(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】半導体装置を製造する方法、仮固定材、及び、仮固定材の半導体装置を製造するための応用
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
(21)【出願番号】P 2023525541
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2022033190
(87)【国際公開番号】W WO2023033161
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/032475
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】西戸 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】竹越 正明
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181767(WO,A1)
【文献】特開2020-128338(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216621(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、及び該支持体上に設けられた仮固定材層を備えるキャリア基板を準備する工程と、
前記仮固定材層上に、チップ本体部、及び該チップ本体部の外表面上に設けられた電極パッドを有する半導体チップを配置する工程と、
前記半導体チップを封止する封止層を形成することにより、前記半導体チップ及び前記封止層を含む封止構造体を前記キャリア基板上に形成する工程であって、前記封止構造体が、前記仮固定材層と接する接続面を有し、該接続面に前記半導体チップが露出し、前記接続面において前記半導体チップと前記封止層とで形成される段差が5.0μm以下である、工程と、
前記封止構造体から前記キャリア基板を分離する工程と、
前記封止構造体の前記接続面上に、前記電極パッドに接続された多層の配線と該配線の間を埋める絶縁層とを含む再配線層を設ける工程と、
をこの順で含
み、
前記仮固定材層の厚さ、及び前記支持体の23℃における引張弾性率が、前記段差が5.0μm以下となる範囲で選択される、
半導体装置を製造する方法。
【請求項2】
前記仮固定材層の厚さが50μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仮固定材層の厚さが10μmを超えて50μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持体の23℃における引張弾性率が100GPa以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体がガラス板、金属板、シリコンウェハ又はセラミックス板である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記仮固定材層の厚さが50μm以下の範囲内で選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記仮固定材層の厚さが10μmを超えて50μm以下の範囲で選択される、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記支持体の23℃における引張弾性率が100GPa以上の範囲内で選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体がガラス板、金属板、シリコンウェハ及びセラミックス板から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記絶縁層が、前記配線と前記封止構造体との間に介在する中間層を有し、該中間層の厚さの最大値が15μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記封止層が、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有する顆粒状の封止材を金型内で加熱及び加圧することを含むコンプレッションモールディングによって形成される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記封止層が、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有するフィルム状の封止材を前記キャリア基板上に積層することを含む方法によって形成される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置を製造する方法、仮固定材、及び、仮固定材の半導体装置を製造するための応用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化のために、半導体チップの電極面上に基板と接続するためのバンプを直接設けられたウエハレベルパッケージが採用されることがある。さらに、バンプ数の増加及び配線の微細化を実現するために、半導体チップのサイズよりも大きな領域に引き出された配線を有するファンアウトのウエハレベルパッケージの需要が高まっている。
【0003】
ファンアウトのウエハレベルパッケージを形成する方法として、仮固定材層上に半導体チップを配置し、その状態で半導体チップを封止する封止層を形成することを含む、チップファースト/フェイスダウンのプロセスがある。仮固定材層は、封止層が形成された後、封止層及び半導体チップから剥離される(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許3594853号公報
