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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】金属配線の形成方法及び金属配線構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/768 20060101AFI20230905BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01L21/90 A
H01L21/88 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020004476
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021111756
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康司
(72)【発明者】
【氏名】中光 豊
(72)【発明者】
【氏名】小風 豊
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123886(JP,A)
【文献】特開2003-318262(JP,A)
【文献】特開2008-205119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/768
H01L 21/3213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含む金属配線層と、前記金属配線層に積層され、前記金属配線層の表面の一部が露出する開口が設けられた層間絶縁層とを有する積層構造体を準備し、
第1スパッタリング成膜により、前記層間絶縁層の側面に沿って初期層としての窒素が含有する銅アルミニウム層を形成し、
第2スパッタリング成膜により、前記側面に前記初期層を介して銅アルミニウム層を形成する
金属配線の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載された金属配線の形成方法であって、
前記第1スパッタリング成膜として、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法、または、スパッタリングターゲットの法線と前記層間絶縁層の法線とを非平行にして実行するスパッタリング法を採用する
金属配線の形成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された金属配線の形成方法であって、
前記第1スパッタリング成膜として、銅アルミニウムを含有するターゲットを用い、プラズマガスに窒素を含有させながら前記初期層を形成する
金属配線の形成方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記第2スパッタリング成膜として、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法を採用する
金属配線の形成方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記銅アルミニウム層の厚みよりも、前記初期層の厚みが薄くなるように前記初期層を形成する
金属配線の形成方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記初期層が形成された後、前記初期層に加熱処理が施される
金属配線の形成方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記層間絶縁層として、Low-k層を用いる
金属配線の形成方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記銅アルミニウム層として、CuAl層を用いる
金属配線の形成方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記開口は、前記層間絶縁層に設けられた、ビアホールまたはトレンチであり、前記ビアホールの開口幅または前記トレンチの線幅は、20nm以下である
金属配線の形成方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載された金属配線の形成方法であって、
前記銅アルミニウム層を形成した後に、前記開口に銅アルミニウム配線をスパッタリング法または鍍金法により形成する
金属配線の形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載された金属配線の形成方法であって、
前記銅アルミニウム配線の成分は、前記銅アルミニウム層の成分と同じである
金属配線の形成方法。
【請求項12】
銅を含む金属配線層と、
前記金属配線層に積層され、前記金属配線層の表面の一部を露出させる開口が設けられた層間絶縁層と、
