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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020554783
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033371
(87)【国際公開番号】W WO2020090205
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/040306
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上野 恵子
(72)【発明者】
【氏名】本田 一尊
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛
(72)【発明者】
【氏名】柳田 裕貴
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/001564(WO,A1)
【文献】特開2011-187699(JP,A)
【文献】特開2017-218532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の接続部を有し且つ直線状に延びる辺を有する第一の部材と、
第二の接続部を有する第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との間に配置された接着剤層とを備え、
前記第一の接続部と前記第二の接続部が電気的に接続されている半導体装置の製造方法であって、
前記第一の部材、前記接着剤層及び前記第二の部材がこの順序で積層された積層体を準備する積層工程と、
前記積層体に対して厚さ方向に押圧力を加えた状態で、前記積層体に対して加熱のためのレーザーを照射する圧着工程と、
を含み、
前記圧着工程において、前記第一の部材の前記辺の一端の周縁部から他端の周縁部に向けて、レーザー照射部、レーザー非照射部及びレーザー照射部がこの順序で形成されるように、前記積層体に対してレーザーを照射する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一の部材が正方形又は長方形の形状を有する半導体チップである、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
第一の接続部を有し且つ直線状に延びる辺を有する第一の部材と、
第二の接続部を有する第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との間に配置された接着剤層とを備え、
前記第一の接続部と前記第二の接続部が電気的に接続されている半導体装置の製造方法であって、
前記第一の部材、前記接着剤層及び前記第二の部材がこの順序で積層された積層体を準備する積層工程と、
前記積層体に対して厚さ方向に押圧力を加えた状態で、前記積層体に対して熱を加える圧着工程と、
を含み、
前記第一の部材が正方形又は長方形の形状を有する半導体チップであり、
前記圧着工程において、以下の条件1を満たすように、前記積層体に対して熱を加える、半導体装置の製造方法。
<条件1>
前記半導体チップの辺を三等分して計九つのエリアに分割し、当該九つのエリアのうち、前記半導体チップの一つの隅部を含むエリアをエリア1とし、前記エリア1から前記半導体チップの周縁部に沿って並ぶエリアをエリア2~8とすると、
エリア1,3,5,7の各中心部における前記半導体チップの外表面の平均温度Tcと、
エリア2,4,6,8の各中心部における前記半導体チップの外表面の平均温度Tsとの差(Tc-Ts)が15℃以上である。
【請求項4】
前記圧着工程において、以下の条件2を更に満たすように、前記積層体に対して熱を加える、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
<条件2>
前記九つのエリアのうち、前記半導体チップの中心を含むエリアをエリア9とすると、
エリア2,4,6,8の各中心部における前記半導体チップの外表面の平均温度Tsと、
エリア9の中心部における前記半導体チップの外表面の温度T9との差(Ts-T9)が5℃以上である。
【請求項5】
前記第二の部材が配線基板、半導体チップ及び半導体ウエハからなる群から選ばれる部材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層が、重量平均分子量10000未満の熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤層が、重量平均分子量10000以上の高分子成分を更に含有する、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤層がフィルム状接着剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板の接続にはワイヤーボンディングが広く適用されてきた。ワイヤーボンディングは、金ワイヤ等の金属細線を用いて半導体チップと基板を接続する方式である。半導体装置に対する高機能化、高集積化及び高速化等の要求に対応するため、フリップチップ接続(FC接続)と称される方式が広まりつつある。FC接続は、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板間で直接接続する方式である。
【0003】
FC接続の態様として、はんだ、スズ、金、銀及び銅等を用いて金属接合させる方法、超音波振動を印加して金属接合させる方法、樹脂の収縮力によって機械的接触を保持する方法などが知られている。これらの方法のうち、接続部の信頼性の観点から、はんだ、スズ、金、銀及び銅等を用いて金属接合させる方法が一般的である。
【0004】
半導体チップと基板とを接続する方式として、COB(Chip On Board)型の接続方式が知られている。COBはFC接続の一種である。また、半導体チップと半導体チップとを接続するCoC(Chip On Chip)、及び、半導体チップとバンプもしくは配線を有する半導体ウエハとを接続するCoW(Chip On Wefer)もFC接続に分類される。特許文献1は、半導体ウエハの接合方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-294382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、半導体装置(以下、場合により、「パッケージ」という。)は高機能化が強く要求され、具体的には、薄型化、小型化、ピン(バンプ及び/又は配線)数の増加、ピッチ又はギャップの狭小化が求められている。更なる小型化、薄型化及び高機能化が要求されるパッケージを作製する技術として、上述の接続方式を多段化したチップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through Silicon Via)等の技術も普及し始めている。これらの技術は、平面状でなく立体状に部材を配置するためにパッケージを小さくでき、また、半導体装置の性能向上及びノイズ低減、実装面積の削減、省電力化にも有効であり、次世代の配線技術として注目されている。
【0007】
低コスト化及び高生産性化の観点から、パッケージ組立ての際の半導体チップ間隔が狭くなる傾向にある。隣接する半導体チップの間隔を狭くすることで基板上又はウエハ上に多くの半導体チップを搭載することができ、低コスト化が可能となる。また、隣接する半導体チップの間隔を狭くすることで、異種の半導体チップを小範囲に組立てることができ、高密度化実装も可能となる。
