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特許7342886仮固定用樹脂組成物、仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】仮固定用樹脂組成物、仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230905BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 161/06 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230905BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230905BHJP
【FI】
H01L21/02 C
C09J163/00
C09J161/06
C09J183/04
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/35
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561420
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049245
(87)【国際公開番号】W WO2020129917
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018238562
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 省吾
(72)【発明者】
【氏名】大山 恭之
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄志
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035821(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/191815(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
C09J 163/00
C09J 161/06
C09J 183/04
C09J 133/14
C09J 11/06
C09J 7/35
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、
前記支持体に仮固定された前記半導体ウェハを加工する加工工程と、
加工後の前記半導体ウェハを前記仮固定材から分離する分離工程と、
を含む半導体ウェハの加工方法において、前記仮固定材を形成するための仮固定用樹脂組成物であって、
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)シリコーン化合物と、
を含み、120℃でのずり粘度が500~2000Pa・sであり且つ25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率が30%以内であり、
前記仮固定工程において前記仮固定材に対して放射線照射が行われない、仮固定用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)熱硬化性樹脂の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、10~500質量部である、請求項1に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項4】
(D)硬化促進剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)熱可塑性樹脂が、反応性基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合成分として含む反応性基含有(メタ)アクリル共重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応性基含有(メタ)アクリル共重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを、共重合成分全量を基準として1.0~10質量%を含むエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体である、請求項5に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)シリコーン化合物が、有機基変性シリコーンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂組成物。
【請求項8】
単層又は多層構成の仮固定用樹脂フィルムであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含む、仮固定用樹脂フィルム。
【請求項9】
フィルム状の仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、
前記支持体に仮固定された前記半導体ウェハを加工する加工工程と、
加工後の前記半導体ウェハを前記仮固定材から分離する分離工程と、
を含む半導体ウェハの加工方法において、前記フィルム状の仮固定材として使用される仮固定用樹脂フィルムであって、
固定用樹脂組成物からなる層を二層有する多層構成を有し、
前記仮固定用樹脂組成物が、
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)シリコーン化合物と、
を含み、120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下であり且つ25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率が30%以内である、仮固定用樹脂フィルム。
【請求項10】
フィルム状の仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、
前記支持体に仮固定された前記半導体ウェハを加工する加工工程と、
加工後の前記半導体ウェハを前記仮固定材から分離する分離工程と、
を含む半導体ウェハの加工方法において、前記フィルム状の仮固定材として使用される仮固定用フィルムであって、
第一の仮固定用樹脂組成物からなる第一樹脂層と、第二の仮固定用樹脂組成物からなる第二樹脂とを備える多層構成を有し且つ前記第一樹脂層と前記第二樹脂層が直接接しており、
前記第一及び第二の仮固定用樹脂組成物がいずれも、
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)シリコーン化合物と、
を含み、120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下であり且つ25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率が30%以内である、仮固定用樹脂フィルム。
【請求項11】
前記第一及び第二の仮固定用組成物が互いに異なる組成物である、請求項10に記載の仮固定用樹脂フィルム。
【請求項12】
支持体と半導体ウェハの間に介在し、前記支持体に対する前記半導体ウェハの仮固定に使用される、請求項8~11のいずれか一項に記載の仮固定樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の仮固定樹脂フィルムと、
前記仮固定用樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた支持フィルムと、
を備える、仮固定用シート。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂組成物からなる仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、
前記支持体に仮固定された前記半導体ウェハを加工する加工工程と、
加工後の前記半導体ウェハを前記仮固定材から分離する分離工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用樹脂組成物、仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC等の電子機器の多機能化に伴い、半導体素子を多段に積層することによって高容量化したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。半導体素子の実装には、ダイボンディング用接着剤としてフィルム状接着剤が広く用いられている。しかし、現行のワイヤボンドを使用した半導体素子の接続方式では、データの処理速度に限界があることから、電子機器の動作が遅くなる傾向にある。また、消費電力を低く抑え、充電せずにより長時間使用したいとのニーズが高まっていることから、省電力化も求められつつある。このような観点から、近年、更なる高速化及び省電力化を目的として、ワイヤボンドではなく貫通電極により半導体素子同士を接続する新しい構造の電子機器装置も開発されてきている。
【0003】
