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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】電子ビーム検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20230905BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20230905BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/20 D
H01J37/28 B
H01L21/66 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019236690
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106108
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 敏克
(72)【発明者】
【氏名】泉 義浩
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-079516(JP,A)
【文献】特開2005-032963(JP,A)
【文献】特開2006-351888(JP,A)
【文献】特開2007-266361(JP,A)
【文献】特開2008-130369(JP,A)
【文献】特開2009-087592(JP,A)
【文献】特開2011-122989(JP,A)
【文献】特開2013-125583(JP,A)
【文献】特開2014-075365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0090194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303844(US,A1)
【文献】国際公開第2010/097858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/28
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された検査対象の基板を載置する移動可能なステージと、
前記基板に電子ビームを照射し、該基板の2次電子画像を取得する画像取得部と、
前記2次電子画像と、対応する参照画像とを比較する比較部と、
を備え、
前記ステージは、
平面方向に移動可能なXYステージと、
前記XYステージ上に設けられた台座と、
前記台座上に設けられ、前記基板を昇降する昇降部と、
中央部に開口が設けられた天蓋部、及び該天蓋部の外周に設けられ、該天蓋部よりも下方に延出する周壁部を含むカバーと、
を有し、
前記カバーの前記周壁部の下端部が前記台座に直接又は間接的に固定されており、
前記昇降部によって上昇した前記基板が前記天蓋部の下面側に接触し、該天蓋部が該基板の上面の周縁部を覆う状態で、該基板の検査を行い、
前記天蓋部は、支持部と、該支持部から前記開口に向かって延出する内方延出部とを有し、該内方延出部の下面から下方に突出し、前記基板に所定のリターディング電圧を印加する電極ピンが設けられていることを特徴とする電子ビーム検査装置。
【請求項2】
前記支持部は前記内方延出部よりも下方に張り出していることを特徴とする請求項に記載の電子ビーム検査装置。
【請求項3】
前記電極ピンは複数設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の電子ビーム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターンをウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。
【0003】
多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。半導体ウェーハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェーハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
また、歩留まりを低下させる要因の1つとして、半導体ウェーハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥が挙げられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0005】
パターン欠陥の検査手法としては、半導体ウェーハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計データ又は基板上の同一パターンを撮像した測定画像とを比較する方法が知られている。例えば、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」が挙げられる。比較した画像が一致しない場合、パターン欠陥有りと判定される。
【0006】
検査対象の基板上を電子ビームで走査(スキャン)し、電子ビームの照射に伴い基板から放出される2次電子を検出して、パターン像を取得する検査装置の開発が進んでいる。電子ビームを用いた検査装置は、電子ビームを放出する電子銃等が収容されたカラムと、検査対象基板が載置されたステージを収容する検査室とが連結されている。ステージが動くことにより電子ビームが基板上を走査し、検査が行われる。検査装置では、計測精度を高くすると共に、電子ビームの照射に伴う基板へのダメージを抑制する必要がある。そのため、電子ビームを高いエネルギーで加速すると共に、基板にリターディング電圧を印加して基板に入射する直前に電子ビームを減速させている。
【0007】
高精度で高分解能な検査を行うためには、検査対象の基板の上面とカラムとの間隔が一定となるように、ステージ上に基板を載置する必要がある。しかし、基板によって厚みにバラツキがあるため、ステージ上に載置した基板の上面とカラムとの間隔を一定にすることが困難であった。
【0008】
基板に電子ビームを照射する装置の一例である電子ビーム描画装置では、ガラス基板、クロム膜、及びレジスト膜が積層されたマスク基板(マスクブランクス)に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する。電子ビーム描画装置では、マスク基板を接地するために、図9(a)、図9(b)に示すようなマスクカバーHを使用している。図9(b)は図9(a)のIXb-IXb線断面図である。
