(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】シリコンエッチング液、シリコンエッチング方法、及びシリコンフィン構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
H01L21/308 B
(21)【出願番号】P 2019121824
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鍾 明諺
(72)【発明者】
【氏名】高濱 昌
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050364(JP,A)
【文献】特表2005-529485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記一般式(A-1)で表される第4級アンモニウム水酸化物と、(C)成分:ノニオン系界面活性剤とを含有し、
前記(C)成分のHLB値が、12以上15以下であ
り、
前記(C)成分は、下記一般式(C-1-1)~(C-1-4)のいずれかで表される化合物を含む、シリコンエッチング液。
【化1】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立に1価の炭化水素基である。但し、R
1~R
4に含まれる炭素原子の合計は10以上である。]
【化2】
[式中、X01は、7~13である。X02は、11~20である。m03は、7~21であり、X03は、5~20である。m04+n04は、7~15であり、X04は、5~20である。]
【請求項2】
前記(C)成分のHLB値が、12.5以上14以下である、請求項
1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のシリコンエッチング液を用いて、シリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載のシリコンエッチング液を用いて、シリコンフィン構造体を製造する、シリコンフィン構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンエッチング液、シリコンエッチング方法、及びシリコンフィン構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化技術は、半導体デバイスにおける機能ユニットの高密度化を可能にしてきた。例えば、トランジスタサイズの縮小化は、より多くのメモリ素子をチップ上に取り込むことを可能にし、容量が増えた製品の製造につながる。
【0003】
半導体デバイスを作製するための基板の微細加工において、エッチング速度がシリコン基板の結晶面方位により異なることを利用したシリコン異方性エッチング方法が用いられている。
【0004】
従来のシリコン異方性エッチング方法では、シリコン異方性エッチング液として、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)等を含むアルカリ水溶液が用いられており、金属を含まない点で、TMAHを含むシリコン異方性エッチング液が好適に用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、20~25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを0.1~10ppmの割合で添加したシリコン異方性エッチング液、及び、該シリコン異方性エッチング液を用いたシリコン異方性エッチング方法が開示されている。
また、特許文献2には、単結晶シリコンを異方性に溶解するシリコンエッチング液であって、(1)ヒドロキシルアミン、(2)アルカリ化合物、並びに(3)該アルカリ化合物の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、およびコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種以上のアルカリ塩を含有した水溶液であることを特徴とするシリコンエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-278371号公報
【文献】特開2009-123798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体デバイスの微細化技術のさらなる向上により、エッチング技術もさらなる高精度化が求められている。
しかしながら、上述した特許文献1及び2のような従来のエッチング液を用いたエッチング方法は、エッチングにより基板表面のラフネスが増大し、半導体デバイスの特性(キャリア移動度、キャリアライフタイム等)を劣化させるという問題があった。特にフィン型トランジスタ(FinFET)等の微細構造のデバイスでは、基板表面のラフネス増大による半導体デバイスの特性劣化の影響が大きい。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エッチング後の基板表面のラフネス増大を抑制することのできるシリコンエッチング液、及びシリコンエッチング方法を提供することを課題とする。
また、基板表面のラフネスが低減されたシリコンフィン構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、(A)成分:下記一般式(A-1)で表される第4級アンモニウム水酸化物と、(C)成分:ノニオン系界面活性剤とを含有し、前記(C)成分のHLB値が、12以上15以下である、シリコンエッチング液である。
【0010】
【化1】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立に1価の炭化水素基である。但し、R
1~R
4に含まれる炭素原子の合計は10以上である。]