このように新しい構造の電子機器装置が開発されてきているものの、依然として高容量化も求められており、パッケージ構造に関わらず、半導体素子をより多段に積層できる技術の開発が進められている。しかし、限られたスペースに、より多くの半導体素子を積層するためには、半導体素子の安定した薄型化が必要不可欠である。
【0004】
例えば現在、半導体ウェハを裏面側から薄型化する研削工程では、いわゆるBGテープ(バックグラインドテープ)と呼ばれるテープを半導体素子に貼り付け、半導体ウェハをサポートした状態で研削工程を実施することが主流となっている。しかし、研削工程に供される半導体ウェハは、表面側に回路が形成されており、その影響により、研削によって薄型化されると反りが生じやすい。BGテープは、変形しやすいテープ素材であるから、薄型化された半導体ウェハを充分にサポートすることができず、半導体ウェハに反りが生じやすい。
【0005】
このような背景から、BGテープよりも硬い素材であるシリコンウェハ又はガラスを支持体として使用し、これによって半導体ウェハを薄型化するプロセスが提案されている。そして、半導体ウェハと支持体(シリコンウェハ又はガラス)との間に介在して両者を粘着させる粘着剤が提案されてきている。このような粘着剤は、研削後の半導体素子を損傷させることなく、支持体から剥離できることが重要な特性として要求される。そのため、これらの特性を満足するための剥離方法が検討されている。剥離方法としては、例えば、溶剤によって粘着剤を溶解させる方法、加熱により粘着性を低下させる方法、レーザー照射により粘着剤を改質又は消失させる方法が挙げられる(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4565804号明細書
【文献】特許第4936667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、溶剤によって粘着剤を溶解させる方法は時間がかかるため、生産性が低下しやすい。また、加熱により粘着性を低下させる方法は、加熱による半導体素子への影響が懸念されるとともに、貫通電極等を形成するプロセス用途には耐熱性の観点から適用できない。一方、レーザー照射により粘着剤を改質又は消失させる方法は、高価なレーザー設備の導入が必要不可欠であり、このようなプロセスの適用には、かなりの投資が必要不可欠となる。
【0008】
上述のとおり、作業性及び高額な設備投資の必要性という点から、従来の粘着剤は更なる改善の余地がある。特に、このような粘着剤は液状のものがほとんどであり、半導体ウェハ又は支持体にスピンコート等で塗布し、加熱、UV照射等により成膜して使用されている。しかし、このような場合、塗布時の粘着剤のバラツキにより、個々の半導体ウェハで、加工後の半導体ウェハの厚さにバラツキが生じ易く、またスピンコートでは塗布時の回転で飛散した材料を廃棄する必要がある等の課題がある。
【0009】
また、加工する電子部品は、平滑性が高いものに限らず、回路面にハンダボールを備え、表面に80μmを超える凹凸のあるウェハが加工対象である場合も増加傾向にある。このように大きな凹凸を有する部品が加工対象である場合、凹凸に粘着剤を充分に埋め込んだ状態とすると、凹凸を有する表面から粘着剤を剥離することが難しくなる。また、ハンダボールの接着強度が不充分な場合には、粘着剤の剥離時にハンダボールが欠落する等の懸念が生じる。更に、電子部品の製造プロセスにおいては、例えばハンダボール搭載時のリフロー工程、あるいは、再配線層の形成工程など、200℃を超えるプロセスがあり、粘着剤にはこれらの工程で電子部品をしっかり保持し、且つプロセス通過後に簡単に剥離できる必要がある。
【0010】
更に、光、熱等の外部エネルギーの照射によって硬化する材料を用いる場合、通常の使用環境であるクリーンルーム(UVカット、25℃)下での保存安定性(「シェルフライフ」と称する場合がある)も重要である。優れた段差埋込性が求められるため、シェルフライフが不充分であると、埋め込み不足が発生してしまい、生産性に大きな影響を及ぼし、好ましくない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の加工を良好に行うことができる仮固定用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記仮固定用樹脂組成物を用いた仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート、並びに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る仮固定用樹脂組成物は、仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、支持体に仮固定された半導体ウェハを加工する加工工程と、加工後の半導体ウェハを仮固定材から分離する分離工程とを含む半導体ウェハの加工方法において、仮固定材を形成するためのものであり、
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)シリコーン化合物と、
を含み、120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下であり且つ25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率が30%以内である。本発明の仮固定用樹脂組成物は(D)硬化促進剤を更に含んでもよい。
【0013】
仮固定用樹脂組成物の120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下(好ましくは100~3000Pa・s)であることで、加工対象の半導体ウェハの表面に凹凸があっても段差埋込性及び加工後の剥離性の両方を十分に高水準とすることができる。これにより、本発明によれば、半導体ウェハを良好に加工することができ、これにより、高い生産性で電子部品を製造することができる。
【0014】
仮固定用樹脂組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、フィルム形成性の観点から、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、10~500質量部である。(B)熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一方を含むものであってもよい。
【0015】
(A)熱可塑性樹脂として、例えば、反応性基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合成分として含む反応性基含有(メタ)アクリル共重合体である。この反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の具体例としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを、共重合成分全量を基準として1.0~10質量%を含むエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
【0016】
(C)シリコーン化合物として、樹脂成分との相溶性の観点から、例えば、有機基変性シリコーンを採用することができる。
【0017】
本発明は、単層又は多層構成を有し、上記仮固定用樹脂組成物からなる層(以下、場合により「仮固定用樹脂層」という。)を少なくとも一層含む仮固定用樹脂フィルムを提供する。仮固定用樹脂組成物を厚さが十分に均一のフィルム状に予め形成しておくことで、加工後の半導体ウェハに生じ得る厚さのバラツキを十分に抑制できるとともに、効率的に半導体ウェハを加工することができる。本発明の仮固定用樹脂フィルムは、仮固定用樹脂層を二層有するものであってもよい。仮固定用樹脂フィルムが二層構成であることで、より高度に段差埋込性及び加工後の剥離性を両立し得るという利点がある。仮固定用樹脂フィルムにおいて、一つの仮固定用樹脂層と、他の仮固定用樹脂層とが直接接していてもよい。この場合、二つの層が一体化して単層構造となっていてもよいし、二つの層の間に界面が存在して二層構造を維持していてもよい。これらの仮固定樹脂フィルムは、上述のとおり、支持体と半導体ウェハの間に介在し、支持体に対する半導体ウェハの仮固定に使用することができる。
【0018】
本発明は、上記仮固定樹脂フィルムと、この仮固定樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた支持フィルムとを備える仮固定用シートを提供する。支持フィルムにおける仮固定樹脂フィルムと接する面は離型性を有することが好ましい。
【0019】
本発明は、上記仮固定用樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供する。本発明に係る半導体装置の製造方法は、具体的には、仮固定用樹脂組成物からなる仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程と、支持体に仮固定された半導体ウェハを加工する加工工程と、加工後の半導体ウェハを仮固定材から分離する分離工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電子部品の加工を良好に行うことができる仮固定用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記仮固定用樹脂組成物を用いた仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート、並びに半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(A)は仮固定用シートの一実施形態を示す上面図であり、図1(B)は図1(A)のI-I線に沿った模式断面図である。
