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特許7341932下層膜形成用組成物、パターン形成方法、コポリマー及び下層膜形成用組成物の製造方法
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  • 特許-下層膜形成用組成物、パターン形成方法、コポリマー及び下層膜形成用組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】下層膜形成用組成物、パターン形成方法、コポリマー及び下層膜形成用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20230904BHJP
   C08F 222/20 20060101ALI20230904BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08F222/20
C08F290/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020045512
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148831
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】森田 和代
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰明
(72)【発明者】
【氏名】清水 良平
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163975(WO,A1)
【文献】特開2011-074231(JP,A)
【文献】特開2002-207296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08F 222/20
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー及び有機溶剤を含み、パターン形成に用いる下層膜形成用組成物であって、
前記コポリマーが、
(a)糖誘導体に由来する単位と、
(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、
(c)前記コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、
(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含み、
前記(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であり、
前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位は、芳香族環含有化合物に由来する単位であり、
前記(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位は、C10以上の脂肪族アルコール又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する単位であり、
前記下層膜形成用組成物は金属導入用である、下層膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位が、ベンゼン環含有化合物に由来する単位及びナフタレン環含有化合物に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(a)糖誘導体に由来する単位が、セルロース誘導体に由来する単位、ヘミセルロース誘導体に由来する単位及びキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程を含むパターン形成方法。
【請求項5】
前記下層膜に金属を導入する工程を含む請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
(a)糖誘導体に由来する単位と、
(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、
(c)コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、
(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含み、
前記(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であり、
前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位は、芳香族環含有化合物に由来する単位であり、
前記(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位は、C10以上の脂肪族アルコール又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する単位である、
コポリマー。
【請求項7】
前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位が、ベンゼン環含有化合物に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記(a)糖誘導体に由来する単位が、セルロース誘導体に由来する単位、ヘミセルロース誘導体に由来する単位及びキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項6又は7に記載のコポリマー。
【請求項9】
(a)重合性不和飽和基を有する糖誘導体、(b)光反射防止機能を有する重合性単量体、(c)クロスカップリング基を有する重合性単量体及び(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する重合性単量体を重合する工程を含むコポリマーの製造方法であって、
前記(a)重合性不和飽和基を有する糖誘導体が、重合性不和飽和基を有するペントース誘導体及び重合性不和飽和基を有するヘキソース誘導体から選択される少なくとも一種であり、
前記(b)光反射防止機能を有する重合性単量体は、芳香族環含有化合物に由来する重合性単量体であり、
前記(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する重合性単量体は、C10以上の脂肪族アルコール又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する重合性単量体である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層膜形成用組成物、パターン形成方法、コポリマー及び下層膜形成用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子デバイスは微細化による高集積化が要求されており、半導体デバイスのパターンについては、微細化及び形状の多様化が検討されている。このようなパターンの形成方法としては、フォトレジストを用いたリソグラフィ法や、誘導自己組織化材料(Directed Self Assembly)を用いた自己組織化によるパターン形成方法が知られている。例えば、フォトレジストを用いたリソグラフィ法は、シリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線等の活性光線を照射し、現像することで得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板に、上記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。
【0003】
微細なパターンを形成するためには、シリコンウエハー等の基板上に下層膜を形成した後に、パターンを形成する方法も検討されている。例えば、特許文献1には、[A]ポリシロキサン、及び[B]溶媒、を含有し、[B]溶媒が、(B1)3級アルコール、を含むことを特徴とするレジスト下層膜形成用組成物が記載されている。特許文献2には、芳香環を有する化合物を含有するレジスト下層膜形成用組成物を基板に塗布する塗布工程と、得られた塗膜を酸素濃度が1容量%未満の雰囲気中、450℃超800℃以下の温度で加熱する加熱工程とを備える、レジスト下層膜形成方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、デキストリンの50%以上をエステル化したデキストリンエステル化合物、架橋性化合物、及び有機溶剤を含む下層膜形成用組成物が記載されている。特許文献4には、包接分子を含有するシクロデキストリンを含むリソグラフィ用下層膜形成用組成物が記載されている。
【0005】
かかる状況の下、本発明者らは、下層膜の下層膜残存率を高めるためにコポリマー及び有機溶剤を含み、パターン形成に用いる下層膜形成用組成物であって、
前記コポリマーが、
(a)糖誘導体に由来する単位と、
(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、
(c)前記コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、を含み、
前記(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であり、
前記下層膜形成用組成物は金属導入用である、下層膜形成用組成物を開発している(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-170338号公報
【文献】特開2016-206676号公報
【文献】国際公開第2005/043248号公報
【文献】特開2007-256773号公報
【文献】国際公開第2019/163975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下層膜形成用組成物から形成された塗布膜が加熱処理されて下層膜となった後はレジスト形成組成物等が含有する有機溶剤に溶解されにくくなる(すなわち、下層膜形成用組成物に用いる材料の下層膜残存率が高い)必要がある。しかしながら、従来の下層膜形成用組成物を用いて形成した下層膜の下層膜残存率(耐溶剤性)は、十分に高いものとは言い難かった。
【0008】
下層膜にパターンを形成した後には、該パターンを保護膜として、さらにシリコンウエハー基板にパターン形状を加工するエッチング工程が設けられることがあるが、従来の下層膜形成用組成物を用いて形成した保護膜は、エッチング耐性が十分ではなく、基板におけるパターン加工性に課題が残るものであった。
【0009】
従って、本発明は、有機溶剤に対する残存率が高く、かつエッチング耐性に優れた下層膜を形成し得る下層膜形成用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、(a)糖誘導体に由来する単位と、(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、(c)コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含むコポリマーを下層膜形成用組成物の材料として用いることで、有機溶剤に対する残存率が高い下層膜が得られ、かつ金属導入量を向上することにより下層膜に優れたエッチング耐性を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、以下の項を提供する。
【0011】
[2]コポリマー及び有機溶剤を含み、パターン形成に用いる下層膜形成用組成物であって、
前記コポリマーが、
(a)糖誘導体に由来する単位と、
(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、
(c)前記コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、
(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含み、
前記(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であり、
前記下層膜形成用組成物は金属導入用である、下層膜形成用組成物。
[2]前記(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位が、C10以上の脂肪族アルコール又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する単位である、[1]に記載の下層膜形成用組成物。
[3]前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位が、ベンゼン環含有化合物に由来する単位及びナフタレン環含有化合物に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の下層膜形成用組成物。