前記層間絶縁層の前記開口の側面に沿って設けられた窒素が含有する銅アルミニウム層と、
前記開口の前記側面に前記窒素が含有する銅アルミニウム層を介して設けられた銅アルミニウム層と
を具備する金属配線構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線の形成方法及び金属配線構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の電子部品では、層間絶縁層に設けられたビアホール等の開口に導電層が埋め込まれ、導電層によって層間の金属配線層同士が電気的に接続される。開口への導電層の埋め込みは、開口と層間絶縁層の表面とに導電層が形成された後に、層間絶縁層上の導電層が化学機械研磨法によって除去されることでなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-177365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年の電子部品の高速化にともない、層間絶縁層としては寄生容量の少ないLow-k材が用いられている。このLow-k材は、一般的には低密度な材料で構成されている。このため、開口に形成された導電層から層間絶縁層への金属拡散をいかにして防ぐかは重要な課題となる。例えば、導電層から層間絶縁層への金属拡散が生じると、層間絶縁層の誘電率が変化したり、層間絶縁層内での電気的リークが生じたりして、電子部品の信頼性が低減する可能性がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、層間絶縁層の開口に形成した金属配線を含む電子部品において、その信頼性を低減させない金属配線の形成方法及び金属配線構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る金属配線の形成方法は、以下の通りである。
銅を含む金属配線層と、上記金属配線層に積層され、上記金属配線層の表面の一部が露出する開口が設けられた層間絶縁層とを有する積層構造体が準備される。
第1スパッタリング成膜により、上記層間絶縁層の上記開口の側面に沿って、初期層として窒素が含有する銅アルミニウム層が形成される。
第2スパッタリング成膜により、上記側面に上記初期層を介して銅アルミニウム層が形成される。
【0007】
このような金属配線の形成方法によれば、窒素が含有する銅アルミニウム層と層間絶縁層との間に自発的にバリア層が形成されて、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0008】
上記の金属配線の形成方法においては、上記第1スパッタリング成膜として、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法、または、スパッタリングターゲットの法線と上記層間絶縁層の法線とを非平行にして実行するスパッタリング法を採用してもよい。
【0009】
このような金属配線の形成方法によれば、窒素が含有する銅アルミニウム層が良好な段差被覆性をもって開口に形成され、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0010】
上記の金属配線の形成方法においては、上記第1スパッタリング成膜として、銅アルミニウムを含有するターゲットを用い、プラズマガスに窒素を含有させながら上記初期層を形成してもよい。
【0011】
このような金属配線の形成方法によれば、窒素が含有する銅アルミニウム層が開口に形成され、窒素が含有する銅アルミニウム層と層間絶縁層との間に自発的にバリア層が形成されて、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0012】
上記の金属配線の形成方法においては、上記第2スパッタリング成膜として、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法を採用してもよい。
【0013】
このような金属配線の形成方法によれば、銅アルミニウム層が良好な段差被覆性をもって開口に形成され、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0014】
上記の金属配線の形成方法においては、上記銅アルミニウム層の厚みよりも、上記初期層の厚みが薄くなるように上記初期層を形成してもよい。
【0015】
このような金属配線の形成方法によれば、窒素が含有する薄い銅アルミニウム層が開口に形成されることから、開口の開口幅が徒に狭くならず、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0016】
上記の金属配線の形成方法においては、上記初期層が形成された後、上記初期層に加熱処理が施されてもよい。
【0017】