【文献】特開2013-098393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮固定材層上に配置された半導体チップを封止する封止層を形成する場合、封止層及び半導体チップから仮固定材層を剥離したときに、封止層及び半導体チップが露出した面が形成される。このとき、半導体チップが封止層の表面よりも高く突き出すことにより、半導体チップと封止層とで微小な段差が形成されることがある。この段差は、半導体チップに接続される再配線層が形成されたときに、半導体チップと封止材の熱膨張率の差に起因する応力特異点を段差の近傍に発生させる可能性がある。特に再配線層が微細な配線及び薄い絶縁層を含む場合、応力特異点が再配線層におけるクラック又は剥離を引き起こすことが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の事項を含む。
[1]
支持体、及び該支持体上に設けられた仮固定材層を備えるキャリア基板を準備する工程と、
前記仮固定材層上に、チップ本体部、及び該チップ本体部の外表面上に設けられた電極パッドを有する半導体チップを配置する工程と、
前記半導体チップを封止する封止層を形成することにより、前記半導体チップ及び前記封止層を含む封止構造体を前記キャリア基板上に形成する工程であって、前記封止構造体が、前記仮固定材層と接する接続面を有し、該接続面に前記半導体チップが露出し、前記接続面において前記半導体チップと前記封止層とで形成される段差が5.0μm以下である、工程と、
前記封止構造体から前記キャリア基板を分離する工程と、
前記封止構造体の前記接続面上に、前記電極パッドに接続された多層の配線と該配線の間を埋める絶縁層とを含む再配線層を設ける工程と、
をこの順で含む、
半導体装置を製造する方法。
[2]
前記仮固定材層の厚さが50μm以下である、[1]に記載の方法。
[3]
前記仮固定材層の厚さが10μmを超えて50μm以下である、[1]に記載の方法。
[4]
前記支持体の23℃における引張弾性率が100GPa以上である、[1]~
[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]
前記支持体がガラス板、金属板、シリコンウェハ又はセラミックス板である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]
前記仮固定材層の厚さ、及び前記支持体の23℃における率が、前記段差が5.0μm以下となる範囲で選択される、[1]に記載の方法。
[7]
前記仮固定材層の厚さが50μm以下の範囲内で選択される、[6]に記載の方法。
[8]
前記仮固定材層の厚さが10μmを超えて50μm以下の範囲で選択される、[6]に記載の方法。
[9]
前記支持体の23℃における引張弾性率が100GPa以上の範囲内で選択される、[6]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記支持体がガラス板、金属板、シリコンウェハ及びセラミックス板から選択される、[6]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記絶縁層が、前記配線と前記封止構造体との間に介在する中間層を有し、該中間層の厚さの最大値が15μm以下である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記封止層が、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有する顆粒状の封止材を金型内で加熱及び加圧することを含むコンプレッションモールディングによって形成される、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]
前記封止層が、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有するフィルム状の封止材を前記キャリア基板上に積層することを含む方法によって形成される、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[14]
50μm以下の厚さを有し、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法において仮固定材層として用いられる、フィルム状の半導体装置製造用仮固定材。
[15]
10μmを超えて50μm以下の厚さを有し、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法において仮固定材層として用いられる、フィルム状の半導体装置製造用仮固定材。
[16]
50μm以下の厚さを有するフィルム状の仮固定材の、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法によって半導体装置を製造するための応用。
[17]
10μmを超えて50μm以下の厚さを有するフィルム状の仮固定材の、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法によって半導体装置を製造するための応用。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、再配線層における応力特異点の発生の可能性を低減しながら、半導体装置を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図である。
【
図2】半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図である。
【
図3】半導体チップと封止層とで形成される段差の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は以下の例に限定されない。図面の寸法比率は図示した比率に限られない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む。
