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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230905BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230905BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230905BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230905BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20230905BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230905BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20230905BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/20
B32B7/023
B32B27/00 D
B32B27/16 101
B32B27/18 Z
B32B27/00 A
C09J7/30
C09J7/22
C09J4/00
C09J11/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019179491
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056388
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下出 真菜
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0139244(US,A1)
【文献】特開2015-064575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017817(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0100680(US,A1)
【文献】国際公開第2016/136901(WO,A1)
【文献】特開2016-056368(JP,A)
【文献】特表2017-502965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0269174(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0370611(US,A1)
【文献】DUAN, Pengfei et al.,A bis-cyclometalated iridium complex as a benchmark sensitizer for efficient visible-to-UV photon upconversion,Chemical Communications,2014年09月16日,Vol.50,pp.13111-13113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/20
B32B 7/023
B32B 27/00
B32B 27/16
B32B 27/18
C09J 7/30
C09J 7/22
C09J 4/00
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基材と、接着層と、第二基材と、をこの順に備え、
前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備え、
前記接着層と前記液晶硬化層とが、直接に接していて、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記接着層が、紫外線硬化型接着剤と、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物と、を含む、積層体。
【請求項2】
前記重合性液晶化合物が、下記式(I)で表される、請求項1に記載の積層体。
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【請求項3】
前記第二基材が、偏光子層を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記接着層が、前記紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層と、前記アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層と、を備え、
前記UV接着剤層と前記液晶硬化層とが、直接に接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記アップコンバージョン化合物が、下記式(UC1)で表される化合物及び式(UC2)で表される化合物の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【化3】
【請求項6】
第一基材及び第二基材の一方に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤と可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物とを含むアップコンバージョン接着層を形成する工程と、
前記アップコンバージョン接着層と、前記第一基材及び前記第二基材の他方とを貼り合わせる工程と、
前記第一基材及び前記第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光を前記アップコンバージョン接着層に照射する工程と、をこの順に含む、積層体の製造方法であって、
前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備え、
前記積層体において、前記液晶硬化層と前記アップコンバージョン接着層とが直接に接していて、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満である、積層体の製造方法。
【請求項7】
第二基材に、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程と、
前記アップコンバージョン層上に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程と、
前記UV接着剤層と、第一基材とを貼り合わせる工程と、
前記第一基材及び前記第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光を前記UV接着剤層に照射する工程と、をこの順に含む、積層体の製造方法であって、
前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備え、
前記積層体において、前記液晶硬化層と前記UV接着剤層とが直接に接していて、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満である、積層体の製造方法。
【請求項8】
第二基材に、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程と、
第一基材に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程と、
前記アップコンバージョン層と前記UV接着剤層とを貼り合わせる工程と、
前記第一基材及び前記第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光を前記UV接着剤層に照射する工程と、を含む、積層体の製造方法であって、
前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備え、
前記積層体において、前記液晶硬化層と前記UV接着剤層とが直接に接していて、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満である、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記重合性液晶化合物が、下記式(I)で表される、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【化4】
但し、式(I)において、
Arは、式(III-2)で表される基を表し、
【化5】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【請求項10】
前記第二基材が、偏光子層を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの基材を紫外線硬化型接着剤を介して接着して積層体を製造する技術が知られている。例えば、液晶化合物の硬化物により形成された液晶硬化層を備える基材と、偏光子層を備える基材とを、紫外線硬化型接着剤を介して接着して積層体を製造することがある。このような積層体は、例えば、円偏光板等の偏光板として使用されることがある。
【0003】
他方、励起光を受けて当該励起光よりも波長が短い光を発光するアップコンバージョン化合物が、知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-35527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線硬化型接着剤は、通常、紫外線の照射によって硬化される。しかし、紫外線の透過率が低い基材を用いた場合、接着剤の硬化が不十分となり、積層体が耐熱性に劣ることがあった。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、耐熱性に優れる積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、紫外線を遮断する基材同士を、紫外線硬化型接着剤と可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物とを組み合わせて含む接着層を介して接着した場合に、耐熱性に優れる積層体が得られることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 第一基材と、接着層と、第二基材と、をこの順に備え、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記接着層が、紫外線硬化型接着剤と、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物と、を含む、積層体。
〔2〕 前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 前記重合性液晶化合物が、下記式(I)で表される、〔2〕に記載の積層体。
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
〔4〕 前記第二基材が、偏光子層を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔5〕 前記接着層が、前記紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層と、前記アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層と、を備える、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔6〕
前記アップコンバージョン化合物が、下記式(UC1)で表される化合物及び式(UC2)で表される化合物の組み合わせを含む、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の積層体。
【化3】
〔7〕 第一基材及び第二基材の一方に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤と可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物とを含むアップコンバージョン接着層を形成する工程と、
前記アップコンバージョン接着層と、前記第一基材及び前記第二基材の他方とを貼り合わせる工程と、
前記第一基材及び前記第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光を前記アップコンバージョン接着層に照射する工程と、をこの順に含み、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満である、積層体の製造方法。
〔8〕 第一基材及び第二基材の一方に、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程と、
前記アップコンバージョン層上に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程と、
前記UV接着剤層と、前記第一基材及び前記第二基材の他方とを貼り合わせる工程と、
前記第一基材及び前記第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光を前記UV接着剤層に照射する工程と、をこの順に含み、
前記第一基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満であり、
前記第二基材の波長380nmにおける光透過率が、10.0%未満である、積層体の製造方法。
〔9〕 前記第一基材が、重合性液晶化合物を含む、〔7〕又は〔8〕に記載の積層体の製造方法。
〔10〕 前記重合性液晶化合物が、下記式(I)で表される、〔9〕に記載の積層体の製造方法。
【化4】
但し、式(I)において、
Arは、式(III-2)で表される基を表し、
【化5】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
〔11〕 前記第二基材が、偏光子層を含む、〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性に優れる積層体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る積層体の別の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「紫外線」とは、別に断らない限り、波長が1nm以上380nm未満である光を意味する。
【0012】
以下の説明において、「可視光」とは、別に断らない限り、波長が380nm以上700nm以下の光を意味する。
【0013】
以下の説明において、複屈折の逆波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N1)を満たすことをいう。このような逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。
