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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/02 20060101AFI20230904BHJP
   A61F 7/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61F7/02 D
A61F7/00 320E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019158036
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035462
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 嘉員
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117908(JP,A)
【文献】特開2020-000665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/02
A61F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの顔に載せて使用される温熱具であって、
発熱材料と、
前記発熱材料を収容する収容体と、
を備え、
前記収容体は、
前記顔のオトガイ部を被覆する下覆い部と、
前記下覆い部から延びて前記顔の眼窩下部を被覆可能な上覆い部と、
を有し、
前記下覆い部は、少なくとも一部に、前記上覆い部の前記発熱材料を収容する部分よりも前記発熱材料の充填率が小さい区画部を含み、
前記下覆い部は、
前記区画部を構成し、前記オトガイ部のうちの下方向を向く面及び下顎の下面に対応する第一領域と、
前記第一領域と前記上覆い部との間に位置し、前記オトガイ部のうちの前方面を向く面に対応する第二領域と、を具備し、
前記第二領域は前記第一領域よりも前記充填率が大きい、
温熱具。
【請求項2】
前記第一領域と前記第二領域との境界が、後ろ方向に行くに従って上方向に行くように水平面に対して傾斜している、
請求項1記載の温熱具。
【請求項3】
前記区画部は、前記発熱材料が収容されていない部分である、
請求項1又は請求項2に記載の温熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関し、より詳細には、ユーザの顔に載せて使用される温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、身体の所定部位に温熱を与えることで、当該所定部位の疲労を癒したり、凝りをほぐしたり等、身体に対してリラックス効果を与えることができる温熱具が知られている。
【0003】
従前より提案されている温熱具としては、首、肩及び腹を対象としたものが多数あるが、顔を対象とした温熱具は比較的少数である。顔を対象とした温熱具としては、例えば、特許文献1に記載されているように、目に特化したものが提案されているが、顔に対し広い範囲で温熱を与えられるものは提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-8269公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、顔に対して広い範囲で温熱を与えようとする場合、例えば、下顎から、少なくとも、目のすぐ下側の部分(眼窩下部)までを覆うように、温熱具を構成することが考えられる。このとき、温熱具を、発熱材料とこれを収容する収容体とで構成する場合、発熱材料を、全体にわたって一様に充填するのが一般的である。
【0006】
しかし、発熱材料を全体にわたって一様に充填しても、発熱材料が重力によって下顎の先端を含む一範囲(オトガイ部)を覆う部分の近傍に集まりやすい。温熱具を顔に載せる前に、収容体におけるオトガイ部を覆う部分が膨らむと、当該部分をオトガイ部に被せようとした場合に、オトガイ部と温熱具とがフィットしにくく、温熱具の外縁が下顎の下面から浮いて隙間が生じやすく、温度低下を招きやすい。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、温度低下を抑えることができ、顔の広い範囲に対して温熱を与えることができる温熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の温熱具は、ユーザの顔に載せて使用される温熱具であって、発熱材料と、前記発熱材料を収容する収容体と、を備える。前記収容体は、前記顔のオトガイ部を被覆可能な下覆い部と、前記下覆い部から延びて前記顔の眼窩下部を被覆可能な上覆い部と、を有する。前記下覆い部は、少なくとも一部に、前記上覆い部の前記発熱材料を収容する部分よりも前記発熱材料の充填率が小さい区画部を含む。
【0009】
上記温熱具では、前記下覆い部は、前記区画部を構成する第一領域と、前記第一領域と前記上覆い部との間に位置し、前記第一領域よりも前記充填率が大きい第二領域と、を含むことが好ましい。
【0010】
