(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 50/423 20210101AFI20230904BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230904BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230904BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230904BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230904BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230904BHJP
【FI】
H01M50/423
H01M50/403 D
H01M50/417
H01M50/443 C
H01M50/449
H01M50/443 M
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2021104361
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020113260
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 健作
(72)【発明者】
【氏名】橋脇 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】林 英里
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031466(WO,A1)
【文献】特開2018-060777(JP,A)
【文献】特公昭50-012486(JP,B1)
【文献】特開昭55-029516(JP,A)
【文献】特表2017-504731(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/423
H01M 50/403
H01M 50/417
H01M 50/443
H01M 50/449
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、アラミド樹脂と、を含んでいる組成物であり、
光路長5mmの石英セルに入れ、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が5%以下であり、
上記アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である、組成物。
【請求項2】
上記アラミド樹脂は、
(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち25%以上が電子吸引性基を有しており、
(v)酸クロリド由来のユニットのうち50%以下が電子吸引性基を有している、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記電子吸引性基は、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記アラミド樹脂の固有粘度は0.5~4.0dL/gである、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
フィラーをさらに含んでいる、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1から
5のいずれか1項に記載の組成物が積層されている、積層体。
【請求項7】
ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1から
5のいずれか1項に記載の組成物を積層する工程と、
上記組成物中の溶媒の99%以上を除去する工程と、
を含む、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【請求項8】
ポリオレフィン多孔質フィルムと、バインダー樹脂およびフィラーからなる多孔質層とが積層された非水電解液二次電池用積層セパレータであって、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が30%以下である、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項9】
上記バインダー樹脂がアラミド樹脂であり、当該アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である、請求項
8に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造に使用可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められている。
【0003】
非水電解液二次電池の部材として用いられる非水電解液二次電池用積層セパレータは、通常、基材としてのポリオレフィン多孔質フィルム上に、バインダー樹脂、フィラー等を含有する塗工液を塗工し、上記基材の片面または両面に多孔質層を形成することによって製造される。
【0004】
上記バインダー樹脂としては、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等、種々の樹脂を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、所定の全芳香族ポリアミド多孔質フィルムと、シャットダウン機能を有する多孔質フィルムとの積層構造である非水電解液二次電池用セパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-40999号公報(2003年2月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の塗工液は、透明または淡い着色がある程度であるため、当該塗工液を基材上に塗工した後、非水電解液二次電池用積層セパレータに異物、塗工ムラ、気泡、汚れ、ピンホールなどの欠陥が生じていた場合であっても、当該欠陥を見出し難いという問題があった。特許文献1に記載の非水電解液二次電池用セパレータについても同様である。
【0007】
一方、非水電解液二次電池用積層セパレータは、非水電解液二次電池の内部で用いられる部材である。そのため、上記塗工液に何らかの着色成分を別途含有させることは、非水電解液二次電池用積層セパレータ、ひいては非水電解液二次電池の性能に悪影響を与える可能性があるため、好ましくない。
【0008】
それゆえ、多孔質層を形成するための塗工液に着色成分を別途含有させることなく、上記欠陥を容易に見出すことができる技術が望まれてきた。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、非水電解液二次電池用積層セパレータの欠陥を容易に見出すことができる組成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の[1]~[10]に示す発明を含む。
【0011】
[1]溶媒と、アラミド樹脂と、を含んでいる組成物であり、
上記アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である、組成物。
【0012】
[2]上記アラミド樹脂は、
(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち25%以上が電子吸引性基を有しており、
(v)酸クロリド由来のユニットのうち50%以下が電子吸引性基を有している、[1]に記載の組成物。
【0013】
[3]上記電子吸引性基は、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上である、[1]または[2]に記載の組成物。
【0014】
[4]上記アラミド樹脂の固有粘度は0.5~4.0dL/gである、[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[5]フィラーをさらに含んでいる、[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
【0016】
[6]光路長5mmの石英セルに入れ、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が5%以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
【0017】