図2図2(A)は二層の仮固定用樹脂層を有する仮固定用シートの一実施形態を示す上面図であり、図2(B)は図2(A)のII-II線に沿った模式断面図である。
図3図3(A)は本発明に係る仮固定用シートの他の実施形態を示す上面図であり、図3(B)は図3(A)のIII-III線に沿った模式断面図である。
図4図4(A)は本発明に係る仮固定用シートの他の実施形態を示す上面図であり、図4(B)は図4(A)のIV-IV線に沿った模式断面図である。
図5図5(A)~図5(C)は、半導体ウェハの加工方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図5(D)は、加工後の半導体ウェハの裏面を示す上面図である。
図6図6(A)~図6(D)は、半導体ウェハの加工方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図7図7(A)は本発明に係る加工方法を経て製造された半導体素子の一例を模式的に示す断面図であり、図7(B)は複数の半導体素子が積層された電子機器装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0023】
[仮固定用樹脂組成物]
本実施形態に係る仮固定材樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)シリコーン化合物とを含み、120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下であり且つ25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率が30%以内である。この仮固定材樹脂組成物を仮固定材(仮固定用樹脂層)として使用することで、半導体ウェハを良好に加工することができ、これにより、高い生産性で電子部品を製造することができる。
【0024】
仮固定用樹脂組成物の120℃でのずり粘度は、上述のとおり、4000Pa・s以下であり、好ましくは100~3000Pa・sの範囲であり、300~2500Pa・s又は500~2000Pa・sであってもよい。仮固定用樹脂組成物の120℃でのずり粘度が4000Pa・s以下であることで、加工対象の半導体ウェハの表面に凹凸があっても優れた段差埋込性を達成できるとともに、仮固定用樹脂組成物からなる層が凹凸を埋め込んだ後において、凹凸を有する面からの優れた剥離性も達成できる。仮固定用樹脂組成物の120℃でのずり粘度が100Pa・s以上であることで、半導体ウェハの加工後において加熱時にフィルムの状態を維持することができる。
【0025】
仮固定材樹脂組成物を25℃の雰囲気下に7日放置した後のずり粘度の変化率は、上述のとおり、30%以内であり、好ましくは0~25%の範囲であり、0~20%又は0~15%であってもよい。この変化率が30%以内であることで、仮固定材樹脂組成物は保存安定性に優れ、これにより、電子部品を高い生産性で製造することができる。なお、ずり粘度の変化率は以下の式で算出される値である。
ずり粘度の変化率(%)=[(25℃の雰囲気下に7日放置後における120℃でのずり粘度)-(25℃の雰囲気下に7日放置前における120℃でのずり粘度)]/(25℃の雰囲気下に7日放置前における120℃でのずり粘度)×100
なお、「25℃の雰囲気下に7日放置前における120℃でのずり粘度」は外部の環境になるべく曝されていない仮固定材樹脂組成物を試料として測定することが好ましく、例えば、調製後又は開封後から5時間以内の試料を測定することが好ましい。また、7日間にわたって放置する環境の相対湿度は55%程度であればよい。
【0026】
7日放置の前及び後における仮固定材樹脂組成物のずり粘度は、ARES(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用い、仮固定用樹脂フィルムに5%の歪みを与えながら20℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。
【0027】
硬化後における仮固定材樹脂組成物の貯蔵弾性率は25℃において20MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましい。この貯蔵弾性率が20MPa以上であれば、電子部品を薄化する際に電子部品と支持体とを充分に固定することができる傾向にある。この貯蔵弾性率の上限値は、例えば、6000MPa以下である。硬化後における仮固定材樹脂組成物の貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置(株式会社ユービーエム製)を用い、3℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。
【0028】
<(A)熱可塑性樹脂>
(A)熱可塑性樹脂としては、少なくともフィルムが電子部品又は支持体にラミネートされる前において熱可塑性を有している樹脂であれば特に制限なく用いることができる。熱可塑性樹脂は、加熱等により架橋構造を形成する樹脂であってもよい。
【0029】
(A)熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有するポリマーを用いることができる。架橋性官能基を有するポリマーとしては、熱可塑性ポリイミド樹脂、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体、ウレタン樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が好ましい。上記の樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよく、あるいは、市販品を用いてもよい。架橋性官能基を有するポリマーは、架橋性官能基をポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。架橋性官能基の具体例としては、エポキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。架橋性官能基の中でも、カルボキシル基が好ましい。カルボキシル基は、アクリル酸を用いることによってポリマー鎖に導入することができる。
【0031】
(A)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と表記する場合もある)は、-50℃~50℃であることが好ましく、-40℃~20℃であることがより好ましい。Tgがこのような範囲であれば、タック力が上がりすぎて取り扱い性が悪化することを抑制しつつ、より充分な流動性を得ることができ、更に硬化後の弾性率をより低くすることができるため、剥離強度が高くなりすぎることをより抑制できる。
【0032】
Tgは、示差走査熱量測定(DSC、例えば株式会社リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて熱可塑性樹脂を測定したときの中間点ガラス転移温度値である。具体的には、上記Tgは、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0033】
(A)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に限定されず、好ましくは10万~120万であり、より好ましくは20万~100万である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量がこのような範囲であれば、成膜性と流動性とを確保することが容易となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0034】
<(B)熱硬化性樹脂>
(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。