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、シリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法である。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、シリコンフィン構造体を製造する、シリコンフィン構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリコンエッチング液、及びシリコンエッチング方法によれば、エッチング後の基板表面のラフネス増大を抑制することができる。
また、基板表面のラフネスが低減されたシリコンフィン構造体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(シリコンエッチング液)
本発明の第1の態様に係るシリコンエッチング液は、(A)成分:上記一般式(A-1)で表される第4級アンモニウム水酸化物と、HLB値が、12以上15以下である(C)成分:ノニオン系界面活性剤とを含有する。
【0015】
<(A)成分>
本実施形態のシリコンエッチング液において、(A)成分は、下記記一般式(A-1)で表される第4級アンモニウム水酸化物である。
【0016】
【化2】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立に1価の炭化水素基である。但し、R
1~R
4に含まれる炭素原子の合計は10以上である。]
【0017】
式(A-1)中、R1~R4は、それぞれ独立に1価の炭化水素基である。該1価の炭化水素基としては、1価の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、1価の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、1価の脂環式炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0018】
上記直鎖状のアルキル基としては、例えば、炭素原子数が1~20のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が挙げられる。
【0019】
上記分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、炭素原子数が3~20のものが挙げられる。具体的には、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0020】
上記直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基等が挙げられる。
上記分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基等が挙げられる。
【0021】
上記1価の脂環式炭化水素基としては、1価の単環式の脂環式炭化水素基、1価の多環式の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0022】
該1価の単環式の脂環式炭化水素基として、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0023】
該1価の多環式の脂環式炭化水素基として、具体的には、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。該ポリシクロアルカンとしては、デカリン、ペルヒドロアズレン、ペルヒドロアントラセン、ステロイド骨格を有する環構造等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン等が挙げられる。
【0024】
上記1価の芳香族炭化水素基としては、芳香環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。
該芳香環の炭素原子数は、例えば、5~30のものが挙げられる。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0025】
式(A-1)中、R1~R4は、R1~R4に含まれる炭素原子の合計が10以上となるように、上述した1価の炭化水素基を適宜選択することができる。
【0026】
R1~R4に含まれる炭素原子の合計は10以上であり、好ましくは、炭素原子の合計が12以上であり、より好ましくは、炭素原子の合計が16以上である。
R1~R4に含まれる炭素原子の合計の上限値は、特に限定されないが、例えば、水溶性の点から、20以下である。
R1~R4に含まれる炭素原子の合計が上記下限値以上であれば、エッチング後の基板表面のラフネスの増大をより抑制することができる。
【0027】
(A)成分の具体例としては、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、ベンジルトリエチルアンモニウム水酸化物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水酸化物等が挙げられる。
その中でも、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)が好ましく、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)がより好ましい。
【0028】
シリコンエッチング液が含有する(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、シリコンエッチング液全量に対して、0.01~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
(A)成分の含有量が上記好ましい範囲の下限値以上であれば、基板(シリコン基板等)のエッチング効果がより得られやすい。
(A)成分の含有量が上記好ましい範囲の上限値以下であれば、エッチング後の基板表面のラフネスの増大をより抑制することができる。
【0029】
<(C)成分:ノニオン系界面活性剤>