【0008】
ところで、接着剤層を介して半導体チップを基板又は半導体ウエハに圧着して接続を確保する場合、接着剤層の形状は半導体チップと同じ正方形又は長方形であることが多い。圧着工程後、接着剤層を構成する樹脂材料が半導体チップからはみ出している部分はフィレットと称される。圧着時において、樹脂材料は円状に流動するため、半導体チップの辺部分のフィレットに比べて、半導体チップの隅部のフィレットは小さくなる。半導体チップの隅部(半導体チップの辺の端部)におけるフィレットはカバレッジと称される。
【0009】
半導体チップの隅部にフィレット(接着剤)が存在しない場合、半導体装置の信頼性が低下する傾向にある。カバレッジを確保するために、接着剤の流動性を高くしたり、圧着時の条件を高荷重化又は高温化したりことが考えられる。しかし、これらの手段によってカバレッジを確保できても、その反面、半導体チップの辺におけるフィレットが大きくなり、低コスト化及び高密度実装が困難となる。つまり、半導体チップの辺におけるフィレットを小さくすることと、カバレッジを確保することの両立は困難である。
【0010】
本開示は、半導体チップの辺におけるフィレットが小さく且つカバレッジが確保された半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る製造方法は、第一の接続部を有し且つ直線状に延びる辺を有する第一の部材と、第二の接続部を有する第二の部材と、第一の部材と第二の部材との間に配置された接着剤層とを備え、第一の接続部と第二の接続部が電気的に接続されている半導体装置を製造するためのものである。
【0012】
本開示の第一の形態に係る製造方法は、第一の部材、接着剤層及び第二の部材がこの順序で積層された積層体を準備する積層工程と、積層体に対して厚さ方向に押圧力を加えた状態で、積層体に対して加熱のためのレーザーを照射する圧着工程とを含み、圧着工程において、第一の部材の辺の一端の周縁部から他端の周縁部に向けて、レーザー照射部、レーザー非照射部及びレーザー照射部がこの順序で形成されるように、積層体に対してレーザーを照射する。
【0013】
第一の形態に係る製造方法によれば、直線状に延びる辺を有する第一の部材(例えば、正方形又は長方形の半導体チップ)の隅部をレーザー照射部とし、その間をレーザー非照射部とすることで、レーザーによって隅部を局所的に加熱することができ、第一の部材の隅部におけるカバレッジを確保でき且つ第一の部材の辺におけるフィレットを抑制できる。
【0014】
本開示の第二の形態に係る製造方法は、第一の部材、接着剤層及び第二の部材がこの順序で積層された積層体を準備する積層工程と、積層体に対して厚さ方向に押圧力を加えた状態で、積層体に対して熱を加える圧着工程とを含み、第一の部材が正方形又は長方形の形状を有する半導体チップであり、圧着工程において、以下の条件1を満たすように、積層体に対して熱を加える。
<条件1>
半導体チップの辺を三等分して計九つのエリアに分割し、当該九つのエリアのうち、半導体チップの一つの隅部を含むエリアをエリア1とし、エリア1から半導体チップの周縁部に沿って並ぶエリアをエリア2~8としたとき、エリア1,3,5,7の各中心部における半導体チップの外表面の平均温度Tcと、エリア2,4,6,8の各中心部における半導体チップの外表面の平均温度Tsとの差(Tc-Ts)が15℃以上である。
【0015】
第二の形態に係る製造方法によれば、半導体チップの隅部(エリア1,3,5,7)の温度を局所的に高くすることで、第一の部材の隅部におけるカバレッジを確保でき且つ第一の部材の辺におけるフィレットが抑制される。なお、第二の形態に係る製造方法において、レーザー照射によって積層体を加熱する場合、エリア2,4,6,8はレーザー非照射部であってもそうでなくてもよい。例えば、エリア2,4,6,8に対し、エリア1,3,5,7よりも少ないエネルギー量のレーザー照射を照射してもよい。
【0016】
より一層高度にカバレッジを確保し且つフィレットを抑制する観点から、第二の形態に係る製造方法の圧着工程において、以下の条件2を更に満たすように、積層体に対して熱を加えることが好ましい。
<条件2>
上記九つのエリアのうち、半導体チップの中心を含むエリアをエリア9とすると、エリア2,4,6,8の各中心部における半導体チップの外表面の平均温度Tsと、エリア9の中心部における半導体チップの外表面の温度T9との差(Ts-T9)が5℃以上である。
【0017】
本開示において、第二の部材の具体例として、配線基板、半導体チップ及び半導体ウエハが挙げられる。
【0018】
接着剤層は、ボイド発生を抑制する観点から、例えば、重量平均分子量10000未満の熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、重量平均分子量10000以上の高分子成分を更に含有してもよい。接着剤層は、圧着工程の効率化の観点から、フィルム状接着剤であることが好ましい。
【0019】
本開示は、上記製造方法によって製造された半導体装置を提供する。本開示に係る半導体装置は、半導体チップの辺におけるフィレットが短く且つカバレッジが確保されている。これらの特性により、高密度実装が可能であり且つ優れた信頼性を有する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、半導体チップの辺におけるフィレットが小さく且つカバレッジが確保された半導体装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本開示に係る半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)は圧着工程を実施する準備が整った状態を模式的に示す断面図あり、図2(b)は半導体チップ、接着剤層及び基板がこの順序で積層された積層体を模式的に示す断面図であり、図2(c)は積層体に圧着工程を実施している様子を模式的に示す断面図である。
図3図3は圧着工程において積層体に対してレーザーを照射する領域の一例を模式的に示す上面図である。
図4図4は圧着工程後において半導体チップから接着剤層がはみ出した状態の一例を模式的に示す上面図である。
図5図5はTSV技術によって製造された半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6(a)は実施例1及び比較例1におけるレーザーの照射パターンを模式的に示す上面図であり、図6(b)は実施例2及び比較例2におけるレーザーの照射パターンを模式的に示す上面図である。
図7図7は実施例3,4におけるレーザーの照射パターンを模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<半導体装置及びその製造方法>
図1に示す半導体装置50は、銅ピラー10a及びはんだバンプ10b(第一の接続部)を有する半導体チップ10(第一の部材)と、配線20a(第二の接続部)を有する基板20(第二の部材)と、半導体チップ10と基板20との間に配置された接着剤層30とを備え、はんだバンプ10bと配線20aが電気的に接続されている。はんだバンプ10bは、例えば、スズ-銀合金を含む。配線20aは、例えば、表面に金メッキが施されている。はんだの融点よりも高い温度に加熱することで、はんだバンプ10bと配線20aとを接続することができる。
【0024】
