態を監視する。異常が検知された場合には再確認を行ない、それでも異常状態が継続する場合には、S11においてアラーム4が報知される。アラーム4が報知された場合には再確認を行い、それでも異常状態が継続する場合には、緊急用のエネルギー伝送システム61aにおいて導通針36と皮下埋込型通電ポート10とによる緊急の送電処理が実行される。
【0080】
すなわち、S12において、導通針36を電極収容部16へ差し入れるとともに、体外バッテリー40の電源をONにして導通針36への送電を開始する。これにより、体外バッテリー40から人工心臓28に給電される。また、S13において、体外バッテリー40の電流値I4 を測定して給電状態を監視する。異常が検知された場合には再確認を行ない、それでも異常状態が継続する場合には、S14においてアラーム5が報知されることで、再確認の処理が促される。
【0081】
以上の如き構造とされた経皮エネルギー伝送システム12では、通常使用時には、非接触式給電ポート64,66を利用した第1および第2のエネルギー伝送システム83a,83bにより給電されることから、給電時における患者の負担が軽減される。また、これら第1および第2のエネルギー伝送システム83a,83bが故障した際のバックアップとしても非接触式のエネルギー伝送システム61bが採用されており、患者の負担が一層軽減され得る。そして、これら非接触式のエネルギー伝送システム83a,83b,61bが全て故障した際のバックアップとして、本発明に係る皮下埋込型通電ポート10を利用した接触式のエネルギー伝送システム61aが採用されている。
【0082】
ここにおいて、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10では、導通針36を電極収容部16に刺し入れるだけで、電極収容部16に収容配置された電極部材22が導通針36に対して、針先接触に限定されない多様な接触状態を与え得ることからたとえ導通針36の先端が先鋭形状であっても、電極部材22と導通針36との接触の確実性と安定性とが向上され得る。また、電極部材22に対して導通針36を挿通することのみで通電が実現されることから、例えば非接触式のエネルギー伝送システム61b,83a,83bに比べて構造が簡単であり、それ故に故障などの不具合も生じ難くなっているし、高い給電効率や信頼性が発揮され得る。しかも、このような接触式のエネルギー伝送システム61aを最後の緊急時用のバックアップ手段とすることで、患者の負担が最小限まで抑えられるとともに、緊急時における通電がより確実に実現され得る。
【0083】
また、本実施形態では、電極部材22としてメッシュ構造体が採用されていることから、電極部材22と導通針36との相互の位置決めが不要とされ得る。特に、複数枚の電極部材22が相互に重ね合わされて配置されたり、メッシュの開口寸法を導通針36の外径寸法より小さく設定することで、電極部材22と導通針36との接触の確実性が一層向上され得る。
【0084】
さらに、本実施形態では、2つの電極収容部16,16が相互に離隔して形成されており、それぞれの電極収容部16に収容される電極部材22が相互に電気的に独立した状態で収容配置されている。また、これら電極部材22にはリード線26が直接接続されているとともに、更にこれらリード線26が人工心臓28に接続されている。すなわち、電極部材22として異なる特性(+極と-極)を設定することが可能となり、体外バッテリー40と、そのプラス端子とマイナス端子に接続される導通針36を準備することだけで、人工心臓を駆動させることも可能となる。また、電極部材22と人工心臓28とが、リード線26により直接接続されていることから、電力の供給が一層安定して実現される。
【0085】
更にまた、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10は、受電コイル42を備えており、当該受電コイル42などを含んで非接触式給電ポート62が構成されている。それ故、非接触式の給電ポートを併せて設けるに際しても、例えば非接触式給電ポートを別途患者に埋設する場合に比べて、患者の負担が軽減され得る。
【0086】
また、本実施形態の皮下埋込型通電ポート10では、体組織に接する外表面が電気絶縁材で構成されていることから、漏電などによる患者へのリスクが回避され得る。
【0087】
次に、図5には、本発明の第2の実施形態としての皮下埋込型通電ポート90が示されている。本実施形態の皮下埋込型通電ポート90は、前記第1の実施形態と基本的な構造は同様であるが、ハウジング14が1つの電極収容部16を備えているとともに、パッド電極92を備えている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0088】