本実施形態の(C)成分:ノニオン系界面活性剤は、HLB値が12以上15以下のものである。
【0030】
(C)成分のHLB値は、12以上15以下であり、12.5以上14以下であることが好ましく、12.5以上13.5以下がより好ましい。
(C)成分のHLB値が、12以上であれば、(C)成分の溶解性が適度となる。
(C)成分のHLB値が、15以下であれば、基板(シリコン基板等)のエッチング効果がより得られやすい。
【0031】
本明細書において「HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)」とは、グリフィンによって提唱された界面活性剤分子中の親水基と親油基とのバランスを示す値である。このHLB値は、各種の界面活性剤について、その乳化力を比較して実験的に定めることができるが、典型的には、以下の式1から求めることができる。
式1:HLB値=20×界面活性剤の親水部の式量/界面活性剤の分子量
【0032】
前記HLB値の詳細については、工学図書株式会社出版、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄共編「界面活性剤ハンドブック」(1970年)のP178~189に記載されている。
【0033】
本実施形態の(C)成分として、具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オレイン酸トリエタノールアミン等が挙げられる。その中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0034】
本実施形態の(C)成分は、下記一般式(C-1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化3】
[式中、R
5は、水素原子又は置換基を有してもよい1価の炭化水素基である。R
6は、置換基を有してもよい1価の炭化水素基である。xは、1~20の整数である。]
【0035】
上記式(C-1)中、R5は、水素原子又は置換基を有してもよい1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0036】
上記直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~20であることが好ましく、炭素原子数が3~18であることがより好ましく、炭素原子数が5~15であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が挙げられる。
【0037】
上記分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数が3~15であることがより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。これらの中でも、イソプロピル基がより好ましい。
【0038】
R5が環状の炭化水素基である場合、該環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0039】
R5の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
R5における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
その中でも、R5における芳香族炭化水素基としては、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)、又は芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)が好ましい。
【0040】
上記1価の炭化水素基は置換基を有してもよい。ここで、「置換基を有してもよい」とは、上記炭化水素基の水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、上記炭化水素基のメチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
【0041】
上記炭化水素基の水素原子(-H)を1価の基で置換する場合における、置換基としては、ヘテロ原子(ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子)を含む1価の基が挙げられる。該1価の基として、具体的には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アミノ基、-SO2-NH2等が挙げられる。
【0042】
上記炭化水素基のメチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合、R5における置換基を有してもよい1価の炭化水素基としては、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等が挙げられる。なお、該アシル基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子(ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子)で置換されていてもよい。具体的には、R5が、トリフルオロアセチル基等であってもよい。
【0043】
上記式(C-1)中、R5は、上記の中でも、水素原子又は1価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0044】
上記式(C-1)中、R6は、置換基を有してもよい1価の炭化水素基であり、上記R5と同様のものが挙げられる。
【0045】
上記式(C-1)中、R6は、その構造中に第3級炭素原子又は第4級炭素原子を有することが好ましい。典型的には、R6は、分岐鎖状のアルキル基を有する1価の炭化水素基であることが好ましい。該分岐鎖状のアルキル基を有する1価の炭化水素基の炭素原子数は、8~40であることが好ましく、炭素原子数が、10~35であることがさらに好ましい。
