(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20230904BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20230904BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230904BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230904BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C16/54
H01L21/31 A
H01L21/302 101G
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2019175751
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】深尾 万里
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西ノ坊 泰樹
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-079409(JP,A)
【文献】特開平10-008238(JP,A)
【文献】特開2002-329763(JP,A)
【文献】特開2011-122232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0217469(US,A1)
【文献】特開2008-028035(JP,A)
【文献】特開2010-067878(JP,A)
【文献】特開2003-258077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
C23C 14/00 -14/58
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 21/67 -21/683
B01J 3/00 - 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気の形成が可能な少なくとも1個の上流側チャンバ、中間チャンバ及び下流側チャンバと、上流側チャンバから中間チャンバを経て下流側チャンバに被処理基板を移送する移送手段とを備える真空処理装置において、
上流側チャンバと中間チャンバとが、上流側チャンバに設けられる第1の開閉バルブと、中間チャンバに設けられる第2の開閉バルブと、第1及び第2の各開閉バルブの間に設けられてその内部空間の被処理基板の通過を許容する伸縮自在な第1の連結部材とを介して連結されると共に、中間チャンバと下流側チャンバとが、中間チャンバに設けられる第3の開閉バルブと、下流側チャンバに設けられる第4の開閉バルブと、第3及び第4の各開閉バルブの間に設けられてその内部空間の被処理基板の通過を許容する伸縮自在な第2の連結部材とを介して連結され、第1の連結部材と第2の連結部材とにその内部空間の大気開放を可能とするベントラインが接続され、
上流側チャンバ、中間チャンバ及び下流側チャンバが設置される面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、その面内の回転方向をθ方向
及びその面内に直交する方向を上下方向とし、中間チャンバが、その内部に被処理基板が格納された状態でX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に移動自在とする移動手段を備え、
中間チャンバ内で被処理基板を保持する保持手段と、X軸方向またはY軸方向にのびる回転軸回りに中間チャンバを回転駆動させて、保持手段で保持された被処理基板を上下反転する回転手段とを備え、
中間チャンバの回転に先立って当該中間チャンバを上下方向に上昇または下降させる昇降機構を更に備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の各連結部材の内部空間を真空排気する真空ポンプが設けられることを特徴とする請求項
1記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、より詳しくは、複数の真空チャンバの間で被処理基板を移送できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造工程においては、ガラスなどの板状の基板(被処理基板)の一方の面(成膜面)に、下部電極、単層又は多層の有機膜(有機発光層)、上部電極や保護層を真空雰囲気で一貫して形成する場合があり、これには、開閉バルブ(ゲートバルブ)を介して互いに連設される真空雰囲気の形成が可能な複数の真空チャンバを備える真空処理装置が一般に利用されている(例えば、特許文献1参照)。従来例のものでは、被処理基板の搬送を可能とする搬送ロボットを内蔵した搬送室を備え、搬送室の周囲には、被処理基板に対する成膜処理など所定の真空処理を夫々実施できる上流側チャンバと下流側チャンバとが設けられている。