このパッド電極92は、塩化銀板や銅板などの導電性を有する板状体として構成されており、例えば略矩形板状や略円板状とされている。かかるパッド電極92は、ハウジング14の上端面(即ち、体外に向かう面)に略露呈されているか、ハウジング14や絶縁層34で僅かに覆われた状態で、ハウジング14に埋設されている。また、当該ハウジング14には、前記第1の実施形態と同様に受電コイル42が埋設されており、パッド電極92が受電コイル42の外周側に位置している。
【0089】
そして、電極収容部16に収容される電極部材22とパッド電極92からはリード線94が延び出しており、皮下埋込型通電ポート90の内部または外部に設けられた整流回路96に電気的に接続されているとともに、当該整流回路96が電気的に人工心臓28に接続されている。なお、図5に示されるように、かかる整流回路96は人工心臓28の内部に設けられてもよく、即ち人工心臓28は、整流回路96を含んで構成されていてもよい。また、前記第1の実施形態と同様に、受電コイル42からはリード線44が延び出して整流回路46に電気的に接続されているとともに、当該整流回路46からはリード線48が延び出して人工心臓28に電気的に接続されている。すなわち、受電コイル42に対して前記第1の実施形態と同様の送電コイル(50)を接近させることで、非接触式のエネルギー伝送システム(61b)が構成されている。
【0090】
また、体内に埋設されたパッド電極92には、体外からパッド電極98が接近せしめられる。パッド電極98は、例えば体内に埋設されるパッド電極92より一回り大きな形状とされており、体内側のパッド電極92と同様の材質により形成されている。かかる体外側のパッド電極98および電極収容部16に差し入れられる導通針36は、リード線100を介して緊急用のインバータ回路54に電気的に接続されている。
【0091】
かかる構造とされた皮下埋込型通電ポート90を利用して人工心臓28に給電するには、先ず、導通針36を電極収容部16に差し入れるとともに、体外側のパッド電極98を体内側のパッド電極92に接近させる。なお、体外側のパッド電極98は、皮膚Sに接触させてもよいし、離隔していてもよい。かかる状態で、導通針36と体外側のパッド電極98とに電圧を印加することで、体内側の電極部材22とパッド電極92に対して給電される。このようにして外部から給電された電力は整流回路96を介して人工心臓28に給電されるようになっている。
【0092】
したがって、本実施形態の皮下埋込型通電ポート90は、受電コイル42を含んで構成された非接触式給電ポート62とは別の給電回路として、電極部材22とパッド電極92を含んで構成された接触式と非接触式とのハイブリッド的な給電ポート104を併せて並列的に備えている。本実施形態では、緊急の給電用の電極部材22の導通針が一つで済むことから、患者や施術者の負担の軽減が図られ得る。
【0093】
次に、図6には、本実施形態の別の態様としての皮下埋込型通電ポート106が示されている。本態様における皮下埋込型通電ポート106は、図5に示された皮下埋込型通電ポート(90)と同様の構造とされたパッド電極92を採用している。一方、本実施形態では、導通針(36)の穿刺による給電を受ける電極部材22と受電コイル42は、整流回路46,96を介して人工心臓28(VADモータドライバ32)に電気的に接続されている。なお、本実施形態は、図5に示された皮下埋込型通電ポート(90)におけるパッド電極92の別利用形態を例示するものであり、本実施形態では、パッド電極92が電極部材22とは別の給電回路を構成している。それ故、本実施形態において電極部材22は、例えば図2に示された実施形態と同様に複数の電極収容部16にそれぞれ収容配置された複数の電極部材22とされて、パッド電極92とは別の給電回路を構成し得る。
【0094】
そして、体外に設けられるインバータ回路54には、リード線100を介して、対をなすパッド電極98とパッド電極108が電気的に接続されており、人工心臓28への給電時には、パッド電極92とパッド電極98が体内外で対向させられるようになっているとともに、パッド電極108と、人工心臓28におけるアクチュエータや回路110の筐体としてのチタン等の金属ケース112が体内外で対向させられるようになっている。すなわち、本態様では、人工心臓28におけるアクチュエータや回路110の金属ケース(チタンケース)112を一方の電極として利用するものであり、パッド電極92,98間とパッド電極108と金属ケース(チタンケース)112との間において、人工心臓28へ給電するための非接触式のエネルギー伝送システム114が構成されている。かかるアクチュエータや回路110は、例えば、図6に示されるように、VADモータ30やVADモータドライバ32、整流回路96を含むように構成される。