[4]前記(a)糖誘導体に由来する単位が、セルロース誘導体に由来する単位、ヘミセルロース誘導体に由来する単位及びキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の下層膜形成用組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程を含むパターン形成方法。
[6]前記下層膜に金属を導入する工程を含む[5]に記載のパターン形成方法。
[7](a)糖誘導体に由来する単位と、
(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、
(c)前記コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、
(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含み、
前記(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であるコポリマー。
[8]前記(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位が、C10以上の脂肪族アルコール又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する単位である、[7]に記載のコポリマー。
[9]前記(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位が、ベンゼン環含有化合物に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、[7]又は[8]に記載のコポリマー。
[10]前記(a)糖誘導体に由来する単位が、セルロース誘導体に由来する単位、ヘミセルロース誘導体に由来する単位及びキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種である、[7]~[9]のいずれか一項に記載のコポリマー。
[11](a)重合性不和飽和基を有する糖誘導体、(b)光反射防止機能を有する重合性単量体、(c)クロスカップリング基を有する重合性単量体及び(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する重合性単量体を重合する工程を含むコポリマーの製造方法であって、
前記(a)重合性不和飽和基を有する糖誘導体が、重合性不和飽和基を有するペントース誘導体及び重合性不和飽和基を有するヘキソース誘導体から選択される少なくとも一種である、方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機溶剤に対する残存率が高く、かつエッチング耐性に優れた下層膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、基板と下層膜の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
なお、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0016】
(下層膜形成用組成物)
1つの実施形態において、本発明は、コポリマー及び有機溶剤を含み、パターン形成に用いる下層膜形成用組成物に関する。コポリマーは、(a)糖誘導体に由来する単位と、(b)光反射防止機能を有する化合物に由来する単位と、(c)コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位と、(d)下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位とを含む。(a)糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であり、下層膜形成用組成物は金属導入用を提供する。
【0017】
本発明の下層膜形成用組成物は、有機溶剤に対する残存率が高く、かつエッチング耐性に優れた下層膜を形成することができる。本発明の下層膜形成用組成物から形成される下層膜は、優れたエッチング耐性を有しているため、基板等のエッチング加工性を高めることができる。さらに、本発明の下層膜形成用組成物に含まれるコポリマーは、上述した複数の構成単位を含むものであるため、有機溶剤への溶解性が高い一方で、硬化して下層膜となった後には、レジスト形成組成物等が含有する有機溶剤に溶解されずに残存する点にも特徴がある。
【0018】
コポリマーが有する糖誘導体に由来する単位(以下、単位(a)ともいう)は、架橋反応部を多く含むため、(架橋剤の添加の有無によらず)加熱による架橋が促進されやすい傾向がある。このため、塗布膜を加熱処理して下層膜となった後の下層膜残存率を高めることができる。すなわち、下層膜形成用組成物から形成される塗布膜を加熱処理して下層膜を形成した後には、コポリマーの有機溶剤に対する溶解度を低くすることができる。また、コポリマーが単位(a)を有することにより、エッチング加工性を高めることもできる。
【0019】
下層膜残存率は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。ここで、下層膜残存率は、下層膜に対して、フォトレジストに使用する溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルの50:50(質量比)混合液を塗布する前後(洗浄前後)の下層膜の厚みから以下の式で算出される値である:
下層膜残存率(%)=洗浄後の下層膜の膜厚(μm)/洗浄前の下層膜の膜厚(μm)×100
【0020】
エッチング加工性は、以下の方法で評価することができる。まず、下層膜形成用組成物をシリコン基板に塗布し、下層膜を形成した後に、下層膜をラインアンドスペースのパターン形状とし、シリコン基板へのエッチングを行う。その後、シリコン基板のパターン形成表面を走査型電子顕微鏡で観察し、エッチング加工性の状態を確認する。シリコン基板のパターン形状が走査型電子顕微鏡の1視野においてラインの倒れがない状態であればエッチング加工性が良好であると判定できる。
【0021】
また、本発明の下層膜形成用組成物は、コポリマーが単位(a)を有することにより、下層膜に金属を多く導入することができる。このため、本発明の下層膜形成用組成物は金属導入用の材料であると言える。下層膜形成用組成物に含まれるコポリマーは金属と反応(結合)することで、金属を含有する下層膜を形成することができる。このような下層膜は金属を有さない下層膜に比べて硬くなり、これにより優れたエッチング加工性を発揮することができる。ここで、下層膜形成用組成物に含まれるコポリマーは、コポリマー1分子中の複数箇所で金属と反応(結合)するものであることが好ましく、金属との反応(結合)部位が多いほど金属導入率が高くなる。本発明においては、コポリマー中に含まれる酸素原子と金属原子を反応(結合)させることにより、金属導入率を高めており、このような高い金属導入率はコポリマーが単位(a)を有することにより達成される。なお、コポリマー中に含まれる酸素原子と金属原子の結合は特に限定されるものではないが、例えば、コポリマー中に含まれる酸素原子と金属原子は配位結合又はイオン結合することが好ましい。
【0022】
下層膜における金属導入率は、5at%(アトミックパーセント)以上であることが好ましく、8at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることがさらに好ましく、15at%以上であることが一層好ましい。金属導入率は、例えば、以下の方法で算出できる。まず、下層膜形成用組成物から形成された下層膜をALD(原子層堆積装置)に入れ、ここに95℃にてAl(CH33ガスを導入した後、水蒸気を導入する。この操作を3回繰り返すことで、下層膜にAlを導入する。Al導入後の下層膜について、電子顕微鏡JSM7800F(日本電子製)を用いてEDX分析(エネルギー分散型X線分析)を行い、Al成分の比率(Al含有率)を算出し、これを金属導入率とする。
【0023】
コポリマーが有する光反射防止機能を有する化合物に由来する単位(以下、単位(b)ともいう)は、光を吸収する性質を有している。単位(b)の光反射防止機能については単位(b)の単量体と溶媒からなる塗布液から厚み0.1μmの塗布膜を形成し、該塗布膜に紫外線(例えば、波長193nmの紫外線)を照射し、その反射率が30%以下である場合に、単位(b)が光反射防止機能を有していると評価できる。なお、塗布膜の反射率は、分光光度計で測定することで評価することができる。分光光度計としては、例えば、日本分光社製のV770EXを用いることができ、分光光度計に積分球を設置した状態で測定を行うことが好ましい。なお、単位(b)の単量体から塗布膜を形成できない場合は単位(b)で構成されたポリマーを含む塗布液から塗布膜を形成してもよい。
【0024】
コポリマーが単位(b)を有することにより、下層膜形成用組成物から形成される下層膜は光反射防止機能を発揮することができる。このため、下層膜上にレジスト膜を形成し、露光してパターンを形成する際には精度よくパターン形状を形成することができる。下層膜の光反射防止機能は、下層膜に紫外線(例えば、波長193nmの紫外線)を照射し、その反射率を分光光度計で測定することで評価することができる。分光光度計としては、例えば、日本分光社製のV770EXを用いることができ、分光光度計に積分球を設置した状態で測定を行うことが好ましい。下層膜の紫外線反射率(光反射率)は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
さらに、コポリマーが、コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位(以下、単位(c)ともいう)を有することで、コポリマーのクロスカップリング反応を促進することができる。クロスカップリングとは下層膜形成用組成物中のコポリマーが加熱や光反応によりコポリマーが結合すること、もしくはコポリマー内の官能基が結合することである。これにより、下層膜の有機溶剤に対する残存率を高めることができ、さらにエッチング加工性を高めることができる。また、コポリマーが単位(c)を有することにより、大気下でかつ比較的低温での加熱処理で割れにくい下層膜を形成することができる。例えば、下層膜を高温条件といった過酷条件に置いた場合であっても割れの発生が抑制される。
【0026】
なお、コポリマー中の単位(c)の有無は、下層膜形成用組成物を硬化させる前後の官能基のピークの変化をFT-IRで検出することで判定することができる。例えば、コポリマーをクロスカップリングし得る化合物がグリシジルメタクリレートであれば、下層膜形成用組成物を硬化させることでコポリマーがクロスカップリングし、916cm-1付近のピークが消失し、1106cm-1付近のエーテル基由来のピークや3160~3600cm-1付近の水酸基由来のピークが検出されることになる。これにより、コポリマーのクロスカップリングが起こったと評価することができる。具体的には、例えばメチル基等の変化しないピーク高さを基準官能基とし、クロスカップリングにより消失したピーク高さの比率から、クロスカップリング反応率を算出し、クロスカップリング反応率が95%以下の場合に、コポリマーのクロスカップリングが生じている、すなわち、コポリマーが単位(c)を含有していると判定することができる:
クロスカップリング反応率(%)=(硬化後のクロスカップリング基由来の官能基のピーク高さ/基準官能基のピーク高さ)/(硬化前のクロスカップリング基由来の官能基のピーク高さ/基準官能基のピーク高さ)×100
【0027】
本発明の下層膜形成用組成物から形成される下層膜は、例えば、シリコンウエハー等の基板にパターンを形成するために、基板上に設けられる膜(保護膜)である。下層膜は、基板上に直接接するように設けられる膜であってもよく、基板上に他の層を介して積層される膜であってもよい。下層膜は、基板に形成したいパターン形状に加工され、パターン形状として残された部分がその後のエッチング工程における保護膜となる。そして、基板にパターンが形成された後は、下層膜(保護膜)が基板上から除去されることが一般的に行われている。このように、下層膜は、基板にパターンを形成する工程において用いられるものである。
【0028】
本発明の下層膜形成用組成物から形成される下層膜は基板にパターン形状を加工する際に優れたエッチング耐性を発揮するものであり、このような下層膜のエッチング耐性は、例えば、下記式において算出されるエッチング選択比によって評価することができる:
エッチング選択比 =基板のエッチング加工部分の最大深さ/(エッチング処理前の下層膜の平均厚み-エッチング処理後の下層膜の平均厚み)
基板のエッチング加工部分の深さ及びエッチング処理前後の下層膜の厚みは、例えば、基板断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで測定することができる。基板のエッチング加工部分の深さは、エッチング処理によって削られた部分の最大深さであり、エッチング処理前後の下層膜の厚みは、下層膜の残留部分の最大厚みである。上記のようにして算出されるエッチング選択比は、1.5より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが一層好ましい。なお、エッチング選択比の上限値は特に限定されないが、例えば200とすることができる。