【0003】
ここで、近年、処理しようとする基板のサイズが次第に大型化している(例えば、G10.5世代)。このような場合に、上記従来例のような構成を採用すると、搬送チャンバ内に搬送ロボットにより上流側チャンバから被処理基板を受け取り、搬送チャンバを経て下流側チャンバへと受け渡すときに搬送ロボットによる基板搬送が許容できる空間が確保されるように、基板サイズに応じて搬送チャンバをサイズアップする必要があり、これに伴って、その内部を真空排気するために多数の真空ポンプが必要になったり、また、真空チャンバの材料費が大幅に増加したりするといった問題を招来する。
【0004】
ところで、上流側チャンバと下流側チャンバとで夫々実施される真空処理の時間(例えば、成膜時間)は必ずしも一致せず、しかも、真空処理時の基板の姿勢(所謂デポアップ、デポダウン)も異なることがある。このとき、複数の真空処理工程を経て所望の製品を得る際の所謂タクトタイムを可及的に短くしようと、例えば、上流側チャンバで実施される真空処理の時間がその下流側チャンバで実施されるものより長い場合には2個以上の上流側チャンバを設け、各上流側チャンバで処理済みの基板を交互に搬送チャンバを介して下流側チャンバに搬送することが考えられる(所謂、レーンチェンジ)。然し、このような構成を採用しようとすると、搬送チャンバを更にサイズアップする必要があり、また、基板の姿勢を変えるには、上流側チャンバと下流側チャンバとの間に、搬送チャンバに加えて、姿勢変更用の他の搬送チャンバを設ける必要が生じる。このため、真空処理装置のフットプリントが多大になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、複数の真空チャンバの間で被処理基板を移送して所定の処理をする際に、大型の真空チャンバを必要とすることなく、上流側チャンバから下流側チャンバへと効率よく被処理基板を移送できる構成を持つ真空処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空雰囲気の形成が可能な少なくとも1個の上流側チャンバ、中間チャンバ及び下流側チャンバと、上流側チャンバから中間チャンバを経て下流側チャンバに被処理基板を移送する移送手段とを備える本発明の真空処理装置は、上流側チャンバと中間チャンバとが、上流側チャンバに設けられる第1の開閉バルブと、中間チャンバに設けられる第2の開閉バルブと、第1及び第2の各開閉バルブの間に設けられてその内部空間の被処理基板の通過を許容する伸縮自在な第1の連結部材とを介して連結されると共に、中間チャンバと下流側チャンバとが、中間チャンバに設けられる第3の開閉バルブと、下流側チャンバに設けられる第4の開閉バルブと、第3及び第4の各開閉バルブの間に設けられてその内部空間の被処理基板の通過を許容する伸縮自在な第2の連結部材とを介して連結され、第1の連結部材と第2の連結部材とにその内部空間の大気開放を可能とするベントラインが接続され、上流側チャンバ、中間チャンバ及び下流側チャンバが設置される面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、その面内の回転方向をθ方向及びその面内に直交する方向を上下方向とし、中間チャンバが、その内部に被処理基板が格納された状態でX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に移動自在とする移動手段を備え、中間チャンバ内で被処理基板を保持する保持手段と、X軸方向またはY軸方向にのびる回転軸回りに中間チャンバを回転駆動させて、保持手段で保持された被処理基板を上下反転する回転手段とを備え、中間チャンバの回転に先立って当該中間チャンバを上下方向に上昇または下降させる昇降機構を更に備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1及び第2の各開閉バルブが開状態で(中間チャンバに設けられている他の第3の開閉バルブは閉状態となっている)、且つ、上流側チャンバと中間チャンバとを連通する伸位置に第1の連結部材が夫々位置する状態で、移送手段により互いに真空雰囲気の上流側チャンバから中間チャンバへの被処理基板が移送される。このとき、下流側チャンバは、第4の開閉バルブが閉状態でその内部が真空雰囲気とされている。中間チャンバ内で被処理基板が移送されると、第1及び第2の各開閉バルブを閉状態とし、上流側チャンバと中間チャンバとを互いに隔絶する。そして、ベントラインを介して所定のガスを第1の連結部材に導入し、その内部が大気開放される(即ち、大気圧になる)と、移動される中間チャンバに干渉しない縮位置に第1の連結部材が移動される。