このような金属配線の形成方法によれば、窒素が含有する銅アルミニウム層と層間絶縁層との間においてバリア層の形成が促進されて、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【0018】
上記の金属配線の形成方法においては、上記層間絶縁層として、Low-k層を用いてもよい。
【0019】
このような金属配線の形成方法によれば、層間絶縁層としてLow-k層を用いても、窒素が含有する銅アルミニウム層と層間絶縁層との間においてバリア層の形成が促進されることから層間絶縁層の機能が損なわれにくくなる。
【0020】
上記の金属配線の形成方法においては、上記銅アルミニウム層として、CuAl層を用いてもよい。
【0021】
このような金属配線の形成方法によれば、狭小の開口に銅アルミニウムを含む金属配線が形成される。
【0022】
上記の金属配線の形成方法においては、上記開口は、上記層間絶縁層に設けられた、ビアホールまたはトレンチであり、上記ビアホールの開口幅または上記トレンチの線幅は、20nm以下であってもよい。
【0023】
このような金属配線の形成方法によれば、上記サイズの開口でも銅アルミニウムを含む金属配線が形成される。
【0024】
上記の金属配線の形成方法においては、上記銅アルミニウム層を形成した後に、上記開口に銅アルミニウム配線をスパッタリング法または鍍金法により形成してもよい。
【0025】
このような金属配線の形成方法によれば、開口に銅アルミニウム層を形成した後に、開口に銅アルミニウム配線が形成される。
【0026】
上記の金属配線の形成方法においては、上記銅アルミニウム配線の成分は、上記銅アルミニウム層の成分と同じであってもよい。
【0027】
このような金属配線の形成方法によれば、開口に同じ成分の銅アルミニウム層及び銅アルミニウム配線が形成される。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る金属配線構造体は、銅を含む金属配線層と、層間絶縁層と、窒素が含有する銅アルミニウム層と、銅アルミニウム層とを具備する。
層間絶縁層は、上記金属配線層に積層され、上記金属配線層の表面の一部を露出させる開口が設けられれている。
上記窒素が含有する銅アルミニウム層は、上記層間絶縁層の上記開口の側面に沿って設けられている。
銅アルミニウム層は、上記開口に上記窒素が含有する銅アルミニウム層を介して設けられている。
【0029】
このような金属配線構造体によれば、窒素が含有する銅アルミニウム層と層間絶縁層との間に自発的にバリア層が形成されて、層間絶縁層に信頼性の高い金属配線が形成される。
【発明の効果】
【0030】
以上述べたように、本発明によれば、電子部品の信頼性を低減させない金属配線の形成方法及び金属配線構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】図(a)及び図(b)は、電子部品の上層における、層間絶縁層、金属配線、及び金属配線層の積層構造の一部を示す模式的断面図である。
図2図1(a)に例示された積層構造体の製造過程を示す模式的断面図である。
図3図1(a)に例示された積層構造体の製造過程を示す模式的断面図である。
図4図1(b)に例示された積層構造体の製造過程を示す模式的断面図である。
図5図1(b)に例示された積層構造体の製造過程を示す模式的断面図である。
図6】積層構造体の製造過程の変形例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0033】
図1(a)及び図1(b)は、電子部品の上層における、層間絶縁層、金属配線、及び金属配線層の積層構造の一部を示す模式的断面図である。
【0034】
図1(a)、(b)には、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、メモリ等を含む電子部品(例えば、半導体装置)の上層における、金属配線構造体としての層間絶縁層、金属配線、及び金属配線層が示されている。
【0035】
図1(a)に示す積層構造体1は、金属配線層10、30と、層間絶縁層11、21、31と、金属配線20とを具備する。
【0036】
金属配線層10は、例えば、積層構造体1の下方に設けられた、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、メモリ等(不図示)のいずれかに電気的に接続された配線層である。または、金属配線層10の電位は、浮遊していてもよい。金属配線層10の外周には、層間絶縁層11が設けられている。
【0037】
金属配線20は、その下端20dが金属配線層10に電気的に接続され、その上端20uが金属配線層30に接続されている。層間絶縁層21は、金属配線層10及び層間絶縁層11に積層され、金属配線20の外周が層間絶縁層21によって囲まれている。例えば、金属配線20は、層間絶縁層21に設けられたビアホール等の開口21hに埋設されている。開口21hは、ビアホールのほか、例えば、トレンチであってもよい。