【0029】
また、本発明の下層膜形成用組成物は、パターンを形成するためのフォトマスクの形成材料として用いられてもよい。フォトマスク基板上に所定のパターンを形成し、エッチング、レジスト剥離等の工程を経ることでフォトマスクが形成される。
【0030】
<コポリマー>
本発明の下層膜形成用組成物は、コポリマーを含む。コポリマーは、単位(a)、単位(b)、単位(c)及び単位(d)を含む。ここで、単位(a)は糖誘導体に由来する単位であり、単位(b)は光反射防止機能を有する化合物に由来する単位であり、単位(c)はコポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位であり、単位(d)は下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位である。ここで、単位(a)は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種である。一実施形態において、本発明は、単位(a)、単位(b)、単位(c)及び単位(d)を含むコポリマーも提供する。
【0031】
コポリマーは、ブ架橋を促進し強度を高める観点からランダムコポリマーであることが好ましい。なお、コポリマーは、一部がランダムコポリマー、一部がブロックコポリマーである構造であってもよい。
【0032】
コポリマーの含有量は、下層膜形成用組成物の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、コポリマーの含有量は、下層膜形成用組成物の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
なお、コポリマーは有機材料からなることが好ましい。これは、ポリシロキサン等の有機無機ハイブリット材料を含む場合と比較して、有機系のレジスト材料等との密着性が良好となる観点から好ましい。
【0034】
(単位(a))
単位(a)は糖誘導体に由来する単位であり、糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種である。このように、コポリマーの単位(a)として酸素原子を多く持った糖誘導体に由来する単位を導入することで、金属に配位しやすい構造とし、逐次浸透合成法等の簡便な方法でコポリマー、下層膜形成用組成物、下層膜形成用組成物から形成された下層膜のいずれかに金属を導入することができ、その結果エッチング加工性を高めることができる。このようにして金属が導入された下層膜は、リソグラフィープロセス内でより高性能なマスクとなり得る。
【0035】
糖誘導体は、単糖由来の糖誘導体であっても、単糖由来の糖誘導体が複数結合した構造であってもよい。コポリマーがブロックコポリマーである場合、単位(a)からなる重合部aは、単糖由来の糖誘導体が複数結合した構造となる。
【0036】
糖誘導体に由来する単位は、ペントース誘導体に由来する単位及びヘキソース誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種である。
ペントース誘導体は、公知の単糖類又は多糖類のペントースのヒドロキシル基が少なくとも置換基で修飾されたペントース由来の構造であれば、特に制限はない。ペントース誘導体としては、ヘミセルロース誘導体、キシロース誘導体及びキシロオリゴ糖誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0037】
ヘキソース誘導体としては、公知の単糖類又は多糖類のヘキソースのヒドロキシル基が少なくとも置換基で修飾されたヘキソース由来の構造であれば、特に制限はない。ヘキソース誘導体としては、グルコース誘導体及びセルロース誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましく、セルロース誘導体であることがより好ましい。
中でも、糖誘導体に由来する単位(単位(a))は、セルロース誘導体に由来する単位、ヘミセルロース誘導体に由来する単位及びキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位から選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、ポリマーの溶媒への溶解性が優れるため、ポリマーは、キシロース誘導体もしくはキシロオリゴ糖誘導体に由来する単位を含むものであることがより好ましい。なお、キシロオリゴ糖とはキシロース由来の単位が繰り返される構造を有するオリゴ糖を意味し、典型的には、キシロース由来の単位が2から20回繰り返される構造を示す。
【0038】
糖誘導体に由来する単位は、側鎖に糖誘導体由来構造を有する構成単位であってもよく、主鎖に糖誘導体由来構造を有する構成単位であってもよい。糖誘導体に由来する単位が、側鎖に糖誘導体由来構造を有する構成単位である場合は、糖誘導体に由来する単位は、後述する一般式(1)で表される構造であることが好ましい。また、糖誘導体に由来する単位が、主鎖に糖誘導体由来構造を有する構成単位である場合は、糖誘導体に由来する単位は、後述する一般式(2)で表される構造であることが好ましい。中でも、主鎖が長くなり過ぎにくく、コポリマーの有機溶剤への溶解度を高くしやすい観点から、糖誘導体に由来する単位は、一般式(1)で表される構造であることが好ましい。なお、一般式(1)及び(2)では、糖誘導体の構造を環状構造として記載しているが、糖誘導体の構造は環状構造だけでなくアルドースやケトースと呼ばれる開環した構造(鎖状構造)であってもよい。
【0039】
以下、一般式(1)で表される構造について説明する。
【0040】
【化1】
【0041】
一般式(1)中、s及びtは同一又は異なって、0以上(好ましくは0~2)の整数を示す。
1は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基、ホスホリル基又は糖誘導体基を表し、複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。
R’は水素原子、-OR11又は-NR12 2を表す。
R”は水素原子、-OR11、-COOR13又は-CH2OR13を表す。ここで、R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、カルボキシル基又はアシル基を表し、複数あるR12は同一であっても異なってもよく、R13は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表す。
5は水素原子又はアルキル基を表す。
1及びY1は、同一又は異なって、単結合又は連結基を表す。
【0042】
一般式(1)中、R1は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基、ホスホリル基又は糖誘導体基を表し、複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。中でも、R1は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上3以下のアシル基であることが好ましい。なお、上記のアルキル基が置換基を有するアルキル基である場合、このようなアルキル基には糖誘導体基が含まれるため、糖鎖部分はさらに直鎖又は分岐鎖の糖誘導体に由来する単位を有していてもよい。
【0043】
本発明において、糖誘導体基としては、例えば、以下の構造を有するものが挙げられる:
【0044】
【化2】
【0045】
(nは1以上の整数を表す。)
上記構造式中、*印は、側鎖の糖単位との結合部位を表す。
【0046】
直鎖又は分岐鎖の糖誘導体に由来する単位は、結合する糖誘導体と同じ構造の糖誘導体であることが好ましい。すなわち、一般式(1)で表される構造のR”が水素原子、-OR11、カルボキシル基、-COOR13であって糖鎖部分(糖誘導体)がさらに直鎖又は分岐鎖の糖誘導体に由来する単位を有する場合は、該単位はペントース誘導体に由来する単位を有することが好ましい。また、一般式(1)で表される構造のR”が-CH2OR13であって糖鎖部分(糖誘導体)がさらに直鎖又は分岐鎖の糖誘導体に由来する単位を有する場合は、ヘキソース誘導体に由来する単位を有することが好ましい。直鎖又は分岐鎖の糖誘導体に由来する単位のヒドロキシル基が有してもよいさらなる置換基は、R1の範囲と同様である。
【0047】
一般式(1)中、R1は少なくとも1つのアルキル基として糖誘導体基をさらに有すること、すなわち単糖由来の糖誘導体に由来する単位が複数結合した構造を形成することが、コポリマーの有機溶剤に対する溶解度を低くする観点から好ましい。この場合、糖誘導体の平均重合度(単糖由来の糖誘導体の結合個数を意味する)は1以上20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0048】
1がアルキル基又はアシル基である場合、その炭素数は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数は1以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。
【0049】
1の具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基等のアシル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、トリメチルシリル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、アセチル基、プロパノイル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基が好ましく、アセチル基、プロパノイル基が特に好ましい。
【0050】
一般式(1)中、R’は水素原子、-OR11又は-NR12 2を表す。R11は水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表す。R11がアルキル基又はアシル基である場合、その炭素数は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数は1以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。中でも、R11は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のアシル基又はトリメチルシリル基であることが好ましい。R11の具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基等のアシル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、トリメチルシリル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、アセチル基、プロパノイル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基、アセチル基、プロパノイル基が特に好ましい。
【0051】
12は、水素原子、アルキル基、カルボキシル基、アシル基を表し、複数あるR12は同一であっても異なってもよい。中でも、R12は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基、カルボキシル基、-COCH3であることが好ましい。
【0052】
R’の好ましい構造は-H、-OH、-OAc、-OCOC25、-OCOC65、-NH2、-NHCOOH、-NHCOCH3であり、R’のさらに好ましい構造は-H、-OH、-OAc、-OCOC25、-NH2であり、R’の特に好ましい構造は-OH、-OAc、-OCOC25である。
【0053】
一般式(1)中、R”は水素原子、-OR11、カルボキシル基、-COOR13又は-CH2OR13を表す。R13は水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表す。R13がアルキル基又はアシル基である場合、その炭素数は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数は1以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。中でも、R13は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基アシル基又はトリメチルシリル基であることが好ましい。
【0054】
11の具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基等のアシル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、トリメチルシリル基 等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、アセチル基、プロパノイル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基が好ましく、アセチル基、プロパノイル基が特に好ましい。
【0055】
