IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トクヤマの特許一覧

特許7342288遷移金属の半導体の処理方法、および遷移金属酸化物の還元剤含有処理液
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】遷移金属の半導体の処理方法、および遷移金属酸化物の還元剤含有処理液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230904BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/308 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022569967
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045736
(87)【国際公開番号】W WO2022131186
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020210578
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021067187
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伴光
(72)【発明者】
【氏名】吉川 由樹
(72)【発明者】
【氏名】下田 享史
(72)【発明者】
【氏名】根岸 貴幸
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-230230(JP,A)
【文献】国際公開第2006/137497(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0116739(KR,A)
【文献】特開2018-181984(JP,A)
【文献】特開2004-137594(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179449(WO,A1)
【文献】特開2003-008199(JP,A)
【文献】特開2000-183015(JP,A)
【文献】特開平07-216564(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102592983(CN,A)
【文献】特開2011-016975(JP,A)
【文献】特開平05-006876(JP,A)
【文献】特開2014-053644(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142788(WO,A1)
【文献】特開平08-081222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属酸化物を除去する工程と、遷移金属を除去する工程を含む、遷移金属の半導体の処理方法であって、前記遷移金属酸化物を除去する工程が、還元剤含有処理液、アルカリ溶液、またはスパッタにより、遷移金属酸化物を除去する工程であり、
前記遷移金属を除去する工程がウェットエッチングであり、
前記ウェットエッチングで用いる処理液が、次亜ハロゲン酸素酸イオンを含む溶液である、遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物を除去する工程を複数回含む、請求項1に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項3】
前記遷移金属を除去する工程を複数回含む、請求項1または2に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項4】
前記還元剤含有処理液に含まれる還元剤の濃度が、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項5】
前記還元剤含有処理液の還元剤が、水素化ホウ素化合物、水素、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩である、請求項1またはに記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項6】
前記アルカリ溶液に含まれるアルカリの濃度が、0.05mol/L以上15mol/L以下である、請求項1に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項7】
前記アルカリ溶液のアルカリが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アンモニア、炭酸アンモニウム、アミン、または水酸化アルキルアンモニウムである、請求項1またはに記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属水酸化物のアルカリ溶液に含まれるアルカリ金属水酸化物の濃度が、
0.05mol/L以上5mol/L以下である、請求項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項9】
前記アルカリ溶液に含まれるアンモニアの濃度が、3mol/L以上15mol/L以下である、請求項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項10】
前記水酸化アルキルアンモニウムのアルカリ溶液に含まれる水酸化アルキルアンモニウムの濃度が、0.05mol/L以上3mol/L以下である、請求項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項11】
前記遷移金属が、Ru、Rh、Co、Cu、Mo、またはWである、請求項1~10のいずれか一項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の遷移金属の半導体の処理方法を含む、遷移金属の半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属酸化物を除去する工程を含む、遷移金属の半導体の処理方法に関する。また、遷移金属酸化物の還元剤含有処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子のデザインルールの微細化が進んでおり、配線抵抗が増大する傾向にある。配線抵抗が増大した結果、半導体素子の高速動作が阻害されることが顕著になっており、対策が必要となっている。そこで、配線材料としては、従来の配線材料よりも、エレクトロマイグレーション耐性が高い配線材料や、抵抗値の低減された配線材料が所望されている。
【0003】
従来の配線材料であるアルミニウム、銅と比較して、ルテニウムは、エレクトロマイグレーション耐性が高く、配線の抵抗値を低減可能という理由で、特に、半導体素子のデザインルールが10nm以下の配線材料として、注目されている。その他、配線材料だけでなく、ルテニウムは、配線材料に銅を使用した場合でも、銅のエレクトロマイグレーションを防止することが可能なため、銅配線用のバリアメタルとして、ルテニウムを使用することも検討されている。
【0004】
ところで、半導体素子の配線形成工程において、ルテニウムを配線材料として選択した場合でも、従来の配線材料と同様に、ドライまたはウェットのエッチングによって半導体用ウエハ上に配線が形成される。しかしながら、ルテニウムはエッチングガスによるドライでのエッチングやCMP研磨によるエッチング、除去が難しいため、より精密なエッチングが所望されており、具体的には、ウェットエッチングが注目されている。
【0005】
ルテニウムをウェットエッチングする場合、ルテニウムの溶解速度、すなわち、エッチング速度が重要である。エッチング速度が速ければ、短時間でルテニウムを溶解させることができるため、単位時間当たりのウエハ処理枚数を増やすことができる。これにより、生産性の向上が期待できる。
【0006】
また、ルテニウムをウェットエッチングする場合、エッチング後のルテニウム表面が平坦であることが求められる。ルテニウム表面が平坦でない場合、ルテニウム層の上に形成される材料の平坦性も悪くなるため、加工精度低下の原因となり、半導体素子製造時の歩留まりが低下する。さらに、ルテニウムを配線材料に使用する場合は、ルテニウムの平坦性が低下すると、他の配線材料との接触抵抗が大きくなり、半導体素子の性能低下の原因となる。特に、配線の微細化に伴い、多層配線形成時のエッチバック工程(リセス工程)における平坦性が強く求められている。このような理由から、エッチング速度が大きく、かつ、ルテニウムの平坦性に優れたウェットエッチング方法が求められている。
【0007】
一般に、成膜後の遷移金属表面には、自然酸化膜が速やかに形成される。また、遷移金属を含むウエハをCMP処理した場合は、CMPスラリーに含まれる酸化剤により遷移金属が酸化され、遷移金属酸化物が形成される。
【0008】
ルテニウム等の半導体用ウエハにおける金属をウェットエッチングするために用いられる処理液として種々の液が提案されている。例えば、特許文献1には、ルテニウム膜のエッチング方法として、pH12以上かつ標準酸化還元電位300mV vs.SHE(標準水素電極)以上の薬液、具体的には、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、または臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩を含む溶液を用いてルテニウム膜をエッチングする方法が提案されている。また、特許文献2では、硝酸セリウム(IV)アンモニウムに、さらに硝酸などの強酸を添加した除去液を用いて、ルテニウムを酸化して溶解、除去する洗浄方法が提案されている。
【0009】
特許文献3には、半導体用ウエハにおける金属をエッチングするために用いられる処理液として、次亜塩素酸イオン及び溶媒を含み、25℃でpHが7を超え12.0未満であるルテニウムを有するウエハの処理液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-161381号公報
【文献】特開2001-234373号公報
【文献】国際公開第2019/142788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
遷移金属を含む半導体ウエハから遷移金属をエッチングする場合、エッチング速度が大きく、かつ、遷移金属の平坦性に優れていることが重要である。しかしながら、本発明者らの検討によれば、先行技術文献に記載された従来の処理液では、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0012】
上述のエッチバック工程においては、被処理面におけるエッチング速度の正確な制御が必要である。具体的には、エッチングを行う表面における表面粗さを約3nm以下のレベルで制御する必要がある。しかしながら、上記特許文献1~3記載の処理液については、いずれもエッチング処理後の被処理面の平坦性については言及されていない。本発明者らによって、これらの処理液を用いて遷移金属のエッチングを行ったところ、エッチング速度は高いものの、エッチング後の表面の表面粗さの制御が困難であり、エッチング後の表面の平坦性の点で改善の余地があることが判明した。
【0013】
したがって、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、遷移金属を含む半導体ウエハから遷移金属を十分な速度でエッチングでき、エッチング後も遷移金属の平坦性に優れた半導体製造方法を提供することにある。さらに、遷移金属表面に存在する遷移金属酸化物を還元し、除去できる還元剤含有処理液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、遷移金属の表面に存在する遷移金属酸化物のエッチング速度と、遷移金属のエッチング速度が大きく異なり、遷移金属酸化物の不均一な分布に起因して、エッチング後の遷移金属表面の平坦性が損なわれているという知見を得た。そして、遷移金属酸化物を除去することで、遷移金属酸化物の影響を排除し、高速に遷移金属をエッチングできることを見出した。さらに、遷移金属酸化物の除去と、遷移金属の除去を組み合わせたり、それらの工程を複数回行うことで、加工後も平坦性に優れた遷移金属表面が得られることを見出した。さらに、還元剤含有処理液、アルカリ溶液またはスパッタを用いた処理で遷移金属酸化物を効率よく除去できることを見出した。さらに、還元剤含有処理液中の還元剤が、水素化ホウ素化合物、水素、塩化スズ(II)、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩であれば、遷移金属酸化物をより効率よく除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
項1 遷移金属酸化物を除去する工程と、遷移金属を除去する工程を含む、遷移金属の半導体の処理方法。