【0036】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製jER(登録商標)シリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、「エピコート」は登録商標)、ダウケミカル社製、DER-330、DER-301、DER-361、及び新日鉄住金化学株式会社製、YD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN-201、ダウケミカル社製のDEN-438等が挙げられる。o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027(「EOCN」は登録商標)、新日鉄住金化学株式会社製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、ハンツマン・ジャパン株式会社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX-611、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-421、EX-411、EX-321等が挙げられる(「アラルダイト」、「デナコール」は登録商標)。アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、新日鉄住金化学株式会社製のYH-434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD-X及びTETRAD-C(「TETRAD」は登録商標)、住友化学株式会社製のELM-120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。
【0038】
(B)エポキシ樹脂硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。以下、エポキシ樹脂硬化剤と硬化剤とを合わせて「熱硬化性成分」という。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れるという観点から、エポキシ樹脂硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。
【0039】
上記エポキシ樹脂硬化剤としてのフェノール樹脂の中で好ましいものとしては、例えば、DIC株式会社製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H-1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:jERキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65及び三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVRが挙げられる(「フェノライト」、「エピキュア」、「ミレックス」は登録商標)。
【0040】
仮固定用樹脂組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して10~500質量部が好ましく、20~300質量部がより好ましい。硬化性成分の配合量が上記範囲内であれば、仮固定用樹脂フィルムは充分な低温貼り付け性、耐熱性、硬化性及び剥離性を兼ね備えることができる。(B)熱硬化性樹脂の含有量が10質量部以上であれば貼付性及び耐熱性が向上するとともに、バックグラインド時の保持性も向上し、ウェハが割れにくい傾向がある。一方、(B)熱硬化性樹脂の含有量が500質量部以下であれば、硬化前の粘度が過度に低くなりにくく、比較的短時間で硬化できるとともに、電子部品の支持体への保持性と支持体からの剥離性を両立できる傾向にある。
【0041】
<(C)シリコーン化合物>
(C)シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有するものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、シリコーン変性樹脂、ストレートシリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーン化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
仮固定用樹脂組成物がシリコーン化合物を含有することで、仮固定用樹脂組成物から形成されるフィルム状の仮固定材を、半導体チップ及び封止体並びに支持体から剥離する際、100℃以下の低温であっても、溶剤を用いることなく容易に剥離することが可能となる。
【0043】
本実施形態で用いるシリコーン化合物がシリコーン変性樹脂である場合、シリコーンで変性された樹脂であれば特に制限はない。シリコーン変性樹脂としては、シリコーン変性アルキド樹脂が好ましい。シリコーン変性アルキド樹脂を含有することで、仮固定用樹脂フィルムを電子部品から剥離する際、溶剤を用いることなく一層容易に剥離することが可能となる。
【0044】
本実施形態で用いるシリコーン化合物が変性シリコーンオイルである場合、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンが好ましい。
【0045】
上述のようなシリコーンとしては、高分子量体と相溶するものであれば、特に限定なく用いることができる。シリコーンとしては、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH3773M、L-7001、SH-550、SH-710、信越化学工業株式会社製のX-22-163、KF-105、X-22-163B、X-22-163C、BYK社製のBYK-UV3500等が挙げられる。
【0046】
仮固定用樹脂組成物における(C)シリコーン化合物の含有量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0~100質量部が好ましく、0.01~80質量部がより好ましい。(C)シリコーン化合物の含有量が上記範囲内であれば、電子部品加工時の接着性と加工後の剥離性とをより高水準で両立させることが可能となる。
【0047】
<(D)硬化促進剤>
仮固定用樹脂組成物は、(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。(D)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(A)熱可塑性樹脂がエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む場合、このアクリル共重合体に含まれるエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を含有させることが好ましい。
【0049】
仮固定用樹脂組成物における(D)硬化促進剤の含有量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~5.0質量部が好ましい。(C)硬化促進剤の含有量が(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上であれば、半導体素子の製造工程内の熱履歴において仮固定用樹脂組成物を充分に硬化させることできるため、電子部品と支持体とをより確実に固定できる。(D)硬化促進剤の含有量が(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して5.0質量部以下であれば、製造工程中の加熱により仮固定用樹脂フィルムの溶融粘度が上昇しにくくなり、フィルムの保存安定性が更に良好になる傾向がある。
【0050】
<その他の成分>
仮固定用樹脂組成物は、上記の成分以外の成分として、フィラー(無機フィラー及び/又は有機フィラー)、並びに、シランカップリング剤等を含んでもよい。
【0051】
無機フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー;シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の非金属無機フィラー等が挙げられる。無機フィラーは所望する機能に応じて選択することができる。金属フィラーは、フィルムにチキソ性を付与する目的で添加することができる。非金属無機フィラーは、フィルムに低熱膨張性及び低吸湿性を付与する目的で添加することができる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
無機フィラーは表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されていることにより、フィルムを形成するための樹脂組成物を調製するときの有機溶剤への分散性、並びにフィルムの密着性及び耐熱性を向上させることが容易となる。
【0053】
表面に有機基を有する無機フィラーは、例えば、下記一般式(B-1)で表されるシランカップリング剤と無機フィラーとを混合し、30℃以上の温度で攪拌することにより得ることができる。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されたことは、UV(紫外線)測定、IR(赤外線)測定、XPS(X線光電子分光)測定等で確認することが可能である。
【0054】
【化1】
【0055】
式(B-1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、イソシアネート基及びメタクリロキシ基からなる群より選択される有機基を示し、sは0又は1~10の整数を示し、R11、R12及びR13は各々独立に、炭素数1~10のアルキル基を示す。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基は、入手が容易であるという観点から、メチル基、エチル基及びペンチル基が好ましい。Xは、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基が好ましく、グリシドキシ基及びメルカプト基がより好ましい。式(B-1)中のsは、高熱時のフィルム流動性を抑制し、耐熱性を向上させる観点から、0~5が好ましく、0~4がより好ましい。