【0046】
上記式(C-1)中、xは、1~20の整数であり、5~20であることが好ましい。
【0047】
なお、(C)成分として、上記一般式(C-1)で表される化合物を用いる際、HLB値は以下の式2で表される。
式2:HLB値=20×(44×x/式(C-1)で表される化合物の分子量)
【0048】
本実施形態の(C)成分の好ましい具体例を下記に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
上記式(C-1-1)中、X01は、7~13である。
上記式(C-1-2)中、X02は、11~20である。
【0052】
上記式(C-1-3)中、m03は、例えば、7~21であり、好ましくは9~17である。X03は、5~20である。
m03及びX03の数は、上記式1により計算されるHLB値が、12以上15以下となるように適宜選択することができる。
【0053】
上記式(C-1-4)中、m04+n04は、例えば、7~15であり、好ましくは9~11である。X04は、5~20である。
m04+n04及びX04の数は、上記式1により計算されるHLB値が、12以上15以下となるように適宜選択することができる。
【0054】
シリコンエッチング液が含有する(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分の含有量は、シリコンエッチング液全量に対して、1~10000質量ppmであることが好ましく、5~1000質量ppmであることがより好ましく、10~500質量ppmであることがさらに好ましい。
(C)成分の含有量が上記好ましい範囲の下限値以上であれば、上記(A)成分の析出が効果的に抑制される。
(C)成分の含有量が上記好ましい範囲の上限値以下であれば、基板(シリコン基板等)やエッチングマスクへのダメージ等といった影響を低減させることができる。
【0055】
<その他成分>
本実施形態のシリコンエッチング液は、上述した(A)成分及び(C)成分に加え、その他成分をさらに含有してもよい。その他成分としては、(B):水、水溶性有機溶媒、(C)成分以外の界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
≪水≫
本実施形態のシリコンエッチング液は、さらに(B):水を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態のシリコンエッチング液は、(A)成分及び(C)成分を含有する水溶液であることが好ましい。
(B):水としては、純水、イオン交換水等を用いることができる。
【0057】
(B):水の含有量は、特に限定されないが、シリコンエッチング液全量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、94質量%以上がさらに好ましい。
また、上限値は、特に限定はないが、99.95質量%未満が好ましく、98質量%以下がより好ましい。
【0058】
≪水溶性有機溶媒≫
本実施形態のシリコンエッチング液は、さらに水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
水溶性有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0059】
・アルコール系溶媒
アルコール系溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、1,7-ヘプタンジオール、オクチレングリコール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等の多価アルコールなどが挙げられる。
【0060】
・エーテル系溶媒
エーテル系溶媒として、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル等が挙げられる。
【0061】
・グリコールエーテル系溶媒
グリコールエーテル系溶媒として、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0062】
上記の中でも、水溶性有機溶媒としては、エッチング時の基板(シリコン基板等)やエッチングマスクへのダメージを抑制しつつ、上述した(A)成分、特に、TBAHの溶解性を十分に向上させるという観点から、アルコール系溶媒が好ましい。具体的には、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコールが好ましく、2価アルコール、3価アルコールがさらに好ましい。
【0063】
シリコンエッチング液が含有する水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性有機溶媒の含有量は、シリコンエッチング液全量に対して、1~10質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましく、3~7質量%であることがさらに好ましい。
水溶性有機溶媒の含有量が、上記好ましい下限値以上であれば、(A)成分の析出をより抑制することができる。
水溶性有機溶媒の含有量が、上記好ましい上限値以下であれば、基板(シリコン基板等)やエッチングマスクへのダメージをより低減させることができる。
【0064】
≪(C)成分以外の界面活性剤≫
本実施形態のシリコンエッチング液は、さらに(C)成分以外の界面活性剤を含んでいてもよい。(C)成分以外の界面活性剤としては、HLB値が12未満又は15超のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0065】
・HLB値が12未満又は15超のノニオン系界面活性剤
HLB値が12未満又は15超のノニオン系界面活性剤として、具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オレイン酸トリエタノールアミン、ベンジルフェニルエーテル系界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