Δn(450)<Δn(550) (N1)
【0014】
以下の説明において、複屈折の順波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N2)を満たす複屈折をいう。このような順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、小さい複屈折を発現できる。
Δn(450)>Δn(550) (N2)
【0015】
以下の説明において、あるフィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。面内レターデーションReは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
【0016】
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0017】
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内方向の遅相軸をいう。
【0018】
以下の説明において、置換基を有する基の炭素原子数には、別に断らない限り、前記置換基の炭素原子数を含めない。よって、例えば「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基」との記載は、置換基の炭素原子数を含まないアルキル基自体の炭素原子数が1~20であることを表す。
【0019】
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」は、別に断らない限り、樹脂フィルム等の可撓性を有するフィルム及びシートを含む用語として用いる。
【0020】
以下の説明において、別に断らない限り、用語「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリル及びそれらの組み合わせを包含し、用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの組み合わせを包含する。
【0021】
[1.積層体の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体100は、波長380nmにおける光透過率が低い第一基材110と、接着層120と、波長380nmにおける光透過率が低い第二基材130とを、厚み方向においてこの順に備える。
【0022】
積層体100が備える接着層120は、紫外線硬化型接着剤と、可視光を受けて紫外線を発光できるアップコンバージョン化合物と、を組み合わせて含む。以下の説明において、このように紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とを組み合わせて含む接着層を、適宜「アップコンバージョン接着層」ということがある。通常、積層体100のアップコンバージョン接着層120に含まれる紫外線硬化型接着剤の一部又は全部は、硬化している。
【0023】
波長380nmにおける光透過率が低い第一基材110及び第二基材130は、一般に、紫外線を遮る能力を有する。しかし、アップコンバージョン接着層120は、このように第一基材110及び第二基材130が紫外線を遮りうるものでありながら、紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させることができるので、その紫外線硬化型接着剤が十分高い水準で硬化することができる。そのため、積層体100は高い耐熱性を有することができる。さらに、積層体100は、通常、高い耐光性を有することができる。
【0024】
第一基材110とアップコンバージョン接着層120との間には任意の層(図示せず)が設けられていてもよいが、図1に示すように、第一基材110とアップコンバージョン接着層120とは直接に接していることが好ましい。また、アップコンバージョン接着層120と第二基材130との間には任意の層(図示せず)が設けられていてもよいが、図1に示すように、アップコンバージョン接着層120と第二基材130とは直接に接していることが好ましい。ここで、2つの要素が「直接に接する」とは、それらの要素の間に他の層が無いことをいう。
【0025】
紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とは、単一のアップコンバージョン接着層に含まれていてもよいが、別々の層に含まれていてもよい。図2は、本発明の一実施形態に係る積層体の別の例を模式的に示す断面図である。この図2に示す例のように、積層体200は、第一基材110と第二基材130との間に、紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層221とアップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層222とを含む複層構造のアップコンバージョン接着層220を備えていてもよい。
【0026】
[2.第一基材]
第一基材は、波長380nmにおいて、低い光透過率を有する。第一基材の波長380nmにおける具体的な光透過率は、通常10.0%未満、好ましくは8.0%未満、より好ましくは6.0%未満である。波長380nmにおける光透過率が前記のように低い第一基材は、通常、紫外線を遮断する能力に優れる。このように紫外線を遮断する能力に優れる第一基材を備えるので、本実施形態に係る積層体は、通常、耐光性に優れることができる。
【0027】
第一基材の波長380nmにおける光透過率は、分光光度計(例えば、日本分光社製「V-500」)を用いて、入射角0°で測定しうる。
【0028】
第一基材の波長380nmにおける光透過率を前記のように低くする方法としては、例えば、第一基材の材料を適切に選択する方法が挙げられる。例えば、適切な種類の紫外線吸収剤を含む材料を用いることにより、第一基材の波長380nmにおける光透過率を低くできる。また、例えば、後述する式(I)で表される液晶化合物は、通常、紫外線を吸収する能力を有するので、その液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物を含む液晶硬化層を第一基材に設ける方法によっても、第一基材の波長380nmにおける光透過率を低くできる。
【0029】
第一基材は、可視光の透過率が高いことが好ましい。具体的には、波長400nm~700nmにおいて測定される全光線透過率が、高いことが好ましい。第一基材の具体的な全光線透過率の範囲は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。
【0030】
第一基材の全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定できる。
【0031】
第一基材の材料は、特段の制限は無い。例えば、第一基材の材料としては、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物が挙げられる。「液晶組成物」は、2種類以上の成分を含む材料だけでなく、1種類の重合性液晶化合物のみを含む材料を包含する。このように重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物を用いた第一基材は、通常、その硬化物の層を備えうる。以下の説明では、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された層を、「液晶硬化層」と呼ぶことがある。
【0032】
重合性液晶化合物は、液晶性を有するので、通常、当該重合性液晶化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。また、重合性液晶化合物は、重合性を有するので、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の屈折率楕円体において最大の屈折率を示す方向を変化させないように重合体となることができる。液晶組成物の硬化時には、前記の重合性液晶化合物の重合反応が進行しうるので、液晶硬化層においては、一般に、重合性液晶化合物の配向状態を固定することができる。よって、液晶硬化層は、所望のレターデーションを有する位相差層として機能することができる。また、液晶硬化層は、重合性液晶化合物の重合度を高めることにより、当該液晶硬化層の機械的強度を高めることができる。
【0033】
重合性を有する重合性液晶化合物の分子は、通常、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含む。重合性液晶化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。
【0034】
重合性液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する重合性液晶化合物を用いる場合に、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0035】
重合性液晶化合物としては、逆分散液晶化合物を用いてもよく、順分散液晶化合物を用いてもよく、逆分散液晶化合物と順分散液晶化合物との組み合わせを用いてもよい。
【0036】
逆分散液晶化合物とは、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。また、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0037】
順分散液晶化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。また、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0038】
通常は、液晶化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。また、前記の層の複屈折は、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から求められる。
【0039】
逆分散液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。よって、広い波長範囲において、レターデーションを設計の理想値に近くできる。そのため、重合性液晶化合物として逆分散液晶化合物を用いると、レターデーションの理想値からのずれを少なくできる。
【0040】
測定波長590nmにおける重合性液晶化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する重合性液晶化合物を用いる場合に、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
【0041】
液晶化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
液晶化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内レターデーションを測定する。そして、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から、液晶化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内レターデーション及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶化合物の層は、硬化させてもよい。
【0042】
重合性液晶化合物は、芳香環構造を有する側鎖を有することが好ましい。芳香環構造を有する側鎖を構造に導入することによって、複屈折特性の設計が容易になり、重合性液晶化合物に高い複屈折を与えることができる。それによって液晶硬化層を薄くすることができ、硬化ムラなどによるレターデーション変化量の増加を抑えることができる。
【0043】
重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
重合性液晶化合物の例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
【0045】
【化6】
【0046】
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0047】
Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z又はZとの結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
【0048】
【化7】
【0049】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、E及びEは、それぞれ独立して、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E及びEは、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
【0050】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D~Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D及びDは、一緒になって環を形成していてもよい。D~Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
【0051】
~Dにおける非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D~Dにおける非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH;-C(=O)NHPh;-C(=O)-OR;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC、-C(=O)-OC、-C(=O)-OCH(CH、-C(=O)-OCHCHCH(CH)-OCH、-C(=O)-OCHCHC(CH-OH、及び-C(=O)-OCHCH(CHCH)-C、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のRは、炭素原子数1~12の有機基を表す。Rの具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
【0052】
~Dにおける非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
は、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0054】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0055】
における炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