図2(a)~図2(c)を参照しながら、半導体装置50の製造方法について説明する。半導体装置50は、例えば、以下の工程を経て製造される。
・半導体チップ10の銅ピラー10a及びはんだバンプ10bが形成されている側の面に接着剤層30が形成されたチップを準備する接着剤付きチップ作製工程(図2(a)参照)。
・半導体チップ10、接着剤層30及び基板20がこの順序で積層された積層体40を準備する積層工程(図2(b)参照)。
・積層体40に対して厚さ方向に押圧力Fを加えた状態で、積層体40に対して加熱のためのレーザーLを照射する圧着工程(図2(c)参照)。
・圧着工程後の積層体40を加熱するキュア工程。
【0025】
(接着剤付きチップ作製工程)
接着剤付きチップ作製工程は、半導体チップ10と、半導体チップ10の銅ピラー10a等を覆うように形成された接着剤層30とを有するチップ(接着剤付きチップ)を作製する工程である。作業性の観点から、フィルム状接着剤を事前に準備し、これを対象物にラミネートする工程を経て接着剤付きチップを作製することが好ましい。ラミネートは加熱プレス、ロールラミネート及び真空ラミネート等によって行うことができる。接着剤層30のサイズ及び厚さは、半導体チップ10のサイズ及びバンプ高さ等に応じて適宜設定すればよい。なお、半導体チップ10のサイズに切断されたフィルム状接着剤を半導体チップに貼り付けることによって接着剤付きチップを作製してもよいし、あるいは、配線等が形成された半導体ウエハにフィルム状接着剤を貼り付けた後、ダイシングによって個片化することで、接着剤付きチップを作製してもよい。なお、ダイシングによって接着剤付きチップを作製する場合、半導体チップ10と接着剤層30は同じ形状及びサイズとなる。
【0026】
(積層工程)
積層工程は、半導体チップ10、接着剤層30及び基板20がこの順序で積層された積層体40を準備する工程である。接着剤付きチップと基板20との位置合わせを行った後、接着剤付きチップと基板20とを仮圧着することによって積層体40を作製する。仮圧着には通常の圧着装置を使用することができる。
【0027】
(圧着工程)
図3は圧着工程において積層体に対してレーザーを照射する領域を模式的に示す上面図である。本実施形態においては、計36の領域に加熱用のレーザーをそれぞれ独立して照射可能なレーザーボンダを使用する。このような性能を有するレーザーボンダとして、例えば、澁谷工業株式会社製のFDB250が挙げられる。図3において、計36の領域のうち、レーザーが照射された領域をハッチングを付した丸で表し、レーザーが照射されない領域を白い丸で表している。
【0028】
図3に示すように、圧着工程において、半導体チップ10の辺Sの一端Saの周縁部(一方の隅部C)から他端Sbの周縁部(他方の隅部C)に向けて、レーザー照射部A1、レーザー非照射部A2及びレーザー照射部A1がこの順序で形成されるように、積層体40に対してレーザーを照射する。半導体チップ10の残りの三つの辺Sについても、一端から他端に向けてレーザー照射部A1、レーザー非照射部A2及びレーザー照射部A1がこの順序で形成されるように、レーザーを照射する。図3に示すように、半導体チップ10の辺を三等分して計九つのエリアに分割し、当該九つのエリアのうち、半導体チップ10の一つの隅部を含むエリアをエリア1とし、エリア1から半導体チップ10の周縁部に沿って並ぶエリアをエリア2~8とする。本実施形態においては、エリア1,3,5,7に選択的にレーザーLを照射し、エリア2,4,6,8及び半導体チップ10の中心を含むエリア9にはレーザーを照射しない。つまり、エリア1,3,5,7がレーザー照射部A1であり、エリア2,4,6,8,9がレーザー非照射部A2である。なお、積層体40に向けてレーザーLを照射することによって、接着剤層30を加熱できる限り、半導体チップ10の外表面に直接的にレーザーを照射してもよいし、半導体チップ10に対して押圧力Fを加えるためのプレート(不図示)にレーザーを照射してもよい。
【0029】
本実施形態において、エリア1,3,5,7の各中心部における半導体チップ10の外表面の平均温度Tcと、エリア2,4,6,8の各中心部における半導体チップ10の外表面の平均温度Tsとの差(Tc-Ts)が15℃以上であることが好ましい。Tc-Tsが15℃以上であることは、半導体チップ10の隅部を含むエリアが他のエリアよりも局所的に高温となるように加熱したことを意味する。圧着工程において、このような加熱をすることで、半導体チップ10の辺Sにおけるフィレットを短くすることができ且つカバレッジを確保することができる。Tc-Tsは15~30℃であってもよい。
【0030】
本実施形態において、エリア2,4,6,8の各中心部における半導体チップ10の外表面の平均温度Tsと、エリア9の中心部における半導体チップ10の外表面の温度T9との温度差(Ts-T9)は5℃以上であってもよい。Ts-T9が5℃以上であることは、半導体チップ10のエリア2,4,6,8がエリア9よりも高温となるように加熱したことを意味する。すなわち、本実施形態の圧着工程において、Tc>Ts>T9の条件を満たし且つ温度差(Tc-Ts)が15℃以上であり温度差(Ts-T9)が5℃以上となるように、加熱してもよい。なお、温度差(Ts-T9)の範囲は5~40℃であってよい。
【0031】
昇温可能な圧着ツール面を有する一般的な圧着装置を使用して圧着工程を実施する場合、積層体40の表面に圧着ツール面を当接させ、積層体40に対して押圧力Fを加えた状態で、圧着ツール面を昇温する。圧着ツール面は、通常、その表面温度がなるべく均一になるように設計されている。例えば、半導体チップのサイズが30mm×30mm程度であれば、圧着時の半導体チップの表面の温度ばらつきは、通常、15℃未満である。積層体40を均一に加熱して圧着工程を実施すると、半導体チップの辺の中央部におけるフィレット幅が大きく且つカバレッジが不足する傾向にある。なお、カバレッジを確保するため、加熱温度を高くしたり押圧力を高くしたりすると半導体チップの辺におけるフィレット幅がより一層も大きくなる。
【0032】
これに対し、本実施形態によれば、圧着ツール面に温度分布を故意につけることで、フィレット幅の抑制とカバレッジの確保が可能となる。上述のとおり、半導体チップのエリア1,3,5,7を局所的に高温に加熱することで、半導体チップ10の隅部Cにそれぞれ位置する接着剤層30の流動を高めることができ、カバレッジを確保できる。他方、半導体チップ10のエリア2,4,6,8の加熱温度を相対的に低くすることで、半導体チップ10の辺Sの中央近傍における接着剤層30の流動を相対的に抑制することができ、辺Sにおけるフィレットを小さくすることができる。エリア2,4,6,8の平均温度Tsとエリア9の温度T9との差(Ts-T9)を5℃以上にすることで半導体チップ全体の昇温速度が速くなる傾向がある。昇温速度が速くなることで、半導体チップの特定のエリアを局所的に加熱しやすくなるため、よりフィレットを抑えながらカバレッジを確保しやすくなる。また、昇温速度が速くなることで、はんだが溶融する時間が長くなるため、接続がとりやすくなる。これにより、優れた信頼性の半導体装置を短時間で製造することが可能となる。
【0033】
図4は半導体チップ10から接着剤層30がはみ出した状態を模式的に示す上面図である。図4に示す幅Wは、半導体チップ10の辺Sにおけるフィレットの最大幅である。半導体チップ10の四つの辺Sについて、フィレットの最大幅を測定し、その平均値が半導体チップ10の辺におけるフィレット幅と定義される。図4に示す幅w1,w2は、半導体チップ10の隅部Cから200μmの位置におけるフィレットの幅(μm)である。半導体チップ10の四つの隅部Cについて、幅w1,w2をそれぞれ測定し、計8つの値の平均値が半導体チップ10のカバレッジ(μm)と定義される。