項2 前記遷移金属酸化物を除去する工程を複数回含む、項1に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項3 前記遷移金属を除去する工程を複数回含む、項1または2に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項4 前記遷移金属酸化物を除去する工程が、還元剤含有処理液、アルカリ溶液、またはスパッタにより、遷移金属酸化物を除去する工程である、項1~3のいずれか1項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項5 前記還元剤含有処理液に含まれる還元剤の濃度が、0.1質量%以上15質量%以下である、項4に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項6 前記還元剤含有処理液の還元剤が、水素化ホウ素化合物、水素、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩である、項4または5に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項7 前記アルカリ溶液に含まれるアルカリの濃度が、0.05mol/L以上15mol/L以下である、項4に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項8 前記アルカリ溶液のアルカリが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アンモニア、炭酸アンモニウム、アミン、または水酸化アルキルアンモニウムである、項4または7に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項9 前記アルカリ金属水酸化物のアルカリ溶液に含まれるアルカリ金属水酸化物の濃度が、0.05mol/L以上5mol/L以下である、項8に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項10 前記アンモニアのアルカリ溶液に含まれるアンモニアの濃度が、3mol/L以上15mol/L以下である、項8に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項11 前記水酸化アルキルアンモニウムのアルカリ溶液に含まれる水酸化アルキルアンモニウムの濃度が、0.05mol/L以上3mol/L以下である、項8に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項12 前記遷移金属を除去する工程がウェットエッチングである、項1~11のいずれか1項に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項13 前記ウェットエッチングで用いる処理液が、次亜ハロゲン酸素酸イオンを含む溶液である、項12に記載の遷移金属の半導体の処理方法。
項14 前記遷移金属が、Ru、Rh、Co、Cu、Mo、またはWである、項1~13のいずれか一項に記載の遷移金属の半導体の処理方法
項15 項1~14のいずれか一項に記載の遷移金属の半導体の処理方法を含む、遷移金属の半導体の製造方法。
項16 遷移金属酸化物の還元剤含有処理液であって、該還元剤含有処理液に含まれる還元剤の濃度が0.01質量%以上50質量%以下である還元剤含有処理液。
項17 25℃における還元剤含有処理液のpHが7以上14以下である、項16に記載の還元剤含有処理液。
項18 前記還元剤含有処理液が水または有機極性溶媒を含む、項16または17に記載の還元剤含有処理液。
項19 前記有機極性溶媒が、アルコールまたはアセトンである、項18に記載の還元剤含有処理液。
項20 前記還元剤含有処理液の還元剤が、水素化ホウ素化合物、水素、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩である、項16~19のいずれか1項に記載の還元剤含有処理液。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体ウエハのような半導体に含まれる遷移金属酸化物を除去する工程を含むことで、エッチング速度の遅い遷移金属酸化物の影響を排除でき、その結果、遷移金属のエッチング速度が向上する。半導体ウエハに不均一に存在していた遷移金属酸化物や、エッチング中に生じる遷移金属酸化物を除去できるため、エッチング後も遷移金属の平坦性に優れた半導体を得ることができる。これにより、単位時間当たりのウエハ処理枚数を増やすことができ、半導体製造に要する時間を短縮できる。すなわち、生産性向上が期待できる。さらに、遷移金属表面が平坦であるため、加工精度が低下せず、半導体素子製造時の歩留まり低下が抑制される。
また、本発明の遷移金属酸化物の還元剤含有処理液を用いる場合には、半導体ウエハに含まれる遷移金属酸化物を効率的に還元することが可能となる。これにより、還元された遷移金属の加工を行いやすくなり、単位時間当たりのウエハ処理枚数を増やすことができ、半導体製造に要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の遷移金属の半導体の処理方法は、遷移金属酸化物の除去工程、および遷移金属の除去工程を含む方法である。また、濃度が0.01質量%以上50質量%以下である、遷移金属酸化物の還元剤含有処理液に関する。
以下、順を追って説明する。
【0018】
(半導体ウエハに含まれる、遷移金属および遷移金属酸化物)
本実施形態において、遷移金属とは、3族~12族の金属元素を指す。例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Auなどの金属である。また、遷移金属化合物とは、上記遷移金属と窒素、リン、硫黄、シリコン、炭素、ホウ素、ハロゲン等からなる化合物を指す。半導体製造時に、これらの遷移金属、遷移金属化合物、および遷移金属酸化物が半導体ウエハに含まれることがあるが、いかなる方法により形成されてもよい。また、「半導体ウエハに含まれる」という表現は、半導体ウエハに含有されている場合や、基板と接触している場合や、他の成分を介してウエハ上に存在している場合などを包含し、化学種の存在する位置や状態に依らない。
半導体に含まれてもよい遷移金属としては、特に制限はされないが、半導体ウエハに用いられる点を考慮すると、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Ta、W、またはHfであることが好ましい。これらの金属の中でも、配線層として有用である、Ru、Rh、Co、Cu、Mo、またはWであることがより好ましい。さらに、遷移金属酸化物の除去効率を考慮すると、Ru、Mo、またはWであることがさらに好ましく、Ruであることが特に好ましい。該金属は、いかなる方法によって成膜されていてもよく、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、PVD、スパッタ、またはめっき等を利用できる。
【0019】
(遷移金属酸化物)
本実施形態における遷移金属酸化物とは、上記遷移金属の酸化物である。該遷移金属酸化物は、一般式としてM(ただし、Mは遷移金属、Oは酸素、xおよびyはそれぞれ遷移金属と酸素の量比を表す)で表わされる遷移金属と酸素を含む化合物だけでなく、遷移金属の価数が正である固体を含む。すなわち、酸素以外の元素を含んでいる場合でも、遷移金属の価数が正であれば、本実施形態の遷移金属酸化物として扱う。また、該遷移金属酸化物の形成方法は限定されず、どのような形状、厚さ、大きさであってもよいし、何らかの加工、例えば製造などにより生じたものであってもよいし、自然酸化により形成されたものであってもよい。以下、遷移金属として、ルテニウムを用いる場合を例に、具体的に説明する。本実施形態の半導体の方法は、ルテニウムを用いる場合は、ルテニウム酸化物の除去工程及びルテニウムの除去工程を含む方法である。以下、順を追って説明する。
【0020】
(半導体ウエハに含まれるルテニウム)
本実施形態において、ルテニウムの半導体とはルテニウムを含む半導体のことを意味する。なお、遷移金属の半導体とは遷移金属を含む半導体のことを意味する。また、本実施形態においてルテニウムとは、ルテニウム系金属またはルテニウム合金のことである。本実施形態において、半導体ウエハに含まれるルテニウムは、いかなる方法により形成されていてもよい。ルテニウムを成膜する場合には、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、PVD、スパッタ、めっき等を利用できる。
【0021】
本実施形態において「ルテニウム系金属」とは、金属ルテニウム単体のほか、ルテニウムを含有するルテニウム金属、窒素、リン、硫黄、シリコン、炭素、ホウ素、ハロゲン等からなる化合物を指す。また、本実施形態において「ルテニウム合金」とは、ルテニウムを含有し、かつ不可避的に含有される濃度より高い濃度のルテニウム以外の金属を含む合金を指す。
本実施形態において、ルテニウム系金属とルテニウム合金を特に区別する必要のないときは、これらをルテニウムと記載する。ルテニウム合金は、ルテニウムの他にどのような金属を含んでいてもよいが、ルテニウム合金に含まれる金属の一例を挙げれば、タンタル、シリコン、銅、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、マンガン、金、ロジウム、パラジウム、チタン、タングステン、モリブデン、白金、イリジウムなどである。これらの酸化物、窒化物、炭化物、シリサイドを含んでいてもよい。
【0022】
上記ルテニウムは、金属間化合物や、イオン性化合物、錯体であってもよい。また、ルテニウムはウエハの表面に露出していてもよいし、他の金属や金属酸化膜、絶縁膜、レジスト等に覆われていてもよい。
【0023】
(ルテニウム酸化物)
本実施形態において、ルテニウム酸化物とは、半導体ウエハに含まれる、ルテニウムと酸素を含む固体状の化合物である(以下、化学式RuOで表すこともある)。一例を挙げれば、一酸化ルテニウム(RuO)、二酸化ルテニウム(RuO)、二酸化ルテニウム二水和物(RuO(OH))、三酸化ルテニウム(RuO)、四酸化ルテニウム(RuO)、五酸化二ルテニウム(Ru)、酸窒化物(RuNO)である。四酸化ルテニウムは水に溶解するが、固体として半導体ウエハに含まれる場合は、本実施形態のルテニウム酸化物として扱われる。さらに、RuO 、RuO 2-、HRuO 等のアニオンを含む固体状の化合物も本実施形態のルテニウム酸化物である。例えば、上記アニオンを含む塩である。
【0024】
本実施形態において、ルテニウム酸化物は、固体であれば特に限定されない。例えば、ルテニウム膜をCMP研磨した際に生じたルテニウム酸化物や、自然酸化膜、酸化剤等でルテニウムを酸化させて生じたルテニウム酸化物、ルテニウムをエッチングする際に生じたルテニウム酸化物、あるいは、ルテニウム酸化物を成膜して作成したルテニウム酸化物膜等である。また、ルテニウム酸化物の厚み、形状、存在量も特に限定されることはない。ルテニウム酸化物は半導体ウエハのどの位置に存在していてもよく、例えば、半導体ウエハの裏面、端部、表面に存在していてもよい。
【0025】
<ルテニウム酸化物を除去する工程>
本実施形態におけるルテニウム酸化物の除去は、例えば、化学的、物理的手法等により、ルテニウム酸化物を除去する工程である。ルテニウム酸化物を除去することで、ルテニウムを十分な速度でエッチングさせることができ、エッチング後の平坦性低下を抑制できる。
【0026】
ルテニウム酸化物を除去する工程に用いられる方法は、特定の方法に限定されることはなく、半導体ウエハに含まれるルテニウム酸化物の少なくとも一部が除去される方法であれば、どのような方法であってもよい。このような方法として、還元剤含有処理液によりルテニウム酸化物を除去する方法、アルカリ溶液を用いてルテニウム酸化物を除去する方法、スパッタによりルテニウム酸化物を除去する方法を好適に用いることができる。上記還元剤含有処理液は、以下で説明する遷移金属酸化物の還元剤含有処理液であってよい。
【0027】
(遷移金属酸化物の還元剤含有処理液)
遷移金属酸化物の還元剤含有処理液は、遷移金属酸化物を還元するために還元剤を含む処理液である。該遷移金属酸化物の還元剤含有処理液は、少なくとも還元剤と溶媒を含む。該遷移金属酸化物の還元剤含有処理液と遷移金属酸化物とを接触させることで、上記還元剤が遷移金属酸化物の全部または一部を還元し、遷移金属の価数を下げることができる。
【0028】
遷移金属酸化物の還元剤含有処理液に含まれる還元剤は、金属酸化物の種類や半導体ウエハに含まれる量、処理方法などに応じて適宜選択することができる。このような還元剤を例示すれば、水素化ホウ素化合物、カルボン酸系還元剤、水素、還元性金属イオンを含む塩、金属水素化物、金属系還元剤、ヨウ化物、過酸化水素、含硫黄還元剤、含リン還元剤、含窒素還元剤、アルデヒド系還元剤、多価フェノールなどが挙げられる。これらの還元剤の中でも、遷移金属酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の取扱上の安全性の観点から、水素化ホウ素化合物、水素、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩等が好ましい。さらに、製造上の安全性を考慮すると、水素化ホウ素化合物、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等がより好ましい。
【0029】