[7]ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、[1]から[6]のいずれかに記載の組成物が積層されている、積層体。
【0018】
[8]ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、[1]から[6]のいずれかに記載の組成物を積層する工程と、
上記組成物中の溶媒の99%以上を除去する工程と、
を含む、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【0019】
[9]ポリオレフィン多孔質フィルムと、バインダー樹脂およびフィラーからなる多孔質層とが積層された非水電解液二次電池用積層セパレータであって、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が30%以下である、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0020】
[10]上記バインダー樹脂がアラミド樹脂であり、当該アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である、[9]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、非水電解液二次電池用積層セパレータの欠陥を容易に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例および比較例で調製した組成物の全光線透過率を示す図である。
【
図2】実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータの全光線透過率を示す図である。
【
図3】実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータの欠陥部と正常部との色差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0024】
〔実施形態1:組成物〕
本発明の一実施形態に係る組成物は、溶媒と、アラミド樹脂と、を含んでいる組成物であり、上記アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である。
【0025】
上記構成によれば、アラミド樹脂が上記(i)~(iii)を充足するため、後述する実施例に示すように、着色成分等を別途加えることなく、全光線透過率が低い組成物を得ることができる。
【0026】
その結果、ポリオレフィン多孔質フィルムに当該組成物を積層して得た多孔質層を備える非水電解液二次用積層セパレータの、全光線透過率を低くすることができる。それゆえ、非水電解液二次用積層セパレータの欠陥の有無を容易に検出することができる。
【0027】
アラミド樹脂の主鎖とは、例えば、以下の化学式の括弧内に示す構造である。ただし、下記化学式では、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合はアミド結合のみとなっているが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記結合のうち、90%超がアミド結合であればよい。その他の上記結合としては、エーテル結合、スルホニル結合等を挙げることができる。
【0028】
上記結合に占めるアミド結合の割合は、95%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。また、上記アラミド樹脂は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合としてエーテル結合を有していないことが好ましい。
【0029】
【0030】
上記電子吸引性基としては、ハロゲン、-CN、-NO2、-+NH3、-CF3、-CCl3、-CHO、-COCH3、-CO2C2H5、-CO2H、-SO2CH3、-SO3H、-OCH3等を挙げることができる。上記電子吸引性基は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0031】
中でも、上記電子吸引性基は、価格の観点から、一般的に流通している、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上であることが好ましい。
【0032】
上記アラミド樹脂の分子の両端または少なくとも一方の末端はアミノ基である。つまり、上記分子の末端の芳香族環の少なくとも一方はアミノ基を有する。アミノ基を末端に有することで、アミノ基と芳香族環部分が発色団として働き、ポリマーの着色を大きくすることが出来る。
【0033】
上記(i)~(iii)を充足するアラミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸とを溶媒中で反応させることで製造することができる。
【0034】
上記アラミド樹脂は、(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち25%以上が電子吸引性基を有しており、(v)酸クロリド由来のユニットのうち50%以下が電子吸引性基を有していることが好ましい。
【0035】
上記「芳香族ジアミン由来のユニット」とは、-(NH-Ar-NH)-で表される構造単位である。当該構造単位には、末端がアミノ基である構造単位であるNH2-Ar-NH-および-NH-Ar-NH2も含まれる。「当該ユニットのうち25%以上が電子吸引性基を有する」とは、アラミド樹脂の分子内に存在する上記ユニットにおける芳香環(Ar)の25%以上が電子吸引性基を有することを意味する。
【0036】
芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有する割合は、50%以上であることがより好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0037】
上記「酸クロリド由来のユニット」とは、-(CO-Ar-CO)-で表される構造単位である。「当該ユニットのうち50%以下が電子吸引性基を有している」とは、アラミド樹脂の分子内に存在する上記ユニットにおける芳香環(Ar)の50%以下が電子吸引性基を有することを意味する。酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有する割合は、低いほど好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0038】
上記アラミド樹脂が上記(iv)および(v)を充足することにより、全光線透過率が低い組成物をより容易に得ることができる。
【0039】
上記アラミド樹脂の固有粘度は、上記多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、0.5~4.0dL/gであることが好ましい。上記固有粘度は、例えば、国際公開2016/002785に記載の方法によって確認することができる。すなわち、アラミド樹脂0.5gを濃硫酸100mLに溶解させ、毛細管粘度計を用いて測定することができる。上記固有粘度は制御する方法は、モノマーの仕込みを調整することで制御できる。
【0040】
アラミド樹脂には、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどが含まれる。芳香族ポリアミドとしては、パラ(p)-芳香族ポリアミドおよびメタ(m)-芳香族ポリアミドからなる群から1種以上選択される樹脂が好ましい。
【0041】
アラミド樹脂としては、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)及びパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体が好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態に係る組成物が含有する上記溶媒は、上記基材に悪影響を及ぼさず、アラミド樹脂を均一かつ安定に溶解または分散し、フィラーを均一かつ安定に分散させることができる溶媒であることが好ましい。
【0044】
上記溶媒としては、国際公開2016/002785に記載の非極性溶媒が挙げられる。具体的には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これら溶媒は1種類のみを用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