【0010】
図1及び
図2は、半導体装置を製造する方法の一例を示す工程図である。
図1及び
図2に示される方法は、チップファースト/フェイスダウンのファンアウトのウエハレベルパッケージを製造する組立プロセスの一例である。本例示に係る方法は、支持体41、及び支持体41上に設けられた仮固定材層42を備えるキャリア基板40を準備する工程と、1つの仮固定材層42上に、チップ本体部11、及びチップ本体部11の外表面上に設けられた電極パッド12を有する複数の半導体チップ10を、電極パッド12が仮固定材層42に接する向きで配置する工程(
図1の(a))と、半導体チップ10を封止する封止層1を形成することにより、半導体チップ10及び封止層1からなる封止構造体5をキャリア基板40上に形成する工程であって、封止構造体5が、仮固定材層42と接する接続面を有し、接続面に半導体チップ10が露出している、工程(
図1の(b)、(c))と、封止構造体5からキャリア基板40を分離する工程(
図1の(d)及び
図2の(e))と、封止構造体5の接続面S上に、電極パッド12に接続された多層の配線31と配線31の間を埋める絶縁層32とを含む再配線層3を設ける工程(
図2の(f))と、封止構造体5を接続面Sとは反対側の面から研削する工程(
図2の(g))と、再配線層3の封止構造体5とは反対側の面上に、配線31と接続されたはんだボール30を設ける工程(
図2の(h))と、封止構造体5を再配線層3とともに分割して、個片化された半導体装置100を得る工程(
図2の(h))とから主に構成される。
【0011】
図3は、封止構造体5が形成されたときに、接続面Sにおいて半導体チップ10と封止層1とで形成される段差の一例を示す模式図である。
図3に示されるように、接続面Sにおいて半導体チップ10が僅かに突き出ることにより、半導体チップ10と封止層1とで段差Gが形成される。本開示に係る方法において、5.0μm以下の段差Gを有する封止構造体5が形成される。段差Gが小さいと、再配線層3が形成されたときに、段差Gに起因する応力特異点の発生の可能性を低減することができる。係る観点から、段差Gは4.9μm以下、4.8μm以下、4.7μm以下、4.6μm以下、4.5μm以下、4.4μm以下、4.3μm以下、4.2μm以下、4.1μm以下、4.0μm以下、3.9μm以下、3.8μm以下、3.7μm以下、3.6μm以下、3.5μm以下、3.4μm以下、又は3.3μm以下であってもよい。段差Gは、0μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、0.6μm以上、0.7μm以上、0.8μm以上、0.9μm以上、又は1.0μm以上であってもよい。段差Gは、キャリア基板40が除去された後、露出した接続面Sの表面を例えば接触式表面粗さ計を用いて分析することによって、測定することができる。
【0012】
段差Gが5.0μm以下となるように、例えば、仮固定材層42の厚さ、及び支持体41の引張弾性率(ヤング率)を選択することができる。
【0013】
仮固定材層42の厚さが小さいと、段差Gが小さくなる傾向がある。仮固定材層42の厚さを、例えば50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下の範囲で選択してもよい。仮固定材層42の厚さの下限は、通常1μm程度である。仮固定材層42の厚さが10μmを超えてもよい。
【0014】
支持体41の引張弾性率(ヤング率)が大きいと、段差Gが小さくなる傾向がある。支持体41の引張弾性率を、例えば、100GPa以上、又は110GPa以上の範囲で選択してもよい。支持体41の引張弾性率の上限は、通常、300GPa程度である。ここでの引張弾性率(ヤング率)を測定するための引張試験の条件は、支持体の材質に応じた測定方法に従って選択することができる。採用される測定方法の例は、支持体の材質が有機材料(例えば樹脂)である場合はJIS―K7161―1、支持体の材質がセラミックス又はガラスである場合はJIS―R1602、支持体の材質が金属である場合はJIS―Z2280である。ヤング率は縦弾性係数と称されることもある。引張弾性率は一般的に温度依存性を有するため、支持体の選択のために23℃における引張弾性率の値が参照される。
【0015】
段差Gが5.0μm以下となるように、仮固定材層42の厚さ、支持体41の引張弾性率、及び支持体41の厚さを選択してもよい。この場合の仮固定材層42の厚さ及び支持体41の引張弾性率を上述の範囲内から選択してもよい。支持体41の厚さが大きいと、段差Gが小さくなる傾向がある。支持体41の厚さを、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、又は1.0mm超の範囲で選択してもよい。支持体41の厚さの上限は、通常、4.0mm程度である。
【0016】
支持体41は、例えば、ガラス板、金属板(例えば銅板、ステンレス鋼板)、シリコンウェハ、セラミックス板、又は有機基板であってもよい。支持体41がガラス板、金属板、シリコンウェハ又はセラミックス板であってもよく、ガラス板、金属板、又はシリコンウェハであってもよい。これらは通常、23℃において100GPa以上の引張弾性率を有する。仮固定材層42がUV照射又はレーザー照射によって剥離される場合、最も典型的には、支持体41がガラス板である。金属板は、平坦な表面、及び封止層形成の工程における耐久性の点で有利である。支持体41が円盤状であってもよく、その直径がシリコンウエハと同程度(例えば12インチ程度)であってもよい。支持体41が矩形の主面を有する板状体であってもよく、その場合の主面の1片の長さが600mm程度であってもよい。
【0017】