上記、遷移金属酸化物の還元剤含有処理液における還元剤の濃度は、半導体ウエハに含まれる遷移金属酸化物の一部または全部を還元し、除去できる濃度であればよい。遷移金属酸化物の還元剤含有処理液における還元剤の濃度は、ウエハに含まれる遷移金属酸化物の酸化状態(価数)、存在量、存在部位、処理条件、還元剤の種類及び価数などを考慮して適宜調整することができる。遷移金属酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性および取扱上の安全性の観点から、0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.01質量%以上30質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以上20質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であれば、遷移金属酸化物を十分な速度で還元し、効率よく除去することができる。
【0030】
また、遷移金属酸化物の還元剤含有処理液のpHは、特に制限されず、半導体ウエハに含まれる遷移金属酸化物の一部または全部を還元し、除去できる還元力を示すpHであればよい。遷移金属酸化物の還元剤含有処理液のpHは、半導体ウエハに含まれる遷移金属酸化物の種類、酸化状態(価数)、存在量、存在部位、処理条件、還元剤の種類及び価数などを考慮して適宜調整することができる。例えば、遷移金属酸化物がルテニウム酸化物や白金酸化物の場合は、酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性および取扱上の安全性の観点から、pHは7以上14以下が好ましい。また、遷移金属酸化物がコバルト酸化物やニッケル酸化物の場合、還元剤含有処理液のpHは、半導体ウエハに含まれる遷移金属酸化物の一部または全部を還元し、除去できる還元力を示すpHであればよい。
【0031】
(還元によるルテニウム酸化物の除去)
ルテニウム酸化物を除去する工程として、上記の還元剤含有処理液によりルテニウム酸化物を除去する方法を好適に用いることができる。還元剤含有処理液とルテニウム酸化物を接触させることで、半導体ウエハに含まれるルテニウム酸化物の少なくとも一部を還元し、除去することができる。ルテニウム酸化物を除去することで、ルテニウムを十分な速度でエッチングさせることができ、エッチング後の平坦性低下を抑制できる。
【0032】
ルテニウム酸化物を還元する場合の還元剤含有処理液における還元剤は、ルテニウム酸化物に含まれるルテニウム原子の価数を低下させることができるものであればよい。このような還元剤としては、例えば、水素化ホウ素化合物、カルボン酸系還元剤、水素、還元性金属イオンを含む塩、金属水素化物、金属系還元剤、ヨウ化物、過酸化水素、含硫黄還元剤、含リン還元剤、含窒素還元剤、アルデヒド系還元剤、多価フェノールなどが挙げられる。これらの還元剤の中でも、ルテニウム酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の取扱上の安全性の観点から、水素化ホウ素化合物、水素、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、または次亜リン酸塩等が好ましい。さらに、製造上の安全性を考慮すると、水素化ホウ素化合物、スズ(II)化合物、ヨウ化物、亜硫酸、亜硫酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等がより好ましい。
【0033】
水素化ホウ素化合物としては、例えば、ボラン化合物や、ボロヒドリド等である。これらの水素化ホウ素化合物は、水素を水溶液中に存在させる方法と比較して、ルテニウム酸化物と還元剤含有処理液の界面近傍に、より多くの水素を存在させることができ、また、より安全に高濃度水素を発生できるため好ましい。ボラン化合物としては、例えば、ジボラン、アミンボラン、ボラン錯体、置換ボラン等である。アミンボランとしては、例えば、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン、エタン-1,2-ジアミンボラン等である。ボラン錯体としては、例えば、ピリジンボラン、2-メチルピリジンボラン、モルホリンボラン、テトラヒドロフランボラン、ジエチルエーテルボラン、硫化ジメチルボラン等である。置換ボランとしては、例えば、ジクロロボランまたはジブロモボラン等のハロボランや、2,3-ジメチル-2-ブチルボラン等のアルキルボラン等である。
【0034】
ボロヒドリドとしては、例えば、水素化ホウ素金属塩およびその誘導体や、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム等である。水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素カルシウム等である。水素化ホウ素金属塩の誘導体としては、例えば、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、硫化水素化ホウ素化ナトリウム等である。水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムボロヒドリド、テトラエチルアンモニウムボロヒドリド、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド等である。
【0035】
カルボン酸系還元剤としては、例えば、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸等のカルボン酸およびその塩である。
【0036】
還元性金属イオンを含む塩としては、例えば、スズ(II)化合物、鉄(II)化合物、イリジウム(III)化合物、クロム(II)化合物、セリウム(III)化合物、チタン(III)化合物、バナジウム(II)化合物等である。スズ(II)化合物としては、例えば、塩化スズ(II)等である。鉄(II)化合物としては、例えば硫酸鉄(II)等である。イリジウム(III)化合物としては、例えば、塩化イリジウム(III)等である。クロム(II)化合物としては、例えば、塩化クロム(II)、硫酸クロム(II)、酢酸クロム(II)、過塩素酸クロム(II)等である。セリウム(III)化合物としては、例えば、水酸化セリウム(III)等である。チタン(III)化合物としては、例えば、塩化チタン(III)等である。バナジウム(II)化合物としては、例えば、硫酸バナジウム(II)、塩化バナジウム(II)等である。
【0037】
金属水素化物としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化アルミニウム化合物、ヒドロシラン、ヒドロスズ等である。水素化アルミニウム化合物としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリ-tert-ブトキシアルミニウムリチウム、水素化アルミニウム等である。ヒドロシランとしては、例えば、モノシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、トリメトキシシラン、トリクロロシラン等である。ヒドロスズとしては、例えば、トリブチルスズ等である。
【0038】
金属系還元剤としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マグネシウム、亜鉛末、華状亜鉛、アルミニウムアマルガム、アルミニウムニッケル、スズ粉末、スズアマルガム、鉄粉等である。
【0039】
ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化アルキルアンモニウム等である。
【0040】
含硫黄還元剤としては、例えば、二酸化硫黄、硫化水素、スルファミン酸、亜硫酸系化合物、亜ジチオン酸、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸、チオ硫酸塩等である。亜硫酸系化合物としては、例えば、亜硫酸、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸テトラアルキルアンモニウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等である。亜ジチオン酸塩としては、例えば、亜ジチオン酸ナトリウム等である。チオ硫酸塩としては、例えば、チオ硫酸ナトリウムである。
【0041】
含リン還元剤としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩、ホスフィン等である。亜リン酸塩としては、例えば、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリメチル等である。次亜リン酸塩としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸テトラアルキルアンモニウム等である。ホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン等である。
【0042】
含窒素還元剤としては、亜硝酸、亜硝酸塩、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミンの塩、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体等である。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸テトラアルキルアンモニウム等である。ヒドロキシルアミンの塩としては、例えば、ヒドロキシルアミン塩酸塩等である。ヒドラジン誘導体としては、例えば、ジアゼン、モノメチルヒドラジン等である。
【0043】
アルデヒド系還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、還元性糖等が挙げられる。還元性糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース等である。
【0044】
多価フェノールとしては、例えば、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシノール等である。
【0045】
これらの還元剤の中でも、取扱上の安全性の観点や、低価格な高純度品が入手しやすいことから、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、水素、塩化スズ(II)、硫酸鉄(II)、ヨウ化カリウム、ヨウ化アルキルアンモニウム、過酸化水素、二酸化硫黄、亜硫酸、亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、次亜リン酸、次亜リン酸塩、トリフェニルホスフィン、亜硝酸塩が好ましい。さらに、ルテニウム酸化物を速やかに還元し、効率よく除去できるという観点から、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム、水素、塩化スズ(II)、ヨウ化カリウム、ヨウ化アルキルアンモニウム、亜硫酸塩、次亜リン酸塩がより好ましい。さらに、製造上の安全性を考慮すると、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム、塩化スズ(II)、ヨウ化カリウム、ヨウ化アルキルアンモニウム、亜硫酸、次亜リン酸がさらに好ましい。さらに、半導体製造において問題となる金属原子を含まないという観点から、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化アルキルアンモニウム、亜硫酸テトラアルキルアンモニウム、次亜リン酸テトラアルキルアンモニウムが最も好ましい。
【0046】
上記還元剤含有処理液に用いられる溶媒は、還元剤が容易に溶解する溶媒、または、還元剤が安定に存在する溶媒であれば、どのようなものでもよい。還元剤が容易に溶解する溶媒を用いることにより、幅広い濃度範囲で濃度調整をすることができる。これにより、半導体ウエハに含まれるルテニウム酸化物に合わせて、効率よく除去することができる。還元剤が安定に存在する溶媒を用いることにより、還元剤含有処理液の使用できる期間を延長することができる。これにより生産性が向上する。溶媒は一種類であってもよいし、複数種を含んでいてもよい。これらの溶媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン、ニトリル、エーテル、エステル、カルボン酸、含硫黄化合物、または含窒素化合物等の極性溶媒が遷移金属のエッチングレートの向上という観点で好ましい。アルコールの極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等である。ケトンの極性溶媒としては、例えば、アセトン等である。ニトリルの極性溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパンニトリル等である。エーテルの極性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等である。エステルの極性溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、炭酸プロピレン等である。カルボン酸の極性溶媒としては、例えば、ギ酸、酢酸等である。含硫黄化合物の極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等である。含窒素化合物の極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトアミド、ニトロメタン等である。