本発明の一実施形態に係る組成物は、フィラーをさらに含んでいることが好ましい。上記フィラーは、耐熱性フィラーであることが好ましい。上記耐熱性フィラーは、無機フィラーまたは有機フィラーであり得、無機フィラーを含むことが好ましい。上記耐熱性フィラーは、融点が150℃以上であるフィラーを意味する。
【0046】
上記組成物におけるフィラーの含有量は、多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、上記組成物の固形分の重量を100重量%としたとき、40重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。上記含有量は、50重量%以上、70重量%未満であることがより好ましい。
【0047】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物から選ばれる1種以上の無機フィラーを用いることができる。
【0048】
中でも、フィラーは、上記多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、金属酸化物フィラーであることが好ましい。「金属酸化物フィラー」とは、金属酸化物からなる無機フィラーのことである。金属酸化物フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウムおよび/または酸化マグネシウムからなる無機フィラーを挙げることができる。
【0049】
有機フィラーを構成する有機物としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単量体の単独重合体或いは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン/6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン/エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸;レゾルシノール樹脂等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0050】
上記フィラーの平均粒子径(D50)は、0.001μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、8μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、5μm以下であることが更に好ましい。上記フィラーの平均粒子径は、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した値である。
【0051】
上記フィラーの形状は、原料である有機物または無機物の製造方法、多孔質層を形成するための塗工液を作製する際のフィラーの分散条件等によって変化するため、球形、長円形、短形、瓢箪形等の形状、或いは特定の形状を有さない不定形等、何れの形状であってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係る組成物は、光路長5mmの石英セルに入れ、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が5%以下であることが好ましい。
【0053】
当該構成によれば、全光線透過率が十分に低いため、上記組成物を用いて形成した多孔質層の全光線透過率が十分に低いものとなる。よって、欠陥の検出が容易な非水電解液二次電池用積層セパレータを提供することができる。
【0054】
上記全光線透過率は、3%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
【0055】
測定装置としては、JIS K7361-1:1997に記載された測定装置、すなわち、安定化された光源、当該光源と組み合わされた光学系およびフォトメーター、並びに、開口部が付いており、かつ、外部からの光束が入らない積分球を備えた装置であればよい。光源としては、C光源を使用する。例えば、日本電飾工業(株)製のCOH-7700等を用いることができる。
【0056】
JIS K7361-1:1997は、平らで透明な、基本的には無色のプラスチックの可視領域における全光線透過率の試験方法について規定しているため、試験片は積分球に直接設置される。一方、本発明の一実施形態に係る組成物は、溶媒と、アラミド樹脂と、を含んでいる組成物であるため、光路長5mmの石英セルに入れて全光線透過率を測定する。その点以外は、JIS K7361-1:1997に規定された方法に基づいて、全光線透過率を測定する。得られた値が、上述した全光線透過率となる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記溶媒と、上記アラミド樹脂と、必要に応じて上記フィラーを混合することによって得ることができる。上記フィラーを用いる場合、上記アラミド樹脂および上記フィラーの重量を100重量%としたときに、上記フィラーの含有量は、多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、40~70重量%であることが好ましく、50~70重量%であることがより好ましい。
【0058】
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した事項については、その説明を繰り返さない。
【0059】
〔実施形態2:積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、本発明の一実施形態に係る組成物が積層されている。上記組成物に含有される溶媒を除去することによって、上記組成物は多孔質層を形成し、非水電解液二次電池用積層セパレータを得ることができる。つまり、上記積層体は、非水電解液二次電池用積層セパレータの半製品に該当する。
【0060】
実施形態1で述べたように、上記組成物は全光線透過率が低いため、上記積層体は、欠陥の検出が容易な非水電解液二次電池用積層セパレータを提供することができる。
【0061】
上記ポリオレフィン多孔質フィルム(以下、単に「多孔質フィルム」とも称する)は、ポリオレフィンを主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。上記多孔質フィルムは、上記多孔質層が形成された上記積層体の基材となる。上記多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった層である。
【0062】
多孔質フィルムに占めるポリオレフィンの割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
また、上記ポリオレフィンには、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、上記積層体の強度が向上するため、より好ましい。
【0064】
上記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体が挙げられる。上記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、上記共重合体としては、例えばエチレン/プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0065】
このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン/α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0066】
多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、6~15μmであることがさらに好ましい。
【0067】
多孔質フィルムの単位面積当たりの重量は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、上記単位面積当たりの重量は、4~15g/m2であることが好ましく、4~12g/m2であることがより好ましく、5~10g/m2であることがさらに好ましい。
【0068】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30~500sec/100mLであることが好ましく、50~300sec/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが上記透気度を有することにより、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0069】