【0034】
フィレット幅は、半導体チップ10のサイズ及び厚さ並びにアンダーフィル(液状及びフィルム状を含む)の供給量に依存する。フィレット幅は信頼性に問題なければ小さいほど好ましい。例えば、ウエハ上に半導体チップを圧着する場合及び基板上に半導体チップを圧着する場合、フィレットは半導体チップ間隔の距離の半分以下であることが好ましい。フィレット幅は50~200μmであることが好ましく、50~150μmであることがより好ましい。半導体チップ10のカバレッジは、5~100μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。カバレッジが10μm以上であれば、半導体装置50の信頼性をより一層向上できる傾向にある。カバレッジをフィレット幅で除すことによってカバレッジ指数(無次元)が算出される。カバレッジ指数は、例えば、0.1~1であり、0.2~0.5であってもよい。カバレッジ指数が0.1以上であれば、半導体装置50の信頼性を十分に高くできる傾向にある。
【0035】
(キュア工程)
キュア工程は、圧着工程後の積層体40を加熱する工程である。この工程は、ボイド低減の観点から、加圧オーブン又は加圧リフロ装置を使用し、加圧雰囲気下で実施することが好ましい。加熱温度は、例えば、130~200℃である。圧力は、例えば、0.1~1MPaである。
【0036】
本実施形態においては、圧着工程において、レーザーボンダを使用し、Tc-Tsが15℃以上となるように加熱する場合を例示したが、Tc-Tsを15℃以上にできる限り、レーザーボンダ以外の圧着装置を使用してもよい。例えば、半導体チップ10の隅部Cのみ温度が伝わり易いように、隅部Cに対応する位置に凸部を有する圧着ツールを使用してよい。あるいは、半導体チップ10の隅部Cに対応する領域が局所的に熱伝導性の高い材質で構成された圧着ツールを使用してよいし、あるいは、当該領域以外の部分が熱伝導性の低い材質で構成された圧着ツールを使用してもよい。
【0037】
本実施形態において、エリア2,4,6,8をレーザー非照射部とする場合を例示したが、Tc-Tsを15℃以上にできる限り、エリア2,4,6,8にレーザーを照射してもよい(実施例3,4参照)。
【0038】
本実施形態においては、半導体チップ10と基板20の接続部を有する半導体装置50を例示したが、半導体チップと他の半導体チップが接続された態様であってもよく、半導体チップと半導体ウエハが接続された態様であってもよい。また、接続部は、バンプと配線による金属接合に限られず、バンプとバンプによる金属接合であってもよい。
【0039】
本実施形態に係る圧着工程は、例えば、TSV(Through-Silicon Via)技術によって製造される半導体装置に適用してもよい。図5は、TSV技術によって製造された半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。この図に示す半導体装置70は、接着剤層30を介してフリップチップ接続され且つ積層された三つの半導体チップ11,12,13と、半導体チップ13と接着剤層30を介して接続されたインタポーザー60とを備える。なお、半導体チップ11,12,13は、貫通電極部分11a,12a,13aを有する。かかる構成の半導体装置70によれば、半導体チップの裏面からも信号のやり取りができる。半導体チップ内で配線を垂直に通すことができるため、半導体チップ間、あるいは、チップとインタポーザーの間を最短に且つ柔軟に接続できる。本実施形態に係る圧着工程は、半導体チップ11,12,13を含む積層チップの製造に適用してもよいし、積層チップとインタポーザー60と圧着に適用してもよい。
【0040】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられる半導体チップ、基板及び接着剤層等について説明する。
【0041】
半導体チップは、直線状に延びる辺を有し、例えば、正方形又は長方形の形状を有する。半導体チップの一辺の長さは、例えば、0.1~300mmであり、5~150mmであってもよい。半導体チップを構成する半導体としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体などが挙げられる。
【0042】
半導体チップは、バンプと称される導電性突起を有することができる。バンプは、主な成分として、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等を含む。これらの金属は、一種が単独で又は二種以上が併用されていてもよい。また、これらの金属が積層された構造をなすように形成されていてもよい。なお、はんだの主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等の合金である。また、バンプは半導体チップと接続される配線基板等に形成されていてもよい。バンプを構成する金属としては、低コストの点から、銅、はんだが好ましく、接続信頼性及び反り抑制の点から、はんだが更に好ましい。
【0043】
半導体チップ及び配線基板は、パッドと呼ばれる導電性面を有することができる。パッドは、主な成分として、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等を含む。これらの金属は、一種が単独で又は二種以上が併用されていてもよい。また、これらの金属が積層された構造をなすように形成されていてもよい。なお、はんだの主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等の合金である。また、パッドを構成する金属としては、接続信頼性の点から、金、はんだが好ましい。
【0044】
配線基板としては、通常の回路基板であれば特に制限はなく、エッチング処理によって絶縁基板に配線パターンを形成したもの、絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線パターンを形成したものなどが挙げられる。絶縁基板は、ガラスエポキシ、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド等の樹脂材料からなる。
【0045】
配線パターンの表面には、金属層が形成されていてもよい。金属層は、主な成分として、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等を含む。これらの金属は、一種が単独で又は二種以上が併用されていてもよい。また、これらの金属が積層された構造をなすように形成されていてもよい。金属層を構成する金属としては、低コストの点から、銅、はんだが好ましく、接続信頼性及び反り抑制の点から、はんだが更に好ましい。
【0046】
半導体装置は、上述のバンプ-バンプ間の接続部、バンプ-パッド間の接続部、又は、バンプ-配線間の接続部を有していてもよい。
【0047】
接着剤層は、200℃以上の温度条件で圧着処理ができるように、優れた耐熱性を有していることが好ましい。200℃以上の温度条件で圧着処理することで、はんだ等金属を溶融させることができる。接着剤層は、ボイド発生を抑制する観点から、重量平均分子量10000未満の樹脂成分を含有する。接着剤層は、重量平均分子量10000以上の高分子成分を更に含有してもよい。接着剤層は、圧着工程の効率化の観点から、フィルム状接着剤であることが好ましい。なお、ここでいう「重量平均分子量」は、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製C-R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定される値を意味する。