【0009】
マスクカバーHは導電性を有し、中央部に開口部30を有する額縁形状の枠体31に、複数のアース機構32が設けられたものである。枠体31のサイズはマスク基板よりやや大きく、開口部30のサイズはマスク基板よりやや小さくなっている。
【0010】
各アース機構32は、枠体31に接続された板状の導電体であるアースプレート33を有する。アースプレート33は、一端が枠体31の外側に突出し、他端が枠体31の開口内側に突出するように設けられる。アースプレート33の一端には、アースプレート33を支持して描画中にアースを取る支持ピン34が設けられる。アースプレート33の他端には、下方に突出するようにアースピン35が設けられる。図9(a)はアース機構32が3つ設けられる例を示している。複数のアース機構32は、枠体31に等間隔に配置されている。
【0011】
図9(c)に示すように、ガラス基板91上に遮光膜(例えばクロム膜)92及びレジスト膜93が積層されたマスク基板90にマスクカバーHをセットすると、マスクカバーHの自重によりアースピン35がレジスト膜93を突き破って導電体である遮光膜92に接触する。
【0012】
このようにマスクカバーHがマスク基板90上に載置された状態で、マスク基板90上に電子ビームによる描画が行われる。この際、マスクカバーHは、図示しないアースと接続されている。電子ビームの照射によりマスク基板90に蓄積する電荷は、マスクカバーHを介して排出される。
【0013】
電子ビーム描画装置で使用されるマスクカバーHは、単にマスク基板90上に載せられるものであるため、マスク基板90の上面高さは、マスク基板90の厚みによって変わる。そのため、マスクカバーHを検査装置に適用したとしても、ステージ上に載置した検査対象の基板の上面とカラムとの間隔を一定にすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2008-27737号公報
【文献】特開2016-127023号公報
【文献】特開2009-245953号公報
【文献】特開2010-257994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、基板上面が所定の基準高さとなるようにステージ上に基板を載置できる電子ビーム検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様による電子ビーム検査装置は、パターンが形成された検査対象の基板を載置する移動可能なステージと、前記基板に電子ビームを照射し、該基板の2次電子画像を取得する画像取得部と、前記2次電子画像と、対応する参照画像とを比較する比較部と、を備える。前記ステージは、平面方向に移動可能なXYステージと、前記XYステージ上に設けられた台座と、前記台座上に設けられ、前記基板を昇降する昇降部と、中央部に開口が設けられた天蓋部、及び該天蓋部の外周に設けられ、該天蓋部よりも下方に延出する周壁部を含むカバーと、を有する。前記カバーの前記周壁部の下端部が前記台座に直接又は間接的に固定されており、前記昇降部によって上昇した前記基板が前記天蓋部の下面に接触し、該天蓋部が該基板の上面の周縁部を覆う状態で、該基板の検査を行う。
【0017】
本発明の一態様では、前記天蓋部は、支持部と、該支持部から前記開口に向かって延出する内方延出部とを有し、該内方延出部の下面から下方に突出し、前記基板に所定のリターディング電圧を印加する電極ピンが設けられている。
【0018】
本発明の一態様では、前記支持部は前記内方延出部よりも下方に張り出している。
【0019】
本発明の一態様では、前記電極ピンは複数設けられている。
【0020】
本発明の一態様では、前記昇降部は、前記基板が載置される昇降自在なプレートを有し、該プレートの上面に、該基板に所定のリターディング電圧を印加する電極が設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板上面が所定の基準高さとなるようにステージ上に基板を載置できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるパターン検査装置の概略構成図である。
図2】成形アパーチャアレイ基板の平面図である。
図3】ステージの概略構成図である。
図4】リフトテーブルの概略構成図である。
図5】カバーの斜視図である。
図6】上下を反転したカバーの斜視図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8】(a)~(e)は基板の移動を説明する図である。
図9】(a)は比較例によるマスクカバーの平面図であり、(b)はマスクカバーの断面図であり、(c)はマスク基板にマスクカバーをセットした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態において、被検査基板上に形成されたパターンを撮像する(被検査画像を取得する)手法の一例として、電子ビームによるマルチビームを被検査基板に照射して2次電子像を撮像する構成について説明する。但し、マルチビームに限るものではなく、シングルビームを被検査基板に照射して2次電子像を撮像してもよい。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るパターン検査装置の概略構成を示す。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、マルチビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、電子ビーム画像取得装置の一例である。また、検査装置100は、マルチビーム画像取得装置の一例である。
【0025】
検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備える。画像取得機構150は、主電子ビームカラム102、副電子ビームカラム104、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。
【0026】