・アニオン系界面活性剤
アニオン系界面活性剤としては特に限定されるものではなく、アニオン性基を有する従来公知の界面活性剤を用いることができる。そのようなアニオン系界面活性剤としては、例えば、アニオン性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、又はリン酸基を有する界面活性剤が挙げられる。
【0067】
アニオン系界面活性剤として、具体的には、炭素原子数8~20のアルキル基を有する高級脂肪酸、高級アルキル硫酸エステル、高級アルキルスルホン酸、高級アルキルアリールスルホン酸、スルホン酸基を有するその他の界面活性剤、若しくは高級アルコールリン酸エステル、又はそれらの塩等が挙げられる。ここで、上記アニオン系界面活性剤の有するアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、分枝鎖中にフェニレン基又は酸素原子等が介在してもよいし、アルキル基が有する水素原子の一部が水酸基やカルボキシル基で置換されてもよい。
【0068】
上記高級脂肪酸の具体例としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等が挙げられ、高級アルキル硫酸エステルの具体例としては、デシル硫酸エステル、ドデシル硫酸エステルが挙げられる。また、上記高級アルキルスルホン酸の例としては、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ステアリン酸スルホン酸等が挙げられる。
【0069】
上記高級アルキルアリールスルホン酸の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0070】
スルホン酸基を有するその他の界面活性剤としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸;ジオクチルスルホサクシネート等のジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。
【0071】
高級アルコールリン酸エステルの例としては、パルミチルリン酸エステル、ヒマシ油アルキルリン酸エステル、ヤシ油アルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0072】
・カチオン系界面活性剤
カチオン系界面活性剤として、具体的には、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
【0073】
・両性界面活性剤
両性界面活性剤として、具体的には、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0074】
上述した(C)成分以外の界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分以外の界面活性剤の含有量は、特に限定されず、例えば、1~10000質量ppmである。
【0075】
本実施形態のシリコンエッチング液は、シリコンを含む被処理体をエッチング処理するために用いられるものである。被処理体として、具体的には、シリコン(Si)基板のほか、シリコン合金であるシリコンゲルマニウム(SiGe)基板等が挙げられる。
また、シリコン(Si)基板を例にとって説明すると、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよい。
【0076】
該基板の用途は、特に限定されず、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の用途に用いられる各種基板が挙げられる。その中でも、該基板としては、半導体デバイス作製のために用いられる基板が好ましい。
該基板の大きさ、厚さ、形状、層構造等は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0077】
以上説明した本実施形態のシリコンエッチング液は、(A)成分:特定の第4級アンモニウム水酸化物と、(C)成分:HLB値が12以上15以下である、ノニオン系界面活性剤とを含有する。上述した(A)成分と(C)成分の組み合わせにより、エッチング後の基板表面のラフネスの増大を抑制することができる。この理由は定かではないが、(A)成分は、複数の1価の炭化水素基を有し、該炭化水素基の炭素原子の合計が10以上であるため、適度な塩基性を有する。また、(C)成分は、特定の範囲のHLBであるため、基板(シリコン基板等)表面との吸着安定性を向上させることができる。そのため、これらを併用することにより、基板表面を均一にエッチング処理することができると推測される。
【0078】
(シリコンエッチング方法)
本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、シリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法である。
なお、該シリコン基板とは、シリコンを含む基板のことであり、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板等も含まれる。
また、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよい。
【0079】
[エッチング処理]
シリコン基板をエッチング処理する方法としては、スプレー法、浸漬法(ディップ法)、液盛り法(パドル法)等が挙げられる。
【0080】
スプレー法は、シリコン基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間に上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を噴射して、シリコン基板に該シリコンエッチング液を接触させる方法である。また、必要に応じて、スピンコーターを用いて基板を回転させながら該シリコンエッチング液を噴霧してもよい。
