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特許7341223パッド-パッド変動のために調整を行う半導体基板の研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】パッド-パッド変動のために調整を行う半導体基板の研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230901BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20230901BHJP
   B24B 49/03 20060101ALI20230901BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20230901BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B24B57/02
B24B49/03 Z
B24B37/005 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021513335
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019047829
(87)【国際公開番号】W WO2020055571
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】62/729,134
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チュウ・アレックス
(72)【発明者】
【氏名】チウ・エイチ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スミート・バガバト
(72)【発明者】
【氏名】キム・テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】片倉 則正
(72)【発明者】
【氏名】北澤 大
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一朗
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0178890(US,A1)
【文献】特開2003-285262(JP,A)
【文献】特表2003-529455(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 57/02
B24B 49/03
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側面および該表側面と略平行な裏側面を各々有する複数の半導体基板を研磨するための方法であって、
第1半導体基板の表側面を研磨パッドに接触させること、
研磨スラリーを研磨パッドに供給して、第1半導体基板の表側面を仕上げ研磨として研磨し、研磨された第1半導体基板を生じさせること、
第1半導体基板のエッジ・ロールオフを測定すること、
第2半導体基板の表側面を前記研磨パッドに接触させること、
研磨パッドのパッド-パッド変動を決定すること、
研磨スラリーを前記研磨パッドに供給して、第2半導体基板の表側面を仕上げ研磨として研磨すること、及び
第1半導体基板の測定されたエッジ・ロールオフに少なくとも一部基づいて、第2半導体基板を前記研磨パッドに接触させる間にて該研磨パッドに供給される研磨スラリーの量を制御すること
を含んで成る、半導体基板の研磨方法。
【請求項2】
第1半導体基板は、複数の半導体基板のバッチから成るものであって、前記半導体基板の研磨方法が、
複数の半導体基板のバッチの各半導体基板の表側面を研磨パッドに接触させること、
研磨スラリーを研磨パッドに供給して、バッチの複数の半導体基板の各々の表側面を研磨し、研磨された複数の半導体基板のバッチを生じさせること、
バッチの研磨された複数の半導体基板の各々のエッジ・ロールオフを測定すること、及び
研磨された複数の半導体基板のバッチの測定されたエッジ・ロールオフに少なくとも一部基づいて、第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間にて研磨パッドに供給される研磨スラリーの量を制御すること、
を含んで成る、請求項1に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項3】
バッチの研磨された複数の半導体基板の各々の測定されたエッジ・ロールオフを平均化しており、バッチの平均化したロールオフ量に少なくとも一部基づいて、第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間にて研磨パッドに供給される研磨スラリーの量が制御される、請求項2に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項4】
前記研磨パッドの前記パッド-パッド変動を決定するため、複数の半導体基板のバッチの平均エッジ・ロールオフを、第1半導体基板の研磨に使用される研磨パッドと同じタイプの複数の研磨パッドの平均エッジ・ロールオフと比べることを更に含んで成る、請求項3に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項5】
バッチが、少なくとも2つの半導体基板、または、少なくとも5個、少なくとも10個もしくは少なくとも20個の半導体基板を有して成る、請求項2~4のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項6】
第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間で研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、研磨パッドのライフタイムに少なくとも一部基づいて制御される、請求項1~5のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項7】
第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間で研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、第2半導体基板のフラットネスに少なくとも一部基づいて制御される、請求項1~6のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項8】
研磨スラリーはシリカを含んで成る第1研磨スラリーであって、第1研磨スラリーが第1研磨スラリー体積で研磨パッドへと供給され、前記半導体基板の研磨方法が、
第2研磨スラリーを第2研磨スラリー体積で研磨パッドへと供給することを更に含んで成り、
第1研磨スラリーは、第2研磨スラリーよりも相対的に高いシリカ濃度を有し、研磨パッドに供給される第1研磨スラリーの量は、第2研磨スラリー体積に対する第1研磨スラリー体積の比が制御されることによって制御される、請求項1~7のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項9】
第2研磨スラリーがシリカを含んで成る、請求項8に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項10】