【0048】
(a)重量平均分子量10000未満の樹脂成分
重量平均分子量10000未満の樹脂成分(以下、(a)成分)としては、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が挙げられる。(a)成分は、熱硬化性樹脂であることが好ましく、この場合、接着剤層は(b)硬化剤を含むことが好ましい。分子量が比較的小さい樹脂成分は加熱時に分解等してボイドの原因となるため、硬化剤と反応する方が耐熱性の観点から好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂は、分子内に二個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂を使用することができる。これらは一種を単独又は二種以上を併用することができる。
【0050】
エポキシ樹脂の含有量は、接着剤層の全質量100質量部に対して、例えば10~50質量部である。エポキシ樹脂の含有量が10質量部以上であることで、硬化後の樹脂の流動を制御しやすく、他方、50質量部以下であることで、パッケージの反りを抑制できる。
【0051】
アクリル樹脂は、分子内に一個以上のアクリロイル基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、フルオレン型、アダマンタン型、各種多官能アクリルを使用することができる。これらは一種を単独で又は二種以上を併用することができる。
【0052】
アクリル樹脂の含有量は、接着剤層の全質量100質量部に対して、10~50質量部が好ましく、15~40質量部がより好ましい。アクリル樹脂の含有量が10質量部以上であることで、硬化後の樹脂の流動を制御しやすく、他方、50質量部以下であることで、パッケージの反りを抑制できる。
【0053】
アクリル樹脂は室温(25℃)で固形であることが好ましい。液状に比べて固形の方が、ボイドが発生しにくく、また、硬化前(Bステージ)の接着剤層の粘性(タック)が小さく取り扱いに優れる。アクリロイル基の官能基数は3官能基以下が好ましい。アクリロイル基の官能基数は3官能基以下であることで、短時間で硬化が十分に進行し、十分に高い硬化反応率を達成できる。
【0054】
(b)硬化剤
硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ホスフィン系硬化剤、アゾ化合物及び有機過酸化物が挙げられる。
【0055】
(フェノール樹脂系硬化剤)
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内に二個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール及び各種多官能フェノール樹脂を使用することができる。これらは単独で又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0056】
エポキシ樹脂に対するフェノール樹脂系硬化剤の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のフェノール性水酸基が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0057】
(酸無水物系硬化剤)
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを使用することができる。これらは単独で又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0058】
エポキシ樹脂に対する酸無水物系硬化剤の当量比(酸無水物基/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応の酸無水物が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0059】
(アミン系硬化剤)
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドを使用することができる。エポキシ樹脂に対するアミン系硬化剤の当量比(アミン/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のアミンが過剰に残存することがなく、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0060】
(イミダゾール系硬化剤)
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは単独で又は二種以上を併用して用いることができる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤としてもよい。
【0061】
イミダゾール系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、20質量部以下であると金属接合が形成される前に接着剤組成物が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。
【0062】
(ホスフィン系硬化剤)
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4-メチルフェニル)ボレート及びテトラフェニルホスホニウム(4-フルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0063】
ホスフィン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。ホスフィン系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、10質量部以下であると金属接合が形成される前に接着剤組成物が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。
【0064】
フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミン系硬化剤は、それぞれ一種を単独で又は二種以上を併用してもよい。イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいが、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤と共に用いてもよい。
【0065】
(有機過酸化物)
有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネイト、パーオキシエステルが挙げられる。保存安定性の観点から、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルが好ましい。更に、耐熱性の観点から、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。これらは、一種を単独で又は二種以上を併用しもよい。
【0066】
過酸化物の含有量は、アクリル樹脂の質量に対して0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。過酸化物の含有量が0.5質量%以上であることで、硬化反応が十分に進行しやすく、他方、10質量%以下であることで、分子鎖が短くなったり、未反応基が残存し信頼性が低下ことを十分に抑制できる。