【0056】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
【0058】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
【0060】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
【0062】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
及びDが一緒になって環を形成している場合、前記のD及びDによって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D及びDが結合する炭素と結合する位置を表す。
【0064】
【化8】
【0065】
は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
**は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR13からなる群より選ばれる基を表す。R13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0066】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、Dは、-C(R)=N-N(R)R、-C(R)=N-N=C(R)R、及び、-C(R)=N-N=Rからなる群より選ばれる基を表す。Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
【0067】
は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0068】
は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0069】
における置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-G-Y-F;-SO;-C(=O)-R;-CS-NH-R;が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。
【0070】
における炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
【0071】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO;-SR;-SRで置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
【0073】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
における炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
【0075】
における炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0076】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、Rにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
【0077】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
【0079】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
【0081】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR14-C(=O)-、-C(=O)-NR14-、-NR14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0083】
は、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15-、-O-C(=O)-NR15-、-NR15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Yとしては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
【0084】
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
【0085】
における芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
における芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;等が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0087】
における芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0088】
における芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0089】
の好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
【0090】
環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
【0092】
炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0093】
前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。
【0094】
【化9】
【0095】
環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
【0096】
複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
【0097】
前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。下記式中、Xは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。)。
【0098】
【化10】
【0099】
の好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
【0100】
置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
【0101】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
【0102】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15などが挙げられる。R15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
【0103】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0104】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~20の芳香複素環基が挙げられる。
【0106】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0107】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
【0108】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0110】
置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0111】
【化11】
【0112】
特に、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0113】
【化12】
【0114】
更には、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0115】
【化13】
【0116】
【化14】
【0117】
Arが式(II-2)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0118】
上述したものの中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-G-Y-F;が好ましい。その中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-G-Y-F;が特に好ましい。
【0119】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0120】
の好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0121】
【化15】
【0122】
(1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0123】
の別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0124】
【化16】
【0125】
【化17】
【0126】
【化18】
【0127】
【化19】
【0128】
【化20】
【0129】
【化21】
【0130】
【化22】
【0131】
【化23】
【0132】
(2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
の更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
【0134】
(3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0135】
(3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0136】
の更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
【0137】
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0138】
(4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0139】
の更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
【0140】
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0141】
(5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0142】
の好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0143】
【化24】
【0144】
の更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0145】
【化25】
【0146】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0147】
【化26】
【0148】
上述したRの具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0149】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0150】
の好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
また、Rの別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
【0151】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
【0152】
【化27】
【0153】
式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D~D以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0154】
式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。中でも、Arは、式(III-2)で表される基が好ましい。
【0155】
【化28】
【0156】
式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
【0157】
【化29】
【0158】
【化30】
【0159】
式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0160】
式(I)において、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A、A、B及びBが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0161】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0162】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0163】
、A、B及びBにおける芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0164】
、A、B及びBにおける芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0165】
式(I)において、Y~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0166】
式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0167】
及びGにおける炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0168】
及びGにおける炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0169】
式(I)において、P及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。P及びPにおける重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH=C(CH)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0170】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0171】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0172】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