多孔質フィルムに本発明の一実施形態に係る組成物を積層させ、多孔質層を形成した非水電解液二次電池用積層セパレータの透気度は、ガーレ値で30~1000sec/100mLであることが好ましく、50~800sec/100mLであることがより好ましい。上記非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記透気度を有することにより、非水電解液二次電池において、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0070】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止することができるように、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.30μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましい。
【0071】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、以下に示す工程を含む方法を挙げることができる。
【0072】
(A)超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウムまたは可塑剤等の孔形成剤と、酸化防止剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を一対の圧延ローラで圧延し、速度比を変えた巻き取りローラで引っ張りながら段階的に冷却し、シートを成形する工程、
(C)得られたシートの中から適当な溶媒にて孔形成剤を除去する工程、
(D)孔形成剤が除去されたシートを適当な延伸倍率にて延伸する工程。
【0073】
上記組成物は、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、ダイコーター法によって、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に積層することができる。
【0074】
〔実施形態3:非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法は、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、本発明の一実施形態に係る組成物を積層する工程と、上記組成物中の溶媒の99%以上を除去する工程と、を含む。
【0075】
ポリオレフィン多孔質フィルムに上記組成物を積層する工程については、実施形態2で述べたとおり、グラビアコーター法等によって行うことができる。上記組成物中の溶媒の99%以上を除去する工程としては、上記溶媒を乾燥除去する方法を挙げることができる。溶媒の99%以上が除去されたことは、熱重量分析(TGA)によって確認することができる。
【0076】
以上の工程により、上記組成物は、多孔質フィルム(基材)の片面または両面に多孔質層を形成する。これによって、非水電解液二次電池用積層セパレータが得られる。
【0077】
上記溶媒の除去は、例えば以下の方法によって行うこともできる。
【0078】
(1)上記組成物を、基材の片面または両面に塗工した後、その基材をアラミド樹脂に対して貧溶媒である、析出溶媒に浸漬することによって、アラミド樹脂を析出させ、多孔質層を形成した後、乾燥させ、溶媒を除去する。
【0079】
(2)上記組成物を、基材の片面または両面に塗工した後、低沸点溶媒を用いてアラミド樹脂を析出させ、多孔質層を形成した後、乾燥させ、溶媒を除去する。
【0080】
上記析出溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトンなどを使用することができる。
【0081】
〔実施形態4:非水電解液二次電池用積層セパレータ〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムと、バインダー樹脂およびフィラーからなる多孔質層とが積層された非水電解液二次電池用積層セパレータであって、JIS K7361-1:1997に準じて測定した全光線透過率が30%以下である。
【0082】
また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記バインダー樹脂がアラミド樹脂であり、当該アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である。
【0083】
〔実施形態5:非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータを備える。上記非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータを介して対向した構造体を有する。上記非水電解液二次電池では、当該構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入されている。例えば、上記非水電解液二次電池は、リチウムイオンのドープ・脱ドープにより起電力を得るリチウムイオン二次電池である。
【0084】
<正極>
正極としては、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0085】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。
【0086】
当該材料としては、例えば、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。リチウム複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するリチウム複合酸化物、スピネル構造を有するリチウム複合酸化物、並びに、層状構造及びスピネル構造の両方を有するリチウム複合酸化物からなる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。また、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物も挙げられる。さらに、これらのリチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ca、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びW等の他の元素で置換したものも挙げられる。
【0087】
上記リチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物は、例えば、下記式(2)で表される層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物、下記式(3)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、下記式(4)で表されるスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、下記式(5)で表される固溶体リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられる。
【0088】
Li[Lix(Co1-aM1
a)1-x]O2・・・(2)
(式(2)中、M1はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦x≦0.30、0≦a≦0.5、を満たす。)
Li[Liy(Ni1-bM2
b)1-y]O2・・・(3)
(式(3)中、M2はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦y≦0.30、0≦b≦0.5、を満たす。)
LizMn2-cM3
cO4・・・(4)
(式(4)中、M3はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0.9≦z、0≦c≦1.5を満たす。)
Li1+wM4
dM5
eO2・・・(5)
(式(5)中、M4及びM5はAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0<w≦1/3、0≦d≦2/3、0≦e≦2/3、w+d+e=1を満たす。)
上記式(2)~(5)で示されたリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.8Co0.2O2、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn2O4、LiMn1.5Ni0.5O4、LiMn1.5Fe0.5O4、LiCoMnO4、Li1.21Ni0.20Mn0.59O2、Li1.22Ni0.20Mn0.58O2、Li1.22Ni0.15Co0.10Mn0.53O2、Li1.07Ni0.35Co0.08Mn0.50O2、Li1.07Ni0.36Co0.08Mn0.49O2等が挙げられる。