これらの溶媒の中でも、低価格な高純度品が入手しやすいことから、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ギ酸、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。さらに、ルテニウム酸化物を速やかに還元し、効率よく除去できるという観点から、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、アセトニトリルがより好ましい。さらに、半導体用の高純度品が入手しやすいという観点から、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトンが最も好ましい。
【0047】
本実施形態の還元剤含有処理液の溶媒として水を用いることは、最も好ましい態様の一つである。還元剤含有処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水または超純水が好ましい。
本実施形態の還元剤含有処理液に含まれる有機極性溶媒は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された溶媒が好ましい。
【0048】
上記還元剤含有処理液における還元剤の濃度は、半導体ウエハに含まれるルテニウム酸化物の一部または全部を還元し、除去できる濃度であればよい。該還元剤濃度は、半導体ウエハに含まれるルテニウム酸化物の酸化状態(価数)、存在量、存在部位、処理条件、還元剤の種類及び価数などを考慮して適宜調整することができる。ルテニウム酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性および取扱上の安全性の観点から、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上15質量%以下である。上記範囲内であれば、ルテニウム酸化物を十分な速度で還元し、効率よく除去することができる。
【0049】
本発明における還元剤含有処理液として、例えば、水素化ホウ素ナトリウム溶液を用いる場合は、ルテニウム酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性を考慮すると、還元剤の濃度範囲は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。さらに、取扱上の安全性を考慮すると、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることが最も好ましい。
【0050】
本実施形態における還元剤含有処理液として、例えば、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム溶液を用いる場合は、ルテニウム酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性を考慮すると、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウムの濃度範囲は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。さらに、取扱上の安全性を考慮すると、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態における還元剤含有処理液として、例えば、亜硫酸塩の溶液を用いる場合は、ルテニウム酸化物の除去効率、還元剤含有処理液の保存安定性を考慮すると、亜硫酸塩溶液の濃度範囲は、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。さらに、ルテニウム酸化物の除去効率を考慮すると、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
上記還元剤含有処理液によりルテニウム酸化物を除去する際の温度は特に制限されず、用いる還元剤の種類及び安定性、ルテニウム酸化物の除去効率、処理の安全性などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、-20℃以上90℃以下であることが好ましく、0℃以上90℃以下であることがより好ましく、10℃以上70℃以下であることが最も好ましい。上記温度範囲であれば、ルテニウム酸化物を良好に還元し、効率よく除去することができる。
【0053】
上記還元剤含有処理液によりルテニウム酸化物を除去する際の処理時間は特に制限されず、用いる還元剤の種類及び濃度、ルテニウム酸化物の除去効率、使用される半導体、あるいは、ルテニウム酸化物の厚み等を考慮して適宜選択すればよい。一例を挙げれば、0.1分以上600分以下であればよく、0.1分以上120分以下であることが好ましく、0.5分以上60分以下であることがより好ましい。上記時間範囲であれば、ルテニウム酸化物を速やかに還元し、効率よく除去することができる。
【0054】
上記還元剤含有処理液による処理後のリンス液は、特に制限されず、脱イオン水でリンスするだけでも十分である。
【0055】
還元剤含有処理液として、界面活性剤や金属に配位する配位子等の金属保護剤を含む溶液を用いることができる。これらの金属保護剤を含むことで、還元と同時にルテニウムを保護することができ、その後にルテニウムを除去する工程を行うことで、ルテニウムの平坦性低下をより抑制できる。
【0056】
上記還元剤含有処理液が含むことができる界面活性剤としては、ルテニウム、またはルテニウム酸化物に吸着する界面活性剤であればどのようなものを用いてもよく、イオン性界面活性剤であってもよく、非イオン性界面活性剤であってもよい。なかでも、溶媒への溶解性に優れ、濃度調整が容易であるという観点から、界面活性剤はイオン性界面活性剤であることが好ましい。このようなイオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、若しくはリン酸エステル型などのアニオン性界面活性剤、またはアルキルアミン型、第四級アンモニウム塩型などのカチオン性界面活性剤、またはカルボキシベタイン型、イミダゾリン誘導体型、グリシン型、アミンオキシド型などの両性界面活性剤等である。また、還元剤含有処理液が界面活性剤や金属に配位する配位子等の金属保護剤を含む場合、該界面活性剤または該金属に配位する配位子の濃度は、還元剤含有処理液で処理される金属種若しくは金属酸化物種や、該界面活性剤若しくは該金属に配位する配位子の種類、還元剤含有処理液に含まれる溶媒、または処理条件により適宜決定することができるが、例えば、0.001質量ppm~10質量%であれば、金属の平坦性低下をより抑制することができる。
【0057】
上記カチオン性界面活性剤としては、工業的に入手しやすく、還元剤含有処理液中でより安定に存在しやすいという観点から、第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤であることがより好ましい。このような第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤を例示すれば、下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩である。
【0058】
【化1】

(式中、aは、2~20の整数であり、R、R、Rは独立して、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、Xはアニオンである。)
【0059】
上記式(1)における整数aは、メチレン基の数を表しており、整数aが2~20であれば、特に制限されないが、整数aが4~18であることがより好ましく、整数aが6~16であることがさらに好ましい。前述した範囲内のメチレン基を有するアルキルアンモニウム塩であれば、遷移金属表面に吸着し、適切な保護層を形成するため、好適に使用することが出来る。また、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいほど、遷移金属表面に対するアルキルアンモニウム塩のアルキルアンモニウムイオンの吸着量が増加するため、還元剤によるルテニウム酸化物の除去が効率的に起こりにくくなる傾向にある。また、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいと、アルキルアンモニウム塩の水溶性が低下し、処理液中で、パーティクルが発生する原因となり、半導体素子の歩留まりを低下させる要因となる。一方、アルキルアンモニウム塩の整数aが小さいほど、遷移金属表面への吸着量が少なくなり、遷移金属表面に適切な保護層が形成されず、ルテニウムの平坦性低下を抑制する効果が弱くなる。
【0060】
また、上記式(1)におけるR、R、Rは、独立して、水素原子、または炭素数が1~20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R、R、Rは、炭素数が1~20のアルキル基であることが好ましい。さらに、R、R、Rの炭素数は、それぞれ整数aと同じかそれより小さいことが好ましく、R、R、Rのいずれか一つの基が、メチル基であることがより好ましい。R、R、Rのいずれかをメチル基とすることで、遷移金属表面により均一で緻密な保護層が形成されることになり、ルテニウムの平坦性低下をより抑制できる。
【0061】
上記式(1)におけるXはアニオンであり、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、メタン硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、またはトリフルオロ酢酸イオン等である。
【0062】
上記イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩などのカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホこはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩などのスルホン酸型界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩などの硫酸エステル型界面活性剤、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩などのリン酸エステル型界面活性剤、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩などのアルキルアミン塩型界面活性剤、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム塩型界面活性剤、アルキルベタイン、脂肪酸アミドアルキルベタインなどのカルボキシベタイン型界面活性剤、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリン誘導体型界面活性剤、アルキルジエチレントリアミノ酢酸、ジアルキルジエチレントリアミノ酢酸などのグリシン型界面活性剤、アルキルアミンオキシドなどのアミンオキシド型界面活性剤等である。
上記還元剤含有処理液に含まれる配位子としては、ルテニウム、またはルテニウム酸化物に配位する配位子であればどのようなものを用いてもよいが、ルテニウムまたはルテニウム酸化物へ配位しやすく、より安定な錯体を形成するという観点から、ヘテロ原子、すなわち、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、若しくはリン原子を含む配位子であることが好ましい。このような配位子としては、例えば、アミノ基、ホスフィノ基、カルボキシル基、カルボニル基、チオール基を有する配位子や、窒素を含む複素環式化合物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0063】
上記配位子をより具体的に例示すれば、好ましくは、トリエタノールアミン、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリシンなどのアミン類、システイン、メチオニンなどのチオール類、トリブチルホスフィン、テトラメチレンビス(ジフェニルホスフィン)などのホスフィン類、酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、グルコン酸、α-グルコへプトン酸、へプチン酸、フェニル酢酸、フェニルグリコール酸、ベンジル酸、没食子酸、けい皮酸、ナフトエ酸、アニス酸、サリチル酸、クレソチン酸、アクリル酸、安息香酸などのモノカルボン酸またはそのエステル類、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、シュウ酸、シュウ酸ジメチル、グルタル酸、マロン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ジグリコール酸、フタル酸などのジカルボン酸またはそのエステル類、クエン酸に代表されるトリカルボン酸またはそのエステル類、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸に代表されるテトラカルボン酸またはそのエステル類、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸に代表されるヘキサカルボン酸またはそのエステル類、アセト酢酸エチル、ジメチルマロン酸などのカルボニル化合物等を挙げることができ、
