(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】LI二次電池用の電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0566 20100101AFI20230904BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230904BHJP
【FI】
H01M10/0566
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022537745
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020087384
(87)【国際公開番号】W WO2021123408
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・マイ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトロツァール-ディミトロフ・イワノフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブント
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107830(JP,A)
【文献】特開2020-145054(JP,A)
【文献】特開2016-192383(JP,A)
【文献】特開2016-173890(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038816(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107528089(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池に好適なスルホラン(SL)系電解質組成物であって、
39.0体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)、及び
1.0≦y≦15.0体積%の量(y)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、
SL/LiTFSIが、2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれる、電解質組成物。
【請求項2】
FECが、
2.0≦y≦15.0体積%の量(y)で含まれる、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
FECが、
2.5≦y≦15.0体積%の量(y)で含まれる、請求項1又は2に記載の電解質組成物。
【請求項4】
FECが、10.0≦y≦15.0体積%の量(y)で含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項5】
FECが、10.0体積%の量で含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項6】
SL/LiTFSIが、2.0<z≦3.5のモル比(z)で含まれる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項7】
SL/LiTFSIが、2.5≦z≦3.5のモル比(z)で含まれる、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項8】
SL/LiTFSIが、2.5<z<3.5のモル比(z)で含まれる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項9】
SL/LiTFSIが、2.5<z≦3.0のモル比(z)で含まれる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む、リチウム二次電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li金属系又はリチウムイオン電池用の電解質組成物に関する。特に、本発明は、リチウム二次電池に好適な電解質組成物であって、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、39.0体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)、0<y≦14.0重量%の量に等しい、0.0<y≦15.0体積%の量(y)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、電解質の残りの体積は、スルホラン(SL)などの好適な溶媒から構成され、SL/LiTFSIが、2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれる、電解質組成物に関し、並びにリチウム二次電池セルにおけるその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の3つの主要な機能的構成要素は、アノード、カソード、及び電解質である。従来のリチウムイオンセルのアノードは、炭素から作製され、カソードは、コバルト、ニッケル、マンガンなどの遷移金属酸化物から作製され、また電解質は、リチウム塩を含有する非水性溶媒である。例えばリチウム鉄リン酸塩カソードに基づく他のリチウムイオン電池も、市場に存在する。
【0003】
電解質は、電池が電流を外部回路に通すときに、カソードとアノードとの間のキャリアとして作用するリチウムイオンを伝導する必要がある。現行の電解質溶媒は、初期充填で分解し、電気絶縁性の固体相間層を形成し、十分なイオン伝導性を更に提供する。この相間層により、その後の充電/放電サイクルにおける電解質の更なる分解を防止する。
【0004】
このような電解質溶媒は、典型的には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びプロピレンカーボネート(PC)などの有機カーボネートの混合物からなり、リチウム塩は通常、ヘキサフルオロホスフェート、LiPF6から構成される。
【0005】
リチウム二次電池の市場が急速に拡大し、携帯型電子デバイスに好適な、また絶大なエネルギー密度を示す、より小さくより軽い電池に対する需要が増加しているため、より高い容量で安全かつ安定した、高い動作電圧で動作可能な電池を得ようとする集中的な開発につながっている。
