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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ジルコニア焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20230905BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20230905BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20230905BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20230905BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C04B35/488 500
C01G25/02
A44C27/00
A44C5/00 502D
A44C5/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019058601
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2019182740
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018069383
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永山 仁士
(72)【発明者】
【氏名】船越 肇
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 浩之
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004090(WO,A1)
【文献】特開昭63-185855(JP,A)
【文献】特開2016-216289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/48-35/493
C01G 25/02
A44C 1/00-3/00
A44C 5/00-5/24
A44C 7/00-27/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、コバルト及びマンガンを含有し、残部がイットリア含有ジルコニアからなり、該アルミニウムの含有量が酸化物換算で5.0重量%以上30.0重量%以下、該コバルトの含有量が酸化物換算で0.1重量%以上2.0重量%以下、及び、該マンガンの含有量が酸化物換算で0.5重量%以上7.0重量%以下であり、L表色系における明度L、色相a及び色相bが、以下を満たすことを特徴とするジルコニア焼結体。
明度L:60以下
色相a:-1.5≦a≦1.5、及び、
色相b:-2.0≦b≦2.0
【請求項2】
前記イットリア含有ジルコニアのイットリア含有量は、2.0mol%以上6.0mol%未満である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
【請求項3】
アルミニウム酸化物、並びに、アルミニウム、コバルト及びマンガンを含みスピネル構造を有する複合酸化物を含む請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
【請求項4】
酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物を成形する成形工程、及び、該成形工程で得られた成形体を1350℃以上1550℃以下で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項5】
酸化物換算で、アルミニウムを10重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はジルコニア焼結体に関する。より詳しくは、本開示は重厚な印象を与える灰色を呈する、ジルコニア焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ含有量が1重量%程度のジルコニア焼結体と比べ、アルミナ含有量の多いジルコニア焼結体は機械特性に優れることが知られている。多量にアルミナを含有するジルコニア焼結体は白色を呈するため、ランタノイド系希土類酸化物や遷移金属などの着色剤を含有させることによる焼結体の着色が検討されている(例えば、特許文献1乃至3)。汎用性が高い色調であるため、灰色を呈するジルコニア焼結体が検討されている。
【0003】
これまで、アルミナ含有量の多いジルコニア焼結体を灰色に着色するため、例えば、コバルト及びニッケルを固溶したジルコンを着色剤として含有するジルコニア焼結体(特許文献4)、0.01重量%以上0.5重量%以下のコバルトアルミネートを着色剤として含有するジルコニア焼結体(特許文献5)、アルミナ含有量が5.0重量%以上30.0重量%以下であり、コバルト、亜鉛及び鉄を含むジルコニア焼結体(特許文献6)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-501692号公報