R”の好ましい構造は-H、-OAc、-OCOC25、-COOH、-COOCH3、-COOC25、-CH2OH、-CH2OAc、-CH2OCOC25であり、R”のさらに好ましい構造は-H、-OAc、-OCOC25、-COOH、-CH2OH、-CH2OAc、-CH2OCOC25であり、R”の特に好ましい構造は-H、-CH2OH、-CH2OAcである。
【0056】
一般式(1)中、R5は水素原子又はアルキル基を表す。中でも、R5は水素原子又は炭素数が1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0057】
一般式(1)中、X1及びY1は、同一又は異なって、単結合又は連結基を表す。
1が連結基である場合、X1としては、アルキレン基、-O-、-NH2-、カルボニル基等を含む基が挙げられるが、X1は単結合であるか、もしくは炭素数が1以上6以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1以上3以下のアルキレン基であることがより好ましい。
1が連結基である場合、Y1としては、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-等を含む基が挙げられる。Y1はこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。中でもY1は下記構造式で表される連結基であることが好ましい。
【0058】
【化3】
【0059】
上記構造式中、※印は主鎖側との結合部位を表し、*印は、側鎖の糖単位との結合部位を表す。
【0060】
以下、一般式(2)で表される構造について説明する。
【0061】
【化4】
【0062】
一般式(2)中、R201は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表し、複数あるR201は同一であっても異なっていてもよい。
R’は水素原子、-OR11又は-NR12 2を表す。
R”は水素原子、-OR11、-COOR13又は-CH2OR13を表す。ここで、R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、カルボキシル基又はアシル基を表し、複数あるR12は同一であっても異なってもよく、R13は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、トリメチルシリル基又はホスホリル基を表す。
*印はR201に代わってR201が結合している酸素原子のいずれか1つとの結合部位を表す。
【0063】
一般式(2)中、R201、R’、R”の好ましい範囲は、一般式(1)中のR1、R’、R”の好ましい範囲と同様である。
【0064】
なお、重合後のポリマーからR1、R’、R”を還元により水素原子に戻し、R1、R11を水素とすることができる。但し、R1及びR11はすべて還元されなくてもよい。
【0065】
(単位(b))
単位(b)は、光反射防止機能を有する化合物に由来する単位である。本発明において、光反射防止機能を有する化合物は、芳香族環含有化合物のような紫外線を強く吸収する性質をもつ化合物であることが好ましい。
【0066】
光反射防止機能を有する化合物が芳香族環含有化合物である場合、単位(b)は、単位(a)と比較して疎水性を示す単位となるため、下層膜形成用組成物の材料であるコポリマーの有機溶剤への溶解度を高める働きをする。すなわち、下層膜形成用組成物中においてはコポリマーの溶け残りが抑制されている。また、単位(b)が芳香族環含有化合物に由来する単位であることは、架橋性に不要な影響を与えずに下層膜を形成した場合に下層膜残存率を高くしやすい観点からも好ましい。このように、光反射防止機能を有する化合物が芳香族環含有化合物である場合、下層膜形成用組成物に含まれるコポリマーは、膜形成前は有機溶剤に対する溶解度が高いが、膜形成後は有機溶剤に溶解しにくいという特性を発揮することができる。
【0067】
中でも、単位(b)は、ベンゼン環含有化合物に由来する単位であることが好ましい。
【0068】
単位(b)は、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有する単位であることが好ましい。
【0069】
【化5】
【0070】
一般式(3)中、R5は水素原子又はアルキル基を表す。
1は単結合又は連結基を表す。
50は有機基又はヒドロキシル基を表す。
一般式(3)において、nは0~5の整数を表す。
【0071】
一般式(3)中、R5及びX1の好ましい範囲は、一般式(1)中のR5及びX1の好ましい範囲と同様である。
【0072】
一般式(3)において、R50が有機基である場合、R50は置換基を有してもよい炭化水素基であることが好ましく、置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。置換基を有してもよい炭化水素基としては、炭化水素基を構成する炭素原子のいずれかが酸素原子、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン等に置換したものも挙げることができる。例えば、R50はトリメチルシリル基、ペンタメチルジシリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であってもよい。
【0073】
一般式(3)において、nは0~5の整数を表し、0~3の整数であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0074】
(単位(c))
単位(c)は、コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位である。本発明において、コポリマーをクロスカップリングし得る化合物に由来する単位は、(メタ)アクリレートに由来する単位であることが好ましい。
【0075】
(メタ)アクリレートに由来する単位は、例えば、以下の一般式(4)で表される単位であることが好ましい。
【0076】
【化6】
【0077】
一般式(4)中、R5は水素原子又はアルキル基を表し、R60は置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0078】
一般式(4)中、R5は水素原子又は炭素数が1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0079】
単位(c)は、置換基を有してもよいアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から選択される少なくとも一種を有することが好ましい。すなわち、一般式(4)において、R60は置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。なお、R60は上記基を組み合わせた基であってもよい。
【0080】
中でも、単位(c)は、置換基を有してもよいアルキル基を含有することが好ましい。すなわち、R60は置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。なお、R60は置換基を有さないアルキル基であることも好ましく、上記炭素数は置換基を除く炭素数である。
【0081】
置換基を有するアルキル基が有し得る置換基としては、例えばイソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチルアミノ基、アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。このような置換基はクロスカップリングする基であってもよく、加熱によりコポリマー単独での自己縮合や触媒等の存在下により架橋反応することでクロスカップリング構造を形成するものであってもよい。例えば、置換基としてエポキシ基を有するアルキル基においては、酸触媒存在下においてエポキシ基の開環反応が生じ、これにより架橋反応が引き起こされる。この場合、上述した単位(c)は架橋反応により、形成された下層膜を強固にすることができる。
【0082】
置換基を有するアルキル基としては、例えば、-CH2-OH、-CH2-O-メチル、-CH2-O-エチル、-CH2-O-n-プロピル、-CH2-O-イソプロピル、-CH2-O-n-ブチル、-CH2-O-イソブチル、-CH2-O-t-ブチル、-CH2-O-(C=O)-メチル、-CH2-O-(C=O)-エチル、-CH2-O-(C=O)-プロピル、-CH2-O-(C=O)-イソプロピル、-CH2-O-(C=O)-n-ブチル、-CH2-O-(C=O)-イソブチル、-CH2-O-(C=O)-t-ブチル、-CH2-エチレンオキシド、-C24-OH、-C24-O-メチル、-C24-O-エチル、-C24-O-n-プロピル、-C24-O-イソプロピル、-C24-O―n-ブチル、-C24-O-イソブチル、-C24-O-t-ブチル、-C24-O-(C=O)-メチル、-C24-O-(C=O)-エチル、-C24-O-(C=O)-n-プロピル、-C24-O-(C=O)-イソプロピル、-C24-O-(C=O)-n-ブチル、-C24-O-(C=O)-イソブチル、-C24-O-(C=O)-t-ブチル、-C24-O-(C=O)-CH2-(C=O)-メチル、-C24-エチレンオキシド、-C36-エチレンオキシド、-C24-O-エチレンオキシド、-C36-O-エチレンオキシド、―C48-O-エチレンオキシド、―C510-O-エチレンオキシド、―CH2-CH=CH2、―CH2-O-CH=CH2等を挙げることができる。また、置換基を有するアルキル基はシクロアルキル基であってもよく、橋かけ環式シクロアルキル基であってもよい。
【0083】
(単位(d))
単位(d)は、下層膜へのガス透過を促進する官能基を有する単位である。
下層膜へのガス透過を促進する官能基としては、シクロアルキル基、長鎖アルキル基等のように嵩高く、膜密度を低くするような機能を有するものが挙げられる。下層膜へのガス透過を促進する官能基の例としては、C3~C12シクロアルキル基、C10以上の脂肪族アルキル基(好ましくはC10~C25の脂肪族アルキル基)、アルコキシポリアルコキシカルボニル基(好ましくはC1~C25アルコキシ-ポリC1~C25アルコキシカルボニル基等)が挙げられる。本発明においてはC10以上の脂肪族アルコール(例えば、C10~C25の脂肪族アルコール)又はC10以上のアルコキシポリアルキレングリコール(例えば、C1~C20アルコキシ-ポリオキシC1~C20アルキレングリコール(ポリオキシC1~C20アルキレンにおけるオキシC1~C20アルキレンの繰り返し回数は限定されないが、例えば、1~20回が挙げられ、1~5回が好ましい)等)と(メタ)アクリル酸とのエステルに由来する単位であるであることが好ましい。これにより下層膜形成後、直鎖状の嵩高い官能基が多くの空隙を形成することで、膜密度が低下しガス透過を促進することができる。また、酸素原子を有する官能基を用いて極性をコントロールすることで、下層膜と接触する膜との密着性をより強固とすることが可能となる。
【0084】
本発明によれば、単位(a)、単位(b)及び単位(c)に加えて、単位(d)を組み合わせることにより、下層膜中に金属ガスをより拡散させることができる。それにより、金属導入量を高め、エッチング加工性を向上することができる。
【0085】
(含有率)
コポリマーにおける単位(a)の含有率(糖誘導体単位の含有率)は、コポリマーの全質量に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、5質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい
【0086】
ここで、コポリマーにおける糖誘導体単位の含有率は、例えば1H-NMRとコポリマーの重量平均分子量から求めることができる。具体的には、下記式を用いて算出することができる。
単位(a)の含有率(質量%)=単位(a)の質量×単位(a)の数(モノマー数)/コポリマーの重量平均分子量
【0087】
また、コポリマーにおける単位(b)の含有率は、コポリマーの全質量に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、5質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。コポリマーにおける単位(c)の含有率は、コポリマーの全質量に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、5質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。コポリマーにおける単位(d)の含有率は、コポリマーの全質量に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、各単位の含有率も単位(a)の含有率の算出と同様の方法で算出することができる。
【0088】
また、コポリマーにおける単位(a)の含有率と単位(b)の含有率との比(質量比)の下限は、前者100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、13質量部以上がさらに好ましい。コポリマーにおける単位(a)の含有率と単位(b)の含有率との比(質量比)の上限は、前者100質量部に対し、