第2研磨スラリー体積に対する第1研磨スラリー体積の比は、第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーが研磨パッドに適用される時間を制御することによって制御される、請求項8または9に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項11】
第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーが、研磨パッドへと別個に供給される、請求項8~10のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項12】
研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、研磨装置の第1テーブルにおいて研磨される際に供給される研磨スラリーの総量であり、前記半導体基板の研磨方法が、研磨装置の第2テーブルへと基板を移すことを含んで成る、請求項1~11のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項13】
第1半導体基板および第2半導体基板の裏側面は、基板の表側面が研磨される間、研磨パッドに接触していない、請求項1~12のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項14】
仕上げ研磨が、基板の表側面から約0.5μm以下となる材料が除去される仕上げ研磨である、請求項1~13のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項15】
第1半導体基板は、研磨パッドによって研磨される第1の5個の基板または第1の10個もしくは20個の基板である、請求項1~14のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項16】
第1半導体基板が、研磨パッドによって研磨される第1基板である、請求項1~14のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項17】
第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間で研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、第1半導体基板の測定されたエッジ・ロールオフと、同じタイプの複数の研磨パッドの平均エッジ・ロールオフとの差に少なくとも一部基づいている、請求項1~16のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/729,134号の優先権の利益を主張する。当該米国仮特許出願の開示内容は、全ての関連性および一貫性のため(for all relevant and consistent purposes)参照により本明細書中に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
(開示の分野)
本開示の分野は、半導体基板を研磨するための方法に関する。特に、本開示の分野は、研磨パッドにおけるパッド-パッド変動(またはパッド間の変動、ズレもしくはバラツキ、pad-to-pad variance)に基づいて仕上げ研磨シーケンス(finish polishing sequence)を調整することを伴う半導体基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
半導体ウエハは、電気回路が印刷されている集積回路(IC)チップの製造でよく用いられている。まずウエハの表面に電気回路が微細な形態で印刷され、次いで、回路チップへとウエハが分割される。かかる微細な電気回路では、ウエハの全面に亘って電気回路が適切に印刷されることを確実ならしめるべく、各ウエハの表側面および裏側面が極めてフラットで平行であることが求められる。このため、グラインド・プロセスや研磨プロセスがよく用いられており、インゴットからウエハがカットされた後で当該ウエハの表側面および裏側面の平坦度および平行度の向上が図られている。電子ビームのリソグラフィ・プロセスまたはフォトリソグラフィ・プロセスによりウエハ上に微細化された電気回路をプリントするための調整としてウエハ研磨を行うに際しては、特に良好な仕上げが求められる。微細化された電気回路が印刷されることになるウエハ表面は、フラットであるべきである。
【0004】
研磨プロセスでは、半導体ウエハのプロファイルに変化がもたされ得、エッジ近傍で機械的および/または化学的な力が不均一に分布することに起因し、当該構造物のエッジ近傍で変化がもたらされ得る。例えば、構造物の周縁エッジでは厚さプロファイルが減じられることがあり、即ち、“エッジ・ロールオフ”(edge roll-off)が観察され得る。エッジ・ロールオフによって、デバイス製造に利用できるウエハの部分が減じられてしまう。エッジ・ロールオフは、米国特許公報第2017/0178890号で開示されるような動的制御法を通じて制御され得るものの、研磨パッド間のバラツキ(または変動)は、研磨される基板のエッジ・ロールオフについて差を引き起こし得る。かかるバラツキは、製造プロセス内で許容公差(allowed tolerances)からもたらされ得るものであり、パッドの圧縮性および/または厚さのバラツキに起因して生じ得たりする。
【0005】
パッド-パッド変動に起因し得るエッジ・ロールオフの変化をオフセット(又は相殺、offset)しながらエッジ・ロールオフを最小限にすると共に、基板平坦度および/または表面粗さを改善する半導体基板の研磨方法にニーズがある。
【0006】
本セクションは、本願明細書で記載されている及び/又はクレームで規定されている本開示の種々の要旨(または側面)に関連し得る種々の技術的な側面を読み手に紹介することを意図している。ここで説明されている事項は、読み手に背景情報を与えるのに役立つものと考えられ、本開示の種々の側面のより良い理解に資すると考えられる。したがって、かかる説明は、その観点で読まれるものであり、従来技術として認めるものとしては説明していないと理解されたい。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
本開示の1つの要旨は、半導体基板(複数の半導体基板)を研磨(polish)するための方法を対象としている。各々の基板は、表側面、およびその表側面と略平行(または概ね平行、parallel)な裏側面を有している。第1半導体基板の表側面を研磨パッドに接触させる。研磨スラリーは研磨パッドに供給され、第1半導体基板の表側面を研磨し、研磨された第1半導体基板がもたらされる。第1半導体基板のエッジ・ロールオフが測定される。第2半導体基板の表側面を研磨パッドに接触させる。研磨スラリーが研磨パッドに供給され、第2半導体基板の表側面が研磨される。第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間において(又は第2半導体基板が研磨パッドに接する間で、もしくは、第2半導体基板を研磨パッドに接触させつつ)研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、第1半導体基板の測定されたエッジ・ロールオフに少なくとも一部基づき(または少なくとも部分的に基づいて)制御される。