【文献】特開2004-059374号公報
【文献】特開2005-306678号公報
【文献】特開2011-020879号公報
【文献】特開2013-126933号公報
【文献】特開2017-160108号公報
【文献】特開2017-160109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一定量を超えるアルミナは、焼結体中に結晶粒子として存在し、これは白色を呈する着色剤として機能する。そのため、アルミナ含有量の多いジルコニア焼結体の色調は白味がかり明るくなる傾向がある。アルミナ含有量が1重量%程度である場合ジルコニア焼結体は濃い灰色を呈する(特許文献7)。これに対し、アルミナ含有量が5重量%以上など、アルミナ含有量が多いジルコニア焼結体は着色剤を含むにもかかわらず、明るい灰色を呈する(特許文献4乃至6)。重厚な印象を与えることから明るさを抑えた灰色は装飾用途で求められているが、これまで報告された灰色を呈するジルコニア焼結体は、アルミナ含有量の少ないものだけであった。
【0006】
これらの課題に鑑み、本開示は、アルミナを多量に含むにも関わらず、重厚な印象を与える灰色を呈するジルコニア焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、灰色を呈するジルコニア焼結体について検討した。その結果、ある限定された組成を有するジルコニア焼結体が、アルミナを多量に含有するにも関わらず、重厚な印象を与える灰色を呈することを見出した。さらに、このようなジルコニア焼結体は、その製造時の焼結温度の変動など、繰返し製造する場合であっても同様な色調の焼結体が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] アルミニウム、コバルト及びマンガンを含有し、残部がイットリア含有ジルコニアからなり、該アルミニウムの含有量が酸化物換算で5.0重量%以上30.0重量%以下、該コバルトの含有量が酸化物換算で0.1重量%以上2.0重量%以下、及び、該マンガンの含有量が酸化物換算で0.5重量%以上7.0重量%以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
[2] 前記イットリア含有ジルコニアのイットリア含有量は、2.0mol%以上6.0mol%未満である上記[1]に記載のジルコニア焼結体。
[3] アルミニウム酸化物、並びに、アルミニウム、コバルト及びマンガンを含みスピネル構造を有する複合酸化物を含む上記[1]又は[2]に記載のジルコニア焼結体。
[4] L表色系における明度L、色相a及び色相bが、以下を満たす上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体。
明度L:60以下
色相a:-1.5≦a≦1.5、及び、
色相b:-2.0≦b≦2.0
【0009】
[5] 酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物を成形する成形工程、及び、該成形工程で得られた成形体を1350℃以上1550℃以下で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[6] 酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、アルミナを多量に含むにも関わらず、重厚な印象を与える灰色を呈するジルコニア焼結体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例3の焼結体のEPMA組成分析結果 (a)Alマッピング、(b)Coマッピング、(c)Mnマッピング (d)Zrマッピング
図2】実施例3の焼結体の元素分析結果
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係るジルコニア焼結体について、その実施形態の一例を示し説明する。
【0013】
本実施形態のジルコニア焼結体(以下、「本実施形態の焼結体」ともいう。)は、イットリア含有ジルコニアを主相(マトリックス)とする。イットリアはジルコニアの色調へほとんど影響することなく安定化剤として機能する。イットリア含有ジルコニアのイットリア含有量は、2.0mol%以上6.0mol%未満であることが好ましく、2.0mol%以上5.0mol%以下であることがより好ましく、2.6mol%以上3.4mol%以下であることが更に好ましい。
【0014】
イットリア含有量は、ジルコニア(ZrO)及びイットリア(Y)の合計に対する、イットリアのモル割合(mol%)である。
【0015】