22質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましい。
コポリマーにおける単位(a)の含有率と単位(c)の含有率との比(質量比)の下限は、前者100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、13質量部以上がさらに好ましい。コポリマーにおける単位(a)の含有率と単位(c)の含有率との比(質量比)の上限は、前者100質量部に対し、22質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましい。
コポリマーにおける単位(a)の含有率と単位(d)の含有率との比(質量比)の下限は、前者100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、13質量部以上がさらに好ましい。コポリマーにおける単位(d)の含有率と単位(d)の含有率との比(質量比)の上限は、前者100質量部に対し、22質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましい。
【0089】
(その他の構成単位)
コポリマーは、上記構成単位以外に、その他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、乳酸由来単位、シロキサン結合含有単位、アミド結合含有単位、尿素結合含有単位等を挙げることができる。
(コポリマーの重量平均分子量)
コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましい。また、コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましく、30万以下であることがさらに好ましく、25万以下であることが一層好ましい。コポリマーの重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることが、塗布後の下層膜残存性の観点から好ましい。なお、コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPCによるポリスチレン換算で測定された値である。
【0090】
コポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1以上であることが好ましい。また、Mw/Mnは、52以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましく、4以下であることが一層好ましく、3以下であることが特に好ましい。Mw/Mnを上記範囲内とすることが、塗布後の下層膜残存性の観点から好ましい。
【0091】
なお、尚、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量については、下記条件のゲルパーミュレーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定した値である。
【0092】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR-H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:蒸発型光散乱検出器(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)
標準試料:前記「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0093】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
東ソー株式会社製「F-550」
【0094】
(コポリマーの溶解度)
PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びDMFから選択される少なくとも1種へのコポリマーの溶解度は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましく、4質量%以上であることがより特に好ましい。上記有機溶剤へのコポリマーの溶解度の上限値は特に制限されるものではないが、例えば40質量%とすることができる。なお、上記溶解度は、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びDMFから選択される少なくともいずれかへの溶解度であり、本発明で用いるコポリマーは上記いずれかの有機溶剤への溶解度が一定値以上であることが好ましい。
【0095】
コポリマーの溶解度の測定方法は、所定量のコポリマーにPGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン又はDMFを徐々に加えながら撹拌し、溶解したときの添加した有機溶剤量を記録する。撹拌には、マグネチックスターラー等を使用してもよい。そして、下記式から溶解度を算出する:
溶解度(質量%)=コポリマーの質量/溶解したときの有機溶剤量×100
【0096】
PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びDMFの少なくともいずれか一種へのコポリマーの溶解度を上記範囲内とするためには、例えば、単位(b)を芳香族環含有化合物に由来する単位とすることが考えられる。また、溶解度を上記範囲内とするためには、糖誘導体に由来する単位の含有率を制御すること等が考えられる。具体的には、単位(b)を芳香族環含有化合物に由来する単位とした上で、コポリマーにおける糖誘導体に由来する単位(単位(a))の含有率を一定値以下とすることにより、有機溶剤への溶解度をより効果的に高めることができる。
【0097】
<コポリマーの合成方法>
コポリマーの合成は、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、原子移動ラジカル重合等の公知の重合法を用いて行うことができる。例えばリビングフリーラジカル重合の場合、AIBN(α、α’-アゾビスイソブチロニトリル)等の重合開始剤を用い、単位(a)、単位(b)、単位(c)及び単位(d)のそれぞれを構成するモノマーと反応させることによってコポリマーを得ることができる。リビングアニオン重合の場合、塩化リチウムの存在下でブチルリチウムと単位(a)、単位(b)、単位(c)及び単位(d)のそれぞれを構成するモノマーを反応させることによってコポリマーを得ることができる。なお、本実施例においては、フリーラジカル重合、リビングアニオン重合及びリビングラジカル重合を用いて合成した例を示しているが、それに限ることはなく、上記各合成法や公知の合成法によって適宜合成することができる。
【0098】
コポリマーやその原料としては、市販品を用いてもよい。例えば、ポリマーソース社製のP9128D-SMMAran、P9128C-SMMAran、Poly(methyl methacrylate)、P9130C-SMMAran、P7040-SMMAran、P2405-SMMA等のホモポリマー、ランダムポリマーあるいはブロックコポリマーを挙げることができる。また、これらのポリマーを使用し、公知の合成方法にて適宜合成を行うこともできる。
【0099】
上述したような重合部aは、合成で得てもよいが、木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する工程を組み合わせて得てもよい。重合部aの糖誘導体部を得る場合に木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する方法を採用する場合は、特開2012-100546号公報等に記載の抽出方法を利用することができる。
【0100】
キシランについては、例えば特開2012-180424号公報に開示されている方法で抽出することができる。
セルロースについては、例えば特開2014-148629号公報に開示されている方法で抽出することができる。
【0101】
重合部aは、上記抽出方法を用いた糖部のOH基をアセチル化やハロゲン化等して修飾して用いることが好ましい。例えばアセチル基を導入する場合、無水酢酸と反応させることによりアセチル化した糖誘導体部を得ることができる。
【0102】
重合部b及び重合部cは合成により形成してもよく、市販品を用いてもよい。重合部bや重合部cを重合する場合は、公知の合成方法を採用することができる。また、市販品を用いる場合は、例えば、Amino-terminated PS(Mw=12300Da、Mw/Mn=1.02、ポリマーソース社製)等を用いることができる。
【0103】
<有機溶剤>
本発明の下層膜形成用組成物は、有機溶剤を含む。但し、下層膜形成用組成物は、有機溶剤に加えて、さらに水や各種水溶液等の水系溶媒を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、含硫黄系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール等;を挙げることができる。
【0105】
また、多価アルコール部分エーテル系溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0106】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0107】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フルフラール等が挙げられる。
【0108】
含硫黄系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0109】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0110】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、3-メトキシプロピオン酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0111】
炭化水素系溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒として、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素系溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンゼン、n-アミルナフタレン、アニソール等が挙げられる。
【0112】
これらの中でも、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アニソール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、フルフラール、N-メチルピロリドン、γ―ブチロラクトンがより好ましく、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン又はDMFがさらに好ましく、PGMEAがよりさらに好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
有機溶剤の含有量は、下層膜形成用組成物の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の含有量は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量を上記範囲内とすることにより、下層膜形成用組成物の塗布性を向上させることができる。
【0114】
<任意成分>
本発明の下層膜形成用組成物は、後述するような任意成分を含むものであってもよい。
【0115】
<<架橋性化合物>>
本発明の下層膜形成用組成物はさらに架橋性化合物を含んでもよい。この架橋反応により、形成された下層膜は強固になり、エッチング加工性をより効果的に高めることができる。
【0116】
架橋性化合物としては、特に制限はないが、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋性化合物が好ましく用いられる。イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチルアミノ基、及びアルコキシメチルアミノ基から選択される少なくとも1種の架橋形成置換基を2つ以上、例えば2~6個有する化合物を架橋性化合物として使用することができる。
【0117】
架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基で置換された含窒素化合物であって、窒素原子を2つ以上、例えば2~6個有する含窒素化合物が挙げられる。中でも架橋性化合物は、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基又はヘキシルオキシメチル基等の基で置換された窒素原子を有する含窒素化合物であることが好ましい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、及び1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジ-tert-ブチルカルボジイミド、ピペラジン等の含窒素化合物が挙げられる。
