IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

<>
  • 特許-レーザ加工装置 図1
  • 特許-レーザ加工装置 図2
  • 特許-レーザ加工装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20230905BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230905BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230905BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/064 A
B23K26/00 M
G01C3/06 120P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019219423
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021087973
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 光司
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121685(WO,A1)
【文献】特開2017-223651(JP,A)
【文献】特開2003-251476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0227614(US,A1)
【文献】特開2015-020187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/046
B23K 26/064
B23K 26/00
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される駆動信号に応じて合焦位置が周期的に変化する焦点距離可変光学系と、
前記焦点距離可変光学系を介してワークに検出光を照射する光源と、
前記ワークで反射された前記検出光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、
入力される前記光検出信号に基づき、前記検出光が前記ワークの表面で合焦した合焦タイミングに同期した同期パルス信号を出力する信号処理部と、
入力される前記同期パルス信号に基づいてパルスレーザ光を発振し、前記焦点距離可変光学系を介して前記ワークに前記パルスレーザ光を照射するレーザ発振器と、を備える
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記焦点距離可変光学系と前記レーザ発振器との間において、前記焦点距離可変光学系の前記合焦位置に対して共役関係を成す位置に配置され、前記パルスレーザ光が通過する開口部が形成されたレーザ加工用マスクをさらに備える
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレーザ加工装置であって、
前記光検出器は、前記焦点距離可変光学系の合焦位置が前記ワークの表面に一致したときに前記光検出信号がピークになるように配置され、
前記信号処理部は、前記光検出信号の前記ピークを前記合焦タイミングとして検出し、当該合焦タイミングに同期した前記同期パルス信号を出力する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ加工装置であって、
前記焦点距離可変光学系を通して前記ワークを撮像する撮像素子をさらに備え、
前記焦点距離可変光学系は、
入力される前記駆動信号に応じて屈折率が周期的に変化する液体共振式レンズと、
前記液体共振式レンズと同じ光軸上に配置された対物レンズと、
前記対物レンズの射出瞳と前記液体共振式レンズの主点位置とを共役にするよう配置された複数のリレーレンズと、を有する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離可変光学系を用いたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPD(Flat Panel Display)やIC(Integrated Circuit)ウェーハ等の製造分野では、微細な回路の欠陥を修正する目的で、ワークの観察を行いながら当該ワークに対してレーザ加工を行うレーザ加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザ加工装置では、観察光学系とレーザ加工光学系との間で対物レンズなどの光学系が共有されており、レーザ発振器は、観察光学系の視野に配置されたワークに対し、レーザ加工光学系に配置されたレーザ加工用のマスクを介してレーザを照射する。
【0003】