【0009】
次に、移動手段により中間チャンバ自体が、X軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に適宜所定位置に移動され、中間チャンバと下流側チャンバとの同一線上に沿って被処理基板が同一線上を移送できる姿勢とされる(つまり、第2の連結部材の伸縮方向両側に中間チャンバと下流側チャンバとが位置するようにする)。そして、中間チャンバと下流側チャンバとを連通する伸位置に第2の連結部材が移動され(必要に応じて、第2の連結部材の内部が真空ポンプにより所定圧力まで真空排気される)、その後、第3及び第4の各開閉バルブが開状態とされ、互いに真空雰囲気の中間チャンバから下流側チャンバに被処理基板が移送される。
【0010】
このように本発明では、上流側チャンバから移送されてきた被処理基板を格納した状態で中間チャンバ自体を移動させる構成を採用したため、中間チャンバ自体は、被処理基板を格納する空間だけあれば済み、搬送ロボットによる基板搬送が許容できる空間を確保する必要がある上記従来例のものと比較して、中間チャンバ(従来例の搬送チャンバに相当)のサイズを大幅に小さくすることができる。その結果、その内部を真空排気するために多数の真空ポンプが必要になったり、また、真空チャンバの材料費が大幅に増加したりするといった問題を解消することができる。その上、中間チャンバは、同一平面内で移動及び回転自在であるため、例えば2個以上の上流側チャンバで処理済みの被処理基板を交互に下流側チャンバに移送するような場合にも簡単に対応(即ち、移送される被処理基板の所謂レーンチェンジを効率よく)することができる。
【0011】
本発明においては、前記中間チャンバ内に、前記被処理基板を保持する保持手段と、この中間チャンバに設けられた回転軸回りに中間チャンバを回転駆動する回転手段とを備える構成を採用してもよい。これによれば、真空処理時の被処理基板の姿勢(所謂デポアップ、デポダウン)が上流側チャンバと下流側チャンバとで互いに異なるような場合でも、被処理基板の姿勢を変えるための別途の真空チャンバを必要とせず、真空処理装置のフットプリントの増大を抑制でき、有利である。
【0012】
なお、本発明においては、前記第1及び第2の各連結部材の内部空間を真空排気する真空ポンプが設けられることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の真空処理装置の模式横断面図。
【
図3】本発明の第2実施形態の真空処理装置の模式縦断面図。
【
図4】本発明の第3実施形態の真空処理装置の模式横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、水平面内で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向、その面内の回転方向をθ方向とし、上、下といった方向は
図2を基準とする。また、被処理基板を矩形の輪郭を持つガラス基板(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swがその一方の面を開放した状態で保持するキャリアCaにセットされて、その面をZ軸方向上方に向けた水平姿勢で2個の上流側チャンバのいずれか一方から中間チャンバを経て1個の下流側チャンバに移送される場合を例に本発明の真空処理装置VM
1の第1実施形態を説明する。なお、キャリアCaの形態やキャリアCaに対する基板Swのセット方法としては、クランプを利用したもの等、公知のものが利用できるため、以下ではその説明を省略する。
【0015】
図1及び
図2を参照して、本実施形態の真空処理装置VM
1は、Y軸方向に間隔を存して設けられる2個の上流側チャンバUc1,Uc2と、中間チャンバMcと下流側チャンバDcとを備え、各上流側チャンバUc1,Uc2と下流側チャンバDcとにおいて、水平姿勢の基板Swの一方の面に対して所定の真空処理が実施されるようになっている。各上流側チャンバUc1,Uc2と下流側チャンバDcとは、同等の構成を有し、真空ポンプVc1からの排気管Vp1が接続されて、それらの内部を所定圧力の真空雰囲気に維持できるようにしている。真空処理としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法やCVD法による成膜処理、熱処理、エッチング処理といった各種の真空処理が挙げられ、
図1中、特に図示して説明しないが、基板Swに対して実施しようとする真空処理に応じて公知の構造を持つ必要な機器が各上流側チャンバUc1,Uc2と下流側チャンバDcとに夫々設けられている。
【0016】