【0173】
【化31】
【0174】
液晶組成物は、重合性液晶化合物に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0175】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は、通常、重合性液晶化合物と反応して橋かけ結合を形成できる。ただし、架橋剤には、前記の重合性液晶化合物は含まれない。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0176】
架橋剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、特に好ましくは20重量部以下である。架橋剤の量が前記の範囲にある場合、液晶硬化層の耐熱性及び機械的強度を効果的に高めることができる。
【0177】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を用いることにより、重合性液晶化合物の配向性を改善できるので、液晶硬化層の面状態を良好にしたり、配向欠陥の発生を抑制したりできる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤としては、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0178】
界面活性剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは1.00重量部以下、より好ましくは0.50重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にある場合、液晶硬化層の面状態を良好にしたり、配向欠陥の発生を抑制したりできる。
【0179】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を促進できる。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれを用いてもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点では、光重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0180】
重合開始剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲にある場合、重合を効率的に進行させることができる。
【0181】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を用いることにより、液晶硬化層の耐光性を効果的に改善することができる。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0182】
紫外線吸収剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは4重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。紫外線吸収剤の量が、前記範囲の下限値以上である場合、液晶硬化層の耐光性を効果的に高めることができる。また、紫外線吸収剤の量が、前記範囲の上限値以下である場合、液晶硬化層の呈色を効果的に抑制できる。
【0183】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、酸化防止剤を含んでいてよい。酸化防止剤を用いることにより、未硬化状態の液晶組成物のゲル化を抑制できるので、液晶組成物のポットライフを長くできる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類状を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0184】
酸化防止剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.005重量部以上、特に好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。
【0185】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60℃~250℃であることが好ましく、60℃~150℃であることがより好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶媒の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは100重量部以上1000重量部以下である。
【0186】
液晶組成物が含みうるその他の任意の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、重合性液晶化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部でありうる。
【0187】
上述した液晶組成物の硬化は、一般に、当該液晶組成物に含まれる重合性の化合物の重合反応が進行することによって達成される。よって、液晶組成物の硬化物は、通常、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、液晶組成物の硬化物は、重合性液晶化合物の重合体を含みうる。ただし、通常は、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の一部は重合せず、未反応の重合性液晶化合物として硬化物中に残留しうる。よって、液晶硬化層は未反応の重合性液晶化合物を含みうるので、当該液晶硬化層を含む第一基材には未反応の重合性液晶化合物が含まれうる。
【0188】
液晶組成物の硬化物に未反応の重合性液晶化合物が含まれることは、液晶組成物の硬化物をテトラヒドロフラン中に浸漬し、それにより得られる溶液を液クロマトグラフィーで分析することにより確認できる。
【0189】
液晶組成物の硬化物においては、一般に、液晶組成物が有していた流動性が失われる。よって、通常、液晶組成物の硬化物においては、重合性液晶化合物及びその重合体の配向状態が、固定されうる。例えば、重合性液晶化合物が重合して重合体となることにより、その重合体は配向方向を変化させることができなくなるので、配向状態の固定が達成されうる。したがって、液晶組成物の硬化物を含む液晶硬化層は、前記の配向状態に応じたレターデーションを有することができる。
【0190】
液晶硬化層の具体的な面内レターデーションの範囲は、積層体の用途に応じて任意に設定しうる。例えば、波長590nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションRe(590)は、好ましくは100nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、特に好ましくは130nmより大きく、また、好ましくは200nm未満、より好ましくは180nm未満、特に好ましくは160nm未満である。このような面内レターデーションRe(590)を有する液晶硬化層は、通常、1/4波長板として機能できる。
【0191】
波長450nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションRe(450)、及び、波長550nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションRe(550)の比Re(450)/Re(550)は、1.00未満であることが好ましい。詳細には、面内レターデーションの比Re(450)/Re(550)は、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.95未満、特に好ましくは0.90未満であり、また、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.72以上、特に好ましくは0.75以上である。面内レターデーションの比Re(450)/Re(550)が前記の範囲にある液晶硬化層は、逆波長分散性を示すことができるので、1/4波長板、1/2波長板等の光学用途において、広い波長範囲において均一に機能を発現できる。逆波長分散性を示す液晶硬化層は、例えば、重合性液晶化合物として逆分散液晶化合物を用いることで得られる。
【0192】
液晶硬化層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)においては、重合性液晶化合物及びその重合体の分子の配向方向は、通常、均一である。よって、液晶硬化層は、通常、当該液晶硬化層を厚み方向から見た重合性液晶化合物及びその重合体の分子の配向方向に平行な遅相軸を有する。他方、液晶硬化層の厚み方向においては、重合性液晶化合物及びその重合体の分子の配向方向は、任意である。例えば、液晶硬化層の厚み方向において、重合性液晶化合物及びその重合体の分子の配向方向は、液晶硬化層の層平面に平行でもよく、非平行でもよい。また、液晶硬化層の厚み方向において、重合性液晶化合物及びその重合体の分子の配向方向は、均一でもよく、不均一でもよい。具体例を挙げると、重合性液晶化合物及びその重合体の分子は、液晶硬化層の層平面に平行なある一の方向に配向していてもよい(ホモジニアス配向)。さらに、重合性液晶化合物及びその重合体の分子は、液晶硬化層の層平面に垂直な方向に配向していてもよい(垂直配向)。また、重合性液晶化合物及びその重合体の分子は、液晶硬化層の層平面に平行でも垂直でもないある一の方向に配向していてもよい(傾斜配向)。さらに、重合性液晶化合物及びその重合体の分子は、当該重合性液晶化合物及びその重合体の分子が液晶硬化層の層平面に対してなす傾斜角が、液晶硬化層の一側に近いほど小さく、前記一側から遠いほど大きい態様で配向していてもよい(ハイブリッド配向)。
【0193】
液晶硬化層の厚みは、レターデーション等の特性を所望の範囲にできるように、適切に設定しうる。具体的には、液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0194】
第一基材は、1層のみを含む単層構造を有していてもよく、2層以上を含む複層構造を有していてもよい。よって、第一基材が前記の液晶硬化層を含む場合、その第一基材は、液晶硬化層に組み合わせて、任意の層を含んでいてもよい。任意の層としては、例えば、液晶硬化層の製造に用いる支持体;延伸又は未延伸の樹脂フィルム;他の部材と接着するための接着剤層及び粘着剤層;フィルムの滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。第一基材が液晶硬化層と任意の層とを組み合わせて含む場合、第一基材の液晶硬化層側にアップコンバージョン接着層が設けられていることが好ましく、液晶硬化層とアップコンバージョン接着層とが直接に接していることがより好ましい。
【0195】
液晶硬化層を含む基材以外の第一基材の例としては、例えば、第二基材の項で説明する偏光子層、保護フィルム層、並びに、偏光子層と保護フィルム層との組み合わせ、などが挙げられる。さらに、第一基材としては、例えば、積層体の用途に応じて、樹脂フィルム、ガラスシート等の、上述した例示物以外の基材を用いてもよい。
【0196】
第一基材のヘイズは、小さいことが好ましい。具体的な第一基材のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定できる。
【0197】
第一基材の製造方法は、特段の制限は無い。例えば、液晶硬化層を含む第一基材は、
(i)液晶組成物の層を形成する工程と、
(ii)液晶組成物の層を硬化させる工程と、
を含む製造方法によって、製造できる。以下、この製造方法について説明する。
【0198】
工程(i)では、通常、適切な支持面に、液晶組成物の層を形成する。支持面としては、液晶組成物の層を支持できる任意の面を用いうる。この支持面としては、液晶硬化層の面状態を良好にする観点から、凹部及び凸部の無い平坦面を用いることが好ましい。また、液晶硬化層の生産性を高める観点から、前記の支持面としては、長尺の支持体の表面を用いることが好ましい。ここで「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下としうる。
【0199】
支持体としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いる。特に、配向処理又は加熱処理を行う場合、その処理温度に耐えられる支持体を選択するのが好ましい。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。中でも、配向規制力の高さ、機械的強度の高さ、及びコストの低さといった観点から、樹脂としては、正の固有複屈折値を有する樹脂が好ましい。更には、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、ノルボルネン系樹脂等の、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが好ましい。支持体に含まれる樹脂の好適な例を商品名で挙げると、ノルボルネン系樹脂として、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げられる。
【0200】
支持面としての支持体の表面には、液晶組成物の層における重合性液晶化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物等の液晶化合物を配向させることができる、面の性質をいう。支持面に配向規制力を付与するため処理としては、例えば、配向膜形成処理、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理、延伸処理などが挙げられる。
【0201】
液晶組成物の層を形成する工程(i)において、液晶組成物は、通常、流体状で用意される。そのため、通常は、支持面に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成する。液晶組成物を塗工する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
【0202】
液晶組成物の層を形成する工程(i)の後で、液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる工程(iii)を行ってもよい。配向処理を行う際には、通常、液晶組成物の層を、所定の温度条件に所定の時間だけ保持する。これにより、液晶組成物の層において、重合性液晶化合物等の液晶化合物が配向する。この配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適切に設定しうる。配向処理の条件の具体例を挙げると、50℃~160℃の温度条件において、30秒間~5分間処理する条件としうる。