また、従来、周期的に合焦位置が変動する焦点距離可変光学系を用いた画像検出技術が知られている(例えば特許文献2参照)。この画像検出技術では、対象物に対する合焦位置を周期的に変化させながら撮像を行うことにより、フォーカルスイープ画像が得られる。この画像は、フォーカス状態とデフォーカス状態とが混合した混合画像であり、当該混合画像に対してデコンボリューション処理を行うことにより、EDOF画像(Extended Depth Of Focus画像、拡張焦点深度画像)が生成される。このEDOF画像では、通常の焦点深度の数倍~数十倍の実効的な焦点深度が得られるため、ワークの傾きや段差などによって必要となる再フォーカス動作の頻度を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-55910号公報
【文献】特開2018-84821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、前述の焦点距離可変光学系を、特許文献1などに記載されたレーザ加工装置に適用することを検討している。
しかし、レーザ加工光学系に焦点距離可変光学系が組み込まれた場合、ワークに対するレーザ加工光学系の合焦位置が変動してしまう。これにより、ワーク表面の所望部位にレーザ光を正確に集光させることが困難になり、レーザ加工の精度が低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、焦点距離可変光学系を用いつつ高精度なレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力される駆動信号に応じて合焦位置が周期的に変化する焦点距離可変光学系と、前記焦点距離可変光学系を介してワークに検出光を照射する光源と、前記ワークで反射された前記検出光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、入力される前記光検出信号に基づき、前記検出光が前記ワークの表面で合焦した合焦タイミングに同期した同期パルス信号を出力する信号処理部と、入力される前記同期パルス信号に基づいてパルスレーザ光を発振し、前記焦点距離可変光学系を介して前記ワークに前記パルスレーザ光を照射するレーザ発振器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成において、光源から出射された検出光は、焦点距離可変光学系を通過することにより、光軸方向の合焦位置を変化させながらワークに照射される。当該ワークで反射された検出光は、合焦位置の変化の影響を受けながら光検出器に受光されるため、光検出器から入力される光検出信号には、合焦位置の変化の影響が含まれている。信号処理部は、このような光検出信号に基づいて、検出光の合焦位置がワークの表面に一致したタイミング(合焦タイミング)を検出することができ、この合焦タイミングに同期した同期パルス信号を出力する。
レーザ発振器は、信号処理部から入力された同期パルス信号に基づいてパルスレーザ光を発振することにより、当該パルスレーザ光を合焦タイミングに合わせて出射することができる。このとき、焦点距離可変光学系を介してワークに照射されるパルスレーザ光は、ワークの表面で合焦するため、ワーク表面の所望部位にレーザ光を正確に集光させることができる。
したがって、本発明のレーザ加工装置によれば、焦点距離可変光学系を用いつつ、高精度なレーザ加工を行うことができる。
なお、本発明のレーザ加工装置が焦点距離可変光学系を用いることの利点は、観察光学系を構築した際に再フォーカス動作の頻度を低減できることだけでなく、ワークの表面に段差等がある場合、ワークの位置調整なしに、ワークの表面にパルスレーザ光が合焦できることがある。
【0009】
本発明のレーザ加工装置は、前記焦点距離可変光学系と前記レーザ発振器との間において、前記焦点距離可変光学系の前記合焦位置に対して共役関係を成す位置に配置され、前記パルスレーザ光が通過する開口部が形成されたレーザ加工用マスクをさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、レーザ加工用マスクの開口部の形状がワークの表面に良好に結像し、開口部の形状通りの領域がレーザ加工される。
【0010】
本発明のレーザ加工装置において、前記光検出器は、前記焦点距離可変光学系の合焦位置が前記ワークの表面に一致したときに前記光検出信号がピークになるように配置され、
前記信号処理部は、前記光検出信号の前記ピークを前記合焦タイミングとして検出し、当該合焦タイミングに同期した前記同期パルス信号を出力することが好ましい。
このような構成では、共焦点法によって合焦タイミングを検出しているため、他の焦点検出方式を用いて合焦タイミングを検出する場合よりも、ワーク表面の傾斜や粗さ等の表面性状による影響を受け難く、合焦タイミングの検出精度を向上できる。