なお、金属ケース112は、全体が金属製である必要はなく、パッド電極108と対峙して送受電を行い得る部位が少なくとも導電性であれば良い。この場合、かかる導電性を有する部分が、整流回路96を介して、リード線によりVADモータ30またはVADモータドライバ32と接続される。すなわち、本態様の皮下埋込型通電ポート106は、受電コイル42を含んで構成される非接触式給電ポート62とは別に、パッド電極92を含んで構成される非接触式給電ポート113を備えており、複数の非接触式給電ポート62,113を併せて備えている。また、金属ケース112は1つに限定されたものではなく、VADモータ30とVADモータドライバ32とがそれぞれ、相互に電気的に接続される別個の金属ケース112に収容されていてもよい。この場合、パッド電極108と体内外で対向する金属ケース112が、整流回路96を介してVADモータ30またはVADモータドライバ32と接続するように構成される。
【0095】
本態様における皮下埋込型通電ポート106は、人工心臓などの患者体内に埋設された治療器具の一部を巧く利用して、非接触給電用の電極を構成することができるから、装置の部品点数や大きさを抑えつつ、例えば緊急時や通常時において電力や信号の送受信に利用できる非接触式のエネルギー伝送システム114が、パッド電極92を含んで構成され得る。そして、かかる非接触式のエネルギー伝送システム114が、電極部材22を含んで構成される接触式のエネルギー伝送システム(61a)や受電コイル42を含んで構成される非接触式のエネルギー伝送システム(61b)と併せて採用されている。
【0096】
次に、図7には、本発明の第3の実施形態としての皮下埋込型通電ポート120が示されている。前記第1および第2の実施形態では、皮下埋込型通電ポート10,90,106が略円錐台形状とされていたが、本実施形態においても、皮下埋込型通電ポート120は、略円錐台形状や略台形の縦断面を有する略偏平な板形状とされ得る。なお、図7(a)は、導通針122が皮下埋込型通電ポート120に穿刺される前の状態を示しているとともに、図7(b)は、導通針122が皮下埋込型通電ポート120に穿刺された状態を示している。
【0097】
本実施形態では、電極収容部124が、図7中の上下方向(導通針122の穿刺方向)で貫通して形成されており、当該電極収容部124の受電口としての上側開口部18(即ち、体外に向かう側の開口部)が蓋部材20で覆蓋されているとともに、下側開口部が比較的剛性(強度)が大きくされた強度壁部126で覆蓋されている。すなわち、皮下埋込型通電ポート120のハウジング128は、内部空間としての電極収容部124を備えており、当該電極収容部124の上底壁部が蓋部材20により構成されているとともに、受電口(開口部18)に対して反対側に位置する底壁部分が、強度壁部126により構成されている。そして、かかる電極収容部124に電極部材130が収容配置されている。
【0098】
本実施形態の電極部材130は、銅や銀、鉄やステンレスなどの金属製の線状体の湾曲構造体により構成されており、例えばスチールウールやステンレスカールなどが好適に採用される。また、本実施形態では、強度壁部126の上下方向中間部分に絶縁性を有する中間層132が設けられており、電極収容部124が上下方向で2つに仕切られている。
【0099】
すなわち、本実施形態では、上下方向で相互に離隔する一対の電極収容部124a,124bが設けられており、これら電極収容部124a,124bのそれぞれに電極部材130a,130bが収容されているとともに、各電極収容部124に充填材24が充填されている。なお、中間層132は、ハウジング128と一体的に形成されてもよいし、絶縁性の樹脂や弾性材などで形成されていてもよく、上方または下方に開口する電極収容部124a,124bのそれぞれの開口部を蓋部材20と強度壁部126で覆蓋するようになっていてもよい。また、かかる電極部材130は、図示しないリード線を介して人工心臓(28)に対して電気的に接続されており、例えば上方の電極部材130aが、人工心臓(28)のプラス端子に接続されているとともに、下方の電極部材130bが、人工心臓(28)のマイナス端子に接続されている。
【0100】
一方、本実施形態の導通針122の先端部分には、導通針122の長さ方向で相互に離隔して電気的に独立する電極部134a,134bが設けられている。これら電極部134a,134bには、それぞれリード線136a,136bが接続されており、例えばリード線136aが図示しない体外バッテリーのプラス端子に接続されているとともに、リード線136bが体外バッテリーのマイナス端子に接続されている。本実施形態では、これら電極部134a,134bが弾性変形可能とされており、図7(b)に示されるように外方へ膨出変形することができるようになっていることが好ましい。なお、かかる電極部134a,134bの弾性変形は、例えば電極部134a,134bが導電性のゴムによって形成されたり、ゴムの表面に電極線が固着されて電極部134a,134bとされて、導通針122における当該ゴムの内部に空気などの流体を送り込むことなどにより実現され得る。