上記温熱具は、前記第一領域と前記第二領域との境界が、後ろ方向に行くに従って上方向に行くように水平面に対して傾斜していることが好ましい。
【0011】
上記温熱具は、前記区画部は、前記発熱材料が収容されていない部分であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記態様の温熱具は、温度低下を抑えることができ、顔の広い範囲に対して温熱を与えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る温熱具を顔に載せて使用した状態の斜視図である。
図2図2は、ユーザの顔の部位を説明する説明図である。
図3図3は、同上の温熱具の斜視図である。
図4図4は、同上の温熱具を閉じた状態の側面図である。
図5図5は、図3のA-A線断面図である。
図6図6(A)は、同上の温熱具を閉じた状態の背面図である。図6(B)は、同上の温熱具を開いた状態の背面図である。
図7図7(A)は、同上の温熱具を背面上部からみた斜視図である。図7(B)は、比較例の温熱具を背面上部から見た斜視図である。
図8図8は、本実施形態の温熱具を顔に載せた状態の側面図である。
図9図9は、変形例に係る温熱具を閉じた状態の側面図である。
図10図10は、実施例における温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態
以下、本発明の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
温熱具1は、図1に示すように、ユーザの顔に載せて使用され、顔を広範囲で温めることで、疲れを癒したり、顔の筋肉(例えば表情筋)の凝りをほぐしたりして、リラックス効果を与えることができる。温熱具1は、収容体3と、収容体3の中に収まる発熱材料2と、を備える。
【0016】
ここで、温熱具1を説明する前に、図2を参照してユーザの顔の部位を次のように定義する。「下顎」は、下唇91のすぐ下の位置と耳のすぐ下の位置とを結ぶ直線L1と、首と顔との境界線L2との間の部分を指し、「オトガイ部」は、下顎の先端を含む一範囲(およそ、口角92を通る上下方向の直線の間の領域H1)を指し、「眼窩下部」は、眼球の入っているくぼみの下方にある一範囲(図の領域H2)を指すものとする。
【0017】
また、図4のように、上下方向及び前後方向を定義し、ユーザが前方向に向いたときを基準に左右方向を定義するが、これらの方向の定義は、温熱具1の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0018】
(1.1)発熱材料
発熱材料2(図5)は、発熱し得る材料であり、流動性を有している。発熱材料2は、発熱の原理に制限はなく、例えば、空気との接触により発熱するような使い捨てカイロに用いられる組成物、電子レンジによりマイクロ波の照射を受けることで発熱するような材料(例えば、フェライト等のセラミック粉末、小豆等)等を用いることができる。本実施形態では、以下に説明するように顔に対して効果的な温熱効果を与えるという観点から、小豆(あずき)を用いている。
【0019】
小豆は、水分を多く含有しているため、電子レンジ等で温めると、水分が蒸発して蒸気を発生させ、この蒸気の熱により、顔に対して温熱を与える。この小豆の蒸気による熱は、湿熱であり、湿気のない熱(乾熱)に比べて、皮膚の奥まで届くため、効果的な温熱効果を与えることができる。その上、小豆は、蒸発により内部の水分を失っても、失った水分を空気中から吸収することができるので、繰り返し使うことができて経済的である。
【0020】
(1.2)収容体
収容体3は、発熱材料2を収容できるように袋状に形成されている。収容体3は、図3に示すように、右半部8と、左半部4と、が左右方向の中央側の辺(中央辺41)と下側の辺(下辺42)とで接続されることで構成されており、使用しないときには、図4に示すように、右半部8と左半部4とを重ねるようにして折り曲げることができる。右半部8及び左半部4は、中央辺41が略曲線状に形成されており、右半部8及び左半部4を広げた状態(以下、「使用時の状態」という場合がある)の収容体3は、図3に示すように、ユーザの顔に沿うような立体的な形状をなす。
【0021】
右半部8と左半部4との接続は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では、縫合が用いられている。右半部8と左半部4とは、上述の通り、中央辺41と下辺42とで接続されているが、中央辺41はその一部に開口部11が存在しており、開口部11では右半部8及び左半部4は接続されていない。開口部11は、温熱具1を顔に載せた際に、ユーザの鼻又は/及び口に対応する位置に配置され、空気を通過させることができる。
【0022】
ここでいう「鼻又は/及び口に対応する位置」とは、呼吸の際に鼻又は口によって外部の空気を取り込み得る位置を意味し、本発明では、必ずしも、鼻又は口が露出しなくてもよいが、開口部11は、広過ぎると温熱具1と顔との間の熱が逃げ、狭過ぎるとユーザが閉塞感を受けるおそれがあることから、上唇から鼻の付け根(両目の間の部分)まで延びる大きさであることが好ましい。
【0023】