【0006】
携帯型電子デバイス用のバッテリの容量は、現在、主に電解質安定性が動作電圧を制限するため、頭打ち状態になっている。携帯型電子デバイスに好適な市販の電池の動作電圧は現在、4.2Vから最大4.4Vまで異なる。最新型携帯電話などの非常に高級な携帯型電子デバイスの場合、少なくとも4.4V(好ましくは4.5V以下)の動作電圧を印加する電池が要求される。更に、二次リチウムイオン電池セル用のいくつかの電解質組成物には、安全性の課題、すなわち、不燃性にするという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、好ましくは従来のカットオフ又は動作電圧(4.4Vに限定される)に対してより高い電圧範囲、すなわち4.4Vより高い電圧で、高いクーロン効率(すなわち、少なくとも93%、好ましくは少なくとも98%)によって可能になる良好なサイクル寿命(例えば、高い又は優れたサイクル寿命であり得る)を示す、安定した安全で高エネルギー密度の電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、リチウム二次電池に好適なスルホラン(SL)系の電解質組成物であって、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、39.0体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)、及び0<y≦14.0重量%の量に等しい、0.0<y≦15.0体積%の量(y)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、電解質の残りの体積は、スルホラン(SL)などの好適な溶媒から構成され、SL/LiTFSIが、2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれ、体積%は、特定の構成成分の体積を、LiTFSI(M:287.08g/mol、ρ:1.33g/cm3)、FEC(M:106.05g/mol、ρ:1.45g/cm3)及びSL(M:120.17g/mol、ρ:1.26g/cm3)の総体積で除算したものとして定義される、電解質組成物を使用することによって解決された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】サイクル効率、並びに、固定した10.0体積%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)含有量でのスルホラン(SL)とリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)との間の様々なモル比、の間の関係についての実験結果である。
【
図2】サイクリング効率と、スルホラン(SL)とリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)との間の3.0対1.0の固定したモル比でのフルオロエチレンカーボネート(FEC)の様々な体積%との関係についての実験結果である。
【
図3】実施例のセクション3に記載の手順の電圧プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、リチウム二次電池に好適なスルホラン(SL)系の電解質組成物であって、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、39.0体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)、0<y≦14.0重量%の量に等しい、0.0<y≦15.0体積%の量(y)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及びスルホラン(SL)を含み、SL/LiTFSIが、2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれる、電解質組成物に関する。
【0011】
明確にするために、当業者は、本明細書に記載の成分の各々の体積%すなわち体積百分率及び重量%すなわち重量百分率、並びに本明細書に記載の成分の各々について利用可能な物理的データから本明細書に記載の成分の各々の間のモル比を計算可能である。
【0012】
明確にするために、特に明記しない限り、体積%すなわち体積百分率及び重量%すなわち重量百分率は、本明細書では電解質組成物の総体積に基づく。
【0013】
本発明によれば、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、37.9重量%<x’≦48.9重量%の量に等しい、39.0体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)を含む。LiTFSIは、公知の化学化合物である(CAS番号:90076-65-6)。より好ましくは、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、38.1重量%<x’≦48.9重量%の量に等しい、39.2体積%≦x≦47.5体積%の量(x)のリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)を含む。
【0014】
本発明によれば、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、0<y’≦14.0重量%の量に等しい、0.0<y≦15.0体積%の量(y)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を更に含む。FECは、公知の化学化合物である(CAS番号:114435-02-8)。
【0015】
一実施形態では、FECは、組成物の総体積に対して、1.0体積%≦y、1.0体積%<y、2.0体積%≦y、2.0体積%<y、2.5体積%≦y、2.5体積%、5.0体積%≦y、5.0体積%<y又は10.0体積%≦yの量(y)で存在し得る。組成物中のSL及びLiTFSIのそれぞれの量に応じて、当該電解質組成物は、組成物の総重量に対して、1.0重量%≦y’、1.0重量%<y’、2.1重量%≦y’、2.1重量%<y’、2.6重量%≦y’、2.6重量%<y’、5.2重量%≦y’、5.2重量%<y’又は9.8重量%≦y’の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む、電解質組成物に相当する。