【0011】
本発明のレーザ加工装置は、前記焦点距離可変光学系を通して前記ワークを撮像する撮像素子をさらに備え、前記焦点距離可変光学系は、入力される前記駆動信号に応じて屈折率が周期的に変化する液体共振式レンズと、前記液体共振式レンズと同じ光軸上に配置された対物レンズと、前記対物レンズの射出瞳と前記液体共振式レンズの主点位置とを共役にするよう配置された複数のリレーレンズと、を有することが好ましい。
このような構成では、ワークの観察を行いながら当該ワークに対してレーザ加工を行うことができる。また、焦点距離可変光学系の合焦位置が変動しても、撮像素子に入射する像の倍率は一定になるため、視野の変動がなく良好な観察が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかるレーザ加工装置を示す模式図。
図2】前記実施形態のレーザ加工装置を示すブロック図。
図3】前記実施形態のレーザ加工装置の動作を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置1は、ワークWを観察するための観察光学系2と、ワークWの表面をレーザ加工するためのレーザ加工光学系3と、レーザ加工のタイミングを検出するためのタイミング検出光学系4とを備えており、各光学系は、液体共振式レンズ12を含む焦点距離可変光学系10を共有している。ワークWの表面は、焦点距離可変光学系10を通る光軸Aに交差して配置されている。
また、レーザ加工装置1は、液体共振式レンズ12の動作を制御するレンズ制御部5と、制御部6とをさらに備えている(図2参照)。
【0014】
(焦点距離可変光学系)
まず、焦点距離可変光学系10について説明する。
図1に示すように、焦点距離可変光学系10は、対物レンズ11、液体共振式レンズ12、および、リレーレンズ13,14を有しており、これらは光軸A上に配置されている。
対物レンズ11は、既存の凸レンズあるいはレンズ群で構成される。
液体共振式レンズ12は、シリコーンなどの液体が充填された円筒形のケースと、圧電材料で形成された円筒状の振動部材とを有している。この振動部材は、ケース内の液体に浸漬された状態で外部のレンズ制御部5に信号線を介して接続されており、当該レンズ制御部5から入力される駆動信号Cfに応じて振動する。駆動信号Cfは、例えば正弦波状の交流信号であり、駆動信号Cfの周波数が共振周波数に調整されると、液体共振式レンズ12の内部の液体に定在波が生じ、液体共振式レンズ12の屈折率が周期的に変化する。
ワークWにおける焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfは、対物レンズ11の焦点距離を基本としつつ、液体共振式レンズ12の屈折率の変化と共に周期的に変化する。
【0015】
リレーレンズ13,14は、対物レンズ11の射出瞳と液体共振式レンズ12の主点位置とを共役にするように配置され、リレーレンズ13,14間の中間像位置には絞り(図示省略)が配置される。リレーレンズ13,14は、テレセントリック光学系を保ちながら対物レンズ11の射出瞳のリレーを行うため、合焦位置Pfが変動しても、後述の撮像素子に入射する像の倍率は一定になる。
【0016】
(撮像光学系)
次に、観察光学系2について説明する。
観察光学系2は、前述の焦点距離可変光学系10の他、観察照明用光源21と、ライトガイド22と、照明光学系23と、ビームスプリッタ24~26と、結像レンズ27と、カメラ28とを有している。
【0017】
観察照明用光源21は、LEDなどの発光素子によって構成され、連続光である照明光Liを出射する。
ライトガイド22は、光ファイバなどから構成され、観察照明用光源21から出射した照明光Liを照明光学系23に伝送する。
照明光学系23は、コレクタレンズ231およびコンデンサレンズ232などを有しており、ライトガイド22から伝搬された照明光Liを適宜調整する。
【0018】
ビームスプリッタ24は、光軸A上において対物レンズ11の像側に配置され、照明光学系23によって調整された照明光Liを反射することにより、当該照明光Liを対物レンズ11に導く。照明光Liは、対物レンズ11を介してワークWに照射される。
ビームスプリッタ25は、光軸A上において液体共振式レンズ12の像側に配置されている。ビームスプリッタ25は、ワークWの表面で反射されて焦点距離可変光学系10を通過した反射光Lrを反射することにより、当該反射光Lrをビームスプリッタ26に導く。
なお、ビームスプリッタ24,25は、焦点距離可変光学系10の光軸Aに沿った光を透過する。
【0019】
ビームスプリッタ26は、ビームスプリッタ25で反射された反射光Lrを反射し、結像レンズ27に導く。なお、ビームスプリッタ26は、波長選択性を有しており、照明光Liに由来の反射光Lrを反射する一方、後述の検出光Lmを透過させる。
【0020】