各上流側チャンバUc1,Uc2と中間チャンバMcと下流側チャンバDcとには、基板SwがセットされたキャリアCaを水平姿勢で移送する移送手段が設けられている。移送手段は、各上流側チャンバUc1,Uc2及び下流側チャンバDc内に夫々設けられる第1のローラユニット1a,1b,1cと、中間チャンバMc内に設けられる第2のローラユニット2とを備える。第1及び第2の両ローラユニット1a,1b,1c,2は同一の構成を有し、例えば、一方の上流側チャンバUc1に設けられる第1のローラユニット1aを例に説明すると、第1のローラユニット1aは、上流側チャンバUc1の互いに対向するY軸方向の側壁UwにX軸方向に所定間隔で夫々列設された複数の移送ローラ11で構成され、各移送ローラ11が、基板Swの外周よりY軸方向に突出したキャリアCaの部分を支持するようになっている。
【0017】
側壁Uw,Uwから上流側チャンバUc1,Uc2外に突出した各移送ローラ11の駆動軸12の部分には、特に図示して説明しないが、プーリが設けられ、これらのプーリとの間にはベルトが掛け回されている。そして、図外のモータによりいずれかのプーリを回転駆動すると、ベルトを介して各移送ローラ11が同方向に同期して回転し、キャリアCaがX軸方向一方からその他方に向けて(
図1中、左から右に)移送されるようになっている。なお、上流側チャンバUc1,Uc2及び下流側チャンバDc内に夫々設けられる移送手段の構成要素は、キャリアCaをX軸方向に移送できるものであれば、上記第1のローラユニット1a,1b,1cによるものに限定されるものではなく、単軸ロボットによるもの等、公知のものが利用できる。
【0018】
中間チャンバMcはステージSt上に設けられ、ステージStの下面には、スライダ21,21が設けられ、スライダ21,21が、真空処理装置VM1が設置される床面FにY軸方向にのびるように敷設された2本のレール22,22に夫々摺動自在に係合し、中間チャンバMcが、その内部に基板Swが格納された状態でY軸方向に移動自在となっている。この場合、スライダ21,21を介してレール22,22上を移動するステージStが本実施形態の移動手段を構成する。なお、本実施形態では、基板SwがX軸一方に向けて移送されるように、各上流側チャンバUc1,Uc2と下流側チャンバDcとが配置されているため、中間チャンバMcをY軸方向に移動自在としているが、下流側チャンバDcの姿勢や中間チャンバMcに対する向きによっては、ステージStをX-Y-θステージで構成し、適宜X軸方向、Y軸方向またはθ方向に移動自在としてもよい。また、中間チャンバMcには、ステージSt上に設置された真空ポンプVc2からの排気管Vp2が接続されて、その内部を所定圧力の真空雰囲気に維持できるようにしている。
【0019】
ステージStの移動により中間チャンバMcをY軸方向に移動させたときに、中間チャンバMcに対峙する各上流側チャンバUc1,Uc2の壁面には第1の開閉バルブとしての第1のゲートバルブ31が設けられると共に、各上流側チャンバUc1,Uc2に対峙し得る中間チャンバMcの壁面には第2の開閉バルブとしての第2のゲートバルブ32が設けられている。同様に、ステージStの移動により中間チャンバMcをY軸方向に移動させたときに、下流側チャンバDcに対峙する中間チャンバMcの壁面には第3の開閉バルブとしての第3のゲートバルブ33が設けられると共に、中間チャンバMcに対峙する下流側チャンバDcの壁面には第4の開閉バルブとしての第4のゲートバルブ34が設けられている。そして、第1~第4のゲートバルブ31~34を閉じると、各上流側チャンバUc1,Uc2と中間チャンバMcと下流側チャンバDcとをその内部の真空雰囲気を維持したまま互いに隔絶できるようになっている。なお、第1~第4の開閉バルブとして、第1~第4のゲートバルブ31~34を例に説明しているが、各チャンバ内からのキャリアCaの移動を許容できるものであれば、例えばバタフライ式のものなど他の公知のものを利用できる。
【0020】
第1のゲートバルブ31及び第4のゲートバルブ34には、X軸方向に長手の第1及び第2の各連結部材41,42が夫々取り付けられている。第1及び第2の各連結部材41,42は、基板Swの通過を許容する内径を持つベローズ管で構成されている。各連結部材41,42の中間チャンバMc側の端面にはフランジ部41a,42aが形成され、フランジ部41a,42aにOリング等の真空シール41b,42bが設けられている。また、第1及び第2の各連結部材41,42には、駆動手段としてのエアシリンダ43の駆動軸43aが連結され、エアシリンダ43によりX軸方向に伸縮自在、即ち、Y軸方向に移動される中間チャンバMcに干渉しない縮位置と、フランジ部41a,42aの真空シール41b,42bが、中間チャンバMcの第2及び第3の各ゲートバルブ32,33の対峙面に当接して、その内部を気密保持した状態とする伸位置との間で第1及び第2の各連結部材41,42が伸縮自在となる。