【0203】
工程(i)の後、更に必要に応じて重合性液晶化合物を配向させる工程(iii)を行った後で、液晶組成物の層を硬化させて、液晶硬化層を得る工程(ii)を行う。この工程(ii)では、通常、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の重合により、液晶組成物の層を硬化させる。よって、重合性液晶化合物の一部又は全部は、この工程(ii)において重合する。硬化によって、硬化前の流動性が失われるので、通常、得られる液晶硬化層では、重合性液晶化合物及びその重合体の配向状態は、固定されうる。
【0204】
重合方法としては、液晶組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
【0205】
なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度は、支持体のガラス転移温度以下とすることが好ましく、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上としうる。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm以上、より好ましくは0.5mW/cm以上であり、好ましくは10000mW/cm以下、より好ましくは5000mW/cm以下である。紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm以上、より好ましくは0.5mJ/cm以上であり、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは5000mJ/cm以下である。
【0206】
上述した例に係る第一基材の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、上述した例に係る製造方法によれば、支持体及び液晶硬化層を含む第一基材が得られる。そこで、上述した製造方法は、支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体を剥離することにより、液晶硬化層自体を第一基材として得ることができる。さらに、例えば、上述した製造方法は、支持体上に形成された液晶硬化層を、任意のフィルムに転写する工程を含んでいてもよい。具体例を挙げると、上述した製造方法は、支持体上に形成された液晶硬化層と任意のフィルムとを貼り合わせた後で、必要に応じて支持体を剥離して、液晶硬化層及び任意のフィルムを含む複層構造の第一基材を得る工程を含んでいてもよい。この際、貼り合わせには、適切な粘着剤又は接着剤を用いてもよい。
【0207】
また、上述した製造方法は、例えば、液晶組成物の層を硬化させる工程(ii)の前に、液晶組成物の層を乾燥させる工程を含んでいてもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0208】
さらに、上述した製造方法は、得られた液晶硬化層に熱処理を施す工程(iv)を含んでいてもよい。熱処理温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃以下である。また、熱処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上、特に好ましくは3秒以上であり、好ましくは15分以下、より好ましくは12分以下、特に好ましくは10分以下である。熱処理を施すことにより、液晶硬化層の耐熱性を向上させることができる。
【0209】
[3.第二基材]
第二基材は、波長380nmにおいて、低い光透過率を有する。第二基材の波長380nmにおける具体的な光透過率は、通常10.0%未満、好ましくは6.0%未満、より好ましくは2.0%未満である。波長380nmにおける光透過率が前記のように低い第二基材は、通常、紫外線を遮断する能力に優れる。このように紫外線を遮断する能力に優れる第二基材を備えるので、本実施形態に係る積層体は、通常、耐光性に優れることができる。
【0210】
第二基材の波長380nmにおける光透過率は、第一基材の光透過率の測定方法と同じ方法によって測定しうる。
【0211】
第二基材の波長380nmにおける光透過率を前記のように低くする方法としては、例えば、第二基材の材料を適切に選択する方法が挙げられる。例えば、適切な種類の紫外線吸収剤を含む材料を用いることにより、第二基材の波長380nmにおける光透過率を低くできる。
【0212】
第二基材は、可視光の透過率が高いことが好ましい。具体的には、波長400nm~700nmにおいて測定される全光線透過率が、高いことが好ましい。第二基材の具体的な全光線透過率の範囲は、第一基材の全光線透過率の範囲と同じでありうる。ただし、第二基材の全光線透過率と、第一基材の全光線透過率とは、同一でもよく、異なっていてもよい。第二基材の全光線透過率は、第一基材の全光線透過率の測定方法と同じ方法によって測定しうる。
【0213】
第二基材の材料は、特段の制限は無い。また、第二基材は、1層のみを含む単層構造を有していてもよく、2層以上を含む複層構造を有していてもよい。好ましくは、第二基材は、偏光子層を備える。偏光子層を備える第二基材を用いることにより、偏光板として機能できる積層体を得ることができる。
【0214】
偏光子層としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;などの、直線偏光子層が挙げられる。また、偏光子層の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうち、偏光子層としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0215】
偏光子層に自然光を入射させると、通常、一方の偏光だけが透過する。この偏光子層の偏光度は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。また、偏光子層の厚みは、好ましくは5μm~80μmである。
【0216】
第二基材が前記の偏光子層を含む場合、その第二基材は、偏光子層に組み合わせて、任意の層を含んでいてもよい。このような任意の層としては、例えば、保護フィルム層が挙げられる。通常は、偏光子層及び保護フィルム層がアップコンバージョン接着層側からこの順に並ぶように、偏光子層及び保護フィルム層が設けられる。
【0217】
保護フィルム層としては、例えば、樹脂フィルム層を用いうる。この樹脂フィルム層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性に優れることが好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、複屈折が小さい点でアセテート樹脂、ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、ノルボルネン系樹脂が特に好ましい。
【0218】
保護フィルム層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤を含む保護フィルム層は、通常、紫外線を遮断する能力を有する紫外線カットフィルムとして機能できる。また、紫外線吸収剤を含む保護フィルム層を備える第二基材は、通常は、波長380nmにおいて低い光透過率を有することができる。紫外線吸収剤の種類及び量は、第二基材の波長380nmにおける光透過率を上述した範囲に収めることができるように適切に選択しうる。
【0219】
また、第二基材は、偏光子層及び保護フィルム層に組み合わせて、更に任意の層を含んでいてもよい。任意の層としては、例えば、偏光子層及び保護フィルム層を貼り合わせるための接着剤層及び粘着剤層が挙げられる。
【0220】
偏光子層を含む基材以外の第二基材の例としては、例えば、第一基材の項で説明した液晶硬化層、並びに、液晶硬化層と任意の層との組み合わせ、などが挙げられる。さらに、第二基材としては、例えば、積層体の用途に応じて、樹脂フィルム、ガラスシート等の、上述した例示物以外の基材を用いてもよい。
【0221】
第二基材のヘイズは、小さいことが好ましい。具体的な第二基材のヘイズの範囲は、第一基材のヘイズの範囲と同じでありうる。ただし、第二基材のヘイズと、第一基材のヘイズとは、同一でもよく、異なっていてもよい。第二基材のヘイズは、第一基材のヘイズの測定方法と同じ方法によって測定しうる。
【0222】
第二基材の製造方法は、特段の制限は無い。例えば、偏光子層及び保護フィルム層を含む第二基材は、偏光子層と保護フィルム層とを貼り合わせることを含む製造方法によって、製造できる。貼り合せには、必要に応じて、接着剤又は粘着剤を用いてもよい。
【0223】
[4.アップコンバージョン接着層]
アップコンバージョン接着層は、紫外線硬化型接着剤及びアップコンバージョン化合物を含む。
【0224】
紫外線硬化型接着剤は、紫外線の照射を受けて硬化できるタイプの接着剤である。通常、紫外線硬化型接着剤は、接着対象の2つの界面のうちの一方又は両方に塗工され、必要であれば適宜乾燥されて、未硬化状態の接着剤の層を形成する。その後、この未硬化状態の接着剤の層を介して接着対象を貼り合わせた後に、その接着剤の層に紫外線が照射されることにより、硬化して、最終的な接着能を発現できる。よって、紫外線硬化型接着剤は、硬化した状態で、積層体のアップコンバージョン接着層に含まれうる。
【0225】
紫外線硬化型接着剤は、未硬化状態においては、通常、紫外線の照射によって重合可能な1種類以上の重合性化合物を含む。このような重合性化合物は、一般的にはモノマー又はオリゴマーである。そして、紫外線硬化型接着剤の硬化時には、前記の重合性化合物の重合反応が進行しうる。よって、硬化した状態の紫外線硬化型接着剤には、その重合性化合物が重合して得られるポリマーが含まれうる。重合性化合物の種類に制限はない。重合性化合物の好ましい例としては、特開2013-29827号公報に記載された(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、重合性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線硬化型接着剤の固形分100重量%に対する重合性化合物又はその重合体の量は、特段の制限はないが、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、また、好ましくは90重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0226】
紫外線硬化型接着剤は、紫外線を受けて活性種を発生できる重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の種類に制限は無い。重合開始剤の好ましい例としては、特開2013-29827号公報に記載されたものを用いうる。また、重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線硬化型接着剤の固形分100重量%に対する重合開始剤の量は、特段の制限はないが、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0227】
紫外線硬化型接着剤は、更に、任意の成分を含んでいてもよい。これらの任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線硬化型接着剤が含みうる任意の成分としては、例えば、光増感剤;溶媒;イソシアネート基を分子中に含むモノマー、メルカプト基を分子中に含むモノマー、等の、接着力を向上させるための成分;エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、カチオン重合開始剤等の、カチオン重合硬化性の成分;架橋剤;無機フィラー;重合禁止剤;顔料、染料等の着色剤;消泡剤;レベリング剤;分散剤;光拡散剤;可塑剤;帯電防止剤;界面活性剤;非反応性ポリマー(不活性重合体);粘度調整剤;近赤外線吸収材;などが挙げられる。これらの例及び量は、例えば、特開2013-29827号公報の記載を参照しうる。
【0228】
アップコンバージョン化合物は、可視光を受けて紫外線を発光する能力を有する。この能力は、必ずしも1種類の化合物によって達成されていなくてもよく、2種類以上の化合物の組み合わせによって達成されていてもよい。よって、アップコンバージョン化合物は、可視光を受けて紫外線を発光する能力を有する化合物の組み合わせを含んでいてもよい。
【0229】
アップコンバージョン化合物の具体例としては、式(UC1)で表される化合物及び式(UC2)で表される化合物の組み合わせが挙げられる。以下の説明では、式(UC1)で表される化合物を、「ドナー化合物(UC1)」ということがある。また、式(UC2)で表される化合物を、「アクセプター化合物(UC2)」ということがある。この組み合わせにおいては、ドナー化合物(UC1)が可視光のエネルギーを吸収し、その吸収されたエネルギーがアクセプター化合物(UC2)に供給されて、そのアクセプター化合物(UC2)が紫外線を発光できる。
【0230】
【化32】
【0231】
前記の組み合わせにおいて、ドナー化合物(UC1)100重量部に対するアクセプター化合物(UC2)の量は、好ましくは200重量部以上、より好ましくは300重量部以上、特に好ましくは400重量部以上であり、好ましくは800重量部以下、より好ましくは700重量部以下、特に好ましくは600重量部以下である。ドナー化合物(UC1)及びアクセプター化合物(UC2)の量比が前記範囲に収まる場合に、これらを含むアップコンバージョン化合物が紫外線を効果的に発光できる。よって、紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させることができるので、積層体の耐熱性を効果的に向上させられる。
【0232】
アップコンバージョン接着層において、紫外線硬化型接着剤の固形分100重量部に対するアップコンバージョン化合物の量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、特に好ましくは1.0重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7.5重量部以下、特に好ましくは5.0重量部以下である。アップコンバージョン化合物の量が前記範囲の下限値以上である場合、アップコンバージョン化合物が紫外線硬化型接着剤の硬化を促進するのに十分な量の紫外線を発光できる。よって、紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させることができるので、積層体の耐熱性を効果的に向上させられる。また、アップコンバージョン化合物の量が前記範囲の上限値以下である場合、アップコンバージョン化合物の色味が積層体の色相に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0233】
アップコンバージョン接着層の層構成に制限は無い。よって、アップコンバージョン接着層は、1層のみを含む単層構造を有していてもよく、2層以上を含む複層構造を有していてもよい。