【0081】
浸漬法(ディップ法)は、シリコン基板を上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液に浸漬して、シリコン基板に該シリコンエッチング液を接触させる方法である。
【0082】
液盛り法(パドル法)は、シリコン基板に上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法である。
【0083】
上述した各種エッチング処理の方法は、シリコン基板の構造や材質等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法(パドル法)の場合、シリコン基板への上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液の供給量は、シリコン基板における被処理面が、該シリコンエッチング液で十分に濡れる量であればよい。
【0084】
上述したエッチング処理において、シリコン基板の微細加工を行う場合、通常、エッチングされるべきでない箇所をエッチングマスクにより被覆したうえで、シリコン基板とシリコンエッチング液とを接触させる。ここで、エッチングマスクとは、例えば、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が挙げられる。
【0085】
エッチング処理を行う温度は、特に限定されず、例えば、25℃~70℃である。
エッチング処理を行う時間は、特に限定されず、シリコン基板の構造や材質、エッチング処理条件に応じて、適宜選択される。
【0086】
本実施形態のシリコンエッチング方法において、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液((A)成分)のシリコン基板に対する溶解速度が、シリコン基板の面方位により異なるため、異方性を有しながらエッチングが進行する。
【0087】
本実施形態のシリコンエッチング方法は、上述したエッチング処理に加えて、洗浄工程、リンス工程、乾燥工程を含んでいてもよい。洗浄工程及びリンス工程は上述したエッチング処理の前後のいずれか、又は両方で行ってもよい。乾燥工程は、洗浄工程及びリンス工程のいずれかの後、又は両方の後に行ってもよい。
【0088】
≪洗浄工程≫
洗浄工程は、シリコン基板の表面を予め洗浄する工程である。
洗浄方法は、特に限定されず、例えば、半導体基板の洗浄方法として、公知のRCA洗浄法等が挙げられる。このRCA洗浄法では、まず、基板を過酸化水素と水酸化アンモニウムとを含む溶液に浸漬して、基板から微粒子及び有機物を除去する。次いで、基板をフッ酸水溶液に浸漬して、基板表面の自然酸化膜を除去する。その後、基板を、過酸化水素と希塩酸とを含む溶液の酸性溶液に浸漬して、前述の過酸化水素と水酸化アンモニウムの混合溶液で不溶であったアルカリイオンや金属不純物を除去する。
【0089】
≪リンス工程≫
リンス工程は、シリコン基板の表面を、後述するリンス液でリンスする工程である。リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、基板をリンス液に浸漬する方法、基板にリンス液の蒸気を接触させる方法、基板をスピンさせながらリンス液を基板に供給する方法等が挙げられる。中でも、リンス方法としては、基板をスピンさせながらリンス液を基板に供給する方法が好ましい。前記方法において、スピンの回転速度としては、例えば、100rpm以上5000rpm以下が例示される。
【0090】
・リンス液
リンス工程に用いるリンス液としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液としては、例えば、有機溶媒を含有するものが挙げられる。有機溶媒としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
リンス液は、前記有機溶媒に代えて、又は有機溶媒とともに水を含有していてもよい。
リンス液は、公知の添加物等を含有していてもよい。公知の添加剤としては例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0091】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0093】
≪乾燥工程≫
乾燥工程は、シリコン基板を乾燥させる工程である。乾燥工程を行うことにより、リンス工程後にシリコン基板に残留するリンス液を効率よく除去することができる。
【0094】
シリコン基板の乾燥方法は、特に限定されず、スピン乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。
【0095】
以上説明した本実施形態のシリコンエッチング方法によれば、エッチング後の基板表面のラフネスの増大を抑制することができる。
【0096】
(シリコンフィン構造体の製造方法)
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、シリコンフィン構造体を製造する、シリコンフィン構造体の製造方法である。
【0097】
本実施形態のシリコンフィン構造体の製造方法としては、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、シリコン基板をエッチング処理する工程を有するものが挙げられる。上述の通り、該工程により異方性を有しながらエッチングが進行するため、フィン型の構造体(シリコンフィン構造体)を製造することができる。
【0098】
シリコンフィン構造体として、具体的には、フィン型構造のシリコン基板(シリコンフィン基板)が挙げられる。
【0099】
本実施形態のシリコンフィン構造体の製造方法として、具体的には、下記の方法が挙げられる。
(i)まず、シリコン基板表面にエッチングマスクを形成する。ここで、エッチングマスクとは、例えば、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が挙げられる。