右半部8と左半部4とは、左右対称であるため、以下では、主に左半部4を説明し、右半部8について重複した説明は省略する。図4には左半部4を示しており、図中の符号X1で示す部分は、右半部8に対して接続された部分に対応している。
【0024】
左半部4は、ユーザの顔の左側半分に対応する部分である。左半部4は、中央辺41、下辺42、外辺43、及び上辺44で囲まれた縦長に形成されている。
【0025】
中央辺41は、温熱具1を顔に載せた際に、顔の左右方向の中央に位置し、眉間、鼻筋、上唇の窪み、及び下顎の先端に沿う。中央辺41は、上から下に向かって、第一辺411、第二辺412、及び第三辺413と連続しており、鉛直線に対する角度が順に大きくなっており、これによって、顔の立体形状に沿うような温熱具1とすることができる。
【0026】
第一辺411を鉛直線に平行とした場合に、第二辺412及び第三辺413は次のように設定されることが好ましい。鉛直線に対する第二辺412の角度θ1は、1度以上30度以下であることが好ましく、より好ましくは、5度以上15度以下である。鉛直線に対する第三辺413の角度θ2は、5度以上60度以下であることが好ましく、より好ましくは、20度以上40度以下である。また、角度θ2は、角度θ1以上に設定されることが好ましく、より好ましくは、角度θ1よりも大きく設定される。本実施形態では、第一辺411、第二辺412及び第三辺413の各々は直線状に形成されているが、本発明では、シームレスに連続して中央辺41が略円弧状に形成されてもよい。
【0027】
下辺42は、中央辺41の下端につながっており、非使用時の状態において、前後方向に略平行である。左半部4の下辺42と右半部8の下辺42とは、互いに接続されている。
【0028】
外辺43は、温熱具1を顔に載せた際に、顔の左右方向の外側に位置し、フェイスラインのやや外側に沿う。外辺43は、下辺42と上辺44とをつなぎ、外側に膨らむようにやや湾曲している。左半部4の外辺43と右半部8の外辺43とは、互いに接続されておらず、離れる方向(例えば左右方向)に移動させることで、温熱具1を開くことができ(使用時の状態)、近付く方向に移動させることで、温熱具1を閉じることができる(非使用時の状態)。
【0029】
上辺44は、中央辺41の上端と外辺43の上端とにつながっており、非使用時の状態において、前後方向に略平行である。左半部4の上辺44と右半部8の上辺44とは、互いに接続されていない。
【0030】
左半部4は、図5に示すように、ユーザの顔に対向する裏側シート32と、裏側シート32上の表側シート31とを重ね合わせ、その外周縁同士を接合することで袋状に形成されている。表側シート31と裏側シート32との接合は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では縫合が用いられている。
【0031】
表側シート31及び裏側シート32は、柔軟性を有していれば特に制限はなく、例えば、織布、不織布、編物等が挙げられ、これらを構成する繊維素材としては、例えば、天然繊維(例えば、綿等)、半合成繊維(例えばレーヨン等)、合成繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等)、各種繊維を混ぜた繊維等が挙げられる。裏側シート32としては、熱伝導性と、肌触りの観点から、ポリエステルと綿とを混ぜた繊維を用いることが好ましい。一方、表側シート31としては、発熱材料2の熱を逃がさずに保つ観点から、ポリエステルが好ましく、起毛していることがより好ましい。
【0032】
表側シート31又は/及び裏側シート32は、織布、不織布、編物等に加えて、他のシートが重ね合わされていてもよい。例えば裏側シート32は、顔側の面を、ポリプロピレンなどの合成繊維で形成されたメッシュシートとすることで、裏側シート32の肌触りを良好なものとすることができる。
【0033】
表側シート31及び裏側シート32の目付は、特に制限はないが、裏側シート32の目付としては、15g/m以上500g/m以下であることが好ましく、表側シート31の目付としては、15g/m以上500g/m以下であることが好ましい。
【0034】
左半部4は、図4に示すように、複数(ここでは二つ)の収容部51と、温熱具1を顔に載せた状態において左目に対応する位置(左目の大部分に被さる位置)に配置される左目被覆部52と、左半部4の外周縁部をなす左外周縁部53と、を備える。
【0035】
収容部51は、発熱材料2を収容する部分であり、接合部33によって区画されて袋状に形成されている。複数の収容部51は、接合部33を介して上下方向に並んでいる。収容部51を区画する接合部33は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では、縫合が用いられている。
【0036】
左目被覆部52は、発熱材料2が収容されていない部分である。左目被覆部52は、上下方向に並ぶ二つの収容部51の間で、かつ中央辺41に沿う位置に配置されている。左目被覆部52は、接合部33(ここでは、縫合)で区画されており、隣接する収容部51に収容された発熱材料2が左目被覆部52に移動しないように構成されている。図3に示すように、左目被覆部52は、右半部8の右目被覆部82と隣り合う。