【0038】
金属配線20は、窒素が含有する銅アルミニウム(CuAl)層200と、銅アルミニウム層201と、銅アルミニウム配線202とを有する。以下、窒素が含有する銅アルミニウム層を本実施形態では窒化銅アルミニウム層200と呼ぶ。窒化銅アルミニウム層200は、層間絶縁層21に接し、銅アルミニウム層201は、窒化銅アルミニウム層200と銅アルミニウム配線202との間に設けられる。
【0039】
金属配線層30は、金属配線20の上端20uに電気的に接続されている。層間絶縁層31は、層間絶縁層21に積層され、金属配線層30の外周に層間絶縁層31が設けられている。
【0040】
金属配線層10、30及び金属配線20の材料は、Cuを含む材料である。例えば、金属配線層10、30及び金属配線20の銅アルミニウム層201、銅アルミニウム配線202の材料は、Cu合金である。ここで、Cu合金とは、CuAl(CuAl-θ層)等の金属間化合物である。層間絶縁層11、21、31の材料は、例えば、比誘電率2以下のLow-k材(CVD-SiOC、CVD-SiO等)である。
【0041】
金属配線層30の材料が純Cuのとき、金属配線層30と、層間絶縁層21、31との間にもバリア層が設けられてよい。なお、銅アルミニウム層201と銅アルミニウム配線202とは、同じ成分で構成されているため、銅アルミニウム層201と銅アルミニウム配線202との境界(破線)は、消滅してもよい。
【0042】
また、図1(b)に示す積層構造体2においては、層間絶縁層21上にさらに層間絶縁層31が設けられ、層間絶縁層31に、開口21hよりも開口幅の広い開口31hが形成されている。開口21hには、金属配線25の配線部25aが設けられ、開口31hには、配線部25aよりも線幅の広い、金属配線25の配線部25bが設けられている。すなわち、金属配線25は、配線部25aと配線部25bとを有する。換言すれば、配線部25aは、ビア配線であり、配線部25bは、電極である。
【0043】
金属配線25は、窒化銅アルミニウム層250と、銅アルミニウム層251と、銅アルミニウム配線252とを有する。窒化銅アルミニウム層250は、層間絶縁層21、31に接し、銅アルミニウム層251は、窒化銅アルミニウム層250と銅アルミニウム配線252との間に設けられる。銅アルミニウム層251と銅アルミニウム配線252とは、同じ成分で構成されている。例えば、銅アルミニウム層251及び銅アルミニウム配線層25の材料は、CuAl(CuAl-θ層)等のCu合金である。このため、銅アルミニウム層251と銅アルミニウム配線252との境界(破線)は、消滅してもよい。
【0044】
このような積層構造体2も本実施形態に含まれる。
【0045】
図1(a)に示す積層構造体1の製造過程について説明する。
【0046】
図2(a)~図3(c)は、図1(a)に例示された積層構造体1の製造過程を示す模式的断面図である。
【0047】
図2(a)に示すように、まず、金属配線層10と、層間絶縁層11、21とを有する積層構造体1aが準備される。積層構造体1aにおいては、金属配線層10の外周に層間絶縁層11が設けられ、金属配線層10及び層間絶縁層11には、層間絶縁層21が積層されている。層間絶縁層21には、金属配線層10の表面10sの一部が露出する開口21hが設けられている。
【0048】
開口21hは、層間絶縁層21の上下の主面間を貫通するビアホールでもよく、層間絶縁層21の主面と平行な方向に延在するトレンチでもよい。例えば、開口21hの開口幅(トレンチの場合は線幅)が5~15nmのとき、開口21hの深さは、20~40nmである。
【0049】
積層構造体1aは、例えば、CVD、スパッタリング等の成膜技術、ドライ式またはウェット式によるエッチング技術、フォトリソグラフィ等の製造工程が組み合わされて形成される。ここで、開口21hが層間絶縁層21に形成され、金属配線層10の一部が露出すると、金属配線層10の露出面101には、自然酸化膜(例えば、酸化銅)が形成される場合がある。
【0050】
次に、図2(b)に示すように、スパッタリング成膜(第1スパッタリング成膜)により、層間絶縁層21の表面21sと、開口21hの側面21wと、露出面101とに沿って、窒化銅アルミニウム層200が形成される。例えば、CuAl(CuAl-θ層)等の銅アルミニウムターゲットを用い、窒素が含有した放電ガスが用いられる。例えば、放電ガスとして、Ar、He、Ne、Xe等の不活性ガスが用いられ、放電ガスに窒素(N)が添加される。
【0051】
これにより、プラズマガス中では窒素が活性となって、いわゆる反応性スパッタリングにより、表面21s、側面21w、及び露出面101に、窒化銅アルミニウム層200が形成される。但し、開口21hの開口幅が狭くなるほど、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みよりも、表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みが厚く形成される。