主電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、及びビームセパレータ214が配置されている。縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、及び一括ブランキング偏向器212により、1次電子光学系が構成される。但し、1次電子光学系の構成は、これに限るものではない。その他の光学素子等が配置されても構わない。
【0027】
副電子ビームカラム104内には、投影レンズ224,226、偏向器228、及びマルチ検出器222が配置されている。ビームセパレータ214、投影レンズ224,226、及び偏向器228により、2次電子光学系が構成される。但し、2次電子光学系の構成は、これに限るものではない。その他の光学素子等が配置されても構わない。マルチ検出器222は、副電子ビームカラム104の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0028】
検査室103内には、XY平面方向及び高さ方向に移動可能なステージ400が配置される。ステージ400上には、検査対象となる基板101が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。
【0029】
基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ400に配置される。また、ステージ400上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。
【0030】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バスを介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。
【0031】
偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。
【0032】
ステージ400は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。ステージ400は、水平方向、高さ方向及び回転方向に移動可能である。ステージ400の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ400の位置を測長する。
【0033】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0034】
照明レンズ202、縮小レンズ205、対物レンズ207、及び投影レンズ224,226は、例えば電磁レンズが用いられ、共にレンズ制御回路124によって制御される。また、ビームセパレータ214もレンズ制御回路124によって制御される。
【0035】
一括ブランキング偏向器212、及び偏向器228は、それぞれ少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208、及び副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成される。主偏向器208は、電極毎に配置されるDACアンプ146を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、副偏向器209は、電極毎に配置されるDACアンプ144を介して、偏向制御回路128によって制御される。
【0036】
図2に示すように、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)m行×横(x方向)n列(m,n≧2)の開口22が所定の配列ピッチで形成されている。各開口22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。各開口22は、同じ外径の円形であっても構わない。
【0037】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。
【0038】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、矩形の複数の開口22が形成され、電子ビーム200は、すべての開口22が含まれる領域を照明する。電子ビーム200の一部が成形アパーチャアレイ基板203の複数の開口22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形の複数の1次電子ビーム(マルチビーム)20が形成される。
【0039】
マルチビーム20は、その後、クロスオーバー(C.O.)を形成し、クロスオーバー位置に配置されたビームセパレータ214を通過した後、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。
【0040】
成形アパーチャアレイ基板203と縮小レンズ205との間に配置された一括ブランキング偏向器212によって、マルチビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によってマルチビーム20が遮蔽される。
【0041】
一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。
【0042】
このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用のマルチビーム20が形成される。
【0043】
制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により基板101面上に焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0044】
例えば、ステージ400を連続移動させながらスキャンを行う。そのため、主偏向器208は、ステージ400の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するようにマルチビーム20全体を一括偏向する。
【0045】
一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の開口22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶ。
【0046】
このように、主電子ビームカラム102は、一度に2次元状のマルチビーム20を基板101に照射する。基板101の所望する位置にマルチビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)(図1の破線)が放出される。