【0037】
左外周縁部53は、左半部4のうち、外側の辺(下辺42、外辺43、及び上辺44)に沿っている。左外周縁部53は、図3に示すように、右半部8の右外周縁部83と連続している。左外周縁部53及び右外周縁部83は、収容部51の端から外側に延びて、温熱具1の外周縁部63をなしており、顔に載せた状態において、フェイスラインのやや外側に位置する。
【0038】
左外周縁部53は、図5に示すように、接合された外側の辺(例えば外辺43)から所定寸法内側の位置で、表側シート31と裏側シート32とを接合部33で接合することで構成されており、端部(接合部33よりも外側の部分)同士は重なっている。
【0039】
右半部8は、図3に示すように、ユーザの顔の右側半分に対応する部分である。右半部8は、中央辺41、下辺42、外辺43、及び上辺44で囲まれた縦長に形成されている。右半部8は、複数(ここでは二つ)の収容部51と、温熱具1を顔に載せた状態において右目に対応する位置(右目の大部分に被さる位置)に配置される右目被覆部82と、右半部8の外周縁部をなす右外周縁部83と、を備えるが、上述したように、左半部4と対称の構造をしているため、重複した説明は省略する。
【0040】
収容体3は、図3に示すように、下覆い部61と、下覆い部61から上方に延びて眼窩下部を被覆可能な上覆い部62と、を備える。下覆い部61と上覆い部62の境界は、本実施形態では、シームレスであるが、境界線によって区画されてもよい。
【0041】
下覆い部61は、オトガイ部を被覆可能に構成されており、本実施形態では、温熱具1を顔に載せた際に下顎の略全体を覆うことができる。下覆い部61は、オトガイ部のうちの下方向を向く面及び下顎の下面に対応する第一領域611と、オトガイ部のうちの前方向を向く面に対応する第二領域612と、を含む。
【0042】
第一領域611は、図3に示すように、接合部33によって第二領域612と区画されている。第一領域611は、発熱材料2を収容する収容部51よりも発熱材料2の充填率が小さい。以下、この発熱材料2の充填率が小さくなるように区画された部分を「区画部7」という。
【0043】
ここで、本発明でいう「充填率」とは、当該区画に充填し得る最大の発熱材料2の重さに対する、実際に充填された発熱材料2の重さの比を意味する。区画部7は、収容部51よりも発熱材料2の充填率が小さければ、発熱材料2が収容されていてもよいが、発熱材料2が収容されていないことが好ましい。本実施形態では、区画部7は、発熱材料2が収容されていない。
【0044】
第二領域612は、第一領域611と上覆い部62との間に位置しており、第一領域611よりも充填率が大きい。第二領域612は、本実施形態では、上述したように、上覆い部62にシームレスに連続しており、二つの収容部51のうちの下側の収容部51の一部である。すなわち、第二領域612の充填率は、当該収容部51の充填率と同義である。
【0045】
図4に示すように、第一領域611と第二領域612との境界613(接合部33)は、後ろ方向に行くに従って上方向に行くように水平面に対して傾斜している。当該境界613は、略直線状に形成されているが、曲線状に形成されていてもよいし、段状に形成されてもよいし、自由曲線状に形成されてもよい。当該境界613が後ろ方向に行くに従って上方向に行くように傾斜していることで、温熱具1を顔に載せた際に、当該境界613を、下顎のライン(下顎の下縁)に沿わせることができる。
【0046】
また、右半部8と左半部4とを広げた際に、当該境界613で曲がりやすく、第一領域611を、第二領域612に対して角度を持たせやすい。例えば、図6(A)に示すように、右半部8と左半部4とを左右方向に広げると、図6(B)に示すように、当該境界613で折れ曲がると共に、外辺43に引き上げられるようにして第一領域611が上昇する。これによって、温熱具1を顔に載せた際に、発熱材料2の充填率が小さい第一領域611を、下顎の下面に沿わせることができるため、下覆い部61がオトガイ部にフィットしやすく、第一領域611と下顎の下面との間に隙間が生じにくい。この結果、温熱具1と顔との間にある温められた空気が、外部に逃げるのを防ぐことができ、温度低下を抑えることができる。
【0047】
上覆い部62は、図3に示すように、下覆い部61につながっており、少なくとも眼窩下部を覆うように構成されている。上覆い部62は、眼窩下部だけでなく、頬、目、こめかみ及び額を覆うように、広く形成されることが好ましい。
【0048】
(2)作用効果
以上説明した温熱具1によると、下覆い部61が、少なくとも一部に、上覆い部62の発熱材料2を収容する部分よりも発熱材料2の充填率が小さい区画部7を含むため、図7(A)に示すように、使用時の状態を背面側から見ると、下顎の先端に対応する部分D1を中心とした周辺部分が盛り上がりにくい。このため、図8に示すように、オトガイ部に対して下覆い部61を被せた際に、下覆い部61がオトガイ部にフィットしやすく、下覆い部61の縁(第一領域611)と下顎の下面との間に隙間が生じにくい。一方、下覆い部61が充填率の小さい区画部7を含まないと、図7(B)に示すように、下顎の先端に対応する部分D1が、発熱材料2によって盛り上がった部分B1によって覆われるため、オトガイ部に対して下覆い部61を被せた際に、下覆い部61がオトガイ部にフィットしにくい。