結像レンズ27は、焦点距離可変光学系10のリレーレンズ14と共に無限遠補正光学系を構成しており、ビームスプリッタ25,26を経由した反射光Lrを後述の撮像素子281に結像させる。
【0021】
カメラ28は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどの撮像素子281を有しており、この撮像素子281により撮像された画像Imを所定の信号形式で画像処理部63に出力する。ここで、カメラ28のフレームレートは、液体共振式レンズ12に入力される駆動信号Cfの周期よりも低く設定されている。このため、画像Imは、合焦位置Pfの変化周期とカメラ28のフレームレートとの関係により、フォーカス状態とデフォーカス状態が混合した混合画像となる。
【0022】
(レーザ加工光学系)
次に、レーザ加工光学系3について説明する。
レーザ加工光学系3は、前述の焦点距離可変光学系10の他、レーザヘッド31と、レーザ用結像レンズ32とを有している。
【0023】
レーザヘッド31は、レーザ発振器311とレーザ加工用マスク312とを有している。
レーザ発振器311は、ワークWの加工目的に適した波長のパルスレーザ光Lpを発振する。また、レーザ発振器311は、後述する同期パルス信号Syncによって、パルスレーザ光Lpを発振するタイミングを制御されている。
【0024】
レーザ加工用マスク312は、例えば円形などの所定形状の開口部312Aを有しており、レーザ発振器311からのパルスレーザ光Lpの径の大きさを所望のサイズに絞り込む。
レーザ用結像レンズ32は、光軸A上において、焦点距離可変光学系10とレーザヘッド31との間に配置されており、焦点距離可変光学系10のリレーレンズ14と共に無限遠補正光学系を構成する。
ここで、レーザ加工用マスク312は、レーザ用結像レンズ32の後側焦点に配置されている。すなわち、レーザ加工用マスク312は、光軸A上において、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfに対して共役関係を成す位置に配置されている。
レーザ加工光学系3におけるパルスレーザ光Lpの挙動については、後述で説明する。
【0025】
(タイミング検出光学系)
次にタイミング検出光学系4について説明する。
タイミング検出光学系4は、レーザ発振器311がパルスレーザ光Lpを発振するタイミングを検出するための光学系であって、前述の焦点距離可変光学系10の他、位置検出用光源41と、導光部42と、コリメートレンズ43と、光検出器44とを有している。
【0026】
位置検出用光源41は、例えばレーザ光源等であり、連続光である検出光Lmを出射する。
導光部42は、ファイバスプリッタ421および光ファイバ422~424を有する。ファイバスプリッタ421は、光ファイバ422~424のそれぞれの一端部が接合される光路を有しており、光ファイバ422から入射される光を光ファイバ423に導き、光ファイバ423から入射される光を光ファイバ424に導くように構成されている。
【0027】
光ファイバ422の他端部は、位置検出用光源41に接続されている。このため、位置検出用光源41から出射された検出光Lmは、導光部42を伝送され、光ファイバ423の他端部の端面423eから出射する。すなわち、光ファイバ423の端面423eは、検出光Lmの点光源として機能する。
また、光ファイバ424の他端部は、光検出器44に接続されている。このため、光ファイバ423の端面423eに入射された検出光Lmは、導光部42を伝送され、光検出器44に入射される。
ここで、光ファイバ423の端面423eは、コリメートレンズ43の後側焦点に配置されている。すなわち、光ファイバ423の端面423eは、光軸A上において、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfに対して共役関係を成す位置に配置されている。
【0028】
コリメートレンズ43は、光ファイバ423の端面423eから出射した検出光Lmを平行化する。コリメートレンズ43によって平行化された検出光Lmは、ビームスプリッタ26を透過してビームスプリッタ25で反射されることにより、焦点距離可変光学系10を介してワークWに照射される。
また、コリメートレンズ43は、ワークWの表面で反射されて焦点距離可変光学系10を通過した検出光Lmを集光する。
【0029】
光検出器44は、例えば光電子増倍管やフォトダイオード等であり、光ファイバ424の他端部に接続されている。光検出器44は、光ファイバ424を介して入射される検出光Lmを受光し、受光強度に応じた光検出信号Intを出力する。
【0030】
以上のタイミング検出光学系4では、前述したように、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfが周期的に変化する。このため、合焦位置PfがワークWの表面に一致しているときのみ、当該表面で反射した検出光Lmが、コリメートレンズ43の後側焦点にスポットを形成し、光ファイバ423の端面423eに入射する。