【0052】
また、このスパッタリング成膜では、表面21s、側面21w、及び露出面101に沿って窒化銅アルミニウム層200を形成する意図から、スパッタリング粒子の指向性を向上させたスパッタリング法が適用される。例えば、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法が適用される。
【0053】
例えば、異方性スパッタリングとは、例えば、積層構造体1aを含む基板とターゲットとの間の距離を比較的長く設定し、低圧領域(例えば、10-6Pa~10-1Pa)のプラズマを利用するスパッタリング法が該当し、等方性スパッタリングとは、基板とターゲットとの間の距離を比較的短く設定し、中圧領域から高圧領域(例えば、10-1Pa~10Pa)のプラズマを利用するスパッタリング法が該当する。プラズマ放電については、ミラー磁場を用いたプラズマ閉じ込め方式によるマグネトロン放電方式、及び、それと合わせた材料自体に高電圧を印加することにより、プラズマ状態を自己保持する放電方式が採用される。異方性スパッタリグの例として、例えば、LTS(Long Through Sputtering)等のスパッタリング法が適用される。
【0054】
但し、開口21hの開口幅が狭くなるほど、スパッタリング粒子が露出面101に届きにくくなることから、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みよりも、表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みが厚く形成される。
【0055】
次に、図2(c)に示すように、層間絶縁層21の表面21s及び露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200に、物理的エッチングが施される。
【0056】
物理的エッチングでは、プラズマガスとして、Ar、He、Xe等の不活性ガスが放電したプラズマが用いられる。このプラズマを用いた物理的エッチングとしては、基板バイアスを印加してプラズマイオンの指向性を向上させたスパッタエッチング法が適用される。例えば、等方性エッチングよりも異方性エッチングを優先させたエッチング法が適用される。例えば、積層構造体1aを含む基板に負電位バイアスが重畳され、低圧領域(例えば、10E-3Pa~10Pa)でのプラズマ処理が施される。
【0057】
これにより、プラズマ中のイオンが層間絶縁層21の表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200のほか、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200にも届きやすくなり、表面21s及び露出面101に堆積した、双方の窒化銅アルミニウム層200が同時にエッチングされる。但し、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みよりも、表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みが厚いため、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200が先に除去され、表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200は、表面21sに残存する。
【0058】
この結果、表面21sに堆積した窒化銅アルミニウム層200の厚みは減少し、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層200については露出面101から除去される。さらに、露出面101については、物理的エッチングによるオーバーエッチングが施され、露出面101に形成されている金属配線層10の自然酸化膜が露出面101から除去される。
【0059】
これにより、層間絶縁層21の表面21sと、開口21hの側面21wとに、初期層として窒化銅アルミニウム層200が形成される。なお、窒化銅アルミニウム層200の厚みは、後述する銅アルミニウム層201の厚みよりも薄くなるように設定される。これにより、開口21hの開口幅が徒に狭くならず、所定の開口幅が確保される。例えば、側面21wにおける、窒化銅アルミニウム層200の厚みは、1~3nmであり、銅アルミニウム層201の厚みは、1~4nmである。
【0060】
次に、図3(a)に示すように、スパッタリング成膜(第2スパッタリング成膜)により、露出面101と、表面21s及び側面21wのそれぞれとに窒化銅アルミニウム層200を介して銅アルミニウム層201が形成される。
【0061】