アルミニウムの含有量は5.0重量%以上30.0重量%以下であり、好ましくは8.0重量%以上30.0重量%以下、より好ましくは10.0重量%以上25.0重量%以下、更に好ましくは11.0重量%以上25.0重量%以下、更により好ましくは13.0重量%以上23.0重量%以下である。アルミニウムの含有量が上記の範囲であることで、焼結体が少なくともアルミナ(Al)の結晶粒子を含む。
【0016】
コバルトの含有量は0.1重量%以上2.0重量%以下であり、好ましくは0.2重量%以上1.8重量%以下である。
【0017】
マンガンの含有量は0.5重量%以上7.0重量%以下であり、好ましくは0.8重量%以上6.0重量%以下である。
【0018】
アルミニウム、コバルト及びマンガンの各元素の含有量は、それぞれ、焼結体重量に対する各成分の酸化物換算重量の割合(重量%)である。アルミウム、コバルト及びマンガンの酸化物換算は、それぞれ、Al、Co及びMnである。
【0019】
イットリア含有ジルコニアの含有量は、アルミニウム、コバルト及びマンガンの残部であればよく、例えば、69.0重量%以上94.4重量%以下である。
【0020】
焼結体は、アルミニウム、コバルト及びマンガンを、それぞれ、アルミニウム酸化物、コバルト酸化物及びマンガン酸化物、として含有することが挙げられる。アルミニウム酸化物はアルミナ(Al)が挙げられる。コバルト酸化物は酸化コバルト(II)(CoO)又は酸化コバルト(III)(Co)の少なくともいずれかが挙げられる。マンガン酸化物は酸化マンガン(II)(MnO)、酸化マンガン(III)(Mn)及び酸化マンガン(IV)(MnO)の群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。
【0021】
焼結体は、好ましくはアルミニウム、コバルト及びマンガンを含む複合酸化物、より好ましくはアルミニウム、コバルト及びマンガンを含みスピネル構造を有する複合酸化物を含有すること、更に好ましくはマンガンが置換したコバルトアルミネートを含有すること、更により好ましくはCo(Al1-xMn、(Co1-xMn)(Al1-yMn及び(Co1-xMn)Alの群から選ばれる少なくとも1つで表される複合酸化物(x,yはそれぞれ0以上1未満)を含有すること、が挙げられる。これにより、例えば焼結炉の温度ムラなど、本実施形態の焼結体を製造する際の焼結温度に変化が生じた場合であっても、その色調の変化が目視では確認できないほど小さくなる。
【0022】
焼結体は、アルミニウム、コバルト及びマンガンの一部が、それぞれ、イットリア含有ジルコニアに固溶していてもよい。
【0023】
本実施形態の焼結体は、少なくとも、アルミニウム酸化物、並びに、アルミニウム、コバルト及びマンガンを含みスピネル構造を有する複合酸化物(以下、「スピネル酸化物」ともいう。)を含有することが好ましく、ジルコニアの結晶粒子、アルミニウム酸化物の結晶粒子、及び、スピネル酸化物の結晶粒子を含有することがより好ましい。これにより、ジルコニアが有する高靱性化機能に加え、結晶粒子間の界面も高靱性化する傾向があり、焼結体の靱性がより高くなることが期待できる。
【0024】
本実施形態の焼結体は色調に影響を与えない程度であれば不純物を含んでいてもよい。しかしながら、焼結体の色調に影響を与える不純物を含まないことが好ましく、例えばスズ、亜鉛、鉛、クロム及びカドミウムの群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、それぞれ、500ppm以下であること、好ましくは100ppm以下であることが挙げられる。
【0025】
本実施形態の焼結体の平均結晶粒径は2μm以下、更には1μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径が2μm以下であることで、装飾品等の部材として使用するのに十分な強度となる。
【0026】
本実施形態において、ジルコニアの平均結晶粒径は、本実施形態の焼結体の走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とする。)観察図で観察されるジルコニアの結晶粒子の無作為に200個以上の抽出し、抽出した結晶粒子の結晶径をインターセプト法で求めた平均値として求めることができる。
【0027】
焼結体は、最大粒径が30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の焼結体のジルコニアの結晶構造は正方晶を含み、結晶構造の主相が正方晶であることが好ましい。また、本実施形態の焼結体のジルコニア結晶構造は、正方晶及び立方晶の混晶であってもよい。正方晶は光学的に異方性を有する結晶構造である。正方晶を含むことによって光が反射されやすくなるため、焼結体の色調が透明感を有さなくなる。これに加え、アルミニウム酸化物の結晶粒子の存在により、焼結体全体として明確な濃灰色を呈する。さらに、ジルコニア結晶構造の主相が正方晶であることによって、本実施形態の焼結体が高い強度を有する。
【0029】