【0101】
かかる構造とされた本実施形態の皮下埋込型通電ポート120では、図7(b)に示されるように、導通針122が皮膚S、蓋部材20および中間層132を貫通して電極収容部124a,124bに差し入れられて、電極部材130a,130bと導通針122の電極部134a,134bが相互に接触するようになっている。本実施形態では、電極部材130a,130bが、例えばスチールウールの如き形状とされていることから、単に電極部材130a,130bに導通針122を挿通することで、電極部材130a,130bと導通針122とを接触させることができるようになっている。特に、本実施形態では、導通針122の電極部134a,134bが外方へ膨出変形可能とされていることから、これら電極部134a,134bを穿刺後に膨出変形させることで、穿刺の際の抵抗が向上することなく、電極部材130a,130bと導通針122とを安定して接触させることができる。
【0102】
また、本実施形態では、電極収容部124において、受電口(開口部)18と反対側には強度の大きくされた強度壁部126が設けられていることから、導通針122の穿刺時における導通針122の貫通が阻止されている。これにより、導通針122がハウジング128を貫通して患者の体内に損傷を与えることが防止され得る。なお、かかる強度壁部126は、剛性(強度)が比較的大きければ、その材質が特に限定されるものではないが、例えばハウジング128において電極収容部124a,124bの底壁部分を他の部分より厚肉に形成することで構成されてもよい。
【0103】
かかる構造とされた本実施形態の皮下埋込型通電ポート120においても、導通針122を電極収容部124a,124bに差し入れて電極部材130a,130bに接触させることで、人工心臓(28)の給電が実現されることから、前記第1および第2の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0104】
次に、図8には、本実施形態の別の態様としての皮下埋込型通電ポート140が示されている。図8に示される態様では、一対の電極収容部124a,124bが、図8中の左右方向で相互に離隔して設けられているとともに、導通針122が側方(図8中の右方)から穿刺されるようになっている。
【0105】
すなわち、本態様の皮下埋込型通電ポート140は、図8の左右方向に偏平な形状とされていることから、一対の電極収容部124a,124bをそれぞれ横長な形状とすることができる。かかる電極収容部124a,124bに対して側方から導通針122が穿刺されることから、導通針122における電極部134a,134bの長さ寸法を十分に確保することができて、電極部材130a,130bと電極部134a,134bとの接触の安定性の向上が図られ得る。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0107】
たとえば、前記実施形態では、何れも導通針36,122が直線状に延びていたが、例えば図9に示される如き導通針142が採用されてもよい。すなわち、導通針142は、複数(図9中では2つ)の先端部分144を備えており、かかる導通針142を体外から穿刺することで、これら先端部分144が電極部材(22,130a,130b)と接触するようになっている。かかる導通針142を、例えば前記第1の実施形態における導通針36に代えて採用することで、電極部材22との接触の安定性が向上され得る。また、図9中に二点鎖線で示されるように、それぞれの先端部分144において相互に独立した電極部146a,146bを設けることも可能である。かかる導通針142を、例えば前記第1の実施形態における導通針36に代えて採用することで、一方(他方)の電極部146a(146b)を一対の電極収容部16,16のうちの一方(他方)に差し入れて各電極部材22と接触させることも可能となり、前記第1の実施形態における導通針を1本で構成することも可能となる。また、例えば前記図8に示される皮下埋込型通電ポート140のように、電極収容部124a,124bが左右方向に離隔して設けられる場合でも、上方から導通針142を穿刺することが可能となり、これにより導通針142の長さ寸法(図9中の上下方向寸法)を小さく抑えることもできる。
【0108】