【0234】
アップコンバージョン接着層が単層構造を有する場合、単一のアップコンバージョン接着層が紫外線硬化型接着剤及びアップコンバージョン化合物の両方を含みうる。この場合、そのアップコンバージョン接着層の組成は均一でありうる。
【0235】
アップコンバージョン接着層が複層構造を有する場合、そのアップコンバージョン接着層は、紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層と、アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層とを組み合わせて含みうる。この場合、アップコンバージョン接着層は、アップコンバージョン層とUV接着剤層とを第一基材側からこの順に備えていてもよい。また、アップコンバージョン接着層は、UV接着剤層とアップコンバージョン層とを第一基材側からこの順に備えていてもよい。さらに、アップコンバージョン接着層は、第一のアップコンバージョン層とUV接着剤層と第二のアップコンバージョン層とを第一基材側からこの順に備えていてもよい。
【0236】
アップコンバージョン接着層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。アップコンバージョン接着層の厚みが、前記範囲の下限値以上である場合、アップコンバージョン接着層が高い接着力を発揮できるので、第一基材と第二基材とを強力に接着できる。また、アップコンバージョン接着層の厚みが、前記範囲の上限値以下である場合、アップコンバージョン接着層中の紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させられるので、耐熱性を効果的に高めることができる。
【0237】
アップコンバージョン接着層がUV接着剤層及びアップコンバージョン層を組み合わせて含む複層構造を有する場合、UV接着剤層の厚みとアップコンバージョン層の厚みとの比(UV接着剤層/アップコンバージョン層)は、好ましくは100/100以上、より好ましくは100/75以上、特に好ましくは100/50以上であり、好ましくは100/1以下、より好ましくは100/2.5以下、特に好ましくは100/5以下である。厚みの比(UV接着剤層/アップコンバージョン層)が、前記範囲の下限値以上である場合、UV接着剤層が高い接着力を発揮できるので、第一基材と第二基材とを強力に接着できる。また、厚みの比(UV接着剤層/アップコンバージョン層)が、前記範囲の上限値以下である場合、アップコンバージョン接着層中の紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させられるので、耐熱性を効果的に高めることができる。
【0238】
[5.任意の層]
本実施形態に係る積層体は、上述した第一基材、第二基材及びアップコンバージョン接着層に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。任意の層としては、例えば、積層体を巻き取る際に当該積層体を保護するためのマスキングフィルム層、などが挙げられる。
【0239】
[6.積層体の特性]
上述した積層体は、耐熱性に優れる。特に、第一基材及び第二基材の少なくとも一方が、例えば液晶硬化層を備える基材のように重合性液晶化合物を含む基材である場合、積層体の耐熱性は、当該重合性液晶化合物を含む基材のレターデーションの変化によって表すことができる。具体的には、重合性液晶化合物を含む基材のレターデーションの高温環境における変化が小さいほど、耐熱性に優れると評価できる。例えば、第一基材が液晶硬化層を含む場合、その第一基材が、前記の「重合性液晶化合物を含む基材」に該当しうる。
【0240】
より詳細には、耐熱性は、積層体を85℃で100時間加熱する耐熱試験による重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションの変化率ΔRe(%)の絶対値によって表すことができる。一例において、耐熱試験による重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションの変化率ΔRe(%)の絶対値は、好ましくは2.4%以下、より好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0241】
前記の耐熱試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)は、下記の方法によって測定しうる。
耐熱試験の前に、積層体が備える重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションReH0を測定する。その後、積層体に、85℃で100時間加熱する耐熱試験を行う。この耐熱試験の後で、積層体が備える重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションReH100を測定する。耐熱試験前の面内レターデーションReH0と耐熱試験後の面内レターデーションReH100とを用いて、下記式(T1)により、耐熱試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)を計算できる。
ΔRe(%)={(ReH100-ReH0)/ReH0}×100 (T1)
【0242】
上述した積層体は、通常、耐光性に優れる。特に、第一基材及び第二基材の少なくとも一方が、例えば液晶硬化層を備える基材のように重合性液晶化合物を含む基材である場合、積層体の耐光性は、当該重合性液晶化合物を含む基材のレターデーションの変化によって表すことができる。具体的には、重合性液晶化合物を含む基材のレターデーションの変化が小さいほど、耐光性に優れると評価できる。
【0243】
より詳細には、耐光性は、積層体に温度63℃の環境において、高圧水銀ランプから照射強度50mW/cmの光を300時間照射する耐光試験による重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションの変化率ΔRe(%)の絶対値によって表すことができる。一例において、耐光試験による重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションの変化率ΔRe(%)の絶対値は、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0244】
前記の耐光試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)は、下記の方法によって測定しうる。
耐光試験の前に、積層体が備える重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションReL0を測定する。その後、積層体に、温度63℃の環境において高圧水銀ランプから照射強度50mW/cmの光を300時間照射する耐光試験を行う。この耐光試験の後で、積層体が備える重合性液晶化合物を含む基材の面内レターデーションReL100を測定する。耐光試験前の面内レターデーションReL0と耐光試験後の面内レターデーションReL100とを用いて、下記式(T2)により、耐光試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)を計算できる。
ΔRe(%)={(ReL100-ReL0)/ReL0}×100 (T2)
【0245】
本実施形態に係る積層体が前記のように優れた耐熱性及び耐光性を有する仕組みは、下記の通りであると、本発明者は推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みに限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0246】
従来、複数の基材を紫外線硬化型接着剤で接着する場合には、基材同士を紫外線硬化型接着剤の層を介して貼り合わせた後で、その紫外線硬化型接着剤の層に紫外線を照射して硬化させることが一般的であった。しかし、紫外線の透過率が低い基材を用いた場合には、紫外線硬化型接着剤に充分な量の紫外線が届けられず、紫外線硬化型接着剤の硬化が不十分となることがありえた。そして、このように紫外線硬化型接着剤の硬化が不十分であることにより、積層体の耐熱性が低くなることがありえた。
【0247】
これに対し、本実施形態に係る積層体は、紫外線硬化型接着剤に組み合わせてアップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン接着層によって、第一基材と第二基材とを接着している。アップコンバージョン化合物が可視光を受けて紫外線を発光できるので、第一基材又は第二基材を透過して供給される紫外線だけでなく、アップコンバージョン化合物が発光する紫外線によっても、紫外線硬化型接着剤の硬化を進行させることができる。よって、第一基材及び第二基材の紫外線の透過率が低くても、紫外線硬化型接着剤の硬化を十分に進行させることができる。したがって、耐熱性に優れた積層体を得ることができる。
【0248】
また、本実施形態に係る積層体が備える第一基材及び第二基材は、通常、紫外線を遮ることができるので、その紫外線による積層体へのダメージを抑制できる。よって、耐光性に優れる積層体を得ることができる。例えば、第一基材又は第二基材に液晶硬化層が含まれる場合、液晶硬化層に含まれる重合性液晶化合物又はその重合体への紫外線の進入を抑制できるので、紫外線による分子構造の変化を抑制できる。したがって、重合性液晶化合物を含む基材のレターデーションが紫外線によって変化することを抑制できる。
【0249】
本実施形態に係る積層体は、円偏光板として機能できるものであってもよい。円偏光板として機能できる積層体は、例えば、液晶硬化層及び偏光子層の一方を含む第一基材と、液晶硬化層及び偏光子層の他方を含む第二基材とを用いることにより、得ることができる。この際、第一基材及び第二基材の接着角度は、偏光子層の透過軸と液晶硬化層の遅相軸とがなす角度が、45°またはそれに近い角度となるように調整することが好ましい。前記の角度は、具体的には、好ましくは40°以上、より好ましくは41°以上、特に好ましくは42°以上であり、また、好ましくは50°以下、より好ましくは49°以下、特に好ましくは48°以下である。
【0250】
[7.積層体の製造方法]
本実施形態に係る積層体の製造方法に制限は無い。通常、積層体は、第一基材と第二基材とを、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むアップコンバージョン接着層を介して貼り合わせる工程と、アップコンバージョン接着層に光を照射して当該アップコンバージョン接着層に含まれる紫外線硬化型接着剤を硬化させる工程と、をこの順に含む製造方法によって製造できる。
【0251】
前記の製造方法では、アップコンバージョン接着層に照射する光として、可視光を含む光を用いることが好ましく、可視光及び紫外光を含む光を用いることが好ましい。可視光を含む光とは、380nm以上700nm以下の可視波長範囲にある1以上の波長の光線を含む光を表す。また、紫外光を含む光とは、1nm以上380nm未満の紫外波長範囲にある1以上の波長の光線を含む光を表し、好ましくは200nm以上380nm未満の波長範囲にある1以上の波長の光線を含む光を表す。可視光を含む光は、第一基材及び第二基材を透過しうるので、アップコンバージョン接着層中のアップコンバージョン化合物に吸収されることができる。アップコンバージョン化合物は、吸収した可視光のエネルギーを用いて紫外光を発光し、この紫外光により、アップコンバージョン接着層中の紫外線硬化型接着剤を硬化させることができる。よって、第一基材及び第二基材が紫外線を遮る能力を有していても、紫外線硬化型接着剤の硬化を効果的に進行させることができるので、積層体を円滑に製造できる。さらに、アップコンバージョン接着層に照射する光が紫外線を含んでいる場合には、その紫外線の一部は第一基材又は第二基材を透過してアップコンバージョン接着層中の紫外線硬化型接着剤の硬化に使われることができる。よって、紫外線硬化型接着剤の硬化を更に効果的に進行させることができるので、積層体を特に効率良く製造できる。
【0252】
例えば、積層体は、
第一基材及び第二基材の一方に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とを含むアップコンバージョン接着層を形成する工程と、
アップコンバージョン接着層と、第一基材及び第二基材の他方とを貼り合わせる工程と、
第一基材及び第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光をアップコンバージョン接着層に照射する工程と、
をこの順に含んでいてもよい。以下、この第一の例に係る製造方法について、説明する。
【0253】
第一の例に係る積層体の製造方法では、第一基材及び第二基材の一方に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とを含むアップコンバージョン接着層を形成する工程を行う。通常は、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とを含む接着組成物を用意し、第一基材及び第二基材の一方の表面に、この接着組成物の層としてアップコンバージョン接着層を形成する。
【0254】
接着組成物は、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤及びアップコンバージョン化合物、並びに、任意の成分を含みうる。接着組成物が任意の成分として溶媒を含む場合、その溶媒は、接着組成物の層の形成後に揮発しうるが、その溶媒の一部は、乾燥後にアップコンバージョン接着層に残存してもよい。
【0255】
接着組成物は、通常、液状の組成物として用意される。よって、接着組成物の層の形成は、接着組成物の塗工によって行いうる。塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。また、液晶組成物の層の形成後、その層から溶媒等の揮発性成分を除去するために、乾燥工程を行ってもよい。
【0256】
その後、第一基材及び第二基材の一方に形成されたアップコンバージョン接着層と、第一基材及び第二基材の他方とを貼り合わせる工程を行う。アップコンバージョン接着層と第一基材及び第二基材の他方との界面に気泡が形成されないようにするため、貼り合わせは、ニップロール等の押圧具によって第一基材及び第二基材を押圧しながら行ってもよい。また、第一基材及び第二基材がフィルム状の薄い部材である場合、シワの発生を抑制するために、それら第一基材及び第二基材に張力をかけた状態で貼り合わせを行ってもよい。
【0257】
その後、第一基材及び第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光をアップコンバージョン接着層に照射する工程を行う。光の照射により、アップコンバージョン接着層に含まれる紫外線硬化型接着剤を硬化させることができる。この際、照射された紫外線だけでなく、可視光を受けたアップコンバージョン化合物が発光する紫外線によっても紫外線硬化型接着剤を硬化させることができるので、紫外線硬化型接着剤の硬化を充分に進行させることができる。したがって、高い耐熱性を有する積層体を得ることができる。