よって、光検出器44に入射される検出光Lmは、合焦位置PfがワークWの表面に一致しているときに極大化する。すなわち、光検出器44が出力する光検出信号Intは、合焦位置PfがワークWの表面に一致したときにピークを示す。
【0031】
(制御部)
図2に示す制御部6は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびメモリを有するコンピュータ等により構成される。制御部6は、所定のソフトウェアを実行することで所期の機能が実現されるものであり、レンズ制御部5の設定を行うレンズ設定部61と、入力される各種信号の処理を行う信号処理部62と、画像処理部63とを有する。
【0032】
レンズ設定部61は、レンズ制御部5に対して、駆動信号Cfの周波数、振幅、最大駆動電圧の設定などを行う。
なお、液体共振式レンズ12は、周囲温度の変化等により共振変化数が変化する。このため、レンズ設定部61は、フィードバック制御により駆動信号Cfの周波数をリアルタイムに変化させ、液体共振式レンズ12の安定した動作を実現する。
【0033】
信号処理部62は、レーザ発振器311に同期パルス信号Syncを出力する。また、信号処理部62は、入力される光検出信号Intに基づいて、同期パルス信号Syncのハイ/ローを切り替える。
【0034】
画像処理部63は、カメラ28から入力された画像Imに対して、デコンボリューション処理を施すことで、EDOF画像を生成する。なお、デコンボリューション処理は、画像Imに対して合焦位置Pfの可変範囲から推定されるボケ成分の逆演算処理を行うことであり、合焦位置Pfの可変範囲のほぼ全てにフォーカスの合ったEDOF画像を生成する。
【0035】
(レーザ加工動作)
次に、本実施形態におけるレーザ加工動作について説明する。
図3に示すように、液体共振式レンズ12の動作中、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfは、駆動信号Cfに同期して周期的に変化する。なお、図3には、光軸A上の合焦位置Pfの変化範囲におけるワークWの表面位置(ワーク位置Pw)を例示している。
光検出信号Intは、合焦位置Pfがワーク位置Pwに一致したタイミング(合焦タイミングT)でピークを示し、駆動信号Cfの1周期当たりに2回のピークを示す。
同期パルス信号Syncは、光検出信号Intが閾値Vt以上の間、ハイレベルであり、光検出信号Intが閾値Vtより小さい間、ローレベルである。
【0036】
レーザ発振器311は、入力される光検出信号Intがローレベルからハイレベルに切り替わったタイミングで、パルスレーザ光Lpを発振する。ここで、1回分のパルスレーザ光Lpの出力期間は、合焦位置Pfの変化周期に対して十分に短く設定されており、光検出信号Intの閾値Vtは、パルスレーザ光Lpの出力期間が合焦タイミングTに重なるように設定されている。これにより、レーザ発振器311は、合焦タイミングTに合わせてパルスレーザ光Lpを出射することができる。
【0037】
再び図1を参照すると、合焦タイミングTに合わせてレーザ発振器311から出射されたパルスレーザ光Lpは、レーザ加工用マスク312の開口部312Aを通過し、レーザ用結像レンズ32および焦点距離可変光学系10を介してワークWに照射される。
ここで、レーザ加工用マスク312は、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfに対して共役関係を成す位置に配置されている。
よって、レーザ加工用マスク312を通過するパルスレーザ光Lpの形状は、合焦タイミングTにおける焦点距離可変光学系10の合焦位置Pf、すなわちワークWの表面で結像される。このため、レーザ加工用マスク312の開口部312Aの形状がワークWの表面に良好に結像し、開口部312Aの形状通りの領域がレーザ加工される。
【0038】
〔効果〕
前述したように、本実施形態のレーザ加工装置1では、焦点距離可変光学系10を介してワークWに照射されるパルスレーザ光LpがワークWの表面で合焦するため、ワークWの表面の所望部位にパルスレーザ光Lpを正確に集光させることができる。これにより、焦点距離可変光学系10を利用しつつ、高精度なレーザ加工を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態のレーザ加工装置1では、共焦点法によって合焦タイミングTを検出している。このため、他の焦点検出方式を用いて合焦タイミングTを検出する場合よりも、ワークWの表面の傾斜や粗さ等の表面性状による影響を受け難く、合焦タイミングTの検出精度を向上できる。
【0040】