より好ましくは、酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、グルコン酸、α-グルコへプトン酸、へプチン酸、フェニル酢酸、フェニルグリコール酸、ベンジル酸、没食子酸、けい皮酸、ナフトエ酸、アニス酸、サリチル酸、クレソチン酸、アクリル酸、安息香酸などのモノカルボン酸またはそのエステル類、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、シュウ酸、シュウ酸ジメチル、グルタル酸、マロン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ジグリコール酸などのジカルボン酸またはそのエステル類、クエン酸に代表されるトリカルボン酸またはそのエステル類、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸に代表されるテトラカルボン酸またはそのエステル類、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸に代表されるヘキサカルボン酸またはそのエステル類、アセト酢酸エチル、ジメチルマロン酸などのカルボニル化合物等を挙げることができ、
さらに好ましくは、シュウ酸、シュウ酸ジメチル、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸、コハク酸、酢酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ジメチルマロン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、クエン酸、マロン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、または2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸等を挙げることができる。
【0064】
また、窒素を含む複素環式化合物とは、窒素を一つ以上含む複素環を有する化合物を指し、好ましくは、ピペリジン化合物、ピリジン化合物、ピペラジン化合物、ピリダジン化合物、ピリミジン化合物、ピラジン化合物、1,2,4-トリアジン化合物、1,3,5-トリアジン化合物、オキサジン化合物、チアジン化合物、シトシン化合物、チミン化合物、ウラシル化合物、ピロリジン化合物、ピロリン化合物、ピロール化合物、ピラゾリジン化合物、イミダゾリジン化合物、イミダゾリン化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾリジンジオン化合物、スクシンイミド化合物、オキサゾリドン化合物、ヒダントイン化合物、インドリン化合物、インドール化合物、インドリジン化合物、インダゾール化合物、アザインダゾール化合物、プリン化合物、ベンゾイソオキサゾール化合物、ベンゾイソチアゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、アデニン化合物、グアニン化合物、カルバゾール化合物、キノリン化合物、キノリジン化合物、キノキサリン化合物、フタラジン化合物、キナゾリン化合物、シンノリン化合物、ナフチリジン化合物、プテリジン化合物、オキサジン化合物、キノリノン化合物、アクリジン化合物、フェナジン化合物、フェノキサジン化合物、フェノチアジン化合物、フェノキサチイン化合物、キヌクリジン化合物、アザアダマンタン化合物、アゼピン化合物、ジアゼピン化合物、などを例示することができ、より好ましくは、ピリジン化合物、ピペラジン化合物、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。窒素を含む複素環式化合物において、異性体が存在する場合は、区別することなく本実施形態の配位子として使用できる。例えば、窒素を含む複素環式化合物がインドール化合物である場合、1H-インドールであってもよいし、2H-インドールであってもよいし、3H-インドールであってもよいし、これらの混合物であってもよい。また、窒素を含む複素環式化合物は任意の官能基で修飾されていてもよく、複数の環が縮合した構造を有していてもよい。窒素を含む複素環式化合物は一種類であってもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。本実施形態の配位子として、窒素を含む複素環式化合物と、窒素を含む複素環式化合物以外の配位子とを組み合わせて用いることもできる。
また、上記の配位子に異性体が存在する場合はそれに限定されない。例えば、乳酸は、D体とL体が存在するが、このような異性体の違いによって配位子が制限されるものではない。
【0065】
上記還元剤含有処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に用いられているその他の添加剤を添加してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、アルカリ、金属防食剤、有機溶媒、フッ素化合物、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
上記還元剤含有処理液には、還元剤の添加に由来して、また、処理液の製造上、金属(または金属イオン、以下、金属イオンの場合も含み金属と記載)が含まれている場合がある。含まれる金属として、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、カドミウム、バリウム、亜鉛、及び鉛、並びにそれらのイオンを挙げることができる。しかし、これらの金属は、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体ウエハに対して悪影響(半導体ウエハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その存在量は少ないことが好ましい。一方、処理液中の金属の含有量としては少ない方がよいが、若干金属が含まれることにより、ルテニウムの除去後の金属表面の平坦性を維持する(表面荒れを防ぐ)ことが可能となる。そのため、金属の含有量としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、カドミウム、バリウム、亜鉛、及び鉛から選択されるいずれか一つの金属が質量基準で0.01ppt以上1ppb以下であることが好ましく、1ppt以上1ppb以下であることがより好ましく、10ppt以上500ppt以下であることがさらに好ましく、100ppt以上200ppt以下であることが最も好ましい。また、還元剤の添加に由来して、有機不純物や無機不純物が含まれている場合がある。含まれる有機不純物として、例えば、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム溶液を用いる場合は、テトラアルキルアンモニウムに由来して、トリメチルアミン、アルキルジメチルアミン等が挙げられる。含まれる無機不純物として、例えば、水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム溶液を用いる場合は、水素化ホウ素化合物に由来して、ホウ酸化合物、ケイ酸塩等が挙げられる。また、ホウ酸化合物には、ホウ酸およびその塩、メタホウ酸およびその塩、四ホウ酸およびその塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの有機不純物及び無機不純物も、パーティクル源となりうることから、その存在量は少ないことが好ましく、質量基準で100ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、100ppb以下であることが最も好ましい。
【0066】
(還元剤含有処理液の製造方法)
本実施形態の還元剤含有処理液の製造方法は特に限定されず、用いる還元剤の種類、溶媒などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、上記還元剤を上記溶媒に溶解させることで製造できる。上記還元剤を上記溶媒に溶解させる方法は特に制限されず、還元剤の性状や溶媒の物性などを考慮して決めればよい。還元剤が固体または液体である場合は、溶媒に添加、混合して溶解すればよく、必要に応じて撹拌、加熱等を行えばよい。また、還元剤の一部が溶解すればよく、懸濁液の状態でもよい。また、還元剤が気体である場合は、該還元剤を溶媒に溶解させることで、本実施形態の還元剤含有処理液を得ることができる。さらに、所望により、従来から半導体用処理液に使用されている添加剤を加えてもよい。
【0067】
還元剤含有処理液中の不純物を除去するために濾過を行うことは、本実施形態の半導体の処理方法として好ましい態様の一つである。濾過方法は特に制限されず、半導体用処理液の濾過方法として広く公知の濾過方法を好適に用いることができる。例えば、減圧濾過や加圧濾過、フィルター濾過などが挙げられる。フィルター濾過を行う場合は、有機高分子性のフィルターを用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂製やフッ素系樹脂製のフィルターである。濾過は製造時に行ってもよいし、半導体ウエハを処理する前に行ってもよい。
【0068】
還元剤含有処理液の製造においては、還元剤含有処理液のパーティクル増加、金属量増加を防ぐため、還元剤含有処理液と接触する面が樹脂またはガラスで形成された容器を使用することが好ましい。このような容器を用いて製造された還元剤含有処理液は、還元剤含有処理液中のパーティクルや金属の含有量が少なく、半導体製造における歩留まり低下の原因となりにくい。このような樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂等が挙げられる。さらに、還元剤含有処理液の保存においても、還元剤含有処理液と接触する面が樹脂である容器で保管することが好ましく、還元剤含有処理液と接触する面が、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂のような有機高分子である容器で保管することがさらに好ましい。このような容器で還元剤含有処理液を保存することで、還元剤含有処理液に含まれる還元剤の分解を防ぎ、安定した保存が可能となるだけでなく、ルテニウム酸化物の還元速度が安定する。また、還元剤含有処理液に含まれる還元剤やその他の成分が、光に対して不安定である場合には、遮光して保存することが好ましい。さらに、必要に応じて、不活性ガス雰囲気中で製造、保管してもよい。
【0069】
(アルカリによるルテニウム酸化物の除去)
ルテニウム酸化物を除去する工程として、アルカリ溶液によりルテニウム酸化物を除去する方法を好適に用いることができる。アルカリ溶液とルテニウム酸化物を接触させることで、ルテニウム酸化物の少なくとも一部をアルカリ溶液中に溶解させ、除去することができる。ルテニウム酸化物を除去することで、ルテニウムを十分な速度でエッチングさせることができ、エッチング後の平坦性低下を抑制できる。
【0070】
本実施形態におけるアルカリ溶液は、アルカリ及び溶媒を含む。本実施形態におけるアルカリは、無機アルカリであっても、有機アルカリであってもよい。無機アルカリとしては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アンモニア、または炭酸アンモニウム、金属アルコキシド等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ金属重炭酸塩は、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素カルシウム等が挙げられる。金属アルコキシドは、例えば、メトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシナトリウム、エトキシカリウム、tert-ブトキシナトリウム等が挙げられる。
【0071】
有機アルカリとしては、例えば、アミン、または水酸化アルキルアンモニウム等が挙げられる。アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン等の3級アミンやピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の芳香族アミンが挙げられる。水酸化アルキルアンモニウムとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン等が挙げられる。
【0072】
これらのアルカリの中でも、低価格であり高純度品が入手しやすいという観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化アルキルアンモニウムが好ましい。さらに、半導体製造で問題となる金属を含まないという観点から、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化アルキルアンモニウム、コリンがさらに好ましい。半導体製造用の高純度品が工業的に容易に入手可能であるという観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム、またはコリンであることが最も好ましい。これらのアルカリは単独で用いられてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0073】
上記アルカリ溶液に用いられる溶媒は、特に制限されることはなく、水や有機溶媒を用いることができる。溶媒は一種類であってもよいし、複数種を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール、あるいはアセトン等のケトン等が挙げられる。