支持体41は、膨張性粒子を実質的に含まなくてもよい。特に、支持体41が膨張性粒子を実質的に含まない有機基板であってもよい。ここでの膨張性粒子は、外部刺激によって、それ自体が膨張することで支持体41に凹凸を形成し、被着体との接着力を低下させることができる粒子を意味する。膨張性粒子の例は、加熱によって膨張する熱膨張性粒子(例えば、マイクロカプセルか発泡剤)、及び、エネルギー線の照射によって膨張するエネルギー線膨張性粒子を含む。「膨張性粒子を実質的に含まない」とは、膨張性粒子の含有量が、支持体41の質量に対して1質量%未満であることを意味する。
【0018】
支持体41の仮固定材層42側の面上に、半導体チップ10の位置決めのためのアライメントマークが設けられてもよい。アライメントマークは、金属、樹脂等の任意の材料を用いて形成することができる。支持体41自体にアラインメントマークを刻んでもよい。アライメントマークが設けられる場合、仮固定材層42が、アライメントマークを視認可能な程度に透明であってもよい。
【0019】
仮固定材層42を形成する材料は、半導体装置の製造において、仮固定又は仮接着の目的で用いられている材料から、厚さ等に基づいて選択することができる。市販の半導体製造用の保護テープを仮固定材層として利用してもよい。仮固定材層42は単層のフィルムであってもよく、2層以上を含む積層体であってもよい。
【0020】
半導体チップ10は、2つの主面を有する板状のチップ本体部11、及びチップ本体部11の一方の主面上に形成された複数の電極パッド12を有する、フェイスダウン型のチップである。チップ本体部11はベアチップであってもよい。半導体チップの最大幅が、例えば100μm以上50000μm以下であってもよい。半導体チップはこれに限定されず、必要により大きさ、材質、付着物、機能等の異なる任意の半導体チップが選択できる。
【0021】
半導体チップ10を仮固定材層42上に配置する方法は、特に限定されない。半導体装置の製造工程で通常用いられているダイボンダ等の任意の装置及び方法を適用することができる。温度、圧力、印加時間等を含む条件も任意に設定できる。仮固定材層42の温度が20~230℃の条件下で半導体チップ10を仮固定材層42上に配置してもよい。1つの仮固定材層42上に配置される半導体チップの数は、1個又は2個以上であってもよく、30000個以下であってもよい。
【0022】
図1の(b)は、コンプレッションモールディングによって封止層を形成する工程の一例を示す。ここでは、対向して配置された1対の金型51,52の間のキャビティ50内で、キャリア基板40及びこれに仮固定された半導体チップ10からなる構造体と、封止材1Aとが、半導体チップ10が内側になる向きで対向する位置に配置される。次いで、キャリア基板40、半導体チップ10、及び封止材1Aが、キャビティ50内で加熱及び加圧される。これにより、半導体チップ10を封止する封止層1を有する封止構造体5が仮固定材層42上に形成される。
【0023】
封止材1Aは、室温(25℃)において固形の顆粒状であってもよい。顆粒状の封止材1Aの粒径は、平均で1.0~7.0mm、又は2.0~3.5mmであってもよい。ここでの粒径は個別の粒子の最大幅を意味する。顆粒状の封止材1Aの個別の粒子は、封止材の粉体から形成された凝集体であってもよい。
【0024】
コンプレッションモールディングにおける加熱温度(以下「封止温度」ということがある。)は、100℃以上150℃以下であってもよい。封止温度は、通常、コンプレッションモールディングに用いられる金型51,52の温度である。封止温度は、封止材1Aが硬化する温度の範囲で設定される。封止温度が150℃以下であると、形成された封止層1が室温まで冷却するときの熱収縮が特に低く抑えられ、これが半導体チップと封止層とで形成される微小な段差の更なる低減に寄与し得る。同様の観点から封止温度が130℃以下であってもよい。封止温度が100℃以上であると、適度に短い時間で封止層1を十分に硬化し易い。必要により、金型51,52から取り出した封止構造体5を更に加熱してもよい。
【0025】
封止材1Aの成形収縮率が、0.5%以下、0.4%以下、又は0.3%以下であってもよい。成形収縮率は、封止層1の25℃における体積がLaで、封止層1の封止温度における体積がLbであるとき、式:Sm={(Lb-La)/Lb}×100で算出される値Smである。金型51,52によって形成されるキャビティ50のうち封止層1が占める部分の封止温度における体積を、Lbとして用いてもよい。成形収縮率が小さいことは、半導体チップと封止層とで形成される段差Gの更なる低減に貢献することができる。
【0026】
半導体チップ10の厚さが、封止層1の厚さに対して1/3以下、又は1/4以下であってもよい。ここでいう封止層1の厚さは、封止構造体5の接続面Sに垂直な方向における封止層1の厚さの最大値を意味し、これは、通常、半導体チップ10を有する封止構造体5の厚さと一致する。封止層1の厚さに対する半導体チップ10の厚さの比率が小さいと、比較的小さい収縮率を有する半導体チップ10の影響が小さくなり、その結果、半導体チップと封止層とで形成される微小な段差がより一層顕著に低減される傾向がある。同様の観点から、半導体チップ10の厚さが、封止層1の厚さに対して1/4以下であってもよい。
【0027】
顆粒状の封止材1Aは、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有していてもよい。無機充填剤をある程度多く含有する封止材は、室温(25℃)で固形であり、顆粒状の形態を維持し易い。顆粒状の形態維持、及び熱収縮率低減の観点から、無機充填剤の含有量は、封止材1Aの体積を基準として55体積%~90体積%、60体積%~90体積%、又は70体積%~85体積%であってもよい。無機充填剤の含有量が大きいと耐リフロー性が向上する傾向がある。無機充填剤の含有量が小さいと充填性が向上する傾向がある。
【0028】