【0067】
なお、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及び硬化剤の組み合わせは、硬化が進行すれば特に制限はないが、取り扱い性、保存安定性及び硬化性の観点から、エポキシ樹脂とともに使用する硬化剤として、フェノールとイミダゾール、酸無水物とイミダゾール、アミンとイミダゾール、又は、イミダゾールを単独で使用することが好ましい。短時間で接続すると生産性が向上することから、速硬化性に優れたイミダゾールを単独で使用することがより好ましい。短時間で硬化すると低分子成分等の揮発分が抑制できることから、ボイドの発生がより一層抑制される。取り扱い性及び保存安定性の観点から、アクリル樹脂とともに使用する硬化剤として、有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0068】
(c)重量平均分子量10000以上の高分子成分
重量平均分子量10000以上の高分子成分(以下「(c)成分」という。)としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルゴム、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性及びフィルム形成性に優れるエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルゴム、ビスマレイミド樹脂がより好ましい。これらは一種を単独で又は二種以上を併用してもよく、二種以上の共重合体として使用してもよい。
【0069】
(c)成分と、エポキシ樹脂の質量比は、特に制限されないが、接着剤層における(c)成分の量を100質量部としたとき、エポキシ樹脂の質量が1~500質量部であることが好ましく、5~400質量部であることがより好ましく、10~300質量部であることが更に好ましい。エポキシ樹脂の量が1質量部以上であることで、十分な接着力を確保しやすく、500質量部以下であることで、十分なフィルム形成性及び膜形成性を確保しやすい。なお、ここでいうエポキシ樹脂は、グリシジル基を有する分子量が10000未満の硬化成分である。
【0070】
(c)成分と、アクリル樹脂の質量比は、特に制限されないが、接着剤層における(c)成分の量を100質量部としたとき、アクリル樹脂の質量が1~1000質量部であることが好ましく、5~500質量部であることがより好ましく、10~500質量部であることが更に好ましい。アクリル樹脂の量が1質量部以上であることで、十分な接着力を確保しやすく、1000質量部以下であることで、十分なフィルム形成性を確保しやすい。
【0071】
(c)成分のガラス転位温度(Tg)は、接着剤層の基板及び半導体チップへの貼付性に優れる観点から、50~200℃であることが好ましい。(c)成分のTgが50℃以上であることで、接着剤層のタック(粘性)力を十分に高くでき、取り扱い性に優れる。他方、(c)成分のTgが200℃以下であることで、半導体チップに形成されたバンプ、あるいは、基板に形成された電極又は配線パターン等の凹凸を接着剤層に埋め込みやすく、ボイドの発生を抑制できる。なお、接着剤層のTgは、DSC(パーキンエルマー社製DSC-7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定される値を意味する。
【0072】
上述のとおり、(c)成分の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で10000以上であるが、単独で良好なフィルム形成性を達成する観点から、30000以上であることが好ましい。(c)成分の重量平均分子量が10000以上であることで、十分なフィルム形成性を達成しやすい。
【0073】
接着剤層は、フラックス剤を更に含有してもよい。フラックス剤は、フラックス活性(酸化物又は不純物を除去する活性)を示す化合物である。フラックス剤としては、イミダゾール類及びアミン類のように非共有電子対を有する含窒素化合物、カルボン酸類、フェノール類及びアルコール類が挙げられる。なお、アルコール等に比べて有機酸の方がフラックス活性を強く発現し、接続性が向上する。有機酸のなかでもカルボン酸を使用することが好ましい。カルボン酸は、エポキシ樹脂と反応するため、接着剤層に残存する量が十分に少なくなるという利点がある。耐熱性の観点から、フラックス剤としてのカルボン酸は、固形が好ましい。フラックス剤の融点は、安定性及び取り扱い性の観点から、70~150℃であることが好ましい。
【0074】
接着剤層は絶縁性を有するフィラを更に含有してもよい。接着剤層にフィラを配合することで、粘度及び硬化物の物性を制御することができるとともに、半導体チップ同士又は半導体チップと基板とを接続した際のボイドの発生を抑制でき且つ吸湿率を抑制できる。絶縁性を有するフィラとしては、無機フィラ、ウィスカー及び樹脂フィラが挙げられる。なお、絶縁信頼性の観点から、接着剤層は、導電性を有する金属フィラ(例えば、銀粒子及びはんだ粒子)を含有しないことが好ましい。
【0075】
無機フィラとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ及び窒化ホウ素が挙げられる。これらのうち、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素がより好ましい。ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素が挙げられる。樹脂フィラとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(MBS)が挙げられる。これらのフィラは一種を単独で又は二種以上を併用してもよい。樹脂フィラは、無機フィラに比べて、高温環境下(例えば、260℃)にける柔軟性を接着剤層に付与できるため、耐リフロ性向上に寄与し得る。柔軟性が向上することで、フィルム形成性も向上し得る。
【0076】
分散性又は接着力向上の観点から、表面処理が施されたフィラを使用してもよい。フィラに対して表面処理を施すことで、フィラの物性を適宜調整することができる。表面処理としては、グリシジル系(エポキシ系)、アミン系、フェニル系、フェニルアミノ系、アクリル(メタクリル)系又はビニル系の処理が挙げられる。分散性、流動性及び接着力の観点から、グリシジル系、フェニルアミノ系、アクリル(メタクリル)系が好ましい。保存安定性の観点から、フェニル系、アクリル(メタクリル)系が更に好ましい。表面処理のし易さから、エポキシシラン系、アミノシラン系、アクリルシラン系等のシラン処理が好ましい。
【0077】
フィラの平均粒径は、フリップチップ接続時のかみ込み防止の観点から、1.5μm以下であることが好ましく、視認性(透明性)の観点から、1.0μm以下であることがより好ましい。ここでいう「平均粒径」はレーザー回折式粒度分布測定装置でMEK(メチルエチルケトン)を溶媒として分析して得られる値を意味する。
【0078】
フィラの含有量は、接着剤層の固形分の質量を基準として、30~90質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましい。フィラの含有量が30質量%以上であることで、十分な放熱性を達成しやすく、また、ボイドをできるとともに吸湿率を小さくすることができる。他方、フィラの含有量が90質量%以下であることで、粘度が過度に高くなることを抑制でき、十分に高い流動性を確保できるとともに、接続部へのフィラの噛み込み(トラッピング)を十分に抑制できる。