また、本実施形態のレーザ加工装置1は、焦点距離可変光学系10を通してワークWを撮像する撮像素子281を備えており、ワークWの画像観察を行いながら当該ワークWに対してレーザ加工を行うことができる。本実施形態では、ワークWの画像として、EDOF画像を生成することができるため、ワークWの画像観察を行う際に再フォーカス動作の頻度を低減できる。
さらに、本実施形態の焦点距離可変光学系10は、対物レンズ11の射出瞳と液体共振式レンズ12の主点位置とが共役関係になるように構成されているため、焦点距離可変光学系10の合焦位置Pfが変動しても、撮像素子281に入射する像の倍率は一定になる。このため、視野の変動がなく良好な観察が可能である。
【0041】
なお、本実施形態のレーザ加工装置1が焦点距離可変光学系10を用いることの利点は、観察光学系2において再フォーカス動作の頻度を低減できることだけでなく、ワークWの表面に段差等がある場合、ワークWの位置調整なしに、ワークWの表面にパルスレーザ光Lpが合焦できることがある。
【0042】
〔変形例〕
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれる。
【0043】
前記実施形態において、導光部42の替わりにピンホールを利用した構成を採用してもよい。具体的には、点光源を構成するためのピンホールと、コリメートレンズ43の後側焦点に配置されるピンホールとを利用することで、前記実施形態と同様、共焦点法によって合焦タイミングTを検出できる。
【0044】
前記実施形態において、観察光学系2における視野の変動を問題にしない場合、焦点距離可変光学系10のリレーレンズ13,14が省略され、コリメートレンズ43、結像レンズ27およびレーザ用結像レンズ32のそれぞれが、対物レンズ11と共に無限遠補正光学系を構成してもよい。または、リレーレンズ13,14、コリメートレンズ43、結像レンズ27およびレーザ用結像レンズ32が省略され、対物レンズ11および液体共振式レンズ12が有限遠補正光学系を構成してもよい。
【0045】
前記実施形態では、共焦点法によって合焦タイミングTを検出しているが、本発明はこれに限定されない。具体的には、ダブルピンホール法、非点収差法、ナイフエッジ法など、他の様々な焦点検出法を利用することにより、合焦タイミングTを検出してもよい。
例えば、ダブルピンホール法を利用する場合、合焦位置Pfと共役関係を成す集光位置の前後にそれぞれ光検出器を設け、各光検出器から出力される光検出信号に基づいて演算を行うことにより、合焦タイミングTを求めることができる。信号処理部62は、このように求めた合焦タイミングTに同期した同期パルス信号Syncを出力してもよい。
【0046】
前記実施形態では、観察光学系2の照明光Liが連続光であるが、パルス光であってもよい。この場合、観察照明用光源21は、レーザ発振器311と同様、同期パルス信号Syncに基づいてパルス光を出射してもよい。これにより、照明光Liは、合焦タイミングTでワークWに照射され、カメラ28は、ワークWの表面に合焦した画像を取得することができる。
【0047】
前記実施形態のレーザ加工装置1は、ワークWを観察するための観察光学系2を備えているが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明は、観察光学系2を備えないレーザ加工装置に適用されてもよい。
【0048】
前記実施形態では、信号処理部62は、制御部6内に構成されているが、レンズ制御部5内に構成されてもよい。また、レンズ制御部5および制御部6が一体の制御装置として構成されてもよい。
前記各実施形態では、駆動信号Cfを正弦波とし、合焦位置Pfを正弦波振動させたが、これは三角波、鋸歯状波、矩形波その他の波形であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…レーザ加工装置、2…観察光学系、3…レーザ加工光学系、4…タイミング検出光学系、5…レンズ制御部、6…制御部、10…焦点距離可変光学系、11…対物レンズ、12…液体共振式レンズ、13…リレーレンズ、14…リレーレンズ、21…観察照明用光源、22…ライトガイド、23…照明光学系、231…コレクタレンズ、232…コンデンサレンズ、24…ビームスプリッタ、25…ビームスプリッタ、26…ビームスプリッタ、27…結像レンズ、28…カメラ、281…撮像素子、31…レーザヘッド、311…レーザ発振器、312…レーザ加工用マスク、312A…開口部、32…レーザ用結像レンズ、4…タイミング検出光学系、41…位置検出用光源、42…導光部、421…ファイバスプリッタ、422~424…光ファイバ、423e…端面、43…コリメートレンズ、44…光検出器、61…レンズ設定部、62…信号処理部、63…画像処理部、A…光軸、Cf…駆動信号、Im…画像、Int…光検出信号、Li…照明光、Lm…検出光、Lp…パルスレーザ光、Lr…反射光、Pf…合焦位置、Pw…ワーク位置、Sync…同期パルス信号、T…合焦タイミング、Vt…閾値、W…ワーク。
図1
図2
図3