無機充填剤は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、及びチタニアから選ばれる1種以上の無機材料を含む粒子であってもよい。無機充填剤がガラス繊維であってもよい。水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、及びモリブデン酸亜鉛から選ばれる無機材料を含む無機充填剤は、難燃性向上の観点からも有用である。充填性、線膨張係数の低減の観点から、無機充填剤が溶融シリカを含んでいてもよい。高熱伝導性の観点から、無機充填剤がアルミナを含んでいてもよい。無機充填剤の形状は、特に制限されないが、充填性及び金型摩耗性の点から、例えば球形であってもよい。これらの無機充填剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて封止材に配合される。
【0029】
封止材1Aを構成する硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂であってもよく、その場合、封止材1Aがエポキシ樹脂の硬化剤を更に含有してもよい。
【0030】
エポキシ樹脂は、封止材において一般に使用されているものであれば、特に制限はない。エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノ-ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物;ナフタレン環を有するエポキシ樹脂;フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;及び硫黄原子含有エポキシ樹脂が挙げられる。室温(25℃)で固体又は高粘度のエポキシ樹脂は、液状のエポキシ樹脂と比べ、比較的小さい硬化収縮及び熱収縮を示す硬化物を形成する傾向がある。
【0031】
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものであれば特に制限はない。硬化剤の具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、及びテルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。
【0032】
封止材1Aは、硬化促進剤を更に含んでいてもよく、その例としてはホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物が挙げられる。封止材1Aにおける硬化促進剤(又はホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物)の含有量は、硬化時間の観点から、封止材1Aの質量を基準として0.3~0.05質量%、又は0.2~0.1質量%であってもよい。ホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物の含有量が、硬化時間の観点から、エポキシ樹脂の量に対して、0.5~5質量%、又は1~3質量%であってもよい。
【0033】
封止材1Aは、カップリング剤を更に含んでいてもよい。カップリング剤によって無機充填剤とその他の樹脂成分との接着性を高めることができる。充填性の観点から、封止材1Aがエポキシ基を有するシランカップリング剤を含んでもよい。
【0034】
封止材1Aがカップリング剤を含む場合、その含有量は、封止材1Aの質量を基準として、0.037質量%~4.75質量%であってもよい。カップリング剤の含有量が0.037質量%以上であると、封止層1の接着性が向上する傾向がある。カップリング剤の含有量が4.75質量%以下であると、封止材1Aの成形性が向上する傾向がある。同様の観点から、カップリング剤の含有量が0.05質量%~3質量%、又は0.1質量%~2.5質量%であってもよい。
【0035】
カップリング剤は、特に制限されず、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物(シランカップリング剤)であってもよく、チタン系化合物(チタネート系カップリング剤)、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物であってもよい。
【0036】
カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等の不飽和結合を有するシランカップリング剤;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;並びに、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせ封止材1Aに配合される。
【0037】
封止層1が、フィルム状の封止材を、キャリア基板40上に積層することを含む方法によって形成されてもよい。
【0038】
フィルム状の封止材は、硬化性樹脂及び無機充填剤を含有する硬化性樹脂組成物を含んでいてもよく、Bステージ化されていてもよい。
【0039】
フィルム状の封止材を構成する熱硬化性樹脂組成物が、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、又はメラミン樹脂を含んでいてもよく、エポキシ樹脂及びその硬化剤を含んでいてもよい。
【0040】
フィルム状の封止材を構成する熱硬化性樹脂組成物が、25℃で液状であるエポキシ樹脂を含んでいてもよい。「25℃で液状であるエポキシ樹脂」は25℃において400Pa・s以下の粘度を有するエポキシ樹脂を意味する。ここでの粘度はE型粘度計又はB型粘度計を用いて測定される値である。25℃で液状であるエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。25℃で液状であるエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量を基準として、30質量%以上、35質量%以上、37質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、70質量%以下、又は65質量%以下であってもよい。25℃で液状であるエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂の全量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってもよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。