【0079】
接着剤層は、イオントラッパー、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びレベリング剤等の添加剤を更に含有してもよい。これらは一種を単独で又は二種以上を併用してもよい。これらの添加剤の含有量は、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0080】
上述のとおり、作業性の観点から、接着剤付きチップを作製するにあたり、事前にフィルム状接着剤を準備することが好ましい。フィルム状接着剤は以下のようにして作製することができる。すなわち、上述の各成分を有機溶媒に加え、混合液を攪拌又は混錬することによってワニスを調製する。離型処理を施した基材フィルム上にワニスを塗布した後、加熱により有機溶媒を減少させることで、基材フィルム上にフィルム状接着剤が形成される。ワニスの塗布は、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、ダイコーター又はコンマコーターを用いて実施することができる。
【0081】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムが例示できる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、二種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。
【0082】
ワニスから有機溶媒を揮発させる際の条件は、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱を行うことが好ましい。実装後のボイドの発生又は粘度調整に影響がなければ、有機溶媒の含有量は1.5質量%以下にまで低減させることが好ましい。
【0083】
なお、表面に接着剤層が形成された半導体ウエハをダイシングすることによって接着剤付きチップを作製する場合、例えば、スピンコートによって半導体ウエハの表面にワニスの膜を形成し、その後、加熱により溶媒を減少させればよい。
【実施例
【0084】
以下、本開示について、実施例を基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>
(接着剤層形成用ワニスの調製)
以下の化合物を表1に示す割合で混合するとともに、真空脱気することによってワニスを調製した。なお、溶剤としてMEKを使用した。
(1)重量平均分子量10000未満の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)
・トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、EP1032H60(以下「EP1032」と表記する。)、重量平均分子量:800~2000)
・ビスフェノールF型液状エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、YL983U(以下「YL983」と表記する。)、分子量:約336)
・可とう性半固形状エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、YL7175-1000(以下「YL7175」と表記する。)、重量平均分子量:1000~5000)
(2)硬化剤
・2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成工業株式会社製、2MAOK-PW(以下「2MAOK」と表記する。))
(3)重量平均分子量10000以上の高分子成分
・フェノキシ樹脂(東都化成工業株式会社、ZX1356-2(以下「ZX1356」と表記する。)、Tg:約71℃、重量平均分子量:約63000)
(4)フラックス剤(カルボン酸)
・グルタル酸(アルドリッチ社製、融点:約98℃)
(5)樹脂フィラ
・有機フィラ(ロームアンドハースジャパン株式会社製、EXL-2655:コアシェルタイプ有機微粒子)
(6)無機フィラ
・シリカフィラ(株式会社アドマテックス、SE2050、平均粒径:0.5μm)
・メタクリル表面処理ナノシリカフィラ(株式会社アドマテックス、YA050C-SM(以下「SMナノシリカ」表記とする。)、平均粒径:約50nm)
【0086】
【表1】
【0087】
(フィルム状接着剤の作製)
厚さ50μmの表面離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製、商品名:テイジンテトロンフィルムA-63)上にワニスを塗工した。乾燥工程を経て、厚さ45μmのフィルム状接着剤を得た。
【0088】
(半導体装置の製造)
第一の部材としてのはんだバンプ付き半導体チップ(WALTS-TEG CC80(製品名)、株式会社ウォルツ製)を準備した。この半導体チップの構成は以下のとおりであった。
・チップサイズ:7.3mm×7.3mm×0.05mmt
・バンプ高さ:約45μm(銅ピラー及びはんだの高さの合計)
・バンプ数:1048ピン
・バンプピッチ:80μm
【0089】
作製したフィルム状接着剤を上記半導体チップと同じサイズ(7.3mm×7.3mm)に切り抜くことによって接着剤片を得た。この接着剤片を半導体チップの表面(はんだが形成されている側の面)にラミネートした。ラミネートは、真空ラミネータV130(ニッコー・マテリアルズ株式会社)を使用し、80℃/0.5MPa/60sの条件で実施した。
【0090】
第二の部材としての半導体チップ(WALTS-TEG IP80、株式会社ウォルツ製)を準備した。この半導体チップの構成は以下のとおりであった。
・チップサイズ:10mm×10mm×0.1mmt
・接続部を構成する金属:Ni/Au
【0091】
半導体チップ(第二の部材)の接続部が形成されている側の面上に、この面と接着剤片が接するように、はんだバンプ付き半導体チップを載せた。そして、圧着装置(FCB3、パナソニック株式会社製)を使用して仮圧着工程を実施した後、レーザーボンダ(FDB250、澁谷工業株式会社製)を使用して圧着工程を実施した。仮圧着工程は80℃/25N/1sの条件で実施した。圧着工程は以下の条件で実施した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:1秒
・レーザー照射パターン:図6(a)(エリア1,3,5,7にレーザーを照射した。)
・レーザー照射時間:1秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:235℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:205℃
・エリア9の中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の温度T9:204℃
・温度差(Tc-Ts):30℃
・温度差(Ts-T9):1℃
【0092】
圧着工程後、加圧オーブン装置(VSU28、株式会社シンアペックス製)を使用し、175℃/10min/0.4MPa及び昇温速度20℃/minの条件でキュア工程を実施した。このキュア工程を経て本実施例に係る半導体装置を得た。
【0093】
<実施例2>
圧着工程を以下の条件で実施したことの他は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:3秒