【0047】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、対物レンズ207によって、マルチ2次電子ビーム300の中心側に屈折させられ、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。制限アパーチャ基板206を通過したマルチ2次電子ビーム300は、縮小レンズ205によって光軸とほぼ平行に屈折させられ、ビームセパレータ214に進む。
【0048】
ビームセパレータ214は、マルチビーム20が進む方向(光軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため、電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。
【0049】
ビームセパレータ214に上側から侵入してくるマルチビーム20(1次電子ビーム)には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレータ214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられる。
【0050】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、投影レンズ224,226によって、屈折させられながら、マルチ検出器222側に一括して誘導される。誘導されたマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。
【0051】
マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。
【0052】
参照画像作成回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、又は基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、マスクダイ毎に、参照画像を作成する。例えば、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0053】
設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0054】
図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると、図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターンの画像データに展開し、出力する。
【0055】
言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。マス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0056】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にある。そのため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計パターンの画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0057】
比較回路108は、基板101から測定された測定画像と、対応する参照画像とを比較する。具体的には、位置合わせされた被検査画像と参照画像とを、画素毎に比較する。所定の判定閾値を用いて所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥候補と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109やメモリ118に格納されてもよいし、モニタ117に表示されてもよいし、プリンタ119からプリント出力されてもよい。
【0058】
上述したダイ-データベース検査の他に、ダイ-ダイ検査を行っても良い。ダイ-ダイ検査を行う場合、同一基板101上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する。そのため、画像取得機構150は、マルチビーム20(電子ビーム)を用いて、同じ図形パターン同士(第1と第2の図形パターン)が異なる位置に形成された基板101から一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)のそれぞれの2次電子画像である測定画像を取得する。この場合、取得される一方の図形パターンの測定画像が参照画像となり、他方の図形パターンの測定画像が被検査画像となる。取得される一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)の画像は、同じチップパターンデータ内にあっても良いし、異なるチップパターンデータに分かれていてもよい。検査の仕方は、ダイ-データベース検査と同様で構わない。
【0059】
次に、ステージ400の構成について説明する。図3に示すように、ステージ400は、検査室103の底面上にスペーサ402を介して設置されたXYステージ404と、XYステージ上にアダプタプレート406を介して設置されたZステージ408と、Zステージ408上に設けられた台座410と、台座410上に固定されたリフトテーブル420と、リフトテーブル420上に設けられたカバー430とを備える。
【0060】
図4に示すように、リフトテーブル420(昇降部)は、本体421と、本体421から垂直方向に延びるロッド422と、ロッド422の上端に設けられたプレート423とを有する。プレート423上に基板101が載置される。ロッド422は、プレート423を昇降自在に支持する。垂直アクチュエータ(図示略)によりロッド422が上下動(又は伸縮)することで、プレート423と共に基板101が昇降する。基板101にビームを照射する際、リフトテーブル420は、基板101を上昇させ、カバー430の天蓋部431(図5図7参照)の下面側に設けられた電極ピン435(図7参照)に基板101の上面を押し当てる。
【0061】
図5はカバー430の斜視図であり、図6はカバー430の上下を反転した斜視図であり、図7図5のVII-VII線断面図である。
【0062】