【0041】
フィルム状の封止材を構成する熱硬化性樹脂組成物が、25℃で液状であるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を更に含んでいてもよく、その例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能ナフタレン型エポキシ樹脂等)、アントラセン型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、ジヒドロキシベンゼンノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、及びイソシアヌレート型エポキシ樹脂が挙げられる。これらから1種以上を選択してもよい。
【0042】
硬化剤の例としては、フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、及び脂環族アミンが挙げられる。これら1種以上を選択してもよい。
【0043】
硬化剤であるフェノール樹脂の例としては、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂等);トリスフェニルメタン型フェノール樹脂;ポリパラビニルフェノール樹脂;フェノール・アラルキル樹脂(フェノール類及びジメトキシパラキシレンから合成される、キシリレン基を有するフェノール・アラルキル樹脂等);ビフェニル骨格を有するフェノール樹脂(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等)が挙げられる。これらから1種以上選択してもよい。フェノール樹脂を誘導するフェノール類の例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、及びビスフェノールFが挙げられる。フェノール樹脂を誘導するアルデヒド類の例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドが挙げられる。硬化剤は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
エポキシ樹脂のグリシジル基の当量(エポキシ当量)の、硬化剤における前記グリシジル基と反応する官能基(例えばフェノール性水酸基)の当量(例えば水酸基当量)に対する比率((A)エポキシ樹脂のグリシジル基の当量/(B)硬化剤における前記グリシジル基と反応する官能基の当量)は、0.7以上、0.8以上、又は0.9以上であってもよく、2.0以下、1.8以下、又は1.7以下であってもよい。
【0045】
フィルム状の封止材を構成する熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機充填剤の例としては、硫酸バリウム;チタン酸バリウム;無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ類;タルク;クレー;炭酸マグネシウム;炭酸カルシウム;酸化アルミニウム;水酸化アルミニウム;窒化ケイ素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらから1種以上を選択してもよい。無機充填剤がシリカ類であってもよい。
【0046】
フィルム状の封止材における無機充填剤の含有量は、封止材の全量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってもよく、95質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。
【0047】
フィルム状の封止材に含まれる無機充填剤が、表面改質されていてもよい。無機充填剤がシランカップリング剤によって表面改質されていてもよい。シランカップリング剤の例としては、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、イソシナヌレートシラン、ウレイドシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン、及び、酸無水物基を有するシランが挙げられる。シランカップリング剤は、フェニルアミノシラン、及び、酸無水物基を有するシランからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0048】
フィルム状の封止材に含まれる無機充填剤の平均粒子径は、0.01μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、5.0μm以上、5.2μm以上、又は5.5μm以上であってもよく、50μm以下、25μm以下、又は10μm以下であってもよい。顆粒状の封止材に含まれる無機充填剤の平均粒子径もこれらと同様の範囲であってもよい。
【0049】