【0258】
また、例えば、積層体は、
第一基材及び第二基材の一方に、アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程と、
アップコンバージョン層上に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程と、
UV接着剤層と、第一基材及び第二基材の他方とを貼り合わせる工程と、
第一基材及び第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光をUV接着剤層に照射する工程と、
をこの順に含んでいてもよい。以下、この第二の例に係る製造方法について、説明する。
【0259】
第二の例に係る積層体の製造方法では、第一基材及び第二基材の一方に、アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程を行う。アップコンバージョン層の形成方法に制限は無い。例えば、アップコンバージョン化合物と溶媒とを含むアップコンバージョン化合物溶液を用意し、このアップコンバージョン化合物溶液を第一基材及び第二基材の一方の表面に塗工し、乾燥して、アップコンバージョン層を形成してもよい。
【0260】
アップコンバージョン化合物溶液は、アップコンバージョン化合物と、溶媒と、更に必要に応じて任意の成分とを含みうる。溶媒としては、アップコンバージョン化合物を溶解可能な溶媒が好ましい。溶媒の具体的な種類は、アップコンバージョン化合物の種類に応じて選択しうる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。アップコンバージョン化合物溶液の塗工方法は、制限はなく、例えば、接着組成物の塗工方法として例示したのと同じ方法を採用しうる。また、乾燥方法は、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法を採用しうる。
【0261】
その後、アップコンバージョン層上に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程を行う。UV接着剤層の形成方法に制限は無い。例えば、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を、アップコンバージョン層上に塗工することにより、UV接着剤層を形成してもよい。紫外線硬化型接着剤の塗工方法は、制限はなく、例えば、接着組成物の塗工方法として例示したのと同じ方法を採用しうる。
【0262】
その後、アップコンバージョン層上に形成されたUV接着剤層と、第一基材及び第二基材の他方とを貼り合わせる工程を行う。この貼り合わせは、第一の例に係る製造方法で説明したのと同じく、押圧具によって第一基材及び第二基材を押圧しながら行ってもよく、また、第一基材及び第二基材に張力をかけた状態で行ってもよい。これにより、アップコンバージョン層と未硬化状態のUV接着剤層とを含むアップコンバージョン接着層を介した第一基材と第二基材との貼り合わせが達成される。
【0263】
その後、第一基材及び第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光をUV接着剤層に照射する工程を行う。光の照射により、UV接着剤層に含まれる紫外線硬化型接着剤を硬化させることができる。これにより、第一の例に係る製造方法と同じく、紫外線硬化型接着剤の硬化を充分に進行させることができるので、高い耐熱性を有する積層体を得ることができる。
【0264】
また、積層体の製造方法は、上述した例に係る製造方法に限定されない。例えば、第二の例に係る製造方法においては、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層をアップコンバージョン層上に形成する工程を行ったが、その工程の代わりに、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を第一基材及び第二基材の他方に形成する工程を行ってもよい。よって、例えば、積層体は、
第一基材及び第二基材の一方に、アップコンバージョン化合物を含むアップコンバージョン層を形成する工程と、
第一基材及び第二基材の他方に、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成する工程と、
アップコンバージョン層とUV接着剤層とを貼り合わせる工程と、
第一基材及び第二基材の少なくとも一方を通して、紫外光及び可視光を含む光をUV接着剤層に照射する工程と、
を含む製造方法によって製造してもよい。
【0265】
さらに、積層体の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。例えば、積層体の製造方法は、第一基材及び第二基材の表面に、コロナ処理等の表面処理を施す工程を含んでいてもよい。さらに、例えば、第一基材及び第二基材として長尺の部材を用いる場合には、長尺の積層体が得られるので、積層体の製造方法は、その長尺の積層体を巻き取って回収する工程を含んでいてもよい。
【0266】
[8.積層体の用途]
積層体の用途に制限はない。例えば、積層体は、光学用途に用いることができる。具体例を挙げると、液晶硬化層を含む第一基材と偏光子層を含む第二基材とを備える積層体は、偏光板として用いることができる。このような偏光板は、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置に設けることができる。
【0267】
特に、積層体が円偏光板として機能できる場合、その積層体は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の画面に設けることが好ましい。有機エレクトロルミネッセンス表示装置の画面に設けられた積層体は、反射抑制フィルムとして機能できるので、外光の反射を抑制することができる。画像表示装置は、車両の室内のように高温になりうる環境で使用されることがあるが、積層体が優れた耐熱性を有するので、積層体は高温環境においても、反射抑制フィルムとしての機能を発揮することが可能である。さらに、積層体は、第一基材及び第二基材が紫外線を遮断する能力を有するので、外光に含まれる紫外線から有機エレクトロルミネッセンス表示装置内の素子(有機エレクトロルミネッセンス素子等)を保護することが可能である。
【実施例
【0268】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0269】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。
また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
さらに、以下に説明する面内レターデーションの測定において、別に断らない限り、測定波長は590nmであった。
また、以下に説明する実際例及び比較例では、ガラス板及び粘着材を使用しているが、これらは光学等方性を有するので、後述するレターデーションの測定には影響を与えない。
【0270】
[評価方法]
以下、各実施例及び比較例で行った評価方法を説明する。
【0271】
(光透過率の測定方法)
分光光度計(日本分光社製「V-500」)を用いて、入射角0°で、測定波長200nm~800nmの範囲で透過吸収スペクトルを測定した。測定された透過吸収スペクトルから、測定波長380nmにおける光透過率を読み取った。
【0272】
(耐熱性の評価方法)
実施例及び比較例で得られたサンプルの液晶硬化層の面内レターデーションReH0を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて測定した。前記の位相差計「AxoScan」は、複数の層を含む積層体を試料として用いて、その積層体に含まれる一部の層としての液晶硬化層のみの面内レターデーションを測定可能な装置であった。
その後、サンプルに耐熱試験を施した。この耐熱試験では、85℃のオーブンにサンプルを入れ、100時間後に取り出した。
その後、耐熱試験後のサンプルの液晶硬化層の面内レターデーションReH100を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて測定した。
【0273】
耐熱試験前の面内レターデーションReH0と耐熱試験後の面内レターデーションReH100とを用いて、下記式(T1)により、耐熱試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)を計算した。この変化率ΔRe(%)の絶対値が小さいほど、耐熱性に優れることを示す。
ΔRe(%)={(ReH100-ReH0)/ReH0}×100 (T1)
【0274】
(耐光性の評価方法)
実施例及び比較例で得られたサンプルの液晶硬化層の面内レターデーションReL0を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて測定した。
その後、サンプルに耐光試験を施した。この耐光試験では、温度63℃の環境において、サンプルのガラス板側の面に、実施例及び比較例で用いたのと同じ高圧水銀ランプから照射強度50mW/cmの光を300時間照射した。
その後、耐光試験後のサンプルの液晶硬化層の面内レターデーションReL100を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて測定した。
【0275】
耐光試験前の面内レターデーションReL0と耐光試験後の面内レターデーションReL100とを用いて、下記式(T2)により、耐光試験による面内レターデーションの変化率ΔRe(%)を計算した。この変化率ΔRe(%)の絶対値が小さいほど、耐光性に優れることを示す。
ΔRe(%)={(ReL100-ReL0)/ReL0}×100 (T2)
【0276】
[製造例1.第一基材としての液晶硬化層を備える複層液晶フィルムの製造]
(液晶組成物の調製)
下記式(X1)に示す重合性液晶化合物19.42部、架橋剤(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;新中村化学社製「NKエステルA-DCP」)1.94部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF-562」)0.06部、光重合開始剤(BASF社製「Irgacure OXE03」)0.85部、酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール;BHT)0.02部、及び、1,3-ジオキソランとシクロペンタノンの混合溶媒(1,3-ジオキソラン:シクロペンタノン=60:40(重量比))77.50部を混合して、液晶組成物を得た。式(X1)に示す重合性液晶化合物は、逆分散液晶化合物である。
【0277】
【化33】
【0278】
(支持体の用意)
脂環式構造含有重合体を含むペレット状の熱可塑性ノルボルネン樹脂(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を、90℃で5時間乾燥させた。乾燥させた樹脂を押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させた。溶融した樹脂を、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通した後、Tダイからキャスティングドラム上に、シート状に押し出した。この押し出された樹脂を冷却して、長尺の延伸前フィルムを得た。この延伸前フィルムを、マスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)で保護しながら巻取り、厚み80μm、幅1490mmの延伸前フィルムのロールを得た。
【0279】
前記のロールから延伸前フィルムを繰り出し、長手方向に搬送しながら、以下の処理を行った。
繰り出された延伸前フィルムから連続的にマスキングフィルムを剥離して、テンター延伸機に供給した。このテンター延伸機を用いて、延伸前フィルムを斜め方向に延伸して、幅手方向に対して45°(長手方向に対して45°)の角度をなす遅相軸を有する長尺の支持体フィルムを得た。その後、支持体フィルムの幅手方向の両端をトリミングし、幅を1350mmに調整した。得られた支持体フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションは143nm、厚みは77μmであった。得られた支持体フィルムは、新たなマスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)で保護しながら巻取り、支持体フィルムのロールを得た。
【0280】
(液晶硬化層の形成)
前記のロールから支持体フィルムを繰り出し、長手方向に搬送しながら、以下の処理を行った。
繰り出された支持体フィルムから連続的にマスキングフィルムを剥離した。支持体フィルムのマスキングフィルムが貼合されていた面に、前記の液晶組成物を、ダイコーターを用いて直接に塗工し、液晶組成物の層を形成した。ここで液晶組成物の支持体フィルムの面への塗工が「直接」とは、支持体フィルムの面と液晶組成物との間に他の層が無いことをいう。その後、支持体フィルム上の液晶組成物の層を、110℃で4分加熱した。この加熱により、液晶組成物の層の含まれる重合性液晶化合物を配向させる配向処理が行われた。また、この加熱により、液晶組成物の層に含まれる溶媒を除去する乾燥処理が行われた。その後、窒素雰囲気下で、支持体フィルムを温度40℃の支持ロールで支持した状態で、液晶組成物の層に対して、積算照度800mJ/cm(照射強度400mW/cm)以上の紫外線を照射した。紫外線の光源としては、アイグラフィック社製「水銀ランプ」を用いた。この紫外線の照射により、重合性液晶化合物の重合が進行して、液晶組成物の層が硬化した。その後、硬化した液晶組成物の層と支持体フィルムとを、一緒に、110℃×8分で加熱して、液晶硬化層(厚み80μm)及び支持体フィルムを備える長尺の複層液晶フィルムを得た。
【0281】
得られた複層液晶フィルムの380nmにおける光透過率を上述した測定方法で測定した。測定の結果、380nmにおける光透過率は5.0%であった。前記の支持体フィルムは、波長380nmにおける光透過率が100%であるので、前記の複層液晶フィルムの光透過率の値を、液晶硬化層の波長380nmにおける光透過率として採用した。
【0282】
[製造例2.接着組成物C1の用意]
式(UC1)で表されるドナー化合物1部と、式(UC2)で表されるアクセプター化合物5部とを混合して、アップコンバージョン化合物を得た。このアップコンバージョン化合物を、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤(トーヨーケム社製のCRBシリーズ)と混合して、接着組成物C1を得た。アップコンバージョン化合物及び紫外線硬化型接着剤の量は、紫外線硬化型接着剤の固形分100重量%に対して、アップコンバージョン化合物の量(即ち、式(UC1)で表されるドナー化合物と式(UC2)で表されるアクセプター化合物との合計量)が3重量%となるように調整した。