【0008】
本開示の別の要旨は、半導体基板(複数の半導体基板)を仕上げ研磨(finish-polish)するための方法を対象としている。各々の基板は、表側面、およびその表側面と略平行(または概ね平行)な裏側面を有している。研磨パッドのライフタイム(または寿命もしくは耐用期間、lifetime)が決定される。半導体基板の表側面のみを研磨パッドに接触させる。研磨スラリーが研磨パッドに供給され、半導体基板の表側面を研磨し、研磨された半導体基板がもたらされる。半導体基板を研磨パッドに接触させる間において(又は半導体基板が研磨パッドに接する間で、もしくは、半導体基板を研磨パッドに接触させつつ)研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、研磨パッドのライフタイムに少なくとも一部基づき(または少なくとも部分的に基づいて)制御される。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して言及される特徴について種々の変更・改良版が考えられる。更なる特徴もまた、本開示の上述の態様に対して組み込まれ得る。このような変更・改良事項および付加的な特徴は、個々に存在してよく、あるいは、組合せとして存在してもよい。例えば、本開示の例示されたいずれの態様に係る以下で説明する種々の特徴は、本開示の上述の要旨のいずれにも組み込むことができ、特に単独で組み込んでも、あるいは、組合せて組み込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、仕上げ研磨装置の模式図である。
図2図2は、ロールオフ量の測定を模式的に示すウエハの断面図である。
図3図3は、異なる仕上げ研磨条件に対するウエハ半径を横切るように除去される材料の量変化を示すグラフである。
図4図4は、第1シリカ含有研磨スラリーの量を変化させた際の仕上げ研磨されるウエハのエッジ・ロールオフの変化を示すグラフである。
図5図5は、第1シリカ含有研磨スラリーの量を変化させた際の仕上げ研磨されるウエハのニア・エッジ(またはエッジ近傍)の平坦度の変化を示すグラフである。
図6図6は、アルカリ研磨スラリーの量を変化させた際の仕上げ研磨されるウエハのエッジ・ロールオフの変化を示すボックス・プロット(箱ひげ図)である。
図7図7は、第1シリカ含有研磨スラリーおよび第2シリカ含有研磨スラリーが供給される時間を変化させた際の仕上げ研磨されるウエハのエッジ・ロールオフの変化を示すグラフである。
図8図8は、パッドのライフタイムの変化に伴った仕上げ研磨されるウエハのエッジ・ロールオフの変化を示すグラフである。
図9図9は、ウエハの全体的なフラットネス(またはグローバル・フラットネス、global flatness)の変化に伴った仕上げ研磨されるウエハのエッジ・ロールオフの変化を示すグラフである。
【0011】
全ての図面を通して、対応する参照番号は対応する部分/パーツを示している。
【0012】
本開示の提供は、複数の半導体基板を研磨(またはポリッシングする、polish/polishing)ための方法に関する。適当な基板(本明細書では「ウエハ」または「構造物」とも称され得る)には、チョクラルスキー法で形成されたインゴットからウエハをスライスして得られる基板を含む単結晶シリコン基板が含まれる。各々の基板は、中心軸(central axis)、表側面(front surface)、およびその表側面と略平行な裏側面(back surface)を含んでいる。表側面と裏側面とは、中心軸に対して略垂直となっている。周縁エッジは表側面と裏側面とを繋いでおり、半径が中心軸から周縁エッジへと延びている。本開示の方法に従って研磨される構造物は、当業者による使用に適当ないずれの直径を有してよく、例えば、200mm直径、300mm直径であってよく、あるいは、300mmよりも大きい直径、さらには、450mmよりも大きい直径を有するウエハであってよい。
【0013】
本開示の1またはそれよりも多い態様において、半導体基板は、研磨(例えば仕上げ研磨)され、研磨された半導体基板が、エッジ・ロールオフの決定(determine)のために分析に付される。エッジ・ロールオフは、パッドにおけるパッド間変動(即ち、同じタイプのパッドの平均ロールオフからのズレ(または偏差))を決定するのに用いられる。研磨プロセスは、測定されたエッジ・ロールオフに少なくとも一部基づいて調整されてよい。幾つかの態様において、複数の半導体構造物のバッチが研磨され、ウエハのバッチについて測定されたエッジ・ロールオフが、研磨シーケンス(または一連の研磨工程もしくは研磨手順、polishing sequence)の調整に使用される。
【0014】
本開示の1またはそれよりも多い態様において、研磨シーケンスに使用される複数のパッドのうちの1つのパッド-パッド変動が決定されるに先立って、1またはそれよりも多い工程で半導体基板を研磨してよい。例えば、幾つかの態様では、構造物の表側面およびオプション的にその裏側面が研磨される(即ち、ダブル・サイド研磨(両面研磨)が行われる)第1研磨工程が実施される。一般的に、研磨は、“粗”研磨(rough polish)であり、ウエハの表面粗さを約3.5Å未満~約2.5Åほどの低い値、さらには約2Åほどの低い値(約1μm×約1μm~約100μm×約100μmのスキャン・サイズで原子間力顕微鏡(AFM)により測定された場合の値)にまで減じる研磨である。本明細書の目的のため、特に他で明記しない限り、表面粗さは、二乗平均平方根(RMS)として表される。粗研磨によって、ウエハの表面から材料が典型的には約1μm~約20μm除去され、より典型的には約5μm~約15μm除去される。
【0015】
粗研磨(および以下で説明する仕上げ研磨)は、例えば化学機械平坦化(CMP)によって達成され得る。CMPは、典型的には、研磨スラリー(abrasive slurry)でウエハの浸漬を行い、及び、ポリマー・パッドによってウエハを研磨することを伴う。化学的作用および機械的作用の組合せを通じて、ウエハの表面が滑らかにされる。典型的には、化学的および熱的な定常状態が得られるまで、及び、ウエハが目標とする形状およびフラットネスを達成するまで、研磨は実施される。Peter Wolters(ドイツ・レンツブルグ)から販売されているダブル・サイド・ポリッシャー(例えばAC2000ポリッシャー)、または、フジコシ(Fujikoshi, 日本・東京)もしくはスピードファム(Speedfam, 日本・神奈川)から販売されているダブル・サイド・ポリッシャーで粗研磨が実施されてよい。シリコン研磨のためのストック除去パッドは、Psiloquest (フロリダ州オーランド)、Dow Chemical Company (ミシガン州ミッドランド)から販売されている。シリカベースのスラリーは、Dow Chemical Company、Cabot(マサチューセッツ州ボストン)、Nalco(イリノイ州ネーパービル)、Bayer MaterialScience(ドイツ・レーバークーゼン)、DA NanoMaterials(アリゾナ州テンペ)およびフジミ(日本キヨソ)から販売されている。
【0016】