【0089】
また、上記式(2)~(5)で示されるリチウム複合酸化物以外のリチウム複合酸化物も好ましく正極活物質として使用することができる。そのようなリチウム複合酸化物としては例えば、LiNiVO4、LiV3O6、Li1.2Fe0.4Mn0.4O2等が挙げられる。
【0090】
リチウム複合酸化物以外で好ましく正極活物質として使用することができる材料としては、例えば、オリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられ、下記式(6)で表されるオリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられる。
【0091】
Liv(M6
fM7
gM8
hM9
i)jPO4・・・(6)
(式(6)中、M6は、Mn、Co、またはNiであり、M7は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、またはMoであり、M8は、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、M9は、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、1.2≧a≧0.9、1≧b≧0.6、0.4≧c≧0、0.2≧d≧0、0.2≧e≧0、1.2≧f≧0.9を満たす。)。
【0092】
正極活物質は、正極活物質を構成するリチウム金属複合酸化物の粒子の表面に、被覆層を有することが好ましい。上記被覆層を構成する材料としては例えば、金属複合酸化物、金属塩、ホウ素含有化合物、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、硫黄含有化合物などが挙げられ、これらの中でも金属複合酸化物が好適に用いられる。
【0093】
上記金属複合酸化物としては、リチウムイオン伝導性を有する酸化物が好適に用いられる。このような金属複合酸化物としては、例えば、Liと、Nb、Ge、Si、P、Al、W、Ta、Ti、S、Zr、Zn、V及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素との金属複合酸化物を挙げることができる。正極活物質が被覆層を有すると、当該被覆層が高電圧下での正極活物質と電解質との界面における副反応を抑制し、得られる二次電池の高寿命化を実現することができる。また、正極活物質と電解質との界面における高抵抗層の形成を抑制し、得られる二次電池の高出力化を実現することができる。
【0094】
<非水電解液>
非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiSO3F、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(COCF3)、Li(C4F9SO3)、LiC(SO2CF3)3、Li2B10Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。なかでもリチウム塩としては、フッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiSO3F、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2およびLiC(SO2CF3)3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0095】
有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,2-ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3-メチル-2-オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3-プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、またはこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0096】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた非水電解液は、動作温度範囲が広く、高い電圧で使用しても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという利点を有する。
【0097】
また、非水電解液としては、得られる非水電解質二次電池の安全性が高まるため、LiPF6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む非水電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電圧で放電させても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0098】
<負極>
負極としては、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0099】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金であって、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープおよび脱ドープが可能な材料などが挙げられる。
【0100】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体などを挙げることができる。
【0101】
上記負極活物質として使用可能な酸化物としては、例えば、SiO2、SiOなど式SiOx(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO2、TiOなど式TiOx(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V2O5、VO2など式VxOy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe3O4、Fe2O3、FeOなど式FexOy(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO2、SnOなど式SnOx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO3、WO2など一般式WOx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;Li4Ti5O12、LiVO2などのリチウムとチタンまたはバナジウムとを含有する複合金属酸化物;などを挙げることができる。
【0102】
負極活物質として使用可能な硫化物としては、例えば、Ti2S3、TiS2、TiSなど式TixSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V3S4、VS2、VSなど式VSx(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe3S4、FeS2、FeSなど式FexSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo2S3、MoS2など式MoxSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS2、SnSなど式SnSx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WS2など式WSx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sb2S3など式SbxSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se5S3、SeS2、SeSなど式SexSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0103】