【0074】
本実施形態におけるアルカリ溶液の溶媒として水を用いることは、好ましい態様の一つである。アルカリ溶液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水または超純水が好ましい。
【0075】
上記アルカリ溶液に含まれるアルカリの濃度範囲は、用いるアルカリの種類、ルテニウム酸化物の除去効率、取扱上の安全性を考慮して決定すればよいが、一例を挙げれば0.05mol/L以上15mol/L以下が好ましく、0.1mol/L以上10mol/L以下がより好ましく、0.1mol/L以上5mol/L以下がさらに好ましく、0.1mol/L以上2mol/L以下が特に好ましい。また、アルカリ溶液のpHは、10以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましく、11以上14以下であることが最も好ましい。上記範囲内であれば、ルテニウム酸化物を良好に溶解し、除去することができる。
【0076】
本実施形態におけるアルカリ溶液として、例えば、アルカリ金属水酸化物の溶液を用いる場合においては、ルテニウム酸化物の除去効率および取扱上の安全性を考慮すると、アルカリ金属水酸化物溶液の濃度範囲は、好ましくは0.05mol/L以上5mol/L以下であり、より好ましくは0.1mol/L以上5mol/L以下、最も好ましくは0.1mol/L以上2mol/L以下である。
【0077】
本実施形態におけるアルカリ溶液として、例えば、アンモニア水溶液を用いる場合においては、ルテニウム酸化物の除去効率および取扱上の安全性を考慮すると、アンモニア水溶液の濃度範囲は、好ましくは3mol/L以上15mol/L以下であり、より好ましくは5mol/L以上15mol/L以下、最も好ましくは9mol/L以上15mol/L以下である。
【0078】
本実施形態におけるアルカリ溶液として、例えば、水酸化アルキルアンモニウム水溶液を用いる場合においては、ルテニウム酸化物の除去効率および取扱上の安全性を考慮すると、水酸化アルキルアンモニウム水溶液の濃度範囲は、好ましくは0.05mol/L以上3mol/L以下であり、より好ましくは0.1mol/L以上3mol/L以下、最も好ましくは0.1mol/L以上2mol/L以下である。
【0079】
上記アルカリ溶液によりルテニウム酸化物を除去するときの温度は特に制限されず、用いるアルカリの種類や濃度、ルテニウム酸化物の除去効率、処理の安全性などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、0℃以上90℃以下であればよく、5℃以上60℃以下であることが好ましく、10℃以上50℃以下であることがより好ましい。上記温度範囲であれば、ルテニウム酸化物をアルカリ溶液に溶解させ、除去することができる。
【0080】
上記アルカリ溶液による、ルテニウム酸化物を除去するときの処理時間は特に制限されず、用いるアルカリの種類や濃度、ルテニウム酸化物の除去効率、使用される半導体素子、あるいは、ルテニウム酸化物の厚み等を考慮して適宜選択すればよい。一例を挙げれば、0.1分以上150分以下であればよく、0.1分以上120分以下であることがより好ましく、0.5分以上60分以下であることが最も好ましい。上記時間範囲であれば、ルテニウム酸化物をアルカリ溶液に良好に溶解させ、除去することができる。
【0081】
上記アルカリ溶液による処理後のリンス液としては、特に制限されないが、脱イオン水でリンスするだけでも十分である。
【0082】
上記アルカリ溶液には、所望により本発明を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に使用されている、その他の添加剤を添加してもよい。例えば、その他の添加剤として、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0083】
(アルカリ溶液の製造方法)
本実施形態のアルカリ溶液の製造方法は特に限定されず、用いるアルカリの種類、溶媒などを考慮して決定すればよい。一例をあげれば、上記アルカリを上記溶媒に溶解させることで製造できる。上記アルカリを上記溶媒に溶解させる方法は特に制限されず、アルカリの性状や濃度、溶媒の物性などを考慮して決めればよい。アルカリが固体または液体である場合は、溶媒に添加、混合して溶解すればよく、必要に応じて撹拌、加熱等を行えばよい。また、アルカリが気体である場合は、該アルカリを溶媒に溶解させることで、本実施形態のアルカリ溶液とすることができる。さらに、所望により、従来から半導体用処理液に使用されている添加剤を加えてもよい。
【0084】
アルカリ溶液中の不純物を除去するために濾過を行うことは、本実施形態の処理方法として好ましい態様の一つである。濾過方法は特に制限されず、半導体用処理液の濾過方法として広く公知の濾過方法を好適に用いることができる。例えば、減圧濾過や加圧濾過、フィルター濾過などが挙げられる。フィルター濾過を行う場合は、有機高分子性のフィルターを用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂製やフッ素系樹脂製のフィルターである。濾過は製造時に行ってもよいし、ウエハを処理する前に行ってもよい。
【0085】
アルカリ溶液の製造においては、アルカリ溶液中のパーティクル増加、金属量増加を防ぐため、アルカリ溶液と接触する面が樹脂またはガラスで形成された容器を使用することが好ましい。このような容器を用いて製造されたアルカリ溶液は、アルカリ溶液中のパーティクルや金属の含有量が少なく、半導体製造における歩留まり低下の原因となりにくい。このような樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂が挙げられる。さらに、アルカリ溶液の保存においても、アルカリ溶液と接触する面が、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂のような有機高分子である容器で保管することがさらに好ましい。このような容器でアルカリ溶液を保存することで、アルカリ溶液に含まれるアルカリの分解を防ぎ、安定した保存が可能となるだけでなく、ルテニウム酸化物の溶解速度が安定する。また、アルカリ溶液に含まれるアルカリやその他の成分が、光に対して不安定である場合には、遮光して保存することが好ましい。さらに、必要に応じて、不活性ガス雰囲気中で製造、保管してもよい。
【0086】
(スパッタによるルテニウム酸化物の除去)
ルテニウム酸化物を除去する工程において、ルテニウム酸化物を除去するためにスパッタ処理を好適に用いることができる。スパッタ処理を行うことで、ルテニウム酸化物の少なくとも一部を除去することができる。ルテニウム酸化物を除去することで、ルテニウムを十分な速度でエッチングさせることができ、エッチング後の平坦性低下を抑制できる。
【0087】
スパッタに用いるガスの種類は特に制限さることはなく、ルテニウム酸化物の存在部位、除去速度、ウエハに存在する他の化学種との選択比、コストなどを考慮して決定すればよい。スパッタ処理は反応性スパッタであってもよい。反応性スパッタを行う場合は、スパッタに用いるガスとして、酸素やハロゲン等を含むガスを用いることができるが、ルテニウム酸化物と反応してこれを除去できるものであれば、ガス種は制限されない。該ハロゲンガスとしては、フッ素や塩素、臭素を好適に用いることができる。
【0088】
不活性ガスによるスパッタ処理でルテニウム酸化物を除去することは、本実施形態を実施する好ましい態様の一つである。このような不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどが挙げられる。これらの不活性ガスは単独で使用されてもよいし、複数用いてもよい。不活性ガスを用いることで、ウエハに含まれるルテニウム及びその他の金属、酸化物、窒化物、ケイ素化物等への影響を少なくすることができる。具体的には、これらの化学種の酸化状態、結合状態、存在比等が、スパッタ処理前後で大きく変化することを抑制できる。これにより、半導体素子の物性や電気特性等が大きく変化することを防ぐことができる。ルテニウム酸化物の除去速度が高く、効率よくルテニウム酸化物を除去できることから、アルゴンガスを用いたスパッタであることがより好ましい。
【0089】
上記スパッタにおいて、加速電圧、真空度、ガス濃度、スパッタ時間、ウエハ温度などのスパッタ条件は特に制限されず、ルテニウム酸化物の除去効率、スパッタ装置の特性、生産性、コスト等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、加速電圧の値としては、好ましくは0.5kV~3kVである。加速電圧が大きすぎるとイオン打ち込み効果が大きくなることを考慮して、使用する装置にもよるが、0.5~2kVがより好ましく、1~2kVが最も好ましい。上記範囲内であれば、ルテニウム酸化物を除去することができる。
上記スパッタ処理に要する時間は、特に制限されず、ルテニウム酸化物の一部または全部が除去されるまで実施することができる。スパッタ速度についても特に制限されないが、例えば0.1nm/min以上、5nm/min以下を挙げることができ、0.25nm/min以上、3nm/min以下が好ましく、0.5nm/min以上、3nm/min以下がより好ましい。
【0090】
上記のスパッタを用いてルテニウム酸化物を除去する工程を経ることで、より速く安定した速度でルテニウムを除去することが可能となるだけでなく、ルテニウムの平坦性低下を抑制できる。そのため、本発明のルテニウム酸化物を除去する工程は、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる工程である。
【0091】
例えば、本実施形態におけるルテニウム酸化物を除去する工程は、ルテニウム膜をCMP処理した際に生じたルテニウム酸化物の除去や、ルテニウム表面の自然酸化膜除去を目的として、ルテニウムを除去する工程の前に実施することができる。あるいは、ルテニウムを酸化剤で除去した際に生じたルテニウム酸化物の除去や、ルテニウムをエッチングした際に生じたルテニウム酸化物を除去する目的で、ルテニウムを除去する工程の後に実施することもできる。ルテニウム酸化物を除去する工程は一度であってもよいし、複数回実施してもよい。複数回実施する場合、還元剤含有処理液を用いる方法、アルカリ溶液を用いる方法、スパッタを用いる方法のいずれであっても、任意の回数、任意の順番で用いることができる。
【0092】
<ルテニウムを除去する工程>
本実施形態の半導体の処理方法は、ルテニウムを除去する工程を含む。ルテニウムを除去する方法は特に制限されず、広く公知のルテニウムの除去方法を用いることができる。例えば、ウェットエッチングやドライエッチングを好適に利用できる。
【0093】
ルテニウムを除去する工程をウェットエッチングにより行うことは、本実施形態の好ましい態様である。前記、ルテニウム酸化物を除去する工程と、ウェットエッチングによりルテニウムを除去する工程の組み合わせ、また、それらの工程を複数回行うことで、ルテニウムを十分な速度でエッチングすることができ、エッチング後のルテニウム表面の平坦性低下を防ぐことができる。ルテニウムを除去する工程がウェットエッチングである場合について、以下に詳述する。
【0094】
ルテニウムのウェットエッチングに用いられる処理液としては、ルテニウムの処理液として公知の溶液を何ら制限なく用いることができる。例えば、酸化剤と溶媒を含む処理液を用いて、ルテニウムのウェットエッチングを行うことができる。このような処理液の一例を挙げれば、酸化剤として、ハロゲン酸素酸、過マンガン酸およびこれらの塩またはイオン、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を含む溶液である。上記ハロゲン酸素酸は、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸(オルト過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸)等である。ルテニウムのエッチング速度が速く、表面の平坦性低下を生じにくいことから、酸化剤として、ハロゲン酸素酸およびこれらの塩またはイオンを含んでいることが好ましい。なかでもエッチング速度を調整しやすいという観点から、酸化剤として、次亜塩素酸、過ヨウ素酸(オルト過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸)、およびこれらの塩であることがより好ましく、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩であることが最も好ましい。
【0095】
酸化剤の濃度は、酸化剤の種類、ルテニウムの膜厚、エッチング条件(処理温度、処理時間、pHなど)等を考慮して決定すればよいが、好ましくは0.0001質量%以上20質量%以下である。この範囲内であれば、ルテニウムを十分に溶解し、エッチングを行い、平坦な表面を得ることが可能である。
【0096】
本実施形態の処理液は、溶媒を含む。溶媒は、特に制限されることはなく、水や有機溶媒を用いることができる。溶媒は一種類であってもよいし、複数種を含んでいてもよい。処理液に酸化剤が含まれる場合は、酸化剤との反応しにくい溶媒であることが好ましいが、反応性が低い溶媒であればどのような溶媒であってもよい。このような有機溶媒としては、例えば、ハロゲン化アルキル類、エーテル類、アセトニトリル、スルホラン等が挙げられる。
【0097】