粗研磨工程は、約50mL/分~約300mL/分(または約75mL/分~約125mL/分)のスラリー流速および約150g/cm~約700g/cmのパッド圧力でもって約300秒~約60分行われてよい。しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなく、他の研磨時間、パッド圧力およびスラリー流速を採用してもよい。
【0017】
粗研磨が完了した後、ウエハはリンス(rinse)され乾燥される。付加的に、ウエハはウエット・ベンチ・クリーニング(wet bench cleaning)またはスピン・クリーニング(spin cleaning)に付されてよい。ウエット・ベンチ・クリーニングは、SC-1洗浄溶液(即ち、水酸化アンモニウムおよび過酸化水素)に対してウエハを接触させることを含んでおり、オプション的には高温(例えば、約50℃~約80℃)で、そのようなウエハのSC-1洗浄溶液への接触を行う。スピン・クリーニングは、HF溶液およびオゾン水(またはオゾン化水、ozonated water)との接触を含んでおり、室温で実施されてよい。
【0018】
洗浄後、第2研磨工程が行われてよい。第2研磨工程は、典型的には、“仕上げ”研磨(finish polish)または“鏡面”研磨(mirror polish)であり、そこでは、基板の表側面が、回転台またはプラテンに取り付けられた研磨パッドに接触させられる。仕上げ研磨では、ウエハの表面粗さが約2.0Å未満(約10μm×約10μm~約100μm×約100μmのスキャン・サイズでAFMにより測定された場合の値)にまで減じられる。仕上げ研磨によって、ウエハの表面粗さが約1.5Å未満または1.2Å未満(約10μm×約10μm~約100μm×約100μmのスキャン・サイズ)にまで減じられてもよい。典型的には、仕上げ研磨においては、表面からわずか約0.5μm以下となる分の材料が除去される。
【0019】
図1を参照して説明すると、適当な仕上げ研磨装置は、研磨テーブル7に設けられる研磨パッド1を含んでいてよい。基板20の表側面が研磨パッド1と接触するように研磨ヘッド31は、リテーナー25の使用により基板20を保持する。スラリー38は、研磨パッド1に供給される。基板の表側面の研磨のため研磨パッド1に対して相対的に基板20が動かされるように、研磨ヘッド31は高速で振動する。
【0020】
仕上げ研磨のための適当なポリッシャーは、ラプマスターSFT(Lapmaster SFT、例えば、LGP-708、東京・千代田区)から入手できる。適当なパッドとしては、ポリウレタン含浸ポリエチレンパッド、例えばDow Chemical CompanyのSUBAパッドや、スエード・タイプのパッド(ポリウレタンフォーム・パッドとも称される)、例えば、FujimiのSURFINパッド、Ciyoda会社(日本・大阪)のCIEGALパッド、およびDow Chemical CompanyのSPMパッドが挙げられる。
【0021】
仕上げ研磨(即ち、仕上げ研磨の第1テーブル)は、少なくとも約60秒間、さらには少なくとも約90秒間、約120秒間または約180秒間行われてよい。トータルのスラリー流速(total slurry flow rate)は約500mL/分~約1000mL/分の範囲(混合物としてのトータル)であってよく、パッド圧力は約60g/cm~約200g/cmの範囲であってよい。しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなく、他の研磨時間、パッド圧力およびスラリー流速を採用してもよい。
【0022】
仕上げ研磨は、幾つかの研磨工程を伴うものであってよい。例えば、仕上げポリッシャーの2またはそれよりも多いテーブルにおいて(即ち、異なる研磨パッドが使用される異なるワークステーションにおいて)幾つかの別個の研磨シーケンスに構造物が付されてもよい。また、あるテーブルで研磨パッドに供給される研磨スラリーは、研磨シーケンスが行われる間において変更・変化されてよい。
【0023】
1つ又はそれよりも多い研磨スラリーが、研磨装置の第1テーブル(即ち、第1研磨パッド)にて種々のシーケンスで研磨パッドに供給されてよい。本開示の態様に従えば、研磨シーケンスにて単独または組合せで用いられ得る適当なスラリーは、シリカ粒子の量を含んで成る第1研磨スラリー、および該第1研磨スラリーよりも低い濃度のシリカ粒子の量を含んで成る第2研磨スラリー、ならびに、アルカリ(即ち、苛性)である第3研磨スラリーを含んでおり、典型的には、シリカ粒子を含んでおらず、脱イオン水である第4研磨スラリーを含んでいない。なお、ここで言及されているような「スラリー」といった用語は、種々の懸濁物および溶液(苛性溶液および脱イオン水など、その中に粒子が存在しない溶液を含む溶液)を示しているところ、液体中に粒子の存在を暗に含んでいることを特に意図していない。
【0024】
第1スラリーおよび第2スラリーのシリカ粒子は、コロイド状シリカ(又はコロイダル・シリカ)であってよく、粒子がポリマーで封入(またはカプセル化、encapsulated)されていてよい。適当な第1シリカ含有研磨スラリーは、Syton-HT50(アリゾナ州テンペのDu Pont Air Products NanoMaterials)およびDVSTS029(ミネソタ州セントポールのNalco Water)である。適当な第2シリカ含有研磨スラリーは、Glanzox-3018(日本・東京のFujimi)およびNP 8020(日本・大阪のNitta Haas)である。
【0025】
第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーにおけるシリカ濃度は、第2スラリーにおけるより少ないシリカ粒子を用いて変更されてよい。より典型的には、かかる濃度は、粒子自体でより少ないシリカ(すなわち、より多くのポリマーで封入され、より少ないシリカ)を含むシリカ粒子を用いて変更される。
【0026】
幾つかの態様において、第1研磨スラリーはシリカ粒子の第1セットを含み、第2スラリーはシリカ粒子の第2セットを含んでいる。シリカ粒子の第1セットはXのシリカ含量を含み、シリカ粒子の第2セットはXのシリカ含量を含んでおり、XがXよりも多くなっている。粒子のシリカ含量は、少なくとも1つのセットの中の粒子をポリマーで個々に封入することによって変えてよく、封入の程度(即ち、ポリマーの厚さ)が2つのセット間で異なるように変えてよい。ポリマーによって、粒子のセットの中でシリカ含量が減じられる。幾つかの態様において、Xと約Xと比(約Xに対するXの比)は、少なくとも約2:1、または、さらには少なくも約3:1、少なくも約5:1、少なくとも10:1、または、更には少なくとも約15:1である。Xと約Xとの間の差(即ち、X-X)は、約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約25重量%、または、少なくとも約50重量%である。
【0027】
幾つかの態様において、第1研磨スラリーの第1セットにおけるシリカ粒子は、ポリマーで個々に封入またはカプセル化されており、第1セットが、少なくとも約50重量%のシリカ、もしくは、少なくとも約60重量%のシリカ、少なくとも約70重量%のシリカ、または、約50重量%~約95重量%のシリカ、約60重量%~約95重量%のシリカ、もしくは、約70重量%~約90重量%のシリカを含んでいる。
【0028】