【0118】
また、架橋性化合物としては、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名マイコート506、マイコート508)、グリコールウリル化合物(商品名サイメル1170、パウダーリンク1174)、メチル化尿素樹脂(商品名UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名UFR300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、大日本インキ化学工業(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(商品名ベッカミンJ-300S、ベッカミンP-955、ベッカミンN)、ARKEMA社製(メタ)アクリレートモノマー(商品名SR209、SR272)、エポキシアクリレートオリゴマー(CN110NS)、東京化成社製ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の市販されている化合物を使用することができる。また、架橋性化合物としては、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーを用いることができる。
架橋性化合物は、一種の化合物のみを使用することができ、また、二種以上の化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0119】
これら架橋性化合物は自己縮合による架橋反応を起こすことができる。また、ポリマーに含まれる構成単位と架橋反応を起こすこともできる。
【0120】
<<触媒>>
下層膜形成用組成物には架橋反応を促進するための触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ヒドロキシ安息香酸等の酸化合物を添加することができる。酸化合物としては、p-トルエンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ピリジニウム-1-ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物を挙げることができる。また、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2-ニトロベンジルトシラート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ベンゾイントシレート、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、ビス-(t-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、シクロへキシルスルホニルジアゾメタン等の酸発生剤を添加することができる。
【0121】
<<光反射防止剤>>
本発明の下層膜形成用組成物はさらに光反射防止剤を含んでもよい。光反射防止剤としては、例えば、吸光性を有する化合物を挙げることができる。吸光性を有する化合物としては、下層膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものを挙げることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール、アクリルポリマー等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有するポリマーとしては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有するポリマー等を挙げることができる。
【0122】
<<他の成分>>
下層膜形成用組成物は、イオン液体や界面活性剤等をさらに含んでもよい。下層膜形成用組成物にイオン液体を含有させることで、コポリマーと有機溶剤との相溶性を高めることができる。
下層膜形成用組成物に界面活性剤を含有させることで、下層膜形成用組成物の基板への塗布性を向上させることができる。また、下層膜形成用組成物を用いてパターン形成する際に、下層膜形成用組成物に続いて塗布されるレジスト組成物等の塗布性を向上させることができる。好ましい界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
その他、既知のレオロジー調整剤や、接着補助剤等任意の材料を下層膜形成用組成物に含めてもよい。
【0123】
なお、上述したような任意成分の含有量は、下層膜形成用組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0124】
(下層膜)
本発明は、上述した下層膜形成用組成物から形成された下層膜に関するものであってもよい。下層膜は、シリコンウエハー等の基板上に設けられる層である。なお、本明細書においては、パターン形状に加工された下層膜を保護膜とも呼ぶが、このような保護膜も下層膜に含まれる。すなわち、下層膜には、パターンを形成する前の層状の膜も、パターン形成後の間欠膜も含まれる。
【0125】
図1(a)には、基板10の上に下層膜20が形成された積層体が示されている。なお、図示していないが、下層膜は、例えばレジスト膜の下層に設けられる層であることが好ましい。すなわち、下層膜は基板とレジスト膜の間に設けられる層であることが好ましい。下層膜は、基板とレジスト膜との相互作用を防止するための層、レジスト膜に用いられる材料又はレジスト膜への露光時に生成する物質の基板への悪影響を防止するための層、加熱焼成時に基板から生成する物質のレジスト膜への拡散を防止するための層、及び半導体基板誘電体層によるレジスト膜のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として機能することもできる。また、下層膜は、基板表面を平坦化するための平坦化材としても機能する。
【0126】
図1(b)に示されるように、下層膜20の一部は、基板10に形成したいパターン形状となるように少なくとも一部が除去される。例えば、下層膜20上にレジスト膜を積層し、露光及び現像処理を行うことで、図1(b)に示されるようなパターン形状を形成することができる。その後、露出した基板10に対して、塩素ガスや、三塩化ホウ素、四フッ化メタンガス、三フッ化メタンガス、六フッ化エタンガス、八フッ化プロパンガス、六フッ化硫黄ガス、アルゴンガス、酸素ガス、ヘリウムガス等を用いて、誘導結合プラズマ等の反応性イオンエッチング等を行うことでパターン形成を行い、図1(c)に示されるようなパターンを基板10に形成する。
【0127】
なお、本発明の下層膜形成用組成物から、自己組織化膜やレジスト膜を形成することも可能である。下層膜形成用組成物がブロックコポリマーを含む場合、ブロックコポリマーを基板上に塗布し、アニーリング等を行うことにより、自己組織化による相分離構造を有する膜(自己組織化膜)を形成し、この自己組織化膜における一部の相を除去することにより、パターンを形成することができる。また、下層膜形成用組成物からレジスト膜を形成する場合は、下層膜形成用組成物から形成したレジスト膜に、回路パターンが描画されたマスクを通して波長の短い遠紫外線を照射し、光が当たった部分のレジスト膜を変質させてパターンを転写する(露光)。その後、露光された部分を現像液で溶かすことでパターンを形成することができる。
【0128】
下層膜の膜厚は用途によって適宜調整することができるが、例えば、1nm以上20000nm以下であることが好ましく、1nm以上10000nm以下であることがより好ましく、1nm以上5000nm以下であることがさらに好ましく、1nm以上3000nm以下であることが特に好ましい。
【0129】
下層膜は金属が導入された膜であることが好ましく、その結果金属を含むものであることが好ましい。下層膜の金属含有率は、5at%以上であることが好ましく、8at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることがさらに好ましく、15at%以上であることが一層好ましい。金属含有率は、例えば、以下の方法で算出できる。まず、下層膜をALD(原子層堆積装置)に入れ、ここに95℃にてAl(CH33ガスを導入した後、水蒸気を導入する。この操作を3回繰り返すことで、下層膜にAlを導入する。Al導入後の下層膜について、電子顕微鏡JSM7800F(日本電子製)を用いてEDX分析(エネルギー分散型X線分析)を行い、Al成分の比率(Al含有率)を算出し、これを金属含有率とする。
【0130】
(パターン形成方法)
本発明は、上述した下層膜形成用組成物を用いたパターン形成方法に関するものでもある。本発明のパターン形成方法は、上述した下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程を含む。
【0131】
パターン形成方法は、下層膜形成用組成物及び/又は下層膜に金属を導入する工程を含むことが好ましい。中でも、パターン形成方法は、下層膜に金属を導入する工程を含むことがより好ましい。
【0132】
パターン形成方法は、金属を導入する工程の前に、リソグラフィープロセスを含むことが好ましい。リソグラフィープロセスは、下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、及び、レジスト膜及び下層膜の一部を除去してパターンを形成する工程を含むことが好ましい。
【0133】
なお、下層膜を形成する工程と、レジスト膜を形成する工程の間に、基板上にガイドパターンを形成する工程をさらに含んでもよい。また、基板上にガイドパターンを形成する工程は、下層膜形成用組成物を塗布する工程の前に設けられてもよい。ガイドパターンを形成する工程は、下層膜形成用組成物を塗布する工程で形成された下層膜上にプレパターンを形成する工程である。
【0134】
パターン形成方法は、上述したようなパターンを保護膜として、半導体基板を加工する工程を含むことが好ましい。このような工程をエッチング工程と呼ぶ。
【0135】
<下層膜を形成する工程>
本発明のパターン形成方法は、下層膜を形成する工程を含むことが好ましい。下層膜を形成する工程は、基板上に下層膜形成用組成物を塗布し、下層膜を形成する工程である。
【0136】
基板としては、例えば、ガラス、シリコン、SiO2、SiN、GaN、AlN等の基板を挙げることができる。また、PET、PE、PEO、PS、シクロオレフィンポリマー、ポリ乳酸、セルロースナノファイバーのような有機材料からなる基板を用いてもよい。
【0137】
基板と下層膜は、この順で隣り合う層同士が直接接するように積層されることが好ましいが、各層の間には他の層が設けられていてもよい。例えば、基板と下層膜の間にはアンカー層が設けられてもよい。アンカー層は、基板の濡れ性をコントロールする層であり、基板と下層膜の密着性を高める層である。また、基板と下層膜の間には、異なる材料からなる層が複数層挟まれていても良い。これらの材料としては、特に特定されるものではないが、例えばSiO2、SiN,Al23、AlN、GaN、GaAs、W、SOC、SOG、Cr、Mo、MoSi、Ta、Ni、Ru、TaBN、Ag等の無機材料や、市販されている接着剤のような有機材料を挙げることができる。
【0138】
下層膜形成用組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、下層膜形成用組成物を基板上にスピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。また、下層膜形成用組成物を塗布した後には、露光及び/又は加熱することにより下層膜形成用組成物を硬化させて下層膜を形成してもよい。この露光に用いられる放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等が挙げられる。また、塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されないが、90℃以上550℃以下が好ましい。
【0139】
基板に下層膜形成用組成物を塗布する前には、基板を洗浄する工程を設けることが好ましい。基板表面を洗浄することにより下層膜形成用組成物の塗布性が向上する。洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0140】
下層膜を形成した後、下層膜形成用組成物より下層膜の層を形成するために加熱処理(焼成)が行われることが好ましい。本発明では、加熱処理は、大気下でかつ比較的低温での加熱処理であることが好ましい。
加熱処理する条件としては、加熱処理温度60℃~350℃、加熱処理時間0.3~60分間の中から適宜選択されることが好ましい。中でも、加熱処理温度は130℃~250℃であることがより好ましく、、加熱処理時間は0.5~30分間であることがより好ましく、0.5~5分であることがさらに好ましい。。
【0141】