【0049】
特に、本実施形態では、区画部7には発熱材料2が収容されていないため、下覆い部61の膨らみを、より一層抑えることができ、オトガイ部に対して下覆い部61をよりフィットさせることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る温熱具1は、第一領域611と上覆い部62との間に、第一領域611よりも充填率が大きい第二領域612を有するため、図8に示すように、下顎の先端と唇との間に対して、発熱材料2によって膨らんだ第二領域612を当てることができる。このため、ユーザの顔に温熱具1を載せた際に、安定感を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る温熱具1は、第一領域611と第二領域612との境界613が、後ろ方向に行くに従って上方向に行くように水平面に対して傾斜しているため、発熱材料2の充填率が小さい第一領域611を、下顎の下面に沿わせやすい。このため、温熱具1を顔に載せた際に、第一領域611と下顎の下面との間に隙間が生じにくく、温熱具1と顔との間にある温められた空気が、外部に逃げるのを防ぐことができ、温度低下を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る温熱具1によると、収容体3が外周縁部63を有しており、顔に載せた際に外周縁部63が顔のフェイスラインのやや外側に接触するため、顔の略全体を温熱具1によって包むことができ、顔全体に対し、効果的な温熱効果を与えることができる。
【0053】
(3)変形例
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態のうちの一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0054】
上記実施形態に係る温熱具1では、発熱材料2の充填率が小さい区画部7が、下覆い部61の一部に形成されたが、例えば、図9に示すように、下覆い部61の全てが区画部7であってもよい。下覆い部61の全てが区画部7であると、実施形態に対して温熱効果の観点ではやや不利であるものの、オトガイ部に対して下覆い部61のフィット感がより高まる点で好ましい。
【0055】
上記実施形態では、区画部7が第一領域611であり、第二領域612は、区画部7と下覆い部61との間に配置されたが、第二領域612を区画部7とし、第一領域611に発熱材料2が収容されてもよい。
【0056】
上記実施形態に係る温熱具1では、収容体3の上被い部62は、ユーザの顔の額までを覆う大きさに形成されているが、目までを覆う大きさに形成されていてもよいし、眼窩下部までを覆う大きさに形成されていてもよく、どの場合でもユーザの顔の広範囲に温熱効果を与えることができる。
【0057】
上記実施形態では、四つの収容部51を有する収容体3で構成したが、本発明では、一つの収容部51で構成されてもよいし、左右一つずつの収容部51で構成されてもよい。
【0058】
本発明にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0059】
また、本発明において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【0060】
(4)実施例
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0061】
実施例として、上記実施形態と同様の温熱具1を製造し、比較例として、下覆い部61が区画部7を有さない温熱具1を製造した。実施例に係る温熱具1の発熱材料2の総量を200gとし、比較例に係る温熱具1の発熱材料2の総量についても200gとした。そして、マネキン人形の頭部の顔に対し、それぞれ、実施例に係る温熱具1と、比較例に係る温熱具1とを載せ、発熱直後の状態と、15分後の状態とをサーモグラフィーで撮影して、温度分布を確認した。
【0062】
実施例及び比較例のサーモグラフィーを用いて撮影した結果を、図10に示す。なお、図10において、「頭側」は、上記実施形態に係る温熱具の「上方」に対応し、「顎側」は「下方」に対応する。
【0063】
図10からわかるように、実施例に係る温熱具1では、発熱直後の赤色の高温領域が、15分後には、若干、黄色の領域が増えるものの、広範囲で残っている。一方、比較例に係る温熱具1では、発熱直後の赤色の高温領域が、15分後には、オトガイ部と額との周囲に小さい範囲で残るが、中央部では緑又は青色の領域ができている。
【0064】
したがって、比較例に係る温熱具では、一定時間経過すると温度低下が見られるのに対し、実施例に係る温熱具では、一定時間経過した後においても、温度低下を抑えることができ、高い温度を保つことができることがわかった。
【符号の説明】
【0065】
1 温熱具
2 発熱材料
3 収容体
61 下覆い部
611 第一領域
612 第二領域
613 境界
62 上覆い部
7 区画部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10