フィルム状の封止材は、(D)硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤のは、例えば、アミン系の硬化促進剤、イミダゾール系の硬化促進剤、尿素系の硬化促進剤及びリン系の硬化促進剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。アミン系の硬化促進剤の例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネンが挙げられる。イミダゾール系の硬化促進剤の例としては、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。尿素系の硬化促進剤の例としては、3-フェニル-1,1-ジメチルウレアが挙げられる。リン系の硬化促進剤の例としては、トリフェニルホスフィン及びその付加反応物、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィン、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。硬化促進剤が、イミダゾール系の硬化促進剤であってもよい。
【0050】
フィルム状の封止材における硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量を基準として、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上であてもよく、5質量%以下、3質量%以下、又は1.5質量%以下であってもよい。
【0051】
フィルム状又は顆粒状の封止材は、他の添加剤を更に含有していてもよい。他の添加剤の例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、応力緩和剤、カップリング剤、表面張力調整剤、イオン交換体、着色剤、及び難燃剤が挙げられる。
【0052】
フィルム状の封止材の表面上に、金属層(金属箔等)が積層されていてもよい。金属層の表面に凹凸パターンが形成されていてもよい。封止材の金属層とは反対側の表面上に、金属箔又は高分子フィルムが設けられていてもよい。高分子フィルムの例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムが挙げられる。高分子フィルムの厚さは、12~100μmであってもよい。
【0053】
封止層1が形成された後、
図1の(d)及び
図2の(e)に示されるように、支持体41を仮固定材層42から分離することと、仮固定材層42を封止構造体5から剥離することとを含む方法により、キャリア基板40が封止構造体5から分離される。支持体41と仮固定材層42とを分離する方法は特に限定されず、例えば加熱、UV照射、レーザー照射、及び機械分割から選ばれる方法が用いられ得る。仮固定材層42を封止構造体5から剥離する方法は特に限定されず、例えば、機械はく離、及び溶剤洗浄から選ばれる方法が用いられ得る。仮固定材層42が熱発泡樹脂又は熱可塑性樹脂から形成されている場合、例えば、封止構造体5をホットプレートで熱しながら、仮固定材層42を引き剥がすことができる。
【0054】
キャリア基板40が除去された後、
図2の(f)に示されるように、接続面S上に再配線層3が形成される。再配線層3は、電極パッド12に接続された多層の配線31と、配線31の間を埋める絶縁層32とを有する。言い換えると、配線31が絶縁層32内に設けられている。
【0055】
配線31は、接続面Sに平行な方向に延在する複数の層の部分と、接続面Sに垂直な方向に延在する部分とを含む。接続面Sに平行な方向における配線31の幅は、例えば10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、又は6μm以下であってもよく、1μm以上であってもよい。ここでの配線31の幅は、接続面Sに平行な方向における配線31の最小幅を意味する。半導体チップ10と封止層1とで形成される段差が十分に小さいと、微小な幅を有する微細な配線31を含む再配線層を、高い精度で容易に形成することができる。隣り合う配線31同士の間を埋める絶縁層32の最小幅も上記と同様の範囲であることができる。
【0056】
絶縁層32は、通常、配線31と封止構造体5との間に介在する中間層32Aを有する。中間層32Aの厚さの最大値が15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、又は6μm以下であってもよく、1μm以上であってもよい。中間層32Aが薄くても、段差Gが十分に小さいと応力特異点の影響を受け難いと考えられる。
【0057】
再配線層3を形成する方法は特に制限されず、例えばセミアディティブ法又はこれに類する方法を採用することができる。配線31は、例えば、銅、チタン等の金属によって形成される金属配線であることができる。絶縁層32は、例えば感光性樹脂によって形成することができる。例えば、感光性樹脂を用いて絶縁層32を形成するとともに、セミアディティブ法等によって銅配線を配線31として形成することにより、微細な配線31を含む再配線層3を容易に形成することができる。
【0058】
絶縁層32を形成するために感光性樹脂は、特に制限されないが、例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(C)熱架橋剤と、(D)アクリル樹脂とを含む感光性樹脂組成物であってもよい。
【0059】
(A)アルカリ可溶性樹脂は、例えば、下記式(1)で表される構造単位を含む重合体であってもよい。
【0060】
【0061】
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。このアルカリ可溶性樹脂は、式(1)で表される構造単位を与えるモノマを重合させることによって得られる。
【0062】
(1)において、R2で表わされる炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。炭素数1~10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノノキシ基及びデコキシ基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0063】