第2研磨スラリーのシリカ粒子の第2セットもまた、ポリマーで個々に封入またはカプセル化されていてよい。ポリマー封入されたシリカ粒子の第2セットは、約25重量%未満のシリカを含んで成っていてよく、他の態様でいえば、約15重量%未満のシリカ、もしくは約10重量%未満のシリカ、または、約1重量%~約25重量%のシリカ、約1重量%~約15重量%のシリカ、もしくは、約1重量%~約10重量%のシリカを含んでいてよい。
【0029】
第3研磨スラリーは、アルカリである。例えば、第3研磨スラリーは、KOH、NaOHまたはNH塩を含んで成り、典型的には、シリカ粒子を含んでいない。スラリーは、12よりも高いpHを有していてよく、例えば、約13~約14のpHを有していてよい。
【0030】
第1研磨スラリー、第2研磨スラリー、第3研磨スラリーおよび第4研磨スラリーは、種々の研磨シーケンスにおいて、単独で適用又は種々の組合せで適用してよい。例示的なシーケンスにおいて本開示の幾つかの態様では、仕上げポリッシャーの第1テーブルにおける仕上げ研磨は、第1仕上げ研磨工程から始めてよく、この第1仕上げ研磨工程において、シリカを含んで成る第1研磨スラリーとアルカリである第3研磨スラリーとに対して研磨パッドを同時に接触させる。2つのスラリーは、ポリッシャーにおいて組み合わされてよく(すなわち、パッドにおいて個々に(または別個に若しくは分けて)供給されてよく)、あるいは、パッドに供給されるに先立って混合されてもよい。
【0031】
第1テーブルの第2仕上げ研磨工程では、第2シリカ含有研磨スラリーおよび第3アルカリ研磨スラリーが研磨パッドに同時に供給される。脱イオン水(または脱イオン化水、deionized water)を含んで成る第4スラリーは、第2工程において、アルカリである第3スラリーに加えて用いてよく、あるいは、アルカリである第3スラリーに代えて用いてもよい。一般的に、第2研磨スラリーは、第1工程で第1研磨スラリーが十分に供給された後でのみパッドに供給される。
【0032】
第1テーブルの第3仕上げ研磨工程では、シリカ粒子を含んで成る第2研磨スラリーおよび/または脱イオン水を含んで成る第4研磨スラリーが、研磨パッドに供給される。一般的には、第3スラリーは、エッチング・ピット(又はエッチピット、etching pit)の形成が防止されるべくアルカリを含んでいない。
【0033】
第1テーブルの研磨シーケンスが完了した後、半導体基板が第2テーブルまたは更に第3テーブルへと移されてよい。第2テーブルおよび第3テーブルは、第1テーブルの研磨パッドと同じ研磨パッド、あるいは、第1テーブルの研磨パッドとは異なる研磨パッドを含んでいてよい。第1スラリーよりも低いシリカ濃度を有する第2研磨スラリーおよび/または脱イオン水を含んで成る第4スラリーが、第2テーブルおよび第3テーブルで使用されてよい。
【0034】
本開示の態様では、研磨(例えば仕上げ研磨)に付された基板、または、複数の基板のバッチは、基板のエッジ・ロールオフを測定することによって分析に付され、それによって、仕上げポリッシャーの研磨シーケンス(例えば第1テーブルのシーケンス)を調整するためにフィードバックされる。研磨された基板は、エッジ・ロールオフ(「ロールオフ量」または単に「ROA」)を決定するために分析に付される。
【0035】
エッジ・ロールオフは、M.Kimuraらから開示されているような高さデータ・プロファイルを用いて測定されてよい。かかるM.Kimuraらから開示されているような高さデータ・プロファイルは、「シリコンの研磨されたウエハのウエハ・ロールオフの正確な測定のための新たな手法(A New Method for the Precise Measurement of Wafer Roll off of Silicon Polished Wafer)/Jpn. Jo. Appl. Phys.,第38巻の第38頁~39頁/1999年」において開示されており、全ての関連性および一貫性のため、参照することにより本明細書に組み込まれる。一般的に、Kimuraの方法は、工業的に標準化されている。このようなKimuraの方法は、例えばSEMI M69(ロールオフ量ROA(予備的)を用いるウエハのニア・エッジ幾何学を決定するためのプラクティス(Practice for Determining Wafer Near-Edge Geometry using Roll-off Amount)2007年)によって標準化されているところ、これも全ての関連性および一貫性のため、参照することにより本明細書に組み込まれる。最も商業的に利用されているウエハ検査機器は、ROAが算出されるように予めプログラム化されている。例えば、WaferSight解析ハードウエア(カリフォルニア州ミルピタス)を用いたKLA-Tencor Wafer Inspection Systemの使用によってROAが決定されてよい。
【0036】
図2を参照して説明すると、ウエハ20のROAは、ウエハ半径に沿った3つのポイント(P、PおよびP)を参照することによって一般的に決定される。参照ラインRは、2つのポイント(PおよびP)との間でフィッティングされる。第3ポイント(P)は、ロールオフが常套的に観察されるウエハの周縁エッジ近く(又は近傍)に存在する。ROAは、参照ラインRと第3ポイントPとの間の距離である。参照ラインRは、一次直線ライン(first order linear line)として又は3次多項式(third order polynomial)としてフィッティングされてよい。本開示のために、参照ラインは、特に別途で言及しない限り一次直線ラインとしてフィッティングされてよい。
【0037】
この点、ROAは、表側面ROA、裏側面ROAまたは厚さROA(即ち、平均厚さプロファイルを用いるROA)の点で表現され得る。表側面ROAおよび裏側面ROAの測定は、表側面または裏側面それぞれに沿ったPとPとの間で最もよくフィット(ベスト・フィット)する参照ラインRについてフィッティングすることを伴うものであり、厚さROAは、PとPとの間の種々のウエハ20の厚さに対して最もよくフィット(ベスト・フィット)するラインについてフィッティングすることを伴う(即ち、厚さROAは表側面と裏側面との双方を考慮する)。
【0038】
3つのポイントのいずれもROA決定のために選択され得るものの、当該技術で用いられる1つの共通の方法(特に300mm基板に対して用いられる方法)は、参照ラインRを形成するために、ウエハの中心軸からウエハ半径の約80%のポイントである第1ポイント、および、ウエハの中心軸からウエハ半径の約93.3%のポイントである第2ポイントの使用を含んでいる。このようなポイントは、300mm直径のウエハについていえば、ウエハの中心軸から約120mmおよび140mmである。中心軸からウエハ半径の約98.7%の第3ポイント(即ち、300mm直径のウエハに対しては中心軸から約148mmの第3ポイント)が使用されてよく、参照ラインと第3ポイントとの間の距離がROAとなり得る。中央軸からウエハ半径の約98.0%のポイント、または、中央軸からウエハ半径の約99.3%のポイントとなる第3ポイント(300mm直径のウエハではそれぞれ約147mmまたは約149mmとなる第3ポイント)を用いてROAが決定されてもよい。
【0039】
ROAは、ウエハの幾つかの半径を横切るように測定され平均化されてよい。例えば、ウエハを横切るように角度を成すように離隔する2つ、4つまたは8つの半径に関するROAが測定されて平均化されてよい。例えば、8つの半径のROA(例えば、SEMI M69でいうR-Θ座標系における0°、45°、90°、135°、180°、225°、275°および315°での8つの半径のROA)を平均化することによってROAが測定されてよい。