カバー430は、例えばチタン製であり、中央部に略矩形状の開口432が設けられた階段状(断面L字形状)の天蓋部431(天井部)と、天蓋部431の外周に設けられ、天蓋部431よりも下方に延出する周壁部433とを有する。周壁部433の下面が、リフトテーブル420の本体421の上面に固定され、リフトテーブル420の本体421とカバー430とが連結される。天蓋部431の上面と周壁部433の上面とは面一(略面一)になっている。
【0063】
周壁部433の下縁部の一部に切欠き434が設けられている。後述するように、この切欠き434が、基板101をカバー430内に搬入したり、カバー430内から基板101を搬出したりするための搬出入口となる。
【0064】
天蓋部431の下面の開口432近傍には、下方に突出するように複数の電極ピン435が設けられている。例えば、開口432の周縁に安定自立させる3個の電極ピン435a、435b、435c(図示しない)が設けられる。図8(c)に示すように、リフトテーブル420により基板101が上昇して電極ピン435に接触すると、カバー430内部に設けられた導線(図示略)を介して電極ピン435から基板101に所定のリターディング電圧が印加できるようになっている。
【0065】
また、検査対象の基板101が図9(c)に示すようなガラス基板91、クロム膜92、及びレジスト膜93が積層されたマスク基板90である場合には、絶縁膜であるレジスト膜を突き破って導電膜であるクロム膜と電極ピン435の導通をとり、リターディング電圧を印加する必要がある。本実施形態では、リフトテーブル420で基板101を電極ピン435に押し付けることで、絶縁膜を突き破りリターディング電圧を印加する構成としているが、例えば、電極ピン435a、435b、435cのうち、電極ピン435aを、他の電極ピン435b、435c及び内方延出部431aから絶縁する構造として、他の電極電圧と異なる電圧を電極ピン435aに印加することで、その電位差で基板101の絶縁膜に絶縁破壊を生じさせ、導通をとることも可能となる。
【0066】
天蓋部431は、支持部431bと、支持部431bから内側の開口432に向かって延出する内方延出部431aとから構成される。内方延出部431aの上面と支持部431bの上面とは面一(略面一)になっている。内方延出部431aは、支持部431bよりも厚みが薄く、支持部431bは内方延出部431aよりも下方に張り出している。電極ピン435は内方延出部431aの下面から下方に突出して設けられている。なお、内方延出部431aと支持部431bは、接着結合されていてもよいし、一体加工されていてもよい。また、天蓋部431は、周壁部433と接着結合されたものでもよいし、一体加工されていてもよい。
【0067】
開口432の幅をW1、内方延出部431aの幅をW2、基板101のサイズ(幅)をDとした場合、W1<D<W1+2×W2となる。W1は120~150mm程度であり、W2は1~3mm程度である。
【0068】
図8(a)、図8(b)に示すように、検査対象の基板101が切欠き434を介してカバー430内に搬入され、プレート423上に載置される。図8(c)に示すように、プレート423が上昇して、基板101が天蓋部431の下面側に押し当てられ、電極ピン435に接触する。リフトテーブル420は、ロッド422にかかる荷重を監視し、基板101がカバー430(電極ピン435)に接触することによる荷重変化を検出し、プレート423の上昇を止める。電極ピン435を介して基板101にリターディング電圧が印加される。
【0069】
基板101の検査が終了すると、図8(d)、図8(e)に示すように、プレート423が下降し、基板101が切欠き434を介してカバー430外へ搬出される。
【0070】
上述したように、開口432の径W1が基板101のサイズDよりも小さいため、基板101の検査時、基板101の上面の周縁部が、カバー430の天蓋部431の内方延出部431aによって覆われる。また、基板101が電極ピン435に接触した状態で、基板101は、支持部431bの内側に配置されるため、平面方向の位置ずれを抑えることができる。
【0071】
上述したように、図9(a)、図9(b)に示すようなマスクカバーHを使用した場合、ステージ上に載置した基板の上面とカラムとの間隔を一定にすることは困難であった。一方、本実施形態では、基板101をカバー430の天蓋部431の下面側に押し当てて基板101の検査が行われる。カバー430は、リフトテーブル420の本体421に固定されている。検査時の基板101の上面高さは、基板101の厚みによらず一定となり、基板101の上面と主電子ビームカラム102との間隔を一定に保ち、放電リスクを下げることができる。また、基板101を天蓋部431の下面側に押し当てるという簡易な構造で、リターディング電圧印加電極構造の剛性を高くできるため、基板101の上方の構造物を薄くすることが容易で、基板101の上面と主電子ビームカラム102との間隔を小さくすることができる。その結果、高精度で高分解能な検査が可能となる。
【0072】
上記実施形態では、電極ピン435から基板101にリターディング電圧を印加する例について説明したが、リフトテーブル420のプレート423の上面に、基板101の下面側からリターディング電圧を印加する平板状の電極を設けてもよい。検査対象の基板101は、例えばEUVマスクである。この場合、カバー430に設けられた電極ピン435は、電圧を印加するための導線が接続されている必要はなく、単に基板101の上面に接触させるためのピンとしてもよいし、ピンを省略してもよい。
【0073】
上記実施形態では、カバー430(周壁部433の下端部)がリフトテーブル420の本体421に連結される、すなわちカバー430が本体421を介して台座410に間接的に固定される構成について説明したが、カバー430(周壁部433の下端部)を台座410に直接的に固定してもよい。
【0074】
上記実施形態では、電子ビームを用いる例について説明したが、イオンビーム等の他の荷電粒子ビームを用いてもよい。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
20 1次電子ビーム
100 検査装置
101 基板
102 主電子ビームカラム
103 検査室
104 副電子ビームカラム
201 電子銃
222 マルチ検出器
300 マルチ2次電子ビーム
400 ステージ
402 スペーサ
404 XYステージ
406 アダプタプレート
408 Zステージ
410 台座
420 リフトテーブル
430 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9