負極活物質として使用可能な窒化物としては、例えば、Li3N、Li3-xAxN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方または両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0104】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質または非晶質のいずれでもよい。これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、主に負極集電体に担持させて、電極として用いられる。
【0105】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
【0106】
また、SiまたはSnを第1の構成元素とし、それに加えて第2、第3の構成元素を含む複合材料が挙げられる。第2の構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム及びジルコニウムのうち少なくとも1種である。第3の構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウム及びリンのうち少なくとも1種である。
【0107】
特に、高い電池容量および優れた電池特性が得られることから、上記金属材料として、ケイ素またはスズの単体(微量の不純物を含んでよい)、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0≦w≦2)、Si-Co-C複合材料、Si-Ni-C複合材料、Sn-Co-C複合材料、Sn-Ni-C複合材料が好ましい。
【0108】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
<試験方法>
(1.全光線透過率の測定)
実施例および比較例で調製した組成物を、光路長5mmの石英セルに入れ、日本電飾工業(株)製COH7700を用い、JIS K7361-1:1997に準じて全光線透過率を測定した。
【0111】
また、実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータの全光線透過率を、上記COH7700を用い、JIS K7361-1:1997に準じて測定した。この場合、測定は、上記石英セルを用いるのではなく、塗工面が積分球に接するように配置し、C光源を用いて測定を行った。
【0112】
(2.欠陥部と正常部との色差の測定)
実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータを、白色バックライトの上に載置した。次に、デジタルカメラ(SONY CyberShot(登録商標)DSC-WX350)を用いて、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの30cm上方から、F=3.5、ISO 80、1/250の条件で疑似欠陥および疑似欠陥の周辺の正常部分を撮像した。上記疑似欠陥は、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを調製するために、実施例および比較例で調製した組成物を基材上に塗工した際に気泡が入った部分である。
【0113】
撮像した画像は、Microsoft(登録商標)ペイントのスポイトツールを用いて、疑似欠陥1か所および正常部分1か所のRGB値を読み取り、当該疑似欠陥と当該正常部分との色差を以下の式に基づいて算出した。RGB値を読み取る疑似欠陥と正常部分との組み合わせは、計三つとし、それぞれについて得られた色差の平均値を求めた。
【0114】
【数1】
式中、R
1,G
1,B
1は、それぞれ、正常部分のR値、G値、B値である。また、R
2,G
2,B
2は、それぞれ、疑似欠陥のR値、G値、B値である。
【0115】
[実施例1]
(1.組成物の調製)
撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する500mLのセパラブルフラスコを用意した。当該フラスコを、内部に窒素を流入させることにより充分に乾燥させた。その後、フラスコ内に、有機溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略す)を409.2g入れ、塩化物として塩化カルシウム(200℃で2時間、真空乾燥して使用)を30.8g添加して、100℃に昇温させて塩化カルシウムを完全に溶解させた。その後、得られた溶液の温度を室温(25℃)に戻して、溶液の含水率が500ppmとなるように調整した。
【0116】
次いで、芳香族ジアミンとしての2-クロロパラフェニレンジアミンを7.44g添加し、完全に溶解させた。この溶液の温度を20±2℃に保持しつつ攪拌しながら、芳香族ジカルボン酸としてのテレフタル酸ジクロライド(以下、TPCと略す)を10.29g添加した。
【0117】
上記の方法にて、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.5dL/gであるアラミド樹脂1を得た。アラミド樹脂1の分子の両末端は、クロロ基を有するフェニルアミンであった。
【0118】
次に、アラミド樹脂1、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのN-メチル-6-ピロリドン(NMP)を混合し、アラミド樹脂1およびフィラーの濃度の合計が6重量%である組成物1を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂1およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂1、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0119】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製)
TECHNO SUPPLY Co. LTD製G-7型バーコーターを使用し、ベーカー式アプリケータのクリアランスを2milに固定して、超高分子量ポリエチレンからなるポリオレフィン樹脂組成物を延伸して得られた多孔質フィルムの片面に、組成物1を塗工速度1.2m/minで塗工した。続けて50℃、湿度70%の環境下でアラミド樹脂1を析出させたのちに水洗、乾燥を行って基材表面に多孔質層が積層された非水電解液二次電池用積層セパレータ1を得た。このとき、組成物中の溶媒の99%以上を除去したことを熱重量分析(TGA)によって確認した。
【0120】
(3.全光線透過率の測定および色差の測定)
上記<試験方法>に基づき、組成物1の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ1を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0121】
[実施例2]
(1.組成物の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンを5.60g、パラフェニレンジアミンを1.42gとし、芳香族ジカルボン酸としてのTPCを10.54gとした以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの75%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.6dL/gであるアラミド樹脂2を得た。
【0122】
次に、アラミド樹脂2、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂2およびフィラーの濃度の合計が4重量%である組成物2を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂2およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂2、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0123】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ2を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物2の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ2を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0124】
[実施例3]