さらに、図10に示される皮下埋込型通電ポート150のように、ハウジング14において、受電口(開口部18)の径寸法に対して電極部材22が収容配置された内部領域152の径寸法の方が大きくされている態様も採用される。かかる構造とされることにより、例えば導通針36を上下方向に対して傾斜して穿刺した場合(図10中に二点鎖線で図示)でも、導通針36の先端部分と電極収容部16の内面とが相互に接触することが回避される。これにより、導通針36を穿刺する際に、導通針36の傾斜角度などを規定の傾斜角度に正確に合わせる必要がなく、人工心臓(28)への迅速な給電が達成され得る。
【0109】
更にまた、前記実施形態では、ハウジング14,128が電気絶縁性を有する合成樹脂により形成されていたが、例えば導電性を有する金属などにより形成されてもよい。かかる場合には、例えばハウジング14,128の外表面や電極収容部16,124の内面などに電気絶縁性を有する部材などが設けられることが好適である。
【0110】
また、前記第1の実施形態における経皮エネルギー伝送システム12では、通常の人工心臓28への給電方法として非接触式給電ポート64,66を利用した第1および第2のエネルギー伝送システム83a,83bが採用されていたが、例えば通常の人工心臓28への給電方法としては、体内に埋設されたバッテリーなどが採用されてもよい。すなわち、本発明において、非接触式給電ポート64,66は必須なものではない。また、受電コイル42やパッド電極92を利用した非接触式のエネルギー伝送システム61b,114なども必須なものではない。
【0111】
さらに、前記実施形態では、充填材24がゲル状とされていたが、固体や液体であってもよい。また、電極部材22と充填材24とは、例えばそれぞれ金属製のブロック状とされて一体的にまたは別体として形成されてもよく、これらに形成された貫通孔に導通針36,122,142が挿通されるようになっていてもよい。尤も、導通針36,122,142の穿刺の際の抵抗の低減が図られることから、充填材24はゲル状や液体とされることが好適である。また、かかる充填材24は絶縁性とされることで、仮にハウジング14から漏れ出したとしても、電極部材22からの電圧が外部に及ぼされることが回避され得る。
【0112】
更にまた、前記実施形態では、体内に埋設される電気デバイスとして人工心臓28が採用されていたが、ペースメーカーや神経刺激装置、動物の体内などに埋設される、例えば個体識別用などの識別チップなどであってもよい。
また、本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 体内に配置されて体内外での通電に用いられる皮下埋込型通電ポートであって、体内に配置されるハウジングに設けられた電極収容部に対して、導電性の電極部材が収容されて充填材が充填されていると共に、該電極収容部の壁部には穿刺可能な蓋部材で覆われた受電口が設けられていることを特徴とする皮下埋込型通電ポート、
(ii) 前記電極部材が、金属製の線状材の湾曲構造体によって構成されている(i)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(iii) 前記電極部材が、金属製の多孔の板状体によって構成されている(i)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(iv) 前記金属製の多孔の板状体としてメッシュ構造体が採用されている(iii)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(v) 前記メッシュ構造体が、折り曲げられ及び/又は重ね合わされた状態で、前記電極収容部に収容配置されている(iv)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(vi) 前記電極部材の電気抵抗率が1000μΩcm以下である(i)~(v)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(vii) 前記充填材がゲル状であり且つ電気抵抗率が1000μΩcm以上である(i)~(vi)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(viii) 体組織に接する外表面が電気絶縁材で構成されている(i)~(vii)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(ix) 前記ハウジングには複数の前記電極部材が互いに電気的に独立した状態で収容配置されている(i)~(viii)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(x) 前記電極部材が、体内設置の電気デバイスとの間で通電を行なう通電手段を有している(i)~(ix)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xi) 