【0056】
好ましいシランカップリング剤は、例えば、トリメトキシフェニルシラン、ジメチルジメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3―ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N,N’―ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらの中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシフェニルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記カップリング剤の使用量は、耐熱性を向上させる効果と保存安定性とのバランスを図る観点から、無機フィラー100質量部に対して、0.01~50質量部が好ましく、0.05質量部~20質量部がより好ましく、耐熱性向上の観点から、0.5~10質量部が更に好ましい。
【0058】
無機フィラーの含有量は、Bステージ状態における仮固定用樹脂フィルムの取扱い性の向上、及び低熱膨張性の向上の観点から、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。無機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、接着性を充分に確保しつつ、所望の機能を付与することができる傾向にある。
【0059】
有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。有機フィラーの含有量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。有機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。
【0060】
[仮固定用樹脂フィルム及びこれを含む仮固定用シート]
本実施形態に係る仮固定用樹脂組成物が、仮固定用樹脂フィルムである場合、フィルム状の粘着剤であるため、膜厚の制御がより容易であり、個々の電子部品間での厚さのバラツキを軽減することができる。また、本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルムは、ラミネート等の簡便な方法により電子部品又は支持体上に貼り合わせることができ、作業性にも優れている。
【0061】
仮固定用樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、電子部品と搬送用の支持体とを充分に固定するという観点から、10~350μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であれば、塗工時の厚さのバラツキが少なくなり、また、厚さが充分であるためフィルム又はフィルムの硬化物の強度が良好になり、電子部品と搬送用の支持体とをより充分に固定することができる。厚さが350μm以下であれば、仮固定用樹脂フィルムの厚さのバラツキが生じにくく、また、充分な乾燥によりフィルム中の残留溶剤量を低減することが容易となり、フィルムの硬化物を加熱したときの発泡を更に少なくできる。
【0062】
図1(A)は仮固定用シートの一実施形態を示す上面図であり、図1(B)は図1(A)のI-I線に沿った模式断面図である。これらの図に示す仮固定用シート10は、支持フィルム1と、仮固定用樹脂組成物からなる仮固定用樹脂フィルム2Aと、保護フィルム3とをこの順に備える。
【0063】
支持フィルム1としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミドが挙げられる。支持フィルム1は、柔軟性及び強靭性に優れるという観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド又はポリイミドであることが好ましい。また、樹脂フィルム(樹脂層)との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、フッ素系化合物などにより離型処理が施されたフィルムを支持フィルムとして用いることが好ましい。
【0064】
支持フィルム1の厚さは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、3~350μmであることが好ましい。厚さが、3μm以上であればフィルム強度が充分であり、350μm以下であれば充分な柔軟性が得られる傾向にある。このような観点から、支持フィルム1の厚さは、5~200μmであることがより好ましく、7~150μmであることが更に好ましい。
【0065】
保護フィルム3としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。保護フィルム3は、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。また、仮固定用樹脂フィルム(樹脂層)との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを保護フィルム3として用いることが好ましい。
【0066】
保護フィルム3の厚さは、目的とする柔軟性により適宜設定することができ、例えば、10~350μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であればフィルム強度がより良好になり、350μm以下であれば更なる柔軟性が得られる。このような観点から、保護フィルム3の厚さは、15~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることが更に好ましい。
【0067】
仮固定用樹脂フィルム2Aは、上述の成分を有機溶媒中で混合及び混練してワニスを調製し、作製したワニスを支持フィルム1上に塗布して乾燥する方法により形成することができる。有機溶剤は特に限定されず、製膜時の揮発性等を沸点から考慮して決めることができる。具体的には、製膜時にフィルムの硬化を進みにくくする観点から、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶剤が好ましい。また、製膜性を向上させる等の目的では、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノンの比較的高沸点の溶剤を使用することが好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ワニスにおける固形分濃度は、10~80質量%であることが好ましい。
【0068】
混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はなく、通常60℃~200℃で、0.1~90分間加熱して行うことができる。加熱乾燥によって支持フィルム1上に仮固定用樹脂フィルム2Aが形成される。その後、仮固定用樹脂フィルム2Aを覆うように保護フィルム3を貼り合わせることによって仮固定用シート10が得られる。
【0069】
このようにして得られた仮固定用シート10は、例えばロール状に巻き取ることによって容易に保存することができる。また、ロール状の仮固定用シート10を好適なサイズに切り出した状態で保存することもできる。
【0070】
図2(A)は二層の仮固定用樹脂層を有する仮固定用シートの一実施形態を示す上面図であり、図2(B)は図2(A)のII-II線に沿った模式断面図である。これらの図に示す仮固定用シート20は、支持フィルム1aと、第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bからなる仮固定用樹脂フィルム2Bと、支持フィルム1bとをこの順に備える。第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bからなる仮固定用樹脂フィルム2Bがずり粘度に関する上記条件を満たす。第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bは同一の組成物で構成されていてもよいし、互いに異なる組成物で構成されていてもよい。第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bが異なる組成物で構成されている場合、例えば、第二樹脂層2bが半導体ウェハの凹凸を有する面と接する側とすると、第二樹脂層2bが優れた段差埋込性及び段差を有する面に対する優れた剥離性を有し(図6(B)参照)する一方、第一樹脂層2aが加工に先立って貼り付けられる支持体(図5(A)の支持体50参照)に対する優れた剥離性を有するものとなるように設計することができる。
【0071】