(ii)次いで、該エッチングマスクの表面に公知のレジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成する。そして、レジスト膜に対して露光処理、現像処理、ベーク処理(ポストベーク)等を順次施すことにより、レジストパターンが形成される。
【0100】
(iii)次いで、例えば反応性イオンエッチング(RIE)法等のドライエッチング法を用いて、レジストパターンをエッチングマスクへ転写する。その後、レジスト膜を全て除去する。これにより、一部がエッチングマスクにより覆われ、一部がシリコン基板の表面が露出したシリコン基板が得られる。
【0101】
(iv)その後、上述した第2の態様に係るシリコンエッチング方法により、シリコンフィン基板が得られる。
【0102】
また、シリコンフィン構造体の他の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
上述した(i)、(ii)の工程を行い、(iii)の工程において、ドライエッチング法を用いて、表面が粗いシリコンフィン構造体を形成する。その後、上述した第2の態様に係るシリコンエッチング方法により、表面が粗いシリコンフィン構造体の表面の荒れをなくす程度のエッチング(トリミング)処理を行うことによって、表面のラフネスが低減されたシリコンフィン構造体を得ることもできる。これにより、フィン厚みが薄いシリコンフィン構造体であっても作製可能である。
【0103】
本実施形態のシリコンフィン構造体の製造方法によれば、表面のラフネスが低減されたシリコンフィン構造体を製造することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0105】
<シリコンエッチング液の調製>
表1及び2に示す各成分と水(約98質量%)とを混合し、各例のシリコンエッチング液を調製した。なお、表1及び2に示す各成分と水とで、シリコンエッチング液全量100質量%となる。
【0106】
【0107】
【0108】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。
TBAH:テトラブチルアンモニウム水酸化物
TPAH:テトラプロピルアンモニウム水酸化物
TMAH:テトラメチルアンモニウム水酸化物
Al-1:2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム水酸化物(コリン)
Al-2:ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム水酸化物
Al-3:トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム水酸化物
【0109】
(C)-1:下記式(C1-1)で表される化合物(商品名:TDK9、東聯化學社製)
(C)-2:下記式(C1-2)で表される化合物(商品名:TDK12、東聯化學社製)
(C)-3:下記式(C1-3)で表されるHLB値12.6の化合物(商品名:Triton(登録商標)CF10、ダウ・ケミカル社製)
(C)-4:下記式(C1-4)で表される化合物(商品名:SINOPOL 1109、中日合成(台湾)社製)
(C)-5:下記式(C1-5)で表される化合物(商品名:ソフタノール(登録商標)90、日本触媒社製)
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【化9】
[式中、m03は11である。X03は9である。]
【0114】
【化10】
[式中、m04+n04は、9~11である。X04は9である。]
【0115】
Su-1:下記式(Su-1)で表される化合物(商品名:TDK40、東聯化學社製)
Su-2:HLB値10.6のノ二オン系界面活性剤(商品名:Triton(登録商標)DF12、ダウ・ケミカル社製)
Su-3:ベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩化物
Su-4:下記式(Su-4)で表される化合物(商品名:パイオニンMA-1600、竹本油脂社製)
【0116】
【0117】
【0118】
[表面ラフネスの評価]
・被処理体について
被処理体は単結晶シリコン(100)(単にシリコン(100)という場合がある)ウエハである。このシリコン(100)ウエハを2×2cmのサイズにカットして使用した。
該シリコン(100)ウエハはエッチング処理をする直前に0.5%フッ化水素酸水溶液に常温で1.5分間浸漬し、その後、超純水によるリンスを施して、乾燥を行った。
このフッ化水素酸水溶液処理によって、シリコン(100)ウエハの表面に生成しているシリコン自然酸化膜を除去した後に処理を行った。
【0119】
・評価方法
各例のシリコンエッチング液をポリエチレン製の容器に入れ、この容器を湯浴中に浸してシリコンエッチング液の温度を40℃に加温した。該40℃のシリコンエッチング液に、上述したシリコン(100)ウエハを3分間浸漬して、エッチング処理を行った。次いで、シリコン(100)ウエハを取り出して超純水によるリンス及び乾燥を行った。エッチング処理を行ったシリコン(100)ウエハのエッチングされた部分の表面を、AFM(原子間力顕微鏡:Bruker社製 Dimension Icon)により観察し、1μm角あたりの二乗平均平方根粗さ(表面ラフネス)Rq(nm)を求めた。その結果を以下の基準で評価し、表3及び表4に示す。
なおエッチング処理を行う前のシリコン(100)ウエハの表面ラフネスは0.22nmであった。
【0120】
(表面ラフネスの評価)
◎:0.35nm未満
○:0.35nm以上0.40未満
×:0.40nm以上0.45未満
【0121】
【0122】
【0123】
表3及び4に示す結果から、実施例1~6のシリコンエッチング液は、比較例1~9のシリコンエッチング液に比べて、エッチング後の基板表面のラフネスの増大を抑制できることが確認できる。