本実施形態の焼結体は相対密度が95.0%以上であり、好ましくは99.0%以上、より好ましくは97.0%以上99.9%以下である。この様な相対密度に相当する実測密度として、例えば、JIS R 1634に準じた方法により測定される実測密度が5.40g/cm以上5.50g/cm以下であること、更には5.42g/cm以上5.48g/cm以下であることが挙げられる。
【0030】
相対密度は、理論密度(g/cm)に対する実測密度(g/cm)の割合(%)で求めることができる。
【0031】
本実施形態の焼結体の色調は、L表色系における明度L、色相a及び色相bといして、以下を満たすことが好ましい。
【0032】
明度L:60以下、好ましくは55以下、より好ましくは52以下
色相a:-1.5≦a≦1.5、好ましくは-1.5≦a≦1.5、及び、
色相b:-2.0≦b≦2.0、好ましくは-2.0≦b*≦2.0
本実施形態の焼結体の色調は、L表色系における明度L、色相a及び色相bとして、以下を満たすことが特に好ましい。
【0033】
明度L:42≦L≦60、好ましくは42≦L≦52、
色相a:-1.5≦a≦1.5、好ましくは-1.0≦a≦1.0、及び
色相b:-2.0≦b≦2.0、好ましくは-1.5≦b≦1.5
本実施形態の焼結体は、上記の明度L、色相a又は色相bのいずれかを満たすものではなく、上述の明度L、色相a及び色相bを満たすことで、その呈色が濃灰色に近い色調ではなく、濃灰色の色調となる。
【0034】
色調はJIS Z8722に準じた方法により測定することができる。
【0035】
本実施形態の焼結体は、以下の式から求められる色差△Eが3.0以下であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5以下である。これにより、焼結条件、特に焼成温度が変わった場合であっても、色調変化が非常に小さく、目視による色調の変化として認識することができなくなる。
【0036】
色差△E={(L -L +(a -a
+(b -b 0.5 (式1)
上記式において、L 、a 及びb は、それぞれ、焼結温度T1で焼結して得られた焼結体の明度L、色相a及びbである。L 、a 及びb は、それぞれ、焼結温度T2で焼結して得られた焼結体の明度L、色相a及びbであり、なおかつ、T2(℃)=T1-20(℃)ある。
【0037】
本実施形態の焼結体は、以下の式から求められる色差△Eが3.0以下であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5以下である。これにより、焼結体表面からの研削深度を変動させて意匠面を形成しても、色調変化が非常に小さく、目視による色調の変化として認識されなくなる。
【0038】
色差△E={(L -L +(a -a
+(b -b 0.5 (式2)
上記式において、L 、a 及びb は、それぞれ、焼結体表面近傍の明度L、色相a及びbである。L 、a 及びb は、それぞれ、焼結体を焼結体表面から焼結体内部方向に向かって0.4mm加工した研削面の明度L、色相a及びbである。焼結体表面近傍とは、焼結後の焼結体(焼肌の焼結体)表面に対する深度が0.2mmとなる研磨面である。
【0039】
従来の着色剤を含有する焼結体を目視した場合、目視角度により色調が大きく異なる場合がある。これに対し、本実施形態の焼結体は、目視角度による色調の違いが小さいこと、すなわち角度の異なる反射光における色調の相違(以下、「色調違い」ともいう。)が小さいこと、が好ましい。色違いが小さいことで、本実施形態の焼結体の色調の重厚感がより増しやすくなる。
【0040】
色違いは、受光角間の色相a及びb少なくともいずれかの差を指標とすることができる。灰色系統の色調を呈する本実施形態の焼結体においては、受光角間の色相bの差を指標とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態の焼結体は、以下の(式3)から求まる△bの最大値(以下、「b MAX」ともいう。)が3.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。また、本実施形態の焼結体は、以下の(式4)から求まる△aの最大値(以下、「a MAX」ともいう。)が0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。△a及び△bの下限値は、それぞれ、0以上であり、これは受光角間で色相の差がないことを意味する。
【0042】
△b=b /b (-70) (式3)
△a=a /a (-70) (式4)
上記式において、△a及び△bは、それぞれ、受光角間の色相aの差及び色相bの差であり、a 及びb は、それぞれ、受光角-70°以上-20°以下及び40°以上70°以下のいずれかにおける色相a及び色相b、並びに、a (-70)及びb (-70)は、それぞれ、受光角-70°の色相aで及び色相bである。a 、b 、b (-70)及びb (-70)は以下の条件で測定することができる。
光源 : F2光源
入射角 : 10°