【0040】
上述したように、ROA測定は、表側面プロファイル、裏側面プロファイル、または厚さプロファイルを伴うものであってよい。これについて、本明細書で用いられる「ROA」は、他の特段の説明が付されない限り、ウエハのベスト・フィット厚さプロファイルの使用によって測定されるROA(即ち、表側面ROAというよりもむしろ厚さROA)であって、直線状1次ラインがウエハ半径の80%~93.3%の間で確立され、ウエハの環状エッジ部分での参照ポイントが、半径の98.7%のポイントとなるベスト・フィット厚さプロファイルの使用によって測定されるROAのことを指している。
【0041】
厚さプロファイルに関するROAは、ウエハがその周縁エッジ部分でより厚くなる正の数であってよく、あるいは、ウエハがその周縁エッジ部分にて厚みが小さくなる負の数であってもよいことを理解されたい。この点、(正の数であろうが負の数であろうが)ROA量に関して本明細書で使用される「未満(less than)」といった用語の使用は、ROAが、記載された量から約0までの範囲にあることを示している(例えば、「約-700nm未満」のROAは、約-700nm~約0までの範囲のROAを指しており、「約700nm未満」のROAは、約700nm~約0までの範囲のROAを指している)。さらには、(正の数であろうが負の数であろうが)ROA量に関して「より大きい(greater than)」は、記載された量よりも、ウエハのエッジ部分がウエハの軸となるセンターから更に離れているロールオフ量を含んでいる。
【0042】
「デルタROA/ERO」(図4および図6参照)の言及は、先行する前のプロセス条件からのROAの変化のことを指している。エッジにおいて“下向き”(またはフォール・オフ、fall-off)が観察される負のROA(例えば、-700nm)に対しては、正のデルタROA/EROが、変化される条件においてエッジ・ロールオフの改善(即ち、エッジが多くの“下向き”を生じないこと)を示しており、負のデルタROA/EROがエッジにおいて付加的な“下向き”があることを示している。エッジにおいて“上向き”(またはアップティク、up-tick)が観察される正のROA(例えば、700nm)に対しては、正のデルタROA/EROが、変化される条件に対してエッジで更なる“上向き”があることを示しており、負のデルタROAが変化される条件に対してエッジで“上向き”がより少ないことを示している。
【0043】
幾つかの態様では、新たな研磨パッドが設置された後、複数の半導体基板のうちの1またはそれよりも多く(例えば、バッチ(もしくは基板集合体もしくは1群の基板の集合、batch))が分析に付される。研磨された半導体基板のエッジ・ロールオフは、パッド間における変動またはズレ(例えば、「平均」エッジ・ロールオフからの変動(または偏差))を決定するのに用いられる。研磨された半導体基板(本明細書では「第1」半導体基板とも称され得る)または複数の基板(もしくは複数の研磨された基板)のバッチの測定されたエッジ・ロールオフは、引き続いて研磨される基板(本明細書では「第2」半導体基板とも称され得る)のための仕上げポリッシャーの第1テーブルの研磨シーケンスを調整するのに使用される。例えば、研磨パッドに供給される第1研磨スラリーの量は、制御されてよい。幾つかの態様では、第1テーブルにおいて供給される第1研磨スラリー体積および/または第2研磨スラリー体積は、分析に付された基板の測定されたエッジ・ロールオフに基づき制御される。研磨プロセスは、米国特許公報第2017/0178890号に開示された手法の1またはそれよりも多くに従ってエッジ・ロールオフの調整のために制御されてよい(なお、米国特許公報第2017/0178890号は、全ての関連性および一貫性のため、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0044】
本開示の幾つかの態様では、研磨パッドのパッド-パッド変動を決定するために、第1半導体基板または複数の基板のバッチにおけるエッジ・ロールオフが、第1半導体基板の研磨に使用される研磨パッドと同じタイプの研磨パッドの平均エッジ・ロールオフと比較される。第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間(又は第2半導体基板が研磨パッドに接する間)で研磨パッドに供給される研磨スラリー(例えば、第1シリカ含有スラリー)の量は、第1半導体基板の測定されたエッジ・ロールオフと同じタイプの研磨パッドの平均エッジ・ロールオフとの間の差に少なくとも一部基づいてよい。研磨パッドの特定のタイプの平均エッジ・ロールオフは、同じタイプのパッドを用いる先行する前の研磨ラン(または、先行して行われた研磨、previous polishing runs)から決定されてよい。
【0045】
研磨された第1半導体基板(又は研磨された複数の第1半導体基板)がエッジ・ロールオフの測定によって分析に付され、研磨パッドのパッド-パッド変動が決定される態様において、パッドは、研磨テーブルに設けられる新たなパッドであってよい。半導体基板(または複数の半導体基板)は、(理想的には)新しいパッドによって研磨される第1半導体構造物であってよく、あるいは、新しい研磨パッドによって研磨される第1の5個(もしくは最初の5個)、第1の10個(もしくは最初の10個)、または第1の20個(もしくは最初の20個)の基板のうちの1つであってもよい。新しい研磨装置および/またはパッド・アレンジメント(またはパッド配置)が用いられる態様では、多くのウエハ(例えば、第1(もしくは最初)の50、100または200のウエハ)が安定的な除去が達成されるまで最初に研磨され、その後、上記で言及したように研磨された第1半導体基板(または複数の第1半導体基板)が研磨パッドのパッド-パッド変動を決定するためにエッジ・ロールオフを測定することによって分析に付されてよい。
【0046】
幾つかの態様では、複数の基板のバッチは、各基板のエッジ・ロールオフを測定することにより分析に付され、研磨パッド(例えば、新たなパッド)におけるパッド-パッド変動が決定され、研磨プロセスが調整される。バッチは、少なくとも2つ(又は2個)の半導体基板を含んでいてよく、あるいは、他の態様では、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個もしくは少なくとも20個の半導体基板を含んでいてよい。研磨された半導体基板に関して各々の測定されたエッジ・ロールオフは平均化されてよく、第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間で研磨パッドに供給される研磨スラリーの量がバッチの平均化されたロールオフ量に少なくとも一部基づいてよい。
【0047】