スパッタリング法としては、露出面101及び窒化銅アルミニウム層200に沿って銅アルミニウム層201を形成する意図から、スパッタリング粒子の指向性を向上させたスパッタリング法が適用される。例えば、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法が適用される。例えば、LTS等のスパッタリング法が適用される。
【0062】
次に、図3(b)に示すように、開口21h及び銅アルミニウム層201上に、銅アルミニウム層201の成分と成分が同じとする銅アルミニウム配線層202Lがスパッタリング法または鍍金法により形成される。銅アルミニウム配線層202Lにおいては、開口21h及び銅アルミニウム層201上に形成された後に、必要に応じて200~350℃のリフロー処理が施されてもよい。
【0063】
これにより、初期層である窒化銅アルミニウム層200には実質的に加熱処理が施される。あるいは、窒化銅アルミニウム層200を形成した直後、または銅アルミニウム層201を形成した直後に、200~350℃で窒化銅アルミニウム層200が加熱される工程が設けられてもよい。なお、銅アルミニウム配線層202Lをスパッタリング法で形成するときは、銅アルミニウム層201と、銅アルミニウム配線層202Lとをスパッタリング法で連続して形成してもよい。
【0064】
次に、図3(c)に示すように、層間絶縁層21上の銅アルミニウム配線層202L、銅アルミニウム層201、及び窒化銅アルミニウム層200のそれぞれの余剰分が化学機械研磨によって除去されて、開口21hに該余剰分が除去され残された金属配線20が形成される。この後、図1(a)に示すように、層間絶縁層21上に層間絶縁層31が形成され、さらに、層間絶縁層31内に、金属配線20に電気的に接続される金属配線層30が形成される。
【0065】
図4(a)~図5(c)は、図1(b)に例示された積層構造体2の製造過程を示す模式的断面図である。
【0066】
図4(a)に示すように、金属配線層10と、層間絶縁層11、21、31とを有する積層構造体2aが準備される。積層構造体2aにおいては、層間絶縁層21に開口21hが設けられ、層間絶縁層31に、開口21hに連通する開口31hが設けられている。開口31hの開口幅は、開口21hの開口幅よりも広く形成される。
【0067】
積層構造体2aは、例えば、CVD、スパッタリング等の成膜方法、ドライ式またはウェット式によるエッチング方法、フォトリソグラフィ等のウェーハプロセスが組み合わされて形成される。開口21hが層間絶縁層21に形成された後、金属配線層10の露出面101には、自然酸化膜が形成される場合がある。
【0068】
次に、図4(b)に示すように、層間絶縁層31の表面31sと、開口21hにおいて露出した層間絶縁層21の表面21sと、開口31hの側面31wと、開口21hの側面21wと、開口21hにおいて露出した金属配線層10の露出面101とに沿って、窒化銅アルミニウム層250が形成される。
【0069】
ここで、スパッタリング法としては、スパッタリング粒子の指向性を向上させたスパッタリング法が適用される。例えば、積層構造体1aの製造過程と同様に異方性スパッタリングよりも等方性スパッタリングを優先したスパッタリング法が適用される。ここで、露出面101に堆積する窒化銅アルミニウム層250の厚みよりも、層間絶縁層31の表面31s及び層間絶縁層21の表面21sに堆積する窒化銅アルミニウム層250の厚みが厚くなる。なお、開口31hの開口幅は、開口21hの開口幅よりも広いため、層間絶縁層31の表面31sに堆積する窒化銅アルミニウム層250の厚みは、層間絶縁層21の表面21sに堆積する窒化銅アルミニウム層250の厚みよりも厚く形成される。
【0070】
次に、図4(c)に示すように、層間絶縁層31の表面31s、層間絶縁層21の表面21s及び露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層250に、例えば、積層構造体1aの製造過程と同様に指向性を向上させた物理的エッチングが施される。
【0071】
この結果、表面31s、21sに堆積した窒化銅アルミニウム層250の厚みは減少し、露出面101に堆積した窒化銅アルミニウム層250については露出面101から除去される。さらに、露出面101については、物理的エッチングによるオーバーエッチングが施され、露出面101に形成されている金属配線層10の自然酸化膜が露出面101から除去される。
【0072】
次に、図5(a)に示すように、スパッタリング成膜により、露出面101と、表面21s、側面21w、表面31s、及び側面31wのそれぞれとに窒化銅アルミニウム層250を介して銅アルミニウム層251が形成される。
【0073】
スパッタリング法としては、露出面101及び窒化銅アルミニウム層250に沿って銅アルミニウム層251を形成する意図から、スパッタリング粒子の指向性を向上させたスパッタリング法が適用される。例えば、等方性スパッタリングよりも異方性スパッタリングを優先させたスパッタリング法が適用される。例えば、LTS等のスパッタリング法が適用される。