【0021】
第1及び第2の各連結部材41,42には、真空ポンプVc3からの排気管Vp3と、ベントガス導入用バルブVgからのベントガス導入管(ベントライン)Vlとが接続され、その内部を真空雰囲気と大気雰囲気とに適宜切り換えることができるようにしている。真空ポンプVc3としては、上流側チャンバUc1,Uc2と中間チャンバMcとを及び中間チャンバMcと下流側チャンバDcとを再度連通するときに、上流側チャンバUc1,Uc2と下流側チャンバDcとに求められる圧力(真空度)に応じて、公知のものから適宜選択されるが、その圧力やベローズ管41,42の容積によっては、真空ポンプVc3を省略することができる。また、ベントガスとしては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスが用いられる。以下に、真空処理装置VM1による基板Swの移送を具体的に説明する。
【0022】
図1に示す真空処理装置VM
1では、ステージStの移動により一方の上流側チャンバUc1と中間チャンバMcとが(具体的には、ゲートバルブ31,32の孔軸が)X軸方向の同一軸線上に位置し、このとき、第1及び第2の各ゲートバルブ31,32が開状態である一方で、第3のゲートバルブ33が閉状態であり、且つ、一方の上流側チャンバUc1と中間チャンバMcとを連通する伸位置に第1の連結部材41がある。また、一方の上流側チャンバUc1と中間チャンバMcとは、真空ポンプVc1,Vc2により所定圧力まで真空排気され、更に、真空雰囲気の上流側チャンバUc1内では、第1のローラユニット1aの各移送ローラ11で、上面に基板SwがセットされたキャリアCaが支持されている。なお、下流側チャンバDcでは、第4のゲートバルブ34が閉状態であり、且つ、第2の連結部材42が縮位置にあり、その内部が真空ポンプVc1により所定圧力まで真空排気された状態となっている。また、他方の上流側チャンバUc2では、第1のゲートバルブ31が閉状態であり、且つ、第1の連結部材41が縮位置にあり、その内部が真空ポンプVc1により所定圧力まで真空排気された状態となっている。
【0023】
一方の上流側チャンバUc1から中間チャンバMcを経て下流側チャンバDcに基板Swを移送する場合、先ず、第1のローラユニット1aと、第2のローラユニット2とを夫々稼働し、上流側チャンバUc1から第1の連結部材41を通して中間チャンバMc内へとキャリアCaを移送し、第2のローラユニット2でキャリアCaが支持された状態とする。次に、第1及び第2の各ゲートバルブ31,32を閉状態とし、一方の上流側チャンバUc1と中間チャンバMcとをその内部を真空雰囲気とした状態で互いに隔絶する。この状態で、ベントガス導入管Vlを介してベントガスを第1の連結部材41に夫々導入してその内部を大気雰囲気とする。そして、エアシリンダ43により第1の連結部材41を縮位置に移動する。
【0024】
次に、ステージStにより中間チャンバMcをその内部に基板Swが格納された状態でY軸方向に移動し、中間チャンバMcと下流側チャンバDcとを(具体的には、ゲートバルブ33,34の孔軸を)X軸方向の同一軸線上に位置させる。そして、第2の連結部材42が伸位置に移動され、真空シール42bが第3のゲートバルブ33の対峙面に当接し、この状態で真空ポンプVc3により第2の連結部材42内が真空排気される。第2の連結部材42内が所定圧力まで真空排気されると、第3及び第4の各ゲートバルブ33,34が開状態とされ、第2のローラユニット2と第1のローラユニット1cとを夫々稼働して、中間チャンバMcから第2の連結部材42を通して下流側チャンバDc内へとキャリアCaを移送する。
【0025】
中間チャンバMcから下流側チャンバDc内へのキャリアCaの移送が終了すると、ベントガス導入管Vlを介してベントガスを第2の連結部材42に導入してその内部を大気雰囲気とする。そして、エアシリンダ43により第2の連結部材42を縮位置に移動する。そして、ステージStにより中間チャンバMcをY軸方向に移動し、上記と同じ手順で他方の上流側チャンバUc2から基板Swを移送することができる。
【0026】
以上の実施形態によれば、各上流側チャンバUc1,Uc2から移送されてきた基板Swを格納した状態で中間チャンバMc自体を移動させる構成を採用したため、中間チャンバMc自体は、基板Swとそれを移送する機構(即ち、第2のローラユニット2)を格納できる空間だけあれば済み、搬送ロボットによる基板搬送が許容できる空間を確保する必要がある上記従来例のものと比較して、中間チャンバMc(従来例の搬送チャンバに相当)のサイズを大幅に小さくすることができる。その結果、その内部を真空排気するために多数の真空ポンプが必要になったり、また、真空チャンバの材料費が大幅に増加したりするといった問題を解消することができる。しかも、2個の上流側チャンバUc1,Uc2で処理済みの基板Swを交互に下流側チャンバDcに移送するような場合にも簡単に対応(即ち、移送される基板Swの所謂レーンチェンジを効率よく)することができる。