仮固定用樹脂フィルム2Bは、上述の成分を有機溶媒中で混合及び混練してワニスを調製し、これを支持フィルム1a上に塗布して乾燥して作製した積層体と、これと同じ又は別途調製したワニスを支持フィルム1b上に塗布して乾燥して作製した積層体とを貼り合わせことにより形成することができる。第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bを同じワニスで形成する場合、比較的厚い仮固定用樹脂フィルムを形成しても、有機溶媒の残存量を十分に低減しやすいという利点がある。第一樹脂層2a及び第二樹脂層2bは一体化して単層構造となっていてもよいし、二つの層の間に界面が存在して二層構造を維持していてもよい。
【0072】
仮固定用樹脂フィルム2A,2Bの支持体(例えばシリコンミラーウェハ)に対する90°剥離強度(剥離速度:300mm/分)は、25℃において5~200N/mであることが好ましく、6~180N/mであることがより好ましい。90°剥離強度が上記範囲内であれば、加工後の半導体ウェハに糊残りが生じることを十分に抑制でき、加工後の半導体ウェハを支持体から良好に剥離することができる。すなわち、90°剥離強度が5N/m以上であれば研削加工工程で電子部品と支持体とをより強固に固定することができ、200N/m以下であれば、支持体から仮固定用樹脂フィルムを剥離する際に支持体との間の糊残りを十分に低減でき、支持体上にフィルムが残る可能性を更に低減できる。
【0073】
90°剥離強度は以下のように測定できる。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)を真空ラミネーター(株式会社エヌ・ピー・シー製、LM-50X50-S)のステージ上に置き、本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルムを第二の層がシリコンミラーウェハ側に貼り付くように設置する。これを15mbarの条件下で、120℃の温度、0.1MPaの圧力で2分間加熱加圧し、真空ラミネートして測定用サンプルとする。得られた測定用サンプルを硬化させ、10mm幅に切り出す。これを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機により、300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とする。
【0074】
[仮固定用シートの他の実施形態]
図3(A)は仮固定用シートの他の実施形態を示す上面図であり、図3(B)は図3(A)のIII-III線に沿った模式断面図である。図3(A)に示す仮固定用シート30は、仮固定する部材(例えば、半導体ウェハ)の形状に合わせて仮固定用樹脂フィルム2A及び保護フィルム3が予め裁断されていること以外は、仮固定用シート10と同様の構成を有する。
【0075】
図4(A)は仮固定用シートの他の実施形態を示す上面図であり、図4(B)は図4(A)のIV-IV線に沿った模式断面図である。図4(A)に示す仮固定用シート40は、仮固定する部材(例えば、半導体ウェハ)の形状に合わせて支持フィルム1b、保護フィルム3及び仮固定用樹脂フィルム2Bが予め裁断されていること以外は、仮固定用シート10と同様の構成を有する。なお、図3(A)及び図4(A)に示す態様においては、保護フィルム3、支持フィルム1b及び仮固定用樹脂フィルム2A,2Bが円形に裁断された態様を例示したが、仮固定する部材の形状に合わせてこれらの部材に切れ込みが設けられていたり、外縁部が残されていたりしていてもよい。
【0076】
[半導体ウェハの加工方法]
仮固定用樹脂組成物を用いた半導体ウェハの加工方法は、大きく分けて以下の4工程を備える。
(a)仮固定用樹脂組成物からなる仮固定材を介して支持体に半導体ウェハを仮固定する仮固定工程。
(b)支持体に仮固定された半導体ウェハを加工する加工工程。
(c)加工後の半導体ウェハを支持体及び仮固定材から分離する分離工程。
(d)半導体ウェハに残渣がある場合、半導体ウェハを洗浄する洗浄工程。
【0077】
図5(A)~図5(C)は半導体ウェハの加工方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図5(D)は加工後の半導体ウェハを示す上面図である。なお、図5(A)~図5(C)においては、仮固定材(仮固定用樹脂層)が図2(B)又は図4(B)に示す二層構成の仮固定用樹脂フィルム2Bである場合を図示したが、仮固定材の構成はこれに限定されない。
【0078】
<(a)仮固定工程>
仮固定工程は、支持体50と半導体ウェハWとの間に、仮固定材を介在させ、支持体50に対して半導体ウェハWを仮固定する工程である(図5(A))。半導体ウェハWの厚さは、特に制限はないが、300~800μmとすることができる。半導体ウェハWの仮固定用樹脂フィルム2B側の面Waには回路(不図示)が形成され且つ複数の接続端子Wtが形成されている。半導体ウェハWの面Waから接続端子Wtの頭頂部までに距離(接続端子Wtの高さ)は、例えば、1~200μmであり、5~150μm又は10~100μmであってもよい。
【0079】
(a-1)支持体50上への仮固定材の形成
図5(A)に示すように、二層構成の仮固定用樹脂フィルム2Bを使用する場合、ロールラミネーター及び真空ラミネーター等を使用して支持体50上に仮固定材を形成することができる。なお、二層構成の仮固定用樹脂フィルムの代わりに、単層の仮固定用樹脂フィルム2Aを使用してもよい。液状の仮固定用樹脂組成物を使用する場合、スピンコート、印刷及びディスペンス等の手段によって、支持体50上に仮固定材を形成する。
【0080】
支持体50の材質は特に制限されず、シリコンウェハ、ガラスウェハ、石英ウェハ、SUS板等の基板が使用可能である。支持体50には剥離処理を行ってもよく、支持体50表面の全部又は一部を剥離処理することで、剥離層52を形成してもよい(図5(A)参照)。剥離処理に使用される剥離剤は特に限定されず、例えば、フッ素元素を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス及びシリコーンオイル、反応性基を含有するシリコーンオイル、シリコーン変性アルキド樹脂が剥離性に優れるため好ましい。
【0081】
(a-2)半導体ウェハWの貼り付け
支持体50とその表面上に形成された仮固定材とを有する積層体を、ウェハ接合装置又は真空ラミネーター上にセットする。仮固定材に対して半導体ウェハWを押圧して貼り付ける(図5(A)参照)。
【0082】
ウェハ接合装置として、例えば、EVG社製真空プレス機EVG520IS(商品名)が挙げられる。この装置を使用する場合、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度60℃~200℃、保持時間100秒~300秒で、半導体ウェハWと支持体50とを仮固定材を介して仮固定すればよい。
【0083】
真空ラミネーターとして、例えば、株式会社エヌ・ピー・シー製真空ラミネーターLM-50×50-S(商品名)及びニチゴー・モートン株式会社製真空ラミネーターV130(商品名)が挙げられる。押圧条件は、気圧1hPa以下、圧着温度40℃~180℃(好ましくは60℃~150℃)、ラミネート圧力0.01~0.5MPa(好ましくは0.1~0.5MPa)、保持時間1秒~600秒(好ましくは30秒~300秒)で、半導体ウェハWと支持体50とを仮固定材を介して仮固定すればよい。
【0084】
(a-3)仮固定用樹脂フィルムの硬化
支持体50に対して半導体ウェハWを仮固定した後、仮固定材の硬化を行う。硬化方法は特に制限されなく、熱又は放射線照射による方法がある。硬化方法としては、中でも、熱による硬化が好ましい。熱による硬化をする場合、硬化条件は、100~200℃で10~300分(より好ましくは20~210分)の硬化が好ましい。温度が100℃以上であれば仮固定材が充分に硬化して加工工程で問題が起きにくく、200℃以下であれば仮固定材の硬化中にアウトガスが発生しにくく、仮固定材の剥離を更に抑制できる。また、硬化時間が10分以上であれば加工工程で問題が起きにくく、300分以下であれば作業効率が悪化しにくい。図5(B)における仮固定用樹脂フィルム2Cは仮固定用樹脂フィルム2Bの硬化体を示す。
【0085】
<(b)加工工程>
加工工程は、ウェハレベルで用いられる研削、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が含まれる。研削方式には特に制限はなく、公知の研削方式が利用できる。研削は半導体ウェハWと砥石(ダイヤモンド等)とに水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。
【0086】
例えば、図5(B)に示すように、グラインダーGによって半導体ウェハWの裏面Wbを研削し、例えば700μm程度の厚さを100μm以下にまで薄化する。研削加工する装置としては、例えば、株式会社ディスコ製DGP-8761(商品名)等が挙げられ、切削条件は所望の半導体ウェハWの厚さ及び研削状態に応じて任意に選ぶことができる。
【0087】
その他の工程は具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクするためのレジストの塗布、露光・現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成等、公知のプロセスが挙げられる。
【0088】