【0283】
[製造例3.接着組成物C2の用意]
アップコンバージョン化合物及び紫外線硬化型接着剤の量を、紫外線硬化型接着剤の固形分100重量%に対して、アップコンバージョン化合物の量(即ち、式(UC1)で表されるドナー化合物と式(UC2)で表されるアクセプター化合物との合計量)が0.50重量%となるように調整した。以上の事項以外は製造例2と同じ方法により、接着組成物C2を得た。
【0284】
[製造例4.アップコンバージョン化合物溶液の調製]
式(UC1)で表されるドナー化合物1部と、式(UC2)で表されるアクセプター化合物5部とを混合して、アップコンバージョン化合物を得た。このアップコンバージョン化合物を、N,N-ジメチルホルムアミドに溶解して、アップコンバージョン化合物溶液を得た。
【0285】
[実施例1]
(1-1.第二基材の用意)
波長390nm以下の光をカットできる紫外線カットフィルムF1を用意した。この紫外線カットフィルムF1は、紫外線吸収剤を含む熱可塑性ノルボルネン樹脂のフィルムであった。また、この紫外線カットフィルムの波長380nmにおける光透過率は、1.0%であった。
【0286】
ポリビニルアルコール樹脂で形成された偏光子フィルムと、前記の紫外線カットフィルムF1とを、粘着材(日東電工社製「LUCIAS CS9861US」)を介して貼り合わせた。これにより、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム」の層構成を有する直線偏光フィルムを、第二基材として得た。
【0287】
得られた第二基材の測定波長380nmにおける光透過率を上述した測定方法で測定した。測定の結果、測定波長380nmにおける光透過率は1.0%であった。
【0288】
(1-2.積層体の製造)
前記の第二基材の偏光子フィルム側の面に、硬化後に得られるアップコンバージョン接着層の厚みが0.5μmとなるように、製造例2で製造した接着組成物C1を塗工して、接着組成物C1の層を形成した。この接着組成物C1の層と、製造例1で製造した複層液晶フィルムの液晶硬化層側の面とを貼り合わせた。この貼り合わせは、厚み方向から見て、偏光子フィルムの透過軸と液晶硬化層の遅相軸とが45°の角度をなすように行った。これにより、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/接着組成物C1の層/液晶硬化層/支持体フィルム」の層構成を有する中間製造品を得た。
【0289】
その後、中間製造品の紫外線カットフィルムF1側の面に高圧水銀ランプを用いて光の照射を行うことにより、第二基材を通して接着組成物C1の層に光を照射した。使用した高圧水銀ランプは、紫外線及び可視光の両方を発光する光源であり、具体的には、波長365nm、440nm、550nm及び580nmに強い発光を有していた。また、前記の光の照射は、照射強度400mW/cm、積算照度800mJ/cmの条件で行った。この光の照射により、紫外線硬化型接着剤が硬化して、硬化した紫外線硬化型接着剤とアップコンバージョン化合物とを含むアップコンバージョン接着層が形成された。
【0290】
その後、支持体フィルムを剥離して、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン接着層/液晶硬化層」の層構成を有する積層体を得た。この積層体の紫外線カットフィルムF1側の面を、平板状のガラス板上に、粘着材(日東電工社製「LUCIAS CS9861US」)を介して貼り合わせて、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン接着層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを得た。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0291】
[実施例2]
製造例1で製造した複層液晶フィルムの液晶硬化層側の面に、製造例4で製造したアップコンバージョン化合物溶液をスピンコートによって塗工し、乾燥させて、厚み0.1μmのアップコンバージョン層を形成した。その後、アップコンバージョン層上に、硬化後のUV接着剤層の厚みが0.5μmとなるように、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤(トーヨーケム社製のCRBシリーズ)を塗工して、紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成した。
【0292】
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により製造した直線偏光フィルムとしての第二基材の偏光子フィルム側の面と、アップコンバージョン層上に形成されたUV接着剤層とを貼り合わせた。この貼り合わせは、厚み方向から見て、偏光子フィルムの透過軸と液晶硬化層の遅相軸とが45°の角度をなすように行った。これにより、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層/支持体フィルム」の層構成を有する中間製造品を得た。
【0293】
その後、中間製造品の紫外線カットフィルムF1側の面に高圧水銀ランプを用いて光の照射を行うことにより、第二基材を通してUV接着剤層に光を照射した。この光の照射は、実施例1での光の照射と同じ条件で行った。この光の照射により、紫外線硬化型接着剤が硬化して、「硬化したUV接着剤層/アップコンバージョン層」の層構成を有するアップコンバージョン接着層が形成された。
【0294】
その後、支持体フィルムを剥離して、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層」の層構成を有する積層体を得た。この積層体の紫外線カットフィルムF1側の面を、平板状のガラス板上に、粘着材(日東電工社製「LUCIAS CS9861US」)を介して貼り合わせて、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを得た。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0295】
[実施例3]
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により製造した直線偏光フィルムとしての第二基材の偏光子フィルム側の面に、製造例4で製造したアップコンバージョン化合物溶液をスピンコートによって塗工し、乾燥させて、厚み0.1μmのアップコンバージョン層を形成した。
【0296】
その後、アップコンバージョン層上に、硬化後のUV接着剤層の厚みが0.5μmとなるように、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤(トーヨーケム社製のCRBシリーズ)を塗工して、紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成した。このUV接着剤層と、製造例1で製造した複層液晶フィルムの液晶硬化層側の面とを貼り合わせた。この貼り合わせは、厚み方向から見て、偏光子フィルムの透過軸と液晶硬化層の遅相軸とが45°の角度をなすように行った。これにより、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/液晶硬化層/支持体フィルム」の層構成を有する中間製造品を得た。
【0297】
その後、中間製造品の紫外線カットフィルムF1側の面に高圧水銀ランプを用いて光の照射を行うことにより、第二基材及びアップコンバージョン層を通してUV接着剤層に光を照射した。この光の照射は、実施例1での光の照射と同じ条件で行った。この光の照射により、紫外線硬化型接着剤が硬化して、「アップコンバージョン層/硬化したUV接着剤層」の層構成を有するアップコンバージョン接着層が形成された。
【0298】
その後、支持体フィルムを剥離して、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/液晶硬化層」の層構成を有する積層体を得た。この積層体の紫外線カットフィルムF1側の面を、平板状のガラス板上に、粘着材(日東電工社製「LUCIAS CS9861US」)を介して貼り合わせて、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを得た。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0299】
[実施例4]
製造例1で製造した複層液晶フィルムの液晶硬化層側の面に、製造例4で製造したアップコンバージョン化合物溶液をスピンコートによって塗工し、乾燥させて、厚み0.05μmのアップコンバージョン層を形成した。
【0300】
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により製造した直線偏光フィルムとしての第二基材の偏光子フィルム側の面に、製造例4で製造したアップコンバージョン化合物溶液をスピンコートによって塗工し、乾燥させて、厚み0.05μmのアップコンバージョン層を形成した。
【0301】
その後、第二基板の偏光子フィルム側の面に形成したアップコンバージョン層上に、硬化後のUV接着剤層の厚みが0.5μmとなるように、未硬化状態の紫外線硬化型接着剤(トーヨーケム社製のCRBシリーズ)を塗工して、紫外線硬化型接着剤を含むUV接着剤層を形成した。このUV接着剤層と、複層液晶フィルムの液晶硬化層側の面に形成されたアップコンバージョン層とを貼り合わせた。この貼り合わせは、厚み方向から見て、偏光子フィルムの透過軸と液晶硬化層の遅相軸とが45°の角度をなすように行った。これにより、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層/支持体フィルム」の層構成を有する中間製造品を得た。
【0302】
その後、中間製造品の紫外線カットフィルムF1側の面に高圧水銀ランプを用いて光の照射を行うことにより、第二基材及びアップコンバージョン層を通してUV接着剤層に光を照射した。この光の照射は、実施例1での光の照射と同じ条件で行った。この光の照射により、紫外線硬化型接着剤が硬化して、「アップコンバージョン層/硬化したUV接着剤層/アップコンバージョン層」の層構成を有するアップコンバージョン接着層が形成された。
【0303】
その後、支持体フィルムを剥離して、「紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層」の層構成を有する積層体を得た。この積層体の紫外線カットフィルムF1側の面を、平板状のガラス板上に、粘着材(日東電工社製「LUCIAS CS9861US」)を介して貼り合わせて、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン層/UV接着剤層/アップコンバージョン層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを得た。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0304】
[実施例5]
第二基材の偏光子フィルム側の面に接着組成物C1を塗工する際、その接着組成物C1の塗工量を、硬化後に得られるアップコンバージョン接着層の厚みが1.0μmとなるように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン接着層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを製造した。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0305】
[実施例6]
波長380nm以下の光をカットできる紫外線カットフィルムF2を用意した。この紫外線カットフィルムF2は、紫外線吸収剤を含む熱可塑性ノルボルネン樹脂のフィルムであり、実施例1で用意した紫外線カットフィルムF1よりも紫外線を遮断する能力が低いフィルムであった。
【0306】
紫外線カットフィルムF1の代わりに本実施例6で用意した紫外線カットフィルムF2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF2/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン接着層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを製造した。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0307】
[比較例1]
アップコンバージョン化合物を含む接着組成物C1の代わりに、アップコンバージョン化合物を含まない未硬化状態の紫外線硬化型接着剤(トーヨーケム社製のCRBシリーズ)を用いた。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF1/粘着材/偏光子フィルム/UV接着剤層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを製造した。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0308】
[比較例2]
波長380nm以下の光をカットできる紫外線カットフィルムF3を用意した。この紫外線カットフィルムF3は、紫外線吸収剤を含む熱可塑性ノルボルネン樹脂のフィルムであり、実施例1及び実施例6で用意した紫外線カットフィルムF1及びF2よりも紫外線を遮断する能力が更に低いフィルムであった。
【0309】
紫外線カットフィルムF1の代わりに本比較例2で用意した紫外線カットフィルムF3を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、「ガラス板/粘着材/紫外線カットフィルムF3/粘着材/偏光子フィルム/アップコンバージョン接着層/液晶硬化層」の層構成を有するサンプルを製造した。こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法により、積層体の耐熱性及び耐光性の評価を行った。
【0310】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
T(380):波長380nmにおける光透過率。
UC接着層:アップコンバージョン接着層。
UC層:アップコンバージョン層。
UC化合物:アップコンバージョン化合物。
UC1:式(UC1)で表されるドナー化合物。
UC2:式(UC2)で表されるアクセプター化合物。
【0311】
【表1】
【符号の説明】
【0312】
100 積層体
110 第一基材
120 アップコンバージョン接着層
130 第二基材
200 積層体
220 アップコンバージョン接着層
221 UV接着剤層
222 アップコンバージョン層
図1
図2