下層膜を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下層膜をリンスしてもよい。リンス処理により、下層膜中の未架橋部分等が除去されるため、レジスト等下層膜の上に形成する膜の成膜性を高めることができる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)、シクロヘキサノン等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80℃以上300℃以下であることが好ましく、ベーク時間は、30秒以上600秒以下であることが好ましい。
【0142】
本発明の下層膜形成用組成物より形成される下層膜は紫外線を吸収する性質を有しているため、光反射防止膜としても機能し得る。なお、後述するように、下層膜とは別にさらに光反射防止膜を形成してもよい。
【0143】
下層膜をKrFエキシマレーザー(波長248nm)を使用したリソグラフィープロセスで光反射防止膜として使用する場合、下層膜形成用組成物中には、アントラセン環又はナフタレン環を有する成分が含まれていることが好ましい。そして、下層膜をArFエキシマレーザー(波長193nm)を使用したリソグラフィープロセスで光反射防止膜として使用する場合、下層膜形成用組成物中には、ベンゼン環を有する化合物が含まれていることが好ましい。また、下層膜をF2エキシマレーザー(波長157nm)を使用したリソグラフィープロセスで光反射防止膜として使用する場合、下層膜形成用組成物中には、臭素原子又はヨウ素原子を有する化合物が含まれていることが好ましい。
【0144】
さらに、下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用を防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪影響を防止するための層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防止するための層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として機能することもできる。また、下層膜形成用組成物より形成される下層膜は、基板表面を平坦化するための平坦化材としても機能する。
【0145】
<光反射防止膜を形成する工程>
パターン形成方法が半導体の製造方法で用いられる場合には、基板上に下層膜が形成される前後に有機系又は無機系の光反射防止膜を形成する工程を設けてもよい。この場合、下層膜とは別にさらに光反射防止膜が設けられてもよい。
【0146】
光反射防止膜の形成に使用される光反射防止膜用組成物としては特に制限はなく、リソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができる。また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって光反射防止膜を形成することができる。光反射防止膜用組成物としては、例えば、吸光性化合物とポリマーを主成分とする組成物、化学結合により連結した吸光性基を有するポリマーと架橋剤を主成分とする組成物、吸光性化合物と架橋剤を主成分とする組成物、及び、吸光性を有する高分子架橋剤を主成分とする組成物等が挙げられる。これらの光反射防止膜用組成物はまた、必要に応じて、酸成分、酸発生剤成分、レオロジー調整剤等を含むことができる。吸光性化合物としては、光反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものであれば用いることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール、アクリルポリマー等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有するポリマーとしては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有するポリマーを挙げることができる。
【0147】
また、本発明の下層膜形成用組成物が塗布される基板は、その表面にCVD法等で形成された無機系の光反射防止膜を有するものであってもよく、その上に下層膜を形成することもできる。
【0148】
<レジスト膜を形成する工程>
レジスト膜を形成する工程は、フォトレジストの層を形成する工程であることが好ましい。フォトレジストの層の形成は、特に制限はないが、周知の方法を採用することができる。例えば、フォトレジスト組成物溶液を下層膜上への塗布し、焼成することによってフォトレジストの層を形成することができる。
【0149】
下層膜の上に塗布、形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。また、ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト等がある。例えば、シプレー社製、商品名APEX-E、住友化学工業(株)製、商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製、商品名SEPR430等が挙げられる。なお、本発明の下層膜形成用組成物はレジスト膜形成用組成物として用いることもできる。
【0150】
レジスト膜を形成する工程は、所定のマスクを通して露光を行う工程を含むことが好ましい。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)、EUV(極紫外光)(13nm)等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3~10分間の条件で行うことが好ましい。
【0151】
レジスト膜を形成する工程は、現像液によって現像を行う工程を含むことが好ましい。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等のアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤等を加えることもできる。現像の条件は、温度5~50℃、時間10~300秒から適宜選択される。
【0152】
また、レジスト膜は、上記フォトリソグラフィー以外にもナノインプリントリソグラフィーを用いて形成することもできる。ナノインプリントリソグラフィーの場合は、光硬化性のナノインプリントレジストを塗布し、あらかじめパターンが形成されている型をレジストに押し付け、UV等の光を照射することによって形成することができる。また、レジスト膜は、自己組織化膜であってもよい。
【0153】
<下層膜のパターン形成工程>
パターン形成方法では、上述したレジスト膜を形成する工程で形成されたレジスト膜のパターンを保護膜として、下層膜の一部の除去が行われることが好ましい。このような工程を下層膜のパターン形成工程と呼ぶ。
【0154】
下層膜の一部を除去する方法としては、例えば、ケミカルドライエッチング、ケミカルウェットエッチング(湿式現像)等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。下層膜の除去は、例えば、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C48)、パーフルオロプロパン(C38)、パーフルオロエタン(C26)、三塩化ホウ素、三フッ化メタン、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、塩素、ヘリウム、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いたドライエッチングによって行われることが好ましい。
【0155】
また、下層膜の一部を除去する工程としてケミカルウェットエッチング工程を採用することもできる。ウェットエッチングの手法としては、例えば酢酸と反応させて処理する方法、エタノールやi-プロパノールといったアルコールと水の混合溶液を反応させて処理する方法、UV光又はEB光を照射した後に酢酸又はアルコールで処理する方法等が挙げられる。
【0156】
<金属を導入する工程>
パターン形成方法は、SIS法(Sequencial Infiltration Synthesis;逐次浸透合成)のような、下層膜へ金属を導入する工程をさらに含むことが好ましい。導入する金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。このようなプロセスは、例えばJornal of Photopolymer Science and Technology Volume29, Number5(2016)653-657に記載されている方法により行うことができる。また、金属を導入する工程では、金属錯体ガスを使用する方法、あるいは金属を含む溶液を塗布する方法、イオン注入による方法を採用することができる。
【0157】
金属を導入する工程は、下層膜を形成した後に設けられることが好ましい。例えば、下層膜を形成した後に、レジスト膜を形成する工程、下層膜のパターン形成工程、金属を導入する工程、エッチング工程の順に設けることが好ましい。但し、金属を導入する工程は、下層膜を形成する工程の前に設けられてもよい。すなわち、金属を導入する対象は、下層膜に限定されず、下層膜形成用組成物であってもよい。
【0158】
<エッチング工程>
パターン形成方法では、上述したレジスト膜を形成する工程で形成されたレジスト膜のパターンを保護膜として、半導体基板の加工が行なわれることが好ましい。このような工程をエッチング工程と呼ぶ。
【0159】
エッチング工程において半導体基板を加工する方法としては、例えば、ケミカルドライエッチング、ケミカルウェットエッチング(湿式現像)等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。半導体基板の加工は、例えば、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C48)、パーフルオロプロパン(C38)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、塩素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いたドライエッチングによって行われることが好ましい。
【0160】
また、エッチング工程では、ケミカルウェットエッチング工程を採用することもできる。ウェットエッチングの手法としては、例えば酢酸と反応させて処理する方法、エタノールやi-プロパノールといったアルコールと水の混合溶液を反応させて処理する方法、UV光又はEB光を照射した後に酢酸又はアルコールで処理する方法等が挙げられる。
【0161】
<パターンの用途>
以上のようにして形成されたパターンは、自己組織化パターン形成材料(DSA(Directed Self Assembly lithography;誘導自己組織化))を用いたパターン形成のガイドとしての利用されることも好ましい。また、ナノインプリントリソグラフィー用の型として利用されることも好ましい。
【0162】
また、パターン形成方法は種々の製造方法に応用され得る。例えば、パターン形成方法は、半導体の製造工程で用いられてもよい。半導体の製造方法の例としては、半導体基板の上に上記パターン形成方法でパターンを形成する工程を含むことが好ましい。
【実施例
【0163】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、コポリマー実施例中のl、m、n、p、rはコポリマー中に含まれる構成単位数を示している。
【0164】
[糖の調製]
キシロオリゴ糖及びキシロースは特開2012-100546号公報を参考に、木材パルプからの抽出を行うことで得た。
D-(+)グルコースは和光純薬製のものを用いた。
[コポリマー1の合成]
(アセチルキシロースメタクリレートの合成)
キシロース20gを無水酢酸250gと酢酸320gの混合溶液へ添加し、30℃で2時間攪拌した。溶液のおよそ5倍量の冷水を攪拌しながらゆっくりと加え、2時間攪拌したのちに1晩静置した。フラスコ中でTHF400mLにエチレンジアミン1.2gと酢酸10.4gを加えて0℃にした溶液に、析出した結晶10gを加え、4時間攪拌した。これを冷水1Lに注入し、ジクロロメタンで2回抽出した。この抽出物20g、ジクロロメタン300mL及びトリエチルアミン4.8gをフラスコに入れ、-30℃に冷却した。塩化メタクリロイル2.8gを加えて2時間攪拌した。これを冷水300mLに注入し、ジクロロメタンで2回抽出し、溶媒を濃縮することにより、アセチルキシロースメタクリレートを16.1g得た。得られたアセチルキシロースメタクリレートの構造は以下のとおりである。
【0165】
【化7】
【0166】
(アセチルキシロースメタクリレート-スチレン-グリシジルメタクリレート-イソステアリルアクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン5g、アセチルキシロースメタクリレート35g、グリシジルメタクリレート5g、イソステアリルアクリレート5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.15gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー1を得た。得られたコポリマー1の数平均分子量は54,000であり、重量平均分子量は112,700であった。