前記ハウジングにおいて、前記受電口に比して前記電極部材が収容配置された内部領域の方が広がっている(i)~(x)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xii) 前記ハウジングにおいて、前記受電口に対して反対側に位置する底壁部分が、穿刺針の貫通を阻止する強度壁部とされている(i)~(xi)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xiii) 体内に設置される電気デバイスに対して経皮的な給電を行う電界及び/又は磁界の作用による非接触式給電ポートを併せて備えている(i)~(xii)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xiv) 前記非接触式給電ポートの複数を併せて備えている(xiii)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xv) 体外から穿刺されて前記蓋部材を貫通して前記ハウジングの前記電極収容部に差し入れられることにより前記電極部材に接触して導通される導通針が、組み合わされて構成されている(i)~(xiv)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xvi) 前記電極部材において(iv)又は(v)に記載のメッシュ構造体が採用されていると共に、前記導通針において前記電極収容部に差し入れられて該メッシュ構造体に接触する先端部分が該メッシュ構造体におけるメッシュの開口サイズよりも太い外寸サイズとされている(xv)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xvii) 前記導通針が、前記電極収容部に差し入れられて前記電極部材に接触する先端部分を複数本有している(xv)又は(xvi)に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xviii) 前記導通針において、複数の電極部が互いに電気的に独立して設けられている(xv)~(xvii)の何れか1項に記載の皮下埋込型通電ポート、
(xix) 複数の電極部材が収容配置された(ix)に記載の前記ハウジングを備えていると共に、前記導通針には、前記複数の電極部が長さ方向に独立して設けられており、該導通針が前記蓋部材を貫通して該ハウジングへ差し入れられることで、該導通針の該複数の電極部が各該電極部材に導通されるようになっている(xviii)に記載の皮下埋込型通電ポート、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材が電極収容部への収容状態で配されていることから、導通針を電極収容部の最深部まで差し入れなくても通電可能とされ得る。また、電極収容部へ刺し入れられた導通針の先端だけでなく、外周面に対しても電極部材を接触させて通電させることが可能になることから、確実で安定した通電状態が実現され得る。
上記(ii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、線状材を丸めたり折り曲げたりした湾曲構造体が電極部材として採用されていることにより、電極収容部において導通針の穿刺用の空間を残しつつ、導通針における電極部材への接触効率や接触安定性の向上を図ることも可能になる。
上記(iii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材に形成された孔に導通針が嵌まり込んだり挿通されたりすることで電極部材と導通針とが接触することから、電極部材と導通針との接触状態の安定化を図ることができる。
上記(iv)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材としてメッシュ構造体を採用したことで、例えばパンチ穴を設けた多孔板に比して板面積に対する孔数や孔の総開口面積を大きくすることができて、導通針の孔への入り込み等による安定した接触状態がより発現され易くなる。
上記(v)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、重ね合わされることで実質的に複数層とされたメッシュ構造体に対して導通針が挿通されることで、電極部材と導通針との接触面積の向上が図られるとともに、接触状態もより安定して維持され得る。
上記(vi)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、電極部材の材質として電気抵抗率の比較的小さい材質を採用することで、電極部材と導通針との接触による通電効率の向上が図られ得る。