(1.組成物の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンを3.73g、パラフェニレンジアミンを2.83gとし、芳香族ジカルボン酸としてのTPCを10.54gとした以外は、実施例1と同様に製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの50%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.1dL/gであるアラミド樹脂3を得た。
【0125】
次に、アラミド樹脂3、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂3およびフィラーの濃度の合計が4重量%である組成物3を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂3およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂3、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0126】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ3を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物3の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ3を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0127】
[実施例4]
(1.組成物の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンを1.87g、パラフェニレンジアミンを4.25gとし、芳香族ジカルボン酸としてのTPCを10.54gとした以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの25%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が0.8dL/gであるアラミド樹脂4を得た。
【0128】
次に、アラミド樹脂4、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂4およびフィラーの濃度の合計が4重量%である組成物4を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂4およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂4、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0129】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ4を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物4の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ4を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0130】
[実施例5]
(1.組成物の調製)
芳香族ジアミンとしての2-シアノ-1,4-フェニレンジアミンを5.40g、芳香族ジカルボン酸としてのTPCを8.16gとした以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてシアノ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が2.6dL/gであるアラミド樹脂5を得た。アラミド樹脂5の分子の両末端は、シアノ基を有するフェニルアミンであった。
【0131】
次に、アラミド樹脂5、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂5およびフィラーの濃度の合計が4重量%である組成物5を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂5およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂5、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0132】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ5を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物5の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ5を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0133】
[実施例6]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を8.63gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を11.96gとしたこと以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.9dL/gであるアラミド樹脂6を得た。
【0134】
次に、アラミド樹脂6、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂6およびフィラーの濃度の合計が4重量%である組成物6を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を40重量%とするため、アラミド樹脂6およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が40重量%となるように、アラミド樹脂6、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0135】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の
測定)
組成物1の代わりに組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ6を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物6の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ6を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0136】
[実施例7]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を8.63gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を11.96gとしたこと以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.9dL/gであるアラミド樹脂7を得た。
【0137】
次に、アラミド樹脂7、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、アラミド樹脂7およびフィラーの濃度の合計が3重量%である組成物7を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を20重量%とするため、アラミド樹脂7およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が20重量%となるように、アラミド樹脂7、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0138】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の
測定)
組成物1の代わりに組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ7を得た。上記<試験方法>に基づき、組成物7の全光線透過率を測定し、非水電解液二次電池用積層セパレータ7を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0139】
[比較例1]
(1.組成物の調製)
芳香族ジアミンとしてのパラフェニレンジアミンを13.20g、芳香族ジカルボン酸としてのTPCを24.18gとした以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットおよび酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.9dL/gである比較用アラミド樹脂1を得た。