得られたコポリマー1の構造は以下の通りである。
【0167】
【化8】
【0168】
(式中、lは51であり、mは24であり、nは18であり、pは8である。)
【0169】
[コポリマー2の合成]
(アセチルキシロースメタクリレート-スチレン-グリシジルメタクリレート-デシルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン5g、アセチルキシロースメタクリレート35g、グリシジルメタクリレート5g、デシルメタクリレート5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.15gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー2を得た。得られたコポリマー2の数平均分子量は52,000であり、重量平均分子量は104,100であった。
得られたコポリマー2の構造は以下の通りである。
【0170】
【化9】
【0171】
(式中、lは49であり、mは23であり、nは17であり、pは11である。)
【0172】
[コポリマー3の合成]
(アセチルキシロトリオースメタクリレート-スチレン-グリシジルメタクリレート-ドコシルアクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン5g、アセチルキシロトリオースメタクリレート35g、グリシジルメタクリレート5g、ドコシルアクリレート5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.15gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー3を得た。得られたコポリマー3の数平均分子量は48,000であり、重量平均分子量は97,200であった。
得られたコポリマー3の構造は以下の通りである。
【0173】
【化10】
【0174】
(式中、lは32であり、mは34であり、nは25であり、pは9である。)
【0175】
[コポリマー4の合成]
(アセチルキシロースメタクリレート-スチレン-グリシジルメタクリレート-ポリ(エチレングリコール)メタクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン5g、アセチルキシロースメタクリレート35g、グリシジルメタクリレート5g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.5gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75 ℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー4を得た。得られたコポリマー4の数平均分子量は31,000であり、重量平均分子量は58,200であった。
得られたコポリマー4の構造は以下の通りである。
【0176】
【化11】
【0177】
(式中、lは52であり、mは25であり、nは18であり、pは5である。)
【0178】
[コポリマー5の合成]
(アセチルキシロースメタクリレート-スチレン-グリシジルメタクリレート-2-エチルヘキシルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン5g、アセチルキシロースメタクリレート35g、グリシジルメタクリレート5g、2-エチルヘキシルメタクリレート5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.3gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75 ℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー5を得た。得られたコポリマー5の数平均分子量48,000であり、重量平均分子量は108,100であった。
得られたコポリマー5の構造は以下の通りである。
【0179】
【化12】
【0180】
(式中、lは48であり、mは23であり、nは17であり、pは12である。)
【0181】
[コポリマー6の合成]
(アセチルグルコースメタクリレートの合成)
コポリマー1のアセチルキシロースメタクリレートの合成にて、キシロース20gをD-(+)-グルコース24gに変更した以外は同様の方法にて合成を行い、アセチルグルコースメタクリレートを20.1g得た。アセチルグルコースメタクリレートの構造は以下の通りである。
【0182】
【化13】
【0183】
(アセチルグルコースメタクリレート-スチレン-ジブチレングリコールジメタクリレートランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン17.5g、アセチルグルコースメタクリレート20g、ジブチレングリコールジメタクリレート12.5g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.5gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー6を得た。得られたコポリマー6の数平均分子量は49,000であり、重量平均分子量は99,400であった。
得られたコポリマー6の構造は以下の通りである。
【0184】
【化14】
【0185】
(式中、lは22であり、mは63であり、nは16であり、qは16である。)
【0186】
[コポリマー7の合成]
(アセチルキシロースメタクリレート-スチレンランダムコポリマーの合成)
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン25gを加え、窒素気流中、撹拌しながら75℃に昇温した。ついで、スチレン25g、アセチルキシロースメタクリレート25g及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル0.15gをメチルエチルケトン25gに溶解させた滴下液を滴下装置にセットし、フラスコ内を75℃に保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去することにより、コポリマー7を得た。得られたコポリマー7の数平均分子量は47,000であり、重量平均分子量は91,800であった。
得られたコポリマー7の構造は以下の通りである。
【0187】
【化15】
【0188】
(式中、lは23であり、mは77である。)
【0189】
[コポリマーの分析]
(単位(l):単位(m):単位(n)の比率)
1H-NMRにより、コポリマーの単位(l)と単位(m):単位(n)の比率(質量比)を求めて、算出した。具体的には、ポリマー10mg秤量、重クロロホルム1mLに溶解してNMR用溶液を調製し、得られた溶液をNMRサンプルチューブ(関東化学社)に移し、FT-NMR(JNM-ECZ600R:JEOL社)により1H-NMR測定を行った。尚、1H-NMR測定の際に内部標準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
【0190】
[膜密度の測定]
薄膜の膜厚測定には、X 線反射率測定方法(X-ray Reflectivity:以下、単に「XRR」という) を使用した。
本手法は、X 線を物質表面から1度以下のすれすれに入射させ、その入射角度に対するX 線反射率の依存性を調べることで、膜厚、密度、表面や界面のラフネスといった膜構造パラメータを求めるものである。
実際の解析では、膜構造モデルに基づき膜厚、密度、界面ラフネス等をパラメータとしてシミュレーションを行なったプロファイル(計算データ)と、測定で得られたプロファイル(測定データ)の差が最小となるよう、ソフトウェアを用いた最小二乗法により各パラメータを最適化し膜構造パラメータの値を確定する。
参考文献:非特許文献、“薄膜X 線測定法基礎講座第5 回X 線反射率測定”、 八坂美穂:リガクジャーナル vol.40, no.2,( 2009) 1-9
【0191】
実際の膜厚測定は以下の手順で行った。
(1)試料の準備
共重合体20mgをPGMEA1mLに溶解し、2インチのシリコンウエハー上に膜厚50nmとなるようスピンコーティングした。コーティングした後、ホットプレート上で210℃2分間焼成することで測定サンプルを作成した。
(2)膜厚測定
XRR測定には、Bruker社 D8 DISCOVER装置を用いた。安定した測定値を得るため装置全体は22.5°Cの恒温室内に設置されている。
線源としてCuKa線 を使用し、鏡面反射強度の入射角依存性を測定した。装置における出力は50kV、30mA、走査角度の分解能は0.0002度である。また、鏡面反射強度の測定範囲は検出角度0.6度とした(試料への入射角度0.3度)。
測定したプロファイルは,非線形最小自乗フィッティングにより,厚さ・密度をパラメータとして収束解を求めた。
【0192】
[溶液サンプルの調製]
各ポリマー3wt%、重合触媒のp-トルエンスルホン酸0.3wt%となるようPGMEAで調整し、各実施例及び比較例のポリマー溶液サンプルを得た。
【0193】
[金属導入率の評価]
得られたポリマー溶液サンプルを2インチのシリコンウエハー基板上にスピンコーティングした。膜厚が300nmとなるように塗布した後、ホットプレート上において230℃で5分間焼成し、ポリマー成膜サンプルを形成した。
【0194】
このようにして形成したポリマー成膜サンプルを、ALD(原子層堆積装置:PICUSAN社製 SUNALE R-100B)に入れ、95℃にてTMA(トリメチルアルミニウム、Al(CH3)3)ガスを300秒導入した後、水蒸気を150秒導入した。この操作を3回繰り返すことで、コポリマー成膜サンプルにAl23を導入した。
【0195】
Al23導入後のコポリマー成膜サンプルを、XPS装置(Thermo Fisher Scientific社製 Nexsa XPS System )にてXPS分析(X線光電子分光分析)で膜厚方向でのAl元素の濃度プロファイルを得た。
【0196】
Al23導入後のポリマーサンプルの膜厚は、サンプル表面にピンセットで傷をつけてシリコン基板表面を露出させることで段差を形成し、この段差部分を触診式段差計(株式会社小坂製作所製 型番:ET-4000)にて測定することで求めた。
【0197】
最大金属含有率は、15%以上が好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることが特に好ましい。
【0198】
[下層膜エッチング選択比測定用サンプルの作製]
得られたポリマー溶液サンプルを、シリコン酸化膜(膜厚2um)付2インチのシリコンウエハー基板上にスピンコーティングした。膜厚が300nmとなるように塗布した後、ホットプレート上で230℃1分間焼成し、下層膜サンプルを形成した。
【0199】
ArFエキシマレーザー露光機にてラインアンドスペース(ライン幅100nm、スペース幅100nm)の形状となるようにマスクし、市販のArFレジストを用いて露光を行った。その後、ホットプレート上において105℃で1分間焼成した後、現像液を浸漬することで、ラインアンドスペースパターンを作製した。
【0200】
次にこのパターンサンプルを、ICPプラズマエッチング装置(東京エレクトロン社製)にて、基板を酸素プラズマ処理(100sccm、4Pa、100W、60秒間)することで、フォトレジストが除去され、下層膜にラインアンドスペースパターンが形成された。その後、コポリマーの金属導入率の評価と同様にして、下層膜サンプルに金属導入した。このパターンをマスクとして、六フッ化エタン(C26)とArガスを使用しICPプラズマエッチング装置(東京エレクトロン社製)でプラズマ処理(100sccm、0.4Pa、200W、120秒間)を行ないシリコン酸化膜のドライエッチング加工を行った。
【0201】
[エッチング選択比の評価]
六フッ化エタン(C26)とArガスを使用したプラズマ処理前後の基板のパターン形成されている断面を走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)で、加速電圧1.5kV、エミッション電流37.0μA、倍率100,000倍で観察し、それぞれ金属導入されたコポリマー膜の厚みと、シリコン酸化膜部へ加工された深さを測定した。エッチング選択比は、
シリコン酸化膜への加工深さ/(処理前コポリマー膜厚-処理後コポリマー膜厚)
により計算した。エッチング選択比は大きいのが好ましく、具体的には、2.5より大きいことが好ましく、3以上がさらに好ましく、5以上が特に好ましい。上記状況の下、下記基準にて評価を行った結果を表1に示す。
○:エッチング選択比が2以上であるもの
X:エッチング選択比が2未満であるもの
【0202】
【表1】
【0203】
表1に示したとおり、各実施例の下層膜形成用組成物においては、大気下でかつ比較的低温での下層膜残存率が高い下層膜を形成できた。なお、いずれの実施例においても高い金属導入率となり、エッチング加工性が良好であった。
【0204】
一方、比較例1及び2においては金属導入率が極めて小さく、エッチング加工性が良好ではなかった。比較例3については、下層膜残存率が低く、さらに下層膜残存率が低く、かつエッチング加工性にも劣る結果であった。
【符号の説明】
【0205】
10 基板
20 下層膜
図1