・レーザー照射パターン:図6(a)(実施例1よりも弱い強度のレーザーを照射した。)
・レーザー照射時間:3秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:225℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:200℃
・エリア9の中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の温度T9:200℃
・温度差(Tc-Ts):25℃
・温度差(Ts-T9):0℃
【0094】
<比較例1>
圧着工程を以下の条件で実施したことの他は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:1秒
・レーザー照射パターン:図6(b)(エリア1,3,5,7にレーザーを照射するとともに、このレーザーよりも弱い強度のレーザーをエリア2,4,6,8に照射した。)
・レーザー照射時間:1秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:225℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:215℃
・温度差(Tc-Ts):10℃
【0095】
<比較例2>
圧着工程を以下の条件で実施したことの他は、実施例2と同様にして半導体装置を作製した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:3秒
・レーザー照射パターン:図6(b)(比較例1よりも弱い強度のレーザーを照射した。)
・レーザー照射時間:3秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:210℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:205℃
・温度差(Tc-Ts):5℃
【0096】
<実施例3>
圧着工程を以下の条件で実施したことの他は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。なお、圧着工程後、加圧オーブン装置(PCOA-01、NTTアドバンステクノロジ株式会社製)を使用し、実施例1と同じ条件でキュア工程を実施した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:1秒
・レーザー照射パターン:図7(エリア1,3,5,7にレーザーを出力100%で照射し、エリア2,4,6,8の外側部分にレーザーを出力10%で照射した。)
・レーザー照射時間:1秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:240℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:211℃
・エリア9の中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の温度T9:205℃
・温度差(Tc-Ts):29℃
・温度差(Ts-T9):6℃
【0097】
<実施例4>
圧着工程を以下の条件で実施したことの他は、実施例3と同様にして半導体装置を作製した。
・圧着圧力:30N
・圧着時間:3秒
・レーザー照射パターン:図7(実施例3よりも弱い強度のレーザーを照射した。)
・レーザー照射時間:3秒
・エリア1,3,5,7の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Tc:230℃
・エリア2,4,6,8の各中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の平均温度Ts:205℃
・エリア9の中心部におけるボンディングツール表面(はんだバンプ付き半導体チップの外表面)の温度T9:200℃
・温度差(Tc-Ts):20℃
・温度差(Ts-T9):5℃
【0098】
<半導体装置の評価>
実施例及び比較例に係る半導体装置について以下の評価を行った。
【0099】
(1)初期導通性の評価
マルチメータ(R6871E、株式会社アドバンテスト製)を使用し、実施例及び比較例に係る半導体装置の初期接続抵抗値を測定し、初期導通性について評価を行った。評価基準は以下のとおりとした。表2及び表3に結果を示す。
A:ペリフェラル部分の初期接続抵抗値が30~35Ωである。
B:ペリフェラル部分の初期接続抵抗値が35Ω超である。
【0100】
(2)ボイド発生率の評価
以下の方法により、実施例及び比較例に係る半導体装置のボイド発生率を評価した。まず、超音波映像診断装置(Insight-300、インサイト株式会社製)を使用し、実施例及び比較例に係る半導体装置の外観画像を撮影した。スキャナ(GT-9300UF、EPSON株式会社製)で半導体チップ上の接着剤層の画像を取り込んだ。この画像を画像処理ソフト(Adobe Photoshop(登録商標)、アドビシステムズ株式会社)によって色調補正及び二階調化することによってボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。評価基準は以下のとおりとした。表2及び表3に結果を示す。
A:半導体チップ上の接着剤部分の面積を基準として、ボイド部分の占める割合が5%以下である。
B:半導体チップ上の接着剤部分の面積を基準として、ボイド部分の占める割合が5%超である。
【0101】
(3)フィレット幅の評価
実施例及び比較例に係る半導体装置をデジタルマイクロスコープ(VHX-5000、株式会社キーエンス製)を用いて上面から観察した。そして、正方形の半導体チップからはみ出している部分(フィレット)の最大値を測定した。半導体チップの四つの辺についてフィレット幅の最大値をそれぞれ測定し、その平均値をフィレット幅とした。表2及び表3に結果を示す。
【0102】
(4)カバレッジの評価
実施例及び比較例に係る半導体装置をデジタルマイクロスコープ(VHX-5000、株式会社キーエンス製)を用いて上面から観察した。そして、正方形の半導体チップからはみ出している部分(フィレット)の幅であって、半導体チップの角から200μmの位置の二点における幅(カバレッジ)を測定した(図4参照)。半導体チップの四つの角について計八点のカバレッジを測定し、その平均値を算出した。表2及び表3に結果を示す。なお、表2,3に記載の「カバレッジ指数」はカバレッジ(平均値)をフィレット幅(平均値)で除すことによって算出された値である。表中の「-」は未測定であることを意味する。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示によれば、半導体チップの辺におけるフィレットが小さく且つカバレッジが確保された半導体装置及びその製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0106】
1~9…エリア、10…半導体チップ(第一の部材)、10a…銅ピラー(第一の接続部)、10b…はんだバンプ(第一の接続部)、11~13…半導体チップ、20…基板(第二の部材)、20a…配線(第二の接続部)、30…接着剤層、40…積層体、50,70…半導体装置、60…インタポーザー(第二の部材)、A1…レーザー照射部、A2…レーザー非照射部、C…隅部、F…押圧力、L…レーザー、S…辺、Sa…一端、Sb…他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7