【0074】
次に、図5(b)に示すように、開口21h及び銅アルミニウム層251上に、銅アルミニウム層251の成分と成分が同じとする銅アルミニウム配線層252Lがスパッタリング法または鍍金法により形成される。銅アルミニウム配線層252Lにおいては、開口21h及び銅アルミニウム層251上に形成された後に、必要に応じて200~350℃のリフロー処理が施されてもよい。
【0075】
銅アルミニウム配線層252Lをスパッタリング法で形成するときは、銅アルミニウム層251と、銅アルミニウム配線層252Lとをスパッタリング法で連続して形成してもよい。
【0076】
これにより、初期層である窒化銅アルミニウム層250には実質的に加熱処理が施される。あるいは、窒化銅アルミニウム層250を形成した直後、または銅アルミニウム層251を形成した直後に、200~350℃で窒化銅アルミニウム層250が加熱される工程が設けられてもよい。
【0077】
次に、図5(c)に示すように、層間絶縁層31上の銅アルミニウム配線層252L、銅アルミニウム層251、及び窒化銅アルミニウム層250のそれぞれの余剰分が化学機械研磨によって除去されて、開口21hに該余剰分が除去され残された金属配線25が形成される。
【0078】
図1(a)の積層構造体1を例に本実施形態の作用について説明する。
【0079】
本実施形態においては、金属配線20において、層間絶縁層21に接する窒化銅アルミニウム層200が窒化物(CuAl)であるため、層間絶縁層21と窒化銅アルミニウム層200との界面において、窒化銅アルミニウム層200の窒素と層間絶縁層21中の酸素との反応が進行する。この反応は、例えば、リフロー処理等により、窒化銅アルミニウム層200と層間絶縁層21とが加熱されることで促進する。
【0080】
これにより、窒化銅アルミニウム層200と、層間絶縁層21との界面には、例えば、化学式Alx'y'z'で表される極薄の酸化窒化アルミニウム層が自発的に形成される。従って、銅アルミニウム層201と層間絶縁層21との間には、窒化物である窒化銅アルミニウム層200と、窒化酸化物である酸化窒化アルミニウム層とが介在することになり、銅アルミニウム層201(または、銅アルミニウム配線202)から層間絶縁層21への金属拡散がより確実に防止される。これにより、層間絶縁層21の特性が高い信頼性をもって維持される。
【0081】
また、酸化窒化アルミニウム層と窒化銅アルミニウム層200とは、共にアルミニウム及び窒素を有し、酸化窒化アルミニウム層と層間絶縁層21とは、共に酸素を有する。これにより、窒化銅アルミニウム層200と層間絶縁層21との間では、酸化窒化アルミニウム層が密着層となって機能し、窒化銅アルミニウム層200と層間絶縁層21との間での高い密着力が発生する。
【0082】
さらに、窒化銅アルミニウム層200と銅アルミニウム層201とは、共にCuとAlとを有することから、窒化銅アルミニウム層200と銅アルミニウム層201との間においても高い密着力が得られる。さらに、銅アルミニウム層201と銅アルミニウム配線202とは、成分を同じとする。
【0083】
従って、金属配線20は、高い密着力をもって層間絶縁層21に接する。図1(b)の積層構造体2においても同様の効果を奏する。
【0084】
(変形例)
【0085】
図6は、積層構造体の製造過程の変形例を示す模式的断面図である。
【0086】
窒化銅アルミニウム層200及び銅アルミニウム層201のスパッタリング成膜では、CuAlを含むスパッタリングターゲットの法線40nと層間絶縁層21の法線21nとを非平行にしてスパッタリング成膜を実行してもよい。スパッタリング成膜の際、積層構造体1aを含む基板は、表面21sと平行な方向に適宜回転してもよい。
【0087】
基板を回転することによい、開口21hにおけるスパッタリング膜の段差被覆性がますます向上する。これにより、窒化銅アルミニウム層200は、より途切れることなく、且つ隙間なく層間絶縁層21に密着し、銅アルミニウム層201は、より途切れることなく、且つ隙間なく露出面101及び窒化銅アルミニウム層200に密着することになる。この結果、より信頼性の高い金属配線20が得られる。なお、該変形例は、積層構造体2aの製造過程に適用してもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、1a、2、2a…積層構造体
10、30…金属配線層
10s、21s、31s…表面
11、21、31…層間絶縁層
20、25…金属配線
20d…下端
20u…上端
21h、31h…開口
21w、31w…側面
25a、25b…配線部
101…露出面
200、250…窒化銅アルミニウム層
201、251…銅アルミニウム層
202、252…銅アルミニウム配線
202L、252L…銅アルミニウム配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6