受光角 :-70°~70°
測定試料 : (形状) 縦50mm×横50mm×厚さ3mmの板状
(表面粗さ) Ra≦0.02
【0043】
本実施形態の焼結体は、着色剤を含まないジルコニア焼結体よりも透光性が低いことが好ましく、着色剤を含まないジルコニア焼結体と比べて△bが小さいことが好ましい。
【0044】
本実施形態の焼結体は、三点曲げ強度が800MPa以上1400MPa以下であり、好ましくは1000MPa以上1300MPa以下である。これにより、適度に加工できる強度を有し、なおかつ、外装部材や装飾部材等、審美性が必要とされる主な用途に使用できる強度となる。三点曲げ強度はJIS R 1601に準じた方法により測定することができる。
【0045】
次に、本実施形態の焼結体の製造方法について説明する。
【0046】
本実施形態の焼結体は上述の特徴を有していれば、その製造方法は任意である。本実施形態の焼結体の好ましい製造方法として、酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物を成形する成形工程、及び、該成形工程で得られた成形体を1350℃以上1550℃以下で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする製造方法、が挙げられる。
【0047】
好ましい製造方法の他の形態として、酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである粉末組成物を含む成形体を1350℃以上1550℃以下で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする製造方法、が挙げられる。
【0048】
成形工程に供する粉末組成物の組成は、酸化物換算で、アルミニウムを5.0重量%以上30.0重量%以下、コバルトを0.1重量%以上2.0重量%以下、マンガンを0.5重量%以上7.0重量%以下含有し、残部がイットリア含有ジルコニアである。より好ましい粉末組成物の組成として、酸化物換算で、アルミニウムを10.0重量%以上25.0重量%以下、コバルトを0.2重量%以上1.8重量%以下、マンガンを0.8重量%以上6.0重量%以下含有し、残部が2.0mol%以上6.0mol%未満のイットリアを含有するジルコニア、が挙げられる。
【0049】
粉末組成物におけるアルミニウム、コバルト及びマンガンの各元素は、それぞれ、酸化物又はその前駆体の状態であればよく、アルミニウム酸化物粉末、コバルト酸化物粉末及びマンガン酸化物粉末であることが好ましい。さらに、粉末組成物におけるアルミニウム酸化物粉末、コバルト酸化物粉末及びマンガン酸化物粉末の最大粒子径は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0050】
最大粒子径は、体積基準の粒子径分布において測定される粒子径の最大値である。体積基準の粒子径分布は、レーザー回折式粒度分布装置を使用して測定できる。
【0051】
コバルト酸化物粉末は、酸化コバルト(Co)又はその前駆体となるコバルト化合物の粉末であり、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト及び塩化コバルトの群から選ばれる少なくとも1種の粉末を挙げられる。
【0052】
マンガン酸化物粉末は、酸化マンガン(Mn)又はその前駆体となるマンガン化合物の粉末であり、酸化マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン及び酢酸マンガンの群から選ばれる少なくとも1種の粉末を挙げられる。
【0053】
アルミニウム酸化物粉末は、アルミナ(Al)又はその前駆体となるアルミニウム化合物の粉末であり、アルミナ、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種の粉末を挙げられる。アルミニウム酸化物粉末は、好ましくはアルミナ粉末であり、より好ましくはα-アルミナ粉末である。アルミニウム酸化物粉末のBET比表面積は5m/g以上20m/g以下であることが好ましい。
【0054】
イットリア含有ジルコニア粉末は、2.0mol%以上6.0mol%未満のイットリアを含有するジルコニア粉末であり、2.6mol%以上3.4mol%以下イットリア含有ジルコニア粉末であることが好ましい。イットリア含有ジルコニア粉末のBET比表面積は5m/g以上20m/g以下であることが好ましい。
【0055】
イットリア含有ジルコニア粉末は、イットリア含有ジルコニア粉末、イットリア粉末及びジルコニア粉末からなる群の2種以上を含む混合粉末、並びに、イットリア粉末とジルコニア粉末との混合粉末であってもよい。
【0056】
粉末組成物は、イットリア含有ジルコニア粉末、アルミニウム酸化物粉末、コバルト酸化物粉末及びマンガン酸化物粉末を任意の方法で混合することで得られる。混合方法は湿式混合が好ましく、ボールミル又は攪拌ミルの少なくともいずれかがより好ましい。