幾つかの態様では、「第1テーブルで供給される第2研磨スラリー体積」に対する「第1テーブルで供給される第1研磨スラリー体積」の比が調整される。以下で説明する実施例2および4で示されるように、第2シリカ含有スラリーに対して相対的に供給される第1シリカ含有研磨スラリーの供給量を減じることによって、仕上げ研磨の間で生じるエッジ・ロールオフが減じられる(即ち、エッジにおけるロールオフの存在を示す負のROAがより小さい“負”となる)。分析に付された構造物の測定されたロールオフから予測されるようにエッジ・ロールオフがより大きい(即ち、パッドの製造の間での変動に起因してより大きい)ことが見込まれる場合では、第2シリカ含有スラリーに対して供給される第1シリカ含有研磨スラリーの供給量を減じてよく、それによって、パッド間の変動(pad-to-pad variability)に起因するエッジ・ロールオフの増加がオフセットされてよい。分析に付される構造物の測定されたロールオフから予測されるようにエッジ・ロールオフがより小さい(即ち、パッドの製造の間での変動に起因してより小さい)ことが見込まれる場合では、第2シリカ含有スラリーに対して供給される第1シリカ含有研磨スラリーの供給量を増してよく、それによって、パッド間の変動に起因する増加がオフセットされてよい。
【0048】
幾つかの態様では、第1シリカ含有スラリーが研磨パッドに供給される時間の長さを変更することによって、および/または、第2シリカ含有スラリーが研磨パッドに供給される時間量を変更することによって、第2スラリーに対する第1スラリーの比が調整される。例えば、第1スラリーおよび第2スラリーがパッドに供給される時間は変更される状態でありながらも第1スラリーおよび第2スラリーが供給されるトータル時間(total time)は一定に維持されてよい。
【0049】
別法にて、又は第1および第2のシリカ含有研磨スラリーの比の調整に加えて、第1テーブルに追加されるアルカリの第3の研磨スラリーの量(即ち、各研磨工程で第1テーブルにおいて加えられるアルカリの総計)が、分析に付した基板の測定されたエッジ・ロールオフに基づいて調整される。幾つかの態様では、第2シリカ含有研磨スラリーと同時に加えられる第3アルカリ研磨スラリーの量は、エッジ・ロールオフの調整のために制御される。以下で説明する実施例3で示されるように、仕上げポリッシャーの第1テーブルでの実施の間で加えられるアルカリの量を増加させることによって、仕上げ研磨に際して生じるエッジ・ロールオフが減じられる(即ち、エッジにおけるロールオフの存在を示す負のROAがより小さい“負”となる)。仕上げポリッシャーの第1テーブルで供給されるアルカリ研磨スラリーの量は、パッド-パッド変動に起因するロールオフの測定された増加に基づいて増してよく、あるいは、パッド-パッド変動に起因するロールオフの測定された減少に基づいて減じてもよい。
【0050】
幾つかの態様では、目標エッジ・ロールオフが決定され、プロセス条件(例えば、シリカ含有第1研磨スラリーの量および/またはアルカリ第3研磨スラリーの量)が、分析した構造物(または複数の構造物)のエッジ・ロールオフからの決定されたパッド-パッド変動に基づいて調整される。エッジ・ロールオフの測定に加えて、フィードバック制御法では、ウエハ・フラットネスなどの他のパラメーターを評価すること、および、ウエハ・フラットネスの許容できない劣化を伴うことなく向上したエッジ・ロールオフが達成され得るよう研磨パラメーターを制御すること、が為されてよい。他のパラメーターは、プロセスの質を確保するため(例えば、エッチング・ピットの存在などを確かめるため)にモニタリングされてよい。
【0051】
第1半導体基板(または複数の第1半導体基板)のエッジ・ロールオフに基づいて研磨に供給される研磨スラリーの量を制御することに代えて又はそのような制御に加えて、引き続いて使用される研磨スラリーの量が、研磨プロセスに関連する1またはそれによりも多い他のパラメーターに少なくとも一部基づいていてよい。例えば、第2半導体基板を研磨パッドに接触させる間で研磨パッドに供給される研磨スラリーの量は、研磨パッドのライフタイム(または寿命もしくは耐用期間)に少なくとも一部基づいてよい。
【0052】
パッドのライフタイムは、パッドによって研磨される基板の数、もしくは、パッドが基板研磨に使用される時間に基づいて決定されてよく、または、他の適当な方法(例えば、研磨圧力を乗じた時間の集積・蓄積値)によって決定してよい。ライフタイムは、パッドが典型的に使用される平均ライフタイムに正規化(normalized)されてよく、あるいは、パッド交換後の所定のライフタイムへと正規化されてよい。図8に示されるように、パッドのライフタイムが増すにつれ、エッジ・ロールオフが一般的に増加する。供給される第1シリカ含有研磨スラリーの量を減じることによって、仕上げ研磨にて生じるエッジ・ロールオフが減じられ得ることなり(即ち、エッジにおけるロールオフの存在を示す負のROAがより小さい“負”となり)、パッドの増したライフタイムに起因して増加するエッジ・ロールオフがオフセットされる。別法にて、第3スラリー(即ち、アルカリ・スラリー)の量が調整されてもよい。
【0053】
幾つかの態様では、研磨プロセスは、第2半導体ウエハの測定されたフラットネス(または平坦性もしくは平坦度)に少なくとも一部基づいて調整される。図9に示されるように、ドーミング(即ち、ウエハ中心とエッジ・エリアとの厚み差(doming))の増加は、エッジ・ロールオフの増加を引き起こす。かかる増加は、パッドに供給される第1シリカ含有研磨スラリーの量を減じること(例えば、第2シリカ含有スラリーに対する第1シリカ含有研磨スラリーの量を減じること)によってオフセット(または相殺)されてよく、仕上げ研磨において生じるエッジ・ロールオフが減じられてよい。別法にて、アルカリ・スラリーの量が調整されてよい。
【0054】
研磨基板のための常套的な方法と比べて、本開示の方法は、幾つかの利点を有する。新たな研磨パッドが研磨テーブルに設けられた後で第1半導体基板または複数の基板(または研磨された複数の基板もしくは第1半導体基板)のバッチにおけるエッジ・ロールオフを測定することによって、パッド-パッド変動(pad-to-pad variation of the pad)が決定され得、それによって、研磨プロセスが、引き続いて研磨される基板のため調製されることが可能となる。研磨パッドのための平均の見込みロールオフからのズレ(または偏差)は、シリカを含む研磨スラリーまたはアルカリ研磨スラリーの量を減じる又は増加させることによって、仕上げ研磨シーケンスの間で動的にオフセットされ得る。研磨パッドのライフタイムおよび/または研磨される半導体のフラットネスに起因するエッジ・ロールオフへの影響を考慮して研磨プロセスを調整することは、研磨プロセスをより一貫したロールオフの達成に更に仕向けることが可能となる。このような方法は、(300mm直径のウエハの研磨において典型的となる)構造物の表面から約0.5μm以下の材料が除去される片面研磨プロセスでエッジ・ロールオフを減じるのに特に役立つものとなり得る。
【実施例
【0055】
本開示のプロセスは、以下の実施例によって更に説明される。尚、かかる実施例は、本開示を制限する観点で捉えられるべきものではない。
【0056】
実施例1:仕上げ研磨における除去プロファイルの第1および第2のシリカ・スラリーの量を変える効果
両面が粗研磨されたウエハが片面ポリッシャーで仕上げ研磨に付された。最終の研磨装置の第1テーブルの第1研磨工程において、シリカ粒子を含んで成る第1研磨スラリー(Syton-HT50)およびアルカリ研磨スラリー(KOH)の量が、研磨パッドに供給された。第2工程では、シリカ粒子を含んで成る第2研磨スラリー(Glanzox-3018とNP 8020との混合物)およびアルカリがテーブルに供給された。第2シリカ含有スラリーは、第1シリカ含有スラリーよりも少ないシリカを含んでいた。第3工程では、第2シリカ含有スラリーおよび脱イオン水がパッドに供給された。