【0016】
一実施形態では、FECは、y≦15.0体積%又はy<15.0体積%の量(y)で存在し得る。組成物中のSL及びLiTFSIのそれぞれの量に応じて、当該電解質組成物は、組成物の総重量に対して、約14.0重量%≦y’又は14.0重量%<y’の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む電解質組成物に相当する。
【0017】
好ましい実施形態では、FECは、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、9.8≦y’≦14.0重量%の量に等しい、10.0≦y≦15.0体積%の量(y)で含まれ得る。
【0018】
より好ましい実施形態では、FECは、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、9.8重量%の量(y’)に等しい、10.0体積%の量(y)で含まれ得る。
【0019】
本発明によれば、電解質組成物は、スルホラン(SL)を更に含む。SLは、公知の化学化合物である(CAS番号:126-33-0)。
【0020】
本発明によれば、電解質組成物は、2.0≦z≦3.5のモル比(z)でSL/LiTFSIを含む。
【0021】
一実施形態では、電解質組成物は、2.0<z又は2.5≦zの最小モル比(z)でSL/LiTFSIを含む。
【0022】
一実施形態では、電解質組成物は、z≦3.5の最大モル比(z)でSL/LiTFSIを含む。
【0023】
好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、2.0<z≦3.5の最大モル比(z)で含まれ得る。
【0024】
より好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、2.5≦z≦3.5のモル比(z)で含まれ得る。
【0025】
更により好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、2.5<z<3.5のモル比(z)で含まれ得る。
【0026】
更により好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、2.5<z≦3.0のモル比(z)で含まれ得る。
【0027】
更により好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、3のモル比(z)で含まれ得る。
【0028】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、0≦y’≦14.0重量%の量に等しい、10.0≦y≦15.0体積%の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び2.5≦z≦3.5のモル比(z)で、SL/LiTFSIを含み得る。
【0029】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、9.8重量%の量(y’)に等しい、10.0体積%の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び2.5≦z≦3.5のモル比(z)で、SL/LiTFSIを含み得る。
【0030】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、9.8重量%の量(y’)に等しい、10.0体積%の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び2.5≦z≦3.0のモル比(z)で、SL/LiTFSIを含み得る。
【0031】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、電解質組成物の総体積、対応する重量に対して、9.8重量%の量(y’)に等しい、10.0体積%の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び3.0のモル比(z)でSL/LiTFSIを含み得る。
【0032】
電解質組成物を調製する方法は、特に限定されず、すなわち、例えば成分を混合することによって調製することができる。
【0033】
本発明はまた、本発明による電解質組成物を含む、リチウム二次電池セルに関する。
【0034】
明確にするために、リチウム二次電池セルは、少なくともアノード、カソード、及び電解質、並びに任意選択でセパレータを含む。
【0035】
電解質は、本明細書に上記した本発明による電解質に関係する。
【0036】
カソードの材料は特に限定されず、その例としては、リチウムイオンを拡散可能な構造を有する遷移金属化合物、又はその特化した金属化合物、及びリチウムの酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4などを挙げることができる。
【0037】
カソードは、既知の伝導性補助剤若しくはバインダーと共に上記に列挙されたカソード材料を、又は既知の伝導性補助剤若しくはバインダーと共に正極活物質を、ピロリドンなどの有機溶媒中にプレス成形することによって形成することができる。これは、混合物を適用し、それをアルミニウム箔などの電流コレクタに塗布し、続いて乾燥させることによって得ることができる。
【0038】
好ましい実施形態では、カソードは、リチウム箔(アノード)に対する銅箔(カソード)である。
【0039】
アノードの材料は、リチウムを挿入及び抽出可能な材料である限り、特に限定されない。例えば、リチウム金属、Sn-Cu、Sn-Co、Sn-Fe又は、-NiなどのSn-An合金、Li4Ti5O12又はLi5Fe2O3などの金属酸化物、天然黒鉛、人工黒鉛、ホウ化黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化材料などの炭素材料、炭素-Si複合体、又はカーボンナノチューブである。
【0040】