【0057】
焼結後、着色剤がより均一に分散しやすくなるため、アルミニウム酸化物粉末、コバルト酸化物粉末及びマンガン酸化物粉末を粉砕混合した後、これとイットリア含有ジルコニア粉末とを湿式混合することが挙げられ、より好ましい混合方法として、アルミニウム酸化物粉末、コバルト酸化物粉末及びマンガン酸化物粉末の最大粒子径が5μm以下、更には3μm以下となるまで粉砕混合した後、イットリア含有ジルコニア粉末を混合し、これを湿式混合することがより好ましい。
【0058】
粉末組成物の成形方法は、原料粉末を所望の形状に成形できる方法であればよく、金型プレス、冷間静水圧プレス、押出成形、シート成形、スリップキャスティング及び射出成形の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0059】
成形体の形状は円板状、柱状、板状、球状及び略球状の群からなる少なくとも1種が例示できるが、その他、目的に応じた任意の形状であればよい。
【0060】
焼結工程では、成形体を焼結温度1350℃以上1550℃以下で焼結する。本実施形態において、コバルト酸化物、アルミニウム酸化物及びマンガン酸化物が反応し、スピネル酸化物、特にマンガンが置換したコバルトアルミネートスピネル酸化物が生成する。一方、焼結温度が上記の範囲を超えると、焼結条件のわずかな差による焼結体の色調変化が大きくなり、色調の再現性が著しく低くなる。焼結温度は1400℃以上1500℃以下であることが好ましい。
【0061】
スピネル酸化物が安定して得られれば焼結方法は任意であり、常圧焼結、ホットプレス法及び熱間静水圧プレス法の群からなる少なくとも1種が挙げられる。簡便であるため、焼結方法は常圧焼結が好ましく、大気雰囲気中の常圧焼結がより好ましい。なお、常圧焼結とは焼結時に成形体に対して外的な力を加えず単に加熱することにより焼結する方法である。
【0062】
焼結時間は、焼結方法及び焼結温度に合わせて任意の範囲とすることができ、例えば、1時間以上5時間以下、更には2時間以上4時間以下が挙げられる。
【0063】
焼結工程において、常圧焼結後の焼結体に熱間静水圧プレス(以下、「HIP」ともいう。)処理を施してもよく、常圧焼結後のHIP条件として、アルゴン又は窒素雰囲気下、50~200MPaで1400℃以上1550℃以下、30分以上4時間以下を挙げられる。
【0064】
本実施形態の製造方法は、焼結体を研磨する研磨工程又は形状を加工する加工工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。研磨工程は、焼結後の焼結体の表面を研磨する。研磨により、表面に光沢感を付与する等、目的とする用途に適した表面状態を有する焼結体とすることができる。加工工程は、焼結体を任意の形状に加工する。これにより、焼結体を用途に応じた形状とすることができる。研磨工程及び加工工程は、いずれを先に行ってもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明する。しかしながら、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。評価方法を以下に説明する。
【0066】
(色調の測定)
JIS Z8722に準じた方法により、焼結体試料の色調を測定した。測定には、一般的な分光測色計(装置名:CM-700d、コニカミノルタ社製)を用いた。測定条件は以下のとおりである。
光源 : F2光源
視野角 : 10°
【0067】
焼結体試料サイズは、直径20mm×厚さ2.7mmのものとし、焼成面から0.2mm研削し研磨した面を色調評価面とした。色調評価有効面積は直径10mmを採用した。
【0068】
(色違い)
JIS Z8722に準じた方法により、色違いを測定した。測定には、一般的な変角分光システム(装置名:GCMS-4、村上色彩技術研究所社製)を使用した。測定条件は以下のとおりである。
光源 : F2光源
入射角 : 10°
受光角 :-70°~70°
あおり角 : 0°
【0069】
焼結体試料は、縦50mm×横50mm×厚さ3mmの板状のものとし、表面粗さ(Ra)≦0.02となるまで研磨したものを使用した。
【0070】
上述の測定により、a 、a (-70)、b 及びb (-70)を求め、(式3)及び(式4)に従って各受光角における△a及び△b、並びに、△a MAX及び△b MAXを求めた。
【0071】
(三点曲げ強度)
曲げ試験は、JIS R 1601『ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法』に基づき三点曲げ試験により測定した。測定は10回行い、その平均値をもって三点曲げ強度とした。測定は、幅4mm、厚さ3mmの柱形状の焼結体試料を用い、支点間距離30mmとして実施した。
【0072】
(焼結体密度)