図5(C)は、薄化した半導体ウェハWの裏面側にドライイオンエッチング又はボッシュプロセス等の加工を行い、貫通孔を形成した後、銅めっき等の処理を行い、貫通電極Etを形成した例を示している。図5(D)は加工後の半導体ウェハWの裏面Wb側を示す上面図である。なお、半導体ウェハWは、後述のとおり、図5(D)に破線で示されたダイシングラインLに沿って切断するダイシング工程を経て半導体素子に個片化される。
【0089】
<(c)分離工程>
図6(A)~図6(D)は、図5(C)に示す状態から後の工程を示す模式断面図である。分離工程は、仮固定用樹脂フィルムとともに半導体ウェハWを支持体50から剥離する第一の剥離工程と(図6(A)参照)、半導体ウェハWから仮固定材を剥離する第二の剥離工程(図6(B)参照)とを含む。なお、第一の剥離工程を実施することなく、仮固定用樹脂フィルムから半導体ウェハWを剥離してもよい。剥離方法としては、半導体ウェハW又は支持体50の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、電子部品の研削面に保護フィルムを貼り、電子部品と保護フィルムとをピール方式で支持体50から剥離する方法等が挙げられる。
【0090】
第二の剥離工程では、例えば、図6(B)に示されるように、剥離された半導体ウェハW及び仮固定材をダイシングテープ90上に移して半導体ウェハWを水平に固定しておき、仮固定材の端を水平方向から一定の角度をつけて持ち上げることで、仮固定材が剥離された半導体ウェハWを得ることができる(図6(C)を参照)。本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルムを用いて仮固定材が形成されていることにより、糊残りなどの残渣が充分低減された加工済み半導体ウェハWを容易に得ることができる。これらの剥離方法は、通常、室温で実施されるが、40~100℃程度の電子部品にダメージのない温度下で実施してもよい。機械的に分解する際は、例えばデボンダー(ズース・マイクロテック株式会社製、DB12T)、De-Bonding装置(EVG社製、EVG805EZD)等を用いる。
【0091】
第二の剥離工程では、例えば、図5(B)に示されるように、電子部品80を水平に固定しておき、フィルム状の仮固定材70の端を水平方向から一定の角度をつけて持ち上げることで、仮固定材が剥離された電子部品80を得ることができ、支持体を回収することができる。
【0092】
<(d)洗浄工程>
半導体ウェハWの回路形成面(面Wa)は仮固定材の一部が残存しやすい。半導体ウェハWの回路形成面に仮固定材が一部残存した場合、これを除去するための洗浄工程を設けることができる。仮固定材の除去は、例えば、半導体ウェハWを洗浄することにより行うことができる。
【0093】
洗浄液は、一部残存した仮固定材を除去できるような洗浄液であれば、特に制限はない。このような洗浄液としては、例えば、仮固定用樹脂組成物の希釈に用いることができる上記有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、残存した仮固定材が除去しにくい場合は、有機溶剤に塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類は、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で0.01~10質量%が好ましい。また、洗浄液には、残存物の除去性を向上させるため既存の界面活性剤を添加してもよい。
【0095】
洗浄方法に特に制限はなく、例えば、上記洗浄液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が挙げられる。温度は10~80℃、好ましくは15~65℃が好適であり、最終的に水洗又はアルコール洗浄を行い、乾燥処理させて、薄型の半導体ウェハWが得られる。
【0096】
なお、上述したように、本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルム組成物によれば、糊残り等の残渣を充分に低減することができるため、洗浄工程を省略することが可能となる。
【0097】
貫通電極Etが形成された半導体ウェハWは、更にダイシングラインLに沿ったダイシングによって半導体素子に個片化される(図6(D)参照)。なお、図6(D)に示す複数の半導体素子100は、ダイシングテープ90のエキスパンドによって、互いに離間している。
【0098】
図7(A)は上記工程を経て製造された半導体素子100を模式的に示す断面図である。図7(B)は複数の半導体素子100が積層された電子機器装置の一例を模式的に示す断面図である。半導体素子100を配線基板110上に複数積層するとともに、半導体素子100の上に更に半導体素子100を配置して電気的に接続することにより電子機器装置120を得ることができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。例えば、本発明に係る仮固定用樹脂組成物、仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート、並びに、半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの加工に限定されず、種々の電子部品の加工に適用して電子機器装置の製造方法に利用することができる。
【実施例
【0100】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
[アクリルゴムK-1の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内において、以下の成分を配合した。
・脱イオン水200g
・アクリル酸ブチル60g
・メタクリル酸メチル10g
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート10g
・グリシジルメタクリレート20g
・1.8%ポリビニルアルコール水溶液1.94g
・ラウリルパーオキサイド0.2g
・n-オクチルメルカプタン0.08g
続いて、60分間にわたってNガスをフラスコに吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して5時間重合を行った。更に、系内温度を90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。重合反応により得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムK-1を得た。アクリルゴムK-1をGPCで測定したところ、アクリルゴムK-1の重量平均分子量はポリスチレン換算で30万であった。アクリルゴムK-1のTgは-20℃であった。
【0102】
[アクリルゴムK-2の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内において、以下の成分を配合した。
・脱イオン水200g
・アクリル酸ブチル70g
・メタクリル酸メチル10g
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート10g
・グリシジルメタクリレート10g
・1.8%ポリビニルアルコール水溶液1.94g
・ラウリルパーオキサイド0.2g
・n-オクチルメルカプタン0.06g
続いて、60分間にわたってNガスをフラスコに吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して5時間重合を行った。更に、系内温度を90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。重合反応により得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムK-2を得た。アクリルゴムK-2をGPCで測定したところ、アクリルゴムK-2の重量平均分子量はポリスチレン換算で40万であった。アクリルゴムK-2のTgは-28℃であった。
【0103】
(実施例1~5、比較例1~8)
[仮固定用樹脂フィルムの調製]
表1~3に示す質量部の組成で実施例及び比較例に係るワニスをそれぞれ調製した。調製したワニスを、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製、A31、厚さ38μm)の離型処理面上に塗布し、90℃で5分間、140℃で5分間加熱乾燥することによって第一樹脂層を形成した。同じワニスを用いて第二樹脂層を形成し、第一樹脂層及び第二樹脂層によって仮固定用樹脂フィルムを得た。その後、仮固定用樹脂フィルム上に保護フィルムを貼り合わせ、保護フィルム及び支持フィルムが付いた仮固定用樹脂フィルムを得た。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
表1~3に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
・アクリルゴムK-1:GPCによる重量平均分子量30万、グリシジルメタクリレート20質量%、Tg-20℃のアクリルゴム
・アクリルゴムK-2:GPCによる重量平均分子量40万、グリシジルメタクリレート10質量%、Tg-28℃のアクリルゴム