【0140】
次に、比較用アラミド樹脂1、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、比較用組成物1を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂1およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂1、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0141】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに比較用組成物1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ1を得た。上記<試験方法>に基づき、比較用組成物1の全光線透過率を測定し、比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ1を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0142】
[比較例2]
(1.組成物の調製)
比較用アラミド樹脂1、フィラーとしての小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、比較用アラミド樹脂1およびフィラーの濃度の合計が4重量%である比較用組成物2を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、比較用アラミド樹脂1およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、比較用アラミド樹脂1、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0143】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の測定)
組成物1の代わりに比較用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ2を得た。上記<試験方法>に基づき、比較用組成物2の全光線透過率を測定し、比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ2を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0144】
[比較例3]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を11.20gとし、酸クロリドとしての4,4'-オキシビス(ベンゾイルクロリド)の添加量を10.51gとしたこと以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の66%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.5dL/gである比較用アラミド樹脂3を得た。
【0145】
次に、比較用アラミド樹脂3、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、比較用アラミド樹脂3およびフィラーの濃度の合計が6重量%である比較用組成物3を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、比較用アラミド樹脂3およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、比較用アラミド樹脂3、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0146】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の
測定)
組成物1の代わりに比較用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ3を得た。上記<試験方法>に基づき、比較用組成物3の全光線透過率を測定し、比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ3を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0147】
[比較例4]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての4,4'-ジアミノジフェニルエーテルの添加量を17.31gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を17.38gとしたこと以外は、実施例1と同様にアラミド樹脂を製造した。主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の66%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有さず、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.7dL/gである比較用アラミド樹脂4を得た。
【0148】
次に、比較用アラミド樹脂4、フィラーとしての大粒径アルミナおよび小粒径アルミナ、溶媒としてのNMPを混合し、比較用アラミド樹脂4およびフィラーの濃度の合計が6重量%である比較用組成物4を調製した。このとき、後述する多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、比較用アラミド樹脂4およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、比較用アラミド樹脂4、フィラーおよび溶媒を混合した。
【0149】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、全光線透過率の測定および色差の
測定)
組成物1の代わりに比較用組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ4を得た。上記<試験方法>に基づき、比較用組成物4の全光線透過率を測定し、比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ4を用いた色差の測定を行った。結果を表1、表2、
図1~3に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
表1中、「主鎖芳香環電子吸引基」は、主鎖中の芳香環内に有する電子吸引性基の種類;、「ジアミンユニット吸引基含有率」は、アラミド樹脂中の芳香族ジアミン由来のユニットのうち、電子吸引性基を有するものの割合;「酸クロリドユニット吸引基含有率」は、アラミド樹脂中の酸クロリド由来のユニットのうち、電子吸引性基を有するものの割合;「末端アミノ基有無」は、アラミド樹脂の分子末端にアミノ基を有するか否か(有する場合を丸印で表す);「芳香環連結アミド基率」は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合がアミド基を有する割合;「多孔質層中フィラー含有率」は、多孔質層の重量を100重量%としたときのフィラーの含有率;「アラミド固有粘度」は、アラミド樹脂の固有粘度、をそれぞれ表す。
【0153】
また、
図1は、表2における「組成物の全光線透過率」をグラフ化した図;
図2は、表2における「積層セパレータの全光線透過率」をグラフ化した図;
図3は、表2における「欠陥部と正常部との色差」をグラフ化した図である。
図1および
図2における点線は、点線で示した値以下の全光線透過率が、非水電解液二次電池用積層セパレータの欠陥の有無を容易に検査する上で好ましいことを示している。
【0154】
表1、2および
図1、2に示されているように、実施例で調製した組成物1~7は全光線透過率が非常に低いため、当該組成物を用いて作製した非水電解液二次電池用積層セパレータ1~7の全光線透過率も低くなっている。それゆえに、表2および
図3に示されているように、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~7は、欠陥部、すなわち実施例および比較例の疑似欠陥と、正常部との色差が大きくなっている。つまり、欠陥の存在を容易に検出可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の一実施形態に係る組成物等は、非水電解液二次電池を取り扱う各種産業において、好適に利用され得る。