カソードとアノードとの間の短絡を防止するために、通常、カソードとアノードとの間にセパレータが差し挟まれる。セパレータの材料及び形状は特に限定されないが、電解質組成物を容易に通過させ得ること、及びセパレータが絶縁体であり化学的に安定な材料であることが好ましい。その例としては、様々なポリマー材料で作製された微多孔質フィルム及びシートが挙げられる。ポリマー材料の具体例としては、ポリオレフィンポリマー、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。電気化学的安定性及び化学的安定性の観点から、ポリオレフィンポリマーが好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、セパレータは、40.0μmの厚さ及び48%の多孔率を有するポリプロピレンセパレータ(例えば、Cellgard2075-1500M)である。このようなセパレータは、以下の論文文献に記載されている:International Journal of Electrochemistry,Volume 2018,Article ID 1925708,7pages,https://doi.org/10.1155/2018/1925708。
【0042】
本発明の最適な作動電圧のリチウム二次電池は、正極と負極との組み合わせによって特に限定されないが、2.4~4.5Vの平均放電電圧で使用することができる。好ましくは、リチウム二次電池セルは、高い動作電圧、すなわち4.4V以上、好ましくは4.5V以下の動作電圧を有する。
【実施例】
【0043】
1.コインセル調製の説明
試験したセルは、コインセルの型CR2025であった。正のケーシング、正極(電解質中に予浸)、セルガード-セパレータ、50μLの電解質液滴、負極、スペーサ、波形バネ、及び負のケーシングをその順序で積み重ねることによって、セルを調製した。80kg/cm2の圧力で、MTI corp.製の手動圧接プレスを用いて、圧接を行った。
【0044】
電解質組成物は、電解質組成物の総体積に対して、0.0<y≦15.0体積%の量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を、スルホラン(SL)及びリチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)に、3.0~1.0のSL/LiTFSIのモル比(z)で添加することによって得られる。
【0045】
2.不動態化プロトコル
リチウム試料の不動態化を、2ステップで行った。最初に、上記セクション1に記載のセルを、セルが対称である(Li金属がアノード及びカソードの両方に対して選択される)ように構築した。次に、セルを、電流密度0.60mA/cm2で5回、半サイクル当たり2時間でサイクリングし、1.20mAh/cm2の容量を得た。その後、セルを12時間静置した後、取り出し、SEIを含む不動態化Li電極を、リチウムセルから引き抜く。
【0046】
3.クーロン効率を測定するための方法の説明
不動態化リチウム電極を含むコインセルを、以下の条件下で数回充電及び放電し、その充電-放電サイクル性能を決定する:カソードとして銅箔及びアノードとしてリチウム箔からなるセル構成を使用して、クーロン効率をBiologic VMP-3ポテンショスタットで測定する。初めに、ある特定量のリチウム金属(3.80mAhの容量に相当する約1mg/50μLの電解質)を、0.38mA/cm
2の定電流を使用して銅箔上にメッキし、その後、逆電流を最大0.50Vの電位に印加することによって、Q
cleanを得、これを使用して、CE1
st=Q
clean/Q
initialにより
図1及び
図2中の1番目のサイクル効率を計算する。
【0047】
続いて、3.80mAhの容量(2番目のQinitial)に相当する別の約1mg/50μLの電解質のリチウム金属を、同じ電流密度を使用して、銅箔上にメッキする。
【0048】
この後、0.380mA/cm2の電流密度、及び各サイクルのサイクリングが合計(3.80mAh、Qinitial)容量の12.5%(本発明者らの設定における0.475mAh)で、50サイクル(n)を行った。
【0049】
50番目のサイクルの完了後、残りのリチウムを、0.380mA/cm2の電流密度を0.5Vのカットオフ電圧に印加する(Qfinalを得る)ことによって銅電極から剥がした。
【0050】
図3は、上記の手順の典型的な電圧プロファイルを示す。
【0051】
CEを、以下の一般式を使用して計算した。
【0052】
【0053】
Qcycle、Qinitial及びnが既知である(上記実験の記載を参照されたい)ことに基づいて、式を、以下のように簡略化することができる。
【0054】
【0055】
4.実験的試験及び結果
スルホラン(SL)対リチウムビス(トリフルオロメタンソルフォニル)イミド(LiTFSI)のモル比に対するサイクリング効率の関係を試験するために、0.5のステップでモル比を2:1から4:1まで変化させ、この間10体積%のFEC含有量を一定に維持し、第1の充電及び放電サイクル並びに後続の充電及び放電サイクルでクーロン効率を測定した。実験結果を
図1に示す。
【0056】
図1は、電解質組成物のサイクリング効率がSL/LiTFSIのモル比に依存することを示している。
【0057】
SL/LiTFSの2:1~4:1のモル比を有する本発明による電解質のサイクリング効率は、90%超の顕著な高いサイクリング効率を示す。
【0058】
2.5~3.5のSL/LiTFSIのモル比を有する本発明による電解質組成物のサイクリング効率が最適であり、SL/LiTFSIの3のモル比で最大である。
【0059】
モル比が4:1を超える電解質組成物のサイクリング効率は、サイクリング不可能な程度まで顕著に減少した。
【0060】
サイクリング効率の、フルオロエチレンカーボネート(FEC)の量に対する依存性を試験するために、FECの量(電解質組成物の総体積に対する体積百分率に基づく)を、2.5体積%のステップで0体積%から15体積%まで変化させ、この間SL:TFSIのモル比を3:1で一定に維持し、第1の充電及び放電サイクル並びに後続の充電及び放電サイクルでクーロン効率を測定した。実験結果を
図2に示す。
【0061】
図2は、電解質組成物のサイクリング効率が、添加したFECの量に依存することを示している。
【0062】
のモル比を有する本発明による電解質のサイクリング効率は、90%超の顕著な高いサイクリング効率を示す。
【0063】
10体積%、12.5体積%及び15体積%のFECを有する本発明による電解質組成物のサイクリング効率が最適になる(12.5体積%及び15体積%のFECの実験結果は10体積%のFECと同一であるため、読み取り性のために省略されている)。
【0064】
FECが15体積%を超える電解質組成物のサイクリング効率は、顕著に低下し、不安定なリチウムメッキ挙動及びセル不良につながる。
【0065】
図1及び
図2に示した結果を、以下の表1及び表2にまとめる。
【0066】
【0067】