【0027】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記第1実施形態では、真空処理装置VM
1として、2個の上流側チャンバUc1,Uc2、中間チャンバMc及び下流側チャンバDcを持つものを例に説明したが、チャンバの数はこれに限定されるものではなく、複数個の上流側チャンバと複数個の下流側チャンバとの間で基板Swを移送する場合にも本発明は広く適用することができ、このとき、中間チャンバMcの数を適宜増加させることもできる。また、上記実施形態では、水平面内で所謂レーンチェンジして基板Swを移送する場合を例に説明しているが、鉛直方向で所謂レーンチェンジして基板Swを移送する場合も本発明の範疇に属することは明らかである。即ち、同一の部材、要素について同一の符号を付した
図3に示すように、第2実施形態の真空処理装置VM
2では、上流側チャンバUc1,Uc2がZ軸方向上下に間隔を存して配置されている。この場合、中間チャンバMcを支持するステージStをZ軸方向にのびるように立設した2本のレール22,22に沿って移動自在とすればよい。
【0028】
また、上記第1実施形態では、第1及び第2の各連結部材41,42がベローズ管で構成され、これらのベローズ管41,42を駆動手段43で伸縮させてX軸方向に進退させるものを例に説明したが、上流側チャンバUc1,Uc2と中間チャンバMcとを及び中間チャンバMcと下流側チャンバDcとを連通またはその解除ができて中間チャンバMcの移動を阻害しないものであれば、特に制限はない。例えば、特に図示して説明しないが、ゲートバルブに金属製の枠体を設け、枠体で支持されるようにゴム製のシール体を装着し、枠体内に流体を導入することで、シール体を膨張させて、中間チャンバMcのゲートバルブ32の対峙面に当接させて真空シールする一方で、枠体内の流体を排出することで、中間チャンバMcの移動を許容する隙間が形成されるように構成したものを用いることができる。
【0029】
更に、上記第1実施形態では、水平姿勢で上流側チャンバUc1,Uc2から中間チャンバMcを経て下流側チャンバDcに移送される場合を例に説明したが、その途中でZ軸方向にて上下反転させて基板Swを搬送することもできる。同一の部材、要素について同一の符号を付した
図4及び
図5に示すように、第3実施形態の真空処理装置VM
3では、中間チャンバMc2自体が上下反転されるように構成されている。即ち、中間チャンバMc2内に設けられる第2のローラユニット20は、中間チャンバMc2内で互いに対峙させて設けられるZ軸方向上下一対のもので構成されている(以下では、
図5中、Z軸方向上側のものを「上ローラユニット20u」、Z軸方向下側のものを「下ローラユニット20d」とする)。各ローラユニット20u,20dは、同一の構成を有し、中間チャンバMc2の互いに対向するY軸方向の側壁MwにX軸方向に所定間隔で夫々列設された複数の移送ローラ210(210a,210b)を備え、後述する中間チャンバMc2の姿勢に応じて、下ローラユニット20d(または上ローラユニット20u)の各移送ローラ210b(または210a)が、基板Swの外周よりY軸方向に突出したキャリアCaの部分を支持するようになっている。
【0030】
図5に示すZ軸方向下側に位置する下ローラユニット20dを例に説明すると、中間チャンバMc2の側壁Mwには、Z軸方向に長手のスリット孔MsがX軸方向に列設され、スリット孔Msを夫々挿通して中間チャンバMc2外にY軸方向に夫々突出した各移送ローラ210bの駆動軸220の部分にはプーリ230が設けられ、これらのプーリ230の間にはベルト240が掛け回されている。そして、モータ250によりいずれかのプーリ230を回転駆動すると、ベルト240を介して各移送ローラ210bが同方向に同期して回転し、キャリアCaがX軸方向一方からその他方に向けて(
図4中、左から右に)移送されるようになっている。
【0031】
また、駆動軸220の部分、プーリ230やベルト240といったキャリアCaを移送するための部品は、ボックス260内に一体に組み付けられ、ボックス260が、中間チャンバMc2の側壁Mw外側に夫々取り付けた真空雰囲気の形成が可能な拡張チャンバEc,Ec内に格納されている。拡張チャンバEc,Ec内には、保持手段としての直動モータ270が設けられ、直動モータ270の駆動軸270aがボックス260の所定位置に接続され、上ローラユニット20uと下ローラユニット20dとを(即ち、各ローラユニット20u,20dの各移送ローラ210a,210bを)互いに近接または離間するようにZ軸方向に夫々移動できるようになっている。なお、拡張チャンバEc,Ec自体は、中間チャンバMc2にスリット孔Msを介して連通しているが、その内部を独立して真空排気する真空ポンプを設けていてもよい。