JIS R 1634(ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法)に準拠した測定法により焼結体の実測密度を測定した。理論密度に対する実測密度の割合から相対密度を求めた。測定に先立ち乾燥後の焼結体の質量を測定した後,焼結体を水中に配置し、これを1時間煮沸することで前処理とした。
【0073】
(平均結晶粒径)
焼結体試料のジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径はインターセプト法により測定した。鏡面研磨した後の焼結体試料を熱エッチングし、その表面を走査型顕微鏡にて20,000倍で観察した。得られたSEM観察図からインターセプト法(k=1.78)によりジルコニアの結晶粒子の平均粒子径を測定した。測定したジルコニアの結晶粒子の粒子数は200個以上とした。
【0074】
(EPMAによる元素分析)
波長分散型電子線マイクロアナライザー(EPMA)(装置名:EPMA1610、島津製作所製)を使用して、焼結体試料における面分析を行なった。測定条件は以下のとおりである。
加速電圧 :15KV
照射電流 :100nA
【0075】
(最大粒子径)
粉末試料の最大粒子径は、一般的なレーザー回折式粒度分布装置(装置名:930-HRA、HANEWELL社製)を使用して測定した。測定条件は以下の通りである。
試料形状の近似 :球形近似
溶媒の屈折率 :1.33
粉末試料の屈折率:2.17
【0076】
測定された粒子径の最大値を最大粒子径とした。測定試料として、粉末試料を含むスラリーを使用し、前処理として、当該スラリーに超音波3分間照射した。
【0077】
実施例1
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(BET比表面積:6.8m/g、東ソー製)、高純度アルミナ粉末(住友化学製)、酸化コバルト(Co)粉末(キシダ化学製)、及び、酸化マンガン粉末(東ソー日向製)を、ボールミルを使用して湿式混合し、以下の組成を有する混合粉末を得、これを大気中、100~130℃で乾燥した。湿式混合は、次のように行った。最初に、高純度アルミナ粉末、酸化コバルト粉末及び酸化マンガン粉末に純水を加えてスラリーとし、粒子径を確認しながら当該スラリーをボールミルで処理した。次に、スラリー中の粉末の最大粒子径が3μm以下であることが確認できた後、スラリーと3mol%イットリア含有ジルコニア粉末とをボールミルで処理した。
【0078】
Al : 20重量%
Co : 0.45重量%
Mn : 1.9重量%
3mol%Y含有ZrO : 残部
乾燥後の混合粉末を一軸成形圧1000kg/cmで成形して成形体を得、これを以下のいずれかの焼結温度で常圧焼結して、本実施例の焼結体を3点得た。焼結条件は以下の通りである。
【0079】
焼結雰囲気 : 大気中
焼結温度 : 1430℃、1450℃又は1470℃のいずれか
昇温速度 : 100℃/時間
焼結時間 : 2時間
本実施例の焼結体は、いずれも、酸化物換算でアルミニウムを20重量%、コバルトを0.45重量%、マンガンを1.9重量%含有し、残部がイットリア含有量3mol%のイットリア含有ジルコニアからなる焼結体であった。焼結温度1450℃で得られた焼結体の平均結晶粒径は0.63μmであった。
【0080】
得られた焼結体の表面(焼肌面)及び、焼肌面を0.2mm研磨した後の表面(研磨面)をそれぞれ目視にて観察した結果、いずれも重厚な濃灰色を呈していた。また、得られた3つの焼結体の研磨面の色差△Eは0.19~0.98であり、目視による色調の違いは観察されなかった。
【0081】
実施例2
混合粉末の組成を以下の様にしたこと以外は実施例1と同様な方法で、本実施例の焼結体を3点得た。
【0082】
Al : 20重量%
Co : 0.35重量%
Mn : 1.55重量%
3mol%Y含有ZrO : 残部
本実施例の焼結体は、いずれも、酸化物換算でアルミニウムを20重量%、コバルトを0.35重量%、マンガンを1.55重量%含有し、残部がイットリア含有量3mol%のイットリア含有ジルコニアからなる焼結体であった。
【0083】
得られた焼結体の表面(焼肌面)及び、焼肌面を0.2mm研磨した後の表面(研磨面)をそれぞれ目視にて観察した結果、いずれも重厚な濃灰色を呈していた。また、得られた3つの焼結体の研磨面の色差△Eは0.21~0.56であり、目視による色調の違いは観察されなかった。
【0084】
実施例3
以下の組成の混合粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、本実施例の焼結体を3点得た。
【0085】
Al : 20重量%
Co : 0.40重量%
Mn : 1.8重量%
3mol%Y含有ZrO : 残部
本実施例の焼結体は、いずれも、酸化物換算でアルミニウムを20重量%、コバルトを0.40重量%、マンガンを1.8重量%含有し、残部がイットリア含有量3mol%のイットリア含有ジルコニアからなる焼結体であった。
【0086】