・HTR-860P-3CSP:GPCによる重量平均分子量80万、グリシジルメタクリレート3質量%、Tg12℃のアクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製)
・YDCN-700-10:クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製)
・EXA-830CRP:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)
・HE100-30:フェノールアラルキル樹脂(エア・ウォーター株式会社製)
・SH3773M:ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング株式会社製)
・TA31-209E:シリコーン変性アルキド樹脂(日立化成株式会社製)
・2PZ-CN:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製)
・2PHZ-PW:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製)
・SC2050-HLG:エポキシシラン表面処理シリカフィラ(アドマッテクス株式会社製)
【0108】
調製した実施例及び比較例の仮固定用樹脂フィルムについて、120℃におけるずり粘度、段差埋込性、250℃での耐熱性評価、硬化後の弾性率(25℃における貯蔵弾性率)、支持体に対する仮固定用樹脂フィルムの90°剥離強度及びプロセス性評価を、以下に示す方法にしたがって評価した。25℃の雰囲気下に7日間放置した前(経時なし)及び後(経時あり)の評価結果を表4~6に示す。
【0109】
[ずり粘度測定]
仮固定用樹脂フィルムにおけるずり粘度を下記の方法により評価した。厚さ30μmに調整したフィルムを80℃で8枚ラミネートし240μmとし、回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、ARES)を用いて、ずり粘度を測定した。測定方法は「parall plate」、測定冶具は直径8mmの円形の治具、測定モードは「Dynamic temperature ramp」、周波数は1Hzで行い、5%の歪みを与えながら35℃から20℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、120℃に到達したときの粘度を測定した。
【0110】
[段差埋込性]
仮固定用樹脂フィルムの段差埋込性を下記の方法により評価した。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)表面に、仮固定用樹脂フィルムを80℃でロールラミネートにて貼り合せ、仮固定用樹脂フィルム付きウェハを得た。次に、厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)表面に、ブレードダイシングにより幅40μm、深さ40μmの溝を100μm間隔で作製した。このようにして作製した段差付きシリコンミラーウェハの段差が上面となるように真空ラミネーター(株式会社エヌ・ピー・シー製、LM-50X50-S)のステージ上に置き、上記で作製した仮固定用樹脂フィルム付きウェハの仮固定用樹脂フィルム面を下にして、段差付きシリコンミラーウェハ側に貼り付くように設置した。これを、15mbarの条件下で、120℃の温度、0.1MPaの圧力で2分間加熱加圧し、真空ラミネートした。その後、超音波顕微鏡(SAM、インサイト株式会社製、Insight-300)を用いて仮固定用樹脂フィルムの状態を確認した。埋込性の評価基準は以下のとおりである。
A:ボイドの割合が5%未満。
B:ボイドの割合が5%以上。
【0111】
[250℃での耐熱性評価]
仮固定用樹脂フィルムの250℃での耐熱性を下記の方法により評価した。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)をブレードダイシングにより25mm角に小片化した。小片化したシリコンミラーウェハ表面に、仮固定用樹脂フィルムを80℃でロールラミネートした。次に、厚さが0.1~0.2mmで大きさが約18mm角のスライドガラスを、仮固定用樹脂フィルムの上に80℃でロールラミネートし、仮固定用樹脂フィルムがシリコンウェハ及びスライドガラスで挟まれた積層体サンプルを作製した。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で2時間加熱して仮固定用樹脂フィルムを硬化させ、その後、200℃で30分間加熱した。更にその後250℃で30分間加熱した。このようにして得られた試料をスライドガラス面から観察し、画像をPhotoshop(登録商標)等のソフトウェハで解析し、仮固定用樹脂フィルム全体の面積に占めるボイドの割合から250℃での耐熱性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:ボイドの割合が5%未満。
B:ボイドの割合が5%以上。
【0112】
[25℃における貯蔵弾性率]
仮固定用樹脂フィルムについて、硬化後の貯蔵弾性率を下記の方法により評価した。厚さ30μmに調整したフィルムを80℃で8枚ラミネートし240μmとし、これを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で2時間加熱して仮固定用樹脂フィルムを硬化させ、その後200℃で30分間加熱した。その後、厚さ方向に4mm幅、長さ33mmに切り出した。切り出したフィルムを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel-E4000、株式会社ユービーエム製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、25℃での貯蔵弾性率を測定した。
【0113】
[90°剥離強度]
シリコンミラーウェハ及び仮固定用樹脂フィルムの間の90°剥離強度を下記の方法により評価した。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)を真空ラミネーター(株式会社エヌ・ピー・シー製、LM-50X50-S)のステージ上に置き、仮固定用樹脂フィルムがシリコンミラーウェハ側に貼り付くように設置し、15mbarの条件下で、120℃の温度、0.1MPaの圧力で2分間加熱加圧し、真空ラミネートした。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で2時間加熱して硬化させ、これを更に200℃で30分間加熱した後、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。測定用フィルムを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とした。
【0114】
[プロセス性評価]
仮固定用樹脂フィルムのデボンド装置での剥離性を下記の方法により評価した。支持体としてシリコンミラーウェハに仮固定用樹脂フィルムを80℃でロールラミネートにより貼り付けることで、仮固定用樹脂フィルム付き支持体を得た。次に、厚さ725μmのシリコンミラーウェハ(8インチ)表面に、ブレードダイシングにより幅40μm、深さ40μmの溝を100μm間隔で作製し、表面に段差を有するシリコンウェハを用意した。このシリコンウェハの段差側に、仮固定用樹脂フィルム付き支持体の仮固定用樹脂フィルムが接触するように貼り合わせ、真空ボンディング装置(アユミ工業株式会社製VE07-14)で5mbarの条件下で、120℃の温度、0.1MPaの圧力で2分間加熱加圧し、積層体を得た。このようにして得られた積層体を130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱することにより仮固定用樹脂フィルムを硬化させた。その後、これを200℃で30分間加熱した後、シリコンウェハの段差側と仮固定用樹脂フィルムとの間に、先端が鋭利なピンセットを差し入れ、外縁に沿ってピンセットを動かした。シリコンウェハ及び支持体が割れることなく剥離できたものをAとし、剥離できなかったもの又は損傷が見られたものはBとした。
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、電子部品の加工を良好に行うことができる仮固定用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記仮固定用樹脂組成物を用いた仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用シート、並びに半導体装置の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0119】
1,1a,1b…支持フィルム、2A,2B…仮固定材(仮固定用樹脂組成物、仮固定用樹脂層、仮固定用樹脂フィルム)、2C…仮固定材(仮固定用樹脂組成物の硬化体)、2a…第一樹脂層(仮固定用樹脂層)、2b…第二樹脂層(仮固定用樹脂層)、3…保護フィルム、10,20,30,40…仮固定用シート、50…支持体、100…半導体素子、120…半導体装置、Et…貫通電極、W…半導体ウェハ、Wt…接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7