上記(vii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、充填材の材質として電気抵抗率の比較的大きい材質を採用することで、例えばゲル状の充填材の漏れ出しなどによる不用意な通電損傷が防止され得る。
上記(viii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、安全性の向上が図られ得る。
上記(ix)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、複数の電極部材によって導通針への接触や通電の向上を図ったり、導通針に対して複数の通電点を設定したりすることができると共に、極性の異なる通電点を設定することも可能となって、設計自由度の向上が図られ得る。
上記(x)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、体内設置の電気デバイスに対して、例えばリード線などの通電手段を介して安定して電力を供給することができる。
上記(xi)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば蓋部材に対して導通針を針軸方向に対して傾斜した状態で穿刺することも可能であると共に、内部領域が広がることで電極部材の収容スペースも容易に確保可能になる。
上記(xii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、本態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、強度壁部により、穿刺針(導通針)の穿刺操作力が大きくなっても不用意にハウジングを貫通することが防止され得る。
上記(xiii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、前記(i)~(xii)の何れかの態様に記載の接触式の通電ポートに加えて非接触式の給電ポートを採用することで、例えば接触式通電ポートと非接触式給電ポートとの一方を、他方に不具合が発生した場合の緊急用のバックアップとすることができる。特に、電気デバイスへの通常の給電を非接触式給電ポートを利用して行うことで、患者の負担が抑えられるとともに、緊急的な給電を接触式通電ポートを利用して行うことで、より確実な給電が実現され得る。
上記(xiv)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば複数の非接触式給電ポートのうちの何れか1つを通常の給電用のポートとして利用することができるとともに、残りの非接触式給電ポート及び/又は接触式通電ポートを、通常の給電ポートに不具合が発生した場合の緊急用のバックアップとして利用することができる。
上記(xv)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針が組み合わされて構成されることで、医療現場などにおける取扱いなどが容易とされ得る。
上記(xvi)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針がメッシュ構造体の開口部分を押し広げるように電極部材に挿通されることから、より確実な電極部材と導通針との接触が達成され得る。
上記(xvii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、導通針の先端部分において複数本のうちの少なくとも1本が電極部材に接触すれば電気的な導通が達成されることから、電極部材と導通針との接触が安定して実現され得る。
上記(xviii)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば導通針において複数の電極部におけるそれぞれの電気的な特性や機能を相互に異ならせることも可能となる。
上記(xix)に記載の態様に従う構造とされた皮下埋込型通電ポートによれば、例えば電気的な特性や機能が異ならされた複数の電極部材のそれぞれに対して、対応するように電気的な特性や機能が異ならされた導通針における複数の電極部を接触させることで、複数の異なる電気的な特性や機能が発揮され得る。
【符号の説明】
【0113】
10,90,106,120,140,150:皮下埋込型通電ポート、14,128:ハウジング、16,124,124a,124b:電極収容部、18:開口部(受電口)、20:蓋部材、22,130,130a,130b:電極部材、24:充填材、26:リード線、28:人工心臓(電気デバイス)、34:絶縁層、36,122,142:導通針(穿刺針)、62,113:非接触式給電ポート、126:強度壁部、134a,134b,146a,146b:電極部、144:先端部分、152:内部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10