【0032】
各拡張チャンバEc,EcのY軸方向の外側壁の所定位置には、Y軸方向で同軸上に位置させて回転軸280a,280bが夫々突設され、回転軸280a,280bは、ステージStに設置される支持ブロック290a,290bに軸支されている。これにより、回転モータMoにより回転軸280a,280bを回転させると、その回転方向及び回転角に応じて中間チャンバMc2が回転してその姿勢を変更するようになる。このとき、中間チャンバMc2の回転が阻害されないように、支持ブロック290a,290bをZ軸方向に昇降する昇降手段300を設け、中間チャンバMc2の回転に先立って、中間チャンバMc2を所定の高さ位置までZ軸方向に持上げるようにしてもよい。なお、中間チャンバMc2の回転を阻害しないように、真空ポンプVc2からの排気管Vp2の中間チャンバMc2への接続位置や、その長さなどが適宜設定されている。
【0033】
以上によれば、先ず、第1のローラユニット1aと、第2のローラユニット20の下ローラユニット20dとを夫々稼働し、一方の上流側チャンバUc1から第1の連結部材41を通して中間チャンバMc2内へと移送し、下ローラユニット20dでキャリアCaが支持される状態とする。そして、上記と同手順で一方の上流側チャンバUc1と中間チャンバMc2とをその内部を真空雰囲気とした状態で互いに隔絶すると共に、直動モータ270を稼動させて、上ローラユニット20uと下ローラユニット20dとをZ軸方向で互いに近接するように移動させることで、一対のローラユニット20u,20dでキャリアCaを挟持することで保持する。
【0034】
次に、キャリアCaを保持(つまり、その移動を規制)した状態で、回転モータMoにより回転軸280a,280bを180度回転させる。すると、中間チャンバMc2の回転に伴ってキャリアCaが上下反転する。これにより、基板Swの処理面がZ軸方向下方を向く姿勢に変更される。この状態で、直動モータ270を稼働させて、上ローラユニット20uと下ローラユニット20dとをZ軸方向で互いに離間するように移動させると、キャリアCaが、Z軸方向下側に位置するようになった第2のローラユニット20の上ローラユニット20uで支持されるようになる。そして、上記と同手順で中間チャンバMc2から下流側チャンバDcへと基板Swが移送される。この場合、中間チャンバMc2自体を回転させてその内部で保持されるキャリアCa、ひいては、基板Swの姿勢を変更する構成を採用したため、中間チャンバMc2自体は、基板SwがセットされたキャリアCaと第2のローラユニット20とを格納する空間だけあれば済み、有利である。
【0035】
なお、上記第3実施形態では、中間チャンバMc2にて基板Swを上下反転させるものを例に説明したが、これに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば、上流側チャンバUc1で基板Swの処理面が鉛直方向上方を向く姿勢(水平姿勢)で処理を行い、中間チャンバMc2にて基板Swの処理面が水平方向を向く姿勢(垂直姿勢)に姿勢変更し、この姿勢で下流側チャンバDcに基板Swを移送することもできる。このような場合、中間チャンバMc2に、垂直姿勢にされた基板Swを移送する移送手段を適宜設けておけばよい。更に、直動モータ270を稼動させて、上ローラユニット20uと下ローラユニット20dとをZ軸方向で互いに近接または離間するように移動できる構成を採用し、上下一対のローラユニット20u,20dでキャリアCaを挟持することで保持するものを例に説明したが、中間チャンバMc2自体を回転させるときにキャリアCaまたは基板Swを保持できるものであれば、これに限定されるものではなく、保持するための機構は、キャリアCaまたは基板Swを移送するものと別体で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
Dc…下流側チャンバ、Mc,Mc2…中間チャンバ、Mo…回転モータ(回転手段)、St…ステージ(移動手段)、Sw…基板(被処理基板)、Uc1,Uc2…上流側チャンバ、Vc3…真空ポンプ、Vl…ベントガス導入管(ベントライン)、VM1,VM2…真空処理装置、1a,1b,1c…第1のローラユニット(移送手段)、2…第2のローラユニット(移送手段)、31…第1のゲートバルブ(第1の開閉バルブ)、32…第2のゲートバルブ(第2の開閉バルブ)、33…第3のゲートバルブ(第3の開閉バルブ)、34…第4のゲートバルブ(第4の開閉バルブ)、41…ベローズ管(第1の連結部材)、42…ベローズ管(第2の連結部材)、270…直動モータ(保持手段)、280a,280b…回転軸。