得られた焼結体の表面(焼肌面)及び、焼肌面を0.2mm研磨した後の表面(研磨面)をそれぞれ目視にて観察した結果、いずれも重厚な濃灰色を呈していた。また、得られた3つの焼結体の研磨面の色差△Eは0.58~0.61であり、目視による色調の違いは観察されなかった。
【0087】
(微構造組成分析)
焼結温度1450℃として得られた焼結体をEPMA分析した結果を図1に示す。図1より、Alが存在する領域、並びに、AlとCoとMnが重複して存在する領域を有することが観察され、アルミニウム化合物と、アルミニウムとコバルト、マンガンの複合酸化物とが存在することが確認できる。
【0088】
これらの結果より、本実施例の焼結体は、スピネル構造を有しMnが置換したコバルトアルミニウム複合酸化物及びアルミニウム酸化物を含むことが確認できた。
【0089】
本実施例の焼結体の断面をSEM観察及び元素分析を行った。SEM観察の結果より、焼結体内部にアルミナの結晶粒子が確認でき、また、元素分析の結果より、焼結体の表面及び内部において含まれるAl、Co及びMnの割合(濃度)が同程度であることが確認できた。これより、本実施例の焼結体は着色剤が全体的に均一に分布していることが確認できた。
【0090】
実施例4
以下の組成の混合粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例の焼結体を3点得た。
【0091】
Al : 18.5重量%
Co : 1.75重量%
Mn : 6.0重量%
3mol%Y含有ZrO : 残部
本実施例の焼結体は、いずれも、酸化物換算でアルミニウムを18.5重量%、コバルトを1.75重量%、マンガンを6.0重量%含有し、残部がイットリア含有量3mol%のイットリア含有ジルコニアからなる焼結体であった。
【0092】
得られた焼結体の表面(焼肌面)及び、焼肌面を0.2mm研磨した後の表面(研磨面)をそれぞれ目視にて観察した結果、いずれも限りなく黒色に近い重厚な濃灰色を呈していた。また、得られた3つの焼結体の研磨面の色差△Eは0.37~0.71であり、目視による色調の違いは観察されなかった。
【0093】
これらの結果より、実施例の焼結体は多量のアルミナを含みながらも、焼結温度による実質的な色調変化が生じないことが確認できた。結果を下表に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
(研削面の色調評価)
実施例1乃至3において、焼結温度1450℃で焼結して得られた焼結体の三点曲げ強度を測定した。また、これらの焼結体の表面を、それぞれ、表面から厚み方向に0.4mm研削し、研削面とした。当該研削面と、研削前の表面(研磨面)との色差を示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2より、研削加工前後の式差△Eは1.5以下であり、目視による色調変化は確認できなかった。これより、実施例の焼結体は多量のアルミナを含むにもかかわらず、表面及び内部とも同様に重厚な灰色を呈することが確認できる。いずれの焼結体も最大粒径が6μm以下であり、三点曲げ強度も1000MPa以上1250MPa程度と、加工に適した強度を有することが確認できる。
【0098】
(色違いの測定)
実施例1及び3、並びに、比較対象として3mol%イットリア含有ジルコニア粉末を実施例と同様な方法で焼結した焼結体(以下、「参考例」とする)の色違いの測定結果を下表に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
実施例の焼結体は△bの最大値が1.00未満及びの△aの最大値が0.20以下であり、異なる角度から本焼結体を視認した場合であっても、色違いがなく、どの角度からでも同様な色調として視認されうることが確認できた。また、実施例の焼結体は着色剤を含むにもかかわらず、ジルコニアのみからなる焼結体と比べても色調違いが小さくなっていることが確認できた。これより、実施例の焼結体はジルコニアに由来する透光性が抑制されていると考えられる。
【0101】
さらに、実施例1、実施例3及び参考例の代表的な受光角における△bを下表に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
上表より、参考例のジルコニア焼結体は受光角毎の△bの値が大きくバラついており、当該焼結体を観察する角度によって、視認される色調が大きく異なることが分かる。これに対し、実施例1は、参考例で△b MAXを示した受光角(-20°)の△bのが小さく、受光角毎の△bの値のばらつきが小さいことが確認できた。これより、実施例1の焼結体は、観察する角度を変えてもほぼ同様な色調で視認されうることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本実施形態のジルコニア焼結体は、高密度でなおかつ重厚な濃灰色で、使用により劣化した場合であっても安定した色相を呈する審美性に優れた焼結体であり、傷のつかない高級感のある宝飾品、装飾部材等の部材、例えば、時計部品、携帯用電子機器の外装部品等の様々な部材へ利用することができる。
図1
図2