【0057】
ウエハは第2テーブルに移され、引き続いて第3テーブルに移された。第2テーブルおよび第3テーブルの双方において、第2シリカ含有研磨スラリーおよび脱イオン水がパッドに供給された。
【0058】
第1シリカ含有スラリーおよび第2シリカ含有スラリーの量は、ウエハの幾つかのランのための常套的な研磨方法から変更した。種々のランのための正規化された除去は、第1テーブル、第2テーブルおよび第3テーブルでの処理後に測定した。図3に示すように、付加的な第1スラリーの使用は、エッジにおける除去が増す結果(エッジ・ロールオフの増加)となった。より少ない第1スラリーの使用もまた、ウエハのエッジにおける除去が増す結果となった。しかしながら、除去の変更(すなわち、エッジに向かう除去の変化を示すフィット化されたラインと比べた148mm近くの除去の程度)は、付加的な第1スラリーが使用された場合に大きくなり、第1スラリーが増えるとエッジ・ロールオフが高くなることを示した。付加的な第2スラリーの使用は、ウエハのエッジに向かう除去がより少なくなる結果となり、ロールオフが減じられる結果となった。
【0059】
実施例2:仕上げ研磨における第1シリカ含有スラリーを変える効果
仕上げポリッシャーの第1テーブルで第1シリカ含有研磨のトータル・フローを調整しつつ実施例1の研磨プロセスを実施した。図4は、仕上げ研磨の前後におけるエッジ・ロールオフの変化(148mmにおける測定)を示している(仕上げROA-粗ROA)。図4に示されるように、第1シリカ含有研磨の小さい体積の使用は、エッジ・ロールオフを減らす(即ち、負のROAがより小さい“負”となる)。このような改善は、第1シリカ含有研磨スラリーの付加的な体積とともに減少する。x軸との交差の右側にある体積は、付加的な第1スラリーの使用によって引き起こされるエッジ・ロールオフの増加を示している。
【0060】
図5は、ウエハのためのニア・エッジ・フラットネス(ESFQR)の変化を示している。図5に示されるように、ニア・エッジ・フラットネス(near-edge flatness)は、仕上げポリッシャーの第1テーブルにおける第1シリカ含有研磨スラリーの付加的な体積の使用に伴って劣化(または悪く)なる。
【0061】
実施例3:仕上げ研磨におけるアルカリの量を変える効果
実施例1で記載される仕上げプロセスの第1テーブルの第2研磨工程で第2シリカ含有スラリーの量に対するアルカリ量の比を変更した。ウエハのエッジ・ロールオフを仕上げ研磨の後に測定(148mmにおいて測定)した。
【0062】
図6に結果のボックス・プロットを示す。図6に示されるように、20mLの第2シリカ含有スラリー量(最初の5データのポイント)において、エッジ・ロールオフは、アルカリ量の増加と共に改善した。これは、25mLの第2シリカ含有スラリーのデータ・ポイントにおいてもまた見られる。
【0063】
実施例4: 仕上げ研磨における除去プロファイルの第1および第2のシリカ・スラリーの時間を変える効果
両面が粗研磨されたウエハが片面ポリッシャーにおいて仕上げ研磨に付された。最終の研磨装置の第1テーブルにおける第1研磨工程では、シリカ粒子を含んで成る第1研磨スラリー(NalcoのDVSTS029)およびアルカリ研磨スラリー(KOH)の量が、研磨パッドに供給された。第2工程では、シリカ粒子を含んで成る第2研磨スラリー(Nitta HaasのNP 8020H)およびアルカリがテーブルに供給された。第2シリカ含有スラリーは、第1シリカ含有スラリーよりも少ないシリカを含んでいた。第1工程および第2工程における相対的なフィード・レート(feed rate)を以下の表1に示す。
【0064】
[表1]
表1:第1テーブルの第1工程および第2工程における第1および第2のシリカ・スラリーのフィード・レートならびにアルカリのフィード・レート(X+Y=35秒)
【0065】
第3工程では、第2シリカ含有スラリーおよび脱イオン水がパッドに供給された。
【0066】
工程1および工程2のトータルの研磨時間は、35秒で一定に維持された。工程1の時間量(「X」)および工程2の時間量(「Y」)は変更され、エッジ・ロールオフの変化が図7に示される。図7に示されるように、第1研磨工程の時間を増やすことは、ロールオフの増加を引き起こした(即ち、負のROAがより大きい“負”となる)。
【0067】
実施例5: パッド・ライフタイムのエッジ・ロールオフへの効果
図8は、パッド・ライフタイムの増加に伴う仕上げ研磨の前後におけるエッジ・ロールオフの変化を示しており、正規化されたライフタイムが示されている。図8から分かるように、エッジ・ロールオフは、パッドのライフタイムが増すにつれて増加する(即ち、より大きな“負”となる)。
【0068】
実施例6: ウエハ・フラットネスのエッジ・ロールオフへの効果
ウエハのドーミング(即ち、中心とエッジとの間の厚さ変化であり、正のパラメーターではドーム状のウエハの結果となり、負の数字では皿状ウエハの結果となる)を仕上げ研磨の前後に測定し(「デルタ・ドーミング」)、ウエハのエッジ・ロールオフを仕上げ研磨の前後で測定した(「デルタ・ロールオフ」)。図9は、デルタ・ドーミングの変化を関数としたロールオフの変化を示す。図9に示されるように、デルタ・ドーミングの増加は、エッジ・ロールオフが減少する結果となった(即ち、“負”のエッジ・ロールオフがより小さい“負”となる)。
【0069】
本明細書で用いられるように、「約(about)」、「実質的(substantially)」、「本質的(essentially)」および「おおよそ(approximately)」といった用語は、寸法、濃度、温度または他の物理的もしくは化学的な特性または特徴の範囲に関連して用いられる場合、当該特性または特徴の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動をカバーすることを意図している(例えば、丸め込み、測定手法または他の統計学的な変動が含まれ得る)。
【0070】
本開示の要素またはその態様について説明される際、「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、および「上記(said)」などの冠詞は、1またはそれよりも多い要素を意味することを意図している。「有して成る/含んで成る(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」および「有する(having)」などの用語は、包含的なものであることを意味しており、挙げられた要素以外の追加要素も存在し得ることを意味している。特定の方向(例えば、「頂部(top)」、「底または底部(bottom)」、「サイドまたは側(side)」など)を示す用語の使用は、説明の便宜上であって、その要素につき特定の方向を要するものではない。
【0071】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述した構成および方法について種々の変更を行うことは可能であり、それゆえ、上記説明に含まれ図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解され、限定的な意味で解されないことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9