本実施形態の処理液の溶媒として水を用いることは、好ましい態様の一つである。本実施形態の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水または超純水が好ましい。
【0098】
本実施形態の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用処理液に使用されている添加剤を添加してもよい。例えば、その他の添加剤として、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0099】
本実施形態の処理方法では、ルテニウム酸化物を除去する工程と、ルテニウムを除去する工程を組み合わせて行う。該ルテニウム酸化物を除去する工程は複数回行ってもよいし、該ルテニウムを除去する工程についても、複数回行ってもよい。また、ルテニウム酸化物を除去する工程とルテニウムを除去する工程は、順不動で行ってもよい。具体的には、ルテニウム酸化物を除去する工程を最初に行い、その後に、ルテニウムを除去する工程またはさらにルテニウム酸化物を除去する工程を行ってもよく、ルテニウムを除去する工程を最初に行い、その後に、ルテニウム酸化物を除去する工程を行ってもよい。ルテニウム酸化物を除去する工程の回数は、例えば1回、2回、3回または4回以上を挙げることができ、1回、2回、または3回であることが好ましい。ルテニウムを除去する工程の回数は、例えば1回、2回、3回または4回以上を挙げることができ、1回、2回、または3回であることが好ましい。これらの工程を行うことにより、ルテニウムを十分な速度でエッチングすることができ、さらに、エッチング後のルテニウムの平坦性低下を抑制できる。ルテニウム酸化物を除去する工程を上記還元剤含有処理液または上記アルカリ溶液を用いて行う場合、その処理時間は上記で説明したとおりである。また、ルテニウムを除去する工程をウェットエッチングで行う場合、そのウェットエッチングは、通常0.1分以上、30分以下行い、0.1分以上、10分以下行うことが好ましい。
【0100】
以下、ルテニウムのウェットエッチングに用いられる処理液として、次亜塩素酸イオンを含む溶液を用いる場合を例に、具体的に説明する。次亜塩素酸イオンを含む溶液は、次亜塩素酸イオン及び溶媒を含む処理液である。以下、順を追って説明する。
【0101】
次亜塩素酸イオンを含む溶液に含まれる次亜塩素酸イオンの生成方法は、特に制限されることはなく、どのような方法で生成させた次亜塩素酸イオンであっても、本実施形態の処理液として好適に使用できる。次亜塩素酸イオンの生成方法を例示すれば、次亜塩素酸またはその塩を溶媒に添加する方法が挙げられる。該次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸である。なかでも、半導体製造において問題となる金属を含まないという観点から、次亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムまたは次亜塩素酸を好適に使用できる。高濃度でも安定に存在できることから、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムがより好適である。さらに、塩素ガスを溶媒に吹き込むことにより、次亜塩素酸イオンを含む溶液を得ることができる。この際、溶媒として水や水酸化物イオンを含む溶液を用いることができる。例えば、塩素ガスを、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液に吹き込むことで、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液を容易に得ることができる。
【0102】
次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムとしては、アルキル基1つ当たりの炭素数が1~20であるテトラアルキルアンモニウムイオンを含む次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが好適である。具体的には、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラプロピルアンモニウム、次亜塩素酸テトラブチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラペンチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラヘキシルアンモニウム等である。単位重量当たりの次亜塩素酸イオンが多いという観点から、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウムがさらに好適である。次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムは、高純度品を容易に入手でき、安定性が比較的高いことから、最も好適である。次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムは塩として溶媒に添加してもよいし、塩素ガスを水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に吹き込むことで生成させてもよい。
【0103】
本実施形態の処理液において、次亜塩素酸イオンの濃度範囲は、0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この範囲内であれば、ルテニウムを良好に溶解することが可能である。ルテニウムを効率よく溶解し、除去し、エッチング後のルテニウム表面の平坦性低下を防ぐ観点から、次亜塩素酸イオンの濃度は、0.01質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上4質量%以下であることが最も好ましい。
【0104】
本実施形態の処理液において、次亜塩素酸イオン、アルキルアンモニウムイオン、アルカリ成分、および、必要に応じて加えられてもよいその他の添加剤以外の残分は、溶媒である。次亜塩素酸イオン、アルキルアンモニウムイオン、アルカリ成分、およびその他の添加剤を混合後、合計100質量%となるように、残分を溶媒で調整する。
【0105】
本発明の別の実施形態は、ルテニウムを含む半導体の処理方法を含む、ルテニウムを含む半導体の製造方法である。
本態様の製造方法は、上述した処理方法のほか、ウエハ作製工程、酸化膜形成工程、トランジスタ形成工程、配線形成工程、CMP工程から選択される1以上の工程など、半導体の製造方法に用いられる公知の工程を含んでもよい。
【0106】
<処理液の製造方法>
本実施形態のルテニウムの処理液の製造方法は特に限定されず、ルテニウムの処理液の製造方法として公知の方法を何ら制限なく利用できる。例えば、上記<ルテニウムを除去する工程>で挙げた酸化剤を、上記溶媒に溶解させる方法を好適に利用できる。該酸化剤を該溶媒に溶解させる方法は特に制限されず、酸化剤の性状や溶媒の物性などを考慮して好ましい方法を選択すればよい。酸化剤が固体または液体である場合は、溶媒に添加、混合して溶解すればよく、必要に応じて撹拌、加熱等を行えばよい。また、酸化剤が気体である場合は、該酸化剤を溶媒に通じて溶解および/または反応させることで、本発明のルテニウムの処理液とすることができる。さらに、所望により、従来から半導体用処理液に使用されている添加剤を加えてもよい。
【0107】
ルテニウムの処理液の製造においては、処理液中のパーティクル増加、金属量増加を防ぐため、処理液と接触する面が樹脂またはガラスで形成された容器を使用することが好ましい。このような容器を用いて製造されたルテニウムの処理液は、処理液中のパーティクルや金属の含有量が少なく、半導体製造における歩留まり低下の原因となりにくい。このような樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂が挙げられる。さらに、処理液の保存においても、処理液と接触する面が樹脂またはガラスである容器で保管することが好ましく、処理液と接触する面がポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂である容器で保管することがさらに好ましい。このような容器で処理液を保存することで、処理液に含まれる酸化剤の分解を防ぎ、安定した保存が可能となるだけでなく、ルテニウムのエッチング速度が安定する。
上記のように、処理液を製造した後、該処理液で基盤に堆積したルテニウム系金属膜および/またはルテニウム合金膜をエッチングできる。
【実施例
【0108】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0109】
(pH測定方法)
実施例及び比較例で調製した測定試料液10mLを、卓上型pHメーター(LAQUAF―73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液を調製し、25℃で安定した後に、実施した。
【0110】
(遷移金属の成膜および膜厚変化量)
実施例および比較例で使用した遷移金属膜は次のように成膜した。ルテニウム膜は、シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いてルテニウムを1200Å(±10%)成膜した。モリブデン膜は、ルテニウム膜と同様に、シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いて1200Åのモリブデンを成膜する事で得た。タングステン膜は、同様に熱酸化膜を形成し、CVD法により8000Åのタングステンを製膜する事で得た。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理前の遷移金属膜厚とした。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後の遷移金属膜厚とした。エッチング処理後の遷移金属膜厚とエッチング処理前の遷移金属膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
【0111】
(遷移金属のエッチング速度の算出方法)
実施例及び比較例で調製した処理液60mLを、蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に準備した。10×20mmとした各サンプル片を、処理液中に25℃で0.5分から2分間の間の所定の時間浸漬して遷移金属のエッチング処理を行った。
エッチング処理前後の膜厚変化量を、浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出し、本発明におけるエッチング速度として評価した。また、処理前後の膜厚変化量が5Å未満である場合は、エッチングされていないものとした。
【0112】
(遷移金属酸化物の確認方法)
遷移金属酸化物除去前後のルテニウム酸化物の有無は、X線光電子分光装置(アルバック・ファイ製、ESCA5701ci/MC)を用いて確認した。X線源を単色化Al-Kα、アパーチャー径をφ800μm、光電子取出し角を45°として測定を行い、Ru-3d及びO-1sのピーク解析を行い、ルテニウム酸化物の有無を判断した。また、ルテニウム酸化物の膜厚は、X線光電子分光装置を用いた深さ方向の測定(depth profile)により求めた。
【0113】
(平坦性の評価方法)
サンプル片をエッチングした後に、サンプル片表面を電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7800F Prime)を用いて、加速電圧10kV、検出器をUEDの条件にて観察した。この際に表面の荒れ具合に応じて、下記の基準で評価した。
A:表面荒れは見られない
B:表面荒れが若干見られる
C:表面全体に荒れが見られるが、荒れが浅い
D:表面全体に荒れが見られ、かつ荒れが深い
【0114】
<実施例1>
(遷移金属酸化物除去およびエッチング対象のサンプルの準備)
上記(遷移金属の成膜および膜厚変化量)に記載した方法でルテニウム膜を成膜し、10×20mmにカットしたサンプル片を評価に用いた。ルテニウム酸化物を除去する前の、ルテニウム膜上のルテニウム酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行った。このときの、ルテニウム酸化物の厚みは約1nmだった。
【0115】
(還元剤含有処理液による処理)
蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成製)0.6g、超純水59.4gを混合して、1.0質量%の還元剤含有処理液を得た。このときのpHは10.1であった。還元剤含有処理液を調製後すぐに、10×20mmとしたサンプル片を、25℃で1分間浸漬してルテニウム酸化物の除去を行った。除去後のルテニウム膜上のルテニウム酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行ったところ、ルテニウム酸化物は確認されなかった。
【0116】
(処理液の製造)
2Lのガラス製三ツ口フラスコ(コスモスビード社製)に25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液209g、超純水791gを混合して、5.2質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。このときのpHは13.8であった。