式(1)で表される構造単位を与えるモノマの例としては、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール及びo-イソプロペニルフェノールが挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
(B)光により酸を生成する化合物の例としては、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。(B)光により酸を生成する化合物は、これらの化合物のうちの1種、又は、2種以上の組み合わせであってもよい。感度が高いことから、o-キノンジアジド化合物を用いてもよい。
【0065】
(C)熱架橋剤の例としては、フェノール性水酸基を有する化合物、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物が挙げられる。ここでいう「フェノール性水酸基を有する化合物」には、(A)アルカリ可溶性樹脂は包含されない。熱架橋剤としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、熱架橋剤としてだけでなく、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。フェノール性水酸基を有する化合物の重量平均分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び機械特性のバランスを考慮すると、2000以下、94~2000、108~2000、又は108~1500であってもよい。
【0066】
(D)アクリル樹脂は、例えば、下記式(2)で表される構造単位を有する重合体であってもよい。式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を示す。
【0067】
【0068】
式(2)で表される構造単位を与えるモノマの例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ルモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
再配線層3が形成された後、
図2の(g)に示されるように、封止構造体5が、接続面Sとは反対側の面から任意の厚さになるまで研削される。研削方法は、例えば、半導体製造工程で広く適用されているグラインダのような、砥石を用いた機械研削であってもよい。封止層1だけが研削されてもよいし、封止層1とともにチップ本体部11の一部が研削されてもよい。封止構造体5が研削されなくてもよい。
【0070】
続いて、
図2の(h)に示されるように、再配線層3の封止構造体5とは反対側の面上に、配線31と接続されたはんだボール30が設けられ、更に、封止構造体5を再配線層3とともに分割して、個片化された半導体装置100が得られる。はんだボール30を形成する方法、及び、封止構造体5及び再配線層3を分割する方法は特に制限されない。例えば、はんだボール30を形成するために、N2リフロー装置、及びフラックス等の試薬を用いることができる。封止構造体5及び再配線層3を分割するために、例えば、ダイサを用いることができる。
【実施例】
【0071】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
1.仮固定材
30μm、60μm、120μm又は150μmの厚さを有するフィルム状の仮固定材を準備した。厚さ30μm、60μm又は120μmの仮固定材は単層のフィルムであり、厚さ150μmの仮固定材は2層の樹脂層からなる積層フィルムであった。
【0073】
2.支持体
表1に示される厚さ及びヤング率(引張弾性率)を有する平板状の支持体を準備した。表1に示されるヤング率は、23℃の環境下で測定された引張弾性率である。
【0074】
【0075】
3.成形試験
320mm×320mmの正方形の主面を有する支持体上に、仮固定材を貼り合わせて、支持体及び仮固定材層からなる積層体であるキャリア基板を準備した。各仮固定材層上に、150μmの厚さを有する3種の半導体チップを、それぞれ25個ずつ配置した。半導体チップを封止する封止層を、顆粒状又はフィルム状の封止材を用いて形成した。顆粒状の封止材を用いる場合、半導体チップをキャリア基板とともにコンプレッションモールディング装置の金型内に配置し、金型内に封止材を入れ、コンプレッションモールディングにより厚さ200μmの封止層を形成した。フィルム状の封止材を用いる場合、キャリア基板の半導体チップ側の面上に封止材を積層し、積層された封止材を加熱することにより厚さ200μmの封止層を形成した。封止層が形成された後、キャリア基板を封止構造体から剥離した。
キャリア基板の剥離後、半導体チップが露出した接続面における20箇所において、半導体チップと封止層とで形成された段差を接触式表面粗さ計によって測定した。
【0076】
【0077】
【0078】
表2に示される結果から、仮固定材層の厚さが減少すると段差が顕著に低減される傾向があることが確認された。表3に示される結果から、支持体のヤング率(引張弾性率)が高いと段差が顕著に低減される傾向もあることが確認された。これらの傾向に基づいて支持体のヤング率(引張弾性率)及び仮固定材層の厚さを選択することにより、半導体チップと封止層とで形成される段差を5.0μm以下の範囲内に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示に係る方法によれば、仮固定材層の種類にかかわらず、ファンアウトウエハレベルパッケージの組立プロセス中に生じる半導体チップと封止層との微小な段差を低減することできる。その結果、製造コストを抑えながら、より高機能な半導体装置の製造が可能となる。
【符号の説明】
【0080】
1…封止層、1A…封止材、3…再配線層、5…封止構造体、10…半導体チップ、11…チップ本体部、12…電極パッド、31…配線、32…絶縁層、40…キャリア基板、41…支持体、42…仮固定材層、51,52…金型、100…半導体装置、S…接続面、G…段差。