次いで、三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一つの開口部に塩素ガスボンベ、および窒素ガスボンベに接続され、任意で塩素ガス/窒素ガスの切換えが可能な状態にしたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)の先端を該溶液底部に浸漬させ、残りの一つの開口部は5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で満たしたガス洗浄瓶(AsOne社製、ガス洗浄瓶、型番2450/500)に接続した。次に、二酸化炭素濃度が1ppm未満の窒素ガスをPFA製チューブから、0.289Pa・m/秒(0℃換算時)で20分間流すことで気相部の二酸化炭素を追いだした。この時、気相部の二酸化炭素濃度は、1ppm以下であった。
その後、マグネットスターラー(AsOne社製、C-MAG HS10)を三ツ口フラスコ下部に設置して300rpmで回転、撹拌し、三ツ口フラスコ外周部を氷水で冷却しながら、塩素ガス(フジオックス社製、仕様純度99.4%)を0.059Pa・m/秒(0℃換算時)で180分間、供給し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液(酸化剤;3.51質量%相当、0.28mol/L)と水酸化テトラメチルアンモニウム(0.09質量%相当、0.0097mol/L)の混合溶液を得た。このときのpHは12であった。
次いで、pH調整工程として、該処理液に、pHが9.5になるまで5%塩酸水溶液を添加し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液(酸化剤;3.51質量%相当)と水酸化テトラメチルアンモニウム(0.0005質量%相当)の混合溶液を処理液として得た。
【0117】
(評価)
ルテニウム酸化物を除去したサンプル片を、超純水にて洗浄後、製造した直後の処理液を用いて、表面荒れ(平坦性)及びルテニウムのエッチング速度を評価した。ルテニウムのエッチング速度の評価は、上記(遷移金属のエッチング速度の算出方法)により行った。表面荒れ(平坦性)の評価は、上記(平坦性の評価方法)により行った。
【0118】
<実施例2~12>
実施例2~12は、還元剤種類、還元剤濃度が表1に示した組成となるように還元剤含有処理液を調製し、実施例1と同様の方法でルテニウム酸化物の除去を実施し、実施例1と同様の方法でエッチングして、評価を行った。
【0119】
<比較例1>
比較例1は、ルテニウム酸化物の除去を実施していないこと以外は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0120】
【表1】
【0121】
<実施例13~14>
実施例13~14は、還元剤種類、還元剤濃度が表2に示した組成となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で還元剤含有処理液による処理を実施した後、以下の方法で処理液を調製した。蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、オルト過ヨウ素酸二水和物(和光純薬工業社製、和光特級、98.5wt%)1.5g、超純水57.0gを混合して、5.0質量%の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0122】
<比較例2>
比較例2は、還元剤含有処理液による処理(ルテニウム酸化物の除去)を実施していないこと以外は、実施例14と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0123】
【表2】
【0124】
<実施例15>
上記(遷移金属の成膜および膜厚変化量)に記載した方法でモリブデン膜を成膜し、10×20mmにカットしたサンプル片を評価に用いた。モリブデン酸化物を除去する前の、モリブデン膜上のモリブデン酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行った。このときの、モリブデン酸化物の厚みは約1.5nmだった。
上記の操作によって、モリブデン膜(サンプル片)を用意し、実施例1と同様の方法で処理液を調製して評価を行った。
<実施例16>
上記(遷移金属の成膜および膜厚変化量)に記載した方法でタングステン膜を成膜し、10×20mmにカットしたサンプル片を評価に用いた。タングステン酸化物を除去する前の、タングステン膜上のタングステン酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行った。このときの、タングステン酸化物の厚みは約1.3nmだった。
上記の操作によって、タングステン膜(サンプル片)を用意し、実施例1と同様の方法で処理液を調製して評価を行った。
<実施例17~18>
実施例17および18は、用いるサンプル片が表3に示したものとなるように、実施例15および16と同様の方法でサンプル片を用意し、実施例10と同様の方法で処理液を調製して評価を行った。
<比較例3>
比較例3は、モリブデン酸化物の除去を実施していないこと以外は、実施例15と同様の方法で処理液を調製し、実施例15と同様に準備したモリブデン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
<比較例4>
比較例4は、タングステン酸化物の除去を実施していないこと以外は、実施例16と同様の方法で処理液を調製し、実施例16と同様に準備したタングステン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【表3】
【0125】
<実施例19>
(アルカリ処理)
0.1mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業製)60mLを、蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、準備した。次いで、10×20mmとしたサンプル片を、25℃で30分間浸漬してルテニウム酸化物の溶解処理を行った。除去後のルテニウム膜上のルテニウム酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行ったところ、ルテニウム酸化物は確認されなかった。
上記の操作によってアルカリで処理した後、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0126】
<実施例20~27>
実施例20~27は、アルカリの種類、アルカリの濃度が表4に示した組成となるように、実施例19と同様の方法でアルカリ処理を実施し、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0127】
【表4】
【0128】
<実施例28>
(スパッタ処理)
10×20mmとしたサンプル片を、イオン銃(Physical Electronics社製、Differenial Ion Gun 04-303A)を用いて、不活性ガスをアルゴンガス、加速電圧を1kV、RasterがX=4、Y=4の条件でスパッタ速度0.93nm/minのもと、スパッタ処理を行い、ルテニウム酸化物の除去処理を行った。除去後のルテニウム膜上のルテニウム酸化物の確認は、上記(遷移金属酸化物の確認方法)で行ったところ、ルテニウム酸化物は確認されなかった。
上記の操作によってスパッタで処理した後、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0129】
<実施例29~31>
実施例29~31は、スパッタ条件が表5になるようにした以外は、実施例28と同様の方法でスパッタして、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0130】
【表5】
【0131】
<実施例32>
(二酸化ルテニウムの成膜および膜厚変化量)
シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いて二酸化ルテニウムを1000Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ-GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理前の二酸化ルテニウム膜厚とした。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後の二酸化ルテニウム膜厚とした。エッチング処理後の二酸化ルテニウム膜厚とエッチング処理前の二酸化ルテニウム膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
(還元剤含有処理液による処理)
蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成製)0.6g、超純水59.4gを混合して、1.0質量%の還元剤含有処理液を得た。このときのpHは10.1であった。調製後すぐに、10×20mmとしたサンプル片を、25℃で3分間浸漬して二酸化ルテニウム膜の還元剤含有処理液による処理を行った。上記(遷移金属酸化物の確認方法)でルテニウム酸化物の確認を行ったところ、二酸化ルテニウム膜の表面の一部がルテニウムに還元されていることを確認した。
(評価)
実施例1と同様の方法で調製した処理液60mLを、蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に準備した。10×20mmとしたサンプル片を、処理液中に25℃で1分間浸漬して、還元処理により生じたルテニウムのエッチング処理を行い、評価を行った。
(二酸化ルテニウムのエッチング速度の算出方法)
エッチング処理前後の膜厚変化量を、浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出し、実施例32におけるエッチング速度として評価した。
【0132】
<比較例5>
還元剤含有処理液による処理(ルテニウム酸化物の除去)を行わないこと以外は、実施例32と同様にして、二酸化ルテニウム膜のエッチング処理を行い、実施例32と同様に評価を行った。
【0133】
【表6】
【0134】
<実施例33~38>
実施例33~38は、表7に示した溶媒を用いて還元剤含有処理液を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法でルテニウム酸化物の除去を実施し、実施例1と同様の方法でエッチングして、評価を行った。
【0135】
【表7】
【0136】
<実施例39>
実施例39は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて、実施例1と同様に1分間エッチングして評価を行った。次いで、実施例1と同様の方法で還元剤含有処理液を調製し、調製後すぐに、ルテニウムをエッチングしたサンプル片を、25℃で1分間浸漬してルテニウム酸化物の除去を行った。ルテニウム酸化物を除去したサンプル片を、超純水にて洗浄後、実施例1と同様の方法で製造した処理液を用いて、実施例1と同様の方法で1分間エッチングして評価を行った。
<実施例40~49>
実施例40~49は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて、表8の(1)に示す時間だけエッチングして評価を行った。次いで、表8に示す還元剤を用いて還元剤含有処理液を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、表8の(2)に示す時間だけ還元処理を行って、ルテニウム酸化物の除去を実施した。ルテニウム酸化物を除去したサンプル片を超純水にて洗浄後、実施例1と同様の方法で製造した処理液を用いて、表8の(3)に示す時間だけエッチングして評価を行った。次いで、表8に示す還元剤を用いて還元剤含有処理液を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、表8の(4)に示す時間だけ還元処理を行って、ルテニウム酸化物の除去を実施した。テニウム酸化物を除去したサンプル片を超純水にて洗浄後、実施例1と同様の方法で製造した処理液を用いて、表8の(5)に示す時間だけエッチングして評価を行った。
<比較例6>
比較例6は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いた。ルテニウム酸化物の除去は行わないこと以外は、実施例1と同様の方法で、2分間エッチングして評価を行った。
<比較例7>
比較例7は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いた。ルテニウム酸化物の除去は行わないこと以外は実施例1と同様の方法で、1分間エッチングして評価を行った。次いで、実施例1と同様の方法で製造した処理液を用いて、1分間再度エッチングして評価を行った。
<比較例8>
比較例8は、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いた。ルテニウム酸化物の除去は行わないこと以外は、実施例1と同様の方法で、5分間エッチングして評価を行った。
<比較例9>
比較例9は、実施例1と同様の方法で還元剤含有処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いた。ルテニウムのエッチングを行わないこと以外は、実施例1と同様の方法で、ルテニウム酸化物の除去を実施し、評価を行った。
【0137】
【表8】